JP4595159B2 - 電解質の改質方法及び改質電解質 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電解質の改質方法及び改質電解質に関し、更に詳しくは、燃料電池、水電解、ハロゲン化水素酸電解、食塩電解、酸素濃縮器、湿度センサ、ガスセンサ等に用いられる高分子電解質を改質する電解質の改質方法及び改質電解質に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、高分子電解質として固体高分子電解質が知られている。この固体高分子電解質は、高分子鎖中にスルホン酸基やカルボン酸基等の電解質基を有する固体高分子材料であり、特定のイオンと強固に結合したり、陽イオン又は陰イオンを選択的に透過する性質を有していることから、粒子、繊維、あるいは膜状に成形し、電気透析、拡散透析、電池隔膜等、各種の用途に利用されているものである。
【0003】
そうした中で、例えば、固体高分子電解質を膜状に成形した固体高分子電解質膜は、固体高分子型燃料電池や水電解セル等に用いられる。固体高分子型燃料電池は、電解質膜の両面に一対の電極を設け、改質ガス等の水素を含む燃料ガスを一方の電極(燃料極)へ供給し、空気等の酸素を含む酸化剤ガスを他方の電極(空気極)へ供給し、燃料が酸化する際に発生する化学エネルギーを、直接電気エネルギーとして取り出す電池である。
【0004】
また、水電解は水を電気分解することにより水素と酸素を製造する電解法で、SPE電解法等が知られている。SPEとはSolid Polymer Electrolyte(固体高分子電解質)の略で、電解質として、従来のアルカリ水溶液に代えて、プロトン伝導性を有する固体高分子電解質膜が用いられている。
【0005】
このような用途に用いられる固体高分子電解質膜としては、例えば、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)に代表されるパーフルオロカーボンスルホン酸膜が知られている。パーフルオロカーボンスルホン酸膜の形状はパーフルオロアルキレン鎖によって保たれているが、架橋されていないため、側鎖部にある電解質基は比較的分子運動の自由度が大きく、イオン化した状態では本来疎水性の強い主鎖部分と親水性の電解質基が共存し、電解質基はフルオロカーボンマトリックス中で会合し、イオンクラスタを形成している。
【0006】
このような構造を有するパーフルオロ高分子電解質膜は、化学的安定性が非常に高く、耐久性に優れることから、過酷な条件下で使用される電解質膜として賞用されているものである。
【0007】
また、米国特許第5741408号には、芳香族ポリエーテルケトンにスルホニルハライド基を導入し、導入されたスルホニルハライド基とUV効果型のアミン架橋剤とを反応させ、次いでアミン架橋剤を架橋反応させることにより得られる架橋型の炭化水素系高分子電解質膜が開示されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、固体高分子型燃料電池は、電池の作動温度が高くなるほど、発電効率が高くなることが知られている。また、固体高分子電解質の両面に接合される電極には、白金系の電極触媒が含まれているが、白金は、微量の一酸化炭素であっても被毒され、燃料電池の出力を低下させる原因となる。しかも、電極触媒の一酸化炭素による被毒は、低温ほど著しくなることが知られている。
【0009】
そのため、天然ガス、メタノール改質ガス等、微量の一酸化炭素を含むガスを燃料ガスとして用いる固体高分子型燃料電池においては、一酸化炭素被毒を回避するため、100℃以上の高温条件下で作動させることが望まれている。
【0010】
また、水電解においては、電気エネルギーを消費して水素や酸素を製造するため、電気エネルギーを有効に使用することが望まれている。水の電気分解に必要な最低の電圧、すなわち、理論分解電圧は、高温になるほど小さくなることが知られており、そのため高温で電解を行えば、電解に要する電力が少なくて済み、効率の点で有利である。
【0011】
しかしながら、ナフィオンに代表されるパーフルオロ高分子電解質膜は、非架橋であるために耐熱性が低く、ガラス転移温度近傍である120℃以上では膜中の分子運動が容易になって構造が変化し、膜がクリープする等、高い温度及び長期にわたる電解質膜としての使用には問題がある。
【0012】
そのため、パーフルオロ高分子電解質を燃料電池やSPE電解装置に用いた場合には、作動温度を100℃以下とする必要があり、一酸化炭素による電極触媒の被毒の防止や効率の点で有利な高温で使用することができないという問題があった。また、パーフルオロ高分子電解質は、非架橋であるため、導電性を向上させるために電解質基の導入量を増しすぎると、水に著しく膨潤、もしくは可溶化してしまい、膜の設計自由度も大幅に限定されていた。
【0013】
一方、パーフルオロ高分子電解質を架橋させることができれば、高温における高分子鎖の流動が抑制されるので、パーフルオロ高分子電解質の耐高温クリープに対して有効と考えられる。更には、架橋により膜の電解質基の導入量を増しても可溶化することなく、導電性の向上など、その設計自由度が向上する。しかしながら、パーフルオロ高分子電解質における炭素とフッ素の結合は化学的に極めて安定で不活性であるために架橋は容易ではない。また、電解質基を介して架橋すると、電解質基の数が減少し、導電性が低下してしまう。
【0014】
また、米国特許第5741408号に開示されている架橋型炭化水素系高分子電解質は、架橋剤を含めて主要部分が炭化水素構造で構成されているために、高温での耐酸化性がなく、そのままでは高温で使用することはできない。
【0015】
このように、高分子電解質は、長期にわたり高温の酸化条件にさらされることが多く、長期にわたる耐久性と耐熱性が要求される。例えば、固体高分子型燃料電池において、膜抵抗を低減させるため薄膜化した場合等においては、耐久性や耐熱性が低いと、膜がクリープして局所的・微視的に非常に薄い部分が生じ、回路電圧の極端な低下や電気的なショートをもたらし、長期にわたる信頼性を損なってしまう等の問題も生ずる。
【0016】
本発明が解決しようとする課題は、導電性、耐高温クリープ特性に優れ、高い耐熱性及び耐久性を付与するため、高分子電解質を改質する電解質の改質方法及び改質電解質を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
この課題を解決するために本発明に係る電解質の改質方法は、スルホニルハライド基を側鎖に有するパーフルオロ高分子電解質に非水下でアミン化合物を接触させるアミン処理工程と、前記アミン処理工程の後、前記パーフルオロ高分子電解質に残留するスルホニルハライド基を加水分解処理する前に、前記アミン化合物の非存在下で前記パーフルオロ高分子電解質を加熱する加熱処理工程とを有することを要旨とするものである。
【0018】
本発明に係る電解質の改質方法は、スルホニルハライド基を側鎖に有するパーフルオロ高分子電解質に非水下でアミン化合物を接触させるアミン処理工程と、前記アミン処理工程の後、前記パーフルオロ高分子電解質に残留するスルホニルハライド基を加水分解処理する前に、前記アミン化合物の非存在下で前記パーフルオロ高分子電解質を加熱する加熱処理工程とを有しているので、それにより得られるパーフルオロ高分子電解質は、導電性に優れ、また、高温における分子の流動が抑制されるため耐高温クリープ性が大幅に向上し、耐久性、耐熱性に優れた電解質となる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。本発明に係る電解質の改質方法はアミン処理工程を有する。
【0020】
ここで、アミン処理とは、パーフルオロ高分子電解質あるいはその前駆体にアミン化合物を接触させることをいう。接触させる方法としては、アミン化合物を直接接触させても良いし、適当な溶媒に溶解して接触させても良く、アミン化合物の蒸気にさらしても良い。また、適当な溶媒に溶解して接触させる場合に用いる溶媒は、アミン化合物が溶解するものであれば特に制限はないが、アミン化合物が10mg/L以上溶解するものが好ましく、溶解性の観点から、用いる溶媒はフッ素系のR113やAK225等が好ましい。
【0021】
また、アミン処理する時の温度は、−30℃から200℃の範囲が好ましい。−30℃以下の場合には、パーフルオロ高分子電解質中の分子運動性が低下することにより処理速度が著しく低下し、200℃以上の場合には、パーフルオロ高分子電解質の分解が起こってしまうからである。また、接触させる時間やアミン化合物の添加量等は、アミン化合物の種類により異なるが、耐クリープ特性が向上し、かつ、電気伝導度が著しく低下しない範囲で適宜調節すれば良く、特に限定されるものではない。
【0022】
また、本発明に係る電解質の改質方法において、アミン処理工程の後に、加熱処理工程もしくは塩基処理工程のいずれかの工程を有することが好ましい。
【0023】
ここで、加熱処理とは、パーフルオロ高分子電解質あるいはその前駆体を加熱することをいう。この際、加熱する温度は、40℃から200℃の範囲で行うのが好ましい。より好ましくは反応速度の観点からパーフルオロ高分子電解質あるいはその前駆体の軟化温度近傍(ナフィオンの場合には100から150℃の範囲)で加熱すると良い。40℃以下では反応速度が著しく遅く、200℃以上では、パーフルオロ高分子電解質の分解が起こるため好ましくない。また、加熱する時間は、アミン化合物を接触させるアミン処理時間、アミン化合物の添加量や種類等により異なるが、耐クリープ特性が向上し、かつ、電気伝導度が著しく低下しない範囲で適宜調節すれば良く、特に限定されるものではない。
【0024】
またここで、塩基処理とは、塩基とパーフルオロ高分子電解質あるいはその前駆体を接触させることをいう。接触させる方法としては、塩基を直接接触させても良いし、適当な溶媒に溶解して接触させても良く、塩基の蒸気にさらしても良い。また、適当な溶媒に溶解して接触させる場合に用いる溶媒としては、塩基が溶解するものであれば特に制限はないが、塩基が10mg/L以上溶解するものが好ましく、溶解性の観点から、用いる溶媒はフッ素系のR113やAK225等が好ましい。また、塩基処理する時間は、用いる塩基の添加量や種類、塩基処理するときの温度等により異なるが、耐クリープ特性が向上し、かつ、電気伝導度が著しく低下しない範囲で適宜調節すれば良く、特に限定されるものではない。
【0025】
そして、より好ましくは、アミン処理工程の後に、加熱処理工程と塩基処理工程の両方の工程を有することが好ましい。この場合には、アミン処理工程の後に、加熱処理工程を有し、その加熱処理工程の後に、塩基処理工程を有していても良いし、アミン処理工程の後に、塩基処理工程を有し、その塩基処理工程の後に、加熱処理工程を有していても良い。特に好ましくは、パーフルオロ高分子電解質あるいはその前駆体と、アミン化合物、塩基との反応が加熱処理により一層促進される観点から、アミン処理工程の後に、塩基処理工程を有し、その塩基処理工程の後に、加熱処理工程を有することが好ましい。
【0026】
ここで、上述したパーフルオロ高分子電解質とは、C−H結合を含まず、フルオロカーボン(−CF2−、−CFCl−)、クロロカーボン(−CCl2−)、その他(−O−、−S−、−C(=O)−、−N(R)−)を主鎖、側鎖とするパーフルオロ高分子であって、これが、電解質基や化学反応による誘導化により電解質となりうる官能基で置換された構造を有するものをいう。ここで特に、化学反応による誘導化により電解質となりうる官能基で置換されたものを、パーフルオロ高分子電解質前駆体と呼ぶ。
【0027】
このようなパーフルオロ高分子としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレンなどが具体例として挙げられる。
【0028】
また、電解質基や化学反応による誘導化により電解質となりうる官能基(*を付けたもの)としては、例えば、−SO3H、−SO2F*、−SO2Cl*、−SO2Br*、−SO3Na、−SO3K、−SO3Li、−SO3Mg、−SO3Ca、−CO2H、−COF*、−COCl*、−COBr*、−CONa、−COK、−COLi、−COMg、−COCa、−PO3H2、=PO2H、−OP(O2H)O−、−OPO3H2、−OPOCl2 *、−OPOF2 *、−OPOBr2 *、−POCl2 *、−POF2 *、−POBr2 *、−OP(OCl)O−*、−OP(OF)O−*、−OP(OLi)O−、カルボン酸エステル*、スルホン酸エステル*、リン酸エステル*、カルボン酸無水物*、スルホン酸無水物*、リン酸無水物*、及びカルボン酸、スルホン酸とリン酸の混合無水物*等が具体例として挙げられる。
【0029】
そしてより具体的には、電解質基として、−SO3H(スルホン酸基)、化学反応による誘導化により電解質となりうる官能基として、−SO2F(スルホニルフルオライド基)を化学構造中に有するパーフルオロ高分子電解質が好ましい。中でも、スルホニルフルオライド基は、後述するように、アミン処理により容易に耐クリープ特性等を向上させることができるので、特に好ましい。
【0030】
ここで用いるパーフルオロ高分子電解質あるいはその前駆体の構造は、特に限定されるものではなく、その高分子鎖は、直鎖状、あるいは分岐状のいずれの構造を有するものであっても良い。中でも、電解質基や化学反応による誘導化により電解質となりうる官能基を側鎖に有するパーフルオロ高分子電解質あるいはその前駆体を好適に用いることができる。
【0031】
また、アミン処理工程で用いるアミン化合物とは、アンモニアの水素原子が置換基により0から3個置換されたアミン化合物のことをいう。
【0032】
この場合の置換基としては、種々の置換基が挙げられるが、例えば、アルキル基、アリール基、アリル基、アルケン基、アルキン基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、ヒドロキシル基、ヒドロキシレート基、チオカルボキシ基、ジチオカルボキシ基、スルホ基、スルフィノ基、スルフェノ基、オキシカルボニル基、ハロホルミル基、カルバモイル基、ヒドラジノカルボニル基、アミジノ基、シアノ基、イソシアン基、シアナト基、イソシアナト基、チオシアナト基、イソチオシアナト基、ホルミル基、オキソ基、チオホルミル基、チオキソ基、メルカプト基、アミノ基、イミノ基、ヒドラジノ基、アリロキシ基、スルフィド基、ハロゲン基、ニトロ基、シリル基等を含む構成要素から構成される置換基が具体例として挙げられる。
【0033】
また置換基は、金属、例えばLi、Na、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Ba等で置換されていても良い。なお、このようなアミン化合物は金属アミドと呼ばれる。
【0034】
中でも、アミン化合物として、アンモニアの水素原子が上記置換基により1個置換されたアミン化合物である1級アミン化合物を用いることが好ましい。具体的には、例えば、1−ヘキシルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘプチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、パーフルオロメチルアミン、パーフルオロエチルアミン、パーフルオロブチルアミン、パーフルオロペンチルアミン、パーフルオロヘプチルアミンなどが挙げられる。
【0035】
そしてより好ましくは、アミン化合物として、アンモニアをそのまま用いることがより好ましい。
【0036】
そしてまた、塩基処理工程で用いる塩基としては、トリエチルアミン、ピリジン、DBU(1,8−diazabicyclo[5.4.0]−7−undecene)、トリエチルアミン、DBN(1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5)等のアミン化合物や、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、ナトリウムアルコキシド等の金属塩基や、ナトリウムハイドライド、カリウムハイドライド、カルシウムハイドライド、リチウムアルミニウムハイドライド、ナトリウムボロンハイドライド等の金属水素化物や、ブチルリチウム、ナトリウムシクロペンタジエニド、フェニルリチウム等の有機金属化合物等が好適である。
【0037】
以上のような本発明に係る電解質の改質方法により得られる改質電解質は、パーフルオロ高分子電解質中の電解質基や化学反応による誘導化により電解質となりうる官能基の総数に対して、0.1から85%のモル分率でアミン化合物に由来する窒素を含有することを特徴とするものである(以下、パーフルオロ高分子電解質中の電解質基や化学反応による誘導化により電解質となりうる官能基の総数に対するアミン化合物由来の窒素の量をモル分率で表したものを、窒素モル分率N(%)という)。
【0038】
この窒素モル分率N(%)が、0.1%以下の場合、高分子鎖間に生じる架橋の量が少なすぎるために耐久性、耐熱性の効果が少なく、また、85%以上の場合には、電解質基の量が著しく少なくなるために、電解質としての使用が困難となり好ましくない。
【0039】
また、得られた改質電解質を膜状に成形したパーフルオロ高分子電解質膜の場合、膜断面における単位体積当たりの窒素モル分率N(%)(以下、窒素密度n(%)という)の分布は、窒素密度n(%)の最大値nmaxが0.1%以上50%以下の範囲にあることが好ましく、その窒素密度n(%)の分布は、膜断面にわたって、窒素密度n(%)のレベルがほぼ一定で、均一になるように分布させることが好ましい。不均一に分布してしまった場合、すなわち、窒素密度n(%)の分布に局所的なピークがある場合は、電解質基の量が著しく少なくなる箇所が膜中に存在することとなり、電気伝導度を低下させてしまう等の問題が生じるため、好ましくない。
【0040】
このような窒素密度n(%)の分布は、アミン処理工程において用いるアミン化合物の量や種類など各種条件によって異なるが、用いるアミン化合物としては、アミン化合物がパーフルオロ高分子電解質あるいはその前駆体へ拡散する拡散速度が、パーフルオロ高分子電解質あるいはその前駆体との反応速度よりも速いものを用いることが好ましい。アミン化合物がパーフルオロ高分子電解質あるいはその前駆体へ拡散する拡散速度が、パーフルオロ高分子電解質あるいはその前駆体との反応速度よりも遅い場合、アミン化合物がパーフルオロ高分子電解質あるいはその前駆体に浸透する前にパーフルオロ高分子電解質あるいはその前駆体表面で反応が生じてしまい、その結果、窒素密度n(%)の分布が不均一となり易く、電気伝導度が局所的に低下する箇所が生じ、好ましくない。
【0041】
なお、窒素密度n(%)の分布は、アミン化合物に由来する窒素元素の分布や得られた改質電解質の物性分布により評価することができ、具体的には、弾性率やクリープ特性や電気伝導度などを評価して、適宜最適な分布となるようにすれば良い。
【0042】
そしてまた、パーフルオロ高分子電解質膜の膜断面の窒素密度n(%)の分布の最大値nmaxが、0.1%以上50%以下の範囲にあり、かつ、膜に対して垂直方向の導電率が10−3S/cm以上であるようした場合、十分な電気伝導度を有し、かつ、耐熱性、耐久性に優れた電解質膜とすることができる。
【0043】
以上のように、本発明に係る電解質の改質方法は、パーフルオロ高分子電解質あるいはその前駆体にアミン化合物を接触させるアミン処理工程を有しており、それにより得られるパーフルオロ高分子電解質は、電気伝導度を維持したまま、高温における分子の流動が抑制され、高温域における軟化による変形や、長期使用時のクリープを阻止することが可能となり、耐熱性、耐高温クリープ特性を大幅に向上させることができるようになる。また、高分子鎖がパーフルオロ高分子で形成されているため、高温における耐酸化性も問題とならない。
【0044】
このように電気伝導性を維持したまま、耐熱性、耐久性を向上させることができる理由について詳細は明らかではないが、パーフルオロ高分子電解質中の電解質基や化学反応による誘導化により電解質となりうる官能基の部分において、アミン化合物による共有結合、あるいはイオン結合による架橋が生じているため、耐熱性、耐高温クリープ特性が向上するものと考えられ、また、その架橋点において、水素原子の結合に寄与する電子が、電子吸引性を有するフッ素化炭素に引き寄せられて移動し、水素原子がプロトンとして放出され易くなっているため、電気伝導度が維持されるものと考えられる。
【0045】
また、パーフルオロ高分子電解質あるいはその前駆体にアミン化合物を接触させるアミン処理工程の後に、塩基処理工程を有する場合は、塩基により架橋反応が促進され、効率良く架橋を生じるものと考えられる。
【0046】
そしてまた、パーフルオロ高分子電解質あるいはその前駆体にアミン化合物を接触させるアミン処理工程の後に、加熱処理工程を有する場合には、加熱により架橋反応が促進され、効率良く、架橋が生じるものと考えられる。
【0047】
特に、パーフルオロ高分子電解質あるいはその前駆体にアミン化合物を接触させるアミン処理工程の後に、塩基処理工程を有し、その塩基処理工程の後に、加熱処理工程を有している場合には、上記による効果が相まって、より一層効率よく、電気伝導度を維持しながら、耐熱性、耐高温クリープ特性を大幅に向上させることができるようになるものと考えられる。
【0048】
そのため、本発明に係る電解質の改質方法により得られる改質電解質を例えば、固体高分子型燃料電池に用いた場合には、120℃以上の高温条件下であっても安定に作動し、また、効率を飛躍的に向上させることができ、しかも、メタノール改質型燃料電池において問題となっている、電極触媒の一酸化炭素による被毒に起因する電圧低下は、こうした高温運転により大幅に低減することが可能となる。
【0049】
【実施例】
以下に本発明に係る電解質の改質方法及び改質電解質の好適な実施例について詳細に説明する。
【0050】
(実施例1)
初めに、以下の手順に従い、パーフルオロ高分子電解質にアミン化合物を接触させるアミン処理を行った。すなわち、グローブボックス中で、フロン溶媒(R113)80mlに膜厚50μm、大きさ1cmx8cmのナフィオン膜(F112)を5分間浸漬した。次いでアミン化合物としてリチウムビス(トリメチルシリル)アミド(以下、LBTMSAという)の1.0M(モル/L)THF溶液5mlを撹拌下に加え、15分間浸漬した後、この膜を取り出し、R113及びTHF溶液で洗浄した。以後の操作は空気中、室温にて行った。得られた膜を25%水酸化ナトリウム水溶液中で2時間還流し、水洗した後、6M塩酸中に5時間浸漬して加水分解し、残留するスルホニルフルオライド基をスルホン酸ナトリウム基に変換した。さらに、1M硫酸中で1時間還流し、プロトン型に変換した。その後、純水中で10分還流し、水洗後、得られた膜を純水中に保存した。
この電解質膜を実施例1とする。
【0051】
次に、このようにして得られた実施例1の電解質膜の電気伝導度の測定を、以下の手順により行った。すなわち、得られた幅1cmの電解質膜を、2端子の電気伝導度測定セルに装着し、セルの電流、電圧端子には膜との接触性向上のため白金黒メッキを施した白金箔を使用した。そしてこれらのセルをそれぞれ純水中に浸漬し、LCRメーター(YHP製 4262A LCR METER)を用いて交流法(10kHz)により電解質膜の膜抵抗を測定した。そして、次の数1の式により電気伝導度(σ)を求めた。尚、各膜厚は電気伝導度測定後にマイクロメーターで測定した値を用いた。
【0052】
【数1】
σ=L/R・A=L/R・w・t
但し、σ :電気伝導度(S/cm)
R :抵抗(Ω)
L :電圧端子間の距離(=1cm)
A :膜の断面積(cm2)
t :膜厚(cm)
w :膜幅(cm)
【0053】
次に、実施例1の電解質膜の160℃における耐クリープ試験を、以下の手順により行った。すなわち、荷重が0.8MPaになるように膜に錘をぶら下げ、160℃の雰囲気にさらし、1分後の膜の伸びの初期の長さに対する割合(クリープ伸び)を測定した。
【0054】
(実施例2〜4)
アミン化合物であるLBTMSAへの浸漬時間を30分、1時間、2時間とした以外は、実施例1と同様の手順に従い、各膜を処理した。これらの電解質膜をそれぞれ実施例2、実施例3、実施例4とする。また、実施例1と同様に電気伝導度の測定及び耐クリープ評価を行った。
【0055】
(実施例5)
アミン化合物としてLBTMSAの1.0M(モル/L)THF溶液5mlを撹拌下に加え、15分間浸漬した後、この膜を取り出し、R113及びTHF溶液で洗浄し、引き続き、膜をロータリーポンプの減圧下120℃にて12時間加熱処理を行った以外は、実施例1と同様の手順に従い、膜を処理した。この電解質膜を実施例5とする。また、実施例1と同様に電気伝導度の測定及び耐クリープ評価を行った。
【0056】
(実施例6、7)
アミン化合物であるLBTMSAへの浸漬時間を1時間、2時間とした以外は、実施例5と同様の手順に従い、各膜を処理した。これらの電解質膜をそれぞれ実施例6、実施例7とする。また、実施例1と同様に電気伝導度の測定及び耐クリープ評価を行った。
【0057】
(比較例1)
比較としてパーフルオロ高分子電解質であるナフィオン膜についてアミン処理、塩基処理、加熱処理のいずれも行わなず、実施例1と同様に膜の加水分解、プロトン交換、純水中への保存を行った。この電解質膜を比較例1とする。また、実施例1と同様に電気伝導度の測定を行い、耐クリープ評価については8分間のクリープ伸びの測定も行った。
【0058】
以上のように作製した実施例1〜7、及び比較例1の電解質膜の試験条件と各特性測定結果を表1に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
先ず、アミン化合物(LBTMSA)の添加量を一定とし、アミン処理時間を変化させてアミン処理を行った実施例1〜4について説明する。実施例1〜4によると、アミン処理時間が増加するにつれ、1分間のクリープ伸びは急激に小さくなり、1時間以降はほぼ一定となる挙動を示した。また、実施例2〜4のクリープ伸びは比較例1のクリープ伸びと比較して、約1/2以下と大幅に小さくなっており、耐クリープ特性が向上していることが分かる。
【0061】
一方、電気伝導度については、比較例1に比べ、実施例1、2についてはそれほど低下しなかったが、アミン処理時間が1時間よりも長い実施例3、4では、その低下の割合が大きくなった。これらの結果から、アミン処理時間が短すぎる場合は、耐クリープ特性向上の効果が少なく、逆にアミン処理時間が長すぎる場合は、耐クリープ特性は向上するものの、電気伝導度が低下してしまうことが分かる。すなわち、アミン処理時間については、電気伝導度を大きく低下させず、耐クリープ特性が向上するような範囲で、アミン処理時間を選択する必要があることが分かる。
【0062】
次に、アミン化合物(LBTMSA)の添加量を一定とし、アミン処理時間を変化させてアミン処理工程を行った後に、120℃、12時間の加熱処理工程を行った実施例5〜7について説明する。アミン処理時間が短く、耐クリープ特性の向上が見られなかった実施例1の1分間のクリープ伸びは126%であったのに対し、アミン処理時間が15分と同じ時間であるが、加熱処理を行った実施例5の1分間のクリープ伸びは21%と大幅に小さくなっていることが分かる。また、それ以外の実施例6、7については実施例3、4とほぼ同程度のクリープ伸びであった。すなわち、アミン処理工程の後に、加熱処理を行うことで、アミン処理時間が比較的短くても、クリープ伸びを大幅に小さくできることが分かる。
【0063】
また、電気伝導度については実施例1と実施例5から分かるように、加熱処理により電気伝導度を低下させることなく、耐クリープ特性が大幅に向上していることが分かる。しかしながら、アミン処理時間が実施例6、7のように比較的長い場合には、加熱処理により電気伝導度が低下してしまうことが分かる。
【0064】
上記のように、パーフルオロ高分子電解質にアミン化合物を接触させるアミン処理を行うことにより、耐クリープ特性が大幅に向上する理由については、詳細は明らかではないが、パーフルオロ高分子電解質中の電解質基や化学反応による誘導化により電解質となりうる官能基の部分において、アミン化合物による共有結合、あるいはイオン結合による架橋が生じているものと考えられる。
【0065】
アミン処理工程のみの場合は、パーフルオロ高分子電解質とアミン化合物とが接触する時間が長くなるに連れて、パーフルオロ高分子電解質中においてアミン化合物による架橋点が形成されていくが、主にイオン結合の状態で架橋されているために、電気伝導度の低下割合が低く抑えられていると考えられる。
【0066】
また、アミン処理工程の後に行う加熱処理工程の有無による電気伝導度、耐クリープ特性への影響については、アミン処理時間が短いときほど、その後の加熱処理の効果が大きい。
【0067】
これは、加熱処理を行った場合は、アミン化合物との接触する時間が短く、架橋点が少なくても、加熱によりパーフルオロ高分子電解質とアミン化合物との間で共有結合による架橋が生じることにより、耐クリープ特性が大幅に向上すると考えられる。しかしながら、アミン化合物との接触時間が長く、架橋点が増えた場合、加熱処理により架橋点における反応が進み、電解質基が損なわれることにより、電気伝導度が低下してしまうものと考えられる。
【0068】
(実施例8〜11)
アミン化合物であるLBTMSAの1.0M(モル/L)THF溶液2.5ml、1.25ml、0.6ml、0.3mlを撹拌下に加え、浸漬時間を30分とした以外は、実施例5と同様の手順に従い、各膜を処理した。これらの電解質膜をそれぞれ実施例8、実施例9、実施例10、実施例11とする。また、実施例1と同様に電気伝導度の測定及び耐クリープ評価を行った。
【0069】
(実施例12〜15)
アミン化合物であるLBTMSAの1.0M(モル/L)THF溶液2.5ml、1.25ml、0.6ml、0.3mlを撹拌下に加え、浸漬時間を1時間とした以外は、実施例5と同様の手順に従い、各膜を処理した。これらの電解質膜をそれぞれ実施例12、実施例13、実施例14、実施例15とする。また、実施例1と同様に電気伝導度の測定及び耐クリープ評価を行った。
【0070】
以上のように作製した実施例8〜15、及び比較例1の電解質膜の試験条件と各特性測定結果を表2に示す。
【0071】
【表2】
【0072】
表2は、アミン化合物(LBTMSA)によるアミン処理工程の後に行う加熱処理条件を一定とし、アミン処理時間、アミン化合物の添加量を変化させてアミン処理を行った結果を示している。先ず、アミン処理時間を30分として、アミン化合物の添加量を変化させた実施例8〜11について説明する。実施例8〜11はクリープ伸びは比較例1に比べ、約1/3〜1/2程度となり、耐クリープ特性が大幅に向上している。また、電気伝導度については、アミン化合物の添加量が少なくなるほど大きくなっており、実施例11においては電気伝導度、耐クリープ特性ともに比較例1より大幅に向上した。すなわち、電気伝導度を低下させることなく、耐熱性、耐久性を有した電解質膜に改質されていることが分かる。
【0073】
一方、アミン処理時間を1時間として、アミン化合物の添加量を実施例8〜11と同様に変化させた実施例12〜15についても実施例8〜11と同様の傾向が見られるが、アミン化合物の添加量が多い実施例12の場合は、比較例1に比較して1分間のクリープ伸びは大幅に小さいものの、実施例8に比べ、電気伝導度の低下が見られた。
【0074】
これらのことから、アミン処理工程の後に行う加熱処理条件が一定の場合には、アミン化合物の添加量が少なく、アミン処理時間が短い方が、耐クリープ特性、電気伝導度の両者の特性が良くなることが分かる。
【0075】
(実施例16)
アミン化合物としてアンモニアの1.0M(モル/L)1、4−ジオキサン溶液5mlを加え、2日間浸漬した後、この膜を取り出し、R113及びTHF溶液で洗浄し、引き続き、膜をロータリーポンプの減圧下120℃にて3日間加熱処理を行った以外は、実施例1と同様の手順に従い、膜を処理した。この電解質膜を実施例16とする。また、実施例1と同様に電気伝導度の測定を行い、耐クリープ評価については8分間のクリープ伸びの測定も行った。
【0076】
(実施例17〜19)
アミン化合物であるアンモニアへの浸漬時間を5日、7日、10日間とした以外は、実施例16と同様の手順に従い、各膜を処理した。これらの電解質膜をそれぞれ実施例17、実施例18、実施例19とする。また、実施例16と同様に電気伝導度の測定及び耐クリープ評価を行った。
【0077】
(実施例20)
加熱処理する時間を2時間とした以外は、実施例16と同様の手順に従い、膜を処理した。この膜を実施例20とする。また、実施例16と同様に電気伝導度の測定及び耐クリープ評価を行った。
【0078】
(実施例21)
加熱処理を行わなかった以外は、実施例16と同様の手順に従い、膜を処理した。この膜を実施例21とする。また、実施例16と同様に電気伝導度の測定及び耐クリープ評価を行った。
【0079】
(実施例22)
アミン化合物としてアンモニアの1.0M(モル/L)1、4−ジオキサン溶液5mlを加え、2日間浸漬した後、この膜を取り出し、R113及びTHF溶液で洗浄し、次いで、10%のトリエチルアミンのR113溶液中で100℃、5時間加熱し、塩基処理を行った後、引き続き、膜をロータリーポンプの減圧下120℃にて2時間加熱処理を行った以外は、実施例1と同様の手順に従い、膜を処理した。この電解質膜を実施例22とする。また、実施例16と同様に電気伝導度の測定及び耐クリープ評価を行った。
【0080】
以上のように作製した実施例16〜22、及び比較例1の電解質膜の試験条件と各特性測定結果を表3に示す。
【0081】
【表3】
【0082】
表3は、アミン化合物(アンモニア)によるアミン処理時間とアミン処理の後に行う加熱処理条件を変化させた結果及び、アミン処理、加熱処理の後に、塩基処理を行った結果を示している。先ず、アミン処理の後に行う加熱処理条件を一定とし、アミン処理時間を変化させた実施例16〜19について説明する。
【0083】
実施例16〜19からどの実施例も、1分間・8分間のクリープ伸びとも、比較例1に比べて大幅に小さく、耐クリープ特性が向上していることが分かる。また、電気伝導度については、アミン処理時間が短い方が、電気伝導度の低下が少ない。また、実施例16においては比較例1より高い電気伝導度を示した。
【0084】
すなわち、用いるアミン化合物がアンモニアの場合も同様に、アミン処理工程の後に行う加熱処理が一定の場合には、アミン処理時間が短い方が、耐クリープ特性、電気伝導度の両者の特性が良いことが分かる。また、用いるアミン化合物の種類によって、アミン処理を行う最適な時間は異なっており、アミン化合物の種類により、アミン処理時間を変化させる必要があることも分かる。
【0085】
次に、アミン処理時間は同じで、加熱処理を行わなかった実施例21と加熱処理を2時間、3日間行った実施例20、16について比較してみると、加熱処理を行った方がクリープ伸びが小さく、また、加熱処理時間が長いほど、電気伝導度、耐クリープ特性が向上した。
【0086】
これらのことから、希望する電気伝導度と耐クリープ特性を得られるように、電解質を使用する条件、用途に応じてアミン処理時間や加熱処理条件等を適宜調節して改質すれば良いことが分かる。
【0087】
また、アミン処理を行った後、120℃にて2時間加熱処理を行い、更に塩基としてトリエチルアミンを用い100℃、5時間の条件にて塩基処理を行った実施例22と、塩基処理を行わなかった実施例20、比較例1について比較してみると、実施例22は電気伝導度を低下させることなく、耐熱性、耐クリープ特性が向上していることが分かる。また、実施例20に比べ、8分間のクリープ伸びも向上した。
【0088】
このように、塩基処理を行った場合に電気伝導度が低下しなかった理由としては、架橋点において、プロトンの受容体である塩基が作用することにより、架橋点のプロトンがより放出されやすくなったため、十分な電気伝導度を発現し、耐熱性、耐久性が向上したものと考えられる。
【0089】
(実施例23)
アミン化合物としてナトリウムアミド500mgのTHF溶液5ml懸濁液を加え、2日間浸漬した後、この膜を取り出し、R113及びTHF溶液で洗浄し、引き続き、膜をロータリーポンプの減圧下120℃にて3日間加熱処理を行った以外は、実施例1と同様の手順に従い、膜を処理した。この電解質膜を実施例23とする。また、実施例1と同様に電気伝導度の測定及び耐クリープ評価を行った。
【0090】
(実施例24)
アミン化合物として1−ヘキシルアミン1mlを加え、2日間浸漬した後、この膜を取り出し、R113及びTHF溶液で洗浄し、引き続き、膜をロータリーポンプの減圧下120℃にて3日間加熱処理を行った以外は、実施例16と同様の手順に従い、膜を処理した。この電解質膜を実施例24とする。また、実施例1と同様に電気伝導度の測定及び耐クリープ評価を行った。
【0091】
以上のように作製した実施例23、24及び比較例1の電解質膜の試験条件と各特性測定結果を表4に示す。
【0092】
【表4】
【0093】
実施例23、24はアミン化合物として金属アミドであるナトリウムアミド、1級アミンとして1−ヘキシルアミンを用いた場合であるが、これらも比較例1と比較した場合、前記した実施例と同様にクリープ伸びが小さくなり、耐クリープ特性が向上したものの、表3に示した実施例16のようにアミン化合物としてアンモニアを用いた場合に比べると電気伝導度の低下が見られた。しかしながら、アミン化合物としてアンモニアを用いた実施例16の場合は、電気伝導度と耐クリープ特性がともに向上されており、アミン化合物としてはアンモニアが好適であることが分かる。
【0094】
次に、パーフルオロ高分子電解質中のスルホン酸基総数に対するアミン化合物由来の窒素量のモル分率を調べる目的で元素分析を行った。その結果、実施例1のスルホン酸基総数に対する窒素モル分率Nsul(%)は1.5%、実施例2は4.2%、実施例3は9.3%、実施例4は17%であった。図1に、スルホン酸基総数に対する窒素モル分率Nsul(%)と1分間のクリープ伸び及び電気伝導度の関係を示す。
【0095】
図1から分かるように、窒素モル分率Nsul(%)が増加するに連れて、1分間のクリープ伸びは窒素モル分率Nsul(%)が10%程度までは急激に小さくなり、その後はほぼ一定となる挙動を示した。また、電気伝導度については窒素モル分率Nsul(%)が5%程度まではそれほど低下しなかったが、10%以降で、その低下の割合が大きくなった。
【0096】
この結果から、窒素モル分率N(%)が少なすぎる場合には、耐クリープ特性向上の効果が少なく、逆に窒素モル分率N(%)が多すぎる場合は、耐クリープ特性は向上するものの、電気伝導度が低下してしまうことが分かる。
【0097】
次に、膜断面における窒素密度n(%)(単位体積当たりの窒素モル分率N(%))の分布を測定した結果について説明する。図2はアミン化合物としてLBTMSAを使用した実施例4の膜断面にわたる窒素密度分布を、図3はアミン化合物としてアンモニアを使用した実施例17の膜断面にわたる窒素密度分布を示している。
【0098】
図2によると、実施例4の膜は膜の表面側において、局所的に窒素密度n(%)のピークが存在し、不均一な分布となっおり、その最大値nmaxは75%近くにまで達している。一方、図3より、実施例17の膜は膜断面にわたり、窒素密度n(%)の分布が均一になっており、その最大値nmaxは10%〜20%の範囲にあり、それぞれ全く異なる窒素密度分布を示していることが分かる。
【0099】
これは、実施例4においては、アミン化合物として、アミン化合物がパーフルオロ高分子電解質膜中に拡散する拡散速度が、アミン化合物とパーフルオロ高分子電解質膜との反応速度よりも遅いLBTMSAを用いたことにより、アミン化合物が膜の中心部まで拡散する前までに、膜の表面近傍で反応が局所的に生じたためと推測される。
【0100】
一方、実施例17においては、アミン化合物として、アミン化合物がパーフルオロ高分子電解質膜中に拡散する拡散速度が、アミン化合物とパーフルオロ高分子電解質膜との反応速度よりも速いアンモニアを用いたことにより、アミン化合物が膜の中心部まで十分拡散した後、反応が生じたため、膜断面にわたって均一な窒素密度分布となったものと推測される。
【0101】
また、実施例4と実施例17の電解質膜の電気伝導度を比較した場合、実施例4は1.7x10−2(S/cm)であったのに対し、実施例17は5.54x10−2S/cmと比較的高い値を示した。これは、実施例4の場合、プロトン伝導性を示す電解質基の量が著しく少なくなる箇所が膜中に存在することにより、電気伝導度が低下してしまったためと考えられる。このことから、膜断面にわたって窒素密度分布レベルがほぼ一定で、均一に分布させた方が良いことが明らかとなった。
【0102】
本発明は、上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能であることは勿論である。例えば、上記実施例ではパーフルオロ高分子電解質としてナフィオン膜、アミン化合物と接触させるアミン処理工程において、アミン化合物としてリチウムビス(トリメチルシリル)アミド、アンモニア、ナトリウムアミド、1−ヘキシルアミンの例を示したが、それ以外に適用できるものである。また、アミン化合物によるアミン処理工程における条件や、その後に塩基処理や加熱処理を行った場合における各種条件についても、耐クリープ特性、電気伝導度が最適な値となるよう調節できるものである。
【0103】
【発明の効果】
本発明に係る電解質の改質方法によれば、従来高温での使用が困難であったパーフルオロ高分子電解質あるいはその前駆体をアミン処理することにより、高温での軟化や変形を抑制することができ、また、長期使用時のクリープを阻止することが可能となった。また、電気伝導度を低下させることなく、耐熱性、耐久性を大幅に向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】スルホン酸基総数に対する窒素モル分率Nsul(%)と1分間のクリープ伸び及び電気伝導度の関係を示した図である。
【図2】アミン化合物としてLBTMSAを使用してアミン処理を行った電解質膜の膜断面にわたる窒素密度分布を示した図である。
【図3】アミン化合物としてアンモニアを使用してアミン処理を行った電解質膜の膜断面にわたる窒素密度分布を示した図である。
Claims (4)
- スルホニルハライド基を側鎖に有するパーフルオロ高分子電解質に非水下でアミン化合物を接触させるアミン処理工程と、
前記アミン処理工程の後、前記パーフルオロ高分子電解質に残留するスルホニルハライド基を加水分解処理する前に、前記アミン化合物の非存在下で前記パーフルオロ高分子電解質を加熱する加熱処理工程とを有することを特徴とする電解質の改質方法。 - 前記加熱処理は、減圧下あるいは不活性ガス雰囲気下で行なうことを特徴とする請求項1に記載の電解質の改質方法。
- 前記アミン工程の後に、前記パーフルオロ高分子電解質に塩基を接触させる塩基処理工程を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の電解質の改質方法。
- 前記アミン処理は、前記アミン化合物の前記パーフルオロ高分子電解質への拡散速度が前記アミン化合物と前記パーフルオロ高分子電解質との反応速度よりも速いアミン化合物を前記パーフルオロ高分子電解質に接触させる処理であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電解質の改質方法。
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