JP4896607B2 - 加熱プレス成形用の軟質ポリウレタン発泡体及びその製造方法 - Google Patents

加熱プレス成形用の軟質ポリウレタン発泡体及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、加熱プレス成形により例えば肩パット等の衣料品となる成形体として使用される加熱プレス成形用の軟質ポリウレタン発泡体及びその製造方法に関するものである。
加熱プレス成形用の軟質ポリウレタン発泡体は、ポリオール類、ポリイソシアネート類、発泡剤及び触媒を含有する軟質ポリウレタン発泡体の原料を反応及び発泡させることにより製造される。そして、得られる軟質ポリウレタン発泡体を加熱し、圧縮する加熱プレス成形により所定形状に賦形され、肩パット等の成形体が得られる。この場合、軟質ポリウレタン発泡体は熱硬化性樹脂であることから、例えば180〜240℃の高温に加熱し、数分間高圧で圧縮する必要がある(例えば、特許文献1を参照)。具体的には、汎用の軟質スラブポリウレタン発泡体の場合1/5圧縮程度まで圧縮するとき、加熱温度180〜200℃、加熱プレス時間2分以上という条件にて加熱プレス成形を行う必要があった。
特開平2004−182927号公報(第2頁)
前述のように、従来の軟質ポリウレタン発泡体では1/5圧縮程度まで圧縮するとき、加熱温度180〜200℃で、加熱プレス時間2分以上に渡って加熱プレス成形を行う必要があった。加熱プレス時間が2分以上というのは、軟質ポリウレタン発泡体の成形体を得るための生産工程中では長い時間である。そのように長い時間加熱プレス成形を行う必要があるのは、加熱プレス成形の時間を短くすると一旦圧縮された状態(厚さ)が保持されず、放置すると次第に元の状態(厚さ)に戻ろうとするのを防止するためである。従って、高温で長い時間加熱し、軟質ポリウレタン発泡体をできるだけ溶融させ、圧縮された厚さを維持するように操作されていた。その結果、軟質ポリウレタン発泡体を加熱プレス成形して圧縮させ、成形体を製造する場合の生産性が低いという結果を招いていた。
そこで本発明の目的とするところは、加熱プレス成形による圧縮状態を容易に保持することができ、加熱プレス成形時間を短縮することができる加熱プレス成形用の軟質ポリウレタン発泡体及びその製造方法を提供することにある。
上記の目的を達成するために、請求項に記載の発明の加熱プレス成形用の軟質ポリウレタン発泡体の製造方法は、ポリオール類、ポリイソシアネート類、発泡剤としての水、触媒及び融点が加熱プレス成形温度より低い熱可塑性樹脂を含有する軟質ポリウレタン発泡体の原料を反応及び発泡させてなる加熱プレス成形用の軟質ポリウレタン発泡体の製造方法であって、前記熱可塑性樹脂は熱可塑性樹脂のエマルジョンである水分散液として配合され、その固形分が前記ポリオール類100質量部当たり0.5〜3.0質量部となるように配合されていることを特徴とするものである。
請求項に記載の発明の加熱プレス成形用の軟質ポリウレタン発泡体の製造方法は、請求項に係る発明において、前記熱可塑性樹脂の平均粒子径は、0.1〜1μmであることを特徴とするものである。
請求項に記載の発明の加熱プレス成形用の軟質ポリウレタン発泡体の製造方法は、請求項1又は請求項2に係る発明において、前記熱可塑性樹脂の融点は、100〜150℃であることを特徴とするものである。
請求項4に記載の発明の加熱プレス成形用の軟質ポリウレタン発泡体は、請求項1に記載の加熱プレス成形用の軟質ポリウレタン発泡体の製造方法により製造された軟質ポリウレタン発泡体であって、前記軟質ポリウレタン発泡体が加熱プレス成形されて圧縮されたとき、熱可塑性樹脂が溶融して軟質ポリウレタン発泡体を接着し、圧縮された後の厚さが保持されるように構成されていることを特徴とするものである。
本発明によれば、次のような効果を発揮することができる
請求項に記載の発明の加熱プレス成形用の軟質ポリウレタン発泡体の製造方法においては、軟質ポリウレタン発泡体の原料中に、融点が加熱プレス成形温度より低い熱可塑性樹脂の水分散液として熱可塑性樹脂のエマルジョンがその固形分として前記ポリオール類100質量部当たり0.5〜3.0質量部となるように配合されている。このため、加熱プレス成形時には熱可塑性樹脂が溶融し、圧縮された軟質ポリウレタンに接着して圧縮状態を保持するように作用する。従って、加熱プレス成形による圧縮状態を容易に保持することができ、その結果加熱プレス成形時間を短縮することができる軟質ポリウレタン発泡体を簡単に製造することができる。
請求項に記載の発明の加熱プレス成形用の軟質ポリウレタン発泡体の製造方法では、熱可塑性樹脂はその平均粒子径が0.1〜1μmという微細に形成されていることから、軟質ポリウレタン発泡体中における熱可塑性樹脂の分散性が高められる。従って、請求項に係る発明の効果を向上させることができる。
請求項に記載の発明の加熱プレス成形用の軟質ポリウレタン発泡体の製造方法では、熱可塑性樹脂の融点が100〜150℃であることから、例えば加熱プレス成形温度が180〜200℃の場合に熱可塑性樹脂を容易に溶融させることができる。従って、請求項1又は請求項2に係る発明の効果を十分に発揮させることができる。
請求項4に記載の発明の加熱プレス成形用の軟質ポリウレタン発泡体においては、軟質ポリウレタン発泡体が加熱プレス成形されて圧縮されたとき、熱可塑性樹脂が溶融して軟質ポリウレタン発泡体を接着し、圧縮された後の厚さが保持されるように構成されている。従って、熱可塑性樹脂の溶融に基づいて、加熱プレス成形による圧縮状態を容易に保持することができ、その結果加熱プレス成形時間を短縮することができる。
以下、本発明の最良と思われる実施形態について詳細に説明する。
本実施形態における加熱プレス成形用の軟質ポリウレタン発泡体(以下、軟質ポリウレタン発泡体又は単に発泡体ともいう)は、ポリオール類、ポリイソシアネート類、発泡剤としての水、触媒及び融点が加熱プレス成形温度より低い熱可塑性樹脂を含有する軟質ポリウレタン発泡体の原料を反応及び発泡させてなるものである。そして、軟質ポリウレタン発泡体が加熱プレス成形されて圧縮されたとき、熱可塑性樹脂が溶融して軟質ポリウレタン発泡体を接着し、圧縮された後の厚さが保持されるように構成されている。ここで、軟質ポリウレタン発泡体は、軽量で、一般にセル(気泡)が連通する連続気泡構造を有し、柔軟性があって復元性を有するものをいう。従って、軟質ポリウレタン発泡体は、クッション性、衝撃吸収性、高弾性、低反発弾性等の特性を発揮することができる。
係る軟質ポリウレタン発泡体は、次のようにして製造される。すなわち、ポリオール類、ポリイソシアネート類、発泡剤としての水、触媒及び融点が加熱プレス成形温度より低い熱可塑性樹脂を含有する軟質ポリウレタン発泡体の原料を反応及び発泡させることによって製造される。この場合、前記熱可塑性樹脂は水分散液としてその固形分が前記ポリオール類100質量部当たり0.5〜3.0質量部となるように配合される。
次に、前記軟質ポリウレタン発泡体の原料について順に説明する。
ポリオール類としては、ポリエーテルポリオール又はポリエステルポリオールが用いられる。これらのうち、ポリイソシアネート類との反応性に優れているという点と、ポリエステルポリオールのように加水分解をしないという点から、ポリエーテルポリオールが好ましい。ポリエーテルポリオールとしては、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、多価アルコールにプロピレンオキシドとエチレンオキシドとを付加重合させた重合体よりなるポリエーテルポリオール、それらの変性体等が用いられる。多価アルコールとしては、グリセリン、ジプロピレングリコール等が挙げられる。ポリエーテルポリオールとして具体的には、グリセリンにプロピレンオキシドを付加重合させ、さらにエチレンオキシドを付加重合させたトリオール、ジプロピレングリコールにプロピレンオキシドを付加重合させ、さらにエチレンオキシドを付加重合させたジオール等が挙げられる。
ポリエステルポリオールとしては、アジピン酸、フタル酸等のポリカルボン酸を、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等のポリオールと反応させることによって得られる縮合系ポリエステルポリオールのほか、ラクトン系ポリエステルポリオール及びポリカーボネート系ポリオールが用いられる。これらのポリオール類は、原料成分の種類、分子量、縮合度等を調整することによって、水酸基の官能基数や水酸基価を変えることができる。
前記ポリオール類と反応させるポリイソシアネート類はイソシアネート基を複数個有する化合物であって、具体的にはトリレンジイソシアネート(TDI)、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、これらの変性物等が用いられる。ポリイソシアネート類のイソシアネート指数(イソシアネートインデックス)は100以下又は100を越えてもよいが、通常90〜130程度であり、100〜120が好ましく、110〜120がより好ましい。ここで、イソシアネート指数は、ポリオール類、発泡剤としての水等の活性水素基に対するポリイソシアネート類のイソシアネート基の当量比を百分率で表したものである。従って、イソシアネート指数が100を越えるということは、ポリイソシアネート類がポリオール類等より過剰であることを意味する。
発泡剤はポリウレタン樹脂を発泡させて軟質ポリウレタン発泡体とするためのもので、水が用いられる。水は、泡化反応の反応性が高く、取扱いが容易である。前記熱可塑性樹脂の水分散液に含まれる水も発泡剤として機能する。発泡剤が水の場合には、軟質ポリウレタン発泡体の見掛け密度を好ましくは16〜60kg/m、より好ましくは25〜30kg/mにするため、その配合量をポリオール類100質量部当たり2〜9質量部とすることが好ましい。水の配合量が2質量部未満では発泡量が少なく、軟質ポリウレタン発泡体の見掛け密度が60kg/mを越える傾向となり、9質量部を越えると反応及び発泡時に温度が上昇しやすくなり、発泡体内部のやけ(スコーチ)が発生しやすく、その温度を低下させることが難しい。
触媒はポリオール類とポリイソシアネート類との樹脂化反応、発泡剤としての水とポリイソシアネート類との泡化反応などを促進するためのものであり、具体的にはトリエチレンジアミン、ジメチルエタノールアミン、N,N´,N´−トリメチルアミノエチルピペラジン等の第3級アミン、オクチル酸スズ(スズオクトエート)、ジブチルスズジラウレート等の有機金属化合物(金属触媒)、酢酸塩、アルカリ金属アルコラート等が用いられる。
この触媒としては、その効果を高めるためにアミン触媒と金属触媒とを組合せて用いることが好ましい。アミン触媒の配合量は、ポリオール類100質量部当たり0.01〜0.5質量部であることが好ましく、0.1〜0.5質量部であることがより好ましい。アミン触媒の配合量が0.01質量部未満の場合には、樹脂化反応及び泡化反応を十分にかつバランス良く促進させることができなくなる。その一方、0.5質量部を越える場合には、樹脂化反応や泡化反応が過度に促進されたり、両反応のバランスを損なう結果を招くおそれがある。また、金属触媒の配合量は、ポリオール類100質量部当たり0.1〜0.5質量部であることが好ましい。金属触媒の配合量が0.1質量部未満の場合には、樹脂化反応と泡化反応とのバランスを欠き、発泡を良好に行うことができなくなる。その一方、0.5質量部を越える場合には、樹脂化反応や泡化反応が過剰に促進されるとともに、両反応のバランスが悪くなり、発泡体の歪特性が低下する。
次に、熱可塑性樹脂について説明する。この熱可塑性樹脂は、軟質ポリウレタン発泡体を加熱プレス成形して成形体を得る場合の加熱プレス成形温度より低い融点を有するものである。そのため、加熱プレス成形時には容易に溶融し、軟質ポリウレタン発泡体の内部で接着機能を発現し、加熱プレス成形による圧縮後の厚さが維持されるように働く。熱可塑性樹脂の融点が加熱プレス成形温度以上である場合には、加熱プレス成形時に熱可塑性樹脂が溶融せず、熱可塑性樹脂の機能を発揮することができない。
係る熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ナイロン樹脂等が用いられる。熱可塑性樹脂は水分散液としてその固形分が前記ポリオール類100質量部当たり0.5〜3.0質量部となるように配合される。熱可塑性樹脂の水分散液としては、熱可塑性樹脂の分散性が良好である点でエマルジョンが好ましい。該エマルジョンは、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等の界面活性剤を使用し、熱可塑性樹脂を水中で常法に従ってエマルジョン化したものである。エマルジョン中における熱可塑性樹脂の固形分は、通常20〜50質量%程度である。
軟質ポリウレタン発泡体の原料中における熱可塑性樹脂の配合量が水分散液の固形分でポリオール類100質量部当たり0.5質量部未満の場合には、軟質ポリウレタン発泡体中における熱可塑性樹脂の配合量が不足し、熱可塑性樹脂の機能が十分に発揮されず、加熱プレス成形後の成形体の厚さを保持することができない。一方、3.0質量部を越える場合には、熱可塑性樹脂の配合量が過剰であり、得られる軟質ポリウレタン発泡体の機械的物性が変化する。前記エマルジョンを使用することで、所望の粒子径の熱可塑性樹脂を軟質ポリウレタン発泡体に分散させることができる。特に、下記粒子径の熱可塑性樹脂においては、パウダーで軟質ポリウレタン発泡体の原料中に分散させると、原料粘度が高くなり過ぎたり、凝集物が生成したりすることから、成形が困難となる。
熱可塑性樹脂の平均粒子径は、0.1〜1μmであることが好ましい。平均粒子径が0.1μm未満の場合にはそのような微細な熱可塑性樹脂を得ることが難しく、1μmを越える場合には水分散液中での分散性、さらには軟質ポリウレタン発泡体中での分散性が低下する。また、熱可塑性樹脂の融点は、加熱プレス成形温度より低ければよいが、100〜150℃であることが好ましい。熱可塑性樹脂の融点が100℃未満の場合には、融点が低過ぎて発泡体の形成に影響を及ぼしたり、加熱プレス成形で熱可塑性樹脂が早期に溶融し、溶融した熱可塑性樹脂が偏る傾向を示して好ましくない。その一方、150℃を越える場合には、加熱プレス成形温度にもよるが、熱可塑性樹脂が十分に溶融しない傾向を示し、その機能を満足に発揮できないことがあり、好ましくない。
ポリウレタン発泡体の原料にはその他必要に応じて、整泡剤、架橋剤、充填剤、安定剤、着色剤、難燃剤、可塑剤等が常法に従って配合される。整泡剤としては、シリコーン化合物、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤、ポリエーテルシロキサン、フェノール系化合物等が用いられる。
そして、軟質ポリウレタン発泡体の原料を反応及び発泡させることにより軟質ポリウレタン発泡体を製造するが、その際の反応は複雑であり、基本的には次のような反応が主体となっている。すなわち、ポリオール類とポリイソシアネート類との付加重合反応、その反応生成物とポリイソシアネート類との架橋反応などを含む樹脂化反応及びポリイソシアネート類と発泡剤としての水との泡化反応である。
軟質ポリウレタン発泡体を製造する場合には、ポリオール類とポリイソシアネート類とを直接反応させるワンショット法或はポリオール類とポリイソシアネート類とを事前に反応させて末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを得、それにポリオール類を反応させるプレポリマー法のいずれも採用される。また、軟質ポリウレタン発泡体は、常温大気圧下に反応及び発泡させて得られるスラブ発泡法及び成形型内に軟質ポリウレタン発泡体の原料(反応混合液)を注入、型締めして型内で反応及び発泡させて得られるモールド発泡法のいずれの方法により製造されるものであってもよい。この場合、スラブ発泡法の方が簡便で連続生産できる点から好ましい。
このようにして得られる軟質ポリウレタン発泡体は、例えば180℃の加熱プレス成形温度で加熱プレス成形を行ったとき、従来の2分以上に比べて短い60〜120秒未満で圧縮が完了し、一定の厚さを有する成形体が得られる。また、軟質ポリウレタン発泡体は、例えばJIS K 7222:1999に規定された見掛け密度が好ましくは16〜60kg/m、より好ましくは25〜27kg/m、JIS K 6400−5:2004に規定された引張強さが100〜113kPa、伸びが110〜170%、JIS K 6400−4:2004に規定された圧縮残留歪が3.9〜5.6%となる。従って、係る軟質ポリウレタン発泡体を、肩パット、ブラジャーカップ等の衣料品、自動車の成形天井などとして好適に利用することができる。
さて、本実施形態の作用を説明すると、加熱プレス成形用の軟質ポリウレタン発泡体は、ポリオール類、ポリイソシアネート類、発泡剤としての水、触媒及び融点が加熱プレス成形温度より低い熱可塑性樹脂、例えばポリエチレン樹脂を含有する軟質ポリウレタン発泡体の原料を反応及び発泡させることにより製造される。そのとき、熱可塑性樹脂はエマルジョンとして配合され、その固形分がポリオール類100質量部当たり0.5〜3.0質量部となるように配合される。
得られた軟質ポリウレタン発泡体を例えば180℃で加熱プレス成形して圧縮する場合、熱可塑性樹脂としてのポリエチレン樹脂はその融点が110℃程度であるため完全に溶融し、軟質ポリウレタン発泡体中に十分に分散される。このため、溶融したポリエチレン樹脂が圧縮された軟質ポリウレタン発泡体の成形体中で接着性を発現し、ポリウレタンの高分子鎖間が強固に結合される。従って、圧縮された成形体の厚さがそのままの状態で保持される。
以上の実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
・ 本実施形態における加熱プレス成形用の軟質ポリウレタン発泡体においては、軟質ポリウレタン発泡体が加熱プレス成形されて圧縮されたとき、熱可塑性樹脂が溶融して軟質ポリウレタン発泡体を接着し、圧縮された後の厚さが保持されるように構成されている。従って、熱可塑性樹脂の溶融により、加熱プレス成形による圧縮状態を容易に保持することができ、その結果加熱プレス成形時間を短縮することができ、成形体の生産性を向上させることができる。
・ 軟質ポリウレタン発泡体の原料中には、融点が加熱プレス成形温度より低い熱可塑性樹脂のエマルジョンがその固形分としてポリオール類100質量部当たり0.5〜3.0質量部となるように配合されている。従って、加熱プレス成形による圧縮状態を容易に保持することができ、その結果加熱プレス成形時間を短縮することができる軟質ポリウレタン発泡体を、少量の熱可塑性樹脂の配合で簡単に製造することができる。
・ 前記熱可塑性樹脂のエマルジョンを軟質ポリウレタン発泡体の原料に添加することで、軟質ポリウレタン発泡体中における熱可塑性樹脂の分散性を高めることができる。
・ 前記熱可塑性樹脂はその平均粒子径が0.1〜1μmという微細なものであることにより、軟質ポリウレタン発泡体中における熱可塑性樹脂の分散性を高めることができ、前記効果を一層向上させることができる。
・ 前記熱可塑性樹脂の融点が100〜150℃であることにより、例えば加熱プレス成形温度が180〜200℃の場合に熱可塑性樹脂を容易に溶融させることができ、前記の効果を十分に発揮させることができる。
以下に、実施例及び比較例を挙げて、前記実施形態をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1〜4及び比較例1〜3)
まず、各実施例及び比較例で用いた軟質ポリウレタン発泡体の原料を以下に示す。
ポリオールGP3050:グリセリンにプロピレンオキシド及びエチレンオキシド(8%)を付加重合させたポリエーテルポリオールで、分子量3000、水酸基の官能基数が3、水酸基価56(mgKOH/g)、三洋化成工業(株)製、ポリオールGP3050
触媒LV33:トリエチレンジアミン、中京油脂(株)製、LV33
水:発泡剤
金属触媒MRH110:ジブチルスズジラウレート、城北化学工業(株)製
整泡剤BF2370:シリコーン界面活性剤、デグサ社製
ポリイソシアネートT−80:日本ポリウレタン工業(株)製、トリレンジイソシアネート(2,4-トリレンジイソシアネート80質量%と2,6-トリレンジイソシアネート20質量%との混合物)
熱可塑性樹脂1:ポリエチレン樹脂の粉末、平均粒子径100μm、融点110℃、三井(株)製。
熱可塑性樹脂2:ポリエチレン樹脂のエマルジョン、平均粒子径0.2μm、融点110℃、中京油脂(株)製、ポリロン0255。
熱可塑性樹脂3:ポリエステル樹脂のエマルジョン、平均粒子径0.5μm、融点120℃、エムスケミー・ジャパン(株)製、Griltex9E。
そして、表1に示す配合割合(質量部)で各例における軟質ポリウレタン発泡体の原料を調製した。これらの軟質ポリウレタン発泡体の原料を縦、横及び深さが各500mmの発泡容器内に注入し、常温、大気圧下で発泡させた後、加熱炉を通過させて硬化(架橋)させることにより軟質スラブ発泡体を得た。得られた軟質スラブ発泡体を切り出すことによってシート状の軟質ポリウレタン発泡体を製造した。
ここで、比較例1では熱可塑性樹脂を配合しなかった例、比較例2ではポリエチレン樹脂の粉末を配合した例を示す。さらに、比較例3では、ポリエチレン樹脂のエマルジョンの配合量がポリオール100質量部当たり0.5質量部未満の例を示す。
そして、得られた軟質ポリウレタン発泡体について、見掛け密度、引張強さ、伸び、圧縮残留歪及び成形性(80%圧縮及び50%圧縮)を以下に示す測定方法に従って測定した。それらの結果を表1に示す。
(測定方法)
見掛け密度(kg/m):JIS K 7222:1999に準拠して測定した。
引張強さ(kPa)及び伸び(%):JIS K 6400−5:2004に準拠して測定した。
圧縮残留歪(%):JIS K 6400−4:2004に準拠して測定した。
成形性(80%圧縮):元の厚さ25mmの試験片を、5mmのスペーサを用いてプレス加工時間60秒、90秒及び120秒にて加熱プレス成形を行ない、常温で1日放置後の厚さを測定した。
成形性(50%圧縮):元の厚さ20mmの試験片を、10mmのスペーサを用いてプレス加工時間60秒、90秒及び120秒にて加熱プレス成形を行ない、常温で1日放置後の厚さを測定した。
成形性の評価は、加熱プレス成形時間60秒の場合における厚さについて目標とする厚さに対する割合が±10%以下のときには合格とし、±10%を越えるときには不合格とした。
Figure 0004896607
表1に示したように、実施例1〜4においては、加熱プレス成形時間60秒でいずれも成形性(80%圧縮及び50%圧縮)の評価が合格という結果であった。従って、加熱プレス成形時間を短縮することができた。これは、融点が加熱プレス成形温度より低い熱可塑性樹脂のエマルジョンを固形分としてポリオール100質量部当たり0.5〜3.0質量部配合したことで、熱可塑性樹脂が溶融して圧縮された軟質ポリウレタン発泡体が元に戻らないように接着されたものと考えられる。
一方、比較例1では熱可塑性樹脂を配合しなかったことから、圧縮後の復元性が大きく、加熱プレス成形による50%圧縮では合格レベルに達するのに120秒を要し、80%圧縮では120秒でも合格レベルに達しなかった。また、比較例2ではポリエチレン樹脂の粉末を配合し、その平均粒子径も大きかったため、分散性が悪く、加熱プレス成形後の厚さについて合格レベルに達するのに90〜120秒を要した。さらに、比較例3では、ポリエチレン樹脂のエマルジョンの配合量がポリオール100質量部当たり0.5質量部未満であったため、加熱プレス成形後の厚さについて合格レベルに達するのに90〜120秒を要した。
なお、本実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 前記熱可塑性樹脂の水分散液として、界面活性剤を用いて、又は界面活性剤を用いることなく、熱可塑性樹脂を水に分散させた水懸濁液などを使用することもできる。
・ 前記熱可塑性樹脂を複数種類組合せて使用することも可能である。例えば、熱可塑性樹脂の平均粒子径や融点の異なるものを組合せ、軟質ポリウレタン発泡体に対する接着性を向上させるように構成することも可能である。
・ 軟質ポリウレタン発泡体の原料に、接着性向上剤、粘度調整剤、相溶化剤、分散剤などを配合することもできる。
さらに、前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
・ 前記軟質ポリウレタン発泡体は、軟質スラブ発泡体であることを特徴とする請求項から請求項のいずれか一項に記載の加熱プレス成形用の軟質ポリウレタン発泡体の製造方法。このように構成した場合、請求項から請求項のいずれかに係る発明の効果に加えて、軟質ポリウレタン発泡体を簡便に、かつ連続生産により製造することができる。
・ 前記熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン樹脂又はポリエステル樹脂であることを特徴とする請求項から請求項のいずれか一項に記載の加熱プレス成形用の軟質ポリウレタン発泡体の製造方法。このように構成した場合、請求項から請求項のいずれかに係る発明の効果に加えて、軟質ポリウレタン発泡体に対する接着性を向上させることができる。

Claims (4)

  1. ポリオール類、ポリイソシアネート類、発泡剤としての水、触媒及び融点が加熱プレス成形温度より低い熱可塑性樹脂を含有する軟質ポリウレタン発泡体の原料を反応及び発泡させてなる加熱プレス成形用の軟質ポリウレタン発泡体の製造方法であって、
    前記熱可塑性樹脂は熱可塑性樹脂のエマルジョンである水分散液として配合され、その固形分が前記ポリオール類100質量部当たり0.5〜3.0質量部となるように配合されていることを特徴とする加熱プレス成形用の軟質ポリウレタン発泡体の製造方法。
  2. 前記熱可塑性樹脂の平均粒子径は、0.1〜1μmであることを特徴とする請求項1に記載の加熱プレス成形用の軟質ポリウレタン発泡体の製造方法。
  3. 前記熱可塑性樹脂の融点は、100〜150℃であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の加熱プレス成形用の軟質ポリウレタン発泡体の製造方法。
  4. 請求項1に記載の加熱プレス成形用の軟質ポリウレタン発泡体の製造方法により製造された軟質ポリウレタン発泡体であって、
    前記軟質ポリウレタン発泡体が加熱プレス成形されて圧縮されたとき、熱可塑性樹脂が溶融して軟質ポリウレタン発泡体を接着し、圧縮された後の厚さが保持されるように構成されていることを特徴とする加熱プレス成形用の軟質ポリウレタン発泡体。
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