JP4594131B2 - セルロースアシレートフィルム、位相差板、偏光板、液晶表示装置およびセルロースアシレートフィルムの製造方法 - Google Patents

セルロースアシレートフィルム、位相差板、偏光板、液晶表示装置およびセルロースアシレートフィルムの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、膜厚方向に負のレターデーションを有するセルロースアシレートフィルム、並びにそれを用いた位相差板、偏光板および液晶表示装置に関する。また、本発明は、セルロースアシレートフィルムの製造方法にも関する。
セルロースエステルフィルムは、支持体としてハロゲン化写真感光材料に使用されたり、位相差板、位相差板の支持体、偏光板の保護フィルムとして液晶表示装置に使用されたりしている。セルロースアシレートフィルムを、液晶表示装置等のような光学的用途に使用する場合、フィルムが透明でヘイズが小さく、光学異方性が制御されていることが非常に重要である。セルロースエステルフィルムは一般に、面内方向のレターデーション(Re)の制御が容易であるが、膜厚方向のレターデーション(Rth)の制御が難しいとされている。特に、セルロースエステルフィルムの主たる製造法として採用されている溶液流延製膜法においては、製膜過程で必然的に膜厚方向へ圧縮力が加わるため、膜厚方向のレターデーションが低い値となるようにセルロースエステルフィルムを製造することは非常に困難であった。
セルロースエステルフィルムのうち、画像表示装置等の光学用途に最も一般的に用いられているセルロースアセテートフィルムは、膜厚方向のレターデーション(Rth)は通常正の値を示すが、セルロースアセテートの酢化度を上昇させることによってRthを低くすることができる。このため、酢化度が著しく高いセルロースアシレートを用いることによって、Rthが負のセルロースアセテートフィルムを提供することが期待される。しかしながら、酢化度が高くなると有機溶媒への溶解性が低下するため、高酢化度のセルロースアシレートをハロゲン系有機溶媒に膨潤させた後に室温に近い温度で撹拌しても十分に溶解させることができない。このため、高酢化度のセルロースアシレートを用いて、面状に優れた光学用途のフィルムを製膜することはできなかった。特に、近年の液晶表示装置の高画質化、高輝度化に伴って、フィルムのブツやムラが目立ちやすくなっているため、面状の向上は重要である。
一方、非特許文献1や特許文献2には、セルロースアセテートを混合脂肪酸エステルとすることで、溶媒への溶解性を向上させることができることが記載されている。しかしながら、単に混合脂肪酸エステルとするだけでは、光学特性に優れ、実用的なフィルムを提供することはできない。
負のRthを有するセルロースエステルフィルムを提供することができれば、このフィルムをそのままIPSモードの液晶表示装置の位相差板として用いてパネルの色味やコントラストを向上させ、優れた画質を実現することが可能になる。また、正のRthを有するセルロースエステルフィルムを貼り合わせることにより、一般的に容易に制御できないRthを自在に調整した位相差板を製造することも可能になる。
Rthが負の値となるポリマーフィルムとしては、複雑な方法で製造されたポリカーボネートフィルムが知られている(特許文献1)。しかし、このフィルムは製造方法が複雑なために生産性が十分でなく、しかもポリカーボネートフィルムとセルロースエステルフィルムでは、膨張係数のような物理的性質や、屈折率のような光学的性質や、透湿係数が異なる。したがって、ポリカーボネートフィルムとセルロースエステルフィルムとを貼り合せると、物理的性質の違いによる問題(例えば、環境に依存する膨張係数の違いに起因するカール)や光学的性質の違いによる問題(例えば、貼り合わせ界面での反射等に起因する透過率低下)が発生してしまう。また、位相差板の機能を持たせた偏光板保護フィルムとして用いると、透湿係数の低さによる問題(例えば、水を含んだ偏光子が乾燥しないことに起因する偏光度低下)が発生してしまう。
このため、負のRthを有するセルロースエステルフィルムを製造することが切望されている。
Ind.Eng.Chem.、43巻、688頁、1951年 特開2000−231016号公報 特開平8−231761号公報
本発明の目的は、膜厚方向のレターデーション値(Rth)が負である光学用途に適したセルロースアシレートフィルムを提供することにある。より具体的には、負のRthが環境条件によって変動し難くて、フィルム中の微少異物が少なくて、ヘイズが良好なセルロースアシレートフィルムを提供することにある。また、本発明は、Rthが負である光学用途に適したセルロースアシレートフィルムを、生産性良く製造する方法を提供することも目的とする。さらに、光学特性に優れた偏光板、位相差板および液晶表示装置を提供することも目的とする。
本発明は、下記のセルロースアシレートフィルム、位相差板、偏光板、液晶表示装置およびセルロースアシレートフィルムの製造方法を提供する。
[1] リンタ由来で下記式(I)〜(III)を満足するセルロースアシレートからなり、ヘイズが0.6%以下であり、且つ膜厚方向のレターデーション値が0nm未満であることを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
(I) 2.87≦SA+SP≦3
(II) 0≦SA≦1.7
(III) 1.3≦SP≦2.9
(式中、SAはセルロースの水酸基に置換されているアセチル基の置換度を表し、SPはセルロースの水酸基に置換されているプロピオニル基の置換度を表す。)
[2] 微細異物が0〜10個/mm2であることを特徴とする[1]に記載のセルロースアシレートフィルム。
[3] 膜厚方向のレターデーション値が−600〜−20nmであることを特徴とする[1]または[2]に記載のセルロースアシレートフィルム。
[4] 膜厚方向のレターデーション値が−400〜−40nmであることを特徴とする[1]または[2]に記載のセルロースアシレートフィルム。
[5] 25℃・相対湿度10%における膜厚方向のレターデーション値と25℃・相対湿度80%における膜厚方向のレターデーション値との差が15nm以下であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム。
[6] ヘイズが0.3%以下であることを特徴とする[1]〜[5]のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム。
[7] 偏光膜の少なくとも一方の面に、[1]〜[6]のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルムを有することを特徴とする偏光板。
[8] [1]〜[6]のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルムを用いたことを特徴とする位相差板。
[9] [1]〜[6]のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルムを用いたことを特徴とする液晶表示素子。
[10] リンタ由来で下記式(I)〜(III)を満足するセルロースアシレートと沸点が80℃以下のハロゲン化炭化水素と沸点が95℃以上のアルコールを含む溶媒とを用いて下記工程(A)〜(C)の少なくとも1つを実施し、得られた混合物をろ過することにより溶液を得て、さらに該溶液を用いて流延製膜することを特徴とするセルロースアシレートフィルムの製造方法。
(I) 2.87≦SA+SP≦3
(II) 0≦SA≦1.7
(III) 1.3≦SP≦2.9
(式中、SAはセルロースの水酸基に置換されているアセチル基の置換度を表し、SPはセルロースの水酸基に置換されているプロピオニル基の置換度を表す。)
(A) 前記溶媒に前記セルロースアシレートを−10〜35℃で膨潤させる工程
(B) 前記溶媒と前記セルロースアシレートとの混合物を0.2〜30Mpaで
40〜150℃にて加熱溶解させる工程
(C) 前記溶媒と前記セルロースアシレートとの混合物を0〜35℃で撹拌する
工程
[11] 前記溶媒の10〜30質量%がアルコールであることを特徴とする[10]に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
[12] 前記溶媒が沸点が95℃以上の有機溶媒を1〜5質量%含有することを特徴とする[10]または[11]に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
[13] 前記溶媒が、沸点が95℃以上のアルコールの少なくとも1種類と、沸点が95℃未満のアルコールの少なくとも1種類を含有することを特徴とする[10]〜[12]のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
[14] 前記沸点が80℃以下の有機溶媒がジクロロメタンであることを特徴とする[10]〜[13]のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、Rthが負で環境条件によって変動し難く、フィルム中の微少異物が少なくて、ヘイズが良好であるという特徴と有する。このため、本発明のセルロースアシレートフィルムを用いれば、優れた光学特性を示す偏光板や位相差板などを提供することができる。また、これらを液晶表示装置に組み込むことにより、信頼性の高い優れた画像表示が可能になる。また、本発明の製造方法によれば、このような光学特性に優れたセルロースアシレートフィルムを生産性良く製造することができる。
以下において、本発明のセルロースアシレートフィルムおよびその製造方法について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
<本発明のセルロースアシレートフィルムの光学特性>
本発明のセルロースアシレートフィルムは、Rthが負である点に1つの特徴がある。本発明のセルロースアシレートフィルムのRthは、−600〜−20nmが好ましく、−400〜−40nmがより好ましく、−200〜−40nmがさらに好ましい。
また、本発明のセルロースアシレートフィルムは、Rthの湿度依存性が小さい点にも特徴がある。Rthの湿度依存性は15nm以下であれば実用上問題はないが、より好ましくは13nm以下であり、さらに好ましくは10nm以下である。
本願におけるフィルムのレターデーション値とRthの湿度依存性は、後述する実施例に記載される方法で得たものを意味する。
<セルロースアシレート>
本発明のセルロースアシレートフィルムは、綿花リンタ由来のセルロースアシレートを含む。ここでいう綿花リンタ由来のセルロースアシレートとは、綿花リンタ由来のセルロースを原料として生物的あるいは化学的にアシレート基を導入して得られるセルロース骨格を有する化合物を意味する。一般に、セルロースエステルの原料としては、綿花リンタから抽出されたセルロースと木材パルプから抽出されたセルロースがあるが、フィルムの白化防止の観点、および微小異物低減の観点をはじめとし、さらには製膜時の剥離荷重低減の観点から、本発明では綿花リンタ由来のセルロースアセテートを用いる。これによって、得られるフィルムに残存してしまう微細異物を減少させることができる。顕微鏡にてクロスニコル下で観測され、液晶表示装置の輝点となり得るフィルム中の微小異物の数は、0〜10個/mm2であることが好ましく、0〜5個/mm2であることがより好ましく、0〜2個/mm2であることが最も好ましい。
セルロースアシレートのエステルを構成する酸は、主として、炭素数2のカルボン酸(酢酸)および/または炭素数3のカルボン酸(プロピオン酸)である。炭素数4以上のカルボン酸を主としてなるセルロースアセテートフィルムは、側鎖がフレキシブルであるが故に、製膜時の圧縮力により側鎖が面内に寝てしまい、Rthを増加させる働きをしてしまうために、膜厚方向に大きな負の値を有するセルロースアセテートフィルムを製造することはできない。具体的には、本発明で用いるセルロースアシレートは、下記式(I)〜(III)の全てを満足するものである。
(I) 2.87≦SA+SP≦3
(II) 0≦SA≦1.7
(III) 1.3≦SP≦2.9
(式中、SAはセルロースの水酸基に置換されているアセチル基の置換度を表し、SPはセルロースの水酸基に置換されているプロピオニル基の置換度を表す。)
より好ましくは、下記式(IV)〜(VI)の全てを満足するものである。
(IV) 2.89≦SA+SP≦2.99
(V) 0≦SA≦1.5
(VI) 1.5≦SP≦2.85
さらに好ましくは、下記式(VII)〜(IX)の全てを満足するものである。
(VII) 2.90≦SA+SP≦2.98
(VIII)0.1≦SA≦1.0
(IX) 2.0≦SP≦2.8
最も好ましくは、下記式(X)〜(XII)の全てを満足するものである。
(X) 2.92≦SA+SP≦2.98
(XI) 0.1≦SA≦0.6
(XII) 2.4≦SP≦2.8
上記式(I)で表されるようにSA+SPが2.87以上の綿花リンタ由来のセルロースアシレートを用いることにより、負のRth値を有し、ヘイズが低く、さらに微細異物が少ないフィルムを製造することが可能になる。また、上記式(III)で表されるようにプロピオニル置換度を高めることにより、セルロースアセテートよりもRthを低下させ、Rthの湿度依存性を低下させることが可能になる。さらに、このようなセルロースアシレートを用いれば、セルロース中の残水酸基量が低いためにバンド面からの剥離荷重を低下させることができ、また、後述するように高沸点溶媒を特定の割合だけ混合させた溶媒を用いることにより、横段ムラなどのムラが少なく、面状に優れたフィルムを得ることが可能となる。
セルロースアシレートの合成方法について、基本的な原理は、右田伸彦他、木材化学180〜190頁(共立出版、1968年)に記載されている。セルロースアシレートの代表的な合成方法は、カルボン酸無水物−カルボン酸−硫酸触媒による液相アシル化法である。具体的には、綿花リンタのセルロース原料を適当量の酢酸などのカルボン酸で前処理した後、予め冷却したアシル化混液に投入してエステル化し、完全セルロースアシレート(2位、3位および6位のアシル置換度の合計が、ほぼ3.00)を合成する。上記アシル化混液は、一般に溶媒としてのカルボン酸、エステル化剤としてのカルボン酸無水物および触媒としての硫酸を含む。カルボン酸無水物は、これと反応するセルロースおよび系内に存在する水分の合計よりも、化学量論的に過剰量で使用することが普通である。
アシル化反応終了後に、系内に残存している過剰カルボン酸無水物の加水分解を行うために、水または含水酢酸を添加する。エステル化触媒を一部中和するために、中和剤(例えば、カルシウム、マグネシウム、鉄、アルミニウムまたは亜鉛の炭酸塩、酢酸塩、水酸化物または酸化物)の水溶液を添加してもよい。次に、得られた完全セルロースアシレートを少量のアシル化反応触媒(一般には、残存する硫酸)の存在下で、20〜90℃に保つことによりケン化熟成し、所望のアシル置換度および重合度を有するセルロースアシレートまで変化させる。所望のセルロースアシレートが得られた時点で、系内に残存している触媒を前記のような中和剤を用いて完全に中和するか、あるいは中和することなく水または希酢酸中にセルロースアシレート溶液を投入(あるいは、セルロースアシレート溶液中に、水または希酢酸を投入)してセルロースアシレートを分離し、洗浄および安定化処理によりセルロースアシレートを得る。
セルロースアシレートの重合度は、粘度平均重合度で150〜500が好ましく、200〜400がより好ましく、220〜350がさらに好ましい。粘度平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、105〜120頁、1962年)に従い測定できる。粘度平均重合度の測定方法については、特開平9−95538号公報にも記載がある。
低分子成分が少ないセルロースアシレートは、平均分子量(重合度)が高いが、粘度は通常のセルロースアシレートよりも低い値になる。低分子成分の少ないセルロースアシレートは、通常の方法で合成したセルロースアシレートから低分子成分を除去することにより得ることができる。低分子成分の除去は、セルロースアシレートを適当な有機溶媒で洗浄することにより実施できる。また、低分子成分の少ないセルロースアシレートを合成することもできる。低分子成分の少ないセルロースアシレートを製造する場合、アシル化反応における硫酸触媒量を、セルロース100質量に対して0.5〜25質量部に調整することが好ましい。硫酸触媒の量を上記範囲にすると、分子量分布の点でも好ましい(分子量分布の均一な)セルロースアシレートを合成することができる。
セルロースアシレートの原料綿や合成方法については、公開技報2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)7〜12頁にも記載がある。
セルロースアシレートからなる本発明のセルロースアシレートフィルムは、セルロースアシレートのみからなるフィルムであってもよいし、セルロースアシレート以外のポリマーおよび/またはポリマー以外の成分(例えば、後述する添加剤など)を含むフィルムであってもよい。
本発明のセルロースアシレートフィルムを構成するポリマーの好ましくは55質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上は、リンタ由来で上記式(I)〜(III)を満足するセルロースアシレートであることが望ましい。リンタ由来で上記式(I)〜(III)を満足するセルロースアシレートは、本発明のセルロースアシレートフィルムに1種類だけ含まれていてもよいし、2種以上が含まれていてもよい。
<セルロースアシレート溶液>
本発明のセルロースアシレートフィルムを製造する際に用いるセルロースアシレート溶液は、セルロースアシレート粒子を原料として調製することが好ましい。使用する粒子の90質量%以上は、0.2〜5mmの粒子サイズを有することが好ましい。また、使用する粒子の50質量%以上が0.4〜4mmの粒子サイズを有することが好ましい。セルロースアシレート粒子は、なるべく球形に近い形状を有することが好ましい。
セルロースアシレート溶液の調製に使用するセルロースアシレートは、含水率が1.5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましく、0.7質量%以下であることが最も好ましい。セルロースアシレートは一般に、1.8〜5質量%の含水率を有している。従って、セルロースアシレートを乾燥してから使用することが好ましい。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、上記式(I)〜(III)を満たすセルロースアシレートを、単に従来から日常的に用いられてきた処方の溶媒に溶解して、従来と同一の工程で製膜しても得ることはできない。実際には、フィルム中のポリマーの結晶サイズが大きく成長し、白化してしまう現象が起きてしまう。この問題は、高沸点溶媒量を通常よりも多くすることにより解決できるが、同時にRthが期待される値よりも大きくなってしまうことがある。そこで、以下に記載するように溶媒条件や製造条件を調整することが好ましい。
セルロースアシレート溶液の主溶媒は、沸点が80℃以下の有機溶媒が乾燥負荷低減の観点から好ましい。主溶媒の沸点は10〜80℃であることがより好ましく、20〜60℃であることがさらに好ましく、30〜45℃であることがさらにまた好ましい。このような主溶媒としては、ハロゲン化炭化水素、エステル、ケトン、エーテル、アルコールおよび炭化水素などが挙げられ、分岐構造あるいは環状構造を有していても良い。また、エステル、ケトン、エーテルおよびアルコールの官能基(すなわち、−O−、−CO−、−COO−、−OH)のいずれか二つ以上を有していてもよい。さらに、エステル、ケトン、エーテルおよびアルコールの炭化水素部分における水素原子は、ハロゲン原子(特に、フッ素原子)で置換されていてもよい。なお、セルロースエステル溶液の主溶媒とは、単一の溶媒からなる場合には、その溶媒のことを意味し、複数の溶媒からなる場合には、構成する溶媒のうち、最も質量分率の高い溶媒のことを意味する。
ハロゲン化炭化水素としては、塩素化炭化水素がより好ましく、ジクロロメタンおよびクロロホルムなどが挙げられ、ジクロロメタンがさらに好ましい。
エステルとしては、メチルホルメート、エチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテートなどが挙げられる。
ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトンなどが挙げられる。
エーテルとしては、ジエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、1,3−ジオキソラン、4−メチルジオキソラン、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフランなどが挙げられる。
アルコールとしては、メタノール、エタノール、2−プロパノールなどが挙げられる。
炭化水素としては、n−ペンタン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、ベンゼンなどが挙げられる。
これらと併用される有機溶媒としては、ハロゲン化炭化水素、エステル、ケトン、エーテル、アルコールおよび炭化水素などが挙げられる。これらは分岐構造あるいは環状構造を有していても良い。また、エステル、ケトン、エーテルおよびアルコールの官能基(すなわち、−O−、−CO−、−COO−、−OH)のいずれか二つ以上を有していてもよい。さらに、エステル、ケトン、エーテルおよびアルコールの炭化水素部分における水素原子は、ハロゲン原子(特に、フッ素原子)で置換されていてもよい。
ハロゲン化炭化水素としては、塩素化炭化水素がより好ましく、ジクロロメタンおよびクロロホルムなどが挙げられ、ジクロロメタンがさらに好ましい。
エステルとしては、メチルホルメート、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテート、ペンチルアセテートなどが挙げられる。
ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノンなどが挙げられる。
エーテルとしては、ジエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、4−メチルジオキソラン、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、アニソール、フェネトールなどが挙げられる。
アルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノール、シクロヘキサノール、2−フルオロエタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールなどが挙げられる。
炭化水素としては、n−ペンタン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。
二種類以上の官能基を有する有機溶媒としては、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、メチルアセトアセテートなどが挙げられる。
これらのうち、全溶媒中に少なくとも10〜30質量%、より好ましくは11〜30質量%、さらに好ましくは12〜25質量%のアルコールを含有することがバンドからの剥離荷重低減の観点から好ましい。
また、Rth低減の観点から、乾燥過程初期において、ハロゲン化炭化水素とともに揮発する割合が小さく、次第に濃縮される溶媒も使用することが好ましい。すなわち、沸点が95℃以上の、セルロースエステルの貧溶媒である有機溶媒を好ましくは1〜5質量%、より好ましくは1.5〜5質量%、さらに好ましくは2〜5質量%使用することが望ましい。
バンドからの剥離荷重低減およびRth低減双方の観点から、沸点が95℃以上の有機溶媒はアルコールであることが好ましい。また、乾燥負荷低減による生産性向上の観点から、アルコールは2種類以上のアルコールの混合物であって、沸点が95℃以上のアルコールと沸点が95℃未満のアルコールとからなることが好ましい。
本発明において好ましく用いられる有機溶媒の組合せの例を以下に挙げるが、本発明で用いることができる有機溶媒はこれらに限定されるものではない。比率の数値は、質量部である。
(1)ジクロロメタン/メタノール/エタノール/ブタノール=80/10/5/5
(2)ジクロロメタン/アセトン/メタノール/プロパノール=80/10/5/5
(3)ジクロロメタン/メタノール/ブタノール/シクロヘキサン=80/10/5/5
(4)ジクロロメタン/メチルエチルケトン/メタノール/ブタノール=80/10/5/5
(5)ジクロロメタン/アセトン/メチルエチルケトン/エタノール/ブタノール=68/10/10/7/5
(6)ジクロロメタン/シクロペンタノン/メタノール/ペンタノール=80/2/15/3
(7)ジクロロメタン/メチルアセテート/エタノール/ブタノール=70/12/15/3
(8)ジクロロメタン/シクロヘキサノン/メタノール/ペンタノール=80/2/15/3
(9)ジクロロメタン/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/ペンタノール=50/20/20/5/5
(10)ジクロロメタン/1,3−ジオキソラン/メタノール/ブタノール=70/20/5/5
(11)ジクロロメタン/ジオキサン/アセトン/メタノール/ブタノール=80/2/10/5/3
(12)ジクロロメタン/アセトン/シクロペンタノン/エタノール/イソブタノール/シクロヘキサン=60/18/3/15/2/2
(13)ジクロロメタン/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/イソブタノール=70/10/10/5/5
(14)ジクロロメタン/アセトン/エチルアセテート/エタノール/ブタノール/ヘキサン=69/10/10/5/5/1
(15)ジクロロメタン/メチルアセテート/メタノール/イソブタノール=65/20/10/5
(16)ジクロロメタン/シクロペンタノン/エタノール/ブタノール=86/2/10/2
(17)アセトン/エタノール/ブタノール=82/15/3
(18)メチルアセテート/アセトン/メタノール/ブタノール=77/10/11/2
(19)ジクロロメタン/メタノール/ブタノール(81/15/4)
(20)ジクロロメタン/メタノール/ブタノール(83/15/2)
(21)ジクロロメタン/ブタノール(92/8
調製するセルロースアシレート溶液の濃度は、10〜50質量%が好ましく、15〜40質量%がさらに好ましく、20〜35質量%が最も好ましい。セルロースアシレートを溶媒に溶解する段階で所定の濃度になるように調整することができる。また、予め低濃度(例えば9〜14質量%)の溶液を調製しておき、使用時に濃縮してもよく、この手法は溶解性の比較的悪いセルロースエステルを用いる場合に特に有効である。さらに、予め高濃度の溶液を調製後に希釈してもよい。添加剤を添加することで、セルロースエステルの濃度を低下させることもできる。
セルロースアシレート溶液は、各種の液体または固体の添加剤を含んでいてもよい。添加剤の例には、可塑剤(好ましい添加量はセルロースエステルに対して0.1〜20質量%、以下同様)、改質剤(0.1〜20質量%)、紫外線吸収剤(0.001〜5質量%)、平均粒子サイズが5〜3000nmである微粒子粉体(0.001〜5質量%)、フッ素系界面活性剤(0.001〜2質量%)、剥離剤(0.0001〜2質量%)、劣化防止剤(0.0001〜2質量%)、光学異方性制御剤(0.1〜15質量%)、赤外線吸収剤(0.1〜5質量%)が含まれる。可塑剤については、特開2001−151901号公報に記載がある。赤外吸収剤については、特開平2001−194522号公報に記載がある。また、セルロースアシレートフィルムの添加剤については、公開技報2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)16頁〜22頁にも記載がある。添加剤を添加する時期は、添加剤の種類に応じて決定する。
本発明のセルロースアシレートフィルムは多層構造を有していてもよく、その場合は各層における添加剤の種類や量が異なってもよい(例えば、特開平2001−151902号公報記載)。
セルロースアシレート溶液の調製方法については、特開昭58−127737号、同61−106628号、特開平2−276830号、同4−259511号、同5−163301号、同9−95544号、同10−45950号、同10−95854号、同11−71463号、同11−302388号、同11−322946号、同11−322947号、同11−323017号、特開2000−53784号、同2000−273184、同2000−273239号の各公報の記載を参考にすることができる。また、セルロースアシレート溶液の調製工程においては、積極的に冷却を行わなくてもよい。
セルロースアシレート溶液は、30℃での粘度が1〜400Pa・sであることが好ましく、10〜200Pa・sであることがさらに好ましい。
粘度および動的貯蔵弾性率は、試料溶液1mLを直径4cm/2°の容器(STEEL CONE、TA Instruments社製)に入れ、レオメーター(CLS500、TA Instruments社製)を用いて測定する。測定条件は、装置(Oscillation Step/Temperature Ramp)を用いて測定した。なお、試料溶液を予め測定開始温度にて液温一定となるまで保温した後に、測定を開始する。
<セルロースアシレートフィルムの製造>
セルロースアシレートフィルムは、従来から用いられている溶液流延製膜方法に従い、従来から用いられている溶液流延製膜装置を用いて製造することができる。溶解機(釜)で調製されたドープ(セルロースエステル溶液)は、ろ過後、貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。ドープは30℃に保温し、ドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延し、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。
流延工程では、2種類以上のセルロースエステル溶液を同時または逐次共流延してもよい。
2種類以上のセルロースエステル溶液は、組成が全く同一であってもよい。組成が異なる場合、溶媒または添加剤の種類を溶液毎に変更することができる。2種類以上の溶液は、濃度が異なっていてもよい。2種類以上の溶液は、セルロースエステルの会合体分子量が異なっていてもよい。2種類以上の溶液は、異なる温度で保持してもよい。
金属支持体から剥離して得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて乾燥装置のロール群で搬送し乾燥を終了して巻き取り機で所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせはその目的により変わる。
ここで、本発明の条件を満たす低Rthのフィルムを得るためには、セルロースアシレートのポリマー主鎖の間隔を広げる方法が有効である。そこで、既に述べたような高沸点のセルロースエステルの貧溶媒である有機溶媒を含有させる方法が有効であり、また、乾燥完了後にフィルムを冷却する際には、フィルム温度がガラス転移温度(Tg)を上回り、主鎖間隔が広くなっている状態から急速に冷却し、主鎖間隔が広いままクエンチさせる方法が有効である。したがって、通常は100℃/分程度で冷却しているが、−30〜10℃程度の除湿風を吹き込むことにより、110〜600℃/分、より好ましくは120〜350℃/分、さらに好ましくは150〜300℃/分で冷却することが好ましい。
このようにして乾燥の終了したフィルム中の残留溶剤は0〜5質量%が好ましく、より好ましくは0〜2質量%、さらに好ましくは0〜1質量%である。乾燥終了後、両端をトリミングして巻き取る。好ましい幅は0.5〜5mであり、より好ましくは0.7〜3m、さらに好ましくは1〜2mである。好ましい巻長は300〜30000mであり、より好ましくは500〜10000m、さらに好ましくは1000〜7000mである。
Re,Rthを調整するために、セルロースアシレートフィルムを延伸させることもできる。延伸は、製膜中未乾燥の状態で実施しても良く(例えば、流延後支持体から剥ぎ取った後から乾燥完了までの間)、乾燥終了後に実施しても良い。これらの延伸は製膜工程中、オン−ラインで実施しても良く、製膜完了後、一度巻き取った後オフ−ラインで実施しても良い。
延伸はTg〜(Tg+50℃)以下で実施するのが好ましく、より好ましくは(Tg+1℃)〜(Tg+30℃)、さらに好ましくは(Tg+2℃)〜(Tg+20℃)である。好ましい延伸倍率は1%〜500%、より好ましくは3%〜400%、さらに好ましくは5%〜300%である。これらの延伸は1段で実施しても、多段で実施しても良い。ここで云う延伸倍率は、以下の式を用いて求めたものである。
延伸倍率(%)=100×{(延伸後の長さ)−(延伸前の長さ)}/延伸前の長さ
このような延伸は出口側の周速を速くした2対以上のニップロールを用いて、長手方向に延伸してもよく(縦延伸)、フィルムの両端をチャックで把持しこれを直交方向(長手方向と直角方向)に広げても良い(横延伸)。一般にいずれの場合も、延伸倍率を大きくすると、Rth大きくすることができる。また、縦延伸と横延伸の倍率の差を大きくすることでReを大きくすることができる。
さらにRe、Rthの比を自由に制御するには、縦延伸の場合、ニップロール間をフィルム幅で割った値(縦横比)を制御することで達成できる。即ち縦横比を小さくすることで、Rth/Re比の絶対値を大きくすることができる。横延伸の場合、直交方向に延伸すると同時に縦方向にも延伸したり、逆に緩和させることで制御することができる。即ち縦方向に延伸することでRth/Re比の絶対値を大きくすることができ、逆に縦方向に緩和することでRth/Re比の絶対値を小さくすることができる。
このような延伸速度は10〜10000%/分が好ましく、より好ましくは20〜1000%/分、さらに好ましくは30〜800%/分である。
また製膜方向(長手方向)と、フィルムのReの遅相軸とのなす角度θが0±3°、+90±3°もしくは−90±3°であることが好ましく、0±2°、+90±2°もしくは−90±2°であることがより好ましく、0±1°、+90±1°もしくは−90±1°であることがさらに好ましい。
本発明のセルロースアシレートフィルムの膜厚は60〜180μmが好ましく、60〜150μmがより好ましく、65〜120μmがさらに好ましい。膜厚が60μmより厚ければ偏光板等に加工する際のハンドリング性が良好で偏光板のカールを抑制しやすい。また、180μmよりも薄ければ、剥ぎ取り可能な揮発分まで乾燥させる時間を節約することができるため、生産性の観点から好ましい。膜厚ムラは未延伸、延伸後とも、膜厚方向、幅方向いずれも0〜2%が好ましく、より好ましくは0〜1.5%、さらに好ましくは0〜1%である。
本発明の未延伸および延伸後のセルロースアシレートフィルムには、適宜、表面処理を行うことにより、セルロースアシレートフィルムと各機能層(例えば、下塗り層やバック層)との接着を改善することが可能となる。表面処理には、グロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、ケン化処理(酸ケン化処理、アルカリケン化処理)が含まれ、特にグロー放電処理およびアルカリケン化処理が好ましい。
グロー放電処理は、10-3〜20Torrの低圧ガス下で実施する低温プラズマ処理を含む。また、大気圧下でのプラズマ処理も、好ましいグロー放電処理である。プラズマ励起性気体としては、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素、フロン(例えば、テトラフルオロメタン)およびそれらの混合物が用いられる。大気圧でのプラズマ処理は、好ましくは10〜1000keV、さらに好ましくは30〜500keVで実施する。照射エネルギーは、20〜500kGyが好ましく、20〜300kGyがさらに好ましい。グロー放電処理については、公開技報2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)30頁〜32頁に記載がある。
アルカリケン化処理は、フィルムにケン化液を塗布するか、あるいはフィルムを鹸化液に浸漬することにより実施する。
塗布方法は、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、バーコーティング法またはE型塗布法を採用できる。塗布液の溶媒は、フィルムに対する濡れ性が良く、フィルム表面に凹凸を形成させずに面状を良好なまま保つことが望ましい。具体的には、溶媒は、アルコールが好ましく、イソプロピルアルコールが特に好ましい。また、水(好ましくは、界面活性剤の水溶液)を溶媒として使用することもできる。アルカリは、アルカリ金属の水酸化物が好ましく、KOHおよびNaOHがさらに好ましい。ケン化塗布液のpHは、10以上が好ましく、12以上がさらに好ましい。アルカリケン化時の反応条件は、室温で1秒〜5分が好ましく、5秒〜5分がさらに好ましく、20秒〜3分が最も好ましい。アルカリケン化反応後、ケン化液塗布面を水洗するか、あるいは酸で洗浄したあと水洗することが好ましい。また、塗布式鹸化処理と後述の配向膜解塗設を、連続して行うことができ、工程数を減少できる。これらの鹸化方法は、具体的には、例えば、特開2002−82226号公報、国際公開WO02/46809号公報に内容の記載が挙げられる。
フィルムと機能層との接着を改善するため、表面処理に加えて、あるいは表面処理に代えて、下塗層(接着層)を設けることができる。下塗層については、公開技報2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)32頁に記載があり、これらを適宜、使用することができる。
セルロースエステルフィルムに設ける機能性層については、公開技報2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)32頁〜45頁に記載があり、これらを適宜、使用することができる。
<セルロースアシレートフィルムの応用>
膜厚方向のレターデーション値が負の値であるセルロースエステルフィルムは、そのまま位相差板や、位相差板の機能を持たせた偏光板の保護フィルムとして用いることができ、また、膜厚方向のレターデーション値が正の値であるセルロースエステルフィルムと積層することで、膜厚方向のレターデーション値が自在に制御された位相差板として用いることができる。
膜厚方向のレターデーション値が負の値であるセルロースエステルフィルム、あるいはそれを複数枚積層した位相差板、もしくは、それと膜厚方向のレターデーション値が正の値であるセルロースエステルフィルムとを積層したフィルムは、そのまま位相差板として用いることもでき、偏光板保護フィルムとして用いることもできる。また、上記セルロースエステルフィルムおよび位相差板を支持体とし、その上に光学異方性層(例えば、液晶性分子から形成される層)を設け、位相差板を製造することもできる。例えば、1対の偏光膜の間に備えられた液晶セルと前記偏光膜の液晶セル側に備えられた位相差板とを有する液晶表示装置の、前記位相差板として用いることができる。
偏光板保護フィルムとして用いる場合、セルロースエステルフィルムはアルカリケン化処理しておくことが望ましい。ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬して延伸した偏光膜を用いる場合、接着剤を用いて偏光膜の両面にセルロースエステルフィルムのアルカリケン化処理面を貼り合わせることができる。接着剤としては、ポリビニルアルコールまたはポリビニルアセタール(例えば、ポリビニルブチラール)の水溶液や、ビニル系ポリマー(例えば、ポリブチルアクリレート)のラテックスを用いることができる。特に好ましい接着剤は、完全ケン化ポリビニルアルコールの水溶液である。
アルカリケン化処理以外の表面処理(特開平6−94915号、同6−118232号の各公報に記載)を実施してもよい。
製造した偏光板は、使用前においては偏光板の一方の面に外部保護フィルム、反対面にセパレートフィルムが貼り合わされているのが一般的である。外部保護フィルムおよびセパレートフィルムは、偏光板の出荷や製品検査において偏光板を保護する目的で用いられる。外部保護フィルムは、偏光板を液晶セルへ貼合する面の反対面側に用いられる。セパレートフィルムは、偏光板を液晶セルへ貼合するための接着層をカバーする目的で用いられる。一般に液晶表示装置は、二枚の偏光板の間に液晶セルが設けられ、一般に液晶セルは、二枚の基板の間に液晶注入される。従って、通常の液晶表示装置では、四枚の偏光板保護フィルムを有する。本発明のセルロースアシレートフィルムは、四枚の偏光板保護フィルムのいずれに用いても良い。ただし、液晶表示装置における偏光子と液晶層との間に配置されるプラスチックフィルムとして、特に有利に用いることができる。
本発明のセルロースアシレートフィルム、およびそれを用いた位相差板および偏光板は、様々な表示モードの液晶表示装置に用いることができ、以下にこれらのフィルムが用いられる各液晶モードについて説明する。これらの液晶表示装置は、透過型、反射型および半透過型のいずれでもよい。
(TN型液晶表示装置)
本発明のセルロースアシレートフィルムを、TNモードの液晶セルを有するTN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として用いてもよい。TNモードの液晶セルとTN型液晶表示装置とについては、古くからよく知られている。TN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開平3−9325号、特開平6−148429号、特開平8−50206号、特開平9−26572号の各公報に記載がある。また、モリ(Mori)他の論文(Jpn. J. Appl. Phys. Vol.36(1997)p.143や、Jpn. J. Appl. Phys. Vol.36(1997)p.1068)に記載がある。
(STN型液晶表示装置)
本発明のセルロースアシレートフィルムを、STNモードの液晶セルを有するSTN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として用いてもよい。一般的にSTN型液晶表示装置では、液晶セル中の棒状液晶性分子が90〜360℃の範囲にねじられており、棒状液晶性分子の屈折率異方性(Δn)とセルギャップ(d)との積(Δnd)が300〜1500nmの範囲にある。STN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開2000−105316号公報に記載がある。
(VA型液晶表示装置)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、VAモードの液晶セルを有するVA型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として特に有利に用いられる。VA型液晶表示装置に用いる光学補償シートのReレターデーション値を0〜150nmとし、Rthレターデーション値を70〜400nmとすることが好ましい。Reレターデーション値は、20〜70nmであることがさらに好ましい。VA型液晶表示装置に二枚の光学的異方性ポリマーフィルムを使用する場合、フィルムのRthレターデーション値は70〜250nmであることが好ましい。VA型液晶表示装置に一枚の光学的異方性ポリマーフィルムを使用する場合、フィルムのRthレターデーション値は150〜400nmであることが好ましい。VA型液晶表示装置は、例えば特開平10−123576号公報に記載されているような配向分割された方式であっても構わない。
(IPS型液晶表示装置およびECB型液晶表示装置)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、IPSモードおよびECBモードの液晶セルを有するIPS型液晶表示装置およびECB型液晶表示装置の光学補償シートの支持体、または偏光板の保護膜としても特に有利に用いられる。これらのモードは黒表示時に液晶材料が略平行に配向する態様であり、電圧無印加状態で液晶分子を基板面に対して平行配向させて、黒表示する。これらの態様において本発明のセルロースアシレートフィルムを用いた偏光板は色味の改善、視野角拡大、コントラストの良化に寄与する。この態様においては、液晶セルの上下の前記偏光板の保護膜のうち、液晶セルと偏光板との間に配置された保護膜(セル側の保護膜)に本発明のセルロースアシレートフィルムを用いた偏光板を少なくとも片側一方に用いることが好ましい。さらに好ましくは、偏光板の保護膜と液晶セルとの間に光学異方性層を配置し、配置された光学異方性層のリターデーションの値を、液晶層のΔn・dの値の2倍以下に設定するのが好ましい。
(OCB型液晶表示装置およびHAN型液晶表示装置)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、OCBモードの液晶セルを有するOCB型液晶表示装置あるいはHANモードの液晶セルを有するHAN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートには、レターデーションの絶対値が最小となる方向が光学補償シートの面内にも法線方向にも存在しないことが好ましい。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートの光学的性質も、光学的異方性層の光学的性質、支持体の光学的性質および光学的異方性層と支持体との配置により決定される。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開平9−197397号公報に記載がある。また、モリ(Mori)他の論文(Jpn. J. Appl. Phys. Vol.38(1999)p.2837)に記載がある。
(反射型液晶表示装置)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、TN型、STN型、HAN型、GH(Guest−Host)型の反射型液晶表示装置の光学補償シートとしても有利に用いられる。これらの表示モードは古くからよく知られている。TN型反射型液晶表示装置については、特開平10−123478号公報、国際公開第98/48320号パンフレット、特許第3022477号公報に記載がある。反射型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、国際公開第00−65384号パンフレットに記載がある。
(その他の液晶表示装置)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、ASM(Axially Symmetric Aligned Microcell)モードの液晶セルを有するASM型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。ASMモードの液晶セルは、セルの厚さが位置調整可能な樹脂スペーサーにより維持されているとの特徴がある。その他の性質は、TNモードの液晶セルと同様である。ASMモードの液晶セルとASM型液晶表示装置については、クメ(Kume)他の論文(Kume et al., SID 98 Digest 1089 (1998))に記載がある。
(ハードコートフィルム、防眩フィルム、反射防止フィルム)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、またハードコートフィルム、防眩フィルム、反射防止フィルムへの適用が好ましく実施できる。LCD、PDP、CRT、EL等のフラットパネルディスプレイの視認性を向上する目的で、本発明のセルロースアシレートフィルムの片面または両面にハードコート層、防眩層、反射防止層の何れかあるいは全てを付与することができる。このような防眩フィルム、反射防止フィルムとしての望ましい実施態様は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)54頁〜57頁に詳細に記載されており、本発明のセルロースアシレートフィルムを好ましく用いることができる。
以下に実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
《測定法と評価法》
まず、実施例中で用いた特性の測定法、評価法を以下に示す。
(レターデーション)
幅方向3点(中央、端部(両端から全幅の5%の位置))を長手方向に10mごとに3回サンプリングし、1cm□の大きさのサンプルを9枚取り出し、下記の方法にしたがって求めた各点の平均値を求めた。
サンプルフィルムを25℃・相対湿度60%にて24時間調湿後、自動複屈折測定装置(ABR−10A:ユニオプト(株)製)を用いて、25℃・相対湿度60%において、サンプルフィルム表面に対し垂直方向および、フィルム面法線から±40°傾斜させた方向から波長633nmにおけるレターデーション値を測定し、さらに、プリズムカップラー(MODEL2010、Metricon製)を用いて、25℃・相対湿度60%においてサンプルフィルムの平均屈折率nを測定し、下記式にしたがって面内レターデーション値(Re)と膜厚方向のレターデーション値(Rth)とを算出した(n=(nx+ny+nz)/3)。
Re=(nx−ny)×d
Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
式中、nxはフィルム面内の遅相軸(x)方向の屈折率であり、nyはフィルム面内の進相軸(y)方向の屈折率であり、nzはフィルムの厚み方向(フィルム面と直交する方向)の屈折率であり、dはフィルムの厚み(nm)である。遅相軸はフィルム面内で屈折率が最大となる方向であり、進相軸はフィルム面内で屈折率が最小となる方向である。
レターデーション値の湿度に伴う変化は、サンプルフィルムを25℃・相対湿度10%にて調湿、測定して算出したRth(Rth(10%)と表記する)、および25℃・相対湿度80%にて調湿、測定して算出したRth(Rth(80%)と表記する)から、下記式にしたがってΔRthを算出して評価した。
ΔRth=|Rth(10%)−Rth(80%)|
(微細異物)
幅方向3点(中央、端部(両端から全幅の5%の位置))を長手方向に10mごとに3回サンプリングし、2cm×2cmの大きさのサンプルを9枚取り出した。各サンプルを25℃・相対湿度60%にて24時間調湿後、偏光顕微鏡にてクロスニコル下で観察し、輝点として観察される異物の数を数えた。各点の数を平均することにより、微細異物数とした。
(ヘイズ)
幅方向3点(中央、端部(両端から全幅の5%の位置))を長手方向に10mごとに3回サンプリングし、4cm×8cmの大きさのサンプルを9枚取り出した。各サンプルを25℃・相対湿度60%にて24時間調湿後、ヘイズメーター(HGM−2DP:スガ試験機(株)製)を用いてJIS K−6714に準じて測定した。各測定値を平均することにより、ヘイズ値とした。
フィルムのヘイズは低いほうが望ましい。本発明のセルロースアシレートフィルムのヘイズは0.6%以下であり、好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.3%以下である。
(セルロースアシレートの置換度)
セルロースアシレートのアシル置換度は、Carbohydr. Res.273 (1995) 83-91頁(手塚他)に記載の方法で13C−NMRにより求めた。
《セルロースアシレートフィルムの製造》
(セルロースアシレートの調製)
表1に記載されるように原料と置換度を変えて、セルロースアシレートを調製した。まず、表1に記載の原料由来のセルロース150質量部と、酢酸75質量部を内温40℃で2時間撹拌し、−30℃に冷却したプロピオン酸無水物1545質量部、硫酸20質量部の混合物を加え、0.5時間後に内温が10℃、2時間後に内温が23℃になるように調節し、内温を23℃に保ってさらに3時間攪拌した。その後、内温を5℃まで冷却し、5℃に冷却した25質量%含水酢酸120質量部を1時間かけて添加した。内温を40℃に上昇させ、1.5時間攪拌した。硫酸触媒の2倍モル相当の酢酸マグネシウム4水和物に、等重量の水と、等重量の酢酸を加えて溶解した混合溶液を作成し、反応容器に添加して、30分間攪拌した。25質量%含水酢酸1000質量部、33質量%含水酢酸500質量部、50質量%含水酢酸1000質量部、水1000質量部をこの順に加え、セルロースアセテートプロピオネートを沈殿させた。得られたセルロースアセテートプロピオネートは温水にて十分に洗浄した。洗浄後、20℃の0.005質量%水酸化カルシウム水溶液中で0.5時間攪拌し、洗浄液のpHが7になるまで、さらに水で洗浄を行った後、70℃で真空乾燥させた。なお、セルロースアシレートの置換度は、加える酸および酸無水物の量および反応時間を調節することによって調整した。
(セルロースアシレート溶液の調製)
1)セルロースアシレートの乾燥
調製したセルロースアシレートを120℃に加熱して乾燥し、含水率を0.5質量%以下として以下の溶液調製に用いた。溶媒との混合に際しては、溶媒100質量部に対してセルロースアシレート30質量部を混合した。但し、比較例3および比較例4の場合は、溶解性の観点からセルロースアシレート濃度を低下させる必要があるため、セルロースアシレートを15質量部として溶媒と混合させた。
2)溶媒
表1に記載される下記のいずれかの溶媒を使用した。これらの溶媒の含水率は、いずれも0.2質量%以下であった。
・溶媒1:ジクロロメタン/メタノール/ブタノール(81/15/4質量部)
・溶媒2:ジクロロメタン/メタノール/ブタノール(83/15/2質量部)
・溶媒3:ジクロロメタン/ブタノール(92/8質量部)
・溶媒4:ジクロロメタン/メタノール(87/13質量部)
3)添加剤
実施例6を除く全ての溶液調製に際し、トリメチロールプロパントリアセテート0.9質量部を添加した。また、全ての溶液調製に際し、二酸化ケイ素(粒子サイズ20nm、モース硬度約7)0.25質量%を添加した。
4)膨潤、溶解
攪拌羽根を有し外周を冷却水が循環する400リットルのステンレス製溶解タンクに、上記溶媒、添加剤を投入して撹拌、分散させながら、上記セルロースアシレートを徐々に添加した。投入完了後、室温にて2時間撹拌し、3時間膨潤させた後に再度撹拌を実施し、セルロースアシレート溶液を得た。
なお、攪拌には、15m/sec(剪断応力5×104kgf/m/sec2)の周速で攪拌するディゾルバータイプの偏芯攪拌軸および中心軸にアンカー翼を有して周速1m/sec(剪断応力1×104kgf/m/sec2)で攪拌する攪拌軸を用いた。膨潤は、高速攪拌軸を停止し、アンカー翼を有する攪拌軸の周速を0.5m/secとして実施した。
5)ろ過
上記で得られたセルロースアシレート溶液を、絶対濾過精度0.01mmの濾紙(#63、東洋濾紙(株)製)で濾過し、さらに絶対濾過精度2.5μmの濾紙(FH025、ポール社製)にて濾過してセルロースアシレート溶液を得た。
(セルロースアシレートフィルムの作製)
上記セルロースアシレート溶液を25℃に加温し、20℃に設定した流延ギーサー(特開平11−314233号公報に記載)を通して15℃に設定したバンド長60mの鏡面ステンレス支持体上に流延した。流延スピードは15m/分、塗布幅は200cmとした。流延部全体の空間温度は、15℃に設定した。そして、流延部の終点部から50cm手前で、流延して回転してきたポリマーフィルムをバンドから剥ぎ取り、100℃で10分、さらに105℃で20分乾燥し、100μmの厚みのセルロースアシレートフィルムを得た。得られたフィルムは両端を3cm裁断し、さらに端から2〜10mmの部分に高さ125μmのナーリングを付与し、1000mロール状に巻き取った。
Figure 0004594131
表1から明らかなように、本発明の条件を満たす実施例1〜9のフィルムは、Rth、ΔRth、微細異物の数、ヘイズのすべてにおいて良好であることが確認された。特に、アルコールを10〜30質量%含有し、かつ沸点が95℃以上の有機溶媒を1〜5質量%含有する溶媒を用いて調製した実施例1〜8のフィルムは、沸点が95℃以上の有機溶媒を8質量%含有する溶媒を用いて調製した実施例9のフィルムよりも、Rthがより低くて好ましい特性を示した。
これに対して、パルプ由来のセルロースアシレートから製膜しようとした比較例1では、フィルムが白化してしまった。また、比較例2のようにSA+SPが低いパルプ由来のセルロースアシレートを用いた場合は、透明なフィルムが得られたものの、Rthが高く、また、微細異物の数も多くなってしまった。
さらに、比較例3のように、式(I)〜(III)のいずれかを満足しないセルロースアシレートを用いた場合は、Rthが高くなったり、湿度変化に伴うRthの変化が大きくなったりする問題が生じた。また、比較例4のように、高置換度のセルロースアセテートを用いた場合や、比較例5のように、沸点が95℃以上の有機溶媒を含有しない場合は、フィルムの面状が荒れてしまい、光学測定ができないものしか得られなかった。
《偏光板の作製》
上記本発明のフィルムから、下記方法に従って、偏光板を作製した。
(ケン化処理)
水酸化ナトリウム400質量部を水3000質量部に溶解させたアルカリ水溶液をケン化液として用いて、液温を55℃としてフィルムを2分間浸漬した後、フィルムを水洗した。その後、0.05mol/Lの硫酸水溶液に30秒浸漬した後、さらに水洗浴を通した。そして、エアナイフによる水切りを3回繰り返し、水を落とした後に70℃の乾燥ゾーンに15秒間滞留させて乾燥し、ケン化処理したフィルムを作製した。
(偏光膜の作製)
各実施例および比較例において、特開2001−141926号公報の実施例1に従い、2対のニップロール間に周速差を与え、長手方向に延伸し、厚み20μmの偏光膜を調製した。
(貼り合わせ)
得られた偏光膜と、ケン化処理したフィルムで偏光膜を挟んだ後、PVA((株)クラレ製PVA−117H)3%水溶液を接着剤として、偏光軸とフィルムとの長手方向が直交するように貼り合わせた。
《液晶表示装置の作製》
上記本発明の偏光板を用い、特開2004−12731号公報の図11に記載のIPS型液晶表示装置に用いたところ、良好な液晶表示装置が得られた。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、Rthが負で環境条件によって変動し難く、フィルム中の微少異物が少なくて、ヘイズが良好であるという特徴と有する。このため、本発明のセルロースアシレートフィルムを用いれば、優れた光学特性を示す偏光板や位相差板などを提供することができる。また、これらを液晶表示装置に組み込むことにより、信頼性の高い優れた画像表示が可能になる。また、本発明の製造方法によれば、このような光学特性に優れたセルロースアシレートフィルムを生産性良く製造することができる。したがって、本発明は産業上の利用可能性が高い。

Claims (14)

  1. リンタ由来で下記式(I)〜(III)を満足するセルロースアシレートからなり、ヘイズが0.6%以下であり、且つ膜厚方向のレターデーション値が0nm未満であることを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
    (I) 2.87≦SA+SP≦3
    (II) 0≦SA≦1.7
    (III) 1.3≦SP≦2.9
    (式中、SAはセルロースの水酸基に置換されているアセチル基の置換度を表し、SPはセルロースの水酸基に置換されているプロピオニル基の置換度を表す。)
  2. 微細異物が0〜10個/mm2であることを特徴とする請求項1に記載のセルロースアシレートフィルム。
  3. 膜厚方向のレターデーション値が−600〜−20nmであることを特徴とする請求項1または2に記載のセルロースアシレートフィルム。
  4. 膜厚方向のレターデーション値が−400〜−40nmであることを特徴とする請求項1または2に記載のセルロースアシレートフィルム。
  5. 25℃・相対湿度10%における膜厚方向のレターデーション値と25℃・相対湿度80%における膜厚方向のレターデーション値との差が15nm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム。
  6. ヘイズが0.3%以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム。
  7. 偏光膜の少なくとも一方の面に、請求項1〜6のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルムを有することを特徴とする偏光板。
  8. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルムを用いたことを特徴とする位相差板。
  9. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルムを用いたことを特徴とする液晶表示素子。
  10. リンタ由来で下記式(I)〜(III)を満足するセルロースアシレートと沸点が80℃以下のハロゲン化炭化水素と沸点が95℃以上のアルコールを含む溶媒とを用いて下記工程(A)〜(C)の少なくとも1つを実施し、得られた混合物をろ過することにより溶液を得て、さらに該溶液を用いて流延製膜することを特徴とするセルロースアシレートフィルムの製造方法。
    (I) 2.87≦SA+SP≦3
    (II) 0≦SA≦1.7
    (III) 1.3≦SP≦2.9
    (式中、SAはセルロースの水酸基に置換されているアセチル基の置換度を表し、SPはセルロースの水酸基に置換されているプロピオニル基の置換度を表す。)
    (A) 前記溶媒に前記セルロースアシレートを−10〜35℃で膨潤させる工程
    (B) 前記溶媒と前記セルロースアシレートとの混合物を0.2〜30Mpaで
    40〜150℃にて加熱溶解させる工程
    (C) 前記溶媒と前記セルロースアシレートとの混合物を0〜35℃で撹拌する
    工程
  11. 前記溶媒の10〜30質量%がアルコールであることを特徴とする請求項10に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
  12. 前記溶媒が沸点が95℃以上の有機溶媒を1〜5質量%含有することを特徴とする請求項10または11に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
  13. 前記溶媒が、沸点が95℃以上のアルコールの少なくとも1種類と、沸点が95℃未満のアルコールの少なくとも1種類を含有することを特徴とする請求項10〜12のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
  14. 前記沸点が80℃以下の有機溶媒がジクロロメタンであることを特徴とする請求項10〜13のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
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