JP4587959B2 - 細胞濃縮物の調製方法および細胞組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、細胞含有液中の有核細胞を分離、濃縮して凍結保存用の細胞浮遊液を作成するための細胞濃縮物の調製方法、細胞の凍結保存方法、細胞組成物および細胞凍結物に関する。更に詳しくは、本発明は、凍結保存用細胞浮遊液中の有核細胞の濃度を高め、凍結保存用の細胞浮遊液の容積を少なくするための細胞濃縮物の調製方法、細胞の凍結保存方法、細胞組成物および細胞凍結物に関する。
近年、白血病などの造血器腫瘍及び固形癌の化学療法における副作用である造血障害に対して、末梢血、骨髄、臍帯血の中の造血幹細胞を移植することが盛んに行われるようになった。そのほとんどの場合、細胞は移植前まで凍結保存されるが、凍結保存には莫大な費用がかかるため、通常凍結前に赤血球や血漿など移植に不要な成分を除去して保存容積を削減する処理が施される。例えば、臍帯血は胎盤と臍の緒から平均で100mL程度採取できるが、多くの臍帯血バンクでは、臍帯血から赤血球、血漿などを除去して20mLに減容した後、凍害保護剤を5mL加えて25mLで凍結保存している。しかしながら、これらの臍帯血はドナーと患者のヒト白血球抗原(HLA)が一致するまで長期間凍結保存されることが多く、保存費用削減のために、更に減容するニーズが高まっている。
従来、血液から治療に必要な成分を分離する方法として、比重遠心法、赤血球凝集法、バフィーコート法、抗体を用いたアフィニティ分離法などが行われてきた。しかしながら、比重遠心法は赤血球、血漿の除去率が高く、減容効果は大きいものの、比重液(例えばファルマシア社製Ficoll)に原料となる細胞浮遊液を重層させる際に液面を乱してはならないなど、非常に熟練を要する煩雑な操作である上、開放系で操作されるため雑菌混入のリスクが大きく、また目的細胞の回収率が低いなどの問題がある。赤血球凝集法では、ヒドロキシエチルスターチ等と混和して、赤血球の連銭形成により赤血球を凝集、沈降させ、上層の白血球層を分離するが(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,Vol.92,pp10119−10122(1995)、Indian J. Med. Res.,Vol.106,pp16−19(1997))、白血球の回収率を高めようとすると多くの赤血球が混入して減容の妨げとなり、逆に赤血球の混入を抑えようとすると白血球の回収率が低下するといったように、赤血球除去と白血球回収の両者を同時に十分満たすことができないといった問題がある。バフィーコート法では、血液が貯留されたバッグを強遠心して上層の血漿層、中間層の主に白血球と血小板からなるバフィーコート層、下層の赤血球層を形成させ、上層の血漿層と下層の赤血球層をバッグから追い出して中間層のバフィーコート層を回収するが(Bone Marrow Transplantation,Vol.23,pp505−509(1999))、やはり赤血球凝集法と同じ問題がある。抗体を用いたアフィニティ分離法では、特異性は高く減容効果は大きいものの、分離した細胞を回収するためには、結合した抗体分子を酵素処理するため、細胞の損傷、コスト高、操作の煩雑さなどの問題がある。
簡便で細胞の分離効率の比較的高い細胞分離法として、特開平10−201470号公報、特開平10−137557号公報、特開平11−206875号公報、特開平11−56351号公報において、フィルター装置を用いる方法が開示されている。特に特開平11−56351号公報では、血液を濾過後、フィルター装置にリンス液を導入してフィルター装置内に残存する赤血球を洗い流した後、フィルター装置に回収液を導入してフィルター装置内に捕捉された目的細胞を回収するため、赤血球除去率、目的細胞回収率ともに高い。しかしながら、目的細胞の生存率や機能を高く維持するためにリンス液にアルブミンなどの蛋白を添加する必要があり、またリンス液を通液する際にフィルター装置に血液回路中のエアが入り込んで濾過不能(エアブロック)になったり、フィルター装置にエアが入らないように濾過前にリンス液でフィルター装置および血液回路をプライミングしておく必要があるなど、非常に煩雑な操作を余儀なくされる。
国際公開第98/32840号パンフレットでは、「細胞含有液としては、末梢血、骨髄、臍帯血、リンパ液及びこれらに遠心分離等何らかの処理を施したもの」との記載があるが、濾過する前の細胞含有液の処理によって有核細胞と不要細胞の分離効率を高められるとの記載は一切ない。
また、フィルター装置を用いて細胞の分離効率を高める方法として、国際公開第02/087660号パンフレットにフィルター装置で血液を濾過する前に血液の貯留部において血球濃度勾配を形成した後、貯留部下層の血液から白血球除去フィルター装置で濾過する方法が開示されている。その中で開示された技術は、濾過初期におけるフィルター材はアルブミン等の血球粘着を抑制する血漿蛋白質で十分に覆われておらず、除去したい白血球が多く粘着し、一方比重の軽い血小板は不均質化した全血製剤の上層に多く存在し、血小板がフィルター材と接触する時にはフィルター材表面がアルブミン等の血漿蛋白質で覆われ血小板粘着が抑制され多くの血小板が回収されることにより、白血球と血小板の分離効率を高める技術である。即ち、本公報では、本発明のように、先に不要細胞に富む層を濾過してフィルター材に一部の有核細胞を捕捉し、不要細胞を流出させ、その時点でフィルター材に残留する不要細胞を、その後有核細胞に富む層で洗い流しながらフィルター材に有核細胞を捕捉し、その後回収液をフィルター装置に導入して有核細胞を回収する、という技術思想は全くない。
上述したように簡便で細胞の分離効率の比較的高い細胞分離法として、フィルター法が挙げられる。ところが、これらのフィルター法では、血液を濾過する際、血液中のフィブリン塊や破壊した血球などの凝集塊によるフィルター材の細孔の閉塞により、濾過流速が低下して濾過時間が延長する、或いは完全に目詰まりを起こして処理操作が不能になるといった問題があった。この対策として、濾過面積を広げて単位断面積あたりの濾過量を低減させる方法が取られる。上記フィルター法に開示されているように、一般的に、濾過時は目的細胞の捕捉不足を防ぐために低流速で血液をフィルター装置に導入し、一方回収時はフィルター材に捕捉された目的細胞を回収液の剪断力を利用して洗い流すために高流速で回収液をフィルター装置に導入する。濾過面積を広げた場合、回収時に高流速で回収液を導入すると回収液は濾過部に均一に広がらず、回収液導入部付近を優先的に流れ、目的細胞の回収率を高められない。即ち、濾過流速の確保と目的細胞の高回収率を両立できないという問題があった。
また、フィルター法の内、特開平10−137557号公報や特開平11−206875号公報においては、目的細胞の回収率を向上させることを狙って、回収時に濾過時よりも多孔質体の孔径を大きくさせてフィルター装置に回収液を導入し、フィルター材に捕捉された目的細胞を回収しているが、回収時にフィルター装置の内容積が大きくなるため、実態としては回収率を高く維持するためにフィルター装置に導入する回収液量を増やさねばならず、所望する容積にするために遠心濃縮の作業が必要となる上、材料費のコストアップにつながる問題があった。さらに、これらの方法では、フィルター材を圧縮したり圧縮を解除したりしてフィルター材の厚みを調節して孔径を変化させているが、操作が煩雑で正確なコントロールも難しく、目的細胞の回収率が安定しない問題があった。
末梢血、骨髄、臍帯血の中の造血幹細胞を移植する際、そのほとんどの場合、前記フィルター法などによって血液から治療に必要な成分を分離した後、細胞は移植前まで凍結保存される。分離した細胞は、凍結容器に移す前に血液バッグなど一旦別の容器に移送され、洗浄されたり、遠心分離で液性成分を除去して濃縮されたり、凍害保護剤を加えられるなどの処理が施される。しかしながら、細胞を別の容器に移し変える際、細菌汚染の問題や容器内部に細胞濃厚液が付着、残留して細胞のロスを招く問題があった。この問題を解決する方法として、特開昭57−83284号公報では、培養細胞を凍結保存する際の移し変えによる細胞のロス、細菌汚染を防ぐ目的で、培養瓶で培養された培養細胞を移し変えた凍結容器内で遠心分離、凍害保護剤を注入する技術が開示されている。しかしながら、当公報による技術は密閉系でなく細菌汚染の問題が十分解決できない、また凍結容器内の空気を排出する工程がなく、凍結容器内に残留する空気によって凍結保存容積を小さくできないだけでなく、凍結解凍時に凍結容器破損の問題がある。
また、前述の国際公開第98/32840号パンフレットでは、フィルター装置で分離された目的細胞を移送の手間を省くために凍結バッグで受ける方法が開示されているが、凍結バッグごと遠心分離し、有核細胞を濃縮することすることは一切記載されていない。
以上のように、細胞浮遊液から目的細胞を分離、濃縮する既存の技術には、改良すべき多くの課題が残されている。簡便な操作で、有核細胞と不要細胞を効率的に分離して凍結保存容積を削減する方法の確立が望まれている。
本発明の課題は、有核細胞と不要細胞とを含む細胞含有液をフィルター装置で濾過した後、フィルター装置に回収液を導入してフィルター材に捕捉されている有核細胞を回収する際、簡便な操作で細胞含有液から有核細胞と不要細胞を効率的に分離することにより、有核細胞を含む凍結保存用溶液の容積を少なくできる、細胞濃縮物の調製方法および細胞組成物を提供することにある。また、本発明の別の課題は、有核細胞と不要細胞を含む細胞含有液をフィルター装置で濾過した後、フィルター装置に回収液を導入してフィルター材に捕捉されている有核細胞を回収する際、血液中の凝集塊による濾過流速の低下を抑制しながら、有核細胞を高率に回収し、しかも、より少ない液量で目的の有核細胞を簡便に回収することができる細胞濃縮物の調製方法および細胞組成物を提供することにある。さらに、本発明の別の課題は、有核細胞と不要細胞とを含む細胞含有液から有核細胞を分離、濃縮、凍結保存する際、有核細胞のロス、細菌汚染、凍結容器破損のリスクを低減しながら凍結保存容積を削減できる細胞の凍結保存方法および細胞凍結物を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、少なくとも有核細胞と不要細胞とを含む細胞含有液をフィルター装置で濾過して有核細胞をフィルター材に捕捉し、不要細胞はフィルター装置から排出させた後、回収液をフィルター装置に導入してフィルター材に捕捉されている有核細胞を回収する方法において、細胞含有液をフィルター装置で濾過する前に有核細胞に富む層と不要細胞に富む層に層分離した後、不要細胞に富む層、有核細胞に富む層をこの順に濾過すると、有核細胞をフィルター材に捕捉しながらフィルター装置内に残存する不要細胞をフィルター装置から排出できるため、有核細胞の高回収と不要細胞の高除去を同時に達成でき、簡便な操作で細胞含有液を極めて小さな容積にできることを見出し、本発明を完成させるに至った。
また、本発明者らは、目的細胞を分離回収する方法において、回収液整流化材を有核細胞捕捉材に対して特定の配列となるように併用し、かつ、フィルター材の有効濾過膜面積と充填厚みが特定の比率にある比較的扁平なフィルター材を用いると、濾過時の流速確保と回収液の均一流れによる有核細胞の高回収という課題を両立できることを見出し、本発明を完成するに至った。
さらに本発明者らは、有核細胞と不要細胞を含む細胞含有液から有核細胞を分離、貯留、遠心濃縮、密封および凍結保存する一連の作業において、有核細胞を分離する以外の工程を密閉系の同一容器内で行い、少なくとも貯留から凍結保存までの工程を密閉系で行うことにより、有核細胞のロス、細菌汚染のリスクを低減でき、また空気を含まない状態で密封することにより、凍結保存容積を削減可能なだけでなく、凍結容器破損のリスクを低減できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明によれば以下の発明が提供される。
(1) 有核細胞と不要細胞とを含む細胞含有液を、有核細胞を実質的に捕捉し不要細胞は実質的に通過するフィルター材を含んでなるフィルター装置に導入して有核細胞を該フィルター材に捕捉し不要細胞を排出させた後、該フィルター装置に回収液を導入して該フィルター材に捕捉されている有核細胞を回収する細胞濃縮物の調製方法において、有核細胞と不要細胞とを含む細胞含有液を有核細胞に富む層と不要細胞に富む層に層分離した後、上記フィルター装置に先ず該不要細胞に富む層を導入し、続いて該有核細胞に富む層を導入して有核細胞を該フィルター材に捕捉しながら該フィルター装置内に残存する不要細胞を排出させた後、該フィルター装置に回収液を導入して該フィルター材に捕捉されている有核細胞を回収することを特徴とする細胞濃縮物の調製方法。
(2) 不要細胞を重力または遠心力によって沈降させることによって、少なくとも有核細胞と不要細胞とを含む細胞含有液を有核細胞に富む層と不要細胞に富む層に層分離する(1)記載の細胞濃縮物の調製方法。
(3) 不要細胞を凝集させた後に不要細胞を重力または遠心力によって沈降させることによって、少なくとも有核細胞と不要細胞とを含む細胞含有液を有核細胞に富む層と不要細胞に富む層に層分離する(1)記載の細胞濃縮物の調製方法。
(4) 前記不要細胞が赤血球である(1)乃至(3)の何れかに記載の細胞濃縮物の調製方法。
(5) 前記有核細胞が造血幹細胞である(1)乃至(4)の何れかに記載の細胞濃縮物の調製方法。
(6) 有核細胞と不要細胞とを含む細胞含有液にヒドロキシエチルスターチを添加することによって不要細胞を凝集させる(3)記載の細胞濃縮物の調製方法。
(7) 前記有核細胞に富む層が有核細胞濃厚層と有核細胞希薄層からなり、フィルター装置に有核細胞希薄層、有核細胞濃厚層の順で導入する(1)乃至(6)の何れかに記載の細胞濃縮物の調製方法。
(8) 前記有核細胞に富む層が有核細胞濃厚層と有核細胞希薄層からなり、フィルター装置に有核細胞濃厚層、有核細胞希薄層の順で導入する(1)乃至(5)の何れかに記載の細胞濃縮物の調製方法。
(9) 前記有核細胞希薄層の一部または全部を回収液の少なくとも一部として用いる(8)記載の細胞濃縮物の調製方法。
(10) 前記フィルター装置に回収液を導入して該フィルター材に捕捉されている有核細胞を回収した後に、更に回収した有核細胞含有液を遠心分離し、上清を除くことにより有核細胞を濃縮する(1)乃至(9)の何れかに記載の細胞濃縮物の調製方法。
(11) 前記フィルター材が、少なくとも細胞含有液の入口と出口を有する容器内に多孔質体からなる有核細胞捕捉材および回収液整流化材が細胞含有液の入口側から出口側に向かってこの順に充填され、該フィルター材の有効濾過面積を充填時の有核細胞捕捉材の厚みで除した値が15〜120cmであることを特徴とする(1)乃至(10)の何れかに記載の細胞濃縮物の調製方法。
(12) 有核細胞と不要細胞とを含む細胞含有液を、有核細胞を実質的に捕捉し不要細胞は実質的に通過するフィルター材を含んでなるフィルター装置に導入して有核細胞を該フィルター材に捕捉し不要細胞を排出させた後、該フィルター装置に回収液を導入して該フィルター材に捕捉されている有核細胞を回収する細胞濃縮物の調製方法において、多孔質体からなる有核細胞捕捉材および回収液整流化材が積層されてなるフィルター材であって、且つ該フィルター材の有効濾過面積を充填時の有核細胞捕捉材の厚みで除した値が15〜120cmであるフィルター材が、有核細胞捕捉材が細胞含有液の入り口側になるように細胞含有液の入口と出口を有する容器に充填されてなるフィルター装置を用い、細胞含有液の入口から細胞含有液をフィルター装置に導入して有核細胞をフィルター材に捕捉させ、不要細胞を該フィルター装置から排出させた後、細胞含有液の出口側から回収液を導入して該フィルター材に捕捉されている有核細胞を細胞含有液の入口側から回収することを特徴とする細胞濃縮物の調製方法。
(13) 前記有核細胞捕捉材の細胞含有液入口側に更に凝集塊捕捉材が充填されている(11)または(12)記載の細胞濃縮物の調製方法。
(14) フィルター材が不織布である(11)乃至(13)の何れかに記載の細胞濃縮物の調製方法。
(15) 不織布からなる有核細胞捕捉材および回収液整流化材が、夫々、
ア)平均繊維径が1.1〜3.0μm、充填密度が0.1〜0.3g/cm3である不織布からなる有核細胞捕捉材、
イ)平均繊維径が0.5〜1.5μm、充填密度が0.1〜0.3g/cm3である不織布からなる回収液整流化材、
であり、有核細胞捕捉材、回収液整流化材の順番に平均繊維径が細くなることを特徴とする(14)記載の細胞濃縮物の調製方法。
(16) フィルター材がスポンジ状構造体である(11)乃至(13)の何れかに記載の細胞濃縮物の調製方法。
(17) スポンジ状構造体からなる有核細胞捕捉材および回収液整流化材が、夫々、
ア)充填時の平均孔径が7〜25μm、充填時の空隙率が55〜90%であるスポンジ状構造体からなる有核細胞捕捉材、
イ)充填時の平均孔径が2〜10μm、充填時の空隙率が55〜90%であるスポンジ状構造体からなる回収液整流化材、
であり、有核細胞捕捉材、回収液整流化材の順番に平均孔径が小さくなることを特徴とする(16)記載の細胞濃縮物の調製方法。
(18) フィルター材が不織布とスポンジ状構造体との組み合せである(11)乃至(13)の何れかに記載の細胞濃縮物の調製方法。
(19) (1)乃至(18)の何れかに記載の細胞濃縮物の調製方法の後に、さらに以下の工程を設ける細胞の凍結保存方法:
(b)回収された有核細胞を、貯留部に設けた有核細胞導入口を介して、該貯留部と凍結保存部を有する貯留バッグに移行させ貯留する細胞貯留工程、
(c)貯留された有核細胞を、前記貯留バッグ内で、凍結保存部を回転半径上の回転軸から遠い位置に配置させて遠心分離することにより有核細胞を貯留バッグ内の凍結保存部に移動させる細胞濃縮工程、
(d)濃縮された有核細胞を、空気を含まない状態で凍結保存部に密封し溶断分離する容器分離工程、および
(e)有核細胞が密封された凍結保存部を凍結し保存する凍結保存工程;
を順番に行い、且つ前記(b)〜(e)の全工程を密閉系で行う。
(20) 以下(a)〜(e)を少なくとも含む工程:
(a)有核細胞と不要細胞とを含む細胞含有液を、有核細胞を実質的に捕捉し不要細胞は実質的に通過するフィルター材を含んでなるフィルター装置に導入して有核細胞を該フィルター材に捕捉し不要細胞を排出させた後、該フィルター装置に回収液を導入して該フィルター材に捕捉されている有核細胞を回収する細胞濃縮物の調製工程、
(b)回収された有核細胞を、貯留部に設けた有核細胞導入口を介して、該貯留部と凍結保存部を有する貯留バッグに移行させ貯留する細胞貯留工程、
(c)貯留された有核細胞を、前記貯留バッグ内で、凍結保存部を回転半径上の回転軸から遠い位置に配置させて遠心分離することにより有核細胞を貯留バッグ内の凍結保存部に移動させる細胞濃縮工程、
(d)濃縮された有核細胞を、空気を含まない状態で凍結保存部に密封し溶断分離する容器分離工程、
(e)有核細胞が密封された凍結保存部を凍結し保存する凍結保存工程、
を順番に行い、且つ前記(b)〜(e)の工程を密閉系で行う細胞の凍結保存方法。
(21) 前記有核細胞の貯留部が、凍結保存部から狭窄部を介して徐々に断面積を広める拡大部を有する形状である(19)または(20)記載の細胞の凍結保存方法。
(22) 前記有核細胞の貯留部は、狭窄部が前記(d)の容器分離工程において溶断分離部として用いられ、凍結保存部が前記(e)の凍結保存工程において有核細胞の凍結保存用容器として用いられるものである(19)乃至(21)の何れかに記載の細胞の凍結保存方法。
(23) 前記有核細胞の凍結保存部が有核細胞の取出し口を有する(19)乃至(22)の何れかに記載の細胞の凍結保存方法。
(24) 前記有核細胞の凍結保存部または/および前記有核細胞の貯留部が凍害保護剤導入部を有する(19)乃至(23)の何れかに記載の細胞の凍結保存方法。
(25) 前記有核細胞の貯留部が有核細胞の貯留バッグ内のエア排出用フィルター装置を有する(19)乃至(24)の何れかに記載の細胞の凍結保存方法。
(26) 前記有核細胞の貯留部が有核細胞の貯留バッグ内のエア排出用導管を有核細胞の導管とは独立して有する(19)乃至(25)の何れかに記載の細胞の凍結保存方法。
(27) 前記(d)の容器分離工程の前に、前記凍害保護剤導入部から凍害保護剤を添加する(19)乃至(26)の何れかに記載の細胞の凍結保存方法。
(28) 前記(d)の容器分離工程の後に、前記凍害保護剤導入部から凍害保護剤を添加する(19)乃至(27)の何れかに記載の細胞の凍結保存方法。
(29) (19)乃至(28)の何れかの方法を用いる細胞凍結物の製造方法。
(30) (1)乃至(18)の何れかの方法によって得られる細胞組成物。
(31) 前記細胞組成物を更に遠心分離し、上清を除くことにより有核細胞を濃縮して得られる(30)記載の細胞組成物。
(32) 前記不要細胞が赤血球である(30)または(31)記載の細胞組成物。
(33) 前記有核細胞が造血幹細胞である(30)または(31)記載の細胞組成物。
(34) (19)乃至(28)の何れかの方法によって調製される細胞凍結物。
本発明の細胞濃縮物の調製方法によれば、簡便な操作で細胞含有液から有核細胞と不要細胞を効率的に分離できるため、凍結保存容積を大幅に削減できる。また、本発明により、細胞含有液の濾過流速の低下を抑制しながら、細胞含有液から有核細胞を安定して高率に回収し、しかも、より少ない液量で簡便に目的細胞を回収することができる。さらに、本発明により、有核細胞と不要細胞を含む細胞含有液から有核細胞を分離、貯留、遠心濃縮、密封および凍結保存する一連の作業において、有核細胞を分離する工程以外の工程を同一容器内で行い、少なくとも貯留から凍結保存までの工程を密閉系で行うため、有核細胞のロス、細菌汚染のリスクを低減しながら凍結保存容積を削減できる。さらにまた、有核細胞を凍結容器に空気を含まない状態で密封するため、凍結保存容積を削減可能なだけでなく、凍結容器破損のリスクを低減できる。
本発明で言う有核細胞と不要細胞とを含む細胞含有液とは、骨髄、末梢血、G−CSFなどの造血因子投与による動員末梢血、臍帯血、あるいはこれらを遠心分離等により粗分離したもの、生理食塩水、細胞培養用培地、緩衝液、抗凝固剤などで希釈したものなどが挙げられる。
有核細胞の例としては、白血球、単核球、リンパ球、単球、マクロファージ、樹状細胞、顆粒球、造血幹細胞、間葉系幹細胞、血管内皮前駆細胞、有核赤血球など、細胞治療、診断等に有用で分離回収を必要とする細胞が挙げられる。
一方、不要細胞の例としては、赤血球、血小板、顆粒球など、回収を必要とする細胞と混在していると凍結解凍時の破壊細胞によるレシピエントへの副作用や回収を必要とする細胞の低回収等の悪影響を持つ細胞が挙げられる。
本発明における有核細胞と不要細胞の組み合わせの例としては、有核細胞が単核球で、不要細胞が赤血球のケースが挙げられる。この場合、単核球はフィルター材に捕捉され、一方で赤血球は通過する。その後、回収液にてフィルター材に捕捉された単核球が回収される。
本発明で言う「有核細胞に富む層」とは、層分離する前の細胞含有液中の有核細胞の50%以上、好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上が含まれる層のことを言う。有核細胞の割合が50%を下回った場合、濾過の前半に有核細胞がフィルター材に捕捉され、その後は捕捉された有核細胞を洗い続けることになり、有核細胞の回収率の低下を招くため好ましくない。
また、本発明で言う「不要細胞に富む層」とは、層分離する前の細胞含有液中の不要細胞の60%以上、好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上が含まれる層のことを言う。不要細胞の割合が60%を下回った場合、後から濾過される有核細胞に富む層に不要細胞が多く混入して、フィルター装置内に不要細胞が多く残存することになるため、フィルター材に捕捉された有核細胞を回収した際、多くの不要細胞が混入してくるので、有核細胞浮遊液の体積を減らすことが難しくなる。
本発明による細胞濃縮物の調製方法を例示すると、図1に示したシステムを用いる方法が挙げられる。11、12、13は血液導管、21、22、23はクランプ、31、32はT字管、40は有核細胞を実質的に捕捉し不要細胞は実質的に通過するフィルター材(図示せず)を含んでなる細胞分離フィルター装置、50は細胞分離フィルター装置40のフィルター材に捕捉された有核細胞を回収する回収バッグ、60は回収液注入口、70は細胞分離フィルター装置から排出された不要細胞を貯留するドレインバッグである。まず、細胞含有液を貯留した血液バッグを血液導管11と接続し、細胞含有液を遠心などの方法により有核細胞と不要細胞に層分離する。次にクランプ21と23を開け、細胞分離フィルター装置40に先ず不要細胞に富む層を導入し、続いて有核細胞に富む層を導入する。本発明によって有核細胞と不要細胞が効率的に分離できるのは、不要細胞に富む層、有核細胞に富む層をこの順に濾過することにより、有核細胞を細胞分離フィルター装置40のフィルター材に捕捉しながら細胞分離フィルター装置40の内部に残存する不要細胞をフィルター装置から排出できるためである。例えば、細胞含有液を層分離した後に有核細胞に富む層だけを取り出して細胞分離フィルター装置40で濾過した場合、移し変えによる細胞ロス、界面の乱れによる不要細胞の混入の問題があり有核細胞の高回収と不要細胞の高除去を同時に達成できない。また、層分離せずに細胞分離フィルター装置40で濾過した場合、細胞分離フィルター装置40内部に不要細胞が多く残留し、不要細胞の除去率を十分高められない。即ち、細胞の分離効率を高めるためには、細胞含有液を有核細胞に富む層と不要細胞に富む層に層分離し、先ず不要細胞に富む層から、続いて有核細胞に富む層を細胞分離フィルター装置40に導入することが好ましい。有核細胞に富む層と不要細胞に富む層を細胞分離フィルター装置40に導入する方法は特に限定はないが、落差、ポンプ、あるいはバッグを押しつぶして導入する方法が挙げられる。この際、血液バッグは、不要細胞に富む層では出口に向かって傾斜していると先に導入する不要細胞が残留しにくいため好ましい。濾過された細胞含有液はドレインバッグ7に貯留する。血液バッグ内の全ての細胞含有液が細胞分離フィルター装置40に導入された後、クランプ21、23を閉じる。次に、クランプ22を開けて回収液注入口60から回収液を細胞分離フィルター装置40に導入し、回収バッグ50に有核細胞を回収する。
本発明で行う「少なくとも有核細胞と不要細胞を含む細胞浮遊液を有核細胞に富む層と不要細胞に富む層に層分離する」方法としては、細胞含有液の貯留部で両層を形成できる方法であればいかなる方法でもよいが、重力を利用した自然落下法(静置沈殿法、ともいうべきか)、または遠心法が比較的簡便で好ましい。また、細胞含有液の貯留部の形状としては、血液バッグ、遠心管などが挙げられるが、フィルター装置への導入の容易さから血液バッグが好ましい。
また、この層分離の前に不要細胞を凝集させると層分離の時間短縮だけでなく、有核細胞と不要細胞の分離効率を更に高められるためより好ましい。但し、凝集したものがフィルター材を通過しないと細胞の分離効率が大きく低下するだけでなく、フィルター材の目詰まりを誘発する恐れもあるため、フィルター材の孔径より小さいか、あるいはフィルター材の小孔をすり抜けられる性質のものであることが好ましい。不要細胞が赤血球の場合、ヒドロキシエチルスターチ、デキストランなどで赤血球を凝集させる方法を用いることができる。陰性荷電の赤血球表面にこれら高分子溶液が付着すると血球間の反発力が減弱して赤血球は重なり合い、銭を連ねた状態(連銭形成と呼ばれる)になり、沈降を促進する。しかしながら、赤血球同士の結合は弱く、物理的衝撃により容易に凝集は分解するため、本発明のように凝集、沈降させた後に濾過する場合に好ましい。
本発明で言う有核細胞濃厚層および有核細胞希薄層とは、有核細胞に富む層に含まれる有核細胞の70%以上、好ましくは80%以上が有核細胞濃厚層に、残りが有核細胞希薄層に含まれていることをいう。例えば、血液中の白血球を有核細胞、赤血球を不要細胞とした場合、血液を3000G以上の強い遠心力で遠心すると、上層の血漿層(有核細胞希薄層)、中間層の白血球に富むバフィーコート層(有核細胞濃厚層)、下層の赤血球層(不要細胞に富む層)の三層に分離される。この場合、上層(有核細胞希薄層)の血漿の一部または全部を回収液の少なくとも一部として用いることができる。また、例えば、血液にヒドロキシエチルスターチを添加して静置しておくと、上層の白血球濃厚層(有核細胞濃厚層)、中間層の白血球希薄層(有核細胞希薄層)、下層の赤血球層(不要細胞に富む層)の三層に分離される。この場合、赤血球層、白血球希薄層、白血球濃厚層の順にフィルター装置に導入されるので、濾過の後半に高濃度の白血球がフィルター装置に導入される。そして、フィルター材の上流により多くの白血球が捕捉されるため、最も回収が容易となる状態であり好ましい。なお、血液に対するヒドロキシエチルスターチ添加量としては、例えばヒドロキシエチルスターチの平均分子量が40万で10%生理食塩水溶液の場合、血液1に対して、1/3〜1/10量が好ましく、また静置する時間としては10分以上80分以下、好ましくは20分以上50分以下が好ましい。ヒドロキシエチルスターチ添加量が1/10未満、静置する時間が10分未満の場合、赤血球の連銭形成が不十分で層分離が不十分となり好ましくない。一方、ヒドロキシエチルスターチ添加量が1/3より多く、静置する時間が80分より長い場合、層分離が急速に進み、白血球も沈降してくる。その場合、白血球は濾過の前半から中盤にかけてフィルター装置に導入され、フィルター材の下層に潜り込みやすくなるため、回収が難しくなるため好ましくない。
本発明で言うフィルター材とは、有核細胞を実質的に捕捉し、不要細胞は実質的に通過する多孔質のフィルター材を言う。本発明で言う「有核細胞を実質的に捕捉」とは、細胞含有液中の有核細胞の60%以上(より好ましくは70%以上)をフィルター材に捕捉することを言う。また、本発明で言う「不要細胞は実質的に通過」とは、細胞含有液中の不要細胞の60%以上(より好ましくは70%以上)がフィルター材を通過することを言う。
本発明に用いるフィルター材は、水不溶性であればいかなる材質でも使用可能であるが、成形性、滅菌性に優れ、細胞毒性が低いという点で好ましいものを例示すると、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、ナイロン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリルアミド、ポリウレタン等の合成高分子、アガロース、セルロース、酢酸セルロース、キチン、キトサン、アルギン酸塩等の天然高分子、ハイドロキシアパタイト、ガラス、アルミナ、チタニア等の無機材料、ステンレス、チタン等の金属があげられる。
フィルター材の形状としては、粒状、繊維塊、織布、不織布、平板、スポンジ状構造体等があげられるが、体積あたりの表面積が大きいという点で不織布、スポンジ状構造体が好ましい。
フィルター材が不織布の場合、平均繊維径は1.0μm以上30μm以下であり、好ましくは1.0μm以上20μm以下であり、さらにより好ましくは1.5μm以上10μm以下である。1.0μm未満では有核細胞が強固に捕捉されてしまい回収困難となる可能性があるだけでなく、不要細胞の通過、特に凝集させた場合の通過を困難にする。また、30μmを超えると有核細胞が繊維に捕捉されず素通りする可能性が高くなる。いずれの場合も回収率の低下につながるおそれがあるので好ましくない。
また、スポンジ状構造体を用いる場合、平均孔径は通常2.0μm以上25μm以下であり、好ましくは3.0μm以上20μm以下であり、さらにより好ましくは4.0μm以上15μm以下である。2.0μm未満では流れ性が劣り、不要細胞の通過、特に凝集させた場合の通過を困難にするだけでなく、通液自体が困難になるおそれがある。また25μmを超えると有核細胞の捕捉率が低下し、回収率の低下を招くので好ましくない。
本発明に用いるフィルター材は、有核細胞捕捉材に回収液整流化材が積層されたものが好ましく、フィルター装置の細胞含有液の入口側から出口側に向かってこの順に充填されているフィルター材が、細胞含有液の濾過流速の低下を抑制しながら、細胞含有液から有核細胞を安定して高率に回収可能である。
本発明で言う有核細胞捕捉材とは、細胞含有液中の有核細胞を捕捉し、不要細胞は通過させる機能を有する多孔質のフィルター材を言う。有核細胞捕捉材が不織布の場合、平均繊維径が1.1〜3.0μm、充填密度が0.1〜0.3g/cm3であることが好ましい。平均繊維径が1.1μmを下回り充填密度が0.3g/cm3を上回る場合、有核細胞が有核細胞捕捉材の上流付近だけで捕捉され、細孔を短時間で閉塞するため、濾過流速が遅くなり、また有核細胞の剥離効率が低下して回収率の低下を招くため好ましくない。一方、平均繊維径が3.0μmを上回り充填密度が0.1g/cm3を下回る場合、有核細胞を十分捕捉できず、濾過時下流に配置された回収液整流化材に到達して細孔を閉塞するため、濾過流速が遅くなり、また有核細胞の剥離効率が低下して回収率の低下を招くため好ましくない。
また、有核細胞捕捉材がスポンジ状構造の場合、充填時の平均孔径が7〜25μm、充填時の空隙率が55〜90%であることが好ましい。平均孔径が7μmを下回り充填時の空隙率が55%を下回る場合、有核細胞が有核細胞捕捉材の上流付近だけで捕捉され、細孔を短時間で閉塞するため、濾過流速が遅くなり、また有核細胞の剥離効率が低下して回収率の低下を招くため好ましくない。一方、平均孔径が25μmを上回り充填時の空隙率が90%を上回る場合、有核細胞を十分捕捉できず、濾過時下流に配置された回収液整流化材に到達して細孔を閉塞するため、濾過時の細胞含有液の流速が遅くなり、また有核細胞の剥離効率が低下して回収率の低下を招くため好ましくない。
本発明で言う回収液整流化材とは、回収液をフィルター装置に導入する際、濾過抵抗により細胞含有液をフィルター装置の濾過部に均一に広がらせる機能を有する多孔質のフィルター材を言う。回収液整流化材が不織布の場合、平均繊維径が0.5〜1.5μm、充填密度が0.1〜0.3g/cm3であることが好ましい。平均繊維径が0.5μmを下回り充填密度が0.3g/cm3を上回る場合、濾過抵抗が大きくなり回収液の流速が低下するため捕捉された有核細胞の剥離率が低下し、回収率が低下するため好ましくない。一方、平均繊維径が1.5μmを上回り充填密度が0.1g/cm3を下回る場合、濾過抵抗が小さく回収液が均一に広がらないため有核細胞の回収率が低下するため好ましくない。
また、回収液整流化材がスポンジ状構造体の場合、充填時の平均孔径が2〜10μm、充填時の空隙率が55〜90%であることが好ましい。平均孔径が2μmを下回り充填時の空隙率が55%を下回る場合、濾過抵抗が大きくなり回収液の流速が低下するため捕捉された有核細胞の剥離率が低下し、回収率が低下するため好ましくない。一方、平均孔径が10μmを上回り充填時の空隙率が90%を上回る場合、濾過抵抗が小さく回収液が均一に広がらず有核細胞の回収率が低下するため好ましくない。
本発明においては、有核細胞捕捉材と回収液整流化材とを特定の方向に配置して併用することが特に重要であり、上記の有核細胞捕捉材と回収液整流化材が、フィルター装置の細胞含有液の入口側から出口側に向かってこの順に充填されていることが必要である。これにより、回収液の流れが均一となり、捕捉細胞の回収効率を高めることができる。
また、本発明においては、フィルター材として、前記二種の材の他に凝集塊捕捉材を加えることも好ましく、フィルター装置の細胞含有液のもっとも入口側に凝集塊捕捉材を充填して用いることができる。
本発明で言う凝集塊捕捉材とは、有核細胞捕捉材の細胞含有液入口側に充填され、細胞含有液中のフィブリン塊、血餅、活性化血小板や破壊した顆粒球などの細胞凝集物を捕捉し、濾過時の流速低下と有核細胞回収率低下を抑制する機能を有する多孔質のフィルター材を言う。凝集塊捕捉材としての多孔質体が不織布の場合、平均繊維径が5〜20μm、充填密度が0.1〜0.3g/cm3であることが好ましい。平均繊維径が5μmを下回り充填密度が0.3g/cm3を上回る場合、凝集塊だけでなく有核細胞や不要細胞も捕捉され、細孔を閉塞するため、濾過流速が遅くなり、また有核細胞は凝集塊に取り込まれて回収率の低下を招くため好ましくない。一方、平均繊維径が20μmを上回り充填密度が0.1g/cm3を下回る場合、凝集塊を十分捕捉できず、凝集塊が濾過時下流に配置された有核細胞捕捉材に到達して有核細胞捕捉材の細孔を閉塞するため、濾過流速が遅くなり、また有核細胞は凝集塊に取り込まれて回収率の低下を招くため好ましくない。
また、凝集塊捕捉材がスポンジ状構造体の場合、充填時の平均孔径が60〜150μm、充填時の空隙率が55〜90%であることが好ましい。平均孔径が60μmを下回り充填時の空隙率が55%を下回る場合、凝集塊だけでなく有核細胞や不要細胞も捕捉され、細孔を閉塞するため、濾過時の細胞含有液の流速が遅くなり、また有核細胞は凝集塊に取り込まれて回収率の低下を招くため好ましくない。一方、平均孔径が150μmを上回り充填時の空隙率が90%を上回る場合、凝集塊を十分捕捉できず、凝集塊が濾過時下流に配置された有核細胞捕捉材に到達して有核細胞捕捉材の細孔を閉塞するため、濾過流速が遅くなり、また有核細胞は凝集塊に取り込まれて回収率の低下を招くため好ましくない。
本発明における平均繊維径とは、以下の手順に従って求められる値をいう。即ちフィルター材を構成する、実質的に均一と認められるフィルター材(例えば、有核細胞捕捉材、回収液整流化材、凝集塊捕捉材)の一部をサンプリングし、走査型電子顕微鏡などを用いて、1000〜3000倍の倍率で写真に撮る。サンプリングに際しては、フィルター材の有効濾過断面積部分を、一辺が0.5〜1cmの正方形によって区分し、その中から3ヶ所以上、好ましくは5ヶ所以上をランダムサンプリングする。ランダムサンプリングするには、例えば上記各区分に番地を指定した後、乱数表を使うなどの方法で、必要箇所以上の区分を選べばよい。またサンプリングした各区分について、3ヶ所以上、好ましくは5ヶ所以上を写真に撮る。このようにして得た写真について、写っている全ての繊維の直径を測定する。ここで直径とは、繊維軸に対して直角方向の繊維の幅をいう。測定した全ての繊維の直径の和を、繊維の数で割った値を平均繊維径とする。但し、複数の繊維が重なり合っており、他の繊維の陰になってその幅が測定できない場合、また複数の繊維が溶融するなどして、太い繊維になっている場合、更に著しく直径の異なる繊維が混在している場合、等々の場合には、これらのデータは削除する。以上の方法により、500本以上、好ましくは1000本以上のデータにより平均繊維径を求める。
本発明における平均孔径とは、フィルター材表面から材の厚み方向に対して0.5mm以下の部分で血液の流れ方向に対しできるだけ垂直に切断したある厚みを持った検体を水銀圧入法(島津製作所、ポアサイザ9320)で測定し、水銀がフィルター材の細孔に全く入っていない状態を水銀圧入量0%、多孔質素子のすべての細孔に入っている状態を水銀圧入量100%とした時、水銀圧入量50%に当たる点が本発明でいう平均孔径である。尚、水銀ポロシメーターでの測定は1〜1000psiaの圧力範囲で測定する。非常に柔軟なためそのままでは水銀ポロシメーターで測定する際に変形を受け、細孔が検出できないようなフィルター材であっても、細孔が圧変形されないように固定化する等の予備調整を施すことにより上記測定が可能となるフィルター材も本発明に含まれる。
本発明においては、有核細胞捕捉材と回収液整流化材を特定方向に充填したフィルター装置を使用することが好ましいが、同時に、フィルター材の有効濾過面積を充填時の有核細胞捕捉材の厚みで除した値が15〜120cmであるフィルター材を用いることも好ましい。この値が120cmを超える場合、有核細胞捕捉材の厚みに対して有効濾過面積が広すぎて回収時に回収液が濾過部に均一に広がらず、有核細胞の回収率低下を招くため好ましくない。一方、この値が15cmを下回る場合、有効濾過面積が狭く有核細胞捕捉材が厚いため濾過時の流速低下を招く。また、回収液をフィルター装置に導入する際の抵抗が大きいため、回収液の流速が低下して有核細胞の回収率低下を招くため好ましくない。
また、これらのフィルター材はこのままでも用いられるが、必要に応じ、アミノ酸、ペプチド、糖タンパク(抗体、接着分子等のバイオリガンドを含む)といった、特定の細胞に親和性のあるリガンドを固定してもよい。さらに、フィルター材に血小板通過性を付与する場合、例えば特公平6−51060号公報で提案されているように、ヒドロキシエチルメタクリレートを主成分とする合成高分子等でフィルター材表面を改質してもよい。
また、フィルター装置の容器としては特に限定はないが、例えば、特公平2‐13588号公報に示される白血球除去フィルター装置の形状のような容器を用いることができる。また、これらにおいて細胞含有液の入口と出口以外に回収液の入口と出口を別に設けてもよい。
容器の材質としては、水不溶性で、成形性、滅菌性に優れ、細胞毒性が低いものが好ましい。さらに、濾過時に細胞含有液をフィルター装置に導入する場合や、回収時に回収液をフィルター装置に導入する場合に、フィルター装置内部に負荷される圧力によって実質的に膨張しない硬い材質が好ましい。濾過時にフィルター装置の容器が膨張すると回収液の流速が低下してフィルター材に捕捉された有核細胞を洗い流す剪断力が低下するため、また多くの回収液が残留して回収率が低下するため好ましくない。また、容器の溶着部の破損のおそれもある。好ましい材質としては、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等が挙げられるが、硬質かつ医療用途に適したものであればこれらに限定されない。
本発明で用いる回収液としては、有核細胞の損傷が少なく、且つ高率に回収可能なものが好ましい。 好ましいものを例示すると、市販の生理食塩液、PBS(リン酸緩衝液)やHBSS(ハンクス液)等の緩衝液、RPMI1640等の細胞培養用培地、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等の合成高分子溶液、メチルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシエチルスターチ、デキストラン、キチン誘導体、コラーゲン、フィブロネクチン、アルブミン、グロブリン等の天然高分子溶液、グルコース、サッカロース、マルトース、ソルビトール、グリセリン、ジメチルスルホキシド等の有機物溶液及びこれらの混合物が挙げられる。また、2価カチオンを除去して細胞剥離を容易にする目的でキレート剤が含有されていてもよい。デキストランやヒドロキシエチルスターチ等の高分子溶液は凍害保護剤としても機能するため、そのまま或いはDMSO等の凍害保護剤を更に添加することで凍結保存も可能である上、生食等に比し粘性を上げることができ、回収時の剪断力を向上できるため、我々の評価では好結果を得ており、回収液としてより好ましい。また、前述したように細胞含有液を層分離する際得られる有核細胞希薄層の一部または全部は、回収液の少なくとも一部として用いることができる。この場合、自己由来成分であるため有核細胞へのダメージがなく、またウィルス感染のリスクもないため好ましい。
本発明で行う回収方法としては、特に限定しないが、回収液の流速は剪断力を高め、有核細胞を高率で回収するためにできるだけ高速が好ましいが、内圧上昇によるフィルター装置とチューブ等の接続部のはずれや、有核細胞へのダメージを起こさない流速に制御することが好ましい。また、回収液をフィルター装置に導入する手段は、シリンジポンプ、ブラッドポンプ、ペリスタポンプ等の装置を用いるものや、簡便法としてシリンジを手で押す方法、液体を貯留したバッグを押しつぶして液流を惹起する方法、落差処理等が挙げられる。更に、有核細胞の回収率をより高めるために、フィルター装置に振動を加えるとか、ストップドフロー等を行ってもよい。回収液をフィルター装置に導入する方向は、細胞含有液を導入した方向と同方向または逆方向があるが、一般的に後者の方が細胞回収率が高いので好ましい。
本発明において、不要細胞をより多く除去するために濾過後にフィルター装置をリンスしてもよい。リンス液としては、有核細胞が漏洩しにくく、不要細胞が洗い流されるものが好ましい。例えば、市販の生理食塩液またはD−PBS(ダルベッコリン酸緩衝液)やHBSS(ハンクス液)等の緩衝液が挙げられ、それらにアルブミン等の蛋白質が含有されていてもよい。また、リンスする際の流速は特に限定しないが、有核細胞をフィルター材の上流側に留めておき、また細孔の奥への入り込みを防ぐために、できるだけ低速が好ましい。
また、フィルター装置に回収液を導入して有核細胞を回収後に、さらに回収した有核細胞含有液を遠心して上清を除くことにより、さらに有核細胞を濃縮できるので好ましい。
本発明は、前記細胞濃縮物の調製方法により得られた細胞組成物を凍結保存する工程もさらに含む。そして、前記調製方法により高い回収率で得られ、しかも赤血球容量が少ない単核球画分を効率よく凍結保存するためには、貯留バッグの形状や凍結保存工程にも工夫を凝らすことが好ましいので、それらについて以下に説明する。
先ず、本発明による細胞の凍結保存方法の一例を、図1に示したシステムを用いて細胞分離を行った場合について説明する。なお、この例においては、図1の50は凍結保存部を有する貯留バッグで、その貯留バッグは図2の凍結保存部120を有する貯留部100を用いている。
まず、クランプ21と22を閉じ、細胞含有液バッグと血液導管11を接続する。次に、クランプ21を開け、有核細胞を捕捉し不要細胞は通過させるフィルター材を組み込んだ細胞分離フィルター装置40に細胞含有液を導入し、不要細胞をフィルター装置から排出させる。このように細胞含有液バッグ内の全ての細胞含有液が細胞分離フィルター装置40に導入され、濾過した細胞含有液はドレインバッグ70に排出された後、クランプ21、23を閉じる。次に、クランプ22を開けて回収液注入口60から回収液を細胞分離フィルター装置40に導入し、フィルター材に捕捉されている有核細胞を回収しつつ、血液導管口に接続した貯留バッグ50の有核細胞導入口80を介して、貯留バッグ50に移行させ、貯留させる。貯留バッグ50に有核細胞が貯留される際、エア排出用フィルター装置90から貯留バッグ50内のエアを排出する。次に、貯留バッグ50の有核細胞導入口80をヒートシールして、貯留バッグ50を細胞分離システムから溶断分離する。このように切り離した貯留バッグ50を、凍結保存部120が遠心カップの底面に来るように固定して遠心分離する。遠心分離によって有核細胞を凍結保存部120に濃縮した後、溶断分離部110をヒートシーラーで溶断分離し、凍結保存部120を密閉状態で分離する。次に凍害保護剤導入部130から凍害保護剤を導入し、その後凍結保存部120を凍結保存する。
前記凍結保存方法に、凍結保存する際の細胞浮遊液中の不要細胞の混入量としては、凍結保存容積を小さくするためにもできるだけ少ない方が好ましい。具体的には、凍害保護液を加える直前の有核細胞濃縮液の容積に対する混入不要細胞の容積の比率は、65%以下が好ましく、45%以下がより好ましい。65%を超える場合、後述する容器分離工程において、有核細胞を遠心濃縮後、上清を除去する際の液面或いは有核細胞濃縮液を密封する際の溶断面近くまで有核細胞が接近し、有核細胞を失う可能性が高くなる。
本発明で言う「貯留バッグ」とは、凍結保存部と貯留部およびそれらを介する狭窄部からなり、さらに、前記貯留部には有核細胞の導入口が取り付けられていて、有核細胞が狭窄部を介して流通可能な形状を有する。貯留バッグの形状の一例を図2〜図4に示す。図2〜図4において、80は有核細胞導入口、90はエア排出フィルター装置、100は貯留部、110は狭窄部(溶断分離部)、120は凍結保存部、130は凍害保護剤導入部、140は有核細胞の取り出し口である。
本発明で言う「貯留部」は、可撓性の材質からなる有核細胞を貯留可能な部分である。有核細胞導入口80は、貯留バッグのいずれの位置に取り付けられていてもよいが、操作上の理由から貯留部100に付いていることが好ましい。
前記貯留バッグはその内部形状が重要である。すなわち、図示したように、凍結保存部120から狭窄部(溶断分離部)110を介して徐々に断面積を広める拡大部を有する形状(貯留部100の一部において断面積が変化する形状)であると、aの方向に遠心力を負荷した時に凍結保存部120を狭窄部110で溶断分離しやすく且つ貯留部100の有核細胞を効率的に凍結保存部120に導くために好ましい。ここで、徐々に断面積を広げる拡大部の角度(図2〜4のb)としては、20度以上150度以下が好ましく、45度以上120度以下がより好ましい。20度未満の場合、貯留部100が長方形の長辺方向が長くなり、遠心分離時に貯留バッグが遠心カップに入らないなど取扱性が悪くなる。一方、150度より大きい場合、有核細胞が拡大部に蓄積して凍結保存部120に十分導くことができず細胞のロスを招く。また、貯留部100および凍結保存部120は分離された有核細胞液が貯留されない状態でも空間を確保するように立体成型されていてもよい。
本発明で言う「凍結保存部」とは、耐低温性を有する可撓性の性質で、細胞含有液から分離された有核細胞を貯留部と共に一旦貯留し、その後、遠心分離で濃縮された有核細胞を収容可能な部分である。耐低温性を有する材質としては、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、パーフルオロエチレンプロピレン(FEP)などのフッ素樹脂、ポリイミド等が挙げられるが、これらに限定するものではない。
本発明で言う「貯留された有核細胞を貯留バッグ内で、凍結保存部を回転半径上の回転軸から遠い位置に配置させて遠心分離する細胞濃縮工程」とは、貯留バッグに移行された有核細胞を、凍結保存部120に濃縮させるために強い遠心力が負荷されるよう、有核細胞が貯留された貯留バッグを固定して遠心分離することである。具体的には遠心時に遠心カップの底面側に凍結保存部120を配向し、固定して遠心分離することである。
本発明で言う「濃縮された有核細胞を、空気を含まない状態で凍結保存部に密封し溶断分離する容器分離工程」とは、凍結保存部120の空気を貯留部100側に追い出しながら、凍結保存部内に沈降した有核細胞を凍結保存部外部に漏出しないようにヒートシーラーで凍結容器材質の融点以上の熱を与えて有核細胞を封じ込めた後、ハサミやカッターなどを用いて凍結保存部120を貯留部100から切り離すことを言う。凍結保存部120内の空気を追い出す方法としては、貯留部100と凍結保存部120を介する狭窄部110を上に向けて凍結保存部120の空気がある部分を指でつまむまたは指ではじいて貯留部100側へ追いやる方法が挙げられる。更に、上清を抜かずにそのまま細孔部でヒートシールを行うと空気が入りにくく、また凍結保存部120内の液の動きが抑えられて有核細胞がロスしにくいため好ましい。
本発明で言う「有核細胞の取り出し口」とは、凍結保存部120の内部と外部空間とを連通可能な耐低温性の流通部であり、凍結保存部120を解凍処理後、内部の有核細胞を取り出す機能を有しているものを言う。例えば、ルアアダプターにスクリューキャップで閉じられたもの、ラバー栓などがあるが、これらに限定されるものではない。
本発明で言う「凍害保護剤導入部」とは、凍結保存部120の内部と外部空間とを連通可能な耐低温性の流通部であり、貯留部100または凍結保存部120に凍害保護剤を導入可能な機能を有しているものを言う。例えば、ルアアダプターにスクリューキャップで閉じられたもの、ラバー栓などがあるが、これらに限定されるものではない。また、この凍害保護剤導入部は凍害保護剤を貯留部100または凍結保存部120に導入後はヒートシーラー等で溶断分離して切り離すと、凍結保存部120から突起物をなくすことができ破損のリスクを低減できる。
凍害保護剤はジメチルスルホキシド(DMSO)、グリセリン、デキストラン、ヒドロキシエチルスターチ(HES)、ポリビニルピロリドン(PVP)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。更に凍害保護剤を貯留部または凍結保存部に導入するタイミングとしては、容器分離工程の前後が導入量を少なくできるため好ましい。一般によく使用されるジメチルスルホキシドは常温では毒性を有するため、細胞濃縮工程より前の場合、凍害保護剤との接触時間が長くなり、細胞にダメージを与えるため特に好ましくない。
本発明で言う「エア排出用フィルター装置」とは、貯留部100に具備され、貯留部100内のエアを貯留部100外へ排出する部分であり、内部のエアは外部に排出できるが外部からの汚染物の侵入を阻止する機能を有する。貯留バッグにおいて、分離された有核細胞を貯留部100に移行する際、貯留部100内は有核細胞液だけでなく元々貯留部100に存在していたエアや有核細胞の移行時に伴ってきたエアが存在することになり、貯留部100および凍結保存部120が膨れて破裂の危険性がある。そのため、エア排出用フィルター装置を貯留部100に具備することにより、破裂を防止できるため好ましい。フィルター材が除菌作用を有する多孔質膜は貯留部100内に細菌の流入を防止でき好ましい。この多孔質膜は、通気が容易でバクテリアやウィルスの流入を防止可能な孔径を有するもので、0.1〜0.6μmの孔径が好ましい。また、万一細胞含有液に接触しても湿らず通気が可能な疎水性のものが好ましい。また、同じ目的で貯留部100に「エア排出用導管」を有核細胞の導管とは別に設けてもよい。この導管は閉鎖系で貯留部100内のエアを血液バッグや細胞分離する工程で使用したシステムと連結して、排出することができる。
本発明で言う「有核細胞が密封された凍結保存部を凍結し保存する凍結保存工程」とは、細胞の凍結保存方法として一般に行われている方法であれば特に限定はないが、落下などの衝撃による破損を防ぐため、凍結保存部120は金属製のキャニスターに入れて保護した方が好ましく、細胞へのダメージを低減するために液体窒素保存前にプログラムフリーザーで凍結保存した方が好ましい。液体窒素での凍結保存は気相または液相のどちらで行ってもよい。
本発明による細胞の凍結保存方法においては、細胞浮遊液から有核細胞を分離した後の凍結保存するまでの処理を同一容器内で密閉系で行うことが好ましい。本発明でいう「密閉系」とは、有核細胞のロス、細菌汚染のリスクを低減できるように、外界に対して閉鎖されている系であれば任意の構成をとることができ、好ましくは、工程(b)〜(e)の間に、有核細胞が外界の空気と接触しないような構成を採用することができる。さらに好ましくは、例えばフィルター法による細胞分離システムと凍結保存容器をつないでおけば、細胞分離から凍結保存までの全工程を密閉系で行え、細菌汚染のリスクが格段に低くなる。
以下に実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
以下の実施例1〜2及び比較例1〜4は臍帯血から単核球を分離、濃縮し、最終容積を4cm3にする方法について例示する。この場合の不要細胞は赤血球である。
〔実施例1〕赤血球凝集剤で臍帯血を層分離したものを濾過する方法
(1)細胞分離フィルター装置の作製
上容器と下容器からなり、組み立てた後の内寸が縦43mm、横43mm、高さ2.9mm(有効濾過断面積18.5cm2、内容積7cm3)で液体流出口と液体流入口を最長対角線上にもつポリカーボネート製容器の入口側から、第1層目に凝集塊捕捉材として平均繊維径12μmのポリエステル不織布0.14gを、第2層目に有核細胞捕捉材として1.7μmのポリエステル不織布1.28gを、第3層目に回収液整流化材として平均繊維径1.1μmのポリエステル不織布0.19gからなるフィルター材を充填した。尚、第1層目、第2層目および第3層目の充填密度はそれぞれ0.20g/cm3、 0.24g/cm3および0.20g/cm3であった。また、該フィルター材に血小板通過性を付与する目的で、親水性ポリマーのコーティングを行った。即ち、ヒドロキシエチルメタクリレート・ジメチルアミノエチルメタクリレート共重合体(モル比で97:3)の1%エタノール溶液を該細胞分離フィルター装置の液体流入口から通液し、窒素ガスで余分なポリマー溶液をパージした後、60℃で8時間以上真空乾燥機で乾燥させた。
(2)細胞分離システム
図1の細胞分離システムを使用した。
(3)細胞濃縮操作
事前にクランプ21、22を閉じておいた。200cm3血液バッグに貯留されたCPD加ヒト臍帯血100cm3(ヘマトクリット値27.8%)に、6%ヒドロキシエチルスターチ(菱山製薬「HES40(赤血球沈降剤)」)を20cm3添加して、10分間混和した。次に、血液バッグと血液導管11を接続し、血液バッグを吊り下げ、1時間静置した。血液バッグ内の赤血球が沈降し、上層の白血球層と下層の赤血球層の界面が明確になったことを確認後、クランプ21を開け、落差により濾過を開始した。この時、下層の赤血球層から細胞分離フィルター装置40に流れ、続いて上層の白血球層が流れていき、細胞分離フィルター装置40内に残留する赤血球が洗い流される様子が観察された。濾過された血液はドレインバッグ70に貯留した。血液バッグ内の全ての血液が細胞分離フィルター装置40に導入されたことを確認後、クランプ21、23を閉じた。次に、10%デキストラン生理食塩水溶液(小林製薬「デキストラン40注」)にヒト血清アルブミンを最終濃度3%になるように添加した液体19cm3とエア18cm3をシリンジに充填した。次に、クランプ22を開けて回収液注入口60から、液体、気体の順に手動で通液し、回収バッグ50に単核球を回収した(回収単核球液1)。この場合の回収された細胞液量は23cm3、ヘマトクリット値は3.5%、回収に要した時間は2秒(流速570cm3/分)であった。更にこの後、回収された単核球をコニカルチューブに移し、400G×15分の遠心条件で遠心分離した。最終容積が4cm3になるように上清を除去した後、転倒混和して沈さをほぐした(回収単核球液2)。
(4)分析
本細胞濃縮操作での細胞数のカウントは多項目自動血球分析装置(シスメックス社SF3000)を用いて測定し、回収単核球液1の赤血球容積、単核球回収率1、単核球回収率2を以下の計算式にて算出した。
赤血球容積(cm3)=回収単核球液1のヘマトクリット値×回収単核球液1の液量÷100
単核球回収率1(%)=100×(回収単核球液1の単核球数/臍帯血の単核球数)
単核球回収率2(%)=100×(回収単核球液2の単核球数/臍帯血の単核球数)
(5)結果
本細胞濃縮操作での赤血球容積は0.8cm3、単核球回収率1は85%、単核球回収率2は82%であった。
〔実施例2〕強遠心で臍帯血を層分離したものを濾過する方法
(1)細胞分離フィルター装置の作製
実施例1と同じものを使用した。
(2)細胞分離システム
図1の細胞分離システムを使用した。
(3)細胞分離操作
事前に図1の細胞分離システムのクランプ21、22、23を閉じておいた。CPD加ヒト臍帯血100cm3(ヘマトクリット値31.1%)を貯留した200cm3血液バッグと血液導管11を接続し、血液バッグが垂直に立った状態で遠心カップに固定し、3000Gで12分間、10℃で遠心した。次に遠心カップから血液バッグと細胞分離システムを静かに取り出し、血液バッグを吊り下げた。この時血液バッグ内は、上層の血漿層、中間層のバフィーコート層、下層の赤血球層の三層に層分離していた。界面を乱さないように上層の血漿層から回収液用にシリンジに19cm3採取し、クランプ21と23を開け、落差により濾過した。この時、下層の赤血球層から細胞分離フィルター装置40に流れ、続いて中間層のバフィーコート層、最後に上層の血漿層が流れていき、細胞分離フィルター装置40内に残留する赤血球が洗い流される様子が観察された。濾過された血液はドレインバッグ70に貯留した。血液バッグ内の全ての血液が細胞分離フィルター装置40に導入されたことを確認後、クランプ21、23を閉じた。その後、先にシリンジに採取しておいた血漿にエア18cm3を加え、クランプ22を開けた後、回収液注入口60から液体、気体の順に手動で通液し、回収バッグ50に単核球を回収した(回収単核球液1)。この場合の回収された細胞液量は23cm3、ヘマトクリット値0.12%、回収に要した時間は2秒(流速570cm3/分)であった。更にこの後、回収された単核球をコニカルチューブに移し、400G×15分の遠心条件で遠心分離した。最終容積が4cm3になるように上清を除去した後、転倒混和して沈さを解した(回収単核球液2)。
(4)結果
本細胞濃縮操作での赤血球容積は0.5cm3、単核球回収率1は87%、単核球回収率2は84%であった。
〔比較例1〕臍帯血を層分離せずに濾過する方法
(1)細胞分離フィルター装置の作製
実施例1と同じものを使用した。
(2)細胞分離システム
図1の細胞分離システムを使用した。
(3)細胞分離操作
100cm3の臍帯血(ヘマトクリット値28.2%)を層分離せずにそのまま細胞分離フィルター装置40に導入し、それ以降は実施例1と同様の操作を行った。回収された細胞液量は23cm3で、ヘマトクリット値は9.1%、回収に要した時間は2秒(流速570cm/分)であった。
(4)結果
本細胞濃縮操作での赤血球容積は2.1cm3、単核球回収率1は85%、単核球回収率2は60%であった。
〔比較例2〕臍帯血を赤血球凝集法で単核球分離する方法1
200cm3血液バッグに貯留されたCPD加ヒト臍帯血100cm3(ヘマトクリット値29.6%)に、6%ヒドロキシエチルスターチ(菱山製薬「HES40(赤血球沈降剤)」)を20cm3添加して、10分間混和した。この血液バッグを垂直に立つように遠心カップに固定して、50G×5分、10℃で遠心した。次に、分離スタンドで血液バッグを押さえてできるだけ赤血球層を吸い上げないように上層の白血球層60cm3を採取し(単核球回収液1)、コニカルチューブに移し変えた。単核球回収率1のヘマトクリット値は2.5%であった。更に、400G×10分、10℃で遠心後、沈さ4mlを残して上清を除去し、転倒混和して沈さを解した(単核球回収液2)。本細胞濃縮操作での赤血球容積は1.5cm3、単核球回収率1は66%、単核球回収率2は58%であった。
〔比較例3〕臍帯血を赤血球凝集法で単核球分離する方法2
200cm3血液バッグに貯留されたCPD加ヒト臍帯血100cm3(ヘマトクリット値33.3%)に、6%ヒドロキシエチルスターチ(菱山製薬「HES40(赤血球沈降剤)」)を20cm3添加して、10分間混和した。この血液バッグを垂直に立つように遠心カップに固定して、50G×5分、10℃で遠心した。次に、分離スタンドで血液バッグを押さえて下層の赤血球層を含め上層の白血球層65cm3を採取し(単核球回収液1)、コニカルチューブに移し変えた。単核球回収率1のヘマトクリット値は10%であった。更に、400G×10分、10℃で遠心後、沈さ4mlを残して上清を除去した(単核球回収液2)。本細胞濃縮操作での赤血球容積は6.5cm3、単核球回収率1は85%、単核球回収率2は32%であった。
〔比較例4〕強遠心で臍帯血を層分離して単核球分離する方法
上部と下部にそれぞれ抜き取り用の導管を有する200cm3血液バッグにCPD加ヒト臍帯血100cm3(ヘマトクリット値27.3%)を貯留し、垂直に立つように遠心カップに固定して、3000G×12分、10℃で遠心した。分離スタンドで血液バッグを押さえつけ、血液バッグの上から上層の血漿層を、血液バッグの下から下層の赤血球層を追い出し、血液バッグ内にバフィーコート層を含め30cm3残るようにした(単核球回収液1)。単核球回収液1のヘマトクリット値は40%であった。次にコニカルチューブに移し変え、400G×10分、10℃で遠心後、沈さ4mlを残して上清を除去した(単核球回収液2)。本細胞濃縮操作での赤血球容積は12.0cm3、単核球回収率1は95%、単核球回収率2は21%であった。
実施例及び比較例の結果を表1にまとめた。表1の結果から分かるように、本発明の実施例の方法によれば、赤血球容量を削減できると同時に、高い単核球回収率を達成することができる。
Figure 0004587959
以下の実施例3〜6、比較例5〜9は、臍帯血から単核球を分離、濃縮する方法について例示する。この場合の不要細胞は赤血球である。
〔実施例3〕
(1)細胞分離フィルター装置の作製
上容器と下容器からなり、組み立てた後の内寸が縦43mm、横43mm、高さ2.9mm(有効濾過断面積18.5cm2、内容積7cm3)で液体流出口と液体流入口を最長対角線上にもつポリカーボネート製容器の入口側から、第1層目に有核細胞捕捉材として平均繊維径1.7μmのポリエステル不織布1.37gを、第2層目に回収液整流化材として平均繊維径1.1μmのポリエステル不織布0.19gからなるフィルター材を、上容器と下容器の周辺で挟み込むように充填して容器入口側空間と出口側空間に分離した。尚、第一層目の充填時厚み及び充填密度はそれぞれ2.5mm及び0.24g/cm3、第2層目の充填時厚み及び充填密度はそれぞれ0.4mm及び0.20g/cm3であり、有効濾過面積を充填時の有核細胞捕捉材の厚みで除した値は74cmであった。また、該フィルター材に血小板通過性を付与する目的で、親水性ポリマーのコーティングを行った。即ち、ヒドロキシエチルメタクリレート・ジメチルアミノエチルメタクリレート共重合体(モル比で97:3)の1%エタノール溶液を該細胞分離フィルター装置の液体流入口から通液し、窒素ガスで余分なポリマー溶液をパージした後、60℃で8時間以上真空乾燥機で乾燥させた。
(2)細胞分離システム
図1の細胞分離システムを使用した。
(3)細胞分離操作
細胞分離フィルター装置に、CPD加ヒト臍帯血100cm3を細胞含有液の入口から落差により通液して単核球を捕捉した。濾過した血液はドレインボトルに回収した。その後、市販の10%デキストラン生理食塩水溶液(小林製薬「デキストラン40注」)にヒト血清アルブミンを3%になるように添加した液体19cm3とエア18cm3をシリンジに充填し、細胞含有液の出口から手動で通液し、細胞含有液の入口から単核球を回収した。この場合の回収された細胞液量は23cm3、回収に要した時間は2秒(流速570cm3/分)であった。
(4)分析
本細胞分離操作での細胞数のカウントは多項目自動血球分析装置(シスメックス社SF3000)を用いて測定し、単核球回収率を以下の計算式にて算出した。
単核球回収率(%)=100×(回収細胞液中の単核球数/臍帯血中の単核球数)
(5)結果
本細胞分離操作での単核球回収率は85%、濾過時間は6分であった。
〔実施例4〕
(1)細胞分離フィルター装置の作製
上容器と下容器からなり、組み立てた後の内寸が縦30mm、横30mm、高さ12.4mm(有効濾過断面積9cm2、内容積11cm3)で液体流出口と液体流入口を最長対角線上にもつポリカーボネート製容器の入口側から、第1層目に有核細胞捕捉材として平均繊維径2.3μmのポリエステル不織布1.32gを、第2層目に回収液整流化材として平均繊維径1.1μmのポリエステル不織布0.19gからなるフィルター材を、上容器と下容器の周辺で挟み込むように充填して容器入口側空間と出口側空間に分離した。尚、第1層目の充填時厚み及び充填密度はそれぞれ5.4mm及び0.20g/cm3、第2層目の充填時厚み及び充填密度はそれぞれ7mm及び0.20g/cm3であり、有効濾過面積を充填時の有核細胞捕捉材の厚みで除した値は16.7cmであった。また、実施例1と同様に、不織布に親水性ポリマーのコーティングを行った。
(2)細胞分離システム
図1の細胞分離システムを使用した。
(3)細胞分離操作
実施例3と同様の細胞分離を行った。回収された細胞液量は21cm3で、回収に要した時間は3秒(流速380cm3/分)であった。
(4)結果
本細胞分離操作での単核球回収率は75%、濾過時間は10分(流速10cm3/分)であった。
〔実施例5〕
(1)細胞分離フィルター装置の作製
容器は実施例3と同じものを用いた。容器の入口側から、第1層目に凝集塊捕捉材として平均繊維径12μmのポリエステル不織布0.14gを、第2層目に有核細胞捕捉材として1.7μmのポリエステル不織布1.28gを、第3層目に回収液整流化材として平均繊維径1.1μmのポリエステル不織布0.19gからなるフィルター材を充填した。尚、第1層目の充填時厚み及び充填密度はそれぞれ0.3mm及び0.20g/cm3、第2層目の充填時厚み及び充填密度はそれぞれ2.2mm及び0.24g/cm3、第3層目の充填時厚み及び充填密度はそれぞれ0.4mm及び0.20g/cm3であり、有効濾過面積を充填時の有核細胞捕捉材の厚みで除した値は84.1cmであった。また、実施例3同様不織布に親水性ポリマーのコーティングを行った。
(2)細胞分離システム
図1の細胞分離システムを使用した。
(3)細胞分離操作
実施例3と同様の細胞分離を行った。回収された細胞液量は23cmで、回収に要した時間は2秒(流速570cm3/分)であった。
(4)結果
本細胞分離操作での単核球回収率は88%、濾過時間は4分(流速25cm3/分)であった。
〔実施例6〕
(1)細胞分離フィルター装置の作製
容器は実施例3と同じものを用いた。容器の入口側から、第1層目に有核細胞捕捉材として充填時の平均孔径12μmのポリウレタン多孔質体を、第2層目に回収液整流化材として充填時の平均孔径6μmのポリウレタン多孔質体からなるフィルター材を充填した。尚、第1層目の充填時厚み及び充填時空隙率はそれぞれ2.2mm及び60%、第2層目の充填時厚み及び充填時空隙率はそれぞれ0.7mm及び60%であった。有効濾過面積を充填時の有核細胞捕捉材の厚みで除した値は74であった。また、実施例3同様ポリウレタン多孔質体に親水性ポリマーのコーティングを行った。
(2)細胞分離システム
図1の細胞分離システムを使用した。
(3)細胞分離操作
実施例3と同様の細胞分離を行った。回収された細胞液量は23cmで、回収に要した時間は3秒(流速380cm3/分)であった。
(4)結果
本細胞分離操作での単核球回収率は84%、濾過時間は6分(流速16.7cm3/分)であった。
〔比較例5〕
(1)細胞分離フィルター装置の作製
容器は実施例3と同じものを用いた。フィルター材としては有核細胞捕捉材として1.7μmのポリエステル不織布1.67gを充填した。尚、フィルター材の充填時厚み及び充填密度はそれぞれ2.9mm及び0.25g/cm3であり、有効濾過面積を充填時の有核細胞捕捉材の厚みで除した値は62.1cmであった。また、実施例3同様不織布に親水性ポリマーのコーティングを行った。
(2)細胞分離システム
図1の細胞分離システムを使用した。
(3)細胞分離操作
実施例3と同様の細胞分離を行った。回収された細胞液量は23cm3で、回収に要した時間は3秒(流速380cm3/分)であった。
(4)結果
本細胞分離操作での単核球回収率は65%、濾過時間は7分(流速14.3cm3/分)であった。
〔比較例6〕
(1)細胞分離フィルター装置の作製
上容器と下容器からなり、組み立てた後の内寸が縦22mm、横22mm、高さ12.4mm(有効濾過断面積5.3cm2、内容積7cm3)で液体流出口と液体流入口を最長対角線上にもつポリカーボネート製容器の入口側から、第1層目に有核細胞捕捉材として平均繊維径1.7μmのポリエステル不織布1.50gを、第2層目に回収液整流化材として1.1μmのポリエステル不織布0.30gからなるフィルター材を充填した。尚、第一層目の充填時厚み及び充填密度はそれぞれ10mm及び0.24g/cm3、 第2層目の充填時厚み及び充填密度はそれぞれ2.4mm及び0.20g/cm3であり、有効濾過面積を充填時の有核細胞捕捉材の厚みで除した値は5.3cmであった。また、実施例3同様不織布に親水性ポリマーのコーティングを行った。
(2)細胞分離システム
図1の細胞分離システムを使用した。
(3)細胞分離操作
実施例3と同様の細胞分離を行ったが、濾過開始後急激に流速が低下し、30分を過ぎたところで1時間以上経過しても濾過が完了しなかった。
〔比較例7〕
(1)細胞分離フィルター装置の作製
上容器と下容器からなり、組み立てた後の内寸が縦74.2mm、横74.2mm、高さ3mm(有効濾過断面積55cm2、内容積16cm3)で液体流出口と液体流入口を最長対角線上にもつポリカーボネート製容器の入口側から、第1層目に有核細胞捕捉材として平均繊維径1.7μmのポリエステル不織布3.61gを、第2層目に回収液整流化材として1.1μmのポリエステル不織布0.58gからなるフィルター材を充填した。尚、第一層目の充填時厚み及び充填密度はそれぞれ2.5mm及び0.24g/cm3、 第2層目の充填時厚み及び充填密度はそれぞれ0.5mm及び0.20g/cm3であり、有効濾過面積を充填時の有核細胞捕捉材の厚みで除した値は220cmであった。また、実施例3同様不織布に親水性ポリマーのコーティングを行った。
(2)細胞分離システム
図1の細胞分離システムを使用した。
(3)細胞分離操作
実施例3と同様の細胞分離を行った。回収された細胞液量は21cm3で、回収に要した時間は3秒(流速380cm3/分)であった。
(4)結果
本細胞分離操作での単核球回収率は55%、濾過時間は4分(流速33.3cm3/分)であった。
〔比較例8〕
(1)細胞分離フィルター装置の作製
軟質塩化ビニール製の液体流入口を有するシート一枚と液体流出口を有するシート一枚で、液体流入口側から、第1層目に有核細胞捕捉材として平均繊維径1.7μmのポリエステル不織布1.37gを、第2層目に回収液整流化材として平均繊維径1.1μmのポリエステル不織布0.19gからなるフィルター材を挟み、有効濾過断面積が18.5cm2になるように周辺を高周波溶着して袋状のフィルター装置を作成した。第1層目の不織布が2.2mmになるようにこのフィルター装置を二枚のアクリル板で挟み、厚みを調節した。不織布の厚みの調節は、同様に作成したフィルター装置を用いて別途キャリブレーションし、二枚のアクリル板の間隔により調節した。この場合の内容積は7cm3であった。有効濾過面積を充填時の有核細胞捕捉材の厚みで除した値は74であった。また、ここで使用した不織布はフィルター装置作成前に実施例1と同じ親水性ポリマーのエタノールに浸漬し、60℃で8時間以上真空乾燥機で乾燥させた後、使用した。
(2)細胞分離システム
図1の細胞分離システムを使用した。
(3)細胞分離操作
濾過は実施例3と同様に行った。一方、回収時は、フィルター装置を挟んでいた二枚のアクリル板の間隔を広げて、前記キャリブレーションにより有核細胞捕捉材の厚みを3.5mmになるように調整した後(内容積11ml、有核細胞捕捉材の充填密度0.17g/cm3)、10%デキストラン生理食塩水溶液にヒト血清アルブミンを3%になるように添加した液体23cm3とエア18cm3をシリンジに充填し、細胞含有液の出口から手動で通液し、細胞含有液の入口から単核球を回収した。この場合のフィルター材の有効濾過面積を充填時の有核細胞捕捉材の厚みで除した値は51.4cmであった。回収された細胞液量は22cm3で、回収に要した時間は5秒(流速276cm3/分)であった。
(4)結果
本細胞分離操作での単核球回収率は45%、濾過時間は6分(流速16.7cm3/分)であった。
〔比較例9〕
(1)細胞分離フィルター装置の作製
比較例8と同じフィルター装置を用いた。
(2)細胞分離システム
図1の細胞分離システムを使用した。
(3)細胞分離操作
10%デキストラン生理食塩水溶液にヒト血清アルブミンを3%になるように添加した液体95cm3とエア18cm3を回収液とした以外は比較例8と同じ操作を行った。回収された細胞液量は100cm3で、回収に要した時間は1分(流速100cm3/分)であった。
(4)結果
本細胞分離操作での単核球回収率は85%、濾過時間は6分(流速16.7cm3/分)であった。
実施例及び比較例の結果を表2にまとめた。
Figure 0004587959
以下の実施例7及び比較例10〜11は臍帯血から単核球をフィルター装置で分離した後、遠心濃縮し、凍結保存する方法について例示する。この場合の不要細胞は赤血球である。
〔実施例7〕
(1)細胞分離フィルター装置の作製
実施例1と同じものを使用した。
(2)細胞分離システム
図1の細胞分離システムを使用した。
(3)貯留バッグ
図2のタイプの貯留バッグを使用した。貯留部の内容積は40cm3で、凍結保存部の内容積は5cm3。材質はエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)のものを使用した。
(4)細胞濃縮操作
事前にクランプ21、22、23を閉じておいた。200cm3の細胞含有液バッグに貯留されたCPD加ヒト臍帯血100cm3と血液導管11を接続した。クランプ21と23を開け、落差により濾過を開始した。濾過された血液はドレインバッグ70に貯留した。細胞含有液バッグ内の全ての血液が細胞分離フィルター装置40に導入されたことを確認後、クランプ21、23を閉じた。次に、10%デキストラン生理食塩水溶液(小林製薬「デキストラン40注」)にヒト血清アルブミンを最終濃度3%になるように添加した液体19cm3とエア18cm3をシリンジに充填した。次に、クランプ22を開けて回収液注入口60から手動で通液し、凍結保存部5を有する貯留バッグに単核球を回収した。この場合の回収された細胞液量は23cm3であった。ヒートシーラーを用いて細胞分離システムから貯留バッグを切り離した後、凍結保存部120を遠心カップの底面側にして1000G×15分の遠心条件で遠心分離した。狭窄部(溶断分離部)110までの上清を除去し、凍結保存部120の空気を追い出しながらヒートシーラーを用いて溶断分離部110で溶断し、貯留部100から切り離した。次に凍結保存部120を指で押さえながら沈さをほぐした。凍結保存部120の表面を冷剤で冷やしながら凍害保護剤導入部130から50%ジメチルスルホキシドをシリンジポンプを用いて0.3cm3/分の流速で1cm3加えた。最終容積は5cm3であった。その後、−80℃中で2時間静置し、液体窒素の気相で凍結保存した。
(5)分析
凍結保存前に有核細胞の取り出し口140からサンプリングし、元の臍帯血と合わせて多項目自動血球分析装置(シスメックス社SF3000)を用いて単核球数を測定し、回収率を計算した。
(6)結果
本細胞濃縮操作での単核球回収率は85%で、凍結解凍後、凍結保存部120の破損は見られなかった。
〔比較例10〕
フィルター法で分離された単核球をコニカルチューブに移し変えて遠心濃縮し、更に単核球濃縮液を貯留バッグに移し変えて凍結保存した。
(1)細胞分離フィルター装置の作製
実施例7と同じものを使用した。
(2)細胞分離システム
図1の細胞分離システムで、貯留バッグの代わりに、本発明でいう狭窄部110や凍結保存部120を有さない通常の血液バッグを用いた。
(3)貯留バッグ
実施例7と同じものを使用した。
(4)細胞分離操作
実施例7と同様に図1の細胞分離システムで臍帯血を処理し、本発明でいう狭窄部110や凍結保存部120を有さない通常の血液バッグに有核細胞を回収した。回収された有核細胞液23cm3を14cm3コニカルチューブ2本に移し変えて1000G×15分の遠心条件で遠心分離した。容積が4cm3となるように上清を除去し沈さを再浮遊させた後に、50%ジメチルスルホキシド1cm3を冷剤で冷やしながら0.3cm3/分の流速で加えた。その後、この細胞濃縮物を図2のタイプの貯留バッグに移し変え、実施例7と同様の方法で凍結保存した。
(5)結果
本細胞濃縮操作での単核球回収率は50%であった。凍結解凍後、凍結保存部120の破損は見られなかった。
〔比較例11〕
実施例7において、凍結保存部120内の空気を抜く操作を行わずに凍結保存した。
(1)細胞分離フィルター装置の作製
実施例7と同じものを使用した。
(2)細胞分離システム
図1の細胞分離システムを使用した。
(3)貯留バッグ
実施例7と同じものを使用した。
(4)細胞分離操作
凍結保存部120に2cm3のエアを封入して凍結保存した以外は実施例7と同様に処理した。
(5)結果
本細胞濃縮操作での単核球回収率は85%であったが、凍結解凍後、凍結保存部5の破損が見られた。
本発明による細胞濃縮物の調製方法は、細胞の凍結保存の前処理手段として用いられ、簡便に骨髄、臍帯血、末梢血等の細胞含有液から単核球等の有核細胞を赤血球等の不要細胞から効率的に分離でき、有核細胞の凍結保存溶液の容積を大幅に小さく出来るので有核細胞の凍結保存に有用な方法であり、保存コストを低く抑えるのに有効な手段として用いることができる。また、本発明の細胞の凍結保存方法は、骨髄、臍帯血、末梢血等の細胞含有液から単核球等の有核細胞を赤血球等の不要細胞から分離し、凍結保存するために使用でき、有核細胞のロス、細菌汚染のリスク、凍結容器破損のリスクを低減するのに有効な手段として用いることができる。
図1は、本発明による細胞濃縮物の調製方法を行うためのシステムの一例を示す模式図である。 図2は、本発明の貯留バッグの形状の一例を示す模式図である。 図3は、本発明の貯留バッグの形状の別の例を示す模式図である。 図4は、本発明の貯留バッグの形状のさらに別の例を示す模式図である。

Claims (28)

  1. 有核細胞と不要細胞とを含む細胞含有液を、有核細胞を実質的に捕捉し不要細胞は実質的に通過するフィルター材を含んでなるフィルター装置に導入して有核細胞を該フィルター材に捕捉し不要細胞を排出させた後、該フィルター装置に回収液を導入して該フィルター材に捕捉されている有核細胞を回収する細胞濃縮物の調製方法において、有核細胞と不要細胞とを含む細胞含有液を有核細胞に富む層と不要細胞に富む層に層分離した後、上記フィルター装置に先ず該不要細胞に富む層を導入し、続いて該有核細胞に富む層を導入して有核細胞を該フィルター材に捕捉しながら該フィルター装置内に残存する不要細胞を排出させた後、該フィルター装置に回収液を導入して該フィルター材に捕捉されている有核細胞を回収し、前記不要細胞が赤血球であることを特徴とする細胞濃縮物の調製方法。
  2. 不要細胞を重力または遠心力によって沈降させることによって、少なくとも有核細胞と不要細胞とを含む細胞含有液を有核細胞に富む層と不要細胞に富む層に層分離する請求項1記載の細胞濃縮物の調製方法。
  3. 不要細胞を凝集させた後に不要細胞を重力または遠心力によって沈降させることによって、少なくとも有核細胞と不要細胞とを含む細胞含有液を有核細胞に富む層と不要細胞に富む層に層分離する請求項1記載の細胞濃縮物の調製方法。
  4. 前記有核細胞が造血幹細胞である請求項1乃至の何れかに記載の細胞濃縮物の調製方法。
  5. 前記有核細胞が単核球である請求項1乃至3の何れかに記載の細胞濃縮物の調製方法。
  6. 有核細胞と不要細胞とを含む細胞含有液にヒドロキシエチルスターチを添加することによって不要細胞を凝集させる請求項3記載の細胞濃縮物の調製方法。
  7. 前記有核細胞に富む層が有核細胞濃厚層と有核細胞希薄層からなり、フィルター装置に有核細胞希薄層、有核細胞濃厚層の順で導入する請求項1乃至の何れかに記載の細胞濃縮物の調製方法。
  8. 前記有核細胞に富む層が有核細胞濃厚層と有核細胞希薄層からなり、フィルター装置に有核細胞濃厚層、有核細胞希薄層の順で導入する請求項1乃至の何れかに記載の細胞濃縮物の調製方法。
  9. 前記有核細胞希薄層の一部または全部を回収液の少なくとも一部として用いる請求項記載の細胞濃縮物の調製方法。
  10. 前記フィルター装置に回収液を導入して該フィルター材に捕捉されている有核細胞を回収した後に、更に回収した有核細胞含有液を遠心分離し、上清を除くことにより有核細胞を濃縮する請求項1乃至の何れかに記載の細胞濃縮物の調製方法。
  11. 前記フィルター材が、少なくとも細胞含有液の入口と出口を有する容器内に多孔質体からなる有核細胞捕捉材および回収液整流化材が細胞含有液の入口側から出口側に向かってこの順に充填され、該フィルター材の有効濾過面積を充填時の有核細胞捕捉材の厚みで除した値が15〜120cmであることを特徴とする請求項1乃至10の何れかに記載の細胞濃縮物の調製方法。
  12. 多孔質体からなる有核細胞捕捉材および回収液整流化材が積層されてなるフィルター材であって、且つ該フィルター材の有効濾過面積を充填時の有核細胞捕捉材の厚みで除した値が15〜120cmであるフィルター材が、有核細胞捕捉材が細胞含有液の入り口側になるように細胞含有液の入口と出口を有する容器に充填されてなるフィルター装置を用い、細胞含有液の入口から細胞含有液をフィルター装置に導入して有核細胞をフィルター材に捕捉させ、不要細胞を該フィルター装置から排出させた後、細胞含有液の出口側から回収液を導入して該フィルター材に捕捉されている有核細胞を細胞含有液の入口側から回収することを特徴とする請求項1に記載の細胞濃縮物の調製方法。
  13. 前記有核細胞捕捉材の細胞含有液入口側に更に凝集塊捕捉材が充填されている請求項11または12記載の細胞濃縮物の調製方法。
  14. フィルター材が不織布である請求項11乃至13の何れかに記載の細胞濃縮物の調製方法。
  15. 不織布からなる有核細胞捕捉材および回収液整流化材が、夫々、
    ア)平均繊維径が1.1〜3.0μm、充填密度が0.1〜0.3g/cm3である不織布からなる有核細胞捕捉材、
    イ)平均繊維径が0.5〜1.5μm、充填密度が0.1〜0.3g/cm3である不織布からなる回収液整流化材、
    であり、有核細胞捕捉材、回収液整流化材の順番に平均繊維径が細くなることを特徴とする請求項14記載の細胞濃縮物の調製方法。
  16. フィルター材がスポンジ状構造体である請求項11乃至13の何れかに記載の細胞濃縮物の調製方法。
  17. スポンジ状構造体からなる有核細胞捕捉材および回収液整流化材が、夫々、
    ア)充填時の平均孔径が7〜25μm、充填時の空隙率が55〜90%であるスポンジ状構造体からなる有核細胞捕捉材、
    イ)充填時の平均孔径が2〜10μm、充填時の空隙率が55〜90%であるスポンジ状構造体からなる回収液整流化材、
    であり、有核細胞捕捉材、回収液整流化材の順番に平均孔径が小さくなることを特徴とする請求項16記載の細胞濃縮物の調製方法。
  18. フィルター材が不織布とスポンジ状構造体との組み合せである請求項11乃至13の何れかに記載の細胞濃縮物の調製方法。
  19. 請求項1乃至18の何れかに記載の細胞濃縮物の調製方法の後に、さらに以下の工程を設ける細胞の凍結保存方法:
    (b)回収された有核細胞を、貯留部に設けた有核細胞導入口を介して、該貯留部と凍結保存部を有する貯留バッグに移行させ貯留する細胞貯留工程、
    (c)貯留された有核細胞を、前記貯留バッグ内で、凍結保存部を回転半径上の回転軸から遠い位置に配置させて遠心分離することにより有核細胞を貯留バッグ内の凍結保存部に移動させる細胞濃縮工程、
    (d)濃縮された有核細胞を、空気を含まない状態で凍結保存部に密封し溶断分離する容器分離工程、および
    (e)有核細胞が密封された凍結保存部を凍結し保存する凍結保存工程;
    を順番に行い、且つ前記(b)〜(e)の全工程を密閉系で行う。
  20. 前記有核細胞の貯留部が、凍結保存部から狭窄部を介して徐々に断面積を広める拡大部を有する形状である請求項19記載の細胞の凍結保存方法。
  21. 前記有核細胞の貯留部は、狭窄部が前記(d)の容器分離工程において溶断分離部として用いられ、凍結保存部が前記(e)の凍結保存工程において有核細胞の凍結保存用容器として用いられるものである請求項19または20に記載の細胞の凍結保存方法。
  22. 前記有核細胞の凍結保存部が有核細胞の取出し口を有する請求項19乃至21の何れかに記載の細胞の凍結保存方法。
  23. 前記有核細胞の凍結保存部または/および前記有核細胞の貯留部が凍害保護剤導入部を有する請求項19乃至22の何れかに記載の細胞の凍結保存方法。
  24. 前記有核細胞の貯留部が有核細胞の貯留バッグ内のエア排出用フィルター装置を有する請求項19乃至23の何れかに記載の細胞の凍結保存方法。
  25. 前記有核細胞の貯留部が有核細胞の貯留バッグ内のエア排出用導管を有核細胞の導管とは独立して有する請求項19乃至24の何れかに記載の細胞の凍結保存方法。
  26. 前記(d)の容器分離工程の前に、前記凍害保護剤導入部から凍害保護剤を添加する請求項19乃至25の何れかに記載の細胞の凍結保存方法。
  27. 前記(d)の容器分離工程の後に、前記凍害保護剤導入部から凍害保護剤を添加する請求項19乃至26の何れかに記載の細胞の凍結保存方法。
  28. 請求項19乃至27の何れかの方法を用いる細胞凍結物の製造方法。
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