JP2006028387A - セルロースアシレートフィルムとその製造方法 - Google Patents

セルロースアシレートフィルムとその製造方法 Download PDF

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泰行 佐々田
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Abstract

【課題】 膜厚方向に負のレターデーション値を有する透明なセルロースアシレートフィルムを工業的に安価に提供し、これを位相差板や位相差板の支持体、偏光板の保護フィルムとして使用し、優れた液晶表示装置を提供すること。
【解決手段】 膜厚方向のレターデーション値が−800〜−100nmであり、セルロースの水酸基へのアシル置換度が下記式(I)〜(III)の全てを満
足するセルロースアシレートフィルム。
(I) 2.82≦SA+SP≦3
(II) 0≦SA≦2.0
(III)1.0≦SP≦2.9
(式中、SAおよびSPはセルロースの水酸基に置換されているアシル基の置換度を表し、SAはアセチル基の置換度、またSPはプロピオニル基の置換度である。)
【選択図】 なし

Description

本発明は、膜厚方向に負のレターデーションを有するセルロースアシレートフィルム並びにそれを用いた位相差板、偏光板および液晶表示装置に関する。
セルロースエステルフィルムは、ハロゲン化写真感光材料の支持体、位相差板、位相差板の支持体、偏光板の保護フィルム及び液晶表示装置に使用されている。
セルロースエステルフィルムのうち、画像表示装置等の光学用途として最も一般的に用いられているセルロースアセテートフィルムでは、主として溶液流延製膜法が採用されており、平面性の高い良好なフィルムが製造されている。また、有機溶剤を用いない製膜法として、特許文献1にセルロースアシレートを溶融製膜する方法が公開されている。これは、セルロースアシレートのエステル基の炭素鎖を長くすることで融点を下げ溶融製膜しやすくしたものである。具体的には、セルロースアセテートから、セルロースアセテートプロピオネートやセルロースプロピオネート等に変えることで溶融製膜を可能にしており、低コストでセルロースアシレートフィルムを得ることができる。そして、溶融製膜法においては、溶液製膜法とは異なり、フィルムの膜厚を任意に厚くできるという特徴を有している。
これらのフィルムの膜厚方向のレターデーション(Rth)は正の値を示しているが、一方で、負のRthを有するセルロースエステルフィルムができると、このフィルムをそのままIPSモードの液晶表示装置の位相差板として用いることでパネルの視認性を向上させたり、正のRthを有するセルロースエステルフィルムを貼り合わせることにより、制御が容易でないRthを自在に調整した位相差板を製造したりすることが可能となる。負のRthを有するフィルムは、特許文献2に開示されているような複雑な方法で製造することも可能であるが、生産性が十分ではなかった。
そのため、負のRthを有するセルロースエステルフィルムを生産性良く製造することが切望されている。
特開2000−352620 特開2000−231016
セルロースエステルフィルムを、位相差板、位相差板の支持体、偏光板の保護フィルム及び液晶表示装置のような光学的用途に使用する場合、その光学異方性の制御が非常に重要である。セルロースエステルフィルムは一般に溶液流延製膜法によって製膜されるため、面内方向のレターデーション(Re)の制御が容易であるのに対し、厚み方向のレターデーション(Rth)の制御が難しく、とりわけRthの値を低く制御することは非常に困難であった。
一方で、セルロースエステルフィルムを光学材料として用いる表示装置では、セルロースエステルフィルムのレターデーション値が、表示装置の性能(例えば、視認性)を決定する非常に重要なパラメータになる。例えば、IPSモードの液晶表示装置では、負のRthを有するフィルムを位相差板として挿入することで、色味やコントラストを向上させることができ、優れた画質のパネルを得ることができる。また、このようにセルロースエステルフィルムを光学用途で用いる場合、フィルムはより透明でヘイズの小さいことが重要となる。
本発明の目的は、膜厚方向に負のレターデーション値を有する透明なセルロースアシレートフィルムを工業的に安価に提供し、これを位相差板や位相差板の支持体、偏光板の保護フィルムとして使用し、優れた液晶表示装置を提供することである。
本発明の上記目的は、下記(1)〜(3)のセルロースアシレートフィルム、下記(4)、(5)の位相差板、下記(6)の偏光板および下記(7)〜(8)のセルロースアシレートフィルムの製造方法をによって達せられる。
(1)膜厚方向のレターデーション値が−800〜−100nmであり、かつセルロースの水酸基へのアシル置換度が下記式(I)〜(III)の全てを満足す
ることを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
(I) 2.82≦SA+SP≦3
(II) 0≦SA≦2.0
(III)1.0≦SP≦2.9
(式中、SAおよびSPはセルロースの水酸基に置換されているアシル基の置換度を表し、SAはアセチル基の置換度、またSPはプロピオニル基の置換度である。)
(2)フィルム膜厚が100μm以上であることを特徴とする上記(1)に記載のセルロースアシレートフィルム。
(3)カルボン酸および/または有機塩をセルロースアシレートに対し100〜3000ppm含有することを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のセルロースアシレートフィルム。
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムと膜厚方向のレターデーション値が正の値であるセルロースアシレートフィルムからなる積層位相差板。
(5)少なくとも一枚の上記(1)〜(3)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムを含有することを特徴とする位相差板。
(6)偏光膜およびその両側に設けられた二枚の透明プラスチックフィルムからなる偏光板であって、一方の透明プラスチックフィルムが少なくとも一枚の上記(1)〜(3)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムを有することを特徴とする偏光板。
(7)セルロースの水酸基へのアシル置換度が下記式(I)〜(III)の全てを
満足するセルロースエステルを、加熱溶融させ、溶融物をろ過した後、支持体上に流延してフィルムとした後、該支持体から剥離することを特徴とするセルロースエステルフィルムの製造方法。
(I) 2.82≦SA+SP≦3
(II) 0≦SA≦2.0
(III)1.0≦SP≦2.9
(式中、SAおよびSPはセルロースの水酸基に置換されているアシル基の置換度を表し、SAはアセチル基の置換度、またSPはプロピオニル基の置換度である。)
(8)セルロースエステルを加熱溶融させる温度が150〜300℃であることを特徴とする上記(7)に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
セルロースエステルフィルムのレターデーション値は、フィルムを25℃、60%RHにて24時間調湿後、自動複屈折計(KOBRA−21ADH:王子計測機器(株)製)を用いて、25℃、60%RHにおいて、サンプルフィルム表面に対し垂直方向および、フィルム面法線から±40°傾斜させた方向から波長590nmにおけるレターデーション値を測定し、下記式(1)および(2)でそれぞれ表される面内レターデーション値(Re)と膜厚方向のレターデーション値(Rth)とを算出したものである。
(1) Re=(nx−ny)×d
(2)Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
式中、nxはフィルム面内の遅相軸(x)方向の屈折率であり、nyはフィルム面内の進相軸(y)方向の屈折率であり、nzはフィルムの厚み方向(フィルム面と直交する方向)の屈折率であり、dはフィルムの厚み(nm)である。遅相軸はフィルム面内で屈折率が最大となる方向であり、進相軸はフィルム面内で屈折率が最小となる方向である。
前記(3)項に記載のカルボン酸および/または有機塩の含有量は、セルロースアシレートフィルム1gを10mLのメタノールで抽出し、高速液体クロマトグラフィー法(検出波長;254nm)により定量される。なお、カルボン酸としては、セルロースアシレートから発生するプロピオン酸や酢酸が挙げられ、有機塩としては、発生したカルボン酸と、フィルム中に別途添加しておいたアミン等の塩基とからできる塩が挙げられる。
セルロースエステルフィルムのヘイズは、フィルムを25℃60%RHにて24時間調湿後、ヘイズメーター(HGM−2DP:スガ試験機(株)製)を用いてJIS K−6714に準じて測定する。
高置換度のセルロースアセテートプロピオネートもしくはセルロースプロピオネートから溶融製膜法により形成させた本発明のセルロースアシレートフィルムは、Rthが−100nm以下となるセルロースエステルフィルムであり、さらにはRthを、−800〜−100nm、特に−500〜−100nm、とりわけ−300〜−120nmにも調整することができる。
一般的にセルロースエステルフィルムの厚み方向のレターデーション(Rth)を、延伸等の製造工程の条件調整によって大きく制御することは非常に難しいことであるが、本発明のセルロースエステルフィルムはRthが非常に低いため、製膜したフィルムをそのまま、もしくは延伸するだけでIPS(In−Plane Switching)モードの液晶表示装置用の位相差板として用いることができる。また、従来から知られているRthが正の値となるセルロースエステルフィルムと貼り合せることで、簡便にRthを制御したりすることもできる。
さらに、本発明では溶融製膜法によりフィルムを形成できるので、膜厚の厚いフィルムを製造することが可能となり、Rthを低下させることが可能となった。同時に、溶融製膜法では製膜時やペレット作製時に加わる熱によりごく微量のカルボン酸、もしくは添加しておいた塩基との塩が発生するため、これらの酸や塩がフィルム中のポリマーの結晶サイズが大きく成長するのを抑制し、白化の見られない透明フィルムを製造することができ、また、延伸性に優れたフィルムを得ることができる。
なお、Rthが負の値となるポリマーフィルムとしては、複雑な方法で製造されたポリカーボネートフィルムが知られているが、製造方法の複雑さ故に生産性が十分でない。しかもポリカーボネートフィルムとセルロースエステルフィルムでは、膨張係数のような物理的性質や、屈折率のような光学的性質や、透湿係数が異なる。従って、ポリカーボネートフィルムとセルロースエステルフィルムとを貼り合せると、物理的性質の違いによる問題(例えば、環境に依存する膨張係数の違いに起因するカール)や光学的性質の違いによる問題(例えば、貼り合わせ界面での反射等に起因する透過率低下)が発生してしまう。また、位相差板の機能を持たせた偏光板保護フィルムとして用いると、等湿係数の低さによる問題(例えば、水を含んだ偏光子が乾燥しないことに起因する偏光度低下)が発生してしまう。
本発明により得られたRthが負の値となるセルロースエステルフィルムを用いることで、上記の問題を生じることなく、位相差板および偏光板のRthを自在に制御することが可能になった。そして、これらの位相差板あるいは偏光板を用いることで、信頼性の高い画像表示装置が得られる。
本発明のセルロースアシレートフィルムとは、セルロースエステル化合物、およびセルロースを原料として生物的あるいは化学的に官能基を導入して得られるセルロース骨格を有するエステル化合物、を含むフィルムである。その中で、エステルを構成する酸は、炭素数2および/または3のカルボン酸である酢酸および/またはプロピオン酸である。炭素数4以上のカルボン酸からなるセルロースアシレートフィルムでは、側鎖がフレキシブルであるが故に、製膜時の圧縮力により側鎖が面内に寝てしまい、Rthを増加させる働きをしてしまうために、膜厚方向に大きな負の値を有するセルロースアシレートフィルムを製造することはできない。
セルロースエステルの置換度は、下記式(I)〜(III)の全てを満足するもの
であり、
(I) 2.82≦SA+SP≦3
(II) 0≦SA≦2.0
(III)1.0≦SP≦2.9
(式中、SAおよびSPはセルロースの水酸基に置換されているアシル基の置換度を表し、SAはアセチル基の置換度、またSPはプロピオニル基の置換度である。)
が好ましく、
(I) 2.87≦SA+SP≦3
(II) 0≦SA≦1.7
(III)1.3≦SP≦2.9
がより好ましく、
(I) 2.90≦SA+SP≦2.98
(II) 0≦SA≦1.5
(III)1.5≦SP≦2.8
がさらに好ましい。
本発明のセルロースアセテートプロピオネートフィルムやセルロースプロピオネートフィルムにおいては、上記式(I)で表されるように全置換度が高いセ
ルロースアセテートプロピオネートもしくはセルロースプロピオネートを用いることにより、負のRth値を有する透明セルロースエステルフィルムを実現することが可能である。また、上記式(III)で表されるプロピオニル基の置換
度を高めることでセルロースアセテートよりもRthを低下させることができると同時に、ポリマーの融点を低下させ、溶融製膜することが可能となり、面状に優れた良好なフィルムを製造することが可能となる。
溶融製膜法では、溶液製膜法の如く溶媒の乾燥を伴わないため、任意の膜厚のフィルムを生産性良く製造することが可能である。したがって、フィルムの膜厚を上昇させることによりRthをより低下させることも可能となる。本発明の製膜直後のフィルム膜厚は、100μm以上が好ましく、150〜1000μmがより好ましく、200〜800μmがさらに好ましく、場合により250〜600μmが好ましい。このフィルムは製膜後に延伸することにより、任意のレターデーションおよび膜厚に調製することが可能である。
フィルム中のカルボン酸および/または有機塩は100〜3000ppm(mg/kg)が好ましく、120〜500ppm(mg/kg)がより好ましい。これらの酸や有機塩は溶融製膜時もしくはペレット作製時にかかる熱によりセルロースエステルから発生させることができ、これにより白化のない延伸性に優れたフィルムを得ることができる。なお、原料にアミン等の塩基を加えた場合には、発生した微量のカルボン酸とアミンとが塩を形成するが、これもカルボン酸と同様の効果を示す。
セルロースアシレートの合成方法について、基本的な原理は、右田伸彦他、木材化学180〜190頁(共立出版、1968年)に記載されている。セルロースアシレートの代表的な合成方法は、カルボン酸無水物−カルボン酸−硫酸触媒による液相アシル化法である。具体的には、セルロース原料を適当量の酢酸などのカルボン酸で前処理した後、予め冷却したアシル化混液に投入してエステル化し、完全セルロースアシレート(2位、3位および6位のアシル置換度の合計が、ほぼ3.00)を合成する。上記アシル化混液は、一般に溶媒としてのカルボン酸、エステル化剤としてのカルボン酸無水物および触媒としての硫酸を含む。カルボン酸無水物は、これと反応するセルロースおよび系内に存在する水分の合計よりも、化学量論的に過剰量で使用することが普通である。
アシル化反応終了後に、系内に残存している過剰カルボン酸無水物の加水分解を行うために、水または含水酢酸を添加する。エステル化触媒を一部中和するために、中和剤(例えば、カルシウム、マグネシウム、鉄、アルミニウムまたは亜鉛の炭酸塩、酢酸塩、水酸化物または酸化物)の水溶液を添加してもよい。次に、得られた完全セルロースアシレートを少量のアシル化反応触媒(一般には、残存する硫酸)の存在下で、20〜90℃に保つことによりケン化熟成し、所望のアシル置換度および重合度を有するセルロースアシレートまで変化させる。所望のセルロースアシレートが得られた時点で、系内に残存している触媒を前記のような中和剤を用いて完全に中和するか、あるいは中和することなく水または希酢酸中にセルロースアシレート溶液を投入(あるいは、セルロースアシレート溶液中に、水または希酢酸を投入)してセルロースアシレートを分離し、洗浄および安定化処理によりセルロースアシレートを得る。
セルロースアシレートの重合度は、粘度平均重合度で100〜400が好ましく、120〜300がより好ましく、150〜300がさらに好ましい。粘度平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、105〜120頁、1962年)に従い測定できる。粘度平均重合度の測定方法については、特開平9−95538号公報にも記載がある。
本発明で用いられるセルロースアシレートは、重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn比が狭いほうが均一に溶融させる観点から好ましいが、5.5以下のものが好ましく用いられ、4.0以下のものがより好ましく、3.0以下のものがさらにこのましく用いられる。分子量分布は、通常の方法で合成したセルロースアシレートから低分子成分を除去することにより狭くすることができる。低分子成分の除去は、セルロースアシレートを適当な有機溶媒で洗浄することにより実施できる。また、低分子成分の少ないセルロースアシレートを合成することもできる。低分子成分の少ないセルロースアシレートを製造する場合、アシル化反応における硫酸触媒量を、セルロース100質量に対して0.5〜25質量部に調整することが好ましい。これにより、分子量分布の狭いセルロースアシレートを合成することができる。
セルロースアシレートの原料綿や合成方法については、公開技報2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)7〜12頁にも記載がある。
セルロースアシレートフィルムは、フィルムを構成するポリマー成分が実質的にセルロースアシレートからなることが好ましい。「実質的に」とは、ポリマー成分の60質量%以上(好ましくは75質量%以上、より好ましくは85質量%以上)を意味する。セルロースアシレートフィルムに、二種類以上のセルロースアシレートを併用してもよい。
溶融製膜に用いるセルロースエステルとしては、セルロースアシレート粒子を使用することもでき、セルロースアシレート粒子をペレット化したものもこのましく用いることができる。
溶融製膜に用いるセルロースエステルは、含水率が1.0質量%以下であることが好ましく、0.7質量%以下であることがさらに好ましく、0.5質量%以下であることが最も好ましい。セルロースアシレートは一般に、1.8〜5質量%の含水率を有している。従って、セルロースアシレートを乾燥してから使用することが好ましい。
さらに本発明では、可塑剤を添加することができる。可塑剤としては、ポリマーの溶融時にかかる熱や圧力によって著しい分解や変色、揮発、昇華が起こらない化合物が好ましく、例えば、アルキルフタリルアルキルグリコレート類、リン酸エステルやカルボン酸エステル等が挙げられる。
アルキルフタリルアルキルグリコレート類としては、例えばメチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等が挙げられる。
リン酸エステルとしては、例えばトリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、フェニルジフェニルホスフェート等を挙げることができる。さらに特表平6−501040の請求項3〜7に記載のリン酸エステル系可塑剤を用いることが好ましい。
カルボン酸エステルとしては、例えばジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート及びジエチルヘキシルフタレート等のフタル酸エステル類、クエン酸アセチルトリメチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル等のクエン酸エステル類並びにジメチルアジペート、ジブチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ビス(2−エチルヘキシル)アジペート、ジイソデシルアジペート、ビス(ブチルジグリコールアジペート)等のアジピン酸エステルを挙げることができる。またその他、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、トリアセチン等を単独あるいは併用するのが好ましい。
これらの可塑剤はセルロースアシレートフィルムに対し0質量%以上15質量%以下が好ましく、より好ましくは1wt%以上13質量%以下、さらに好ましくは2質量%以上10質量%以下である。これらの可塑剤は必要に応じて、2種類以上を併用して用いてもよい。
さらに、可塑剤以外に、種々の添加剤(例えば、紫外線防止剤、劣化防止剤、光学異方性コントロール剤、微粒子、赤外吸収剤、界面活性剤、カルボン酸トラップ剤(アミン等)など)を加えることができる。赤外吸収染料としては例えば特開平2001−194522のものが使用でき、紫外線吸収剤は例えば特開平2001−151901に記載のものが使用でき、それぞれセルロースアシレートに対して0.001〜5質量%含有させることが好ましい。微粒子は、平均粒径が5〜3000nmのものを使用することが好ましく、金属酸化物や架橋ポリマーから成るものを使用でき、セルロースアシレートに対して0.001〜5質量%含有させることが好ましい。劣化防止剤はセルロースアシレートに対して0.0001〜2質量%含有させることが好ましい。光学異方性コントロール剤は例えば特開2003−66230、特開2002−49128記載のものを必要に応じて使用することもできるが、これらの化合物は面配向しやすく、Rthを上昇させやすいため、セルロースアシレートに対して0.01〜3質量%含有させることが好ましい。
(溶融製膜)
1)乾燥
上述の方法でペレット化したものを用いるのが好ましく、溶融製膜に先立ちペレット中の含水率を1%以下、より好ましくは0.5%以下にした後、溶融押出し機のホッパーに投入する。このときホッパーをTg−50℃以上Tg+30℃以下、より好ましくはTg−40℃以上Tg+10℃以下、さらに好ましくはTg−30℃以上Tg以下にする。これによりホッパー内での水分の再吸着を抑制し、上記乾燥の効率をより発現し易くできる。
2)混練押出し
150℃以上300℃以下、より好ましくは160℃以上250℃以下、さらに好ましくは160℃以上220℃以下で混練溶融する。この時、溶融温度は一定温度で行ってもよく、いくつかに分割して制御しても良い。好ましい混練時間は2分以上60分以下であり、より好ましくは3分以上40分以下であり、さらに好ましくは4分以上30分以下である。さらに、溶融押出し機内を不活性(窒素等)気流中、あるいはベント付き押出し機を用い真空排気しながら実施するのも好ましい。
3)製膜
溶融した樹脂をギヤポンプに通し、押し出し機の脈動を除去した後、金属メッシュフィルター等で濾過を行い、この後ろに取り付けたT型のダイから冷却ドラム上にシート状に押し出す。押出しは単層で行ってもよく、マルチマニホールドダイやフィードブロックダイを用いて複数層押出しても良い。この時、ダイのリップの間隔を調整することで幅方向の厚みむらを調整することができる。
この後キャスティングドラム上に押出す。この時、静電印加法、エアナイフ法、エアーチャンバー法、バキュームノズル法、タッチロール法等の方法を用い、キャスティングドラムと溶融押出ししたシートの密着を上げることが好ましい。このような密着向上法は、溶融押出しシートの全面に実施してもよく、一部に実施しても良い。
キャスティングドラムは60℃以上160℃以下が好ましく、より好ましくは70℃以上150℃以下、さらに好ましくは80℃以上150℃以下である。この後、キャスティングドラムから剥ぎ取り、ニップロールを経た後巻き取る。巻き取り速度は10m/分以上100m/分以下が好ましく、より好ましくは15m/分以上80m/分以下、さらに好ましくは20m/分以上70m/分以下である。
製膜幅は1m以上5m以下、さらに好ましくは1.2m以上4m以下、さらに好ましくは1.3m以上3m以下が好ましい。
このようにして得たシートは両端をトリミングし、巻き取ることが好ましい。トリミングされた部分は、粉砕処理された後、或いは必要に応じて造粒処理や解重合・再重合等の処理を行った後、同じ品種のフィルム用原料として又は異なる品種のフィルム用原料として再利用してもよい。
(延伸)
延伸はTg以上Tg+50℃以下で実施するのが好ましく、より好ましくはTg+1℃以上Tg+30℃以下、さらに好ましくはTg+2℃以上Tg+20℃以下である。好ましい延伸倍率は10%以上300%以下、より好ましくは20%以上250%以下、さらに好ましくは30%以上200%以下である。これらの延伸は1段で実施しても、多段で実施しても良い。ここで云う延伸倍率は、以下の式を用いて求めたものである。

延伸倍率(%)=100×{(延伸後の長さ)−(延伸前の長さ)}/延伸前の長さ

このような延伸は縦延伸、横延伸、およびこれらの組み合わせによって実施される。縦延伸は、(a)ロール延伸(出口側の周速を速くした2対以上のニップロールを用いて、長手方向に延伸)、(b)固定端延伸(フィルムの両端を把持し、これを長手方向に次第に早く搬送し長手方向に延伸)、等を用いることができる。さらに横延伸は、テンター延伸(フィルムの両端をチャックで把持しこれを横方向(長手方向と直角方向)に広げて延伸)、等を使用することができる。これらの縦延伸、横延伸は、それだけでおこなっても良く(1軸延伸)、組み合わせて行っても良い(2軸延伸)。2軸延伸の場合、縦、横逐次で実施しても良く(逐次延伸)、同時に実施しても良い(同時延伸)。
縦延伸、横延伸の延伸速度は10%/分以上10000%/分以下が好ましく、より好ましくは20%/分以上1000%/分以下、さらに好ましくは30%/分以上800%/分以下である。多段延伸の場合、各段の延伸速度の平均値を指す。
このよな延伸に引き続き、縦あるいは横方向に0%から10%緩和することも好ましい。さらに、延伸に引き続き、150℃以上250℃以下で1秒以上3分以下熱固定することも好ましい。
このような延伸により発現するRthは上述の範囲が好ましく、さらにReは0〜500nm、より好ましくは3〜350nm、さらに好ましくは5〜300nmであり、ReとRthとの比は、延伸倍率の縦横比および面積倍率を変更することにより、適宜調整することができる。
このようにしてRe、Rthを適宜調整することにより、液晶表示パネルのコントラストを向上させることが可能となる。
膜厚むらは未延伸、延伸後とも、膜厚方向、幅方向いずれも0〜2%が好ましく、より好ましくは0〜1.5%、さらに好ましくは0〜1%である。
また製膜方向(長手方向)と、フィルムのReの遅相軸とのなす角度θが0±3°、+90±3°もしくは−90±3°であることが好ましく、0±2°、+90±2°もしくは−90±2°であることがより好ましく、0±1°、+90±1°もしくは−90±1°であることがさらに好ましい。
得られたセルロースエステルフィルムの好ましい巻長は300〜30000mであり、より好ましくは500〜10000m、さらに好ましくは1000〜7000mである。
本発明の未延伸および延伸後のセルロースアシレートフィルムには、適宜、表面処理を行うことにより、セルロースアシレートフィルムと各機能層(例えば、下塗り層やバック層)との接着を改善することが可能となる。表面処理には、グロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、ケン化処理(酸ケン化処理、アルカリケン化処理)が含まれ、特にグロー放電処理およびアルカリケン化処理が好ましい。
グロー放電処理は、10-3〜20Torrの低圧ガス下で実施する低温プラズマ処理を含む。また、大気圧下でのプラズマ処理も、好ましいグロー放電処理である。プラズマ励起性気体としては、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素、フロン(例、テトラフルオロメタン)およびそれらの混合物が用いられる。大気圧でのプラズマ処理は、好ましくは10〜1000keV、さらに好ましくは30〜500keVで実施する。照射エネルギーは、20〜500kGyが好ましく、20〜300kGyがさらに好ましい。グロー放電処理については、公開技報2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)30頁〜32頁に記載がある。
アルカリケン化処理は、フィルムにケン化液を塗布するか、あるいはフィルムを鹸化液に浸漬することにより実施する。
塗布方法は、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、バーコーティング法またはE型塗布法を採用できる。塗布液の溶媒は、フィルムに対する濡れ性が良く、フィルム表面に凹凸を形成させずに面状を良好なまま保つことが望ましい。具体的には、溶媒は、アルコールが好ましく、イソプロピルアルコールが特に好ましい。また、水(好ましくは、界面活性剤の水溶液)を溶媒として使用することもできる。アルカリは、アルカリ金属の水酸化物が好ましく、KOHおよびNaOHがさらに好ましい。ケン化塗布液のpHは、10以上が好ましく、12以上がさらに好ましい。アルカリケン化時の反応条件は、室温で1秒以上5分以下が好ましく、5秒以上5分以下がさらに好ましく、20秒以上3分以下が最も好ましい。アルカリケン化反応後、ケン化液塗布面を水洗するか、あるいは酸で洗浄したあと水洗することが好ましい。また、塗布式鹸化処理と後述の配向膜解塗設を、連続して行うことができ、工程数を減少できる。これらの鹸化方法は、具体的には、例えば、特開2002−82226号公報、WO02/46809号公報に内容の記載が挙げられる。
セルロースアシレートフィルムの表面処理としては極めて有効である。
厚み方向のレターデーション値が負の値であるセルロースエステルフィルムは、そのまま位相差板や、位相差板の機能を持たせた偏光板の保護フィルムとして用いることができ、また、厚み方向のレターデーション値が正の値であるセルロースエステルフィルムと積層することで、厚み方向のレターデーション値が自在に制御された位相差板として用いることができる。
厚み方向のレターデーション値が負の値であるセルロースエステルフィルム、あるいはそれと厚み方向のレターデーション値が正の値であるセルロースエステルフィルムとを積層したフィルムは、そのまま位相差板として用いることもでき、偏光板保護フィルムとして用いることもできる。また、上記セルロースエステルフィルムおよび位相差板を支持体とし、その上に光学異方性層(例えば、液晶性分子から形成される層)を設け、位相差板を製造することもできる。
偏光板の保護フィルムとして用いる場合、セルロースエステルフィルムはアルカリケン化処理しておくことが望ましい。ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬して延伸した偏光膜を用いる場合、接着剤を用いて偏光膜の両面にセルロースエステルフィルムのアルカリケン化処理面を貼り合わせることができる。接着剤としては、ポリビニルアルコールまたはポリビニルアセタール(例、ポリビニルブチラール)の水溶液や、ビニル系ポリマー(例、ポリブチルアクリレート)のラテックスを用いることができる。特に好ましい接着剤は、完全ケン化ポリビニルアルコールの水溶液である。
アルカリケン化処理以外の表面処理(特開平6−94915号、同6−118232号の各公報に記載)を実施してもよい。
偏光板の製造後で使用前は、偏光板の一方の面に外部保護フィルム、反対面にセパレートフィルムが貼り合わされている。外部保護フィルムおよびセパレートフィルムは、偏光板の出荷や製品検査において偏光板を保護する目的で用いられる。外部保護フィルムは、偏光板を液晶セルへ貼合する面の反対面側に用いられる。セパレートフィルムは、偏光板を液晶セルへ貼合するための接着層をカバーする目的で用いられる。一般に液晶表示装置は、二枚の偏光板の間に液晶セルが設けられ、一般に液晶セルは、二枚の基板の間に液晶注入される。従って、通常の液晶表示装置では、四枚の偏光板保護フィルムを有する。本発明に従うセルロースエステルフィルムは、四枚の偏光板保護フィルムのいずれに用いても良い。ただし、液晶表示装置における偏光子と液晶層との間に配置されるプラスチックフィルムとして、特に有利に用いることができる。
本発明に従うセルロースエステルフィルムおよびそれを用いた位相差板および偏光板は、様々な表示モードの液晶表示装置に用いることができ、以下にこれらのフィルムが用いられる各液晶モードについて説明する。これらの液晶表示装置は、透過型、反射型および半透過型のいずれでもよい。
(TNモード液晶表示装置)
カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。TN(Twisted Nematic)モードの黒表示における液晶セル中の配向状態は、セル中央部で棒状液晶性分子が立ち上がり、セルの基板近傍では棒状液晶性分子が寝た配向状態にある。
(OCBモード液晶表示装置)
棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させるベンド配向モードの液晶セルである。ベンド配向モードの液晶セルを用いた液晶表示装置は、米国特許4583825号、同5410422号の各明細書に開示されている。棒状液晶性分子が液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。そのため、この液晶モードは、OCB(Optically Compensatory Bend)液晶モードとも呼ばれる。
OCBモードの液晶セルもTNモード同様、黒表示においては、液晶セル中の配向状態は、セル中央部で棒状液晶性分子が立ち上がり、セルの基板近傍では棒状液晶性分子が寝た配向状態にある。
(VAモード液晶表示装置)
電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向しているのが特徴であり、VA(Vertically Aligned)モードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech. Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載)および(4)SURVAIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。
(IPSモード液晶表示装置)
電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に面内に水平に配向しているのが特徴であり、これが電圧印加の有無で液晶の配向方向を変えることでスイッチングするのが特徴である。具体的には特開2004−365941、特開2004−12731、特開2004−215620、特開2002−221726、特開2002−55341、特開2003−195333に記載のものなどを使用できる。
(その他液晶表示装置)
ECBモードおよびSTNモードに対しても、上記と同様の考え方で光学的に補償することができる。
実施例中で用いた特性の測定法、評価法を以下に示す。
[レターデーション]
幅方向3点(中央、端部(両端から全幅の5%の位置))を長手方向に10mごとに3回サンプリングし、1cm□の大きさのサンプルを9枚取り出し、下記の方法にしたがって求めた各点の平均値を求めた。
セルロースエステルフィルムを25℃、60%RHにて24時間調湿後、自動複屈折計(KOBRA−21ADH:王子計測機器(株)製)を用いて、25℃、60%RHにおいて、サンプルフィルム表面に対し垂直方向およびフィルム面法線から±40°傾斜させた方向から波長590nmにおけるレターデーション値を測定し、下記式(1)および(2)でそれぞれ表される面内レターデーション値(Re)と膜厚方向のレターデーション値(Rth)とを算出した。
(1) Re=(nx−ny)×d
(2)Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
式中、nxはフィルム面内の遅相軸(x)方向の屈折率であり、nyはフィルム面内の進相軸(y)方向の屈折率であり、nzはフィルムの厚み方向(フィルム面と直交する方向)の屈折率であり、dはフィルムの厚み(nm)である。遅相軸はフィルム面内で屈折率が最大となる方向であり、進相軸はフィルム面内で屈折率が最小となる方向である。
[ヘイズ]
幅方向3点(中央、端部(両端から全幅の5%の位置))を長手方向に10mごとに3回サンプリングし、4cm×8cmの大きさのサンプルを9枚取り出し、下記の方法にしたがって求めた各点の平均値を求めた。
セルロースエステルフィルムを25℃、60%RHにて24時間調湿後、ヘイズメーター(HGM−2DP:スガ試験機(株)製)を用いてJIS K−6714に準じて測定した。
[セルロースアシレートの置換度]
セルロースアシレートのアシル置換度は、Carbohydr.Res.273(1995)83−91(手塚他)に記載の方法で13C−NMRにより求めた。
[カルボン酸および/または有機塩の定量]
セルロースアシレートフィルム1gを10mLのメタノールで抽出し、高速液体クロマトグラフィー法(検出波長;254nm)により測定した。
以下に本発明のセルロースアシレートフィルムについての具体的な実施態様を記述するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
《実施例1》
(セルロースアシレートの調製)
第1表に記載のアシル基の種類、置換度の異なるセルロースアシレートを調製した。これは、触媒としての硫酸(セルロース100重量部に対し7.8重量部)とカルボン酸無水物との混合物を−20℃に冷却してからパルプ由来のセルロースに添加し、40℃でアシル化を行った。この時、カルボン酸無水物の種類及び量を調整することで、アシル基の種類及びその置換比を調整した。またアシル化後に40℃で熟成を行って全置換度を調整した。このようにして得たセルロースアシレートの重合度は下記の方法で求め、第1表に記載した。
[重合度測定法]
絶乾したセルロースアシレート約0.2gを精秤し、ジクロロメタン/エタノール比が9/1(質量比)の混合溶剤100mLに溶解した。これをオストワルド粘度計にて25℃で落下秒数を測定し、重合度を以下の式により求めた。
ηrel =T/T0 T :測定試料の落下秒数
[η]=1n(ηrel )/C T0 :溶剤単独の落下秒数
DP=[η]/Km C :濃度(g/L)
Km:6×10-4
[分子量分布]
ゲル濾過カラムに、屈折率、光散乱を検出する検出器を接続した高速液体クロマトグラフィーシステム(GPC−LALLS、カラム:GMH×1(東ソー(株)製))を用いて測定したところ、Mw/Mn比が2.5〜3.5であった。
(セルロースアシレートのペレット化)
上記セルロースアシレートを120℃で3時間乾燥した含水率を0.1wt%にしたものに、下記添加剤をセルロースアシレートに対し3質量%加え、さらに全水準に二酸化珪素部粒子(アエロジルR972V)0.05質量%を添加した。
添加剤:可塑剤Aすなわちジオクチルアジペート
これらを混合したものを2軸混練押出し機のホッパーに入れて混練した。なお、この2軸混練押出し機には真空ベントを設け、真空排気(0.3気圧に設定)を実施した。
このようにして融解した後、水浴中に直径3mmのストランド状に押出し1分間浸漬した後(ストランド固化)、10℃の水中を30秒通過させ温度を下げた後、長さ5mmに裁断した。調製したペレットを100℃で10分乾燥した後、袋詰した。
このようにして得たペレットのTgを以下の方法で測定した。
(Tg測定)DSCの測定パンにサンプルを20mg入れる。これを窒素気流中で10℃/分で30℃から230℃まで昇温した後(1st−run)、30℃まで−10℃/分で冷却する。この後、再度30℃から230℃まで昇温する(2nd−run)。2ndで求めたTg(ベースラインが低温側から偏奇し始める温度)をペレットのTgとした。
(溶融製膜)
上記方法で調製したセルロースアシレートペレットを、110℃の真空乾燥機で3時間乾燥した。これをTg−10℃になるように調整したホッパーに投入し、第1表に記載の溶融温度で5分間かけ溶融した後、絶対濾過精度0.04mmのフィルター(FH400、ポール社製)で濾過し、さらに絶対濾過精度0.01μmのフィルター(FH100、ポール社製)にて濾過してセルロースアシレートメルトを得た。これをT/D比(リップ間隔/製膜フィルムの厚み)を1.0、キャスティングドラム(CD)とダイの間隔(CD−ダイ間の間隔を製膜幅で割り百分率でしめしたもの)を10%として製膜した。このとき、キャスティングドラムの速度を押出し速度のT/D倍にすることで所望の厚み(D)のフィルムを得た。この時、ダイの両端の温度を中央部より10℃だけ高くした。
キャスティングドラムはTg−10℃とし、この上で固化しフィルムとした。この時、各水準静電印加法(10kVのワイヤーをメルトのキャスティングドラムへの着地点から10cmのところに設置)を用いた。固化したメルトを剥ぎ取り、巻き取り直前に両端(全幅の各5%)をトリミングした後、両端に幅10mm、高さ50μmの厚みだし加工(ナーリング)をつけた後、30m/分で3000m巻き取った。このようにして得た未延伸フィルムの幅は各水準とも1.5mであり、厚みは表1に記載した。
(比較例1)
比較例1は、特開2000−352620Aの実施例の試料No.11に準じて作製した試料である。
(溶液製膜(比較例2〜6))
a)セルロースアシレート
調製したセルロースアシレートを120℃に加熱して乾燥し、含水率を0.5質量%以下とした後、30質量部を溶媒と混合させた。
b)溶媒
・ジクロロメタン/メタノール/ブタノール(90/2/8質量部)
なお、これらの溶媒の含水率は、いずれも0.2質量%以下であった。
c)添加剤
可塑剤A(ジオクチルアジペート)0.9質量部を添加した。また、二酸化ケイ素(粒径20nm、モース硬度 約7)0.25質量%を添加した。
d)膨潤、溶解
攪拌羽根を有し外周を冷却水が循環する400リットルのステンレス製溶解タンクに、上記溶媒、添加剤を投入して撹拌、分散させながら、上記セルロースアシレートを徐々に添加した。投入完了後、室温にて2時間撹拌し、3時間膨潤させた後に再度撹拌を実施し、セルロースアシレート溶液を得た。
なお、攪拌には、15m/sec(剪断応力5×104kgf/m/sec2(4.9×105N/m/sec2)に相当)の周速で攪拌するディゾルバータイプの偏芯攪拌軸および中心軸にアンカー翼を有して周速1m/sec(剪断応力1×104kgf/m/sec2(0.98×105N/m/sec2)に相当)で攪拌する攪拌軸を用いた。膨潤は、高速攪拌軸を停止し、アンカー翼を有する攪拌軸の周速を0.5m/secとして実施した。
e)ろ過
上記で得られたセルロースアシレート溶液を、絶対濾過精度0.01mmの濾紙(#63、東洋濾紙(株)製)で濾過し、さらに絶対濾過精度2.5μmの濾紙(FH025、ポール社製)にて濾過してセルロースアシレート溶液を得た。
f)流延
上記セルロースアシレート溶液を30℃に加温し、流延ギーサー(特開平11−314233号公報に記載)を通して15℃に設定したバンド長60mの鏡面ステンレス支持体上に流延した。流延スピードは15m/分、塗布幅は200cmとした。流延部全体の空間温度は、15℃に設定した。そして、流延部から50cm手前で、流延して回転してきたセルロースアシレートフィルムをバンドから剥ぎ取った。これを比較例2とした。
さらに、上記において温度と添加剤を表1に記載のように変更して比較例3〜6の試料を作製した。
(比較例7)
フジタック(TD−80UF)をそのまま利用し、一連の評価を実施した。
(セルロースアシレートフィルムの評価)
各評価項目について下記の方法で評価を行った。
[面状]
フィルム面状は目視により下記尺度で評価した。
良好:フィルムに横段ムラやブツは認められないもの。
不良:フィルム表面の凹凸やムラが多数認められ、着色が著しく、光学フィルムとしては適用できないもの。
剥離不能:ベースをバンドから剥ぎ取る際に、剥げ残りが生じて、製膜を続行することができないもの。
製膜不能:ポリマーが十分な流動性を持たず、製膜することが不可能なもの。
[レターデーション]
前述した方法でセルロースアシレートフィルムの膜厚方向のレターデーション値を測定した。
[カルボン酸および/または有機塩の定量]
前述した方法でセルロースアシレートフィルム中のカルボン酸および/または有機塩の定量を行った。なお、比較例2に関しては、剥ぎ取れた部分を別途乾燥させたものから測定を実施した。
[ヘイズ]
前述した方法でセルロースアシレートフィルムのヘイズを測定した。
[偏光板作製]
セルロースアシレートフィルムを60℃に調温した1.5規定のNaOH水溶液(けん化液)に2分間浸漬した後、0.1Nの硫酸水溶液に30秒間浸漬し、さらに水洗浴を通してけん化した。
特開平2001−141926の実施例1に従い、2対のニップロール間に周速差を与え、長手方向に延伸して作製した厚み20μmの偏光層に対し、けん化した本発明のセルロースアシレートフィルムをPVA((株)クラレ製PVA−117H)3%水溶液を接着剤として貼り合わせて偏光板を作製した。
[液晶表示装置作成]
特開2004−12731の図2に記載のIPS型液晶表示装置の偏光板の代わりに本発明の偏光板を組み込み、下記の方法に従い光漏れ量を測定した。
[光漏れ評価方法]
上記液晶表示装置を、全面黒表示とし真っ暗な部屋の中に置き、この時の画面の明るさを光度計で測定した。この光量の値を、全面白表示にした時の値で割り、百分率で表した量を「光漏れ量」として表1に記載した。
Figure 2006028387
第1表において、実施例1〜6では、偏光板のクロスニコル下で観測した輝点異物が5個/mm2以下の良好な透明フィルムが得られ、このフィルムを用いると光漏れの少ない良好なIPS型液晶表示装置が得られた。一方、比較例1〜7として挙げた本発明の範囲外の試料は、光漏れが顕著であった。
これに対し、比較例1や比較例5のようにアシル置換度が低すぎるセルロースアシレートを使用した場合ではRthが上昇して正の値となってしまい、比較例7と同様、液晶表示装置の光漏れが顕著になってしまった。また、比較例2のように溶液流延製膜をした場合には、膜厚を厚くしようとしたところ、乾燥不十分で剥げ残りが生じてしまった。また、比較例3のように溶融温度が低すぎた場合や、比較例6のようにプロピオニル置換度の低すぎるセルロースアシレートを使用した場合には、ポリマーが溶融せず、製膜することができなかった。さらに、比較例4のように溶融温度が高すぎた場合や、比較例6のセルロースアシレートに流動性を持たせるために更なる加熱を行った場合では、ポリマーの着色が著しく、また、面状も悪いものとなってしまった。

Claims (5)

  1. 膜厚方向のレターデーション値が−800〜−100nmであり、かつセルロースの水酸基へのアシル置換度が下記式(I)〜(III)の全てを満足すること
    を特徴とするセルロースアシレートフィルム。
    (I) 2.82≦SA+SP≦3
    (II) 0≦SA≦2.0
    (III)1.0≦SP≦2.9
    (式中、SAおよびSPはセルロースの水酸基に置換されているアシル基の置換度を表し、SAはアセチル基の置換度、またSPはプロピオニル基の置換度である。)
  2. フィルム膜厚が100μm以上であることを特徴とする請求項1に記載のセルロースアシレートフィルム。
  3. カルボン酸および/または有機塩をセルロースアシレートに対し100〜3000ppm含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のセルロースアシレートフィルム。
  4. セルロースの水酸基へのアシル置換度が下記式(I)〜(III)の全てを満足す
    るセルロースエステルを、加熱溶融させ、溶融物をろ過した後、支持体上に流延してフィルムとした後、該支持体から剥離することを特徴とするセルロースエステルフィルムの製造方法。
    (I) 2.82≦SA+SP≦3
    (II) 0≦SA≦2.0
    (III)1.0≦SP≦2.9
    (式中、SAおよびSPはセルロースの水酸基に置換されているアシル基の置換度を表し、SAはアセチル基の置換度、またSPはプロピオニル基の置換度である。)
  5. セルロースエステルを加熱溶融させる温度が150〜300℃であることを特徴とする請求項4に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
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