JP4597567B2 - ポリウレタン発泡体及びその積層体 - Google Patents

ポリウレタン発泡体及びその積層体 Download PDF

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Description

本発明は、例えば自動車の座席等に用いられるクッションの製造工程において、パッド材にカバーリングされる表皮として用いられるポリウレタン発泡体及びその積層体に関するものである。
従来、この種の表皮としては、通気性シート材の裏面に、ホットメルト接着剤を溶融させて散点状に塗布し、或は散点状の非塗布空間を残して塗布し、硬化させた接着剤層を設けた表皮材が知られている(例えば、特許文献1を参照)。この表皮材を前記接着剤層によってクッション本体に接着することにより表皮材付きクッションが得られる。しかし、このような表皮では通気性シート材を製作し、その裏面に後加工としてホットメルト接着剤による接着剤層を設けるための工程を必要とするため、煩雑であるうえに、製造コストも上昇するという問題があった。
そこで、シート材としてのポリウレタンフォーム自体に滑り性をもたせた技術が提案されている(例えば、特許文献2を参照)。すなわち、ポリウレタンフォームの原料となるポリオールとして、グラフト化されたポリマーポリオールが用いられ、得られたポリウレタンフォームにおいてグラフト部分がポリウレタンフォームの骨格の周囲に混在して良好な滑り性が発揮されている。
特開2000−107471号公報(第2頁) 特開2004−10792号公報(第2頁及び第5頁)
ところが、特許文献2に記載のシート材はポリウレタンフォーム自体のグラフト部分によって表面の滑り性が発揮されるため、その滑り性には限界があった。しかも、ポリウレタンフォーム自体がグラフト化されたポリオールによって硬くなり、クッション性が損なわれるという問題があった。そのうえ、グラフト化されたポリマーポリオールのグラフト部分はスチレン系化合物等で形成されていることから、ポリウレタンフォームの熱融着性が低いという問題があった。
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、ポリウレタン発泡体自体の物性を損なうことなく、表面の摩擦抵抗を低減させることができると共に、良好な熱融着性を発揮することができるポリウレタン発泡体及びその積層体を提供することにある。
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明のポリウレタン発泡体は、JIS K6400に基づく硬さが70〜150NかつJIS K6400に基づく圧縮残留歪が2〜5%であり、シート状にスライス加工され、その少なくとも片面に表皮材が熱融着されて使用される、セルを形成する骨格を有するポリウレタン発泡体であって、エステル結合を有するポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤及び触媒を含有するポリウレタン原料に対し、エステル結合を有するポリウレタンフォームの粉体を配合し、前記ポリオールとポリイソシアネートとを反応させると共に、発泡させてなり、前記粉体の平均粒子径は、ポリウレタン発泡体のセルを形成する骨格の幅よりも大きく、かつポリウレタン発泡体のセルの直径よりも小さく、前記粉体の配合量が前記ポリオール100質量部当り3質量部以上で15質量部未満であることを特徴とするものである。
求項に記載の発明の積層体は、請求項に記載のポリウレタン発泡体の少なくとも片面には表皮材が熱融着により接合されて積層構造をなすように構成されていることを特徴とするものである。
請求項に記載の発明の積層体は、請求項に係る発明において、前記ポリウレタン発泡体に対する表皮材の接合はフレームラミネーション法によるものである。
本発明によれば、次のような効果を発揮することができる。
請求項1に記載の発明のポリウレタン発泡体は、ポリウレタン原料に対し、エステル結合を有するポリウレタンフォームの粉体を配合し、エステル結合を有するポリオールとポリイソシアネートとを反応させると共に、発泡させて得られるものである。この場合、前記粉体はポリウレタン発泡体のセルを形成する骨格の幅よりも大きく、その配合量が前記ポリオール100質量部当り3質量部以上で15質量部未満である。このため、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させ、発泡剤で発泡させて得られるポリウレタン発泡体の物性により良好なクッション性等の物性を発揮することができる。
更に、ポリウレタンフォームよりなる粉体はポリウレタン発泡体のセルを形成する骨格の幅よりも大きく形成され、かつ配合量がポリオール100質量部当り3質量部以上で15質量部未満であるため、粉体がポリウレタン発泡体の表面に存在することができ、ポリウレタン発泡体の表面における摩擦抵抗を低減させることができる。そのうえ、ポリウレタン発泡体及びその表面に存在する粉体はともにエステル結合を有し、熱融着性を発現できるように構成されているため、ポリウレタン発泡体は良好な熱融着性を発揮することができる。
また、前記粉体がポリウレタン発泡体のセルの直径よりも小さく形成されているため、表面における摩擦抵抗の低減をより均一に発揮できると共に、外観を良好にすることができる。
請求項に記載の発明の積層体は、ポリウレタン発泡体の少なくとも片面に表皮材が熱融着により接合されて積層構造をなすように構成されている。前述のように、ポリウレタン発泡体及びその表面の粉体はエステル結合を有するポリウレタンフォームで構成されているため、表皮材に対して容易に熱融着され、積層品として利用することができる。
請求項に記載の発明の積層体によれば、請求項に係る発明の効果に加え、ポリウレタン発泡体の表面に表皮材がフレームラミネーション法(火炎接合法)によって容易に接合される。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本実施形態のポリウレタン発泡体は、エステル結合を有するポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤及び触媒を含有するポリウレタン原料に対し、エステル結合を有するポリウレタンフォームの粉体を配合し、前記ポリオールとポリイソシアネートとを反応させると共に、発泡させることにより得られるものである。この場合、前記粉体はポリウレタン発泡体のセルを形成する骨格の幅よりも大きく、その配合量が前記ポリオール100質量部当り3質量部以上で15質量部未満である。このポリウレタン発泡体は、例えばシート状に形成されて使用される。
ポリウレタン発泡体の少なくとも片面には表皮材が熱融着により接合されて積層構造をなす積層体、例えばシート材が形成される。前記ポリウレタン発泡体に対する表皮材の接合は、局部加熱と接合の容易性の点からフレームラミネーション法によることが好ましい。そして、縫製により自動車の座席、具体的にはシートクッション、シートバック、ヘッドレスト等を構成するパッド材に対し縫い付けられる。この縫製の作業性を良くするために、シート材表面に良好な滑り性が求められる。
まず、ポリウレタン原料について説明する。
ポリオールはエステル結合を有するポリエステル系ポリオールであり、すなわちポリエステルポリオール又はポリエーテルエステルポリオールが用いられる。エステル結合を有するポリオールは、アジピン酸、フタル酸等のポリカルボン酸を、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等のポリオールと反応させることによって得られる縮合系ポリエステルポリオールのほか、ラクトン系ポリエステルポリオール及びポリカーボネート系ポリオールが挙げられる。ポリウレタン発泡体には表皮材がフレームラミネーション法等の方法によって熱融着される。このため、ポリオールとしてポリエステル系ポリオールが用いられる。
ポリエステル系ポリオールと反応させるポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等が用いられる。
発泡剤はポリウレタン樹脂を発泡させて軟質ポリウレタンフォームとするためのもので、例えば水のほかペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ジクロロメタン、炭酸ガス等が用いられる。
触媒はポリオールとポリイソシアネートとのウレタン化反応を促進するためのものであり、具体的にはN,N´,N´−トリメチルアミノエチルピペラジン、トリエチレンジアミン、ジメチルエタノールアミン等の3級アミン、オクチル酸スズ(スズオクトエート)等の有機金属化合物、酢酸塩、アルカリ金属アルコラート等が用いられる。その他必要に応じて、整泡剤、架橋剤、充填剤、安定剤、着色剤、難燃剤、可塑剤等が配合される。整泡剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤、ポリエーテルシロキサン、フェノール系化合物等が用いられる。
次に、ポリウレタン原料に配合される粉体は、ポリウレタン発泡体又は積層体の表面における摩擦抵抗を低減させるためのもので、エステル結合を有するポリウレタンフォームにより形成されている。この粉体はポリウレタン発泡体のセルを形成する骨格の幅よりも大きく、その配合量が前記ポリオール100質量部当り3質量部以上で15質量部未満であり、5〜10質量部であることが好ましい。エステル結合を有するポリウレタンフォームは、エステル結合を有するポリエーテルとしてポリエステル系ポリオール、すなわちポリエステルポリオール又はポリエーテルエステルポリオールを用いることにより得られる。具体的には、前記ポリウレタン発泡体を得るためのポリウレタン原料に記載されているポリエステルポリオールが挙げられる。エステル結合はエーテル結合に比べて熱溶融性が高いため、ポリウレタン発泡体は加熱によって良好な熱融着性を示す。但し、粉体はポリウレタン発泡体を製造する際の温度(例えば70℃)で融解しないものが好ましい。このような粉体としては、ポリウレタンフォームの廃材の粉砕品(リサイクル品)が好ましく用いられる。
粉体の配合量が3質量部未満の場合には、粉体の配合量が少なくなり過ぎて、ポリウレタン発泡体の表面に存在する粉体量が少なくなって摩擦抵抗の低減効果を発揮することができない。一方、15質量部以上の場合には、過剰に配合された粉体によってポリウレタン発泡体の硬度が上昇し、クッション性が悪くなると共に、摩擦抵抗の低減効果も低下する。
ポリウレタン発泡体は、前記ポリウレタン原料を反応及び発泡させて得られる軟質ポリウレタン発泡体を例えばシート状に成形することにより製造される。ポリオールとポリイソシアネートとのウレタン化反応を行なう場合には、ポリオールとポリイソシアネートとを直接反応させるワンショット法或はポリオールとポリイソシアネートとを事前に反応させて末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを得、それにポリオールを反応させるプレポリマー法のいずれも採用される。ここで、ポリウレタン発泡体は実質上軟質ポリウレタン発泡体であり、軟質ポリウレタン発泡体は、軟質品、硬質品、半硬質品に分けられるポリウレタン発泡体の中で軟質品に相当し、かつJIS K6400に基づく硬さが70〜150Nで、圧縮残留歪が2〜5%のものをいう。硬さが70N未満又は圧縮残留歪が2%未満の場合にはポリウレタン発泡体が軟らかくなり過ぎ、硬さが150Nを越え又は圧縮残留歪が5%を越える場合にはポリウレタン発泡体が硬くなり過ぎてクッション性が損なわれる。
ポリウレタン発泡体は、直径が50〜200μm程度の多数のセルで構成され、それらのセルには骨格があり、骨格の幅は10〜40μm程度である。粉体は、ポリウレタン発泡体表面の摩擦抵抗を低減させるべく、ポリウレタン発泡体のセルを形成する骨格上に存在できるように、係る骨格の幅よりも大きいことが必要である。一方、粉体がセルの骨格上により均一に存在し、またポリウレタン発泡体の外観を良好にするために、粉体はセルの直径より小さくすることが好ましい。従って、粉体の平均粒子径は40〜500μmであることが好ましく、50〜200μmであることがより好ましい。この平均粒子径が40μm未満の場合には、粉体がポリウレタン発泡体のセルを形成する骨格の幅よりも小さく、粉体が表面に突出しなくなって表面における摩擦抵抗を低減させる機能を発揮させることができなくなる。一方、平均粒子径が500μmを越える場合には、ポリウレタン原料中での粉体の分散性が低下する。
ポリウレタン発泡体の製造方法として具体的には例えば、常温、大気圧下で発泡させた後、加熱炉を通過させて加熱反応(硬化)させることによりスラブ発泡体が得られる。このスラブ発泡体を薄くスライス加工することによりシート状にしたポリウレタン発泡体が製造される。更に、このポリウレタン発泡体の表面に表皮材が熱融着により接合されて積層体が形成される。具体的には、ポリウレタン発泡体の表面に火炎を当てて表面部分を溶融させ、そこに表皮材を接合させるフレーム(火炎)ラミネーション法等が採用される。表皮材としては、布地、不織布、レザー等が用いられる。
さて、ポリウレタン発泡体を製造するときには、エステル結合を有するポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤及び触媒を含有するポリウレタン原料に対して、ポリウレタン発泡体のセルを形成する骨格の幅よりも大きい粉体を前記ポリオール100質量部当り3質量部以上で15質量部未満配合して混合物を調製する。そして、この混合物を発泡及び反応させることによりポリウレタン発泡体が得られ、得られたポリウレタン発泡体をシート状に成形することによってシート材本体が製造される。
図1に示すように、シート材本体11の接合面12上に表皮材13がフレームラミネーション法により接合されて積層体としてのシート材10が形成される。シート材本体11の接合面12とは反対側の発泡体面14には、前記粉体がポリウレタン発泡体のセル骨格上に位置してランダムに分散され、低摩擦性が発現されている。続いて、表皮材13が接合されたシート材本体11の発泡体面14がミシン面15上に置かれ、縫製によってパッド材に縫い付けられ、立体的に成形される。そして、主として自動車の座席のシートクッション、シートバックを構成する表皮として利用される。
この縫製作業において、前述した粉体がポリウレタン発泡体のセルを形成する骨格上に位置し、シート材10の発泡体面14に突出していることから、シート材10の発泡体面14に良好な滑り性が発揮される。
以上の実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
・ 実施形態のポリウレタン発泡体は、ポリウレタン原料に対し、エステル結合によって熱融着性を有するポリウレタンフォームの粉体を配合し、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させると共に、発泡させて得られる。前記粉体はポリウレタン発泡体のセルを形成する骨格の幅よりも大きく、その配合量がポリオール100質量部当り3質量部以上で15質量部未満に設定される。このため、ポリウレタンフォームよりなる粉体はポリウレタン発泡体の表面に存在することができ、ポリウレタン発泡体の表面における摩擦抵抗を低減させることができる。その結果、縫製によりシート材をパッド材に賦形するときの作業性を向上させることができる。
そのうえ、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させ、発泡剤で発泡させて得られるポリウレタン発泡体の物性により良好なクッション性等の物性を発揮することができる。更に、ポリウレタン発泡体及びその表面に存在する粉体はエステル結合を有しているため、ポリウレタン発泡体は良好な熱融着性を発揮することができる。
・ また、ポリウレタン発泡体は、前記粉体がポリウレタン発泡体のセルの直径よりも小さく形成されている。このため、ポリウレタン発泡体の表面における摩擦抵抗の低減をより均一に発揮できると共に、外観を良好にすることができる。
・ 更には、ポリウレタン発泡体の少なくとも片面に表皮材が熱融着により接合されて積層構造をなす積層体が形成される。前述のように、ポリウレタン発泡体とその表面の粉体はエステル結合を有するポリウレタンフォームで構成されているため、表皮材に対して容易に熱融着され、積層品として利用することができる。この場合、ポリウレタン発泡体の表面に対する表皮材の接合をフレームラミネーション法によって行うことにより、接合を容易に行うことができる。
以下に、実施例、参考例及び比較例を挙げて、前記実施形態を更に具体的に説明する。
(実施例1〜4、参考例
まず、各実施例及び参考例で用いた粉体の種類等を表1に示す。表1における略号を以下に示す。
ECS:ポリエーテル系ポリウレタンフォーム、(株)イノアックコーポレーション製
MF13:ジエチレングリコールとアジピン酸とを用いたポリエステル系ポリウレタンフォーム(分子量2500、セル数13個/25mm)の除膜処理品、(株)イノアックコーポレーション製
MF50:ジエチレングリコールとアジピン酸とを用いたポリエステル系ポリウレタンフォーム(分子量2500、セル数50個/25mm)の除膜処理品、(株)イノアックコーポレーション製
密度(kg/m3)及びセル数(個/25mm): JIS K6400に準じて行った。
平均粒子径(μm):粉砕機にて粉砕したときのポリウレタンフォームの平均粒子径を示す。
Figure 0004597567
そして、表2に示すポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤、整泡剤及び触媒よりなるポリウレタン原料に、前記粉体を混合して混合物を調製した。この混合物を用いて常温、大気圧下で発泡させた後、加熱炉を通過させて加熱反応(硬化)させることにより軟質スラブ発泡体を得た。得られた軟質スラブ発泡体を切り出すことによってシート状のポリウレタン発泡体を製造した。このポリウレタン発泡体について、密度、硬さ、平均セル径(セルの平均直径)、圧縮残留歪、静摩擦係数、動摩擦係数、初期剥離強度及び最終剥離強度を以下の測定方法に従って測定した。それらの結果を表2に示した。また、表2における略号は次の意味を表す。
(測定方法)
密度(kg/m3)、硬さ(N)及び圧縮残留歪(%): JIS K6400に準じて行った。
平均セル径(μm):水平方向におけるセルの内径を測定し、平均を算出した。
静摩擦係数及び動摩擦係数: JIS K7125に準じて行った。
初期剥離強度(N/25mm)及び最終剥離強度(N/25mm):各ポリウレタンフォームよりフォーム片(長さ150mm、幅50mm、厚み10mm)を切り出し、幅100mmのLPガスバーナーの火炎上を8m/minで通過させ、表面を溶融させた後、表面にナイロン製の不織布を重ね合せ(目付量30g/m2)、ロールにて圧着した。圧着後、初期剥離用と最終剥離用の試験サンプル(長さ150mm、幅25mm、厚み10mm)に切断した。初期剥離強度は不織布を圧着して2分後の剥離強度をJIS L1066に準じて測定した。最終剥離強度は不織布を圧着して24時間後の剥離強度をJIS L1066に準じて測定した。表1中の*印は、剥離試験において材料破壊であることを示す。
(略号)
ポリオール L50: 三井武田ケミカル(株)製、フレームラミネーション用ポリエーテルエステルポリオール 水酸基価58(mgKOH/g)
ポリマーポリオール: 旭硝子(株)製、エクセノール941、アクリロニトリルとスチレンの共重合体に基づくポリオール、固形分40質量%
シリコーン整泡剤 F650: 信越化学工業(株)製
オクチル酸第1スズ MRH110: 城北化学工業(株)製
ポリイソシアネート T−80: 日本ポリウレタン工業(株)製、トルエンジイソシアネート
Figure 0004597567
表2に示したように、実施例1〜4及び参考例においては静摩擦係数が2.75以下及び動摩擦係数が2.59以下で、良好な滑り性が得られた。また、各ポリウレタンフォームは密度、硬さ及び圧縮残留歪が適当で良好なクッション性を有していた。更には、初期剥離強度が2.8(N/25mm)以上で、最終剥離強度が3.7(N/25mm)以上で全て材料破壊であり、優れた熱融着性を発揮できることが確認された。
(比較例1〜5)
比較例1は粉体を含まず、硬さの硬い従来品の例、比較例2はフレームラミネーション可能な軟質ポリウレタンフォームよりなるシート材の例及び比較例3は粉体として平均粒子径が大きく、気泡を含むポリウレタンフォームを配合した例を示す。比較例4は、粉体としてポリエーテル系ポリウレタンフォームを配合した例及び比較例5は粉体の配合量が多過ぎる例を示す。そして、実施例1〜4及び参考例と同様にしてポリウレタンフォームを製造し、それらのポリウレタンフォームについて、密度、硬さ、平均セル径(セルの平均直径)、圧縮残留歪、静摩擦係数、動摩擦係数、初期剥離強度及び最終剥離強度を測定し、それらの結果を表3に示した。
Figure 0004597567
表3に示したように、比較例1ではポリウレタン発泡体が硬くなり過ぎると共に、静摩擦係数及び動摩擦係数とも高く、滑り性の悪い結果であった。比較例2では粉体が含まれていないことから、静摩擦係数及び動摩擦係数とも最も高い結果であった。比較例3では、粉体の平均粒子径が大きく、内部に気泡を含むため、発泡時にその気泡が膨張して発泡させることができなかった。比較例4においては、粉体がポリエーテル系ポリウレタンフォームで形成されているため、剥離強度が最も低い結果であった。比較例5では、粉体の配合量が多いため、硬い部分の割合が増え、圧縮残留歪が最も大きくなると共に、摩擦係数も充分に小さくすることはできなかった。
尚、本実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ ポリウレタン発泡体の両面に表皮材を熱融着によって接合することも可能である。
・ ポリウレタン発泡体及び積層体は、シート状のものに限らず、立体的な形状のものであってもよい。
・ ポリウレタン発泡体及び積層体は、自動車の座席用クッション材のほか、ドアの内張り材、天井材等の自動車内装材、家庭用のソファー、ベッド、マットレス、その他キルティング材等として使用することもできる。
・ ポリウレタン発泡体は、移動する上下2枚の離型フィルム間にポリウレタン原料と粉体とを混合した混合物を供給し、常温で発泡させた後に加熱して反応させ、離型シートを剥離することによって製造することもできる。
・ ポリウレタン発泡体よりなるシート材本体11の接合面12に表皮材13を接合するためにホットメルト接着剤を用いて接着力を向上させることも可能である。
・ 前記粉体をポリウレタン発泡体のセルの骨格に結合させるために、少量のバインダーを配合することもできる。そのようなバインダーとして具体的にはエチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム等が挙げられる。
・ ポリウレタン原料中における粉体の分散性を向上させるために、粉体の比重を0.7〜1.0に設定することができる。比重が0.7未満の場合にはポリウレタン原料中の粉体量が増加し、粘度が著しく高くなり、比重が1.0を越える場合には長時間保存すると粉体がポリウレタン原料中で沈降分離してしまい、いずれも場合にも分散性が悪くなる。
更に、前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
・ 前記ポリウレタン発泡体は、JIS K6400に基づく硬さが70〜150Nで
、圧縮残留歪が2〜5%のものであるポリウレタン発泡体。このように構成した場合には、ポリウレタン発泡体にクッション性等のポリウレタン発泡体に基づく特性を発揮させることができる。
・ エステル結合を有するポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤及び触媒を含有するポリウレタン原料に対して、エステル結合を有するポリウレタンフォームであって、ポリウレタン発泡体のセルを形成する骨格の幅よりも大きい粉体を、前記ポリオール100質量部当り3質量部以上で15質量部未満配合し、常温、大気圧下で発泡させた後、加熱反応させてポリウレタン発泡体のスラブ発泡体を製造し、該スラブ発泡体を切り出すことを特徴とするポリウレタン発泡体の製造方法。この製造方法によれば、請求項1に係る発明の効果を奏するポリウレタン発泡体を容易に製造することができる。
実施形態において、シート材本体上に表皮材を接合した状態を示す断面図。
符号の説明
10…積層体としてのシート材、11…ポリウレタン発泡体としてのシート材本体、13…表皮材。

Claims (3)

  1. JIS K6400に基づく硬さが70〜150NかつJIS K6400に基づく圧縮残留歪が2〜5%であり、シート状にスライス加工され、その少なくとも片面に表皮材が熱融着されて使用される、セルを形成する骨格を有するポリウレタン発泡体であって、
    エステル結合を有するポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤及び触媒を含有するポリウレタン原料に対し、エステル結合を有するポリウレタンフォームの粉体を配合し、前記ポリオールとポリイソシアネートとを反応させると共に、発泡させてなり、
    前記粉体の平均粒子径は、ポリウレタン発泡体のセルを形成する骨格の幅よりも大きく、かつポリウレタン発泡体のセルの直径よりも小さく、
    前記粉体の配合量が前記ポリオール100質量部当り3質量部以上で15質量部未満であることを特徴とするポリウレタン発泡体。
  2. 請求項1に記載のポリウレタン発泡体の少なくとも片面には表皮材が熱融着により接合されて積層構造をなすように構成されていることを特徴とする積層体
  3. 前記ポリウレタン発泡体に対する表皮材の接合はフレームラミネーション法によるものである請求項2に記載の積層体。
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