JP4588178B2 - 電力貯蔵装置用電力変換器制御装置 - Google Patents

電力貯蔵装置用電力変換器制御装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電力系統内に設置された電力貯蔵装置用電力変換器に用いる制御装置に係り、特に負荷の平準化や、電力の品質の向上の目的に用いることができる電力貯蔵装置用電力変換器制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年の電力需要の伸びに伴い、昼夜間あるいは季節間の電力較差はますます大きくなる傾向にある。この電力較差は発電設備や送電設備などの設備利用率の低下を招き、設備の効率的な運用の妨げとなっている。これを解決する1つの方法として、電池とインバータとを組み合せた電力貯蔵装置が提案され、現在その有効性の検証が行われている。現在用いられている電力貯蔵装置の多くは、夜間に電力を貯蔵し昼間に系統へ電力を供給するいわゆる有効電力制御機能が大半を占めている。一方、系統の電力品質をあるレベルに保つことも系統運用上重要な課題であり、調相設備を用いた無効電力制御がその役割を果たしている。電力品質管理の例としては、電圧補償ではSVCあるいはSVGによる無効電力制御が広く用いられ、また高調波抑制ではアクティブフィルタ等が個別に設置されている。しかしながら、これら補償装置は1つの機能しか持っていないものが多く、電力貯蔵機能と電力品質向上機能を統合したインバータはこれまでにほとんど開発されていないのが現状である。これら機能の統合により、これまで個別に設置していた補償装置を1つにすることができ、省スペース化が達成できる。
【0003】
この種の電力貯蔵装置としては、特開平9−65588号公報に示されたものがある。この従来の電力貯蔵装置では、負荷の平準化及び電力の品質の安定化の両方を常に実現するように動作する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来提案されている電力貯蔵装置では、電力貯蔵装置が使用される地域の電力需要や電力品質に合わせて設計をするため、汎用性が乏しく、また使用地域の電力需要状況や電力の品質の状況が変わった場合において、その変化に迅速な対応できない問題があった。
【0005】
本発明の目的は、使用地域の状況に簡単に対応することができる汎用性の高い電力貯蔵装置用電力変換器に用いる電力貯蔵装置用電力変換器制御装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明が改良の対象とする電力貯蔵装置用電力変換器制御装置は、電力を貯蔵する電力貯蔵手段と、電力系統と電力貯蔵手段との間に配置されて電力系統からの交流電力を直流電力に変換して直流電力により電力貯蔵手段に充電し且電力貯蔵手段に貯蔵された直流電力を交流電力に変換して電力系統に供給する電力貯蔵装置用電力変換器と、電力系統の状態を検出する電力系統状態検出手段と、電力貯蔵装置用電力変換器から出力される有効電力及び無効電力の少なくとも一方を制御して、電力系統の負荷の平準化及び電力の品質向上の少なくとも一方を実現するために、電力系統状態検出手段の検出出力及び予め定めた複数の運転モードに従って、電力貯蔵装置用電力変換器を駆動するための駆動信号を発生する電力変換器制御装置とを具備する。
【0007】
本発明においては、電力変換器制御装置が、複数の運転モードを実行するための制御指令を発生する複数の運転モード実行手段と、外部からの操作等により予め指定された複数の運転モード実行手段の出力を選択して出力する運転モード選択出力手段と、運転モード選択出力手段により選択されて1以上の運転モード実行手段から出力された制御指令に基いて駆動信号を発生する駆動信号発生手段とを具備する。このような構成を採用すると、電力系統の負荷の平準化及び電力の品質向上の少なくとも一方を実現するために予め定めた複数の運転モード実行手段から、電力貯蔵装置の使用地域の電力系統の状況に合わせて負荷の平準化及び/又は電力の品質向上に必要な運転モードを外部からの操作により任意に選択・指定することができるので、使用地域に合わせた電力貯蔵装置を簡単に得ることができ、汎用性が高くなって、しかも使用地域の電力状況の変更に迅速に対応できるという利点が得られる。
【0008】
いくら電力貯蔵手段の容量を大きくしてもその容量の増加には限界があるため、電力貯蔵手段の容量を最大限有効に利用して負荷の平準化と電力の品質の向上を図るように電力貯蔵手段を運転するのが好ましい。また複数の運転モード実行手段により実行する運転モードには、その運転モードの実行により得られる効果に差がある。そのため予め複数の運転モード実行手段により実行する運転モードに優先順位をつけておき、特定の状況において特定の運転モード実行手段を優先的に実行するようにすると、電力貯蔵手段の容量を最大限有効に利用して負荷の平準化と電力の品質の向上を図ることが可能になる。そこでこれを実現するためには、複数の運転モード実行手段のうち2以上の運転モード実行手段が選択されているときに、予め定めた優先順位の高い1以上の運転モード実行手段が選択されていて且つ該優先順位の高い1以上の運転モード実行手段から出力が出ているときには、選択されているその他の優先順位の低い運転モード実行手段の出力を駆動信号発生手段には出力しないように複数の運転モード実行手段の出力を選択するように、運転モード選択出力手段を構成すればよい。
【0009】
なお複数の運転モード実行手段には、具体的に、負荷の平準化のために有効電力を制御するための定電力充放電運転モード実行手段、パターン運転モード実行手段及び負荷追従運転モード実行手段電力の品質向上のために有効電力を制御する電力動揺抑制運転モード実行手段並びに電力の品質向上のために無効電力を制御する電圧変動抑制運転モード実行手段、瞬低抑制運転モード実行手段、電圧不平衡抑制運転モード実行手段、フリッカ抑制運転モード実行手段及び高調波抑制運転モード実行手段を含めるのが好ましい。すべての運転モード実行手段を含めば、現時点では最も汎用性が高くなる。しかしながら本発明を実施する場合には、すべての運転モード実行手段を含んでいる必要はない。
【0010】
なおこのような具体的な運転モード実行手段を用いる場合には、電力動揺抑制運転モード実行手段と、瞬低抑制運転モード実行手段とフリッカ抑制運転モード実行手段とを、優先順位の高い1以上の運転モード実行手段とするのが好ましい。このように優先順位を定めると、効果の高い運転モードの実行に電力貯蔵手段の電力を集中させることができて、負荷の平準化と電力の品質をより効果的に高めることができる。
【0011】
なお上記のように運転モードに優先順位を付ける場合でも、実行効果の点から考えると、電力動揺抑制運転モード実行手段及び瞬低抑制運転モード実行手段の優先順位を、フリッカ抑制運転モード実行手段よりも高くするのが好ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。本発明の実施の形態の理解を容易にするために、本発明の電力貯蔵装置用電力変換器制御装置を発明するために行った開発の結果について説明しながら、併せて本発明の実施の形態について説明する。なおこの開発は、九州変圧器株式会社の大山顕氏及び宇都宮勝氏の指導下で行い、シミュレーションは崇城大学の中原正俊氏及び原田耕介氏にお願いした。以下、電力貯蔵機能と電力品質向上機能を組み合せた100kW級多機能インバータ装置(後の実施の形態の説明で用いる電力貯蔵装置用電力変換器及び電力変換器制御装置を含めた総称であり、以下多機能インバータ装置と言う。)の開発およびその制御方法について説明する。この多機能インバータ装置は、4つの有効電力制御機能と5つの無効電力制御機能(後の実施の形態の説明で用いる複数の運転モード実行手段に対応する機能)を有し、これらの機能を組み合せて使用することができるように構成されている。具体的な例では、有効電力と無効電力とを同時に制御する目的で3相/dq軸座標変換を用い、対象とする周波数成分の分離を行っている。また、実機コントローラのパラメータ調整を円滑に行い、実機実験では困難なフリッカ発生や高調波発生などの系統上の外乱を容易に発生させることができるためSCATシミュレータによる検討を行い、シミュレータの有効活用を図った。そして最後に、100kW多機能インバータ装置を用いた実験により多機能インバータの有効性を検証した。
【0013】
この多機能インバータ装置は、電力貯蔵機能である定電力充放電、パターン運転、負荷追従機能とあわせて電力品質向上機能である電圧変動抑制、瞬低抑制、電圧不平衡抑制、フリッカ抑制、高調波抑制及び電力動揺抑制の9つの機能(運転モード実行手段)を持つ。また、これら各機能を常用運転機能および待機運転機能に分け、それらを組み合せて使用することができる。
【0014】
[多機能インバータ装置の構成]
試験回路の構成を図1に示し、インバータの仕様を表1に示す。
【0015】
【表1】
Figure 0004588178
この試験回路は、インバータ(電力変換器)、電源、ラインインピーダンス、負荷の他に外乱発生装置から構成されている。なおインバータ(電力変換器)を駆動制御するための電力変換器制御装置については図示をしていない。インバータの出力容量は100kVAで、パワー素子としては1200V,1000A定格のIGBTを各相上下アームとも4並列用い、電流容量4000Aを確保している。さらに、各パワー素子のPWM制御は2アーム変調方式を用いている。これは相電圧eu,ev,ewに第3調波を重畳させる方式である。この2アーム変調方式は線間電圧を制御する方法であり、三角波比較方式と比べて、
1) スイッチング損失を低減できる
2) 三角波比較方式に比べて、最大出力電圧を約15%大きくできる
という特徴がある。
【0016】
このインバータはスイッチングリップル除去用ローパスフィルタおよび連系変圧器を介して6600V系統と連系されている。制御部(電力変換器制御装置)には、16ビット、20MHz・固定小数点演算のDSPを用い、このDSPでは補償量の計算およびPWM信号の発生を行う、オールディジタル制御を実現している。
【0017】
[多機能運転機能]
多機能インバータ装置の運転機能を表2に示す。
【0018】
【表2】
Figure 0004588178
上記の表に示すように有効電力制御機能としては、インバータ(電力変換器)からの入出力電力を一定に制御する定電力充放電機能(後の実施の形態の説明において、定電力充放電運転モード実行手段が実行する機能)、あらかじめ設定したパターンに1日の充放電電力値と運転時間に従って自動運転するパターン運転機能(後の実施の形態の説明において、パターン運転モード実行手段が実行する機能)、負荷電力の大きさに応じてインバータ出力電力(放電電力)を負荷電力に追従させる負荷追従機能(後の実施の形態の説明において、負荷追従運転モード実行手段が実行する機能)、系統周波数の変動に伴いインバータから有効電力を入出力させ系統動揺抑制(有効電力の急峻な動揺を抑制)を目的とした電力動揺抑制機能(後の実施の形態の説明において、電力動揺抑制運転モード実行手段が実行する機能)がある。また、無効電力制御機能としては、系統との連系点電圧を任意に制御する(母線電圧の変動・低下を補償するように無効電力を調整する)電圧変動抑制機能(後の実施の形態の説明において、電圧変動抑制運転モード実行手段が実行する機能)、0.07〜1.0秒程度の瞬時電圧低下を抑制する瞬低抑制機能(後の実施の形態の説明において、瞬低抑制運転モード実行手段が実行する機能)、無効電力を各相個別に制御することにより母線電圧の不平衡を抑制する電圧不平衡抑制機能(後の実施の形態の説明において、電圧不平衡抑制運転モード実行手段が実行する機能)、さらには10Hzのフリッカ電圧を補償するフリッカ抑制機能(後の実施の形態の説明において、フリッカ抑制運転モード実行手段が実行する機能)、負荷電流の高調波を次数分析し、各成分と同位相逆向きの電流を出力する高調波抑制機能(後の実施の形態の説明において、高調波抑制運転モード実行手段が実行する機能)がある。
【0019】
運転機能の選択としては、有効電力制御の常用機能から1つ、無効電力制御の常用機能から複数の選択が可能である。さらに、有効電力制御・無効電力制御の待機機能は複数の選択が可能である。ただし、瞬低抑制機能とフリッカ抑制機能が同時に稼動した場合は、瞬低抑制機能を優先するようになっている。なお待機機能及び常用機能は下記のように定義する。
【0020】
待機機能:系統に当該事象が発生したときのみ起動する機能のことであり、当該事象除去後は自動的に停止する。また、待機機能が起動した場合、常用機能はすべて停止しインバータが持つ全容量を待機機能に割り当てる。
【0021】
常用機能:当該事象の発生の有無に関わらず選択された場合は必ず起動する機能である。
【0022】
[電力変換器制御装置の制御系設計]
上述した各運転機能を実現するためには、3相交流を直接扱うよりは3相交流を2軸回転座標系へ座標変換し、変換後の量を制御する方が扱いが簡単となる。そこでまず、3相交流から2軸回転座標系への変換について示す。次に、座標変換後のどの周波数成分を制御することで表2の運転機能が実現できるかを示す。図2は、制御系全体のブロック図である。
【0023】
3相交流電流iu,iv,iwを2軸回転座標系上の電流に変換する場合,相回転と同方向に回転座標をとる3相/正相dq軸座標変換と,相回転と逆方向に回転座標をとる3相/逆相dq軸座標変換が定義される。また,正相dq軸から3相交流への逆変換である正相dq軸/3相座標変換,および逆相dq軸から正相dq軸への変換である逆相dq軸/正相dq軸座標変換も定義され,それらは以下の(1)乃至(4)のように表せる。ただし、iu,iv,iwは零相電流を含まないものとする。ただし、ipd,ipqは正相dq軸上のd軸、q軸電流であり、iNd,iNqは逆相dq軸上のd軸およびq軸電流である。なお、正相dq/3相座標変換行列は3相/正相dq軸座標変換行列の右逆行列となっている。
【0024】
【式1】
Figure 0004588178
零相分を含まない3相交流電流iu,iv,iwを次式(5)で定義する。ただし、iu,iv,iwの右辺第1項は正相分を右辺第2項は逆相分を表わすものとする。
【0025】
【式2】
Figure 0004588178
ただし、Ipnは正相電流実効値であり、INnは逆相電流実効値、φn,θnは第n調波の正相・逆相分の位相差である。(5)式を(1)式および(2)式へ代入し整理すると次式のようになる。
【0026】
【式3】
Figure 0004588178
ただし、ipd,ipqの上に横線がついた値はipd,ipqの直流分であり、それぞれ基本波有効電流、基本波無効電流を表わしている。またipd(2ω),ipq(2ω)の上に波線がついた値は、ipd,ipqの2ω成分であり、ipd、ipqの上に波線がついた値はipd、ipqの直流および2ω以外の高調波電流である。さらに、iNd,iNqの上に横線がついた値はiNd,iNqの直流分であり、逆相電流をiNd,iNqの上に波線がついた値はiNd,iNqの直流以外の高調波電流を表わしている。
【0027】
ここでインバータの定電力充放電および負荷追従では有効電力の制御を行うため前述の基本波有効電流を制御すればよく、電力動揺抑制でも基準周波数との差に応じた有効電力をインバータから出力するものとしているため同様に基本波有効電流の制御を行う。また、電圧変動抑制および瞬低抑制では無効電力を制御して系統電圧の制御を行うため基本波無効電流を、不平衡抑制では逆相電流の抑制を行う。さらに、フリッカ抑制では基本波無効電流と高調波電流の制御を、高調波抑制では高調波電流の抑制を行う。これらをまとめると表3に示す各電流成分を制御することで表2に示す運転機能を実現することができる。
【0028】
【表3】
Figure 0004588178
図2は、具体的な制御ブロックの一例を示している。そして図3及び図4は、それぞれ図2の部分拡大図である。制御ブロックは大きく分けて有効電力・無効電力の計算部A、表3に示す電流成分を抽出し目標値との比較を行い制御量の計算を行う制御部B、有効電力と無効電力の非干渉化を行うPQ非干渉制御部C、過電流防止を目的とした電流フィードバック部DさらにPWM信号発生部Eから構成されている。たとえば定電力充放電では、インバータが出力する有効電力と無効電力を目標値と比較し、それぞれの誤差に応じてPIコントローラから電流指令値を出力しインバータ低圧側電流をこの電流指令値に追従させるようにする。電流指令値とインバータ低圧側電流との誤差はPQ非干渉部Cで電圧指令値に変換され、電圧変化分として連系点電圧に加算される。さらに、正相dq軸/3相変換することで3相電圧指令値となり、この3相電圧指令値がPWM信号へ変換される。なお、座標変換の位相基準は連系点U相相電圧にとり、インバータの有効・無効電力の計算は高圧側インバータ出力電流を3相/正相dq軸座標変換した値に同じく連系点相電圧を3相/正相dq軸座標変換して求めた線間電圧を乗じることで算出している。これによりサンプル点ごとの有効・無効電力の計算が可能となる。また、これらの図において、選択・非選択スイッチは各機能が選択されたときONとなり非選択時は選択されなかった機能からの補償量は零とする。さらに、待機機能については待機機能が選択されただけでは補償量は零とし当該事象が発生したときのみ待機から運転へスイッチの切替えが行われ、発生事象の抑制が行われる。
【0029】
図5は、図2の例を概略的に本発明の電力貯蔵装置用電力変換器制御装置の一実施の形態の構成を示すブロック図である。図5においては、この電力貯蔵装置1は、電力を貯蔵する電力貯蔵手段である蓄電池2と、電力系統3と蓄電池2との間に配置されて電力系統3からの交流電力を直流電力に変換して直流電力により蓄電池2を充電し且蓄電池2に貯蔵された直流電力を交流電力に変換して電力系統に供給する電力貯蔵装置用電力変換器4と、電力系統3の各種の状態を検出する電力系統状態検出手段5と、電力変換器制御装置6とを備えている。電力変換器制御装置6は、電力貯蔵装置用電力変換器4から出力される有効電力及び無効電力の少なくとも一方を制御して、電力系統3の負荷の平準化及び電力の品質向上の少なくとも一方を実現するために、電力系統状態検出手段5の検出出力及び予め定めた複数の運転モード実行手段7〜15の出力に従って、電力貯蔵装置用電力変換器4を駆動するための駆動信号を発生する構成を有している。
【0030】
具体的に、この電力変換器制御装置6は、複数の運転モードを実行するための制御指令を発生する9つの運転モード実行手段7〜15と、外部から操作されるモード指定手段16(図2には図示していない)により複数の運転モード実行手段の出力を選択して出力する運転モード選択出力手段17(図2にはスイッチの記号で図示してある)と、運転モード選択出力手段17により選択されて1以上の運転モード実行手段から出力された制御指令を加算する加算部18と、加算部18で加算された制御指令に基いて駆動信号を発生する駆動信号発生手段19とを具備する。9つの運転モード実行手段としては、具体的に、負荷の平準化のために有効電力を制御するための定電力充放電運転モード実行手段7と、パターン運転モード実行手段8と、負荷追従運転モード実行手段9と、電力の品質向上のために有効電力を制御する電力動揺抑制運転モード実行手段10と、電力の品質向上のために無効電力を制御する電圧変動抑制運転モード実行手段11、電圧不平衡抑制運転モード実行手段12、瞬低抑制運転モード実行手段13、フリッカ抑制運転モード実行手段14及び高調波抑制運転モード実行手段15を備えている。
【0031】
このような構成を採用すると、電力系統3の負荷の平準化及び電力の品質向上の少なくとも一方を実現するために予め定めた複数の運転モード実行手段7から15から、電力貯蔵装置の使用地域の電力系統の状況に合わせて負荷の平準化及び/又は電力の品質向上に必要な運転モードを外部からの操作により任意に選択・指定することができるので、使用地域に合わせた電力貯蔵装置を簡単に得ることができる。また運転モード実行手段の選択変更により、使用地域の電力状況の変更に迅速に対応できる。
【0032】
9つの運転モード実行手段7〜15により実行する運転モードには、その運転モードの実行により得られる効果に差がある。そこでこの例では、電力動揺抑制運転モード実行手段10と、瞬低抑制運転モード実行手段13とフリッカ抑制運転モード実行手段14とを、他の運転モード実行手段よりも優先順位の高い運転モード実行手段としている。このように優先順位を定めると、効果の高い運転モードの実行に蓄電池の電力を集中させることができて、負荷の平準化と電力の品質をより効果的に高めることができる。
【0033】
なお上記のように運転モード実行手段に優先順位を付ける場合でも、実行効果の点から考えると、電力動揺抑制運転モード実行手段10及び瞬低抑制運転モード実行手段13の優先順位を、フリッカ抑制運転モード実行手段14よりも高くするのが好ましい。
【0034】
図2に示す制御系構成及び図5に示す実施の形態で、表2に示す運転機能が実現できることをSCATシミュレーションおよび100kW多機能インバータ装置の実機実験により示す。なお、今回用いたSCATシミュレータには3相/正相dq軸座標変換、3相/逆相dq軸座標変換、正相dq軸/3相座標変換、逆相dq軸/正相dq軸座標変換および周波数検出回路が追加されている。また、シミュレーションでは各機能に制限を設けない場合の応答を検証するため、図2中の不感帯、リミッタは設けず対象とする運転機能のみをモデル化してシミュレーションを行った。
【0035】
まず定電力充放電運転モード実行手段からの制御信号を用いたときの定電力充放電のSCATシミュレーション回路を図6に示す。ただし、実機では各相上下アームともIGBTを4並列で用いているが、ここでは4並列のIGBTのバラつきはなく、同時にON、OFFするものと仮定しシミュレーション回路では1個のIGBTで代表させることとした。また、主回路は3相定電圧電源、線路インピーダンス、負荷の簡単な構成とした。定電力充放電はインバータ(電力変換器)が出力する有効電力を目標値に追従させると同時に無効電力を零に制御することで力率をほぼ1に保ちながらインバータから一定の有効電力を出力する機能のことである。図7は定電力放電を行った場合のインバータの有効電力および無効電力応答であり、同図(a)がシミュレーション結果、(b)が実験結果である。これより、100kW放電および充電が実現できていることがわかる。また、放電100kW、充電100kWに対するインバータの出力誤差はシミュレーションではそれぞれ0.3%,0.6%、実験では設計値±3%に対して±1%以下の誤差であった。ここで、有効電力応答をステップ状ではなく、0kWから100kWあるいは0kWから−100kWまでスロープ状に変化させているのは電池電流の急激な入出力を抑制するためである。
【0036】
電力動揺抑制運転モード実行手段からの制御信号を用いたときの結果について説明する。
【0037】
電力動揺抑制は、系統周波数fの変動を検出し基準周波数fref(=60)との差に応じた有効電力をインバータから出力する機能であり、インバータの有効電力目標値Prefを次式で与える。
【0038】
Pref=KF(fref−f)
ただし、KF[kW/Hz]は周波数を有効電力に変換する係数でKF=30[kW/Hz]とした。図8は系統周波数を60Hzから59Hzに変化させたときの応答であり、同図(a),(b)はシミュレーション結果、(c)は実験結果である。図8(a)より、系統周波数を60Hzから59Hzに変化させたときインバータから30kWの有効電力が出力されていることがわかる。図8(b),(c)は連系点U相電圧とインバータU相電流のシミュレーション結果および実験結果である。(b)図のシミュレーション結果より、電力動揺抑制機能が起動した直後はインバータからピーク値で35Aの電流が流れているが、これは切替え直後有効電力目標値がステップ状に加わったことに起因する。また、シミュレーションおよび実験結果より電力動揺抑制機能起動後約4〜5サイクルでインバータ出力電流が整定していることがわかる。ただし、電源は発電機モデルではなく定電圧電源を用いているためインバータが有効電力を放出しても系統周波数の改善は見られないが、インバータは正常動作していることが確認できる。
【0039】
次に電圧変動抑制運転モード実行手段からの制御信号を用いた場合を説明する。図9はt=0〜0.12secまで30kWの定電力運転を行い、t=0.12secから目標電圧6640Vの電圧変動抑制機能を起動したときの応答波形である。t=0〜0.12secまでは電圧変動抑制機能が起動していないため無効電力は零であるが、0.12sec以降は電圧変動抑制機能が働いているためインバータが無効電力を出力していることがわかる。また、同図より有効電力および連系点電圧がそれぞれ制御できており電力貯蔵機能と電力品質向上機能が同時に達成できていることが確認できる。同図(b),(c)はU相電圧・電流のシミュレーションおよび実験結果である。電圧変動抑制機能が起動した後インバータは遅れ電流をシミュレーション、実験とも出しており、両者はよく一致していることが確認できる。
【0040】
図10は30kWの定電力運転を行い、t=0.12secから目標電圧6560Vの電圧変動抑制機能を起動したときの応答波形である。同図より、電圧の下げ方向に対しても同様に有効電力と連系点電圧が同時に制御できることがわかる。
【0041】
次に不平衡抑制運転モード実行手段からの制御信号を用いた場合について説明する。不平衡電圧は正相電圧と逆相電圧の和で表わされ、逆相電圧を小さくできれば電圧の不平衡度合いも小さくなる。図11は不平衡抑制を行った場合と行わない場合の連系点電圧の正相電圧および逆相電圧のシミュレーション結果である。不平衡抑制を行うことにより、正相分は変わらないが逆相分については約50%の低減効果が確認できた。
【0042】
次に高調波抑制運転モード実行手段からの制御信号を用いた場合について説明する。図12は高調波抑制を行わない場合および高調波抑制を行った場合のU相線路電流の周波数成分である。高調波負荷はコンデンサインプット形負荷を用い、線路電流には5次、7次、11次などの成分が顕著に含まれる。高調波抑制を行うことで5次成分に関しては22%の低減効果があることが確認できた。
【0043】
次に複数の運転モードを組み合わせた試験結果について説明する。図13は多機能制御運転の一例であり、瞬低抑制を行ったときの有効電力、およびU相インバータ電流の実験結果である。瞬低発生を検出後、常用機能である定電力充放電および電圧変動抑制を停止し、瞬低抑制機能が起動していることがわかる。瞬低抑制後は定電力充放電および電圧変動抑制機能が再び起動し元の状態に戻っていることがわかる。インバータの出力電流より、瞬低抑制は起動後約2〜3サイクルで安定していることがわかる。
【0044】
【発明の効果】
本発明によれば、電力系統の負荷の平準化及び電力の品質向上の少なくとも一方を実現するために予め定めた複数の運転モード実行手段から、電力貯蔵装置の使用地域の電力系統の状況に合わせて負荷の平準化及び/又は電力の品質向上に必要な運転モードを外部からの操作により任意に選択・指定することができるので、使用地域に合わせた電力貯蔵装置を簡単に得ることができ、汎用性が高くなって、しかも使用地域の電力状況の変更に迅速に対応できるという利点が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 多機能インバータ装置の試験回路を示す回路図である。
【図2】 制御系全体のブロック図である。
【図3】 図2の部分拡大図である。
【図4】 図2の部分拡大図である。
【図5】 本発明の実施の形態の一例を示すブロックである。
【図6】 定電力充放電のSCATシミュレーション回路を示す図である。
【図7】 定電力放電を行った場合のインバータの有効電力および無効電力応答であり、(a)がシミュレーション結果を示しており、(b)が実験結果を示している。
【図8】 系統周波数を60Hzから59Hzに変化させたときの応答であり、(a)及び(b)はシミュレーション結果を示しており、(c)は実験結果を示している。
【図9】 t=0〜0.12secまで30kWの定電力運転を行い、t=0.12secから目標電圧6640Vの電圧変動抑制機能を起動したときの応答波形である。
【図10】 30kWの定電力運転を行い、t=0.12secから目標電圧6560Vの電圧変動抑制機能を起動したときの応答波形である。
【図11】 不平衡抑制を行った場合と行わない場合の連系点電圧の正相電圧および逆相電圧のシミュレーション結果を示す図である。
【図12】 高調波抑制を行わない場合および高調波抑制を行った場合のU相線路電流の周波数成分である。
【図13】 瞬低抑制を行ったときの有効電力、およびU相インバータ電流の実験結果を示す図である。
【符号の説明】
1 電力貯蔵装置
2 蓄電池(電力貯蔵手段)
3 電力系統
4 電力貯蔵装置用電力変換器
5 電力系統状態検出手段
6 電力変換器制御装置
7〜15 運転モード実行手段
16 モード指定手段
17 運転モード選択出力手段
18 加算部
19 駆動信号発生手段

Claims (2)

  1. 電力を貯蔵する電力貯蔵手段と、
    電力系統と前記電力貯蔵手段との間に配置されて前記電力系統からの交流電力を直流電力に変換して前記直流電力により前記電力貯蔵手段に充電し且前記電力貯蔵手段により貯蔵された直流電力を交流電力に変換して前記電力系統に供給する電力貯蔵装置用電力変換器で用いる電力貯蔵装置用電力変換器制御装置であって、
    前記電力系統の状態を検出する電力系統状態検出手段と、
    前記電力貯蔵装置用電力変換器から出力される有効電力及び無効電力の少なくとも一方を制御して、前記電力系統の負荷の平準化及び電力の品質向上の少なくとも一方を実現するために、前記電力系統状態検出手段の検出出力及び予め定めた複数の運転モードに従って、前記電力貯蔵装置用電力変換器を駆動するための駆動信号を発生する電力変換器制御装置と、
    前記複数の運転モードを実行するための制御指令を発生する複数の運転モード実行手段と、
    予め指定された前記複数の運転モード実行手段の出力を選択して出力する運転モード選択出力手段と、
    前記運転モード選択出力手段により選択されて1以上の前記運転モード実行手段から出力された前記制御指令に基いて前記駆動信号を発生する駆動信号発生手段とを具備し、
    前記運転モード選択出力手段は、前記複数の運転モード実行手段のうち2以上の前記運転モード実行手段が選択されているときに、予め定めた優先順位の高い1以上の前記運転モード実行手段が選択されていて且つ該優先順位の高い1以上の前記運転モード実行手段から出力が出ているときには、選択されているその他の優先順位の低い前記運転モード実行手段の出力を前記駆動信号発生手段には出力しないように前記複数の運転モード実行手段の出力を選択し、
    前記複数の運転モード実行手段は、前記負荷の平準化のために前記有効電力を制御するための定電力充放電運転モード実行手段、パターン運転モード実行手段及び負荷追従運転モード実行手、電力の品質向上のために前記有効電力を制御する電力動揺抑制運転モード実行手段並びに電力の品質向上のために前記無効電力を制御する電圧変動抑制運転モード実行手段、瞬低抑制運転モード実行手段、電圧不平衡抑制運転モード実行手段、フリッカ抑制運転モード実行手段及び高調波抑制運転モード実行手を含んでおり、
    前記電力動揺抑制運転モード実行手段と、前記瞬低抑制運転モード実行手段と前記フリッカ抑制運転モード実行手段とが、前記優先順位の高い1以上の前記運転モード実行手段である電力貯蔵装置用電力変換器制御装置。
  2. 前記電力動揺抑制運転モード実行手段及び前記瞬低抑制運転モード実行手段が、前記フリッカ抑制運転モード実行手段よりも優先順位が高いことを特徴とする請求項1に記載の電力貯蔵装置用電力変換器制御装置。
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