JP2006008768A - セルロースアシレートフィルムとその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 膜厚方向のレターデーション値が0nm未満であり、セルロースの水酸基へのアシル置換度が式(I)2.87≦SA+SP≦3、(II)0≦SA≦1.7及び(III)1.3≦SP≦2.9(上記各式中、SAおよびSPはセルロースの水酸基に置換されているアシル基の置換度を表し、SAはアセチル基の置換度、またSPはプロピオニル基の置換度である)の全てを満足し、かつパルプ由来であることを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
【選択図】 なし
Description
セルロースエステルフィルムのうち、画像表示装置等の光学用途として最も一般的に用いられているセルロースアセテートフィルムでは、主として溶液流延製膜法が採用されており、平面性の高い良好なフィルムが製造されている。このフィルムの膜厚方向のレターデーション(Rth)は通常正の値を示すが、セルロースアセテートでは酢化度を著しく上昇させることによってRthが低下すると同時に有機溶媒への溶解性が低下する。そのため、非常に高酢化度のセルロースアセテートフィルムではRthが負になることが期待されるが、ハロゲン系有機溶媒に膨潤させた後、室温に近い温度で撹拌しても十分に溶解させることができず、面状に優れた光学用途のフィルムを製膜することはできなかった。他方で、非特許文献1や特許文献1では、セルロースアセテートを混合脂肪酸エステルとすることで、溶媒への溶解性を向上させることができることが示されている。
負のRthを有するセルロースエステルフィルムができると、このフィルムをそのままIPSモードの液晶表示装置の位相差板として用いることでパネルの視認性を向上させたり、正のRthを有するセルロースエステルフィルムを貼り合わせることにより、一般的には容易に制御できないRthを自在に調整した位相差板を製造したりすることが可能となる。そのため、負のRthを有するセルロースエステルフィルムを製造することが切望されている。負のRthを有するフィルムは、特許文献2に開示されているような複雑な方法で製造することも可能であるが、生産性が十分ではなかった。
(I) 2.87≦SA+SP≦3
(II) 0≦SA≦1.7
(III)1.3≦SP≦2.9
(式中、SAおよびSPはセルロースの水酸基に置換されているアシル基の置換度を表し、SAはアセチル基の置換度、またSPはプロピオニル基の置換度である。)
(2)膜厚方向のレターデーション値が−400〜−5nmであることを特徴とする上記(1)に記載のセルロースアシレートフィルム。
(3)膜厚方向のレターデーション値が−200〜−20nmであることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のセルロースアシレートフィルム。
(4)25℃10%RHにおける膜厚方向のレターデーション値と25℃80%RHにおける膜厚方向のレターデーション値との湿度に伴う変化が15nm以下であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
(5)ヘイズが0.6%以下であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
(7)少なくとも一枚の上記(1)〜(5)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムを含有することを特徴とする位相差板。
(I) 2.87≦SA+SP≦3
(II) 0≦SA≦1.7
(III)1.3≦SP≦2.9
(式中、SAおよびSPはセルロースの水酸基に置換されているアシル基の置換度を表し、SAはアセチル基の置換度、またSPはプロピオニル基の置換度である。)
(10)セルロースの水酸基へのアシル置換度が下記式(I)〜(III)の全てを満足するパルプ由来のセルロースエステルを、−10〜35℃で沸点が80℃以下の有機溶媒を含む溶媒に膨潤させ、その混合物を0.2〜30MPaで40〜150℃に高圧高温で加熱溶解させ、加熱した混合物を0〜35℃に冷却した後、ろ過する工程を経て得られた溶液から、流延製膜することを特徴とするセルロースアシレートフィルムの製造方法。
(I) 2.87≦SA+SP≦3
(II) 0≦SA≦1.7
(III)1.3≦SP≦2.9
(式中、SAおよびSPはセルロースの水酸基に置換されているアシル基の置換度を表し、SAはアセチル基の置換度、またSPはプロピオニル基の置換度である。)
(11)前記溶媒が、沸点が95℃以上の有機溶媒を5〜15質量%含有することを特徴とする(9)又は(10)に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
(12)前記溶媒の5〜30質量%がアルコールであることを特徴とする(9)〜(11)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
(13)前記沸点が80℃以下の有機溶媒がハロゲン化炭化水素であることを特徴とする(9)〜(12)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
(2)Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
式中、nxはフィルム面内の遅相軸(x)方向の屈折率であり、nyはフィルム面内の進相軸(y)方向の屈折率であり、nzはフィルムの厚み方向(フィルム面と直交する方向)の屈折率であり、dはフィルムの厚み(nm)である。遅相軸はフィルム面内で屈折率が最大となる方向であり、進相軸はフィルム面内で屈折率が最小となる方向である。
(3) ΔRe=| Re(10%)− Re(80%)|
(4)ΔRth=|Rth(10%)−Rth(80%)|
また、セルロースエステルフィルムの厚み方向のレターデーション(Rth)を、延伸等の製造工程の条件調整によって大きく制御することは非常に難しいが、本発明のセルロースエステルフィルムはRthが非常に低いため、そのまま、もしくは粘着剤を用いて複数枚貼り合せてからIPS(In−Plane Switching)モードの液晶表示装置用の位相差板として用いることができる。また、従来から知られているRthが正の値となるセルロースエステルフィルムと本発明のセルロースエステルフィルムとを貼り合せることで、簡便にRthを制御したりすることができる。
さらに、本発明では、Rthが負となり、透明でヘイズの小さいセルロースエステルフィルムを得ることもできる。大きなRth低減効果が期待される高置換度なセルロースアセテートプロピオネートやセルロースプロピオネートでは、従来から日常的に用いられてきた溶媒処方を用い、従来と同一工程で製膜した場合、フィルム中のポリマーの結晶サイズが大きく成長し、白化してしまう現象が非常に問題となっていた。しかし、本発明のセルロースエステルフィルムは、高沸点溶媒量を通常よりも増加させ、冷却速度を上昇させることができるので白化を抑制できた。フィルムのヘイズは小さい方が好ましく、好ましくは0.6%以下、より好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.3%以下であり、本発明のセルロースエステルフィルムによってこのような低いヘイズが達せられる。。
本発明により得られたRthが負の値となるヘイズの小さいセルロースエステルフィルムを用いることで、上記の問題を生じることなく、位相差板および偏光板のRthを自在に制御することが可能になった。そして、これらの位相差板あるいは偏光板を用いることで、信頼性の高い画像表示装置が得られる。
(I) 2.87≦SA+SP≦3
(II) 0≦SA≦1.7
(II) 1.3≦SP≦2.9
(式中、SAおよびSPはセルロースの水酸基に置換されているアシル基の置換度を表し、SAはアセチル基の置換度、またSPはプロピオニル基の置換度である。)
が好ましく、
(I) 2.89≦SA+SP≦2.99
(II) 0≦SA≦1.6
(III)1.4≦SP≦2.85
がより好ましく、
(I) 2.90≦SA+SP≦2.98
(II) 0≦SA≦1.5
(III)1.5≦SP≦2.8
がさらに好ましい。
セルロースアシレートの原料綿や合成方法については、公開技報2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)7〜12頁にも記載がある。
セルロースエステルフィルムが多層構造を有する場合、各層における添加剤の種類や量が異なってもよい(例えば、特開平2001−151902号公報記載)。
セルロースエステルフィルムの添加剤については、公開技報2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)16頁〜22頁にも記載がある。
エステルとしては、メチルホルメート、エチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテートなどが挙げられる。
ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトンなどが挙げられる。
エーテルとしては、ジエチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、1,3−ジオキソラン、4−メチルジオキソラン、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフランなどが挙げられる。
アルコールとしては、メタノール、エタノール、2−プロパノールなどが挙げられる。
炭化水素としては、n−ペンタン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、ベンゼンなどが挙げられる。
エステルとしては、メチルホルメート、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテート、ペンチルアセテートなどが挙げられる。
ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノンなどが挙げられる。
エーテルとしては、ジエチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、4−メチルジオキソラン、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、アニソール、フェネトールなどが挙げられる。
アルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノール、シクロヘキサノール、2−フルオロエタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールなどが挙げられる。
炭化水素としては、n−ペンタン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。
二種類以上の官能基を有する有機溶媒としては、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、メチルアセトアセテートなどが挙げられる。
また、本発明で好ましく用いられるセルロースエステルを用いた場合、バンド面からの剥離の際の剥離荷重は、従来のセルロースエステルと比較して軽いが、より好ましい剥離荷重とするために、全溶媒中にアルコールを好ましくは5〜30質量、より好ましくは6〜20質量%、さらに好ましくは7〜15質量%含有させることが好ましい。
そして、バンドからの剥離荷重低減およびフィルム白化抑制の双方の観点から、沸点が95℃以上の有機溶媒はアルコールであることが好ましい。
(2)ジクロロメタン/イソブタノール=90/10
(3)ジクロロメタン/アセトン/メタノール/プロパノール=80/5/5/10
(4)ジクロロメタン/メタノール/ブタノール/シクロヘキサン=80/8/10/2
(6)ジクロロメタン/ブタノール=90/10
(7)ジクロロメタン/アセトン/メチルエチルケトン/エタノール/ブタノール=68/10/10/7/5
(8)ジクロロメタン/シクロペンタノン/メタノール/ペンタノール=80/2/15/3
(10)ジクロロメタン/メチルエチルケトン/メタノール/ブタノール=80/5/5/10
(11)ジクロロメタン/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/ペンタノール=50/20/15/5/10
(12)ジクロロメタン/1,3−ジオキソラン/メタノール/ブタノール=70/15/5/10
(14)ジクロロメタン/アセトン/シクロペンタノン/エタノール/イソブタノール/シクロヘキサン=60/18/3/10/7/2
(15)ジクロロメタン/メチルエチルケトン/アセトン/イソブタノール=70/10/10/10
(16)ジクロロメタン/アセトン/エチルアセテート/ブタノール/ヘキサン=69/10/10/10/1
(18)ジクロロメタン/シクロペンタノン/エタノール/ブタノール=85/7/3/5
(19)アセトン/エタノール/ブタノール=80/15/5
(20)メチルアセテート/アセトン/メタノール/ブタノール=75/10/10/5
セルロースエステルを溶媒に溶解する段階で所定の濃度になるように調整できる。また、予め低濃度(例えば9乃至14質量%)の溶液を調製後に濃縮してもよく、この手法は溶解性の比較的悪いセルロースエステルを用いる場合に特に有効である。さらに、予め高濃度の溶液を調製後に希釈してもよい。添加剤を添加することで、セルロースエステルの濃度を低下させることもできる。
粘度および動的貯蔵弾性率は、試料溶液1mLを直径4cmかつコーン角2°の容器(STEEL CONE、TA Instruments社製)に入れ、レオメーター(CLS500、TA Instruments社製)を用いて測定する。測定条件は、装置に付属の条件(Oscillation Step/Temperature Ramp)を用いて測定した。なお、試料溶液を予め測定開始温度にて液温一定となるまで保温した後に、測定を開始する。
流延工程では、2種類以上のセルロースエステル溶液を同時または逐次共流延してもよい。
2種類以上のセルロースエステル溶液は、組成が全く同一であってもよい。組成が異なる場合、溶媒または添加剤の種類を溶液毎に変更できる。2種類以上の溶液は、濃度が異なっていてもよい。2種類以上の溶液は、セルロースエステルの会合体分子量が異なっていてもよい。2種類以上の溶液は、異なる温度で保持してもよい。
ここで、本発明の如く、Rthの低いフィルムを得るためには、セルロースアシレートのポリマー主鎖の間隔を広げる方法が有効である。そこで、既に述べたような高沸点のセルロースエステルの貧溶媒である有機溶媒を含有させる方法が有効であり、また、乾燥完了後にフィルムを冷却する際には、フィルム温度がガラス転移温度(Tg)を上回り、主鎖間隔が広くなっている状態から急速に冷却し、主鎖間隔が広いままクエンチさせる方法が有効である。したがって、通常は100℃/分程度で冷却しているが、−30〜10℃程度の除湿風を吹き込むことにより、110〜600℃/分、より好ましくは120〜350℃/分、さらに好ましくは150〜300℃/分で冷却することが好ましい。この冷却速度を上昇させる手法は、フィルムの白化を抑制する目的にも有効である。
このようにして乾燥の終了したフィルム中の残留溶剤は0〜5質量%が好ましく、より好ましくは0〜2質量%、さらに好ましくは0〜1質量%である。乾燥終了後、両端をトリミングして巻き取る。好ましい幅は0.5〜5mであり、より好ましくは0.7〜3m、さらに好ましくは1〜2mである。好ましい巻長は300〜30000mであり、より好ましくは500〜10000m、さらに好ましくは1000〜7000mである。
延伸はTg以上Tg+50℃以下で実施するのが好ましく、より好ましくはTg+1℃以上Tg+30℃以下、さらに好ましくはTg+2℃以上Tg+20℃以下である。好ましい延伸倍率は1%以上500%以下、より好ましくは3%以上400%以下、さらに好ましくは5%以上300%以下である。これらの延伸は1段で実施しても、多段で実施しても良い。ここで云う延伸倍率は、以下の式を用いて求めたものである。
延伸倍率(%)=100×{(延伸後の長さ)−(延伸前の長さ)}/延伸前の長さ
このような延伸は出口側の周速を速くした2対以上のニップロールを用いて、長手方向に延伸してもよく(縦延伸)、フィルムの両端をチャックで把持しこれを直交方向(長手方向と直角方向)に広げても良い(横延伸)。一般にいずれの場合も、延伸倍率を大きくすると、Rth大きくすることができる。また、縦延伸と横延伸の倍率の差を大きくすることでReを大きくすることができる。
このような延伸速度は10〜10000%/分が好ましく、より好ましくは20〜1000%/分、さらに好ましくは30〜800%/分である。
また製膜方向(長手方向)と、フィルムのReの遅相軸とのなす角度θが0±3°、+90±3°もしくは−90±3°であることが好ましく、0±2°、+90±2°もしくは−90±2°であることがより好ましく、0±1°、+90±1°もしくは−90±1°であることがさらに好ましい。
グロー放電処理は、10-3〜20Torrの低圧ガス下で実施する低温プラズマ処理を含む。また、大気圧下でのプラズマ処理も、好ましいグロー放電処理である。プラズマ励起性気体としては、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素、フロン(例、テトラフルオロメタン)およびそれらの混合物が用いられる。大気圧でのプラズマ処理は、好ましくは10〜1000Kev、さらに好ましくは30〜500Kevで実施する。照射エネルギーは、20〜500kGyが好ましく、20〜300kGyがさらに好ましい。グロー放電処理については、公開技報2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)30頁〜32頁に記載がある。
塗布方法は、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、バーコーティング法またはE型塗布法を採用できる。塗布液の溶媒は、フィルムに対する濡れ性が良く、フィルム表面に凹凸を形成させずに面状を良好なまま保つことが望ましい。具体的には、溶媒は、アルコールが好ましく、イソプロピルアルコールが特に好ましい。また、水(好ましくは、界面活性剤の水溶液)を溶媒として使用することもできる。アルカリは、アルカリ金属の水酸化物が好ましく、KOHおよびNaOHがさらに好ましい。ケン化塗布液のpHは、10以上が好ましく、12以上がさらに好ましい。アルカリケン化時の反応条件は、室温で1秒以上5分以下が好ましく、5秒以上5分以下がさらに好ましく、20秒以上3分以下が最も好ましい。アルカリケン化反応後、ケン化液塗布面を水洗するか、あるいは酸で洗浄したあと水洗することが好ましい。また、塗布式鹸化処理と後述の配向膜解塗設を、連続して行うことができ、工程数を減少できる。これらの鹸化方法は、具体的には、例えば、特開2002−82226号公報、WO02/46809号公報に内容の記載が挙げられる。
厚み方向のレターデーション値が負の値であるセルロースエステルフィルム、あるいはそれを複数枚積層した位相差板、もしくは、それと厚み方向のレターデーション値が正の値であるセルロースエステルフィルムとを積層したフィルムは、そのまま位相差板として用いることもでき、偏光板保護フィルムとして用いることもできる。また、上記セルロースエステルフィルムおよび位相差板を支持体とし、その上に光学異方性層(例えば、液晶性分子から形成される層)を設け、位相差板を製造することもできる。
アルカリケン化処理以外の表面処理(特開平6−94915号、同6−118232号の各公報に記載)を実施してもよい。
偏光板の製造後、使用前は、偏光板の一方の面に外部保護フィルム、反対面にセパレートフィルムが貼り合わされている。外部保護フィルムおよびセパレートフィルムは、偏光板の出荷や製品検査において偏光板を保護する目的で用いられる。外部保護フィルムは、偏光板を液晶セルへ貼合する面の反対面側に用いられる。セパレートフィルムは、偏光板を液晶セルへ貼合するための接着層をカバーする目的で用いられる。一般に液晶表示装置は、二枚の偏光板の間に液晶セルが設けられ、一般に液晶セルは、二枚の基板の間に液晶注入される。従って、通常の液晶表示装置では、四枚の偏光板保護フィルムを有する。本発明に従うセルロースエステルフィルムは、四枚の偏光板保護フィルムのいずれに用いても良い。ただし、液晶表示装置における偏光子と液晶層との間に配置されるプラスチックフィルムとして、特に有利に用いることができる。
カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。TN(Twisted Nematic)モードの黒表示における液晶セル中の配向状態は、セル中央部で棒状液晶性分子が立ち上がり、セルの基板近傍では棒状液晶性分子が寝た配向状態にある。
棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させるベンド配向モードの液晶セルである。ベンド配向モードの液晶セルを用いた液晶表示装置は、米国特許4583825号、同5410422号の各明細書に開示されている。棒状液晶性分子が液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。そのため、この液晶モードは、OCB(Optically Compensatory Bend)液晶モードとも呼ばれる。
OCBモードの液晶セルもTNモード同様、黒表示においては、液晶セル中の配向状態は、セル中央部で棒状液晶性分子が立ち上がり、セルの基板近傍では棒状液晶性分子が寝た配向状態にある。
電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向しているのが特徴であり、VA(Vertically Aligned)モードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech. Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載)および(4)SURVAIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。
電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に面内に水平に配向しているのが特徴であり、これが電圧印加の有無で液晶の配向方向を変えることでスイッチングするのが特徴である。具体的には特開2004−365941、特開2004−12731、特開2004−215620、特開2002−221726、特開2002−55341、特開2003−195333に記載のものなどを使用できる。
(その他液晶表示装置)
ECBモードおよびSTNモードに対しても、上記と同様の考え方で光学的に補償することができる。
[レターデーション]
幅方向3点(中央、端部(両端からそれぞれ全幅の5%の位置))を長手方向に10mごとに3回サンプリングし、1cm□の大きさのサンプルを9枚取り出し、下記の方法にしたがって求めた各点の平均値を求めた。
セルロースエステルフィルムを25℃、60%RHにて24時間調湿後、自動複屈折計(KOBRA−21ADH:王子計測機器(株)製)を用いて、25℃、60%RHにおいて、サンプルフィルム表面に対し垂直方向およびフィルム面法線から±40°傾斜させた方向から波長590nmにおけるレターデーション値を測定し、下記式(1)および(2)でそれぞれ表される面内レターデーション値(Re)と膜厚方向のレターデーション値(Rth)とを算出した。
(2)Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
式中、nxはフィルム面内の遅相軸(x)方向の屈折率であり、nyはフィルム面内の進相軸(y)方向の屈折率であり、nzはフィルムの厚み方向(フィルム面と直交する方向)の屈折率であり、dはフィルムの厚み(nm)である。遅相軸はフィルム面内で屈折率が最大となる方向であり、進相軸はフィルム面内で屈折率が最小となる方向である。
(3) ΔRe=| Re(10%)− Re(80%)|
(4)ΔRth=|Rth(10%)−Rth(80%)|
幅方向3点(中央、端部(両端から全幅の5%の位置))を長手方向に10mごとに3回サンプリングし、4cm×8cmの大きさのサンプルを9枚取り出し、下記の方法にしたがって求めた各点の平均値を求めた。
セルロースエステルフィルムを25℃60%RHにて24時間調湿後、ヘイズメーター(HGM−2DP:スガ試験機(株)製)を用いてJIS K−6714に準じて測定した。
セルロースアシレートのアシル置換度は、Carbohydr.Res.273(1995)83−91(手塚他)に記載の方法で13C−NMRにより求めた。
《実施例1》
(セルロースアシレートの調製)
第1表に記載のアシル基の種類、置換度の異なるセルロースアシレートを調製した。具体的には、触媒としての硫酸(セルロース100質量部に対し7.8質量部)とカルボン酸無水物との混合物を−20℃に冷却してから広葉樹パルプ由来のセルロースに添加し、40℃でアシル化を行った。この時、カルボン酸無水物の種類、量を調整することで、アシル基の種類、置換比を調整した。またアシル化後に40℃で熟成を行って全置換度を調整した。このようにして得たセルロースアシレートの重合度は下記の方法で求め、第1表に記載した。
[重合度測定法]
絶乾したセルロースアシレート約0.2gを精秤し、ジクロロメタン:エタノール=9:1(質量比)の混合溶剤100mLに溶解した。これをオストワルド粘度計にて25℃で落下秒数を測定し、重合度DPを以下の式により求めた。
ηrel =T/T0 T :測定試料の落下秒数
[η]=1n(ηrel )/C T0 :溶剤単独の落下秒数
DP=[η]/Km C :濃度(g/L)
Km:6×10-4
1)セルロースアシレート
調製したセルロースアシレートを120℃に加熱して乾燥し、含水率を0.5質量%以下とした後、30質量部を溶媒と混合させた。但し、比較例2および比較例3の場合は、溶解性の観点からセルロースアシレート濃度を低下させる必要があるため、セルロースアシレートを15質量部として溶媒と混合させた。
なお、比較例3で使用したセルロースアシレートは、ダイセル化学工業(株)製のLT−35を購入したものであり、これはパルプ由来のセルロースから合成されたものである。
下記溶媒から選択し、第1表に記載した。
・溶媒1:ジクロロメタン/ブタノール(92/8質量部)
・溶媒2:ジクロロメタン/イソブタノール(90/10質量部)
・溶媒3:ジクロロメタン/メタノール/ブタノール(90/2/8質量部)
・溶媒4:ジクロロメタン/メタノール/ブタノール(81/15/4質量部)
・溶媒系5:ジクロロメタン/メタノール(60/40質量部)
・溶媒6:ジクロロメタン/エタノール/ブタノール(70/10/20質量部)
なお、これらの溶媒の含水率は、いずれも0.2質量%以下であった。
実施例8を除く全ての溶液調製に際し、トリメチロールプロパントリアセテート(第1表中には添加剤1と記す)0.9質量部を添加した。また、全ての溶液調製に際し、二酸化ケイ素微粒子(粒径20nm、モース硬度 約7)0.25質量%を添加した。
攪拌羽根を有し外周を冷却水が循環する400リットルのステンレス製溶解タンクに、上記溶媒、添加剤を投入して撹拌、分散させながら、上記セルロースアシレートを徐々に添加した。投入完了後、室温にて2時間撹拌し、3時間膨潤させた後に再度撹拌を実施し、セルロースアシレート溶液を得た。
なお、攪拌には、15m/sec(剪断応力5×104kgf/m/sec2)の周速で攪拌するディゾルバータイプの偏芯攪拌軸および中心軸にアンカー翼を有して周速1m/sec(剪断応力1×104kgf/m/sec2)で攪拌する攪拌軸を用いた。膨潤は、高速攪拌軸を停止し、アンカー翼を有する攪拌軸の周速を0.5m/secとして実施した。
上記で得られたセルロースアシレート溶液を、絶対濾過精度0.01mmの濾紙(#63、東洋濾紙(株)製)で濾過し、さらに絶対濾過精度2.5μmの濾紙(FH025、ポール社製)にて濾過してセルロースアシレート溶液を得た。
上記セルロースアシレート溶液を30℃に加温し、流延ギーサー(特開平11−314233号公報に記載)を通して15℃に設定したバンド長60mの鏡面ステンレス支持体上に流延した。流延スピードは15m/分、塗布幅は200cmとした。流延部全体の空間温度は、15℃に設定した。そして、流延部から50cm手前で、流延して回転してきたセルロースアシレートフィルムをバンドから剥ぎ取り、45℃の乾燥風を送風した。次に110℃で5分、さらに140℃で10分乾燥した後、30秒でフィルムを室温まで冷却し、セルロースアシレートフィルムを得た。得られたフィルムは両端を3cm裁断し、さらに端から2〜10mmの部分に高さ125μmのナーリングを付与し、3000mロール状に巻き取った。
[面状]
フィルム面状は目視により下記の尺度で評価した。
良好:フィルムに横段ムラやブツは認められないもの。
白化:フィルムが全面白化し、光学フィルムとしては適用できないもの。
ムラ:フィルム表面の凹凸や横段ムラが多数認められ、光学フィルムとしては適用できないもの。
剥離不能:支持体上のドープの乾燥を十分に行うことができず、支持体上に著しい剥げ残りが生じてしまい、剥離することができないもの。
前述した方法でセルロースアシレートフィルムの膜厚方向のレターデーション値およびその湿度依存性を測定した。
前述した方法でセルロースアシレートフィルムのヘイズを測定した。ヘイズの値は、入射光強度に対する散乱光強度の比率(%)で示した。
セルロースアシレートフィルムを60℃に調温した1.5規定のNaOH水溶液(けん化液)に2分間浸漬した後、0.1Nの硫酸水溶液に30秒間浸漬し、さらに水洗浴を通してけん化した。
特開平2001−141926の実施例1に従い、2対のニップロール間に周速差を与え、長手方向に延伸して作製した厚み20μmの偏光層に対し、一方の面にフジタック(TD−80UF)を、他方にけん化した本発明のセルロースアシレートフィルムをPVA((株)クラレ製PVA−117H)3%水溶液を接着剤として貼り合わせて偏光板を作製した。
得られた偏光板を25℃10%RHにて24時間調湿した後、25℃、80%RHにて24時間調湿し、さらに25℃、10%RHにて24時間調湿した後に、偏光板のカールを目視にて確認し、下記の3段階で評価した。
優:カールはほぼ確認されないもの。
良:若干のカールが確認されたが、光学用途での使用に対し、差し支えのないもの。
劣:カールや表面のうねりが著しく、光学用途として適用できないもの。
比較例4のように沸点が95℃以上の有機溶媒が少ない従来の溶媒処方を用いた場合や、比較例5のように溶媒中のアルコール量が多すぎた場合では、乾燥過程でフィルムが白化してしまい、ヘイズの非常に高いフィルムとなってしまった。
そのため、これらの比較例のフィルムを用いた場合、良好な位相差板や偏光板、信頼性の高い液晶表示装置は得られなかった。
逆に、比較例7のようにフィルム膜厚が薄すぎた場合では、良好なフィルムが得られたもの、偏光板を作製して調湿した時に大きくカールしてしまった。
Claims (10)
- 膜厚方向のレターデーション値が0nm未満であり、セルロースの水酸基へのアシル置換度が下記式(I)〜(III)の全てを満足し、かつパル
プ由来であることを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
(I) 2.87≦SA+SP≦3
(II) 0≦SA≦1.7
(III)1.3≦SP≦2.9
(式中、SAおよびSPはセルロースの水酸基に置換されているアシル基の置換度を表し、SAはアセチル基の置換度、またSPはプロピオニル基の置換度である。) - 膜厚方向のレターデーション値が−400〜−5nmであることを特徴とする請求項1に記載のセルロースアシレートフィルム。
- 膜厚方向のレターデーション値が−200〜−20nmであることを特徴とする請求項1に記載のセルロースアシレートフィルム。
- 25℃、10%RHにおける膜厚方向のレターデーション値と25℃、80%RHにおける膜厚方向のレターデーション値との湿度に伴う変化が15nm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
- ヘイズが0.6%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
- セルロースの水酸基へのアシル置換度が下記式(I)〜(III)の
全てを満足するパルプ由来のセルロースエステルを、−10〜35℃で沸点が80℃以下の有機溶媒を含む溶媒に膨潤させ、その混合物を0〜35℃で撹拌して溶解させ、ろ過する工程を経て得られた溶液から、流延製膜することを特徴とするセルロースアシレートフィルムの製造方法。
(I) 2.87≦SA+SP≦3
(II) 0≦SA≦1.7
(III)1.3≦SP≦2.9
(式中、SAおよびSPはセルロースの水酸基に置換されているアシル基の置換度を表し、SAはアセチル基の置換度、またSPはプロピオニル基の置換度である。) - セルロースの水酸基へのアシル置換度が下記式(I)〜(III)の
全てを満足するパルプ由来のセルロースエステルを、−10〜35℃で沸点が80℃以下の有機溶媒を含む溶媒に膨潤させ、その混合物を0.2〜30MPaで40〜150℃に高圧高温で加熱溶解させ、加熱した混合物を0〜35℃に冷却した後、ろ過する工程を経て得られた溶液から、流延製膜することを特徴とするセルロースアシレートフィルムの製造方法。
(I) 2.87≦SA+SP≦3
(II) 0≦SA≦1.7
(III)1.3≦SP≦2.9
(式中、SAおよびSPはセルロースの水酸基に置換されているアシル基の置換度を表し、SAはアセチル基の置換度、またSPはプロピオニル基の置換度である。) - 前記溶媒が、沸点が95℃以上の有機溶媒を5〜15質量%含有することを特徴とする請求項6又は7に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
- 前記溶媒の5〜30質量%がアルコールであることを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
- 前記沸点が80℃以下の有機溶媒がハロゲン化炭化水素であることを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
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