JP5005292B2 - 加熱プレス接着用のポリウレタン発泡体及びその製造方法並びに積層体 - Google Patents
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請求項1に記載の発明の加熱プレス接着用のポリウレタン発泡体においては、ポリウレタン発泡体の原料に、平均粒子径が0.1〜1μmのポリエチレン樹脂の水分散液がポリオール類100質量部当たりその固形分として2〜3質量部含有されている。このため、得られるポリウレタン発泡体中には微細なポリエチレン樹脂が分散される。そして、ポリウレタン発泡体同士を接着する場合、加熱プレスすることにより、微細なポリエチレン樹脂が溶融し、接着剤として機能する。従って、ポリウレタン発泡体同士を加熱プレス成形により簡便に、かつ優れた接着強度で接着することができる。
本実施形態における加熱プレス接着用のポリウレタン発泡体(以下、ポリウレタン発泡体又は単に発泡体ともいう)は、ポリオール類、ポリイソシアネート類、発泡剤としての水及び触媒を含有するポリウレタン発泡体の原料を反応及び発泡させてなるものである。その際、ポリウレタン発泡体の原料には、平均粒子径が0.1〜1μmのポリエチレン樹脂の水分散液がポリオール類100質量部当たりその固形分として2〜3質量部含有される。そして、ポリウレタン発泡体同士が接着される場合には、ポリウレタン発泡体を加熱プレス成形することにより接着が容易に行われるように構成されている。
(ポリオール類)
ポリオール類としては、ポリエーテルポリオール又はポリエステルポリオールが用いられる。これらのうち、ポリイソシアネート類との反応性に優れているという点と、ポリエステルポリオールのように加水分解をしないという点から、ポリエーテルポリオールが好ましい。ポリエーテルポリオールとしては、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、多価アルコールにプロピレンオキシドとエチレンオキシドとを付加重合させた重合体よりなるポリエーテルポリオール、それらの変性体等が用いられる。多価アルコールとしては、グリセリン、ジプロピレングリコール等が挙げられる。ポリエーテルポリオールとして具体的には、グリセリンにプロピレンオキシドを付加重合させ、さらにエチレンオキシドを付加重合させたトリオール、ジプロピレングリコールにプロピレンオキシドを付加重合させ、さらにエチレンオキシドを付加重合させたジオール等が挙げられる。
(ポリイソシアネート類)
前記ポリオール類と反応させるポリイソシアネート類はイソシアネート基を複数個有する化合物であって、具体的にはトリレンジイソシアネート(TDI)、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、これらの変性物等が用いられる。ポリイソシアネート類のイソシアネート指数(イソシアネートインデックス)は100以下又は100を越えてもよいが、通常90〜130程度であり、100〜120が好ましい。ここで、イソシアネート指数は、ポリオール類、発泡剤としての水等のもつ活性水素基に対するポリイソシアネート類のイソシアネート基の当量比を百分率で表したものである。従って、イソシアネート指数が100を越えるということは、ポリイソシアネート類がポリオール類等より過剰であることを意味する。
(発泡剤)
発泡剤はポリウレタン樹脂を発泡させてポリウレタン発泡体とするためのもので、水が用いられる。水は、泡化反応の反応性が高く、取扱いが容易である。前記ポリエチレン樹脂の水分散液に含まれる水も発泡剤として機能する。発泡剤が水の場合には、軟質ポリウレタン発泡体の見掛け密度を好ましくは20〜30kg/m3にするため、その含有量をポリオール類100質量部当たり2〜9質量部とすることが好ましい。水の含有量が2質量部未満では発泡量が少なく、軟質ポリウレタン発泡体の見掛け密度が30kg/m3を越える傾向となり、9質量部を越えると反応及び発泡時に温度が上昇しやすくなり、発泡体内部のやけ(スコーチ)が発生しやすく、その温度を低下させることが難しくなる。
(触媒)
触媒はポリオール類とポリイソシアネート類とのウレタン化反応、発泡剤としての水とポリイソシアネート類との泡化反応などを促進するためのものであり、具体的にはトリエチレンジアミン、ジメチルエタノールアミン、N,N´,N´−トリメチルアミノエチルピペラジン等の第3級アミン、オクチル酸スズ(スズオクトエート)、ジブチルスズジラウレート等の有機金属化合物(金属触媒)、酢酸塩、アルカリ金属アルコラート等が用いられる。
(ポリエチレン樹脂の水分散液)
次に、ポリエチレン樹脂の水分散液について説明する。このポリエチレン樹脂の水分散液は、平均粒子径が0.1〜1μmの微細なポリエチレン樹脂が水に分散された分散液である。このような微細なポリエチレン樹脂の水分散液がポリウレタン発泡体の原料に含有され、その原料が反応及び発泡されると、ポリウレタン発泡体中には微細なポリエチレン樹脂が均一に分散された状態で存在する。係るポリウレタン発泡体が加熱プレスされると発泡体中のポリエチレン樹脂が加熱されて溶融し、その溶融物によりポリウレタン発泡体同士が接着されるようになっている。なお、ポリエチレン樹脂の水分散液中における水は発泡剤として機能し、その分発泡剤としての水を配合する必要はない。
(減熱剤としての無機化合物の水和物)
次に、減熱剤について説明する。この減熱剤としての無機化合物の水和物は、ポリウレタン発泡体の製造過程で加熱されたときに減熱(吸熱)作用を発現できる物質である。無機化合物の水和物は、加熱によって分解し、分解により水を生成する材料である。無機化合物の水和物として具体的には、硫酸カルシウム・2水和物(CaSO4・2H2O、二水石膏、比重2.32、分解温度128〜163℃)、硫酸マグネシウムの1水和物から7水和物(MgSO4・H2OからMgSO4・7H2O、比重2.57〜1.68、分解温度150℃)、硫酸鉄の1水和物から5水和物(FeSO4・H2OからFeSO4・5H2O、比重2.97、分解温度100〜130℃)又はそれらの混合物、その他酸化アルミニウムの1水和物から3水和物(Al2O3・H2OからAl2O3・3H2O、比重2.4〜3.4、分解温度150〜360℃)、硫酸銅の5水和物(CuSO4・5H2O、比重2.29)等が用いられる。無機化合物の水和物に含まれる水和水は、固体結晶として常温で安定に存在するものであり、結晶水である。無機化合物の水和物としては、硫酸カルシウムの水和物、硫酸マグネシウムの水和物、硫酸鉄の水和物等の硫酸塩の水和物が好ましい。硫酸塩の水和物は、ポリウレタン発泡体の原料の発泡過程に沿って例えば100℃以上で硫酸塩の水和物が次第に分解されて水を生成し、減熱作用を発現できるからである。
(その他の原料成分)
ポリウレタン発泡体の原料にはその他必要に応じて、整泡剤、架橋剤、充填剤、安定剤、着色剤、難燃剤、可塑剤等が常法に従って配合される。整泡剤としては、シリコーン化合物、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤、ポリエーテルシロキサン、フェノール系化合物等が用いられる。
(ポリウレタン発泡体の製造)
そして、前記ポリウレタン発泡体の原料を常法に従って反応及び発泡させることによりポリウレタン発泡体が製造される。ポリウレタン発泡体を製造する場合には、ポリオール類とポリイソシアネート類とを直接反応させるワンショット法或はポリオール類とポリイソシアネート類とを事前に反応させて末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを得、それにポリオール類を反応させるプレポリマー法のいずれも採用される。また、常温大気圧下に反応及び発泡させるスラブ発泡法及び成形型内にポリウレタン発泡体の原料(反応混合液)を注入、型締めして型内で反応及び発泡させるモールド発泡法のいずれの方法であってもよい。この場合、スラブ発泡法の方が連続生産できる点から好ましい。
(ポリウレタン発泡体)
このようにして得られるポリウレタン発泡体は、通常軟質ポリウレタン発泡体である。ここで、軟質ポリウレタン発泡体は、軽量で、一般にセル(気泡)が連通する連続気泡構造を有し、柔軟性があり、かつ復元性を有するものをいう。従って、軟質ポリウレタン発泡体は、クッション性、衝撃吸収性、高弾性、低反発弾性等の特性を発揮することができる。
(加熱プレス成形による積層体の製造)
上記のポリウレタン発泡体を使用することにより、ポリウレタン発泡体同士を、加熱プレス成形時におけるポリウレタン発泡体の溶融によって接着することができる。この場合、被着体はポリウレタン発泡体同士であり、双方のポリウレタン発泡体にポリエチレン樹脂が分散されているため、優れた接着強度が得られる。ポリウレタン発泡体を加熱プレス成形することにより、発泡体が加熱されて発泡体中に分散されたポリエチレン樹脂が溶融し、溶融したポリエチレン樹脂によりポリウレタン発泡体同士が融着されるものと考えられる。
(作用)
さて、本実施形態の作用について説明すると、加熱プレス接着用のポリウレタン発泡体は、ポリオール類、ポリイソシアネート類、発泡剤としての水及び触媒を含有するポリウレタン発泡体の原料を常法に従って反応及び発泡させることにより得られる。この際、ポリウレタン発泡体の原料には、平均粒子径が0.1〜1μmのポリエチレン樹脂の水分散液がポリオール類100質量部当たりその固形分として2〜3質量部含有されている。このため、得られるポリウレタン発泡体中には微細なポリエチレン樹脂が発泡体全体に渡って分散されると共に、ポリエチレンはポリウレタンに対する相溶性が低いため発泡体の表面に配向する傾向を示すものと考えられる。
(実施形態の効果のまとめ)
・ 本実施形態における加熱プレス接着用のポリウレタン発泡体においては、ポリウレタン発泡体の原料に、平均粒子径が0.1〜1μmのポリエチレン樹脂の水分散液がポリオール類100質量部当たりその固形分として2〜3質量部含有されている。従って、加熱プレス成形時に微細なポリエチレン樹脂が溶融して接着性を発現し、ポリウレタン発泡体同士を、簡便に、かつ優れた接着強度で接着することができる。
(実施例1〜4及び比較例1〜6)
まず、各実施例及び比較例で用いたポリウレタン発泡体の原料を以下に示す。
ポリイソシアネートT−80:日本ポリウレタン工業(株)製、トリレンジイソシアネート(2,4-トリレンジイソシアネート80質量%と2,6-トリレンジイソシアネート20質量%との混合物)
アミン触媒カオライザーNo.25:第3級アミン触媒、花王(株)
金属触媒MRH110:ジブチルスズジラウレート、城北化学工業(株)製
ポリエチレン樹脂パウダー:ポリエチレン樹脂の粉末、平均粒子径100μm、融点110℃、三井化学(株)製
ナイロン樹脂エマルジョン:ナイロン樹脂の平均粒子径0.2μm、融点125℃、固形分40質量%、エムスケミー・ジャパン(株)製、Griltex2A
ポリエステル樹脂エマルジョン:ポリエステル樹脂の平均粒子径0.5μm、融点120℃、固形分40質量%、エムスケミー・ジャパン(株)製、Griltex9E
ポリエチレン樹脂エマルジョン:ポリエチレン樹脂の平均粒子径0.2μm、融点110℃、固形分30質量%、中京油脂(株)製、ポリロン0255。
硫酸マグネシウム7水和物:比重1.68、平均粒子径50μmの硫酸マグネシウムの7水和物
整泡剤F650: シリコーン整泡剤、信越化学工業(株)製
そして、表1に示す配合割合(質量部)で各例における軟質ポリウレタン発泡体の原料を調製した。これらの軟質ポリウレタン発泡体の原料を縦、横及び深さが各500mmの発泡容器内に注入し、常温、大気圧下で発泡させた後、加熱炉を通過させて架橋(硬化)させることにより軟質ポリウレタン発泡体(軟質スラブ発泡体)を得た。
(測定方法)
見掛け密度(kg/m3):JIS K 7222:1999に準拠して測定した。
圧縮残留歪(%):JIS K 6400−4:2004に準拠して測定した。
得られた積層体について、JIS L1066に準拠して、引張速度200mm/mimの条件で180度剥離強度を測定した。なお、表1の剥離強度の欄において、*は材料破壊であったことを示す。
・ 前記ポリエチレン樹脂の水分散液として、界面活性剤を用いて、又は界面活性剤を用いることなく、ポリエチレン樹脂を水に分散させた水懸濁液などを使用することもできる。
・ 前記ポリエチレン樹脂を複数種類組合せて使用することも可能である。例えば、ポリエチレン樹脂の平均粒子径や融点の異なるものを組合せ、ポリウレタン発泡体やその他の熱可塑性樹脂に対する接着性を向上させるように構成することも可能である。
・ 前記ポリウレタン発泡体の原料に、接着性向上剤、粘度調整剤、相溶化剤、分散剤などを配合することもできる。
さらに、前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
Claims (6)
- ポリオール類、ポリイソシアネート類、発泡剤としての水及び触媒を含有するポリウレタン発泡体の原料を反応及び発泡させてなるポリウレタン発泡体であって、
前記ポリウレタン発泡体の原料には、平均粒子径が0.1〜1μmのポリエチレン樹脂の水分散液がポリオール類100質量部当たりその固形分として1.5〜3.0質量部含有されていることを特徴とする加熱プレス接着用のポリウレタン発泡体。 - 前記ポリエチレン樹脂の水分散液は、ポリエチレン樹脂のエマルジョンであることを特徴とする請求項1に記載の加熱プレス接着用のポリウレタン発泡体。
- 前記ポリエチレン樹脂の融点は、100〜150℃であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の加熱プレス接着用のポリウレタン発泡体。
- 前記ポリウレタン発泡体の原料には、減熱剤として無機化合物の水和物が含有され、前記無機化合物の水和物は、二水石膏または硫酸マグネシウム7水和物であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の加熱プレス接着用のポリウレタン発泡体。
- 請求項1に記載の加熱プレス接着用のポリウレタン発泡体の製造方法であって、ポリオール類、ポリイソシアネート類、発泡剤及び触媒を含有するポリウレタン発泡体の原料には、平均粒子径が0.1〜1μmのポリエチレン樹脂の水分散液がポリオール類100質量部当たりその固形分として1.5〜3.0質量部含有され、その原料を反応及び発泡させることを特徴とする加熱プレス接着用のポリウレタン発泡体の製造方法。
- 請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の加熱プレス接着用のポリウレタン発泡体より形成される複数の成形体を積層し、加熱プレス成形して得られることを特徴とする積層体。
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