JP4583627B2 - プレスブレーキおよびこのプレスブレーキによる加工方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、ラムの上下移動によりパンチとダイとを接近・離反させてワークの曲げ加工を行うプレスブレーキおよびこのプレスブレーキによる加工方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
プレスブレーキによる加工は、大きく分けて以下の3つの動作からなる。
【0003】
・高速接近動作
・曲げ加圧動作
・退避動作
このうち、曲げ加圧動作から曲げ完了を判断して退避動作に移行する際に、従来は図3においてタイムチャートにおいて、以下のようなときに曲げを完了したと判断している。
【0004】
▲1▼、ラム指令位置が目標位置に到達したとき(図3においてP1点)。
【0005】
▲2▼、ラム位置フィードバックが目標位置に対してある範囲内(インポジション幅)に入ったとき(図3においてP2)。
【0006】
▲3▼、目標位置保持タイマがカウントアップしたとき(図3においてP3点)。
【0007】
通常は、上記3つを組み合わせた条件により、ラムを退避動作に移行させる。このとき、目標位置保持タイマは、▲1▼または▲2▼のタイミングでカウントを開始し、タイマのカウントアップ条件によりラムを退避動作に移行させるようにしている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
このような従来の技術にあっては、精度よく曲げ完了時を判断するためには、前述のインポジション幅(図3においてP2)をインポジション幅内の位置であれば要求される曲げ精度に影響しない程度に狭く設定することが望ましい。もし、インポジション幅P2を狭くできない場合には、曲げ完了までの時間を前述した▲3▼のタイマに設定する必要がある。
【0009】
例えば、油圧ポンプをサーボモータにより回転数制御して速度および位置制御を行う液圧プレスを例にとって説明すると、加圧動作を行う場合、ラムが停止していてもポンプの効率低下や、油圧機器からの油リークを補う分だけポンプの回転を維持しなければならない。
【0010】
また、ラムの位置ループを組んで制御を行っている場合、フィードバックされた位置が目標位置に到達しない場合には、ポンプの回転数はラムの指令位置とラムの位置フィードバックの差である位置偏差量に比例する。
【0011】
従って、加圧動作を行っている場合、加圧力や油温によりポンプ効率やリーク量が変化することによりポンプの回転数が変化して位置偏差量も変化するので、インポジション幅は、位置偏差量の最大変化を見越して広く設定せざるを得ない。
【0012】
すなわち、ラム位置フィードバックがインポジション幅内に入っても、加圧力によってラムのゲイン特性が変化するため、曲げ完了するまでの時間が変化して曲げ完了時を正確に判断することが困難である。このため、前述の▲3▼のタイマ値は、あらゆる条件で精度よく曲げ完了を判断することができるように長い時間を設定しなければならない。
【0013】
しかしながら、通常、加圧力が小さいと曲げ完了までの時間は短いので、図3に示されているように、前述の▲3▼のタイマ値が長いと無駄な待ち時間が生じて生産性が低下するという問題がある。
【0014】
なお、ここではサーボモータにより油圧ポンプを駆動する装置により説明したが、切換バルブを用いてラムの位置や速度制御を行っているタイプの液圧プレスにおいては、加圧力が変化すると切換バルブの特性が変化するため、同様の問題が発生する。
【0015】
この発明の目的は、以上のような従来の技術の問題点に着目してなされたものであり、曲げ完了タイミングを正確に判断することにより直ちにラムの退避動作に移行して、生産性の向上を図ることのできるプレスブレーキおよびこのプレスブレーキによる加工方法を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1による発明のプレスブレーキは、液圧シリンダによりラムを上下移動させて、パンチとダイとの接近・離反によりワークの曲げ加工を行うプレスブレーキであって、前記パンチとダイとを接近させてワークに曲げ加工を行うための前記液圧シリンダと、前記ラムの位置を検出するためのラム位置検出手段と、前記液圧シリンダの加圧動作により、前記ラム位置検出手段からのフィードバック位置信号が目標位置のインポジション幅内に入ったら前記液圧シリンダの圧力を測定する圧力検出手段と、この圧力検出手段により検出された圧力に対応するタイマ時間を予め設定されている圧力−タイマ時間のテーブルから決定する保持タイマ値算出処理部と、この保持タイマ値算出処理部により求められたタイマ時間をカウントするタイマと、このタイマにより前記タイマ時間がカウントアップされたときに前記ラムの退避動作を開始すべく指令するラム移動指令部と、を備えてなることを特徴とするものである。
【0017】
従って、ラム位置検出手段がラム位置を検出してフィードバックし、このフィードバックされたラム位置が目標位置の近傍の設定範囲であるインポジション幅内に入ったら圧力検出手段が液圧シリンダの圧力を検出する。そして、保持タイマ値算出処理部が前記検出された圧力に対応するタイマ時間を予め設定されている圧力−タイマ時間のテーブルから決定すると共にタイマがカウントし始め、先に決定されたタイマ時間がカウントアップされたときにラム移動指令部がラムの退避動作を開始する。
【0018】
請求項2による発明のプレスブレーキによる加工方法は、液圧シリンダによりラムを上下移動させて、パンチとダイとの接近・離反によりワークの曲げ加工を行うプレスブレーキによる加工方法において、前記液圧シリンダの加圧動作時に、前記ラム位置を検出してフィードバックし、このフィードバックされたラム位置が目標位置のインポジション幅内に入ったら前記液圧シリンダの圧力を検出し、この検出された圧力に対応するタイマ時間を予め設定されている圧力−タイマ時間のテーブルから決定して、決定されたタイマ時間をカウントし、このタイマ時間がカウントアップされたときに前記ラムの退避動作を開始すること、を特徴とするものである。
【0019】
従って、ラムの位置を検出して、ラムが目標位置の近傍の設定範囲であるインポジション幅内に入ったら、液圧シリンダの圧力を検出する。このときの検出された圧力に対応して、タイマ時間を予め設定されて入力されている「圧力−タイマ時間」の関係に従って決定すると共にカウントし始め、タイマ時間の経過後にラムの退避動作を開始する。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1には、この発明に係るプレスブレーキ1の油圧回路および制御ブロック図が示されている。図1を参照するに、プレスブレーキ1はすでによく知られているので詳細な説明は省略するが、このプレスブレーキ1は、例えばパンチPを装着したラムとしての上部テーブル3Uを、液圧シリンダの一例としての油圧シリンダ5により、ダイDを装着した下部テーブル3Lに接近・離反させることによりワークWに曲げ加工を行うタイプのものである。
【0021】
前記上部テーブル3Uには油圧シリンダ5のピストンロッド7が接続されており、油圧シリンダ5にはサーボモータ9により回転される双方向型の油圧ポンプ11が接続されている。また、上部テーブル3Uの実際の位置を測定するラム位置検出手段として例えばリニアスケールのごときラム位置検出器13が設けられており、検出したラム位置信号を軸制御装置15の実位置カウンタ17にフィードバックしている。
【0022】
軸制御装置15では、ラム移動指令部である目標位置指令部19が上部テーブル3Uの移動指令を発し、この移動指令をラム速度分配処理部21が受けて、移動速度パターンを指令位置カウンタ23へ発する。また、加算器25が、指令位置カウンタ23から発せられた指令から、前述の実位置カウンタ17にフィードバックされたラム位置を減じて、ラム位置ループゲイン決定部27がゲインを決定して乗じ、D/A変換器29によりアナログ量に変換した後、サーボアンプ31により増幅してサーボモータ9にモータ回転数指令が発せられる。なお、サーボモータ9にはロータリーエンコーダ33が連結されており、サーボモータ9の回転数はサーボアンプ31にフィードバックされている。
【0023】
また、シリンダ5には圧力センサ35が設けられており、この圧力センサ35の検出信号は工程管理装置37に伝えられる。なお、この工程管理装置37は、ラム動作の状態を管理して軸制御装置15に対して移動許可信号を出力し、軸制御装置15の制御により上部テーブル3Uの移動を行う。また、所定の時間をカウントするタイマとしての目標位置保持タイマ39および圧力−保持時間テーブルを記憶して圧力センサ35からの検出信号に基づいて目標位置保持タイマ39の保持時間を決定するための保持タイマ値算出処理部41が、工程管理装置37に設けられている。
【0024】
次に、図2を参照して、この発明に係る加工方法について説明する。ラム速度分配処理部21からのラム指令速度に基づいてサーボモータ9を回転させ、油圧ポンプ11を駆動して油圧シリンダ5により上部テーブル3Uを下降させ、パンチPをワークWに押し付けて加圧動作を行う。
【0025】
上記加圧動作時に、上部テーブル3Uの位置をラム位置検出器13により検出してフィードバックし、フィードバックされた検出信号が位置決めインポジション内(図2中P2範囲)に入ったら、保持タイマ値算出処理部41が圧力センサ35の検出圧力を読み込む(図2中P3点)。
【0026】
そして、保持タイマ値算出処理部41が目標位置保持タイマ値算出処理を行い、予め実験により求められて入力されている「圧力−保持時間」テーブル(圧力と保持時間とは比例関係にあり)に基づいて、読み込まれた圧力に対応する目標位置保持時間を決定する(図2中P4点)。この決定された目標位置保持時間をセットして、目標位置保持タイマ39がカウントを開始する(図2中P5点)。
【0027】
目標位置保持タイマ39が決定された目標位置保持時間をカウントアップしたら(図2中P6点)、ラム指令速度による退避動作を開始して(図2中P7点)、上部テーブル3Uの退避を開始する。
【0028】
以上の結果から、圧力によって目標位置保持タイマ時間を可変することにより、どの圧力でも曲げが完了後直ちに上部テーブル3Uの退避動作に移行することができる。これにより、加圧力にかかわらず、最短の時間で上部テーブル3Uの退避動作を行うことができるため、1サイクル動作時間の短縮を図ることができ、生産性の向上を図ることができる。
【0029】
なお、この発明は前述の発明の実施の形態に限定されることなく、適宜な変更を行うことにより、その他の態様で実施し得るものである。
【0030】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明によるプレスブレーキでは、ラム位置検出手段がラム位置を検出してフィードバックし、このフィードバックされたラム位置が目標位置のインポジション幅内に入ったら圧力検出手段が液圧シリンダの圧力を検出する。そして、保持タイマ値算出処理部が前記検出された圧力に対応するタイマ時間を予め設定されている圧力−タイマ時間のテーブルから決定すると共にタイマがカウントし始め、先に決定されたタイマ時間がカウントアップされたときにラム移動指令部がラムの退避動作を開始するので、圧力によってタイマ時間を可変することにより、どの圧力でも曲げが完了後直ちにラムの退避動作に移行することができる。これにより、加圧力にかかわらず、最短の時間でラムの退避動作を開始して、1サイクル動作時間の短縮を図ることができ、生産性の向上を図ることができる。
【0031】
請求項2の発明によるプレスブレーキによる加工方法では、ラムの位置を検出して、ラムが目標位置インポジション幅内に入ったら、液圧シリンダの圧力を検出する。このときの検出された圧力に対応して、タイマ時間を予め設定されて入力されている「圧力−タイマ時間」の関係に従って決定すると共にカウントし始め、タイマ時間の経過後にラムの退避動作を開始するので、圧力によってタイマ時間を可変することにより、どの圧力でも曲げが完了後直ちにラムの退避動作に移行することができる。これにより、加圧力にかかわらず、最短の時間でラムの退避動作を開始して、1サイクル動作時間の短縮を図ることができ、生産性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係るプレスブレーキの制御ブロック図である。
【図2】この発明に係るプレスブレーキによる加工方法を示すタイムチャートである。
【図3】従来のプレスブレーキによる加工方法を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
1 プレスブレーキ
3U 上部テーブル(ラム)
5 液圧シリンダ
13 ラム位置検出器(ラム位置検出手段)
19 目標位置指令部(ラム移動指令部)
35 圧力センサ(圧力検出手段)
39 タイマ
41 保持タイマ値算出処理部
P パンチ
D ダイ
W ワーク
Claims (2)
- 液圧シリンダによりラムを上下移動させて、パンチとダイとの接近・離反によりワークの曲げ加工を行うプレスブレーキであって、前記パンチとダイとを接近させてワークに曲げ加工を行うための前記液圧シリンダと、前記ラムの位置を検出するためのラム位置検出手段と、前記液圧シリンダの加圧動作により、前記ラム位置検出手段からのフィードバック位置信号が目標位置のインポジション幅内に入ったら前記液圧シリンダの圧力を測定する圧力検出手段と、この圧力検出手段により検出された圧力に対応するタイマ時間を予め設定されている圧力−タイマ時間のテーブルから決定する保持タイマ値算出処理部と、この保持タイマ値算出処理部により求められたタイマ時間をカウントするタイマと、このタイマにより前記タイマ時間がカウントアップされたときに前記ラムの退避動作を開始すべく指令するラム移動指令部と、を備えてなることを特徴とするプレスブレーキ。
- 液圧シリンダによりラムを上下移動させて、パンチとダイとの接近・離反によりワークの曲げ加工を行うプレスブレーキによる加工方法において、前記液圧シリンダの加圧動作時に、前記ラム位置を検出してフィードバックし、このフィードバックされたラム位置が目標位置のインポジション幅内に入ったら前記液圧シリンダの圧力を検出し、この検出された圧力に対応するタイマ時間を予め設定されている圧力−タイマ時間のテーブルから決定して、決定されたタイマ時間をカウントし、このタイマ時間がカウントアップされたときに前記ラムの退避動作を開始すること、を特徴とするプレスブレーキによる加工方法。
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