JP4589228B2 - 周術期血糖値上昇抑制剤 - Google Patents

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Description

本発明は、分岐鎖アミノ酸類を含有することを特徴とする、周術期の麻酔や手術などのストレスによる血糖値上昇を抑制する薬剤に関する。
一般に生体は、生体内のホメオスタシスに影響を与える要因、例えば麻酔や手術による侵襲ストレス等を受けると、生体細胞の機能を維持するために自律神経系・内分泌系を介して種々のインスリン拮抗ホルモン(カテコールアミン、グルカゴン、コルチコイド等)を分泌し、肝臓における糖新生とグリコーゲンの分解を促進して血糖値を上昇させる方向に作用することが知られている(例えば、非特許文献1参照。)。
特に、糖代謝異常疾患の患者、例えば糖尿病患者等は、周術期は絶食に近い状態に置かれたり、麻酔や手術等による侵襲ストレス等により強いインスリン作用不足が生じ、著しい高血糖、浸透圧利尿による脱水を起こす可能性がある。このような状態が続くと、患者は強度の糖利用不全から代謝異常、昏睡、多臓器不全等の重篤な合併症を生じることがある。このような患者の場合、周術期に糖を全く患者に与えないと、体蛋白や脂肪の分解亢進が起こり、血中遊離脂肪酸やケトン体が増加してケトアシドーシスを引き起こすことがある。このことは、糖代謝異常の患者のみならず、手術時間が長時間に渡るような侵襲度の大きい手術を受ける患者やICU等で集中治療を受けている重症患者にも同様に起こりうる。
従って、周術期の血糖コントロールは全身麻酔管理上の重要な課題となっている。周術期の血糖値を適正な範囲内に管理することにより、術後の治癒に要する期間が短縮され、合併症の発症を防止することができるのみならず、術後の患者の生存率の上昇にも繋がることが知られている。
現在、周術期の血糖値の管理には、通常グルコースによる糖の補給と、高血糖にはインスリン投与法が用いられている。インスリン投与法とは、術中、必要ならば術後の患者の血糖値及び血中インスリン濃度を適正な範囲内に保つべく、これらの値をモニターしながらインスリンを輸液ポンプ等を用いて静脈に持続投与する方法である。
しかしながら、インスリンの投与量を持続的に患者にとって過不足なく制御するためには高度な技術が要求され、誤ってインスリンを過剰投与してしまうと、患者は低血糖に陥り、昏睡状態や中枢神経系の重篤な障害を引き起こす危険性がある。また通常手術時においては、患者の体蛋白及び脂肪を維持し、ケトアシドーシスを予防するために、糖質等の輸液が患者に補給されるが、この補給される糖質によってもインスリン投与量が左右されるため、より高度な管理を要することとなる。更には、高齢者や肥満の人に多く見られるインスリン非依存性糖尿病等のインスリンに対する感受性が低下した患者では、上記のインスリン投与による血糖値低減効果が十分望めない場合がある。
従って、インスリン投与による血糖値の制御方法は、必ずしも患者に安全な方法とは言えず、またその制御・管理も困難である。
よって本発明の血糖値上昇抑制剤のごとく、その構成成分を分岐鎖アミノ酸類としている点において、患者に安全な血糖値上昇抑制剤はこれまでに全く知られていない。しかも本発明は、インスリン投与方法のようにインスリン投与量を必ずしも厳密に管理する必要がなく、周術期の糖質補給も容易に行うことができるという点において優れた発明であると言える。
真弓享久等、医学のあゆみ、168巻、418−423頁、1994年
周術期にみられる血糖値上昇を抑制する薬剤、より詳しくは、麻酔下の患者に投与することにより、周術期にみられる血糖値の異常上昇を抑制する、生体に安全な血糖値上昇抑制剤を提供することを目的とする。
発明者らは、生体のホメオスタシスに影響を与える化合物で、生体に安全な化合物としてアミノ酸に着目した。発明者らは、上記課題を解決するために生体のホメオスタシスに影響を与える麻酔下におけるアミノ酸の生理作用を非麻酔下と比較検討することによって本発明を見出した。具体的には、本発明者らは、麻酔下において施術されるラットに、必須・準必須及び非必須アミノ酸を含有するアミノ酸輸液を投与したところ、非麻酔下に比し麻酔下のラットの血糖値が低下することを見出した。更に本発明者らは鋭意検討を重ね、これらのアミノ酸輸液中に含有されるアミノ酸のうち、分岐鎖アミノ酸が上記の生体内血糖値の上昇の抑制効果を有し周術期、特に麻酔下においてその抑制効果が増強されること、即ちその作用を発現するためのアミノ酸の効果用量も非麻酔下に比し少量となることを見出した。また、麻酔薬投与下にグルコースとこれらアミノ酸を同時に投与した場合、非麻酔下に比しインスリンの分泌促進をも増強することが分かった。本発明者らは、これらの知見に基づいて更に検討を重ね、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1) 分岐鎖アミノ酸、生体内で分岐鎖アミノ酸に変わりうる化合物又は分岐鎖アミノ酸からアミノ基が転移された化合物を含有することを特徴とする、周術期血糖値上昇抑制剤、
(2) 分岐鎖アミノ酸がロイシン及び/又はイソロイシンであることを特徴とする前記(1)に記載の血糖値上昇抑制剤、
(3) 生体内で分岐鎖アミノ酸に変わりうる化合物が、分岐鎖アミノ酸の塩、エステル若しくはアミド又は分岐鎖アミノ酸を含有するオリゴペプチドであることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の血糖値上昇抑制剤、
(4) 分岐鎖アミノ酸からアミノ基が転移された化合物が、α−ケトイソカプロン酸又はα−ケト−β−メチル吉草酸であることを特徴とする前記(1)に記載の血糖値上昇抑制剤、
(5) ロイシン0.25〜2.5g/dL及び/又はイソロイシン0.25〜3.5g/dLを含有する前記(1)〜(4)のいずれかに記載の血糖値上昇抑制剤、
(6) グルコース1〜10g/dL並びにロイシン0.25〜2.5g/dL及び/又はイソロイシン0.25〜3.5g/dLを含有する前記(1)〜(4)のいずれかに記載の血糖値上昇抑制剤、
(7) 血糖値上昇が麻酔薬によるものである上記(1)〜(6)のいずれかに記載の血糖値上昇抑制剤、
(8) 麻酔下での血糖値上昇の治療及び/又は予防のために使用される上記(1)〜(6)のいずれかに記載の血糖値上昇抑制剤、
(9) 麻酔薬と併用することを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれかに記載の血糖値上昇抑制剤、
(10) 上記(1)〜(6)のいずれかに記載の血糖値上昇抑制剤を、周術期の患者に投与することを特徴とする血糖値上昇の抑制方法、
(11) 麻酔薬と、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の血糖値上昇抑制剤とを併用することを特徴とする麻酔方法、
(12) 周術期の患者の血糖値上昇を抑制するための医薬品を製造するための分岐鎖アミノ酸、生体内で分岐鎖アミノ酸に変わりうる化合物又は分岐鎖アミノ酸からアミノ基が転移された化合物の使用、及び
(13) 麻酔薬による血糖値上昇を抑制するための医薬品を製造するための分岐鎖アミノ酸、生体内で分岐鎖アミノ酸に変わりうる化合物又は分岐鎖アミノ酸からアミノ基が転移された化合物の使用、
に関する。
なお、本発明において、周術期とは、患者が術前、手術・麻酔に起因する手術侵襲下にある術中、及び術後にあたる期間をいうものとする。
第1図は、非麻酔下又は麻酔下のラットにおけるアミノ酸の並行投与による血糖値に及ぼす影響を検討した結果を示す図である。
第2図は、血糖値上昇抑制効果を有するアミノ酸の種類の特定について検討した結果を示す図である。
第3図は、BCAA(Leu+Ile+Valの3種混合)による血糖値上昇抑制効果の確認試験の結果を示す図である。
第4図は、血糖値上昇抑制効果を有するBCAAの種類の特定について検討した結果を示す図である。
第5図は、糖液を並行投与した場合における、BCAA(Leu+Ile+Valの3種混合)による血糖値上昇抑制効果の検討結果を示す図である。
第6図は、麻酔下でのグルコースの持続注入に対する分岐アミノ酸の効果を示す図である。
第7図は、非麻酔及び麻酔時の血糖値に対するロイシンの効果を示す図である。
第8図は、糖負荷時のAUCに対するイソロイシンの効果を示す図である。
上記分岐鎖アミノ酸(以下、BCAAと略称する)は、一般に日本薬局方の規格を満たすものであれば特に限定されず、L−アミノ酸、D−アミノ酸、α−アミノ酸、β−アミノ酸、γ−アミノ酸、天然アミノ酸、合成アミノ酸等のあらゆるアミノ酸を含むが、好ましくは天然のL−アミノ酸又はαアミノ酸である。また上記アミノ酸は、作物や動物由来のたんぱく質をプロテアーゼ等を用いて加水分解して得られるものであっても、微生物発酵法により生産されるものであっても、また有機酸にアミノ基を導入することにより得られる合成アミノ酸等であってもよい。
BCAAとしては、好ましくはロイシン、イソロイシン又はバリンである。
これらのアミノ酸は単独で使用されても混合して使用されてもよい。具体的には、(a)ロイシン単独、(b)イソロイシン単独、(c)ロイシンとイソロイシンとの混合物、(d)ロイシンとバリンとの混合物、(e)イソロイシンとバリンとの混合物又は(f)ロイシンとイソロイシンとバリンとの混合物が挙げられる。
また生体内で上記BCAAに変わりうる化合物は、通常のアミノ酸製剤として用いられる薬理上許容される酸やアルカリとの塩類、具体的には、例えばナトリウム塩、カリウム塩、塩酸塩、酢酸塩等のBCAAの酸付加塩又は塩基付加塩、そのエステル(例えば、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル等)、若しくはアミド(例えば、アミド、モノメチルアミド、モノエチルアミド、ジメチルアミド、ジエチルアミド等)であってもよい。
また生体内でBCAAに変わりうる化合物は、BCAAの前駆体化合物であるBCAA類縁体、例えばBCAAを構成要素として含有するオリゴペプチド等であってもよい。オリゴペプチドとしては、例えばL−イソロイシル−L−ロイシン、L−ロイシル−L−アラニン等のジペプチド等が挙げられる。これらの類縁体は単独であっても、類縁体の混合物であってもよい。
BCAAからアミノ基が転移された化合物とは、BCAAのアミノ基が、アミノトランスフェラーゼにより、α−ケトグルタル酸(2−オキソグルタル酸)等のアミノ基受容体に転移することにより得られる化合物であってもよい。例えばロイシン、イソロイシン又はバリンそれぞれからアミノ基が転移された化合物としては、例えばそれぞれα−ケトイソカプロン酸、α−ケト−β−メチル吉草酸又はα−ケトイソ吉草酸等が挙げられる。
BCAA、生体内でBCAAに変わりうる化合物及びBCAAからアミノ基が転移された化合物は、結晶性であってもよく、非結晶性であってもよい。
本発明の血糖値上昇抑制剤に含有されるBCAA又は生体内でBCAAに変わりうる化合物の配合量は、該抑制剤が長期間保存されても結晶の析出等がなく安定に保持される範囲内であれば特に限定されないが、以下の範囲内であることが好ましい。
例えば該抑制剤が液剤であって、含有されるBCAAが単独、例えば(a)ロイシン単独又は(b)イソロイシン単独である場合には、各BCAAの濃度はそれぞれ約0.5〜4.0g/dLであることが好ましく、約0.7〜3.0g/dLであることがより好ましい。また、該抑制剤に含まれるBCAAが混合物である場合、例えば(c)ロイシンとイソロイシンとの混合物、(d)ロイシンとバリンとの混合物、(e)イソロイシンとバリンとの混合物又は(f)ロイシンとイソロイシンとバリンとの混合物である場合のそれぞれの配合重量比は、(c)ではロイシン:イソロイシン=約1:約0.25〜4、(d)又は(e)ではロイシン又はイソロイシン:バリン=約1:約0.25〜4、(f)ではロイシン:イソロイシン:バリン=約1:約0.25〜4:約0.25〜1であって、各BCAAの濃度が上記の範囲内であることが好ましい。
本発明の血糖値上昇抑制剤は、周術期、点滴等により直接静脈内に持続的に注入することにより生体(患者)に投与されるのが望ましいため、その形態は点滴用注射剤等の液剤であることが好ましいが、投与の直前に注射用蒸留水等に用時溶解されて用いられる凍結乾燥品の顆粒製剤又は散状剤等であってもよい。また、それらの製剤は、術前に経口投与することも可能で、その効果は患者が麻酔下におかれる術中まで持続する。
その調整方法は、公知のアミノ酸輸液又はアミノ酸製剤等の製造技術に従ってよいが、通常、上記組成成分を注射用蒸留水に溶解混合し、所望により更に添加剤等を加えて得られる水溶液を、フィルター等により除菌又は加熱滅菌等の処理をした後、液剤の形態にすることにより行われる。
本発明の血糖値上昇抑制剤には、該抑制剤を安定化する等の目的のために、必要に応じて各種の添加剤が配合されていてもよい。添加剤としては、具体的には、例えば塩酸、酢酸、リンゴ酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のpH調整剤や、該抑制剤の浸透圧を補正するための、コンクライトNa等の浸透圧調整剤等が挙げられる。
本発明の血糖値上昇抑制剤は、通常アミノ酸輸液等に添加配合されていることが公知である他の成分、例えばリジン、アルギニン等の塩基性アミノ酸、トリプトファン、フェニルアラニン等の芳香族アミノ酸等のBCAA以外の遊離アミノ酸又はそれらの塩類等、脂質、ビタミン類、電解質、微量元素等を含んでいてもよいが、これらの含有量は本発明の目的を阻害しない範囲である。
本発明の血糖値上昇抑制剤は周術期生体(患者)に投与されると、周術期にみられる高血糖を回避することができるため、従来までインスリンとの併用が必要であった糖質補給が血糖値の異常上昇を抑制しながら行える。
周術期の生体(患者)は、通常麻酔状態にあるが、麻酔は全身麻酔、局所麻酔のいずれであっても本願発明の血糖値上昇抑制剤を有利に用いることができる。患者を麻酔状態にするための麻酔方法は、通常医療の現場において用いられている方法に従う。例えば吸入麻酔、静脈投与麻酔、脊椎麻酔、硬膜外麻酔等である。また本発明の血糖値上昇抑制剤を使用する際に用いることができる麻酔剤は特に限定されず、例えば、吸入麻酔では亜酸化窒素、麻酔用エーテル、インフルラン、エンフルラン、セボフルラン、ハロセン、ハロタン等、静脈投与麻酔では、アモバルビタールナトリウム、チアミラールナトリウム、チオペンタールナトリウム、ペントバルビタールナトリウム、ペントバルビタールカルシウム、プロポフォール、ベンゾジアゼピン、ジアゼパム、ミダゾラム、ヒドロキシジン、ドロペリドール、フルマゼニール、ケタミン等を用いることができ、局所麻酔薬としては、塩酸ジブカイン、塩酸メピバカイン、塩酸プロカイン、塩酸ロピバカイン、アネスタミン、アミノ安息香酸エチル、リドカイン、オキセサゼイン、塩酸テトラカイン、塩酸オキシブプロカイン、塩酸ブピバカイン等を用いることができる(第14改正日本薬局方収載医薬品薬効別分類等参照)。
本発明の血糖値上昇抑制剤は、液剤である場合にはそのまま、凍結乾燥品である場合には滅菌蒸留水等に用時溶解した後、生体に持続的に静脈内投与されることが好ましい。その投与速度は、投与される生体(患者)の体重、また該抑制剤に含有されるBCAAの濃度等によりその都度最適な速度が採用され、さらに手術中においては血糖値をモニターしながら医師により適宜調節されるのが望ましいため一概には言えないが、一般的に総BCAA量で、約2〜2000mg/体重kg/時間であり、好ましくは約5〜500mg/体重kg/時間である。また、経口剤である場合には、麻酔剤投与前に5〜300mg/体重kg経口投与する。
以下に本発明において好ましい製造例及び試験例について述べるが、本発明は以下の製造例等に限定されるものではない。
なお、本明細書及び図面等において表示する各略号は以下を示す。また、アミノ酸に関し光学異性体がある場合は、特に明示しなければL体を示すものとする。
BCAA:分岐鎖アミノ酸
EAA:必須及び準必須アミノ酸
Leu:ロイシン
Ile:イソロイシン
Val:バリン
Lys:リジン
Thr:トレオニン
Trp:トリプトファン
Met:メチオニン
Phe:フェニルアラニン
Cys:システイン
Tyr:チロシン
Arg:アルギニン
His:ヒスチジン
Ala:アラニン
Pro:プロリン
Ser:セリン
Asp:アスパラギン酸
Glu:グルタミン酸
Glucose:グルコース
〔参考例〕参考例2〜6に記載するアミノ酸水溶液を作製した(第1表参照)。尚、参考例1は、株式会社大塚製薬工場製総合アミノ酸輸液「アミパレン」(10%総合アミノ酸液)である。参考例2は、参考例1に含有されるアミノ酸のうちの必須及び準必須アミノ酸(EAA)のみを含有するアミノ酸溶液、参考例3、4、5又は6は、参考例2よりそれぞれBCAA、塩基性アミノ酸、芳香族アミノ酸又はその他のアミノ酸を除いた残りのアミノ酸を含有するアミノ酸溶液である。
各アミノ酸には市販の凍結乾燥品を用いた(味の素株式会社製、協和発酵工業株式会社製等)。注射用蒸留水450mLに第1表記載の濃度になるように各アミノ酸を添加し、スターラーで攪拌溶解した。更に生理食塩水に対する浸透圧比が1に満たない場合には、コンクライトNaを添加し、浸透圧を血液と等張になるように補正した。氷酢酸を用いてpH6.5〜7.4の範囲になるよう調整し、水溶液を500mLにメスアップした後、蒸気加熱滅菌(106℃、32分)して参考例2〜6の各アミノ酸溶液とした。
Figure 0004589228
〔製造例〕第2表に記載する製造例1〜5のアミノ酸溶液を、参考例と同様に作製した。
Figure 0004589228
〔試験例1〕非麻酔下又は麻酔下のラットにおけるアミノ酸の投与が血糖値に及ぼす影響
試験前日、エーテル麻酔下にラットの頸部を切開し、右外頸静脈内に麻酔薬投与用及びアミノ酸水溶液投与用のカテーテルをそれぞれ留置した。ラットをハーネスに固定後、カテーテルの他端をラットの皮下を通して背部から露出させ、ハーネスを介してシーベルに接続し固定した。アミノ酸水溶液投与用カテーテルより生理食塩水(Saline)を1mL/hr/bodyの速度でラットに試験直前まで持続投与した。以降、ラットを試験直前まで自由飲水下にて絶食飼育した。
試験当日ラットを防音・防電室に移し、ポリグラム用ケーブルと麻酔薬投与用又はアミノ酸水溶液投与用のシリンジポンプ(麻酔薬:エイコム社製マイクロシリンジポンプ型式EP32、アミノ酸水溶液:JMSシリンジポンプ型式SP100s)とに、それぞれのカテーテルを分岐コネクターを介して接続した。約1時間、ラットの生体電位(EEG、EMG、体温、生体振動)が安定していることを予備的に確認した後、更に30分間麻酔開始直前までの生体電位を記録した。これまでの操作を前処理とし、以下の試験例においてもこれに従った。
麻酔投与群(n=16)には、麻酔薬投与用カテーテルよりプロポフォール(Diprivan1%、Zeneca S.p.A.Italy)15mg/kgをbolusにて静脈内投与し、その後は45mg/kg/hr(i.v.)で30分間、次いで22.5mg/kg/hr(i.v.)で2.5時間持続的にプロポフォールを静脈内投与した。
麻酔非投与群(n=16)には、イントラリポス(静注用脂肪乳剤、株式会社大塚製薬工場製)1.5mL/kg(i.v.)をbolusにて静脈内投与し、その後は麻酔投与群と同様にイントラリポスを持続的に合計3時間静脈内投与した。
両群のラットに、第1表に記載した参考例1の株式会社大塚製薬工場製「アミパレン」(n=8)又は生理食塩水(n=8)をアミノ酸水溶液投与用カテーテルより、プロポフォール又はイントラリポスを投与するのと並行して14mL/kg/hrの速度で持続的に静脈内投与した。
参考例1及び麻酔薬等の投与終了直後、両群のラットにペントバルビタールNa(50mg/kg)をアミノ酸水溶液投与用カテーテルより投与し、腹部大動脈より採血した。血糖値は、酵素法(Glucose−DH法)により測定した。尚、群間比較は、二元配置分散分析を行った後、非麻酔下と麻酔下それぞれにおける生理食塩水投与群とアミノ酸水溶液投与群との間で、差を検定することにより行った(t検定)。
試験例1の結果を第1図に示した。その結果、麻酔投与群において、アミパレン(参考例1)並行投与群の有意な血糖値の低下が見られ、麻酔下において、手術侵襲ストレスによる血糖値上昇の抑制にアミノ酸の投与が有効であることが示唆された。
〔試験例2〕血糖値上昇抑制効果を有するアミノ酸の種類の特定
試験例1で用いた参考例(アミパレン)に含有されるアミノ酸中、どのアミノ酸が血糖値上昇抑制効果を有するのかについて検討した。
試験例1と同様に前処理を施したラットにプロポフォール15mg/kgをbolusにて静脈内投与後、試験例1に従いプロポフォールを持続的に3時間静脈内投与した。該ラットに、プロポフォールの投与と並行して参考例2〜6の各アミノ酸水溶液(各投与群n=8)又は生理食塩水(対照群n=8)を14mL/kg/hrの速度で静脈内投与し、投与終了後、試験例1に従い腹部大動脈より採血し、血糖値及び血中インスリン値を測定した。
血中インスリン値は、ELISA法(Mevcodia社製)により測定した。
試験例2の結果を第2図に示した。その結果、参考例4〜6のアミノ酸水溶液を投与した群では、生理食塩水を投与した群(対照群)と比較して明らかに(A)血糖値の低下が見られ、その値はいずれも必須・準必須アミノ酸含有アミノ酸水溶液(参考例2)を投与した群と同様であった。これに対し、BCAAを含有しないアミノ酸水溶液(参考例3)を投与した群は、対照群と同様に高い血糖値を示した。このことから、血糖値上昇の抑制にはBCAAが有効であることが分かった。
また、参考例2を投与した群では、血糖値の低下とともに、(B)インスリン値の上昇がみられたが、同様に血糖値の低下を示した参考例4〜6を投与した群ではインスリン値の上昇は僅かであった。これとは反対に、血糖値の低下が見られなかった参考例3を投与した群のインスリン値は、血糖値の低下を示した参考例4〜6を投与した群と同様に低い値を示した。
〔試験例3〕BCAA(Leu+Ile+Valの3種混合)による血糖値上昇抑制効果の確認試験
試験例2で得られた結果を基に、血糖値上昇抑制効果がBCAAによるものであることの確認試験を行った。
試験例1の前処理を施したラットにプロポフォール15mg/kgをbolusにて静脈内投与後、プロポフォールを持続的に3時間静脈内投与した。但しプロポフォールの持続静脈投与は、45mg/kg/hr(i.v.)で1時間、ついで22.5mg/kg/hr(i.v.)で2時間とした。該ラットにプロポフォールの投与と並行して製造例1のアミノ酸水溶液(投与群n=6)又は生理食塩水(対照群n=4)を14mL/kg/hrの速度で静脈内投与し、投与終了後、試験例1に従い腹部大動脈より採血し、血糖値を測定した。
試験例3の結果を第3図に示した。Leu、Ile及びValの3種類を含有するアミノ酸水溶液(製造例1)を投与された群は、対照群に比べて明らかに血糖値の上昇が抑制されていた。このことから試験例2で得られた結果の通り、麻酔下において血糖値上昇の抑制にはBCAAの投与が有効であることが立証された。
〔試験例4〕血糖値上昇抑制効果を有するBCAAの種類の特定
さらにBCAAの内、どのアミノ酸が血糖値上昇抑制効果を有するのかについて検討した。
試験例1と同様にラットに前処理を施した。但し、カテーテルは右外側尾静脈内に留置した。これまでの試験に用いたプロポフォールの代わりに、ペントバルビタールNa(30mg/kg、i.v.,ソムノペンチル)をbolusにて投与後、同様にペントバルビタールNaを25mg/kg/hr(i.v.)の一定速度で3時間持続的に静脈内投与した。ペントバルビタールNaの投与と並行して製造例2〜4の各アミノ酸水溶液(各投与群n=5)又は生理食塩水(対照群n=5)を14mL/kg/hrの速度で静脈内投与し、投与終了後、試験例1に従い腹部大動脈より採血し、血糖値を測定した。
試験例4の結果を第4図に示した。Leu又はIle単独(製造例2又は3)、若しくはLeuとIleとの混合(製造例4)のアミノ酸水溶液を投与された各群は、いずれも生理食塩水を投与された群(対照群)に比べて血糖値が明らかに低く、その値は試験例3の3種のBCAAを投与された群とほぼ同程度であった。このことから、LeuやIle単独又はLeu及びIleとの混合投与でも、麻酔下において有効な血糖値上昇の抑制効果が得られることが明らかとなった。更にこの試験例4では、ペントバルビタールNaを麻酔剤として用いていることから、BCAAの血糖値上昇抑制効果が、どのような麻酔剤を用いた場合においても有効に得られることが明らかとなった。
〔試験例5〕BCAA(Leu+Ile+Valの3種混合)による血糖値上昇抑制効果の検討−糖液を並行投与した場合
グルコースを生体に静脈投与することによって血糖値上昇モデルをin vivoにて作製し、該モデルにおけるBCAA並行投与の効果を検討した。
試験例1と同様の前処理を施したラットに、試験例1に従いプロポフォールを3時間持続的に静脈内投与した。該ラットにプロポフォールの投与と並行して、50重量%グルコースと製造例1のBCAA3種混合水溶液とを1:9の割合で混合した溶液(5重量%グルコース+2.7重量%BCAA:投与群n=6)又は5重量%グルコース水溶液のみ(対照群n=5)を14mL/kg/hrの速度で静脈内投与した。投与開始前、投与開始後30分、90分、180分に、アミノ酸水溶液投与用カテーテルより採血(100μL)し、試験例1に従い血糖値を測定した。
試験例5の結果を第5図に示した。両群において、投与後30分には投与開始前に比べて明らかに血糖値が上昇し、その値に群間差はなかった。しかしながらその後、5%グルコース水溶液のみを投与した対照群では血糖値が高値(280mg/dL付近)で持続的に推移したのに対し、5%グルコースとともにBCAA3種混合水溶液を並行投与した投与群では、投与後90分には血糖値が低下(210mg/dL付近)し、以降も対照群に比べて明らかに低値で推移した。この結果より、BCAAの血糖値上昇抑制効果が、周術期のグルコースによる糖補給により、一旦上昇した血糖値を、投与時間の経過とともに血中濃度が高まったBCAAによって適正な血糖値の範囲内に調整することにより得られるものであることが明らかとなった。
〔試験例6〕グルコースによる血糖値上昇モデルにおける分岐鎖アミノ酸の効果
グルコースを生体に静脈内投与することによって、血糖値上昇モデルを作製し、当該モデルにおけるロイシン、イソロイシン及びバリンの並行投与時の効果を検討した。
試験例4と同様に前処理を施したラットに試験例4と同様のペントバルビタールによる持続静脈内投与により3時間麻酔を維持した。当該ラットにペントバルビタールの投与と並行して、50重量%グルコースと製剤例2、3又は5の水溶液を1:9の割合で混合した溶液(5重量%グルコース−1.8%各アミノ酸;n=5)又は5重量%グルコース水溶液(n=5)を、14mL/kg/hrの速度で静脈内投与した。投与開始前、投与開始30分、90分、180分にアミノ酸水溶液投与用カテーテルで採血(100μL)し、試験例1に従い血糖値及び血中インスリン値を測定した。
試験例6の血糖値の結果を第6図に示した。いずれの群の血糖値も試験開始30分後では、約300mg/dLであった。グルコース投与群の血糖値は測定期間中上昇を続けた。ロイシン並行投与群の血糖値は試験開始30分を最高値として以後低下し、試験開始90及び180分後では、グルコース投与群と比較して有意に低くなった。イソロイシン並行投与群も30分をピークに血糖値の持続した上昇は認められず、試験開始の180分後では、グルコース投与群に比較して有意差が認められた。
試験例6におけるロイシン並行投与(グルコース+ロイシン)群の血中インスリン値を第3表に示した。
Figure 0004589228
麻酔下におけるロイシン並行投与群の血中インスリン値は、麻酔維持中、持続的上昇がみられ、非麻酔下のロイシン並行投与群に比較して、試験開始の30分後で1.7倍、90分後で9.9倍、180分後には16.2倍まで上昇した。
本結果は、麻酔下に分枝鎖アミノ酸を投与することで、グルコースを投与した際にみられる血糖値の上昇を抑制する作用を有し、非麻酔下に比しインスリン分泌促進をも増強することを示している。
〔試験例7〕ロイシン経口投与による血糖値低下作用−非麻酔時と麻酔時の比較−
試験方法
非麻酔群:一夜絶食下のラットを体重によって群分け後、尾静脈より採血を行った(Pre値)。まもなく、コントロール群には蒸留水10mL/kgを、被験液群にはロイシン懸濁液を0.3g/10mL/kgの用量で経口投与した。蒸留水又は被験液投与より90分後に尾静脈より採血を行った(90分値)。
麻酔群:一夜絶食下のラットを体重によって群分け後、尾静脈より採血を行った(Pre値)。採血後、コントロール群には蒸留水10mL/kgを、被験液群にはロイシン懸濁液を0.3g/10mL/kgの用量で経口投与した。被験液投与の30分後に尾静脈内にサフロー留置針を留置した。次いでペントバルビタールナトリウム30mg/kgの急速静脈内投与により麻酔を導入した。以降はマイクロシリンジポンプに設置したガスタイトシリンジと留置針をエクステンションチューブで接続し、30mg/kg/hrの持続静脈内投与により麻酔を維持した。麻酔導入より60分後には留置針を留置された対側の尾静脈より採血を行った(90分値)。
なお、血液はヘマトクリット測定用管に採取し、遠心分離後血漿部分を回収し、試験例1に従い血糖値を測定した。
各ラット血漿の90分値からPre値を差し引き、血糖の変化値を計算した。
試験例7の結果を第7図に示した。非麻酔及び麻酔両群のコントロール群間において、投与後30分には投与開始前に比べて有意な血糖値の上昇は認められなかった。非麻酔及び麻酔両群の被験液群において、両群ともに、血糖値の低下が認められたが、麻酔群での血糖値の低下の程度は、非麻酔群の約2.7倍であった。麻酔下、すなわち周術期では、分岐鎖アミノ酸は非麻酔時に比較して血糖値を低下させることが明らかとなった。
〔試験例8〕糖負荷時におけるイソロイシンの経口投与による血糖値上昇抑制作用―非麻酔時と麻酔時の比較−
試験方法
非麻酔群:一夜絶食下のラットを体重によって群分け後尾静脈より採血を行った(Pre値)。コントロール群は大塚蒸留水(注射用水;株式会社大塚製薬工場製)、イソロイシン投与群はイソロイシン水溶液を0.5g/10mL/kgの用量で経口投与した。被験液投与後30分後に3gグルコース/kgとなるよう50%大塚糖液〔ブドウ糖注射液(ブドウ糖100g/200mL);株式会社大塚製薬工場製;以下、単に糖液ともいう。)を経口投与した。糖液投与より30分後、60分後、90分後、120分後に尾静脈より採血を行い、血糖値を測定した。それぞれの血糖値を、非麻酔群の30分値、60分値、90分値及び120分値とした。
麻酔群:一夜絶食下のラットを体重によって群分け後尾静脈より採血を行った(Pre値)。コントロール群は大塚蒸留水、イソロイシン投与群はイソロイシン水溶液を0.5g/10mL/kgの用量で経口投与した。被験液投与後30分後に、50%大塚糖液を3gグルコース/kgとなるよう経口投与した。糖液投与10分後、麻酔群に腹腔よりソムノペンチル液を0.5g/1mL/kg腹腔内投与した。糖液投与より30分後、60分後、90分後、120分後に尾静脈より採血を行った血糖値を測定した。それぞれの血糖値を、麻酔群の30分値、60分値、90分値及び120分値とした。
なお、採血はヘマトクリット測定用管によって行い、遠心分離後血漿部分を回収した。分取した血漿は、血糖値の測定に供した。血糖値曲線下面積(0−120min;以下、AUCと略記する。)は、Pre値を0分値として、0分値、30分値、60分値、90分値及び120分値の5ポイントの血糖値(mg/dL)と時間(分)で積算して求めた。
試験例8の結果を第8図に示した。コントロール群のAUCは、非麻酔群に比し麻酔群で有意に増加した。イソロイシン投与群のAUCは、非麻酔群、麻酔群共にコントロール群に比しAUCが減少したが、麻酔群では有意な減少が認められた。以上の結果より、糖負荷による血糖値の上昇は、麻酔薬により有意に上昇し、イソロイシンの経口投与による血糖上昇抑制作用は、麻酔薬とイソロイシンとの有意な交互作用により、非麻酔群に比し麻酔群において有意に増強されることが示された。
産業上の利用の可能性
本発明の血糖値上昇抑制剤を、周術期の患者に投与することで、手術・麻酔による血糖値の上昇を抑制することができる。しかもその抑制効果は、患者を麻酔状態にすることにより増強することができる。該抑制剤はその構成成分を分岐鎖アミノ酸とし、従来周術期の血糖値の管理時のインスリン投与法において危惧される低血糖を引き起こす等の危険性がなく、また糖代謝異常の患者への手術時の糖質補給を容易に行うことができ、生体に安全である。

Claims (6)

  1. アミノ酸としては、分岐鎖アミノ酸のみを含有し、前記分岐鎖アミノ酸として、ロイシン及び/又はイソロイシンを含有することを特徴とする、麻酔下での血糖値上昇の治療及び/又は予防のために使用される血糖値上昇抑制剤。
  2. ロイシン0.25〜2.5g/dL及び/又はイソロイシン0.25〜3.5g/dLを含有する請求の範囲第1項に記載の血糖値上昇抑制剤。
  3. グルコース1〜10g/dL並びにロイシン0.25〜2.5g/dL及び/又はイソロイシン0.25〜3.5g/dLを含有する請求の範囲第1項又は第2項に記載の血糖値上昇抑制剤。
  4. さらに、バリンを含み、(1)ロイシン又はイソロイシン:バリンの配合重量比が1:0.25〜4である、又は(2)ロイシン:イソロイシン:バリンの配合重量比が1:0.25〜4:0.25〜1である請求の範囲第1項〜第3項のいずれかに記載の血糖値上昇抑制剤。
  5. 血糖値上昇が麻酔薬によるものである請求の範囲第1項〜第4項のいずれかに記載の血糖値上昇抑制剤。
  6. 麻酔薬と併用することを特徴とする請求の範囲第1項〜第4項のいずれかに記載の血糖値上昇抑制剤。
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