JP4583629B2 - プレスブレーキおよびこのプレスブレーキによる加工方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、液圧シリンダによりラムを上下移動させて、パンチとダイとの接近・離反によりワークの曲げ加工を行うプレスブレーキおよびこのプレスブレーキによる加工方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
プレスブレーキによる加工は、大きく分けて以下の3つの動作からなっている。
【0003】
・高速接近動作
・曲げ加圧動作
・退避動作
このうち、曲げ加圧動作から曲げ完了を判断して退避動作に移行する際に、従来は図3に示したタイムチャートにおいて、以下のようなときに曲げを完了したと判断している。
【0004】
▲1▼、ラム指令位置が目標位置に到達したとき(図3においてP1点)。
【0005】
▲2▼、ラム位置フィードバックが目標位置に対してある範囲内(インポジション幅)に入ったとき(図3においてP2)。
【0006】
▲3▼、目標位置保持タイマがカウントアップしたとき(図3においてP3点)。
【0007】
通常は、上記3つを組み合わせた条件により、ラムを退避動作に移行させる。このとき、目標位置保持タイマは、▲1▼または▲2▼のタイミングでカウントを開始し、タイマのカウントアップ条件によりラムを退避動作に移行させるようにしている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
このような従来の技術にあっては、精度よく曲げ完了時を判断するためには、前述のインポジション幅(図3においてP2)をインポジション幅内の位置であれば要求される曲げ精度に影響しない程度に狭く設定することが望ましい。もし、インポジション幅P2を狭くできない場合には、曲げ完了までの時間を前述した▲3▼のタイマに設定する必要がある。
【0009】
例えば、油圧ポンプをサーボモータにより回転数制御して速度および位置制御を行う液圧プレスを例にとって説明すると、加圧動作を行う場合、ラムが停止していてもポンプの効率低下や、油圧機器からの油リークを補う分だけポンプの回転を維持しなければならない。
【0010】
また、ラムの位置ループを組んで制御を行っている場合、フィードバックされた位置が目標位置に到達しない場合には、ポンプの回転数はラムの指令位置とラムの位置フィードバックの差である位置偏差量に比例する。
【0011】
従って、加圧動作を行っている場合、加圧力や油温によりポンプ効率やリーク量が変化することによりポンプの回転数が変化して位置偏差量も変化するので、インポジション幅は、位置偏差量の最大変化を見越して広く設定せざるを得ない。
【0012】
すなわち、ラム位置フィードバックがインポジション幅内に入っても、加圧力によってラムのゲイン特性が変化するため、曲げ完了するまでの時間が変化して曲げ完了時を正確に判断することが困難である。
【0013】
しかも、目標位置保持タイマパラメータは、一つしか入力できないため、自動運転プログラムにおいては、前述の▲3▼のタイマ値はあらゆる条件で精度よく完了が判断できるように、長い時間を設定しなければならない。通常、加圧力が小さいと、曲げ完了までの時間は短いので、前述の▲3▼のタイマ値が長いと生産性が低下するという問題がある。
【0014】
なお、ここではサーボモータにより油圧ポンプを駆動する装置により説明したが、切換バルブを用いてラムの位置や速度制御を行っているタイプの液圧プレスにおいては、加圧力が変化すると切換バルブの特性が変化するため、同様の問題が発生する。
【0015】
この発明の目的は、以上のような従来の技術の問題点に着目してなされたものであり、個々の条件によって目標位置保持タイマ値を適切な値に設定することにより生産性の向上を図ることのできるプレスブレーキおよびこのプレスブレーキによる加工方法を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1による発明のプレスブレーキは、液圧シリンダによりラムを上下移動させて、パンチとダイとの接近・離反によりワークの曲げ加工を行うプレスブレーキであって、作業者が曲げ条件等を入力する入力装置と、入力された曲げ条件からラムの加圧力を自動計算すると共に算出された加圧力に対して曲げ完了からラムの退避動作を開始するまでのタイマ値を予め入力されている「圧力−タイマ値」テーブルから決定するラム動作データ変換装置と、このラム動作データ変換装置により決定されたタイマ値に基づいて前記ラムの退避動作を行うラム移動指令部と、を備えてなることを特徴とするものである。
【0017】
従って、作業者が入力装置からワークの板厚、材質、曲げ長さ等の曲げ条件を入力し、ラム動作データ変換装置が入力された曲げ条件から加圧力を自動計算すると共に算出された加圧力に対して曲げ完了からラムの退避動作を開始するまでのタイマ値を予め入力されている「圧力−タイマ値」テーブルから決定し、この決定されたタイマ値に基づいてラム移動指令部の指令により前記ラムの退避動作を行う。
【0018】
請求項2による発明のプレスブレーキは、請求項1記載のプレスブレーキにおいて、前記入力装置が、これを用いて作業者が前記ラム動作データ変換装置により決定されたタイマ値を補正することができるものであること、を特徴とするものである。
【0019】
従って、必要がある場合には、作業者はラム動作データ変換装置により自動計算で決定されたタイマ値を入力装置から補正することができる。
【0020】
請求項3による発明のプレスブレーキによる加工方法は、液圧シリンダによりラムを上下移動させて、パンチとダイとの接近・離反によりワークの曲げ加工を行うプレスブレーキによる加工方法において、作業者が曲げ条件等を入力し、この入力された曲げ条件からラムの加圧力を自動計算すると共に算出された加圧力に対して曲げ完了からラムの退避動作を開始するまでのタイマ値を予め入力されている「圧力−タイマ値」テーブルから決定し、この決定されたタイマ値に基づいて前記ラムの退避動作を行うこと、を特徴とするものである。
【0021】
従って、作業者がワークの板厚、材質、曲げ長さ等の曲げ条件を入力し、この曲げ条件から曲げ加工における加圧動作時の加圧力を自動計算する。そして、この算出された加圧力に対して曲げ完了からラムの退避動作を開始するまでのタイマ値を予め入力されている「圧力−タイマ値」テーブルから決定し、この決定されたタイマ値に基づいてラムの退避動作を行う。
【0022】
請求項4による発明のプレスブレーキによる加工方法は、請求項3記載のプレスブレーキによる加工方法において、前記自動計算により算出された加圧力を、必要な場合には作業者が補正すること、を特徴とするものである。
【0023】
従って、必要がある場合には、作業者はラム動作データ変換装置により自動計算で決定されたタイマ値を入力装置から補正することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1には、この発明に係るプレスブレーキ1の油圧回路および制御ブロック図が示されている。図1を参照するに、プレスブレーキ1はすでによく知られているので詳細な説明は省略するが、このプレスブレーキ1は、例えばパンチPを装着したラムとしての上部テーブル3Uを、液圧シリンダの一例としての油圧シリンダ5により、ダイDを装着した下部テーブル3Lに接近・離反させることによりワークWに曲げ加工を行うタイプのものである。
【0025】
前記上部テーブル3Uには油圧シリンダ5のピストンロッド7が接続されており、油圧シリンダ5にはサーボモータ9により回転される双方向型の油圧ポンプ11が接続されている。また、上部テーブル3Uの実際の位置を測定するラム位置検出手段として例えばリニアスケールのごときラム位置検出器13が設けられており、検出したラム位置信号を軸制御装置15の実位置カウンタ17にフィードバックしている。
【0026】
軸制御装置15では、ラム移動指令部である目標位置指令部19が上部テーブル3Uの移動指令を発し、この移動指令をラム速度分配処理部21が受けて、移動速度パターンを指令位置カウンタ23へ発する。また、加算器25が、指令位置カウンタ23から発せられた指令から、前述の実位置カウンタ17にフィードバックされたラム位置を減じて、これにラム位置ループゲイン決定部27が決定したゲインを乗じ、この値をD/A変換器29によりアナログ量に変換した後、サーボアンプ31により増幅してサーボモータ9にモータ回転数指令が発せられる。なお、サーボモータ9にはロータリーエンコーダ33が連結されており、サーボモータ9の回転数はサーボアンプ31にフィードバックされている。
【0027】
また、軸制御装置15には工程管理装置35が接続されている。この工程管理装置35は、ラム動作の状態を管理して軸制御装置15に対して移動許可信号を出力し、軸制御装置15の制御により上部テーブル3Uの移動を行う。
【0028】
前記工程管理装置35には所定の時間をカウントするタイマ37が設けられており、このタイマ37はラム動作データ変換装置39に接続されている。ラム動作データ変換装置39には入力装置41が接続されており、作業者が入力装置41から板厚、材質、曲げ長さ等の曲げ条件を入力すると、ラム動作データ変換装置39は曲げ条件に対する加圧力を自動計算し、この加圧力に対して予め入力されている「圧力−タイマ値」テーブルからタイマ値を算出する。
【0029】
次に、図2を参照して、この発明に係るプレスブレーキ1による加工方法について説明する。スタートしたら(ステップSS)、作業者は曲げ条件入力装置41から板厚、材質、曲げ長さ等の曲げ条件を入力し(ステップS1)、ラム動作データ変換装置39は、入力された曲げ条件に基づいて加圧力を自動計算する(ステップS2)。
【0030】
そして、ラム動作データ変換装置39は、求められた加圧力から予め入力されている「圧力−タイマ値」テーブル(加圧力とタイマ値とは比例関係あり)によって加工完了から上部テーブル3Uの退避動作開始までの目標位置保持タイマ値を求め(ステップS3)、求められたタイマ値を表示して(ステップS4)、必要があれば作業者は曲げ条件入力装置41から補正する(ステップS5)。
【0031】
ステップS3において決定された、あるいはステップS5において補正されたタイマ値をラム動作データ変換装置39の内部に記憶し(ステップS6)、記憶されたタイマ値に基づいてラムの退避動作を行い曲げ加工を(ステップS7)、終了する(ステップSE)。
【0032】
以上の結果から、曲げ条件によって目標位置保持タイマ値を自動計算により求めるので、加圧力に応じた適正なタイマ値を決定することができる。また、このタイマ値を用いて曲げ加工を行うので、曲げ精度が安定し、且つ最短時間で上部テーブル3Uの退避動作を開始することができる。これにより、曲げ加工を行う上部テーブル3Uの1サイクル動作時間を短縮することができ、生産性の向上を図ることができる。
【0033】
なお、この発明は前述の発明の実施の形態に限定されることなく、適宜な変更を行うことにより、その他の態様で実施し得るものである。
【0034】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明によるプレスブレーキでは、作業者が入力装置からワークの板厚、材質、曲げ長さ等の曲げ条件を入力し、ラム動作データ変換装置が入力された曲げ条件から加圧力を自動計算すると共に算出された加圧力に対して曲げ完了からラムの退避動作を開始するまでのタイマ値を予め入力されている「圧力−タイマ値」テーブルから決定するので、加圧力に応じて適正なタイマ値を決定することができる。また、この決定されたタイマ値に基づいてラム移動指令部の指令により前記ラムの退避動作を行うので、曲げ精度が安定し、且つ最短の時間でラムを退避動作させることができる。これにより、ラムの1サイクル動作時間を短縮することができ、生産性の向上を図ることができる。
【0035】
請求項2の発明によるプレスブレーキでは、必要がある場合には、作業者はラム動作データ変換装置による自動計算で決定されたタイマ値を入力装置から補正することができるので、より現実に合った適正なタイマ値を採用することができ、曲げ精度の向上を図ることができる。
【0036】
請求項3の発明によるプレスブレーキによる加工方法では、作業者がワークの板厚、材質、曲げ長さ等の曲げ条件を入力し、この曲げ条件から曲げ加工における加圧動作時の加圧力を自動計算する。そして、この算出された加圧力に対して曲げ完了からラムの退避動作を開始するまでのタイマ値を予め入力されている「圧力−タイマ値」テーブルから決定するので、加圧力に応じて適正なタイマ値を決定することができる。また、この決定されたタイマ値に基づいてラムの退避動作を行うので、曲げ精度が安定し、且つ最短の時間でラムを退避動作させることができる。これにより、ラムの1サイクル動作時間を短縮することができ、生産性の向上を図ることができる。
【0037】
請求項4の発明によるプレスブレーキによる加工方法では、必要がある場合には、作業者はラム動作データ変換装置による自動計算で決定されたタイマ値を入力装置から補正することができるので、より現実に合った適正なタイマ値を採用することができ、曲げ精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係るプレスブレーキの制御ブロック図である。
【図2】この発明に係るプレスブレーキによる加工方法を示すフローチャートである。
【図3】従来のプレスブレーキによる加工方法を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
1 プレスブレーキ
3U 上部テーブル(ラム)
5 油圧シリンダ(液圧シリンダ)
19 目標位置指令部(ラム移動指令部)
39 ラム動作データ変換装置
41 入力装置
P パンチ
D ダイ
W ワーク

Claims (4)

  1. 液圧シリンダによりラムを上下移動させて、パンチとダイとの接近・離反によりワークの曲げ加工を行うプレスブレーキであって、作業者が曲げ条件等を入力する入力装置と、入力された曲げ条件からラムの加圧力を自動計算すると共に算出された加圧力に対して曲げ完了からラムの退避動作を開始するまでのタイマ値を予め入力されている「圧力−タイマ値」テーブルから決定するラム動作データ変換装置と、このラム動作データ変換装置により決定されたタイマ値に基づいて前記ラムの退避動作を行うラム移動指令部と、を備えてなることを特徴とするプレスブレーキ。
  2. 前記入力装置が、これを用いて作業者が前記ラム動作データ変換装置により決定されたタイマ値を補正することができるものであること、を特徴とする請求項1記載のプレスブレーキ。
  3. 液圧シリンダによりラムを上下移動させて、パンチとダイとの接近・離反によりワークの曲げ加工を行うプレスブレーキによる加工方法において、作業者が曲げ条件等を入力し、この入力された曲げ条件からラムの加圧力を自動計算すると共に算出された加圧力に対して曲げ完了からラムの退避動作を開始するまでのタイマ値を予め入力されている「圧力−タイマ値」テーブルから決定し、この決定されたタイマ値に基づいて前記ラムの退避動作を行うこと、を特徴とするプレスブレーキによる加工方法。
  4. 前記自動計算により算出された加圧力を、必要な場合には作業者が補正すること、を特徴とする請求項3記載のプレスブレーキによる加工方法。
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