JP4596090B2 - アミノアルコールの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アミノアルコールの製造方法に関する。より詳しくは、水酸基とアミノ基との間のアルキレン基の主鎖の炭素原子数が4又は5であり、且つ第1級又は第2級アミンに分類されるアミノアルコールの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、第1級アミンに分類されるアミノアルコールのうち工業的に製造されている化合物としては、2−アミノエタノール及び3−アミノ−1−プロパノールが挙げられる。前者の2−アミノエタノールは、エチレンオキサイドとアンモニアを反応させることにより製造されており(特開平11−90238号公報等)、後者の3−アミノ−1−プロパノールは、3−ヒドロキシプロピオノニトリルをラネーニッケル触媒などで還元させることにより製造されている(特開昭64−9963号公報等)。
【0003】
また、第2級アミンに分類されるアミノアルコールのうち、工業的に製造されている化合物としては、2−(メチルアミノ)エタノールなどのエタノールアミン類が挙げられる。このようなエタノールアミン類は、アルキルアミンとエチレンオキサイドとを反応させることにより製造されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の第1級アミン又は第2級アミンに分類されているアミノアルコールの水酸基とアミノ基との間のアルキレン基の主鎖の炭素原子数は、使用原料や反応経路上の制約から、必然的に前者は2もしくは3に限定され、また、後者は2に限定される。従って、水酸基とアミノ基の間の炭素原子数が4以上(特に4又は5)のアミノアルコールを上述したような製造手法では工業的に製造することができないという問題があった。
【0005】
ところで、第1級アミン又は第2級アミンに分類され、水酸基とアミノ基のとの間のアルキレン基の主鎖の炭素原子数が4又は5であって実験室的に合成されているアミノアルコールとして、4−アミノ−2−メチル−1−ブタノール又は5−(メチルアミノ)−1−ペンタノールが報告されている。具体的には、前者は2−メチル−4−アミノブチル酸をテトラヒドロフラン溶媒中リチウムアルミニウムヒドリドと還流条件下6時間反応させることにより実験室的に合成されている(J.Amer.Chem.Soc.,81,4946(1959))。また後者は、塩酸とジヒドロピランを混合後、その混合物にメチルアミン水溶液を加え、得られた粗反応液を抽出・濃縮した後、エタノール溶媒にて水素化ホウ素ナトリウムと反応させることにより実験室的に合成(単離収率21%;ジヒドロピランベース)されている(J.Chem.Soc.Perkin Trans.I 1375(1989))。従って、これらの実験室的な製造手法を、工業的な製造に適用することも考えられる。
【0006】
しかし、これらの実験室的な製造手法は、リチウムアルミニウムヒドリド、ジヒドロピラン、水素化ホウ素ナトリウム等の高価な反応原料を使用しなければならず、しかも反応原料の取扱いが容易ではなく、反応後の後処理操作が煩雑で、反応設備も新設する必要があり、工業的に有利な方法であるとは言い難い。
【0007】
本発明は、水酸基とアミノ基との間のアルキレン基の主鎖の炭素原子数が4又は5であり、且つ第1級アミン又は第2級アミンに分類されるアミノアルコールを工業的に有利に製造できる方法を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、特定の環状ヘミアセタールとアンモニア又は第1級アミンと水素とを同時に反応させることにより、あるいは特定の環状ヘミアセタールにアンモニア又は第1級アミンを反応させた後に更に水素を反応させることにより上述の目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち、第1の本発明は、式(1)
【0010】
【化8】
Figure 0004596090
【0011】
(式中、nは0又は1を表す)
で示される環状ヘミアセタール、式(4)
【0012】
【化9】
R−NH2 (4)
(式中、Rは水素原子、置換基を有してもよい1価の飽和炭化水素基又は置換基を有してもよい1価の芳香族基を表す)
で示される含窒素化合物及び水素を、水素添加触媒の存在下で反応させて式(2)
【0013】
【化10】
Figure 0004596090
【0014】
(式中、n及びRは上記定義のとおりである)
で示されるアミノアルコールを得ることを特徴とするアミノアルコールの製造方法を提供する。
【0015】
また、第2の本発明は、式(1)
【0016】
【化11】
Figure 0004596090
【0017】
(式中、nは0又は1を表す)
で示される環状ヘミアセタールを、式(4)
【0018】
【化12】
R−NH2 (4)
(式中、Rは水素原子、置換基を有してもよい1価の飽和炭化水素基又は置換基を有してもよい1価の芳香族基を表す)
で示される含窒素化合物と反応させ、その後、水素添加触媒の存在下で更に水素と反応させて式(2)
【0019】
【化13】
Figure 0004596090
【0020】
(式中、n及びRは上記定義のとおりである)
で示されるアミノアルコールを得ることを特徴とするアミノアルコールの製造方法を提供する。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0022】
第1の本発明は、前述の式(1)の環状ヘミアセタールと、式(4)の含窒素化合物と、水素とを水素添加触媒の存在下で同時に反応させることにより、式(1)の環状ヘミアセタールから一反応工程で式(2)のアミノアルコールを製造する方法である。また、第2の本発明は、前述の式(1)の環状ヘミアセタールを、まず式(4)の含窒素化合物と反応させ、その後、水素添加触媒の存在下で更に水素と反応させることにより、式(1)の環状ヘミアセタールから二反応工程で式(2)のアミノアルコールを製造する方法である。
【0023】
まず、第1の本発明並びに第2の本発明において使用する原材料について説明する。
【0024】
原料物質の一つである式(1)の環状ヘミアセタールは、具体的には2−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロピラン(n=1の場合)又は2−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロフラン(n=0の場合)である。
【0025】
本発明で使用する環状ヘミアセタールは、公知の方法により合成することが可能である。その中でも、式(3)
【0026】
【化14】
Figure 0004596090
【0027】
(式中、nは0又は1を表す)
で示されるアルケノール系化合物をヒドロホルミル化反応することからなる環状ヘミアセタールの合成法は、工業的規模で安価に製造可能となるため好ましい。式(3)においてn=1である場合に相当するアルケノール系化合物は2−メチル−1−ブテン−4−オールであり、n=0である場合に相当するアルケノール系化合物は2−メチル−1−プロペン−3−オールである。
【0028】
上記の式(3)で示されるアルケノール系化合物のヒドロホルミル化反応では、公知の方法に準じた様々な反応方法を用いることが可能であるが、特に、式(3)のアルケノール系化合物をロジウム化合物及び第3級有機リン化合物の存在下で一酸化炭素及び水素と反応させることからなる方法を好ましく適用することができる。例えば、特開昭60−19781号公報、特開昭60−204778号公報、特開昭60−204779号公報、特開昭62−201881号公報等には2−メチル−1−ブテン−4−オールのヒドロホルミル化方法が記載され、また、特開平3−261776号公報、特開平9−52888号公報には2−メチル−1−プロペン−3−オールのヒドロホルミル化方法が記載されている。
【0029】
なお、式(3)のアルケノール系化合物のヒドロホルミル化反応により得られた環状ヘミアセタールを本発明における原料物質として使用する場合、ヒドロホルミル化反応によって得られた反応混合液を蒸留、再結晶などの分離・精製操作に付して得られた環状ヘミアセタールの精製物を使用することができるが、環状ヘミアセタール、ロジウム化合物、第3級有機リン化合物、反応副生成物などを含有するヒドロホルミル化反応混合液の形態のものをそのまま使用しても、また反応混合液を簡単な分離操作に付して得られた粗環状ヘミアセタールを使用してもよい。
【0030】
原料物質の一つである式(4)の含窒素化合物は、アンモニア(Rが水素原子である場合)及び第1級アミン(Rが置換基を有してもよい1価の飽和炭化水素基であるか、又は置換基を有してもよい1価の芳香族基である場合)を包含する。
【0031】
式(4)の含窒素化合物がアンモニアである場合、液体アンモニア又はアンモニア水のどちらを用いることも可能である。
【0032】
また、式(4)の含窒素化合物が第1級アミンである場合、式(4)中のRは、前述したように、置換基を有してもよい1価の飽和炭化水素基、又は置換基を有してもよい1価の芳香族基を表す。ここで、Rの置換基を有してもよい1価の飽和炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基などの置換基を有しないアルキル基;シクロヘキシル基、2−メチルシクロヘキシル基、シクロオクチル基などの置換基を有しないシクロアルキル基;上記例示のアルキル基又はシクロアルキル基の少なくとも一部の水素原子がアルコシキ基(例:メトキシ基、エトキシ基など)、アセタール型に保護されたホルミル基、水酸基、二置換アミノ基(例:ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、モルホリノ基など)等で置換された形の化学構造を有する、置換基を有するアルキル基(例:2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基など)又は置換基を有するシクロアルキル基などが挙げられる。また、Rの置換基を有してもよい1価の芳香族基としては、例えば、フェニル基、トリル基、メシチル基、ナフチル基などの置換基を有しないアリール基;ベンジル基、フェネチル基などの置換基を有しないアラルキル基、ピリジル基などの芳香族複素環基;上記例示のアリール基、アラルキル基又は芳香族複素環基の少なくとも一部の水素原子がアルコシキ基、アセタール型に保護されたホルミル基、水酸基、二置換アミノ基等で置換された形の化学構造を有する、置換基を有するアリール基、置換基を有するアラルキル基又は置換基を有する芳香族複素環基などが挙げられる。なお、上記芳香族基に含有される炭素数は6〜14の範囲内であることが好ましい。
【0033】
このような式(4)の含窒素化合物に包含される第1級アミンの具体例としては、メチルアミン、エチルアミン、イソプロピルアミン、プロピルアミン、イソブチルアミン、ブチルアミン、t−ブチルアミン、オクチルアミン、(2−エチルヘキシル)アミン、シクロヘキシルアミン、N−(3−アミノプロピル)モルホリン、アニリン、o−トルイジン、m−トルイジン、p−トルイジン、p−フェネチジン、メシジン、4−アミノ−3−メチル−N,N−ジエチルアニリン、2−アミノピリジン、3−アミノピリジン、4−アミノピリジン、α−ナフチルアミン、ベンジルアミン、フェネチルアミン、エタノールアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、3−(ジメチルアミノ)プロピルアミン、3−メトキシプロピルアミンなどが挙げられる。
【0034】
なお、これらの第1級アミンは、塩の形態であってもよい。使用可能な塩としては、例えば、第1級アミンと塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、プロピオン酸等のプロトン酸とから形成される塩などが挙げられる。該塩の代表例としては、メチルアンモニウムクロライド、硫酸ジ(メチルアンモニウム)、硝酸(メチルアンモニウム)、酢酸メチルアンモニウム、プロピオン酸メチルアンモニウムなどが挙げられる。
【0035】
次に、第1の本発明について説明する。
【0036】
第1の本発明は、前述したように、式(1)の環状ヘミアセタールと、式(4)の含窒素化合物(アンモニア又は第1級アミン)と、水素とを水素添加触媒の存在下で同時に反応させることにより、式(1)の環状ヘミアセタールから一反応工程で式(2)のアミノアルコールを製造する方法である。
【0037】
第1の本発明においては、式(1)の環状ヘミアセタールに対する式(4)の含窒素化合物の使用割合は必ずしも限定されない。しかし、式(1)の環状ヘミアセタールは、アルデヒドの等価体であるため、それと式(4)の含窒素化合物と水素との反応操作において、式(4)の含窒素化合物と反応することなく水素添加されてしまう可能性や自己縮合してしまう可能性もあり、製造時の経済性が低下することが懸念される。従って、意図しない水素添加反応や自己縮合反応を抑制し、且つ反応器の容積効率を考慮すると、式(4)の含窒素化合物の使用量は、使用する環状ヘミアセタール1モルに対し、好ましくは0.9〜50モル、より好ましくは1〜20モルの範囲である。
【0038】
アンモニアを反応系に仕込む際、該アンモニアの形態は必ずしも限定されるものではなく、アンモニアをそのまま仕込んでもよく、溶媒で希釈して仕込んでもよい。アンモニア希釈用の溶媒の具体例としては、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられ、これらの溶媒を単独で又は2種類以上混合して用いることができる。
【0039】
また、第1級アミン(もしくはその塩)を反応系に仕込む際、該第1級アミンの形態は必ずしも限定されるものではなく、第1級アミンをそのまま仕込んでもよく、溶媒で希釈して仕込んでもよい。第1級アミン希釈用の溶媒の具体例としては、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられ、これらの溶媒を単独で又は2種類以上混合して用いることができる。
【0040】
なお、第1級アミンとして、第1級アミンとプロトン酸とから形成される塩を使用する場合、反応系中に塩基性化合物を存在させると好結果が得られることがある。このような塩基性化合物の具体例としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、ピリジンなどが挙げられる。このような塩基性化合物を使用する場合、その使用量は、通常、第1級アミンの塩1モルに対して10モル以下となる割合であり、好ましくは2モル以下となる割合である。
【0041】
第1の本発明において使用する水素添加触媒としては、一般に接触水素添加反応に用いられるような触媒を使用することができ、例えば、パラジウム、ロジウム、ニッケル、白金等の金属を活性成分とする触媒を挙げることができる。
【0042】
これらの水素添加触媒の形態としては、活性成分となる金属そのもの;その金属酸化物;その金属と他の金属との合金;活性成分となる金属(酸化物、合金でもよい)を活性炭、アルミナ、シリカゲル、ケイソウ土などの担体上に担持させてなる担体付き触媒等のいずれであってもよい。水素添加触媒の使用量は、必ずしも限られるものではないが、式(1)の環状ヘミアセタール1重量部に対して0.0001〜0.2重量部の範囲内が好ましく、反応速度及び目的とするアミノアルコールの製造コストの観点からは、0.005〜0.1重量部の範囲内であることがより好ましい。
【0043】
溶媒の使用は必ずしも必要ではないが、所定の反応に悪影響を及ぼさない限り溶媒を使用しても差し支えない。使用可能な溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール、1−ブタノール、1−オクタノール等のアルコール系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒などが挙げられ、1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。溶媒を使用する場合、その使用量は、通常、式(1)で示される環状ヘミアセタール1重量部に対して0.1〜10重量部の範囲内である。
【0044】
水素を、式(1)の環状ヘミアセタール、式(4)の含窒素化合物及び水素添加触媒を含有する混合物と接触させる形態としては、例えば、該混合物を存在させた反応系の雰囲気中に水素ガスを存在させることからなる形態、その混合物中に水素ガスを導入(バブリング)することからなる形態などが挙げられる。反応系中における水素の分圧は、必ずしも限られるものではないが、通常は0.5〜150気圧(絶対圧)の範囲内である。なお、所定の反応に悪影響を及ぼさない限りにおいて、反応系の気相部に水素以外の気体(例えば、窒素、アルゴン等)が含有されていてもよい。
【0045】
反応温度は必ずしも限定されるものではないが、20〜180℃の範囲内の温度が採用され、反応速度の高さ及び目的とするアミノアルコールへの選択率の高さの観点から40〜140℃の範囲内の温度を採用するのが好ましい。
【0046】
反応の所要時間は必ずしも限定されるものではなく、例えば、ガスクロマトグラフィー等の定量分析手段で求められた環状ヘミアセタールの転化率及び/又は生成アミノアルコールへの選択率に基づき、反応時間(連続式反応操作の場合には滞留時間)を適宜設定することができるが、通常は0.5〜20時間の範囲内である。
【0047】
反応の操作は、所望に応じて各種の方法を採用することができる。該反応は特殊な装置(例えば高温高圧釜)を使用しなくても行うことができ、例えば、汎用的な装置を使用して、式(1)の環状ヘミアセタール、式(4)の含窒素化合物及び水素添加触媒を、所定の圧力の水素ガス雰囲気下及び所定の温度の条件下で、撹拌等の手段により混合することによって、回分式、半回分式又は連続式で反応を行うことができる。反応に際して、各成分の混合順序や混合速度についての制限は特になく、反応に供する液体又は固体の成分のすべて(即ち、環状ヘミアセタール、含窒素化合物及び水素添加触媒)を一度に混合したうえで反応を開始させてもよく、あるいは環状ヘミアセタール及び含窒素化合物のうち一方の成分と水素添加触媒を反応器に仕込み、残りの成分を反応器内に添加しながら反応させてもよい。後者の場合、反応中に一部の成分を添加する形態としては、連続的添加、複数回に分けての断続的添加等の種々の形態を採用することができる。
【0048】
反応中のほとんどの期間にわたって式(4)の含窒素化合物を式(1)の環状ヘミアセタールに対して大過剰となる割合で反応系中に存在させるような手段を選ぶ場合には、式(1)の環状ヘミアセタール同士の縮合などによる副反応を抑制でき、目的とするアミノアルコールの収率及び選択率を高めることができる。その点においては、式(4)の含窒素化合物と水素添加触媒との混合物中に環状ヘミアセタールを添加しながら反応を行うことからなる半回分式での反応操作、式(1)の環状ヘミアセタール、式(4)の含窒素化合物及び水素添加触媒を反応系に連続的に供給するとともに、反応混合物の一部を反応系から連続的に抜き取りながら反応を行うことからなる連続式での反応操作などが好ましい。
【0049】
反応の終了後、目的物である上記式(2)のアミノアルコールは、例えば、得られた反応混合物から水素添加触媒を濾過あるいは遠心分離などによって除き、次いで得られた混合液を蒸留、晶析、カラムクロマトグラフィーなどの分離・精製操作に供することにより、高純度で得ることができる。
【0050】
次に、第2の本発明の製造方法について説明する。
【0051】
第2の本発明の製造方法は、前述したように、式(1)の環状ヘミアセタールを、まず式(4)の含窒素化合物と反応させ、その後、水素添加触媒の存在下で更に水素と反応させることにより、式(1)の環状ヘミアセタールから二反応工程で式(2)のアミノアルコールを製造する方法である。ここで、式(1)の環状ヘミアセタールを式(4)の含窒素化合物と反応させると、少なくとも該含窒素化合物が第1級アミンである場合(Rが置換基を有してもよい1価の飽和炭化水素基又は置換基を有してもよい1価の芳香族基である場合)には、式(5)
【0052】
【化15】
Figure 0004596090
【0053】
(式中、n及びRは前述のとおりである)
で示されるアミノエーテルが生成していると思われる。
【0054】
第2の本発明における式(1)の環状ヘミアセタールと式(4)の含窒素化合物との反応においては、水素及び水素添加触媒が不要である点を除き、第1の本発明の製造方法における水素添加触媒存在下での式(1)の環状ヘミアセタール、式(4)の含窒素化合物及び水素の反応とほぼ同様にして行うことができる。即ち、第2の本発明における式(1)の環状ヘミアセタールと式(4)の含窒素化合物との使用割合、式(4)の含窒素化合物の使用形態(そのままの形態か塩の形態か溶液の形態かの点など)、使用する式(4)の含窒素化合物が第1級アミンの塩の形態である場合に任意に使用可能な塩基性化合物の種類及び量、任意に使用可能な溶媒の種類及び量、反応温度、反応時間(ただし、反応時間を設定する場合の判断基準は、式(1)の環状ヘミアセタールの転化率である)、反応用装置、環状ヘミアセタールと含窒素化合物の添加順序(一括添加か、連続的又は断続的添加かの点)、反応様式(回分式か半回分式か連続式かの点)などについての条件は、第1の本発明と同様とすることができる。
【0055】
但し、式(1)の環状ヘミアセタールと式(4)の含窒素化合物とを反応させる場合、生成する水を反応系外に除去しながら行うことが、反応が促進される点で好ましい場合がある。生成する水を反応中に除去するための方法としては、水を系外に留出させる方法、水を乾燥剤に物理的又は化学的に吸収させる方法などを採用することができる。水を系外に留出させる方法を採用する場合、ベンゼン、トルエン、ペンタン、シクロヘキサン、石油エーテル等の水と共沸混合物を形成し得る有機溶媒を反応系に存在させ、該有機溶媒との共沸混合物の形態で水を留出させることが好ましい。また、水を乾燥剤に吸収させる方法を採用する場合、乾燥剤としては、モレキュラーシーブス、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム等の物理的乾燥剤;水素化カルシウム、水素化アルミニウムリチウム等の化学的乾燥剤などを使用することができる。なお、水を有機溶媒との共沸混合物の形態で反応系から除去する場合、取得された共沸混合物を相分離、乾燥剤との接触などの処理に付した後、回収された有機溶媒を反応系に供給し再使用することができる。
【0056】
なお、第2の本発明において、式(1)の環状ヘミアセタールと式(4)の含窒素化合物との反応の終了後、得られた反応混合物を蒸留、晶析、カラムクロマトグラフィーなどの分離・精製操作に供することにより反応生成物を単離できる場合があるが、その安定性が低い場合には、反応混合物をそのまま、又は濃縮等の簡単な処理操作を施した後に、水素添加反応に供することが好ましい。
【0057】
第2の本発明における上記反応混合物の水素添加反応としては、通常のエナミンの水素添加において使用し得る水素添加反応方法を採用することができるが、反応混合物を水素添加触媒の存在下において水素と反応させる方法が工業的に有利である。使用可能な水素添加触媒としては、例えば、パラジウム、ロジウム、ニッケル、白金等の金属を活性成分とする触媒を挙げることができる。これらの水素添加触媒の形態としては、活性成分となる金属そのもの;その金属酸化物;その金属と他の金属との合金;活性成分となる金属(酸化物、合金でもよい)を活性炭、アルミナ、シリカゲル、ケイソウ土などの担体上に担持させてなる担体付き触媒等のいずれであってもよい。水素添加触媒の使用量は、必ずしも限られるものではないが、通常は出発物質の式(1)の環状ヘミアセタール1重量部に対して0.0001〜0.2重量部の範囲内が好ましく、反応速度及び目的とするアミノアルコールの製造コストの観点からは、0.005〜0.1重量部の範囲内であることがより好ましい。
【0058】
第2の本発明における水素添加反応において、溶媒の使用は必ずしも必要ではないが、所定の反応に悪影響を及ぼさない限り溶媒を使用しても差し支えない。使用可能な溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール、1−ブタノール、1−オクタノール等のアルコール系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒などが挙げられ、1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。溶媒を使用する場合、その使用量は、通常、出発物質の式(1)の環状ヘミアセタール1重量部に対して0.1〜10重量部の範囲内である。
【0059】
第2の本発明における水素添加反応において、水素を、水素添加触媒を含有する反応混合物と接触させるが、その接触の形態としては、例えば、該混合物を存在させた反応系の雰囲気中に水素ガスを存在させることからなる形態、該混合物中に水素ガスを導入(バブリング)することからなる形態などが挙げられる。反応系中における水素の分圧は、必ずしも限られるものではないが、通常は0.5〜100気圧(絶対圧)の範囲内である。なお、所定の反応に悪影響を及ぼさない限りにおいて、反応系の気相部に水素以外の気体(例えば、窒素、アルゴン等)が含有されていてもよい。
【0060】
第2の本発明において、水素添加反応における反応温度は必ずしも限られるものではないが、通常は20〜180℃の範囲内の温度が採用され、反応速度の高さ及び目的とするアミノアルコールへの選択率の高さの観点からは、40〜140℃の範囲内の温度を採用することが好ましい。
【0061】
反応の所要時間は必ずしも限定されるものではなく、例えば、ガスクロマトグラフィー等の定量分析手段で求められた生成アミノアルコールへの選択率に基づき、反応時間(連続式反応操作の場合には滞留時間)を適宜設定することができるが、通常は0.5〜20時間の範囲内である。
【0062】
第2の本発明における水素添加反応の操作としては、所望に応じて各種の方法を採用することができる。該反応は特殊な装置(例えば高温高圧釜)を使用しなくても行うことができ、例えば、汎用的な装置を使用して、式(1)の環状ヘミアセタールと式(4)の含窒素化合物との反応混合物及び水素添加触媒を、水素ガス雰囲気下、かつ所定の温度及び所定の水素圧力の条件下で、攪拌等の手段により混合することによって、回分式、半回分式又は連続式で反応を行うことができる。
【0063】
なお、第2の本発明における水素添加反応のために、式(1)の環状ヘミアセタールと式(4)の含窒素化合物との反応混合物を使用し、かつ、該反応混合物中に未反応の環状ヘミアセタール及び含窒素化合物が残存している場合、これらの未反応原料が水素添加反応系中で式(2)のアミノアルコールに転化することがある。このような場合にも本発明に包含されることは言うまでもない。
【0064】
水素添加反応の終了後、目的物である式(2)のアミノアルコールは、例えば、得られた反応混合物から水素添加触媒を濾過あるいは遠心分離などによって除き、次いで得られた混合液を蒸留、晶析、カラムクロマトグラフィーなどの分離・精製操作に供することにより、高純度で得ることができる。
【0065】
以上説明した第1及び第2の本発明の製造方法によって得られる式(2)のアミノアルコールは、その水酸基とアミノ基との間が4個又は5個の炭素原子を含む主鎖で連結されており、且つ第1級又は第2級アミンに分類されるアミノアルコールである。このアミノアルコールは、その化学構造に由来して、染料原料、乳化剤、防錆剤、中和剤、pH調節剤、靴墨原料、合成洗剤、繊維助剤、有機溶剤、切削油、ワックス原料、塗料原料、印刷インキ原料、凝集剤原料、接着剤原料、つやだし剤、ガス精製剤、潤滑油添加剤、ウレタン発泡触媒、アゾ染料緩性揮発剤、アニオン交換樹脂原料、燃料油スラッジ防止剤、燃料油スラッジ分散剤、ワックス類乳化剤、繊維処理剤原料、エポキシ樹脂低温重合促進剤、エポキシ樹脂硬化促進剤、水溶性塗料合成樹脂可溶化剤、エマルジョンペイントアルカリ安定化剤、ウレタンコーティング触媒、繊維の柔軟剤原料、ゴム安定剤、ゴム強度向上剤、紙加工剤原料などの幅広い用途に使用可能である。
【0066】
なお、第1及び第2の本発明の製造方法により得られる式(2)のアミノアルコールの中で、5−アミノ−3−メチル−1−ペンタノール、4−(メチルアミノ)−2−メチル−1−ブタノール、5−(メチルアミノ)−3−メチル−1−ペンタノールは新規化合物であり、幅広い分野での利用が期待できる。
【0067】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はかかる実施例によりなんら制限されるものではない。
【0068】
実施例1:[2−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロピラン、アンモニア及び水素の反応]
ガス導入口及びサンプリング口を備えた内容積300ミリリットルの電磁攪拌式オートクレーブ中に、ラネーニッケル1.7g、2−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロピラン36.0g(95%純度、295mmol)、25%アンモニア水溶液100g(アンモニアとして1470mmol、2−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロピランに対して5倍モル)、及び1−オクタノール30gを入れ、内部の雰囲気を水素ガスで置換した後、水素を2.0気圧(ゲージ圧)とした。次に、混合物の温度を80℃まで昇温した。80℃に到達した時点において、オートクレーブ内の圧力は約3.0気圧(ゲージ圧)となった。更に、水素ガスを導入することによってオートクレーブ内の圧力を5気圧(ゲージ圧)とした。
【0069】
この状態で6時間反応を続けることによって、反応を追込んだ。なお、これらの反応期間中、オートクレーブ内の圧力が5気圧(ゲージ圧)に保たれるように水素ガスを常時供給することにより、反応に伴って消費された水素を補給した。
また、これらの期間中、反応温度を80℃に維持した。
【0070】
反応終了後、オートクレーブを冷却し、内液を抜き取り、ラネーニッケルを濾過により除去することによって、濾液を得た。この濾液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、原料である2−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロピランのピークは確認されず、5−アミノ−3−メチル−1−ペンタノールが32.1g(274mmol)(2−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロピラン基準転化率:100%;選択率:93%;収率:93%)含まれていることが分かった。なお、ガスクロマトグラフィーでの分析条件は、以下のとおりである。
【0071】
カラム:G−300(商品名:化学品検査協会製)
カラム温度:100℃で4分保持した後、12℃/分の速度で220℃まで昇温
検出器:FID
【0072】
上記で得られた濾液を蒸留精製したところ、5−アミノ−3−メチル−1−ペンタノールが18.6g得られた(沸点:101℃(0.8mmHg))。この化合物のNMRデータを以下に示す。
【0073】
1H−NMR:δ(ppm):0.91(d;3H,J=6Hz)、1.23−1.79(m;5H)、2.18(s;3H)、2.64−2.83(m;2H)、3.56−3.73(m;2H)
【0074】
実施例2:[2−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロフラン、アンモニア及び水素の反応]
2−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロピランに代えて2−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロフランを30.1g(295mmol)使用した以外は、実施例1に準じて反応操作及び後処理操作を行った。その結果、原料である2−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロフランのピークは確認されず、4−アミノ−2−メチル−1−ブタノールが28.0g(271mmol)(2−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロフラン基準転化率:100%;選択率:92%;収率:92%)含まれていることが分かった。
【0075】
実施例3:[2−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロフラン、アンモニア及び水素の反応]
ガス導入口及びサンプリング口を備えた内容積300ミリリットルの電磁攪拌式オートクレーブ中に、ラネーニッケル1.2g、2−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロフランを62.0g(608mmol)、25%アンモニア水溶液62.0g(アンモニアとして912mmol、2−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロフランに対して1.5倍モル)、内部の雰囲気を水素ガスで置換した後、水素を2.0気圧(ゲージ圧)とし、80℃まで昇温した。80℃に到達した時点において、圧力は約3.0気圧(ゲージ圧)となった。水素ガスを導入することによってオートクレーブ内の圧力を5気圧(ゲージ圧)とした。
【0076】
この状態で8時間反応を続けることによって、反応を追込んだ。なお、これらの反応期間中、オートクレーブ内の圧力が5気圧(ゲージ圧)に保たれるように水素ガスを常時供給することにより、反応に伴って消費された水素を補給した。
また、これらの期間中、反応温度を80℃に維持した。
【0077】
反応終了後、オートクレーブを冷却し、内液を抜き取り、ラネーニッケルを濾過により除去することによって、濾液を得た。この濾液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、原料である2−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロフランのピークは確認されず、4−アミノ−2−メチル−1−ブタノールが55.1g(535mmol)(2−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロフラン基準転化率:100%;選択率:88%;収率:88%)含まれていることが分かった。
【0078】
実施例4:[2−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロピラン、アンモニア及び水素の反応]
ガス導入口及びサンプリング口を備えた内容積300ミリリットルの電磁攪拌式オートクレーブ中に、ケイソウ土に担持されたニッケル触媒(ニッケル含有率52%)4.0g、及び1−ブタノール15ミリリットルを入れ、オートクレーブ内を10気圧(ゲージ圧)の水素で3回置換した。次にアンモニアを64.2g(3.8mol)加え、水素を分圧として10気圧(ゲージ圧)相当加え、オートクレーブを140℃に昇温した。このときオートクレーブ内圧は125気圧(ゲージ圧)を示していた。ここへ水素を供給することにより全圧を140気圧(ゲージ圧)とした。そこへ2−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロピラン65.9g(純度95%、540mmol)を1時間かけてフィードし、続けて4時間かけて反応を追い込んだ。このとき、2−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロピランをフィード開始して以降の反応期間中、オートクレーブ内の圧力が140気圧(ゲージ圧)に保たれるように水素ガスを常時供給することにより、反応に伴って消費された水素を補給した。また、これらの期間中、反応温度を140℃に維持した。
【0079】
反応終了後、オートクレーブを冷却し、アンモニア放圧後内液を抜き取り、ニッケル触媒を濾過により除去することによって、濾液を得た。この濾液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、原料である2−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロピランのピークは確認されず、5−アミノ−3−メチル−1−ペンタノールが60.8g(520mmol)(2−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロピラン基準転化率:100%;選択率:96%;収率:96%)含まれていることが分かった。
【0080】
実施例5:[2−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロフラン、アンモニア及び水素の反応]
2−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロピランのかわりに2−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロフランを55.1g(540mmol)使用した以外は実施例4と同様に反応を行った。
【0081】
反応終了後、反応濾液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、原料である2−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロフランのピークは確認されず、4−アミノ−2−メチル−1−ブタノールが52.7g(512mmol)(2−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロフラン基準転化率:100%;選択率:95%;収率:95%)含まれていることが分かった。
【0082】
実施例6:[2−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロフラン、メチルアミン及び水素の反応]
ガス導入口及びサンプリング口を備えた内容積300ミリリットルの電磁攪拌式オートクレーブ中に、ラネーニッケル1.7g、2−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロフラン40.0g(95%純度、373mmol)、及び40%メチルアミン水溶液43.3g(メチルアミンとして559mmol、2−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロフランに対して1.5倍モル)を入れ、内部の雰囲気を水素ガスで置換した後、水素を2.0気圧(ゲージ圧)とし、80℃まで昇温した。80℃に到達した時点において、圧力は約3.0気圧(ゲージ圧)となった。水素ガスを導入することによってオートクレーブ内の圧力を5気圧(ゲージ圧)とした。
【0083】
この状態で6時間反応を続けることによって、反応を追込んだ。なお、これらの反応期間中、オートクレーブ内の圧力が5気圧(ゲージ圧)に保たれるように水素ガスを常時供給することにより、反応に伴って消費された水素を補給した。また、これらの期間中、反応温度を80℃に維持した。
【0084】
反応終了後、オートクレーブを冷却し、内液を抜き取り、ラネーニッケルを濾過により除去することによって、濾液を得た。この濾液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、原料である2−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロフランのピークは確認されず、4−(メチルアミノ)−2−メチル−1−ブタノールが40.1g(343mmol)(2−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロフラン基準転化率:100%;選択率:92%;収率:92%)含まれていることが分かった。なお、ガスクロマトグラフィーでの分析条件は、以下のとおりである。
【0085】
カラム:G−300(商品名:化学品検査協会製)
カラム温度:100℃で4分保持した後、12℃/分の速度で220℃まで昇温
検出器:FID
【0086】
上記で得られた濾液を蒸留精製したところ、4−(メチルアミノ)−2−メチル−1−ブタノールが28.3g得られた(沸点:74℃(2mmHg))。この化合物のNMRデータを以下に示す。
【0087】
1H−NMR:δ(ppm):0.89(d;3H,J=6Hz)、1.64−2.03(m;3H)、2.15−2.98(m;2H)、2.40(s;3H)、3.77(s;2H)、3.09−4.17(m;2H)
【0088】
実施例7:[2−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロピラン、メチルアミン及び水素の反応]
2−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロフランに代えて2−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロピランを47.5g(373mmol)使用した以外は、実施例6に準じて反応操作及び後処理操作を行った。その結果、原料である2−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロピランのピークは確認されず、5−(メチルアミノ)−3−メチル−1−ペンタノールが43.4g(332mmol)(2−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロピラン基準転化率:100%;選択率:89%;収率:89%)含まれていることが分かった。
【0089】
上記で得られた濾液を蒸留精製したところ、5−(メチルアミノ)−3−メチル−1−ペンタノールが31.0g得られた(沸点:81℃(2.0mmHg))。この化合物のNMRデータを以下に示す。
【0090】
1H−NMR:δ(ppm):0.82(d;3H,J=6Hz)、1.04−2.00(m;5H)、2.15−2.95(m;2H)、2.40(s;3H)、2.96(s;2H)、3.15−3.77(m;2H)
【0091】
実施例8:
(1)[2−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロピランとブチルアミンとの反応]
攪拌機を備えた内容積300ミリリットルのガラス製3口フラスコの内部雰囲気を窒素ガスで置換した後、2−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロピラン118g(975mmol)及びモレキュラーシーブス60gを入れ、氷水浴で冷却することによって内部液体の温度を2℃にした。ブチルアミン87.8g(1200mmol)を攪拌下の内部液体中に滴下することにより、内部液体の温度を10℃以下に維持しながら、5分間を要して供給した。滴下終了後、10℃でさらに30分間攪拌を継続した。
【0092】
攪拌終了後、得られた反応混合物の溶液部をガスクロマトグラフィーで分析したところ、原料である2−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロピランが3.3g含まれていることがわかった(転化率:97%)。この反応混合物を濾過することによりモレキュラーシーブスを除去し、濾液を210g得た。
【0093】
上記で得られた濾液を蒸留精製したところ、2−(ブチルアミノ)−4−メチルテトラヒドロピランを94.6%含む留分が125g得られた(沸点:94〜8℃(9.0mmHg))。この化合物のNMRデータを以下に示す。
【0094】
1H−NMR:δ(ppm):0.70−2.10(m;15H)、2.35−4.18(m;6H)
【0095】
(2)[得られた反応混合物に対する水素添加反応操作]
得られた留出液のうちの20.0g(111mmol)を、イソプロピルアルコール80ミリリットル及びラネーニッケル(水素添加触媒)2.0gと共に、ガス導入口及びサンプリング口を備えた内容積300ミリリットルの電磁攪拌式オートクレーブ中に入れた。内部の雰囲気を水素ガスで置換した後、水素ガスを供給することにより圧力を約8.0気圧(ゲージ圧)に維持しながら、80℃まで昇温した。そのまま温度を80℃に保ちながら、2時間反応させた。さらに、温度を100℃に上げ、4時間反応を継続することにより、反応の追い込みを行った。なお、これらの反応期間中、水素ガスを常時供給することによってオートクレーブ内の圧力を8.0気圧(ゲージ圧)に維持した。
【0096】
反応終了後、オートクレーブを冷却し、内液を抜き取り、ラネーニッケルを濾過により除去することによって、濾液を得た。この濾液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、5−(ブチルアミノ)−3−メチル−1−ペンタノールが14.7g(85mmol)生成していることがわかった(2−(ブチルアミノ)−4−メチルテトラヒドロピラン基準での収率:77%)。
【0097】
実施例9:
(1)[2−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロフラン、アンモニア及び水素の反応]
攪拌機を備えた内容積300ミリリットルのガラス製3口フラスコの内部雰囲気を窒素ガスで置換した後、2−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロフラン45g(441mmol)を入れ、氷水浴で冷却することによって内部液体の温度を2℃にした。25%アンモニア水溶液90g(アンモニアとして1324mmol、2−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロフランに対して3倍モル)を攪拌下の内部液体中に滴下することにより、内部液体の温度を10℃以下に維持しながら、10分間を要して供給した。滴下終了後、10℃でさらに30分間攪拌を継続した。
【0098】
攪拌終了後、得られた反応混合物の溶液部をガスクロマトグラフィーで分析したところ、原料である2−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロフランが11.6g含まれていることがわかった(転化率:74%)。
【0099】
(2)[得られた反応混合物に対する水素添加反応操作]
得られた混合液すべて(約135g)をラネーニッケル(水素添加触媒)4.1gと共に、ガス導入口及びサンプリング口を備えた内容積300ミリリットルの電磁攪拌式オートクレーブ中に入れた。内部の雰囲気を水素ガスで置換した後、水素ガスを供給することにより圧力を約8.0気圧(ゲージ圧)に維持しながら、80℃まで昇温した。そのまま温度を80℃に保ちながら、8時間反応させた。これらの反応期間中、水素ガスを常時供給することによってオートクレーブ内の圧力を8.0気圧(ゲージ圧)に維持した。
【0100】
反応終了後、オートクレーブを冷却し、内液を抜き取り、ラネーニッケルを濾過により除去することによって、濾液を得た。この濾液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、4−アミノ−2−メチル−1−ブタノールが36.9g(358mmol)生成していることがわかった(2−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロフラン基準での収率:81%)。
【0101】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、水酸基とアミノ基との間が4個又は5個の炭素原子を含む主鎖で連結されており、且つ第1級アミン又は第2級アミンに分類されるアミノアルコールを、入手及び取扱いが容易な原料から高収率で製造することができ、しかも特殊な反応装置、特殊な反応条件及び煩雑な後処理操作は不必要である。したがって、本発明によって、上記のアミノアルコールを工業的に有利に製造し得る方法が提供される。

Claims (7)

  1. 式(1)
    Figure 0004596090
    (式中、nは0又は1を表す)
    で示される環状ヘミアセタール、式(4)
    Figure 0004596090
    (式中、Rは水素原子、置換基を有してもよい1価の飽和炭化水素基又は置換基を有してもよい1価の芳香族基を表す)
    で示される含窒素化合物及び水素を、水素添加触媒の存在下で反応させて式(2)
    Figure 0004596090
    (式中、n及びRは上記定義のとおりである)
    で示されるアミノアルコールを得ることを特徴とするアミノアルコールの製造方法。
  2. 環状ヘミアセタール1モルに対し、含窒素化合物を0.9〜50モル反応させる請求項1記載の製造方法。
  3. 環状ヘミアセタール1モルに対し、含窒素化合物を1〜20モル反応させる請求項1記載の製造方法。
  4. 式(3)
    Figure 0004596090
    (式中、nは上記定義のとおりである)
    で示されるアルケノール系化合物をロジウム化合物及び第3級有機リン化合物の存在下で一酸化炭素及び水素と反応させることにより式(1)で示される環状ヘミアセタールを得、該環状ヘミアセタールを含窒素化合物との反応に使用する請求項1〜のいずれかに記載の製造方法。
  5. 5−アミノ−3−メチル−1−ペンタノール。
  6. 4−(メチルアミノ)−2−メチル−1−ブタノール。
  7. 5−(メチルアミノ)−3−メチル−1−ペンタノール。
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