JP4536972B2 - セルロースアシレートフイルムの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はハロゲン化銀写真感光材料または液晶画像表示装置に有用なセルロースアシレートフイルムの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ハロゲン化銀写真感光材料や液晶画像表示装置に使用されるセルロースアシレートを製造する際に使用されるセルロースアシレート溶液の有機溶媒としては、ジクロロメタンのような塩素含有炭化水素が使用されている。ジクロロメタン(沸点40℃)は、従来からセルロースアシレートの良溶媒として用いられ、製造工程の製膜及び乾燥工程において沸点が低いことから乾燥させ易いという利点により好ましく使用されている。近年環境保全の観点で低沸点である塩素系有機溶媒は、密閉設備でも取り扱い工程での漏れを著しく低減されるようになった。例えば徹底的なクローズドシステムによる系からの漏れ防止、万が一漏れても外気に出す前にガス吸収塔を設置し有機溶媒を吸着させて、処理する方法が進められた。さらに、排出する前に火力による燃焼あるいは電子線ビームによる塩素系有機溶媒の分解などで、殆ど有機溶媒を排出することはなくなった。
一方、塩素系有機溶媒として好ましく使用されてきたジクロロメタン以外のセルロースアシレートの溶媒の探索がなされて来た。セルロースアシレート特にセルローストリエステルに対する溶解性を示す有機溶媒として知られているものにはアセトン(沸点56℃)、酢酸メチル(沸点56℃)、テトラヒドロフラン(沸点65℃)、1,3−ジオキソラン(沸点75℃)、1,4−ジオキサン(沸点101℃)などがある。しかしながら、これらの有機溶媒は従来の溶解方法では実際に実用できるに十分な溶解性は得られていない。
【0003】
この解決として、J.M.G.Cowie等はMakromol.chem.143巻、105頁(1971)において、セルローストリアセテート(酢化度60.1%から61.3%)をアセトン中で−80℃から−70℃に冷却した後、加温することによって0.5から5質量%の希薄溶液が得られることを報告している。このような低温でセルロースアシレートを溶解する方法を冷却溶解法という。また、上出健二等は、繊維機械学会誌、34巻、57−61頁(1981)の「三酢酸セルロースのアセトン溶液からの乾式紡糸」の中で冷却溶解法を用いての紡糸技術について述べている。また、特開平9−95538号公報、特開平9−95544号及び同9−95557号の各公報では、上記技術を背景に、非塩素系有機溶媒を用いて冷却溶解法によってセルロースアシレートを溶解することが開示されている。その際に用いられる非塩素系有機溶剤としては、エーテル類、ケトン類あるいはエステルから選ばれる有機溶媒であり、特に冷却溶解法によりセルロースアシレートを溶解してフイルムを作製している。これらの具体的な有機溶媒としては、アセトン、2−メトキシエチルアセテート、シクロヘキサノン、エチルホルメート、及びメチルアセテートなどが好ましいとしている。しかしながら、これらの溶媒を用いても、従来の流延方法では、高速流延してセルロースアシレートフイルムを得るにはまだ不十分であった。
【0004】
一方、セルロースアシレートフイルムは、一般にソルベントキャスト法またはメルトキャスト法により製造される。ソルベントキャスト法では、セルロースアシレートを溶媒中に溶解した溶液(ドープ)を支持体上に流延し、溶媒を蒸発させてフイルムを形成するものである。メルトキャスト法では、セルロースアシレートを加熱により溶融したものを支持体上に流延し、支持体を冷却してフイルムを形成する。ソルベントキャスト法の方が、メルトキャスト法よりも平面性の高い良好なフイルムを製造することができる。このため、実用的にはソルベントキャスト法の方が普通に採用されている。最近のソルベントキャスト法では、ドープを支持体上へ流延してから、支持体上の成形フイルムを剥離するまでに要する時間を短縮して、製膜工程の生産性を向上させることが課題になっている。特に、ソルベントキャスト法によってセルロースアシレートフイルムを得るに際して、前述の非塩素系有機溶媒を用いて室温、高温あるいは冷却溶解したセルロースアシレート溶液の場合に、その支持体からのセルロースアシレートフイルムの剥離がし難くいことが問題になっている。また更に、近年のセルロースアシレートフイルムの需要増大に対して生産性を高めることが求められており、そのために高速度流延が切望されている。この観点でも、非塩素系有機溶媒による溶液で生産されるセルロースアシレートフイルムには、高速流延性の劣るものであった。
【0005】
これは、セルロースアシレートを金属支持体であるバンド或いはドラム上(仮支持体上)に流延し、乾燥或いは冷却して強度の強いゲル状フイルムとし、有機溶媒を含んだ状態で支持体から剥離され、しかる後に十分乾燥される工程の際に、支持体からセルロースアシレート膜の剥離が困難であることが原因である。ジクロロメタンの塩素系有機溶媒でも見られ前述したようにその改良が望まれていた。この改良の一方法として、特開平10−316701号公報では、酸解離指数pKaが1.93〜4.50[好ましくは2.0〜4.4、さらに好ましくは2.2〜4.3(例えば、2.5〜4.0)、特に2.6〜4.3(例えば、2.6〜4.0)程度]の酸またはその塩が剥離剤として好ましいことが記載されている。しかしこの欠点として、セルロースアシレ−ト溶液でセルロースアシレ−トが含有しているアルカリ土類金属と微小な塩を作製し、長時間の流延工程において系に付着する問題を引き起こすものでありその改良が期待されていた。これらの剥離剤によると、ある溶液では剥ぎ取りがかなり改良されることが見られているが、不十分であった。特に、未乾燥のままで支持体から剥ぎ取り乾燥する所謂ドラム法でのセルロースアシレートフイルムの作製においては、その剥ぎ取り時の剥ぎ取り性の改良の期待がなされていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、セルロースアシレートを有機溶媒で溶液を調製する場合、流延した後乾燥のために支持体から剥離が困難な点を解決し、剥ぎ取りに優れるだけでなく良好な面状のセルロースアシレ−トフイルムを作製することである。特に流延速度を高速にしても剥ぎ取りや面状の良好なセルロースアシレート溶液を形成し、優れたセルロースアシレートフイルムを作製することにある。
【0007】
本発明の目的は、有機溶剤を用いて常温溶解、冷却溶解法または高温高圧溶解法で作製したセルロースアシレート溶液を流延し、面状の優れたセルロースセルロースフイルムの製造方法を提供することにある。さらに本発明の目的は、流延した後乾燥のために支持体から容易にフイルムを剥離させ、優れた生産性を付与することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、下記(1)〜(8)のセルロースアシレートフイルムの製造方法により達成された。
(1)セルロースアシレートを有機溶媒に溶解したドープを仮支持体上に流延し、仮支持体から剥ぎ取り、溶媒を蒸発させて乾燥させるセルロースアシレートフイルムの製造方法であって、ドープ中のセルロースアシレート濃度が15乃至30質量%であり、流延されるドープ温度でのドープ粘度が1乃至300Pa・sであり、−5℃でのドープの動的貯蔵弾性率が1万〜100万Paであり、流延部の空間温度を−50乃至7℃に保ちながら、かつ流延部の仮支持体温度を−50乃至15℃に保ちながらドープを仮支持体上に流延することを特徴とするセルロースアシレートフイルムの製造方法。
【0009】
(2)ドープをドープに含まれる有機溶媒で0.1乃至5質量%に希釈した25℃の溶液において、セルロースアシレートの会合体分子量が100万乃至1000万である(1)に記載のセルロースアシレートフイルムの製造方法。
(3)有機溶媒が、炭素原子数が3乃至12のエーテル、炭素原子数が3乃至12のケトンおよび炭素原子数が3乃至12のエステルから選ばれる非塩素系溶媒である(1)に記載のセルロースアシレートフイルムの製造方法。
(4)ドープが、下記(a)〜(c)のうちのいずれかの方法で調製される(1)に記載のセルロースアシレートフイルムの製造方法。
(a)セルロースアシレートを有機溶媒に混合し−10〜55℃で膨潤させる工程、その混合物を0〜55℃に加温して有機溶媒中にセルロースアセテートを溶解させる工程からなるセルロースアセテート溶液の調製方法
(b)セルロースアシレートを有機溶媒に混合し−10〜55℃で膨潤させる工程、混合物を−100〜−10℃に冷却する工程、および冷却した混合物を0〜57℃に加温して有機溶媒中にセルロースアセテートを溶解させる工程からなるセルロースアセテート溶液の調製方法
(c)セルロースアシレートを有機溶媒に混合し−10〜40℃で膨潤させる工程、混合物を0.2〜30Mpaで60〜240℃に高圧高温で加熱する工程、および加熱した混合物を0〜57℃に冷却して有機溶媒中にセルロースアセテートを溶解させる工程からなる調製方法
(5)セルロースアシレートを有機溶媒に溶解する際に、90質量%以上が0.1乃至5mmの粒径を有するセルロースアシレート粒子を使用し、得られたセルロースアシレート溶液をろ過する工程を実施する(1)に記載のセルロースアシレートフイルムの製造方法。
(6)ドープが、25℃において液体又は固体の可塑剤を少なくとも一種セルロースアシレートに対して0.1〜20質量%含有していること、及び/又は少なくとも一種の液体又は固体の紫外線吸収剤をセルロースアシレートに対して0.001〜5質量%含有していること、及び/又は少なくとも一種の固体でその平均粒径が5〜3000nmである微粒子粉体をセルロースアシレートに対して0.001〜5質量%含有している(1)に記載のセルロースアシレートフイルムの製造方法。
(7)膜厚が10乃至500μmであるセルロースアシレートフイルムを作製する(1)に記載のセルロースアシレートフイルムの製造方法。
(8)膜厚が30乃至250μmであるハロゲン化銀写真感光材料支持体用のセルロースアシレートフイルムを作製する請求項1に記載のセルロースアシレートフイルムの製造方法。
【0010】
【発明の実施の形態】
セルロースアシレートは、2種類以上を混合して用いてもよい。セルロースアシレートは、セルロースの水酸基への置換度が下記式(I)〜(III)の全てを満足することが好ましい。
(I)2.6≦SA+SB≦3.0
(II)2.0≦SA≦3.0
(III)0≦SB≦0.8
ここで、式中SA及びSBは、セルロースの水酸基に置換されているアシル基の置換基を表し、SAはアセチル基の置換度、またSBは炭素原子数3〜22のアシル基の置換度である。
【0011】
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位および6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部をアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位、3位および6位のそれぞれについて、セルロースがエステル化している割合(100%のエステル化は置換度1)を意味する。本発明では、水酸基のSAとSBの置換度の総和は、より好ましくは2.7〜2.96であり、特に好ましくは2.80〜2.95である。また、SBの置換度は0〜0.8であり、特には0〜0.6である。さらにSBはその28%以上が6位水酸基の置換基であるが、より好ましくは30%以上が6位水酸基の置換基であり、31%がさらに好ましく、特には32%以上が6位水酸基の置換基であることも好ましい。また更に、セルロースアシレートの6位のSAとSBの置換度の総和が0.8以上であり、さらには0.85であり特には0.90であるセルロースアシレートフイルムもあげることができる。これらのセルロースアシレートフイルムにより溶解性の好ましい溶液が作製でき、特に非塩素系有機溶媒において、良好な溶液の作製が可能となる。
【0012】
セルロースアシレートの炭素原子数3〜22のアシル基(SB)としては、脂肪族基でもアリル基でもよく特に限定されない。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれさらに置換された基を有していてもよい。これらの好ましいSBとしては、プロピオニル、ブタノイル、ケプタノイル、ヘキサノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、iso‐ブタノイル、t‐ブタノイル、シクロヘキサンカルボニル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイル基などを挙げることができる。これらの中でも、プロピオニル、ブタノイル、ドデカノイル、オクタデカノイル、t‐ブタノイル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイルなどである。
【0013】
セルロースアシレートの合成方法の基本的な原理は、右田他、木材化学180〜190頁(共立出版、1968年)に記載されている。代表的な合成方法は、カルボン酸無水物−酢酸−硫酸触媒による液相酢化法である。具体的には、綿花リンタや木材パルプ等のセルロース原料を適当量の酢酸で前処理した後、予め冷却したカルボン酸化混液に投入してエステル化し、完全セルロースアシレート(2位、3位および6位のアシル置換度の合計が、ほぼ3.00)を合成する。上記カルボン酸化混液は、一般に溶媒としての酢酸、エステル化剤としての無水カルボン酸および触媒としての硫酸を含む。無水カルボン酸は、これと反応するセルロースおよび系内に存在する水分の合計よりも、化学量論的に過剰量で使用することが普通である。アシル化反応終了後に、系内に残存している過剰の無水カルボン酸の加水分解およびエステル化触媒の一部の中和のために、中和剤(例えば、カルシウム、マグネシウム、鉄、アルミニウムまたは亜鉛の炭酸塩、酢酸塩または酸化物)の水溶液を添加する。次に、得られた完全セルロースアシレートを少量の酢化反応触媒(一般には、残存する硫酸)の存在下で、50〜90℃に保つことによりケン化熟成し、所望のアシル置換度および重合度を有するセルロースアシレートまで変化させる。所望のセルロースアシレートが得られた時点で、系内に残存している触媒を前記のような中和剤を用いて完全に中和するか、あるいは中和することなく水または希硫酸中にセルロースアシレート溶液を投入(あるいは、セルロースアシレート溶液中に、水または希硫酸を投入)してセルロースアシレートを分離し、洗浄および安定化処理によりセルロースアシレートを得る。
【0014】
セルロースアシレートフイルムは、フイルムを構成するポリマー成分が実質的に上記の定義を有するセルロースアシレートからなることが好ましい。「実質的に」とは、ポリマー成分の55質量%以上(好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上)を意味する。フイルム製造の原料としては、セルロースアシレート粒子を使用することが好ましい。使用する粒子の90質量%以上は、0.5〜5mmの粒子径を有することが好ましい。また、使用する粒子の50質量%以上が1〜4mmの粒子径を有することが好ましい。セルロースアシレート粒子は、なるべく球形に近い形状を有することが好ましい。
【0015】
本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの重合度は、粘度平均重合度200〜700、好ましくは250〜550、更に好ましくは250〜400であり、特に好ましくは粘度平均重合度250〜350である。平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、105〜120頁、1962年)により測定できる。更に特開平9−95538号公報に詳細に記載されている。
【0016】
低分子成分が除去されると、平均分子量(重合度)が高くなるが、粘度は通常のセルロースアシレートよりも低くなるため有用である。低分子成分の少ないセルロースアシレートは、通常の方法で合成したセルロースアシレートから低分子成分を除去することにより得ることができる。低分子成分の除去は、セルロースアシレートを適当な有機溶媒で洗浄することにより実施できる。なお、低分子成分の少ないセルロースシレテートを製造する場合、酢化反応における硫酸触媒量を、セルロース100質量に対して0.5〜25質量部に調整することが好ましい。硫酸触媒の量を上記範囲にすると、分子量部分布の点でも好ましい(分子量分布の均一な)セルロースアシレートを合成することができる。セルロースアシレートの製造時に使用される際には、その含水率は2質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは1質量%以下であり、特には0.7質量%以下の含水率を有するセルロースアシレートである。一般に、セルロースアシレートは、水を含有しており2.5〜5質量%が知られている。本発明でこのセルロースアシレートの含水率にするためには、乾燥することが必要であり、その方法は目的とする含水率になれば特に限定されない。
セルロースアシレートに用いる原料綿やセルロースアシレートの合成方法は発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて7頁〜12頁に詳細に記載されている。
【0017】
セルロースアシレート溶液には、各調製工程において用途に応じた種々の添加剤(例えば、可塑剤、紫外線防止剤、劣化防止剤、光学異方性コントロール剤、微粒子、剥離剤、赤外吸収剤など)を加えることができ、それらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。例えば20℃以下と20℃以上の紫外線吸収材料の混合や、同様に可塑剤の混合などであり、例えば特開平2001−151901号公報などに記載されている。さらにまた、赤外吸収染料としては例えば特開平2001−194522号公報に記載されている。また、その添加する時期は、ドープ作製工程において何れで添加しても良いが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。更にまた、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。また、セルロースアシレートフイルムが多層から形成される場合、各層の添加物の種類や添加量が異なってもよい。例えば、特開平2001−151902号公報などに記載されているが、これらは従来から知られている技術である。
さらにこれらの詳細は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて16頁〜22頁に詳細に記載されている素材が好ましく用いられる。
【0018】
次に、セルロースアシレートが溶解される有機溶媒について記述する。まず、セルロースアシレートの溶液を作製するに際して用いられる非塩素系有機溶媒について記載する。本発明においては、セルロースアシレートが溶解し流延、製膜できる範囲において、その目的が達成できる限りは非塩素系有機溶媒は特に限定されない。本発明で用いられる非塩素系有機溶媒は、炭素原子数が3〜12のエステル、ケトン、エーテルから選ばれる溶媒が好ましい。エステル、ケトンおよび、エーテルは、環状構造を有していてもよい。エステル、ケトンおよびエーテルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も、主溶媒として用いることができ、たとえばアルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。二種類以上の官能基を有する主溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。炭素原子数が3〜12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテートおよびペンチルアセテートが挙げられる。炭素原子数が3〜12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノンが挙げられる。炭素原子数が3〜12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトールが挙げられる。二種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノールおよび2−ブトキシエタノールが挙げられる。
【0019】
以上のセルロースアシレートに用いられる非塩素系有機溶媒については、前述のいろいろな観点から選定されるが、好ましくは以下のとおりである。すなわち、本発明のセルロースアシレートの好ましい溶媒は、互いに異なる三種類以上の混合溶媒であって、第一の溶媒が酢酸メチル、酢酸エチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、アセトン、ジオキソラン、ジオキサンから選ばれる少なくとも一種あるいは或いはそれらの混合液であり、第二の溶媒が炭素原子数が4〜7のケトン類またはアセト酢酸エステルから選ばれ、第三の溶媒として炭素原子数が1〜10のアルコールまたは炭化水素から選ばれ、より好ましくは炭素原子数1〜8のアルコールである。なお、第一の溶媒が、二種以上の溶媒の混合液である場合は、第二の溶媒がなくてもよい。第一の溶媒は、さらに好ましくは酢酸メチル、アセトン、蟻酸メチル、蟻酸エチルあるいはこれらの混合物であり、第二の溶媒は、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、アセチル酢酸メチルが好ましく、これらの混合液であってもよい。
【0020】
第三の溶媒であるアルコールの好ましくは、直鎖であっても分枝を有していても環状であってもよく、その中でも飽和脂肪族炭化水素であることが好ましい。アルコールの水酸基は、第一級〜第三級のいずれであってもよい。アルコールの例には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノールおよびシクロヘキサノールが含まれる。なおアルコールとしては、フッ素系アルコールも用いられる。例えば、2−フルオロエタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールなども挙げられる。さらに炭化水素は、直鎖であっても分岐を有していても環状であってもよい。芳香族炭化水素と脂肪族炭化水素のいずれも用いることができる。脂肪族炭化水素は、飽和であっても不飽和であってもよい。炭化水素の例には、シクロヘキサン、ヘキサン、ベンゼン、トルエンおよびキシレンが含まれる。これらの第三の溶媒であるアルコールおよび炭化水素は単独でもよいし二種類以上の混合物でもよく特に限定されない。第三の溶媒としては、好ましい具体的化合物は、アルコールとしてはメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、およびシクロヘキサノール、シクロヘキサン、ヘキサンを挙げることができ、特にはメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールである。
【0021】
以上の三種類の混合溶媒は、第一の溶媒が20〜95質量%、第二の溶媒が2〜60質量%さらに第三の溶媒が2〜30質量%の比率で含まれることが好ましく、さらに第一の溶媒が30〜90質量%であり、第二の溶媒が3〜50質量%、さらに第三のアルコールが3〜25質量%含まれることが好ましい。また特に第一の溶媒が30〜90質量%であり、第二の溶媒が3〜30質量%、第三の溶媒がアルコールであり3〜15質量%含まれることが好ましい。なお、第一の溶媒が混合液で第二の溶媒を用いない場合は、第一の溶媒が20〜90質量%、第三の溶媒が5〜30質量%の比率で含まれることが好ましく、さらに第一の溶媒が30〜86質量%であり、さらに第三の溶媒が7〜25質量%含まれることが好ましい。以上の本発明で用いられる非塩素系有機溶媒は、さらに詳細には発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)の12頁〜16頁に記載されている。好ましい非塩素系有機溶媒の組合せは以下挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
非塩素系有機溶媒の組合せの例としては、酢酸メチル/アセトン/メタノール/エタノール/ブタノール(75/10/5/5/5、質量部)、酢酸メチル/アセトン/メタノール/エタノール/プロパノール(75/10/5/5/5、質量部)、酢酸メチル/アセトン/メタノール/ブタノール/シクロヘキサン(75/10/5/5/5、質量部)、酢酸メチル/メチルエチルケトン/メタノール/ブタノール(80/10/5/5、質量部)、酢酸メチル/アセトン/メチルエチルケトン/エタノール/イソプロパノール(75/10/10/5/7、質量部)、酢酸メチル/シクロペンタノン/メタノール/イソプロパノール(80/10/5/8、質量部)、酢酸メチル/アセトン/ブタノール(85/5/5、質量部)、酢酸メチル/シクロペンタノン/アセトン/メタノール/ブタノール(60/15/15/5/6、質量部)、酢酸メチル/シクロヘキサノン/メタノール/ヘキサン(70/20/5/5、質量部)、酢酸メチル/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール(50/20/20/5/5、質量部)、酢酸メチル/1、3ジオキソラン/メタノール/エタノール(70/20/5/5、質量部)、酢酸メチル/ジオキサン/アセトン/メタノール/エタノール(60/20/10/5/5、質量部)、酢酸メチル/アセトン/シクロペンタノン/エタノール/イソブタノール/シクロヘキサン(65/10/10/5/5/5、質量部)、ギ酸メチル/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール(50/20/20/5/5、質量部)、ギ酸メチル/アセトン/酢酸エチル/エタノール/ブタノール/ヘキサン(65/10/10/5/5/5、質量部)、アセトン/アセト酢酸メチル/メタノール/エタノール(65/20/10/5、質量部)、アセトン/シクロペンタノン/エタノール/ブタノール(65/20/10/5、質量部)、アセトン/1,3ジオキソラン/エタノール/ブタノール(65/20/10/5、質量部)、1、3ジオキソラン/シクロヘキサノン/メチルエチルケトン/メタノール/ブタノール(55/20/10/5/5/5、質量部)などを挙げることができる。本技術に用いるドープには、上記本技術の非塩素系有機溶媒以外に、メチレンクロライドを本技術の全有機溶媒量の10質量%以下含有させてもよい。
【0023】
また、セルロースアシレートの溶液を作製するに際しては、場合により主溶媒として塩素系有機溶媒も用いられ以下に記載する。本発明においては、セルロースアシレートが溶解し流延、製膜できる範囲において、その目的が達成できる限りはその塩素系有機溶媒は特に限定されない。これらの塩素系有機溶媒は、好ましくはジクロロメタン、クロロホルムである。特にジクロロメタンが好ましい。また、塩素系有機溶媒以外の有機溶媒を混合することも特に問題ない。その場合は、ジクロメタンは少なくとも50質量%使用することが必要である。本発明の併用される非塩素系有機溶媒について以下に記す。すなわち、好ましい非塩素系有機溶媒としては、炭素原子数が3〜12のエステル、ケトン、エーテル、アルコール、炭化水素などから選ばれる溶媒が好ましい。エステル、ケトン、エーテルおよびアルコールは、環状構造を有していてもよい。エステル、ケトンおよびエーテルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も溶媒として用いることができ、たとえばアルコール性水酸基のような他の官能基を同時に有していてもよい。二種類以上の官能基を有する溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。炭素原子数が3〜12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテートおよびペンチルアセテートが挙げられる。炭素原子数が3〜12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノンが挙げられる。炭素原子数が3〜12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトールが挙げられる。二種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノールおよび2−ブトキシエタノールが挙げられる。
【0024】
また塩素系有機溶媒と併用されるアルコールとしては、好ましくは直鎖であっても分枝を有していても環状であってもよく、その中でも飽和脂肪族炭化水素であることが好ましい。アルコールの水酸基は、第一級〜第三級のいずれであってもよい。アルコールの例には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノールおよびシクロヘキサノールが含まれる。なおアルコールとしては、フッ素系アルコールも用いられる。例えば、2−フルオロエタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールなども挙げられる。さらに炭化水素は、直鎖であっても分岐を有していても環状であってもよい。芳香族炭化水素と脂肪族炭化水素のいずれも用いることができる。脂肪族炭化水素は、飽和であっても不飽和であってもよい。炭化水素の例には、シクロヘキサン、ヘキサン、ベンゼン、トルエンおよびキシレンが含まれる。
【0025】
以上のセルロースアシレートに用いられる主溶媒である塩素系有機溶媒と併用される非塩素系有機溶媒については、特に限定されないが、酢酸メチル、酢酸エチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、アセトン、ジオキソラン、ジオキサン、炭素原子数が4〜7のケトン類またはアセト酢酸エステル、炭素原子数が1〜10のアルコールまたは炭化水素から選ばれる。なお好ましい併用される非塩素系有機溶媒は、酢酸メチル、アセトン、蟻酸メチル、蟻酸エチル、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、アセチル酢酸メチル、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、およびシクロヘキサノール、シクロヘキサン、ヘキサンを挙げることができる。本発明の好ましい主溶媒である塩素系有機溶媒の組合せとしては以下を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
このような塩素系有機溶媒の組合せの例としては、ジクロロメタン/メタノール/エタノール/ブタノール(75/10/5/5/5、質量部)、ジクロロメタン/アセトン/メタノール/プロパノール(80/10/5/5、質量部)、ジクロロメタン/メタノール/ブタノール/シクロヘキサン(75/10/5/5/5、質量部)、ジクロロメタン/メチルエチルケトン/メタノール/ブタノール(80/10/5/5、質量部)、ジクロロメタン/アセトン/メチルエチルケトン/エタノール/イソプロパノール(75/10/10/5/7、質量部)、ジクロロメタン/シクロペンタノン/メタノール/イソプロパノール(80/10/5/8、質量部)、ジクロロメタン/酢酸メチル/ブタノール(80/10/10、質量部)、ジクロロメタン/シクロヘキサノン/メタノール/ヘキサン(70/20/5/5、質量部)、ジクロロメタン/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール(50/20/20/5/5、質量部)、ジクロロメタン/1、3ジオキソラン/メタノール/エタノール(70/20/5/5、質量部)、ジクロロメタン/ジオキサン/アセトン/メタノール/エタノール(60/20/10/5/5、質量部)、ジクロロメタン/アセトン/シクロペンタノン/エタノール/イソブタノール/シクロヘキサン(65/10/10/5/5/5、質量部)、ジクロロメタン/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール(70/10/10/5/5、質量部)、ジクロロメタン/アセトン/酢酸エチル/エタノール/ブタノール/ヘキサン(65/10/10/5/5/5、質量部)、ジクロロメタン/アセト酢酸メチル/メタノール/エタノール(65/20/10/5、質量部)、ジクロロメタン/シクロペンタノン/エタノール/ブタノール(65/20/10/5、質量部)などを挙げることができる。
【0027】
本発明においてセルロースアシレートは、有機溶媒に15〜30質量%溶解している溶液であることを特徴とするが、より好ましくは17〜27質量%であり、特には18〜25質量%溶解しているセルロースアシレート溶液であることが好ましい。これらの濃度にセルロースアシレートを実施する方法は、溶解する段階で所定の濃度になるように実施してもよく、また予め15質量%未満の低濃度溶液(例えば9〜14質量%)として作製した後に、後述する濃縮工程で所定の高濃度に調整してもよい。さらに、予め高濃度のセルロースアシレート溶液とした後に、種々の添加物を添加することで所定の低濃度のセルロースアシレート溶液としてもよく、いずれの方法で本発明のセルロースアシレート溶液濃度になるように実施されれば特に問題ない。
【0028】
次に、本発明ではセルロースアシレート溶液を同一組成の有機溶媒で0.1〜5質量%にした希釈溶液のセルロースアシレートの会合体分子量が100万〜1000万であることが好ましい。さらに好ましくは、会合分子量が100万〜600万である。この会合分子量は静的光散乱法で求めることができる。その際に同時に求められる慣性自乗半径は40〜200nmになるように溶解することが好ましい。さらに好ましい慣性自乗半径は70〜200nmである。更にまた、第2ビリアル係数が−2×10-4〜4×10-4となるように溶解することが好ましく、より好ましくは第2ビリアル係数が−2×10-4〜2×10-4である。ここで、本発明における会合分子量、さらに慣性自乗半径および第2ビリアル係数の定義について述べる。これらは、下記方法に従って、静的光散乱法を用いて測定した。なおこれらの測定は装置の都合上希薄領域で測定するが、これらの測定値は高濃度域のドープの挙動を反映するものである。まず、セルロースアシレートをドープに使用する溶剤に溶かし、0.1質量%、0.2質量%、0.3質量%、0.4質量%の溶液を調製した。なお、秤量は吸湿を防ぐためセルロースアシレートは120℃で2時間乾燥したものを用い、25℃、10%RHで行った。溶解方法は、ドープ溶解時に採用した方法(常温溶解法、冷却溶解法、高温溶解法)に従って実施した。続いてこれらの溶液、および溶剤を0.2μmのテフロン製フィルターで濾過した。そして、ろ過した溶液を静的光散乱を、光散乱測定装置(大塚電子(株)製、DLS−700)を用い、25℃に於いて30度から140度まで10度間隔で測定した。得られたデータをBERRYプロット法にて解析した。なお、この解析に必要な屈折率はアッベ屈折系で求めた溶剤の値を用い、屈折率の濃度勾配(dn/dc)は、示差屈折計(大塚電子(株)製、DRM−1021)を用い、光散乱測定に用いた溶剤、溶液を用いて測定した。
【0029】
本発明において、セルロースアシレート溶液(ドープ)の調製については、その溶解方法は特に限定されず、室温でもよくさらには冷却溶解法あるいは高温溶解方法、さらにはこれらの組み合わせで実施される。これらに関しては、例えば特開平5−163301号、特開昭61−106628号、特開昭58−127737号、特開平9−95544号、特開平10−95854号、特開平10−45950号、特開2000−53784号、特開平11−322946号、特開平11−322947号、特開平2−276830号、特開2000−273239号、特開平11−71463号、特開平04−259511号、特開2000−273184号、特開平11−323017号、および特開平11−302388号の各公報などにセルロースアシレート溶液の調製法が記載されている。以上記載したセルロースアシレートの非塩素系有機溶媒への溶解方法は、本発明においても適宜本発明の範囲であればこれらの技術を適用できるものである。これらの詳細については、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)の22頁〜25頁に記載されている方法で実施される。さらに本発明で用いるセルロースアシレートのドープ溶液は、溶液濃縮、ろ過が通常実施され、同様に発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)の25頁に詳細に記載されている。なお、高温度で溶解する場合は、使用する有機溶媒の沸点以上の場合がほとんどであり、その場合は加圧状態で用いられる。
【0030】
試料溶液1mLをレオメーター(CLS 500)に直径4cm/2°のSteel Cone(共に、TA Instrumennts社製)を用いて測定した。測定条件はOscillation Step/Temperature Rampで40℃〜−10℃の範囲を2℃/分で可変して測定し、40℃の静的非ニュートン粘度n*(Pa・s)および−5℃の貯蔵弾性率G’(Pa)を求めた。尚、試料溶液は予め測定開始温度にて液温一定となるまで保温した後に測定を開始した。本発明では、流延する際のドープ温度での粘度が1〜300Pa・sであり、かつ−5℃での動的貯蔵弾性率が1万〜100万Paである。より好ましくは、粘度が1〜200Pa・sであり、かつ−5℃での動的貯蔵弾性率が5万〜50万Paであり、特に好ましくは粘度が10〜180Pa・sであり、かつ−5℃での動的貯蔵弾性率が7万〜50万Paである。
【0031】
次に、セルロースアシレート溶液を用いたフイルムの製造方法について述べる。本発明のセルロースアシレートフイルムを製造する方法及び設備は、従来セルローストリアセテートフイルム製造に供する溶液流延製膜方法及び溶液流延製膜装置が用いられる。溶解機(釜)から調製されたドープ(セルロースアシレート溶液)を貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。ドープをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延され、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて乾燥装置のロール群で搬送し乾燥を終了して巻き取り機で所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせはその目的により変わる。ハロゲン化銀写真感光材料や電子ディスプレイ用機能性保護膜に用いる溶液流延製膜方法においては、溶液流延製膜装置の他に、下引層、帯電防止層、ハレーション防止層、保護層等のフイルムへの表面加工のために、塗布装置が付加されることが多い。これらの各製造工程については、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)の25頁〜30頁に詳細に記載され、流延(共流延を含む)、金属支持体、乾燥、剥離、延伸などに分類される。
【0032】
ここで、本発明においては流延部の空間温度が−50〜7℃であることを特徴とするものである。この空間温度により流延されたセルロースアシレート溶液は、支持体の上で瞬時に冷却されゲル強度アップすることでその有機溶媒を含んだフイルムを保持することができる。これにより、セルロースアシレートから有機溶媒を蒸発させることなく、支持体から短時間で剥ぎ取りことが可能となり、高速流延が達成できるものである。ここで流延部の好ましい空間温度は−30〜7℃であり、より好ましくは−20〜7℃である。なお、空間としては通常の空気でもよいし窒素やアルゴン、ヘリウムなどでもよく特に限定されない。またその場合の湿度は0〜30%RHが好ましく、さらには0〜15%RHが好ましい。また、本発明ではセルロースアシレート溶液を流延する流延部の支持体の温度が−50〜15℃であり、好ましくは−30〜10℃であり、更には−25〜8℃であり、特には−20〜5℃である。流延部を本発明の温度に保つためには、流延部に冷却した気体を導入して達成してもよく、あるいは冷却装置を流延部に配置して空間を冷却してもよい。この時、水が付着しないように注意することが重要であり、乾燥した気体を利用するなどの方法で実施できる。
【0033】
本発明においてその各層の内容と流延については、特に以下の構成が好ましい。すなわち、セルロースアシレート溶液には、各調製工程において用途に応じた種々の添加剤を加えることができる。それらの添加剤は、可塑剤、紫外線防止剤や劣化防止剤(例、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミン)、更には剥離剤、微粒子等である。具体的には、セルロースアシレート溶液が、25℃において少なくとも一種の溶液又は固体の可塑剤をセルロースアシレートに対し0.1以上20質量%以下含有していること、および/または少なくとも一種の液体または固体の紫外線吸収剤をセルロースアシレートに対して0.001以上5質量%以下含有していること、および/または少なくとも一種の微粒子粉体をセルロースアシレートに対して0.001以上5質量%含有していること、および/または少なくとも一種のフッ素系界面活性剤をセルロースアシレートに対して0.001以上2質量%含有していること、および/または少なくとも一種の離型剤をセルロースアシレートに対して0.0001以上2質量%以下含有していること、および/または少なくとも一種の劣化防止剤をセルロースアシレートに対して0.0001以上2質量%以下含有していること、および/または少なくとも一種の光学異方性コントロール剤をセルロースアシレートに対して0.1以上15質量%以下含有していること、および/または少なくとも一種の赤外線吸収剤をセルロースアシレートに対して0.1以上5質量%以下含有していること、および/または少なくとも一種の固体でその平均粒径が5以上3000nmである微粒子マット剤をセルロースアシレートに対して0.001以上1質量%以下含有していることが好ましい。更に詳細は発明協会公開技報2001−1745号16頁左段の28行目から22頁右段の下から5行目までに記載のものを挙げることができる。
【0034】
また更に、流延工程で二種類以上のセルロースアシレート溶液を同時及び又は逐次共流延する製造工程からなり作製されるセルロースアシレート溶液及びセルロースアシレートフイルムにおいて、各層の塩素系溶媒の組成が同一であるか異なる組成のどちらか一方であること、各層の添加剤が一種類であるかあるいは二種類以上の混合物のどちらか一方であること、各層への添加剤の添加位置が同一層であるか異なる層のどちらか一方であること、添加剤の溶液中の濃度が各層とも同一濃度であるかあるいは異なる濃度のどちらか一方であること、各層の会合体分子量が同一であるかあるいは異なる会合体分子量のどちらか一方であること、各層の溶液の温度が同一であるか異なる温度のどちらか一方であること、また各層の塗布量が同一か異なる塗布量のどちらか一方であること、各層の粘度が同一であるか異なる粘度のどちらか一方であること、各層の乾燥後の膜厚が同一であるか異なる厚さのどちらか一方であること、さらに各層に存在する素材が同一状態あるいは分布であるか異なる状態あるいは分布であること、各層の物性が同一であるかあるいは異なる物性のどちらか一方であること、各層の物性が均一であるか異なる物性の分布のどちらか一方であることを特徴とするセルロースアシレート溶液及びその溶液から作製されるセルロースアシレートフイルムであることも好ましい。ここで、物性とは発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)の6頁〜7頁に詳細に記載されている物性を含むものであり、例えばヘイズ、透過率、分光特性、レターゼーションRe、同Rth、分子配向軸、軸ズレ、引裂強度、耐折強度、引張強度、巻き内外Rt差、キシミ、動摩擦、アルカリ加水分解、カール値、含水率、残留溶剤量、熱収縮率、高湿寸度評価、透湿度、ベースの平面性、寸法安定性、熱収縮開始温度、弾性率、及び輝点異物の測定などであり、さらにはベースの評価に用いられるインピーダンス、面状も含まれるものである。また、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)の11頁に詳細に記載されているセルロースアシレートのイエローインデックス、透明度、熱物性(Tg、結晶化熱)なども挙げることができる。
【0035】
また、流延速度が5〜200m/分であること、及び/又は流延後のセルロースアシレートフイルム溶液を金属支持体から剥離し、その直後に金属支持体側に密着していたフイルムの面を最初のロ−ルに接触させ続いて金属支持体上で空気側にあつたウエブの面を第2番目のロ−ルに接触させた後乾燥すること、及び/又は最初に接触するロ−ルがロ−ルの径が中央になるほど小さくなるものであるかあるいは第2番目のロ−ルがロ−ルの径が中央になるほど直径が大きくなるロ−ルであること、及び/又は乾燥された巻き姿がロール状でありその長さが50m〜10000mであること、及び/又は乾燥された巻き姿がロール状でありその長さが50m〜10000mであること、及び/又はその幅方向の長さが30cm〜500cmであること、及び/又はその両端が1μm〜1mmの高さでナーリングすることも好ましい態様である。
【0036】
セルロースアシレートフイルムは、場合により表面処理を行うことによって、セルロースアシレートフイルムと各機能層(例えば、下塗層およびバック層)との接着の向上を達成することができる。例えばグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸またはアルカリ処理を用いることができる。ここでいうグロー放電処理とは、10-3〜20Torrの低圧ガス下でおこる低温プラズマでもよく、更にまた大気圧下でのプラズマ処理も好ましい。プラズマ励起性気体とは上記のような条件においてプラズマ励起される気体をいい、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素、テトラフルオロメタンの様なフロン類及びそれらの混合物などがあげられる。これらについては、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)の30頁〜32頁に詳細に記載されている。なお、近年注目されている大気圧でのプラズマ処理は、例えば10〜1000Kev下で20〜500Kgyの照射エネルギーが用いられ、より好ましくは30〜500Kev下で20〜300Kgyの照射エネルギーが用いられる。これらの中でも特に好ましくは、アルカリ鹸化処理でありセルロースアシレートフイルムの表面処理としては極めて有効である。
【0037】
アルカリ鹸化処理は、鹸化液を塗布することで行う。塗布方法としては、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、バーコーティング法およびE型塗布法を挙げることができる。アルカリ鹸化処理塗布液の溶媒は、鹸化液の透明支持体に対して塗布するために濡れ性が良く、また鹸化液溶媒によって透明支持体表面に凹凸を形成させずに、面状を良好なまま保つ溶媒を選択することが好ましい。具体的には、アルコール系溶媒が好ましく、イソプロピルアルコールが特に好ましい。また、界面活性剤の水溶液を溶媒として使用することもできる。アルカリ鹸化塗布液のアルカリは、上記溶媒に溶解するアルカリが好ましく、KOH、NaOHがさらに好ましい。鹸化塗布液のpHは10以上が好ましく、12以上がさらに好ましい。アルカリ鹸化時の反応条件は、室温で1秒以上5分以下が好ましく、2秒以上1分以下がさらに好ましく、3秒以上30秒以下が特に好ましい。アルカリ鹸化反応後、鹸化液塗布面を水洗することが好ましい。また、塗布式鹸化処理と後述の配向膜解塗設を、連続して行うことができ、工程数を減少できる。
【0038】
フイルムと乳剤層との接着を達成するために、表面活性化処理をしたのち、直接セルロースアシレートフイルム上に機能層を塗布して接着力を得る方法と、一旦何がしかの表面処理をした後、あるいは表面処理なしで、下塗層(接着層)を設けこの上に機能層を塗布する方法とがある。これらの下塗層についての詳細は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)の32頁に記載されている。またセルロースアシレートフイルムの機能性層についても各種の機能層が発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)の32頁〜45頁に詳細に記載されている。
【0039】
本発明に従い作製されたセルロースアシレートフイルムの用途についてまず簡単に述べる。本発明に従い作製されたセルロースアシレートフイルムは、光学フイルム、特に偏光板保護フイルムとして有用である。偏光板保護フイルムとして用いる場合、偏光板の作製方法は特に限定されず、一般的な方法で作製することができる。得られたセルロースアシレートフイルムをアルカリ処理し、ポリビニルアルコールフイルムを沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の両面に完全ケン化ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。アルカリ処理の代わりに特開平6−94915号および特開平6−118232号の各公報に記載されているような易接着加工を施してもよい。保護フイルム処理面と偏光子を貼り合わせるのに使用される接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール系接着剤や、ブチルアクリレート等のビニル系ラテックス等が挙げられる。偏光板は偏光子及びその両面を保護する保護フイルムで構成されており、更に該偏光板の一方の面にプロテクトフイルムを、反対面にセパレートフイルムを貼合して構成される。プロテクトフイルム及びセパレートフイルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。この場合、プロテクトフイルムは、偏光板の表面を保護する目的で貼合され、偏光板を液晶板へ貼合する面の反対面側に用いられる。又、セパレートフイルムは液晶板へ貼合する接着層をカバーする目的で用いられ、偏光板を液晶板へ貼合する面側に用いられる。液晶表示装置には通常2枚の偏光板の間に液晶を含む基板が配置されているが、本発明の光学フイルムを適用した偏光板保護フイルムはどの部位に配置しても優れた表示性が得られる。特に液晶表示装置の表示側最表面の偏光板保護フイルムには透明ハードコート層、防眩層、反射防止層等が設けられるため、該偏光板保護フイルムをこの部分に用いることが特に好ましい。
【0040】
本発明のセルロースアシレートフイルムは、様々な用途で用いることができ、液晶表示装置の光学補償シートとして用いると特に効果がある。本発明に従って製造されたセルロースアシレートフイルムは、様々な表示モードの液晶表示装置に用いることができる。TN( Twisted Nematic)、IPS(In-Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti-ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN( Supper Twisted Nematic)、VA( Vertically Aligned)およびHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードが提案されている。また、上記表示モードを配向分割した表示モードも提案されている。セルロースアシレートフイルムは、いずれの表示モードの液晶表示装置においても有効である。また、透過型、反射型、半透過型のいずれの液晶表示装置においても有効である。本発明に従って製造されたセルロースアシレートフイルムを、TNモードの液晶セルを有するTN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として用いてもよい。本発明に従って製造されたセルロースアシレートフイルムを、STNモードの液晶セルを有するSTN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として用いてもよい。一般的にSTN型液晶表示装置では、液晶セル中の棒状液晶性分子が90〜360度の範囲にねじられており、棒状液晶性分子の屈折率異方性(△n)とセルギャップ(d)との積(△nd)が300〜1500nmの範囲にある。STN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開2000−105316号公報に記載がある。本発明に従って製造されたセルロースアシレートフイルムは、VAモードの液晶セルを有するVA型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として特に有利に用いられる。本発明に従って製造されたセルロースアシレートフイルムは、OCBモードの液晶セルを有するOCB型液晶表示装置あるいはHANモードの液晶セルを有するHAN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。
【0041】
本発明に従って製造されたセルロースアシレートフイルムは、TN型、STN型、HAN型、GH(Guest-Host)型の反射型液晶表示装置の光学補償シートとしても有利に用いられる。これらの表示モードは古くから良く知られている。TN型反射型液晶表示装置については、特開平10−123478号、WO9848320号、特許第3022477号の各公報に記載がある。反射型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、WO00−65384号明細書に記載がある。本発明のセルロースアシレートフイルムは、ASM(Axially Symmetric Aligned Microcell )モードの液晶セルを有するASM型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。ASMモードの液晶セルは、セルの厚さが位置調整可能な樹脂スペーサーにより維持されているとの特徴がある。その他の性質は、TNモードの液晶セルと同様である。ASMモードの液晶セルとASM型液晶表示装置については、クメ(Kume)他の論文(Kume et al., SID 98 Digest 1089 (1998))に記載がある。以上述べてきたセルロースアシレートフイルムの用途は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)の45頁〜59頁に詳細に記載されている。以下に本発明のセルロースアシレートについての具体的な実施態様を記述するが、これらに限定されるものではない。
【0042】
【実施例】
各実施例において、セルロースアシレート、溶液およびフイルムの化学的性質および物理的性質は、以下のように測定および算出した。
【0043】
(1)フイルムの剥げ残り
得られたフイルムを支持体から剥ぎ取る際の支持体表面を目視で観察し、セルロースアシレートフイルムの剥げ残りを以下の如く評価した。
A:支持体に剥げ残りは認められない。
B:支持体に剥げ残りがわずかに認められた。
C:支持体に剥げ残りがかなり認められた。
D:支持体に剥げ残りが多量認められた。
【0044】
(2)フイルムの横段ムラ(ムラと略称)
得られたフイルムを目視で観察し、その横段状ムラの欠陥を以下の如く評価した。
A:フイルムに横段ムラは認められない。
B:フイルムに横段ムラがわずかに認められた。
C:フイルムに横段ムラがかなり認められた。
D:フイルムに横段ムラが多量認められた。
【0045】
(3)フイルムのブツ(ブツと略称)
得られたフイルムを目視で観察し、その表面上のブツを以下の如く評価した。
A:フイルム表面にブツは認められなかった。
B:フイルム表面にブツがわずかに認められた。
C:フイルム表面にかなりのブツが認められた。
D:フイルム表面に凹凸が見られ、ブツが多数認められた。
【0046】
(4)フイルムのヘイズ
ヘイズ計(1001DP型、日本電色工業(株)製)を用いて測定した。
【0047】
以下に実施例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
[実施例1]
(1−1)セルロースアシレート溶液の作製
攪拌羽根を有し外周を冷却水が循環する100Lのステンレス性溶解タンクに、下記の溶媒混合溶液によく攪拌・分散しつつ、表1に記載のセルロースアシレート粉体(フレーク)を徐々に添加し、全体が200kgになるように仕込んだ。なお、溶媒であるジクロロメタン、ブタノール、アセトン、メタノール及びエタノールは、すべてその含水率が0.2質量%以下のものを利用した。まず、セルローストリアセテートの粉末は、分散タンクに紛体が投入されタンク内を1300Paに減圧し、攪拌剪断速度を最初は15m/sec(剪断応力5×104 kgf/m/sec2 )の周速で攪拌するディゾルバータイプの偏芯攪拌軸および、中心軸にアンカー翼を有して周速1m/sec(剪断応力1×104 kgf/m/sec2 )で攪拌する条件下で30分間分散した。分散の開始温度は25℃であり、冷却水を流水することにより最終到達温度を35℃とした。分散終了後、高速攪拌は停止し、アンカー翼の周速を0.5m/secとしてさらに100分間攪拌し、セルローストリアセテートフレークを膨潤させた。膨潤終了までは窒素ガスでタンク内を0.12MPaになるように加圧した。この際のタンク内の酸素濃度は2vol%未満であり、防爆上で問題のない状態を保った。またドープ中の水分量は、0.2質量%以下であることを確認した。セルロースアシレート溶液の組成は以下の通りである。
【0048】
セルローストリアセテート(置換度2.82、粘度平均重合度320、含水率0.2質量%、ジクロロメタン溶液中6質量%の粘度 305mPa・s、平均粒子径1.5mmであって標準偏差0.5mmである粉体)(20質量部)、酢酸メチル(58質量部)、アセトン(5質量部)、メタノール(6質量部)、ブタノール(5質量部)、可塑剤A(ジトリメチロールプロパンテトラアセテート)(1質量部)、可塑剤B(トリフェニルフォスフェート)(1質量部)、可塑剤C(ビフェニルヂフェニルフォスフェート)(0.2質量部)、可塑剤D(エチルフタリルグリコールエチルエステル)(0.2質量部)、UV剤a(2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン)(0.2質量部)、UV剤b(2(2’−ヒドロキシ−3’,5‘−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール)(0.2質量部)、UV剤c(2(2’−ヒドロキシ−3’,5‘−ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール)(0.2質量部)、微粒子(二酸化ケイ素(粒径20nm)、モース硬度 約7)(0.05質量部)、クエン酸モノエチルエステル(0.04質量部)を用いた。さらに、ここで使用したセルローストリアセテートは、残存酢酸量が0.1質量%以下であり、Caが0.05質量%、Mgは0.007質量%であり、さらにFeは5ppmであった。また6位アセチル基は0.95であり全アセチル中の32.2%であった。また、アセトン抽出分は11質量%、重量平均分子量と数平均分子量の比は0.5であり、分布の均一なものであった。またヘイズは0.08、透明度は93.5%であり、Tgは160℃、結晶化発熱量は6.2J/gであった。
【0049】
(1−2)セルローストリアセテートフイルム溶液
得られた不均一なゲル状溶液を、軸中心部を30℃に加温したスクリューポンプで送液して、そのスクリュー外周部から冷却して−75℃で3分間となるように冷却部分を通過させた。冷却は冷凍機で冷却した−80℃の冷媒を用いて実施した。そして、冷却により得られた溶液はスクリュ−ポンプで送液中に35℃に加温されてステンレス製の容器に移送した。50℃で2時間攪拌し均一溶液とした後、絶対濾過精度0.01mmの濾紙(東洋濾紙(株)製、#63)でろ過し、さらに絶対濾過精度2.5μmの濾紙(ポール社製、FH025)にて濾過した。得られたセルロースアシレート溶液は、粘度(35℃)で83Pa・s、動的貯蔵弾性率(−5℃)は25万Pa、その会合体重合度は290万であり、本発明の範囲の溶液特性を有するものであることを確認した。
【0050】
(1−3)セルローストリアセテートフイルムの作製
上述のろ過済みの35℃のセルローストリアセテート溶液を、35℃に保温した流延ギーサーを通して直径3mのドラムである鏡面ステンレス支持体上に流延した(支持体の温度は表1に記載した)。なお流延スピードは80m/分でその塗布幅は140cmとした。流延部の全体の空間部の温度を表1に記載の温度に設定した。そして、流延部から50cm手前で流延して回転してきたセルロースアシレートフイルムをドラムから剥ぎ取り、両端をピンテンターでクリップした。しかる後にピンテンターで保持されたセルロースアシレートフイルムを乾燥ゾーンに搬送した。まず初めの乾燥は45℃の乾燥風を送風した。さらに110℃、5分、更に130℃で10分乾燥(フイルム温度は約130℃)して、セルローストリアセテートフイルム(膜厚80μm)を得た。得られた試料は両端を3cm裁断しさらに端から2〜10mmの部分に高さ100μmのナーリングを実施し、ロール状に巻き取った。
【0051】
(1−4)結果
表1に、得られた試料の評価結果を示した。本発明の流延部空間の温度と支持体温度の範囲外である比較試料1−2〜1−4は剥げ残りが著しく発生し、ムラ、及びヘイズも大きく劣るものであった。これに対し本発明の試料1−5〜1−9は、剥げ残りもなくムラ、ブツもなく又ヘイズも小さくて面状の優れるものであった。
【0052】
【表1】
【0053】
[実施例2]
本発明の試料1−7について、(1−2)セルローストリアセテートフイルム溶液を下記に変更する以外は実施例1と全く同様にして、試料2−7を得た。
【0054】
(1−2)のセルローストリアセテートフイルム溶液得られた不均一なゲル状溶液をスクリューポンプで送液して、140℃、1Mpaに加温加圧した加熱部分を3分間通過させた後、110℃、1Mpaに加温加圧して、絶対濾過精度0.01mmの濾紙(東洋濾紙(株)製、#63)でろ過し、さらに絶対濾過精度0.0025mmの濾紙(ポール社製、FH025)にて濾過した。得られた溶液は、粘度(35℃)が79Pa・sであり動的貯蔵弾性率は24.1万Paでありその会合体分子量は310万であり本発明の範囲であった。
【0055】
(2−1)結果
得られた本発明の試料2−7は、ろ過性もよく、剥げ残りもなくムラ、ブツ及びヘイズも優れたものであった。このことから、本発明においては高温高圧溶解においても優れたセルロースアセテート溶液とセルロースアセテートフイルムが作製できることが確証された。
【0056】
[実施例3]
実施例1の試料1−7において、可塑剤A及びBを共に0質量部として除去する以外は実施例1と全く同様にして、本発明の試料3−7を作製した。得られた溶液の粘度(35℃)は87Pa・sであり、動的貯蔵弾性率は23.9万Paであり、その会合体分子量は280万であり本発明の範囲であった。得られた試料3−7は、剥げ残りもなくムラ、ブツは共にAでありヘイズは0.4で優れたものであった。一方、その耐折試験を実施したところ、試料1−7は106回であるのに対し、本発明の範囲ではあるが可塑剤がない試料3−7は、耐切試験は86回と実用状問題ないが若干劣るものであった。従って、本発明ではセルロースアシレートフイルムが可塑剤を含有することが、より好ましい態様であることが明らかである。ここで耐折強度の評価は、試料120mm×120mmを、温度23℃、湿度65%RHの環境下において2時間調湿し、ISO8776−1988に従って、折り曲げによって切断するまでの往復回数を測定して評価した。
【0057】
[実施例4]
実施例1の試料1−7において、UV剤a、b、cを共に0質量部として除去する以外は実施例1と全く同様にして、本発明の試料4−7を作製した。得られた溶液は、粘度(35℃)が87Pa・sであり動的貯蔵弾性率は26.4万Paであり、会合体分子量は310万であり本発明の範囲であった。得られた試料4−7は、剥げ残りもなく、ムラ、ブツは評価Aであり、ヘイズも0.2で優れたものであった。一方、その光褪色試験をキセノンランプ2万ルクス、1ヶ月実施したところ、試料1−7はヘイズが0.5%であるのに対し、本発明の範囲であるが試料4−7はそのヘイズが0.9と若干アップした。従って、本発明ではセルロースアシレートフイルムがUV剤を含有することが、より好ましい態様であることが明らかである。
【0058】
[実施例5]
実施例1の試料1−9において、微粒子のシリカを0質量部として除去する以外は実施例1と全く同様にして、本発明の試料5−9を作製した。得られた溶液は、粘度(35℃)が80Pa・sであり、動的貯蔵弾性率は26.2万Paであり、会合体分子量は290万であり本発明の範囲であった。得られた試料5−9は剥げ残りもなくムラ及びブツは評価Aであり、ヘイズも0.3で優れたものであった。一方、そのフイルムを2枚重ねて滑りやすさを調べたところ、試料1−9はスムーズに2枚を動かすことができるのに対し、本発明の範囲であるが試料5−9はフイルム同士の動きが若干悪かった。従って、本発明ではセルロースアシレートフイルムが微粒子を含有することが、より好ましい態様であることが明らかである。
【0059】
[実施例6]
実施例1の本発明の試料1−6において、実施例1の(1−2)セルローストリアセテートフイルムの作製を以下に変更する以外は、実施例1と全く同様にして、本発明の試料6−6のセルローストリアセテートフイルムを作製した。すなわち、(1−1)で得られたセルローストリアセテート溶液の一部を採液し、酢酸メチルを全体の10質量%添加して希釈したセルローストリアセテート溶液(溶液A)を作製した。得られた溶液Aは、粘度(35℃)が58Pa・sであり、動的貯蔵弾性率は14万Paであり本発明の範囲であった。得られた溶液は、特開平06−134993号公報に記載の共流延法に従って、試料1−6のセルローストリアセテート溶液を内部に、そしてその両側にセルローストリアセテート溶液(溶液A)を積層共流延し、共流延セルローストリアセテートフイルムを得た。なおその膜厚は、両側を3μmとし内部を34μmとして総厚が40μmとなるようにした。得られた試料6−6の面状は、試料1−6よりも表面が滑らかで凹凸がなく更に優れたものであった。従って本発明においては共流延することが更に優れた態様であることが明らかである。
【0060】
[実施例7]
特開平11−316378号公報に記載の実施例1において、その第1透明支持体を本発明の実施例1の試料1−7で得られるセルローストリアセテートフイルム(第2フイルム)の厚さを100μmとしたものに変更する以外は、全く同様にして特開平11−316378号公報に記載の実施例1を実施して、試料7−7を作製した。得られた楕円偏光板は、優れた光学特性は優れたものであった。従って、本発明の製造工程において特定の洗浄溶液を用いることで、その後に作製されるセルロースアシレートフイルムが光学偏光板に適応されても問題のない好ましい態様であることが明らかである。
【0061】
[実施例8]
特開平7−333433公報に記載の実施例1の富士写真フイルム(株)製セルローストリアセテートを、本発明の実施例1の本発明試料1−9のセルローストリエステルフイルムに変更する以外は、特開平7−333433号公報に記載の実施例1と全く同様にした光学補償フィルターフイルム試料を作製した。得られたフィルターフイルムは左右上下に優れた視野角を有するものであった。したがって、本発明のセルローストリアセテートフイルムが、光学的用途として優れたものであることが判る。
【0062】
[実施例9]
本発明では更に、多種の光学用途に利用され、本発明の代表として試料1−7を、特開平10−48420号公報の実施例1に記載の液晶表示装置、特開平9−26572号公報の実施例1に記載のディスコティック液晶分子を含む光学的異方性層、ポリビニルアルコールを塗布した配向膜、特開2000−154261号公報の図2〜9に記載のVA型液晶表示装置、特開2000−154261号公報の図10〜15に記載のOCB型液晶表示装置に用いたところ良好な性能が得られた。
【0063】
[実施例10]
実施例1の本発明の試料1−7において、そのフイルム厚さを120μmとする以外は、実施例1と全く同様にして、そのフイルムである本発明の試料10−7を作製した。得られたフイルムの一方に、特開平4−73736号公報の実施例1に記載の(バック層組成)第一層及び第2層を付与し、カチオン系ポリマーを導電性層とするバック層を作製した。更に、得られたバック層を付与したフイルムベースの反対の面に、特開平11−38568号公報の実施例1に記載の試料105を塗布し、ハロゲン化銀カラー写真感光材料を作製した。得られたカラーフイルムは優れた映像が得られ、かつその取り扱い性においても問題のないものであった。
【0064】
[実施例11]
実施例1の本発明の試料1−6において、ブタノールをイソプロパノールに変更しその量を8質量部に変更する以外は、実施例1と全く同様にして、そのフイルムである本発明の試料11−6を作製した。得られた溶液は、粘度(35℃)が23Pa・sであり、動的貯蔵弾性率は19.8万Paであり本発明の範囲であった。得られた希薄溶液の会合体分子量は270万であり、剥げ残りA、ムラAおよびブツAであり、ヘイズも0.3で小さくすべての点で優れたものであった。
【0065】
[実施例12]
実施例1の本発明の試料1−7において、セルローストリアセテートを、該セルローストリアセテート(15質量部)とセルロースアセテートプロピオネート(アセチル置換度2.45、プロピオネート置換度0.25で全置換度は2.70、粘度平均重合度320、含水率0.3質量%、ジクロロメタン溶液中6質量%の粘度 275mPa・s、平均粒子径1.3mmであって標準偏差0.4mmである粉体、残存酢酸量およびプロピオン酸量は共に0.05質量%以下、Caが0.012質量%、Mgは0.07質量%、Feは5ppm、6位アセチル基及びプロピオニル基はそれぞれ0.70と0.17であり全置換基の33%、アセトン抽出分は7質量%、重量平均分子量と数平均分子量の比は0.9、イエローネスインデックスは1.3、ヘイズは0.2、透明度は93.6%、Tgは157℃、結晶化発熱量は4.3J/g)(5質量部)、及びセルロースアセテートブチレート(アセチル置換度2.39、ブチレート置換度0.45で全置換度は2.84、粘度平均重合度340、含水率0.4質量%、ジクロロメタン溶液中6質量%の粘度 295mPa・s、平均粒子径1.3mmであって標準偏差0.4mmである粉体、残存酢酸量およびブタン酸量は共に0.03質量%以下、Caが0.005質量%、Mgは0.004質量%、Feは5ppm、6位アセチル基及びブチロイル基はそれぞれ0.72と0.20であり全置換基の32%、アセトン抽出分は14質量%、重量平均分子量と数平均分子量の比は1.3、イエローネスインデックスは0.9、ヘイズは0.5、透明度は92.9%、Tgは153℃、結晶化発熱量は3.9J/g)(5質量部)に変更する以外は、実施例1と全く同様にして、そのフイルムである本発明の試料12−7を作製した。得られた溶液は、粘度(35℃)が170Pa・sであり、動的貯蔵弾性率は10.4万Paであり本発明の範囲であった。得られた希薄溶液の会合体分子量は460万であり、剥げ残りA、ムラAおよびブツAであり、ヘイズも0.3で小さくすべての点で優れたものであった。したがって、本発明ではセルロースアシレートを2種類以上混合して用いても優れたセルロースアシレートフイルムを得ることができる。
【0066】
【発明の効果】
本発明に従うと、製造工程でセルロースアシレート溶液の支持体に流延した後、そのセルロースアシレートフイルムを剥ぎ取る際に、高速でも剥ぎ取り性が良好である溶液を提供することができる。さらに本発明のセルロースアシレートフイルム溶液により、ムラやブツの発生のないセルロースアシレートフイルムを提供できる。さらに、光学的異方性に優れ膜強度に優れたセルローストリエステルフイルムを提供することができる。更に、感材用支持体としても優れたセルローストリアセテートフイルムを作製できる。
Claims (8)
- セルロースアシレートを有機溶媒に溶解したドープを仮支持体上に流延し、仮支持体から剥ぎ取り、溶媒を蒸発させて乾燥させるセルロースアシレートフイルムの製造方法であって、ドープ中のセルロースアシレート濃度が15乃至30質量%であり、流延されるドープ温度でのドープ粘度が1乃至300Pa・sであり、−5℃でのドープの動的貯蔵弾性率が1万〜100万Paであり、流延部の空間温度を−50乃至7℃に保ちながら、かつ流延部の仮支持体温度を−50乃至15℃に保ちながらドープを仮支持体上に流延することを特徴とするセルロースアシレートフイルムの製造方法。
- ドープをドープに含まれる有機溶媒で0.1乃至5質量%に希釈した25℃の溶液において、セルロースアシレートの会合体分子量が100万乃至1000万である請求項1に記載のセルロースアシレートフイルムの製造方法。
- 有機溶媒が、炭素原子数が3乃至12のエーテル、炭素原子数が3乃至12のケトンおよび炭素原子数が3乃至12のエステルから選ばれる非塩素系溶媒である請求項1に記載のセルロースアシレートフイルムの製造方法。
- ドープが、下記(a)〜(c)のうちのいずれかの方法で調製される請求項1に記載のセルロースアシレートフイルムの製造方法。
(a)セルロースアシレートを有機溶媒に混合し−10〜55℃で膨潤させる工程、その混合物を0〜55℃に加温して有機溶媒中にセルロースアセテートを溶解させる工程からなるセルロースアセテート溶液の調製方法
(b)セルロースアシレートを有機溶媒に混合し−10〜55℃で膨潤させる工程、混合物を−100〜−10℃に冷却する工程、および冷却した混合物を0〜57℃に加温して有機溶媒中にセルロースアセテートを溶解させる工程からなるセルロースアセテート溶液の調製方法
(c)セルロースアシレートを有機溶媒に混合し−10〜40℃で膨潤させる工程、混合物を0.2〜30Mpaで60〜240℃に高圧高温で加熱する工程、および加熱した混合物を0〜57℃に冷却して有機溶媒中にセルロースアセテートを溶解させる工程からなる調製方法 - セルロースアシレートを有機溶媒に溶解する際に、90質量%以上が0.1乃至5mmの粒径を有するセルロースアシレート粒子を使用し、得られたセルロースアシレート溶液をろ過する工程を実施する請求項1に記載のセルロースアシレートフイルムの製造方法。
- ドープが、25℃において液体又は固体の可塑剤を少なくとも一種セルロースアシレートに対して0.1〜20質量%含有していること、及び/又は少なくとも一種の液体又は固体の紫外線吸収剤をセルロースアシレートに対して0.001〜5質量%含有していること、及び/又は少なくとも一種の固体でその平均粒径が5〜3000nmである微粒子粉体をセルロースアシレートに対して0.001〜5質量%含有している請求項1に記載のセルロースアシレートフイルムの製造方法。
- 膜厚が10乃至500μmであるセルロースアシレートフイルムを作製する請求項1に記載のセルロースアシレートフイルムの製造方法。
- 膜厚が30乃至250μmであるハロゲン化銀写真感光材料支持体用のセルロースアシレートフイルムを作製する請求項1に記載のセルロースアシレートフイルムの製造方法。
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JP2001301082A JP4536972B2 (ja) | 2001-09-28 | 2001-09-28 | セルロースアシレートフイルムの製造方法 |
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