JP4472058B2 - アミノアルコールの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アミノアルコールの製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、水酸基とアミノ基との間のアルキレン基の主鎖の炭素原子数が4または5であり、かつ3級アミンに分類されるアミノアルコールの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、3級アミンに分類されるアミノアルコールとしては、2−(ジメチルアミノ)エタノール、2−(ジエチルアミノ)エタノール、2−(ジブチルアミノ)エタノールなどのエタノールアミン類が工業的に製造されている。また、N−アルキルジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのエタノールアミン類も現在、工業的に供給可能なアミノアルコールである。これらのエタノールアミン類は、アルキルアミンもしくはアンモニアとエチレンオキサイドとを反応させることにより合成されている(例えば、特開平9−20733号公報等参照)。
3級アミンに分類されるアミノアルコールのうちエタノールアミン類以外のものは工業的に製造されてはいないが、例えば、4−(ジメチルアミノ)−1−ブタノールの合成方法として下記(i)、(ii)などの報告がある。
【0003】
(i)J.Org.Chem., 22,1225(1957)には、シールチューブ中にγ−ブチロラクトンとジメチルアミンを入れ、150℃で4時間反応させることによってN,N−ジメチル−γ−ヒドロキシブチルアミドを形成させ、次いで、これに、エーテル溶媒中でリチウムアルミニウムヒドリドを反応させることにより4−(ジメチルアミノ)−1−ブタノールを得たことが記載されている。
【0004】
(ii)西ドイツ特許第857501号明細書には、N,N−ジメチルスクシンアミド酸にリチウムアルミニウムヒドリドを作用させることにより、4−(ジメチルアミノ)−1−ブタノールを得たことが記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記のエタノールアミン類の合成方法では、原料のエチレンオキサイドの環内炭素原子数が2であることに由来して、得られるアミノアルコールにおける水酸基とアミノ基との間のアルキレン基の主鎖の炭素原子数は必然的に2に限られる。
水酸基とアミノ基との間のアルキレン基の主鎖の炭素原子数が3以上であるアミノアルコールについては、上記(i)、(ii)などの合成法が報告されているものの、いずれの合成法も工業的に実施する観点に立てば、反応原料、反応時間、反応後の処理、反応設備などの点で問題点を含んでいる。例えば、上記(i)および(ii)の方法では、いずれも、取り扱いが煩雑であり、かつ高価であるリチウムアルミニウムヒドリドを用いなければならず、工業的に有利な方法であるとは言い難い。
【0006】
しかして、本発明は、水酸基とアミノ基との間のアルキレン基の主鎖の炭素原子数が3以上、とりわけ4または5、であり、かつ3級アミンに分類されるアミノアルコールを、工業的に有利に製造することのできる方法を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、上記の課題は下記の製造方法(A)または(B)を提供することによって解決される。
【0008】
[製造方法(A)]
式(1)
【0009】
【化10】
【0010】
(式中、nは0または1を表し;R1およびR2は、それぞれ、水素原子、置換基を有してもよい1価の飽和炭化水素基または置換基を有してもよい1価の芳香族基を表すか、またはR1とR2が互いに結合して置換基を有してもよい2価の飽和炭化水素基を表し;R3およびR5は、それぞれ、水素原子、置換基を有してもよい1価の飽和炭化水素基または置換基を有してもよい1価の芳香族基を表し;R4は、メチル基を表す。ここで置換基とは、アルコキシ基、または水酸基のことを表す。また、1価の飽和炭化水素基とはアルキル基またはシクロアルキル基を表し、1価の芳香族基とはアリール基、芳香族複素環基、またはアラルキル基を表し、2価の飽和炭化水素基とはアルキレン基のことを表す。)
【0011】
で示される環状ヘミアセタール、式(2)
【0012】
【化11】
【0013】
(式中、R6およびR7は、それぞれ、置換基を有してもよい1価の飽和炭化水素基または置換基を有してもよい1価の芳香族基を表すか、またはR6とR7が互いに結合して置換基を有してもよい2価の飽和脂肪族基を表す。ここで置換基とは、アルコキシ基、水酸基またはピリミジニル基のことを表す。また、1価の飽和炭化水素基とはアルキル基またはシクロアルキル基を表し、1価の芳香族基とはアリール基またはアラルキル基を表し、2価の飽和炭化水素基とはアルキレン基またはヘテロ原子含有アルキレン基のことを表す。)
【0014】
で示される2級アミンおよび水素を、水素添加触媒の存在下で反応させることを特徴とする、式(3)
【0015】
【化12】
【0016】
(式中、n、R1、R2、R3、R4、R5、R6およびR7は上記定義のとおりである。)
【0017】
で示されるアミノアルコールの製造方法。
【0018】
[製造方法(B)]
上記式(1)で示される環状ヘミアセタールを上記式(2)で示される2級アミンと反応させることによって、式(4)
【0019】
【化13】
【0020】
(式中、n、R1、R2、R3、R4、R5、R6およびR7は上記定義のとおりである。)
【0021】
で示されるアミノエーテルを得;次いで、該アミノエーテルを水素添加することを特徴とする、上記式(3)で示されるアミノアルコールの製造方法。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0023】
本発明に従う上記製造方法(A)および(B)は、上記式(1)で示される環状ヘミアセタールおよび上記式(2)で示される2級アミンを主たる原料物質として使用し、上記式(3)で示されるアミノアルコールを目的物質とする点で共通している。
【0024】
原料物質の一つである環状ヘミアセタールを表す上記式(1)において、R1およびR2は、それぞれ、水素原子、置換基を有してもよい1価の飽和炭化水素基または置換基を有してもよい1価の芳香族基を表すか、またはR1とR2が互いに結合して置換基を有してもよい2価の飽和炭化水素基を表し;R3、R4およびR5は、それぞれ、水素原子、置換基を有してもよい1価の飽和炭化水素基または置換基を有してもよい1価の芳香族基を表す。
【0025】
ここで、R1、R2、R3、R4およびR5でそれぞれ表されることのある置換基を有してもよい1価の飽和炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基などの置換基を有しないアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−メチルシクロヘキシル基、シクロオクチル基などの置換基を有しないシクロアルキル基;上記例示のアルキル基またはシクロアルキル基の少なくとも一部の水素原子がアルコキシ基、アセタール型に保護されたホルミル基、水酸基等で置換された形の化学構造を有する、置換基を有するアルキル基または置換基を有するシクロアルキル基などが挙げられる。また、R1、R2、R3、R4およびR5でそれぞれ表されることのある置換基を有してもよい1価の芳香族基としては、例えば、フェニル基、トリル基、ナフチル基などの置換基を有しないアリール基;ピリジル基などの置換基を有しない芳香族複素環基;ベンジル基などの置換基を有しないアラルキル基;上記例示のアリール基、芳香族複素環基またはアラルキル基の少なくとも一部の水素原子がアルコキシ基、アセタール型に保護されたホルミル基、水酸基等で置換された形の化学構造を有する、置換基を有するアリール基、置換基を有する芳香族複素環基または置換基を有するアラルキル基などが挙げられる。
【0026】
また、上記式(1)においてR1とR2が互いに結合した形で表されることのある置換基を有してもよい2価の飽和炭化水素基としては、例えば、エチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基等の置換基を有しないアルキレン基;該アルキレン基の少なくとも一部の水素原子がアルコキシ基、アセタール型に保護されたホルミル基、水酸基等で置換された形の化学構造を有する、置換基を有するアルキレン基などが挙げられる。なお、置換基を有してもよい2価の飽和炭化水素基における二つの結合手間に介在する主鎖中の炭素原子(側鎖中の炭素原子を除く)の数は2〜11の範囲内であることが好ましい。
【0027】
環状ヘミアセタールを表す上記式(1)において、nは0または1を表す。nが0を表す場合、式(1)で示される環状ヘミアセタールは5員環(すなわち、テトラヒドロフラン環)の構造を有し、またnが1を表す場合、該環状ヘミアセタールは6員環(すなわち、テトラヒドロピラン環)の構造を有する。
【0028】
上記式(1)で示される環状ヘミアセタールの具体例としては、2−ヒドロキシテトラヒドロピラン、2−ヒドロキシ−3−メチルテトラヒドロピラン、2−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロピラン、2−ヒドロキシ−5−メチルテトラヒドロピラン、2−ヒドロキシ−6−メチルテトラヒドロピラン、2−ヒドロキシ−6−イソブチル−4−メチルテトラヒドロピラン、2−ヒドロキシ−1−オキサスピロ[5.5]ウンデカンなどのピラン系化合物;および2−ヒドロキシテトラヒドロフラン、2−ヒドロキシ−3−メチルテトラヒドロフラン、2−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロフラン、2−ヒドロキシ−5−メチルテトラヒドロフラン、3−エチル−2−ヒドロキシテトラヒドロフラン、5,5−ジメチル−2−ヒドロキシテトラヒドロフラン、3,4−ジメチル−2−ヒドロキシテトラヒドロフラン、3,5−ジメチル−2−ヒドロキシテトラヒドロフラン、2−ヒドロキシ−5−メチル−5−(4−メチルペンチル)テトラヒドロフラン、2−ヒドロキシ−3−(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン、5−シクロヘキシル−2−ヒドロキシテトラヒドロフラン、1−オキサ−2−ヒドロキシスピロ[4.5]デカンなどのフラン系化合物が挙げられる。
【0029】
上記の環状ヘミアセタールは、公知の方法により合成することが可能である。その中でも、式(5)
【0030】
【化14】
【0031】
(式中、n、R1、R2、R3、R4およびR5は上記定義のとおりであり、炭素−炭素二重結合に関する立体配置はE配置またはZ配置である。)
【0032】
で示されるアルケノール系化合物をヒドロホルミル化反応することからなる環状ヘミアセタールの合成法は、工業的規模で安価に製造可能となるため好ましい。式(5)においてnが1である場合に相当するアルケノール系化合物の具体例を示せば、1−ブテン−4−オール、3−ペンテン−1−オール、2−メチル−1−ブテン−4−オール、3−メチル−1−ブテン−4−オール、1−ペンテン−4−オール、4−メチル−1−ペンテン−4−オール、2,6−ジメチル−1−ヘプテン−4−オール、4−シクロヘキシル−1−ブテン−4−オール、1−(2−プロペニル)−1−シクロヘキサノールなどの1−ブテン−4−オール系化合物が挙げられる。また式(5)においてnが0である場合に相当するアルケノール系化合物の具体例を示せば、1−プロペン−3−オール、2−メチル−1−プロペン−3−オール、1−ブテン−3−オール、3−メチル−1−ブテン−3−オール、2−ブテン−1−オール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−メチル−2−ブテン−1−オール、3,7−ジメチル−1−オクテン−3−オール、3−シクロヘキシル−1−プロペン−3−オール、1−ビニル−1−シクロヘキサノールなどの1−プロペン−3−オール系化合物が挙げられる。
【0033】
上記の式(5)で示されるアルケノール系化合物のヒドロホルミル化反応では、公知の方法に準じた様々な反応方法を用いることが可能であり、例えば、該アルケノール系化合物をロジウム化合物および第3級有機リン化合物の存在下で一酸化炭素と水素とを反応させることからなる方法などが採用可能である。公知の反応方法としては、例えば、特開昭60−204779号公報、特開昭62−201881号公報等には2−メチル−1−ブテン−4−オールのヒドロホルミル化方法が記載され、また、特開昭51−29412号公報、特開平3−261775号公報、特開平6−87782号公報、特開平6−166653号公報等にはアリルアルコールのヒドロホルミル化方法が記載されている。なお、該アルケノール系化合物のヒドロホルミル化反応により得られた環状ヘミアセタールを本発明における原料物質として使用する場合、該環状ヘミアセタールとしては、ヒドロホルミル化反応によって得られた反応混合液を蒸留、再結晶などの分離・精製操作に付して得られた環状ヘミアセタールの精製物を使用することができるが、環状ヘミアセタール、ロジウム化合物、第3級有機リン化合物、反応副生成物などを含有するヒドロホルミル化反応混合液の形態のものをそのまま使用しても、また該反応混合液を簡単な分離操作に付して得られた粗な環状ヘミアセタールを使用してもよい。
【0034】
原料物質の一つである2級アミンを表す上記式(2)において、R6およびR7は、それぞれ、置換基を有してもよい1価の飽和炭化水素基または置換基を有してもよい1価の芳香族基を表すか、またはR6とR7が互いに結合して置換基を有してもよい2価の飽和脂肪族基を表す。
【0035】
ここで、R6およびR7でそれぞれ表されることのある置換基を有してもよい1価の飽和炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基などの置換基を有しないアルキル基;シクロヘキシル基、2−メチルシクロヘキシル基、シクロオクチル基などの置換基を有しないシクロアルキル基;上記例示のアルキル基またはシクロアルキル基の少なくとも一部の水素原子がアルコキシ基、アセタール型に保護されたホルミル基、水酸基等で置換された形の化学構造を有する、置換基を有するアルキル基(例:2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基など)または置換基を有するシクロアルキル基などが挙げられる。また、R6およびR7でそれぞれ表されることのある置換基を有してもよい1価の芳香族基としては、例えば、フェニル基、トリル基、ナフチル基などの置換基を有しないアリール基;ベンジル基などの置換基を有しないアラルキル基;上記例示のアリール基またはアラルキル基の少なくとも一部の水素原子がアルコキシ基、アセタール型に保護されたホルミル基、水酸基等で置換された形の化学構造を有する、置換基を有するアリール基または置換基を有するアラルキル基などが挙げられる。なお、該芳香族基に含有される炭素数は6〜14の範囲内であることが好ましい。
【0036】
また、上記式(2)においてR6とR7が互いに結合した形で表されることのある置換基を有してもよい2価の飽和脂肪族基としては、例えば、エチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、メチルペンタメチレン基、1,5−ヘキサンジイル基等の置換基を有しないアルキレン基;3−オキサペンタメチレン基(−CH2CH2OCH2CH2−)、3−アザ−3−メチルペンタメチレン基(−CH2CH2N(CH3)CH2CH2−)等の置換基を有しないヘテロ原子含有アルキレン基;該アルキレン基または該ヘテロ原子含有アルキレン基の少なくとも一部の水素原子がアルコキシ基、アセタール型に保護されたホルミル基、水酸基、ピリミジニル基等で置換された形の化学構造を有する、置換基を有するアルキレン基または置換基を有するヘテロ原子含有アルキレン基などが挙げられる。なお、置換基を有してもよい2価の飽和脂肪族基における二つの結合手間に介在する主鎖中の原子(側鎖中の原子を除く)の数は2〜11の範囲内であることが好ましい。
【0037】
上記式(2)で示される2級アミンの具体例としては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジプロピルアミン、ジイソブチルアミン、ジブチルアミン、ジオクチルアミン、ジ(2−エチルヘキシル)アミン、ジシクロヘキシルアミン、N−メチルシクロヘキシルアミン、ジフェニルアミン、N−メチルアニリン、N−メチル−o−トルイジン、N−メチル−m−トルイジン、N−メチル−p−トルイジン、N−メチル−α−ナフチルアミン、N−フェニル−α−ナフチルアミン、N−メチルベンジルアミン、ジベンジルアミン、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、N−メチルイソプロパノールアミン等の非環状アミン;アジリジン、ピロリジン、ピペリジン、2−ピペコリン、3−ピペコリン、4−ピペコリン、モルホリン、N−メチルピペラジン、1−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、2−(1−ピペラジニル)ピリミジン等の環状アミンなどが挙げられる。
【0038】
なお、製造方法(A)および(B)に従う反応において使用する2級アミンは、塩の形態であってもよい。使用可能な塩としては、例えば、2級アミンと塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、プロピオン酸等のプロトン酸とから形成される塩などが挙げられる。該塩の代表例としては、塩化ジメチルアンモニウムなどが挙げられる。
【0039】
次に、本発明の製造方法のうち上記の製造方法(A)について説明する。
【0040】
製造方法(A)においては、式(1)で示される環状ヘミアセタールと式(2)で示される2級アミン(その塩でもよい)の使用割合は必ずしも限定されない。しかし、該環状ヘミアセタールはアルデヒドの等価体であるため、それと2級アミンおよび水素との反応操作において、2級アミンと反応することなく水素添加されてしまう可能性および自己縮合してしまう可能性もある。これらの副反応は経済性を低下させるので、副反応を抑制するうえで、上記2級アミンの使用量は、使用する上記環状ヘミアセタール1モルあたり0.9〜30モルの範囲内とすることが好ましく、1〜5モルの範囲内とすることがより好ましい。
【0041】
製造方法(A)に従う反応において2級アミン(その塩でもよい)を反応系に仕込む際、該2級アミンの形態は必ずしも限定されるものではなく、2級アミンをそのまま仕込んでもよく、溶媒で希釈して仕込んでも構わない。2級アミン希釈用の溶媒の具体例としては、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられ、これらの溶媒を単独でまたは2種類以上混合して用いることができる。なお、2級アミンとして、2級アミンとプロトン酸との塩を使用する場合、反応系中に塩基性化合物を存在させると好結果が得られることがある。該塩基性化合物の具体例としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、ピリジンなどが挙げられる。該塩基性化合物を使用する場合、その使用量は、通常、2級アミンの塩1モルに対して10モル以下となる割合であり、好ましくは2モル以下となる割合である。
【0042】
製造方法(A)に従う反応は、上記環状ヘミアセタール、上記2級アミンおよび水素を、水素添加触媒の存在下に反応させるものである。水素添加触媒としては、一般に接触水素添加反応に用いられるような触媒を使用することができ、例えば、パラジウム、ロジウム、ニッケル、白金等の金属を活性成分とする触媒を挙げることができる。これらの水素添加触媒の形態としては、活性成分となる金属そのもの;その金属酸化物;その金属と他の金属との合金;活性成分となる金属(酸化物、合金でもよい)を活性炭、アルミナ、シリカゲル、ケイソウ土などの担体上に担持させてなる担体付き触媒等のいずれであってもよい。水素添加触媒の使用量は、必ずしも限られるものではないが、通常は式(1)で示される環状ヘミアセタール1重量部に対して0.0001〜0.2重量部の範囲内であり、反応速度および目的とするアミノアルコールの製造コストの観点からは、式(1)で示される環状ヘミアセタール1重量部に対して0.005〜0.1重量部の範囲内であることが好ましい。
【0043】
製造方法(A)に従う反応において、溶媒の使用は必ずしも必要ではないが、所定の反応に悪影響を及ぼさない限り溶媒を使用しても差し支えない。使用可能な溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒などが挙げられ、1種を単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。溶媒を使用する場合、その使用量は、通常、式(1)で示される環状ヘミアセタール1重量部に対して0.1〜10重量部の範囲内である。
【0044】
製造方法(A)に従う反応においては、水素を、上記環状ヘミアセタール、上記2級アミンおよび水素添加触媒を含有する混合物と接触させる。その接触の形態としては、例えば、該混合物を存在させた反応系の雰囲気中に水素ガスを存在させることからなる形態、該混合物中に水素ガスを導入(バブリング)することからなる形態などが挙げられる。反応系中における水素の分圧は、必ずしも限られるものではないが、通常は0.5〜100気圧(絶対圧)の範囲内である。なお、所定の反応に悪影響を及ぼさない限りにおいて、反応系の気相部に水素以外の気体(例えば、窒素、アルゴン等)が含有されていてもよい。
【0045】
製造方法(A)に従う反応において、反応温度は必ずしも限られるものではないが、通常は20〜180℃の範囲内の温度が採用され、反応速度の高さおよび目的とするアミノアルコールへの選択率の高さの観点からは、40〜140℃の範囲内の温度を採用することが好ましい。
【0046】
製造方法(A)に従う反応の所要時間は必ずしも限定されるものではなく、例えば、ガスクロマトグラフィー等の定量分析手段で求められた環状ヘミアセタールの転化率および/または生成アミノアルコールへの選択率に基づき、反応時間(連続式反応操作の場合には滞留時間)を適宜設定することができる。ただし、通常は、0.5〜20時間の範囲内である。
【0047】
製造方法(A)に従う反応の操作としては、所望に応じて各種の方法を採用することができる。該反応は特殊な装置(例えば高温高圧釜)を使用しなくても行うことができ、例えば、汎用的な装置を使用して、環状ヘミアセタール、2級アミン(その塩でもよい)および水素添加触媒を、水素ガス雰囲気下、かつ所定の温度および所定の水素圧力の条件下で、攪拌等の手段により混合することによって、回分式、半回分式または連続式で反応を行うことができる。反応に際して、各成分の混合順序や混合速度についての制限は特になく、反応に供する液体または固体の成分のすべて(即ち、環状ヘミアセタール、2級アミンおよび水素添加触媒)を一度に混合したうえで反応を開始させてもよく、あるいは環状ヘミアセタールおよび2級アミンのうち一方の成分と水素添加触媒を反応器に仕込み、残りの成分を反応器内に添加しながら反応させてもよい。後者の場合、反応中に一部の成分を添加する形態としては、連続的添加、複数回に分けての断続的添加等の種々の形態を採用することができる。
【0048】
反応中のほとんどの期間にわたって2級アミンを環状ヘミアセタールに対して大過剰となる割合で反応系中に存在させるような手段を選ぶ場合には、環状ヘミアセタール同士の縮合などによる副反応を抑制でき、目的とするアミノアルコールの収率および選択率を高めることができる。その点においては、2級アミンと水素添加触媒との混合物中に環状ヘミアセタールを添加しながら反応を行うことからなる半回分式での反応操作、環状ヘミアセタール、2級アミンおよび水素添加触媒を反応系に連続的に供給するとともに、反応混合物の一部を反応系から連続的に抜き取りながら反応を行うことからなる連続式での反応操作などが好ましい。
【0049】
製造方法(A)に従う反応の終了後、目的物である上記式(3)で示されるアミノアルコールは、例えば、得られた反応混合物から水素添加触媒を濾過あるいは遠心分離などによって除き、次いで得られた混合液を蒸留、晶析、カラムクロマトグラフィーなどの分離・精製操作に供することにより、高純度で得ることができる。
【0050】
次に、本発明の製造方法のうち上記製造方法(B)について説明する。
【0051】
製造方法(B)は、上記式(1)で示される環状ヘミアセタールと上記式(2)で示される2級アミンとの反応による上記式(4)で示されるアミノエーテルの製造工程と、該アミノエーテルの水素添加による上記式(3)で示されるアミノアルコールの製造工程とを含む。
【0052】
製造方法(B)に従う環状ヘミアセタールと2級アミンとの反応においては、水素および水素添加触媒が不必要である点を除き、上記製造方法(A)に従う環状ヘミアセタール、2級アミンおよび水素の水素添加触媒存在下における反応とほぼ同様にして行うことができる。すなわち、両反応は、環状ヘミアセタールと2級アミン(その塩でもよい)との使用割合、2級アミン(その塩でもよい)の使用形態(そのままの形態か溶液の形態かの点)、使用する2級アミンが塩である場合に任意に使用可能な塩基性化合物の種類および量、任意に使用可能な溶媒の種類(ただし水は使用しない方が望ましい)および量、反応温度、反応時間(ただし、反応時間を設定する場合の判断基準は、環状ヘミアセタールの転化率および/または生成アミノエーテルへの選択率である)、反応用装置、環状ヘミアセタールと2級アミン(その塩でもよい)の添加順序(一括添加か、連続的または断続的添加かの点)、反応様式(回分式か半回分式か連続式かの点)などについての条件は重複している。
【0053】
ただし、環状ヘミアセタールと2級アミンとの反応によるアミノエーテルの生成反応は、生成する水を反応系外に除去しながら行うことが、反応が促進される点で好ましい場合がある。生成する水を反応中に除去するための方法としては、水を系外に留出させる方法、水を乾燥剤に物理的または化学的に吸収させる方法などを採用することができる。水を系外に留出させる方法を採用する場合、ベンゼン、トルエン、ペンタン、シクロヘキサン、石油エーテル等の水と共沸混合物を形成し得る有機溶媒を反応系に存在させ、該有機溶媒との共沸混合物の形態で水を留出させることが好ましい。また、水を乾燥剤に吸収させる方法を採用する場合、乾燥剤としては、モレキュラーシーブス、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム等の物理的乾燥剤;水素化カルシウム、水素化アルミニウムリチウム等の化学的乾燥剤などを使用することができる。なお、水を有機溶媒との共沸混合物の形態で反応系から除去する場合、取得された共沸混合物を相分離、乾燥剤との接触などの処理に付した後、回収された有機溶媒を反応系に供給し再使用することができる。
【0054】
製造方法(B)に従う環状ヘミアセタールと2級アミンとの反応の終了後、目的とする合成中間体である上記式(4)で示されるアミノエーテルは、例えば、得られた反応混合物を蒸留、晶析、カラムクロマトグラフィーなどの分離・精製操作に供することにより、高純度で得ることができる。製造方法(B)におけるアミノエーテルの水素添加反応では、アミノエーテルとして、高純度の精製物を使用することができるが、環状ヘミアセタールと2級アミンとの反応で得られた反応混合物をそのまま使用してもよく、また、該反応混合物を簡単な分離操作に付して得られた粗なアミノエーテルを使用してもよい。
【0055】
上記式(4)で示されるアミノエーテルの水素添加反応としては、通常のエナミンの水素添加において使用し得る水素添加反応方法を採用することができるが、該アミノエーテルを水素添加触媒の存在下において水素と反応させることからなる方法が工業的に有利である。使用可能な水素添加触媒としては、例えば、パラジウム、ロジウム、ニッケル、白金等の金属を活性成分とする触媒を挙げることができる。これらの水素添加触媒の形態としては、活性成分となる金属そのもの;その金属酸化物;その金属と他の金属との合金;活性成分となる金属(酸化物、合金でもよい)を活性炭、アルミナ、シリカゲル、ケイソウ土などの担体上に担持させてなる担体付き触媒等のいずれであってもよい。水素添加触媒の使用量は、必ずしも限られるものではないが、通常は式(4)で示されるアミノエーテル1重量部に対して0.0001〜0.2重量部の範囲内であり、反応速度および目的とするアミノアルコールの製造コストの観点からは、式(4)で示されるアミノエーテル1重量部に対して0.005〜0.1重量部の範囲内であることが好ましい。
【0056】
アミノエーテルの水素添加反応において、溶媒の使用は必ずしも必要ではないが、所定の反応に悪影響を及ぼさない限り溶媒を使用しても差し支えない。使用可能な溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒などが挙げられ、1種を単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。溶媒を使用する場合、その使用量は、通常、式(4)で示されるアミノエーテル1重量部に対して0.1〜10重量部の範囲内である。
【0057】
アミノエーテルの水素添加反応においては、水素を、アミノエーテルおよび水素添加触媒を含有する混合物と接触させる。その接触の形態としては、例えば、該混合物を存在させた反応系の雰囲気中に水素ガスを存在させることからなる形態、該混合物中に水素ガスを導入(バブリング)することからなる形態などが挙げられる。反応系中における水素の分圧は、必ずしも限られるものではないが、通常は0.5〜100気圧(絶対圧)の範囲内である。なお、所定の反応に悪影響を及ぼさない限りにおいて、反応系の気相部に水素以外の気体(例えば、窒素、アルゴン等)が含有されていてもよい。
【0058】
アミノエーテルの水素添加反応において、反応温度は必ずしも限られるものではないが、通常は20〜180℃の範囲内の温度が採用され、反応速度の高さおよび目的とするアミノアルコールへの選択率の高さの観点からは、40〜140℃の範囲内の温度を採用することが好ましい。
【0059】
アミノエーテルの水素添加反応の所要時間は必ずしも限定されるものではなく、例えば、ガスクロマトグラフィー等の定量分析手段で求められたアミノエーテルの転化率および/または生成アミノアルコールへの選択率に基づき、反応時間(連続式反応操作の場合には滞留時間)を適宜設定することができる。ただし、通常は、0.5〜20時間の範囲内である。
【0060】
アミノエーテルの水素添加反応の操作としては、所望に応じて各種の方法を採用することができる。該反応は特殊な装置(例えば高温高圧釜)を使用しなくても行うことができ、例えば、汎用的な装置を使用して、アミノエーテルおよび水素添加触媒を、水素ガス雰囲気下、かつ所定の温度および所定の水素圧力の条件下で、攪拌等の手段により混合することによって、回分式、半回分式または連続式で反応を行うことができる。
【0061】
アミノエーテルの水素添加反応の終了後、目的物である上記式(3)で示されるアミノアルコールは、例えば、得られた反応混合物から水素添加触媒を濾過あるいは遠心分離などによって除き、次いで得られた混合液を蒸留、晶析、カラムクロマトグラフィーなどの分離・精製操作に供することにより、高純度で得ることができる。
【0062】
本発明の製造方法(製造方法(A)および製造方法(B))によって得られる上記式(3)で示されるアミノアルコールは、その水酸基とアミノ基との間が4個または5個の炭素原子を含む主鎖で連結されており、かつ3級アミンに分類されるアミノアルコールである。該アミノアルコールは、その化学構造に由来して、染料原料、乳化剤、防錆剤、中和剤、pH調節剤、靴墨原料、合成洗剤、繊維助剤、有機溶剤、切削油、ワックス原料、塗料原料、印刷インキ原料、凝集剤原料、接着剤原料、つやだし剤、ガス精製剤、潤滑油添加剤、ウレタン発泡触媒、アゾ染料緩性揮発剤、アニオン交換樹脂原料、燃料油スラッジ防止剤、燃料油スラッジ分散剤、ワックス類乳化剤、繊維処理剤原料、エポキシ樹脂低温重合促進剤、エポキシ樹脂硬化促進剤、水溶性塗料合成樹脂可溶化剤、エマルジョンペイントアルカリ安定化剤、ウレタンコーティング触媒、繊維の柔軟剤原料、ゴム安定剤、ゴム強度向上剤、紙加工剤原料などの幅広い用途に使用可能である。
【0063】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はかかる実施例によりなんら制限されるものではない。
【0064】
実施例1:[2−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロピラン、ジメチルアミンおよび水素の反応]
ガス導入口およびサンプリング口を備えた内容積300ミリリットルの電磁攪拌式オートクレーブ中に、50重量%ジメチルアミン水溶液(ワコー試薬製)60グラム(ジメチルアミンの含有量:667ミリモル)および5%パラジウムカーボン(水素添加触媒)650ミリグラムを入れ、内部の雰囲気を水素ガスで置換した後、80℃まで昇温した。80℃に到達した時点において、圧力は約3.5気圧(ゲージ圧)となった。水素ガスを導入することによってオートクレーブ内の圧力を5気圧(ゲージ圧)とした。
オートクレーブ内に、2−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロピラン65.0グラム(556ミリモル)を4時間かけて供給した。2−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロピランの供給終了後、さらに6時間反応を続けることによって、反応を追込んだ。なお、これらの反応期間中、オートクレーブ内の圧力が5気圧(ゲージ圧)に保たれるように水素ガスを常時供給することにより、反応に伴って消費された水素を補給した。また、これらの期間中、反応温度を80℃に維持した。
反応終了後、オートクレーブを冷却し、内液を抜き取り、パラジウムカーボンを濾過により除去することによって、濾液を得た。この濾液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、原料である2−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロピランのピークは確認されず、5−(ジメチルアミノ)−3−メチル−1−ペンタノールが76.6グラム(528ミリモル)(転化率:100%;選択率:95%;収率:95%)含まれていることが分かった。なお、ガスクロマトグラフィーでの分析条件は、以下のとおりである。
【0065】
カラム:G−300(商品名:化学品検査協会製)
カラム温度:100℃で4分保持した後、12℃/分の速度で220℃まで昇温
検出器:FID
【0066】
上記で得られた濾液を蒸留精製したところ、5−(ジメチルアミノ)−3−メチル−1−ペンタノールが72.0グラム得られた(沸点:74℃(2mmHg))。
【0067】
実施例2〜7:[2−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロピラン、2級アミンおよび水素の反応]
ジメチルアミン水溶液に代えて下記表1に示す種類の2級アミンをそのままの形態で(非水溶液で)使用し、かつ、2−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロピランの使用量、2級アミンの使用量、パラジウムカーボンの使用量、水素ガスの圧力、2−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロピランの添加操作における所要時間および温度、ならびに添加後の反応の追い込み操作における所要時間および温度として下記表1に示す条件をそれぞれ採用した以外は、実施例1に準じて反応操作および後処理操作を行った。
その結果、いずれの場合においても、下記表2に示す収率(2−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロピラン基準で算出)で対応するアミノアルコールが得られた。また、下記表2には、得られたアミノアルコールの沸点(温度および圧力)および1H−NMR(60MHz)のデータを併せて示す。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】
参考例1:[5,5−ジメチル−2−ヒドロキシテトラヒドロフランの製造]
ガス導入口およびサンプリング口を備えた内容積500ミリリットルの電磁攪拌式オートクレーブ内に、Rh(acac)(CO)2の41.3ミリグラム(0.16ミリモル)、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト1296ミリグラム(2.0ミリモル)、トリエタノールアミン298ミリグラム(2.0ミリモル)、ジフェニルホスフィノブタン68.2ミリグラム(0.16ミリモル)、トルエン20ミリリットルおよび2−メチル−3−ブテン−2−オール313グラム(380ミリリットル、3.6モル)を、空気に触れないようにして仕込み、さらに、水素と一酸化炭素水素との混合ガス(水素/一酸化炭素のモル比=1/1)を供給することにより内部の圧力を100気圧(ゲージ圧)に保った。1000回転/分の速度で攪拌しながら、オートクレーブ内の温度を30分間かけて80℃に昇温した。水素と一酸化炭素水素との混合ガス(水素/一酸化炭素のモル比=1/1)を常時供給することにより内圧を100気圧(ゲージ圧)に維持しながら、攪拌条件下に80℃の温度で10時間反応させた。
得られた反応混合液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、2−メチル−3−ブテン−2−オールの転化率は99%であり、5,5−ジメチル−2−ヒドロキシテトラヒドロフランが355グラム(選択率:85%;収率:84%)含まれていることがわかった。なお、ガスクロマトグラフィーの分析条件は、以下のとおりである。
【0071】
カラム:G−300(商品名:化学品検査協会製)
カラム温度:80℃で2分保持した後、10℃/分の速度で220℃まで昇温
検出器:FID
【0072】
上記で得られた反応混合液から、エバポレーターを用いて、原料および低沸点の副生物を減圧条件下に除去した。得られた残渣を減圧蒸留に付した。圧力(絶対圧)10KPa、温度54℃の条件で留出した液体(300グラム)についてガスクロマトグラフィーで分析したところ、この液体は5,5−ジメチル−2−ヒドロキシテトラヒドロフラン269グラム(2.3モル)と2,3−ジメチル−3−ヒドロキシブチルアルデヒド23.9グラム(0.08モル)との混合物であることが判明した。
【0073】
実施例8〜12:[環状ヘミアセタール、2級アミンおよび水素の反応]
ガス導入口およびサンプリング口を備えた内容積300ミリリットルの電磁攪拌式オートクレーブに、下記表3に示す種類の2級アミンおよび5%パラジウムカーボン(水素添加触媒)をそれぞれ下記表3に示す量で入れ、内部の雰囲気を水素ガスで置換した後、80℃まで昇温した。次いで水素ガスを導入することによってオートクレーブ内の圧力を5気圧(ゲージ圧)とした。
オートクレーブ内に、下記表3に示す種類および量の環状ヘミアセタールを4時間かけて供給した。環状ヘミアセタールの供給終了後、さらに4時間反応を続けることによって、反応を追い込んだ。なお、これらの反応期間中、オートクレーブ内の圧力が5気圧(ゲージ圧)に保たれるように水素ガスを常時供給することにより、反応に伴って消費された水素を補給した。また、これらの期間中、反応温度を80℃に維持した。
反応終了後、オートクレーブを冷却し、内液を抜き取り、パラジウムカーボンを濾過により除去することによって、濾液を得た。この濾液を蒸留精製したところ、下記表4に示す収率(環状ヘミアセタール基準で算出)で対応するアミノアルコールが得られた。また、下記表4には、得られたアミノアルコールの沸点(温度および圧力)および1H−NMR(60MHz)のデータを併せて示す。
【0074】
【表3】
【0075】
【表4】
【0076】
実施例13
(1)[2−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロピランおよびジメチルアミンの反応]
攪拌子を備えた内容積500ミリリットルのガラス製3口フラスコの内部雰囲気を窒素ガスで置換した後、2−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロピラン155グラム(1.28モル)を入れ、氷水浴で冷却することによって内部液体の温度を2℃にした。ガス状のジメチルアミンを攪拌下の内部液体中に供給することにより、内部液体の温度を10℃以下に維持しながら、30分間を要してジメチルアミン90.5グラム(2.01モル)を吸収させた。10℃でさらに30分間攪拌した後、25℃で1時間攪拌を継続した。
攪拌終了後、得られた反応混合液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、原料である2−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロピランのピークは0.5グラム相当量確認されるのみであった(転化率:99.7%)。この反応混合液から減圧条件下で水を除去し、得られた濃縮液を蒸留精製したところ、2−(ジメチルアミノ)−4−メチルテトラヒドロピランが132グラム得られた(沸点:52℃(4.0mmHg);単離収率:72%)。なお、得られた2−(ジメチルアミノ)−4−メチルテトラヒドロピランにおける1H−NMRのデータは以下のとおりである。
【0077】
δ(ppm):0.91−1.81(m;8H)、2.39(s;6H)、3.13−4.23(m;3H)
【0078】
(2)[2−(ジメチルアミノ)−4−メチルテトラヒドロピランの水素添加反応]
得られた2−(ジメチルアミノ)−4−メチルテトラヒドロピランのうち50ミリリットル(46.3グラム、0.32モル)を、イソプロピルアルコール50ミリリットルおよび5%パラジウムカーボン(水素添加触媒)1.0グラムと共に、ガス導入口およびサンプリング口を備えた内容積300ミリリットルの電磁攪拌式オートクレーブ中に入れた。内部の雰囲気を水素ガスで置換した後、水素ガスを供給することにより圧力を約5.0気圧(ゲージ圧)に維持しながら、80℃まで昇温した。80℃に到達した後、温度を80〜90℃の範囲内に保ちながら、3時間反応させた。なお、この反応期間中、水素ガスを常時供給することによってオートクレーブ内の圧力を5気圧(ゲージ圧)に維持した。
反応終了後、オートクレーブを冷却し、内液を抜き取り、パラジウムカーボンを濾過により除去することによって、濾液を得た。この濾液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、原料である2−(ジメチルアミノ)−4−メチルテトラヒドロピランは確認されず、5−(ジメチルアミノ)−3−メチル−1−ペンタノールが46.6グラム(0.32モル)(転化率:100%;選択率:99%)含まれていることが分かった。
【0079】
実施例14
(1)[2−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロピランおよびジブチルアミンの反応]
攪拌子、還流冷却器およびジーンスタークを備えた内容積500ミリリットルのガラス製3口フラスコの内部雰囲気を窒素ガスで置換した後、トルエン200ミリリットル、2−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロピラン61.1グラム(95%純度、0.50モル)およびジブチルアミン77.4グラム(0.60モル)を入れ、さらにパラトルエンスルホン酸を0.6グラム入れた。これらの混合溶液を攪拌下にオイルバスで内温128℃まで加熱し、トルエンが還流される状態を維持した。ジーンスタークにより水を共沸混合物の形で除去しながら、トルエンの還流を2時間行った。
加熱還流を終了させた後、得られた反応混合液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、原料である2−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロピランのピークは痕跡量確認されるのみであった(転化率:100%)。この反応混合液から減圧条件下でトルエンを除去し、得られた濃縮液を蒸留精製したところ、2−(ジブチルアミノ)−4−メチルテトラヒドロピランが93.0グラム(0.41モル)得られた(沸点:84℃(2.0mmHg);単離収率:82%)。なお、得られた2−(ジブチルアミノ)−4−メチルテトラヒドロピランにおける1H−NMRのデータは以下のとおりである。
【0080】
δ(ppm):0.71−1.81(m;22H)、2.46−2.93(m;4H)、3.10−4.19(m;3H)
【0081】
(2)[2−(ジブチルアミノ)−4−メチルテトラヒドロピランの水素添加反応]
得られた2−(ジブチルアミノ)−4−メチルテトラヒドロピランのうち50ミリリットル(43.1グラム、0.19モル)を、イソプロピルアルコール50ミリリットルおよび5%パラジウムカーボン(水素添加触媒)1.0グラムと共に、ガス導入口およびサンプリング口を備えた内容積300ミリリットルの電磁攪拌式オートクレーブ中に入れた。内部の雰囲気を水素ガスで置換した後、水素ガスを供給することにより圧力を約5.0気圧(ゲージ圧)に維持しながら、80℃まで昇温した。80℃に到達した後、温度を80〜90℃の範囲内に保ちながら、3時間反応させた。なお、この反応期間中、水素ガスを常時供給することによってオートクレーブ内の圧力を5気圧(ゲージ圧)に維持した。
反応終了後、オートクレーブを冷却し、内液を抜き取り、パラジウムカーボンを濾過により除去することによって、濾液を得た。この濾液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、原料である2−(ジブチルアミノ)−4−メチルテトラヒドロピランは確認されず、5−(ジブチルアミノ)−3−メチル−1−ペンタノールが43.2グラム(0.32モル)(転化率:100%;選択率:99%)含まれていることが分かった。
【0082】
実施例15
(1)[2−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロフランおよびジメチルアミンの反応]
攪拌機を備えた内容積300ミリリットルのガラス製3口フラスコの内部雰囲気を窒素ガスで置換した後、2−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロフラン59.5グラム(0.58モル)およびモレキュラーシーブス32.0グラムを入れ、氷水浴で冷却することによって内部液体の温度を2℃にした。ガス状のジメチルアミンを攪拌下の内部液体中に供給することにより、内部液体の温度を10℃以下に維持しながら、10分間を要してジメチルアミン39.4グラム(0.87モル)を吸収させた。吸収させた後、10℃でさらに30分間攪拌を継続した。
攪拌終了後、得られた反応混合液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、原料である2−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロフランのピークが1.5グラム相当量確認された(転化率:97.5%)。この反応混合液を濾過することによりモレキュラーシーブスを除去した後、得られた濾液を蒸留精製したところ、2−(ジメチルアミノ)−4−メチルテトラヒドロフランが49.0グラム得られた(沸点:58℃(25mmHg);単離収率:65%)。なお、得られた2−(ジメチルアミノ)−4−メチルテトラヒドロフランにおける1H−NMRのデータは以下のとおりである。
【0083】
δ(ppm):1.01(d;3H,J=6Hz)、1.26−2.54(m;2H)、2.33(s;6H)、2.70−4.78(m;4H)
【0084】
(2)[2−(ジメチルアミノ)−4−メチルテトラヒドロフランの水素添加反応]
得られた2−(ジメチルアミノ)−4−メチルテトラヒドロフランのうち50ミリリットル(44.6グラム、0.35モル)を、イソプロピルアルコール50ミリリットルおよび5%パラジウムカーボン(水素添加触媒)1.0グラムと共に、ガス導入口およびサンプリング口を備えた内容積300ミリリットルの電磁攪拌式オートクレーブ中に入れた。内部の雰囲気を水素ガスで置換した後、水素ガスを供給することにより圧力を約5.0気圧(ゲージ圧)に維持しながら、80℃まで昇温した。80℃に到達した後、温度を80〜90℃の範囲内に保ちながら、3時間反応させた。なお、この反応期間中、水素ガスを常時供給することによってオートクレーブ内の圧力を5気圧(ゲージ圧)に維持した。
反応終了後、オートクレーブを冷却し、内液を抜き取り、パラジウムカーボンを濾過により除去することによって、濾液を得た。この濾液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、原料である2−(ジメチルアミノ)−4−メチルテトラヒドロフランは確認されず、4−(ジメチルアミノ)−2−メチル−1−ブタノールが44.7グラム(0.34モル)(転化率:100%;選択率:99%)含まれていることが分かった。
【0085】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、水酸基とアミノ基との間が4個または5個の炭素原子で隔てられ、かつ3級アミンに分類されるアミノアルコールを、入手および取扱いが容易な原料から高収率で製造することができ、しかも特殊な反応装置、特殊な反応条件および煩雑な後処理操作は不必要である。したがって、本発明によって、上記のアミノアルコールを工業的に有利に製造し得る方法が提供される。
Claims (4)
- 式(1)
で示される環状ヘミアセタール、式(2)
で示される2級アミンおよび水素を、水素添加触媒の存在下で反応させることを特徴とする、式(3)
で示されるアミノアルコールの製造方法。 - 式(1)
で示される環状ヘミアセタールを式(2)
で示される2級アミンと反応させることによって、式(4)
で示されるアミノエーテルを得;次いで、該アミノエーテルを溶媒の不存在下もしくは存在下および水素添加触媒の存在下に、20〜180℃の範囲内の温度で反応させることを特徴とする、式(3)
で示されるアミノアルコールの製造方法。 - 式(3’)
で示されるアミノアルコール。 - 式(4)
で示されるアミノエーテル。
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