以下、本願発明の好ましい実施の形態を、添付図面を参照して具体的に説明する。
<第1実施形態>
図1は、本願発明の第1実施形態に係るパルス幅変調(PWM)回路が適用されるスイッチングアンプを示す構成図である。図2は、図1に示すパルス幅変調回路の一実施例を表すブロック回路図である。このスイッチングアンプは、オーディオ信号発生源AUに接続されたパルス幅変調回路1と、スイッチング回路2と、ローパスフィルタ回路3と、正負の電源電圧+EB,−EBを供給する第1電源4及び第2電源5とを備えている。ローパスフィルタ回路3の出力には、負荷RLとしてのスピーカ(図略)が接続されている。
パルス幅変調回路1は、オーディオ信号発生源AUから出力された入力信号としてのオーディオ信号eSをパルス幅変調して変調信号PWM−OUTを生成、出力するものである。パルス幅変調回路1から出力された変調信号PWM−OUTは、スイッチング回路2に入力される。
スイッチング回路2では、変調された変調信号PWM−OUTに基づいて、第1電源4及び第2電源5から供給される正負の電源電圧+EB,−EBが交互にスイッチングされる。すなわち、スイッチング回路2は、パルス幅変調回路1から出力される変調信号PWM−OUTの位相を反転させるインバータ2aと、変調信号PWM−OUTに基づいてオン、オフ動作するスイッチ素子SW−Aと、インバータ2aによって変調信号PWM−OUTが反転された変調信号PWM−OUT′に基づいてオン、オフ動作するスイッチ素子SW−Bと、両スイッチ素子SW−A,SW−Bの両端にそれぞれ接続された逆電流防止用ダイオードD−A,D−Bとを備えている。
スイッチ素子SW−A,SW−Bは、変調信号PWM−OUTと、反転された変調信号PWM−OUT′とによって交互にオン、オフ動作し、ローパスフィルタ回路3及び負荷RLに対してスイッチングされた正負の電源電圧+EB,−EBを供給する。
ローパスフィルタ回路3は、コイルL0及びコンデンサC0によるLC回路によって構成され、スイッチング回路2から出力される出力信号の高周波成分を除去して負荷RLに供給する回路であり、例えば60kHzのカットオフ周波数を有する。ローパスフィルタ回路3では、スイッチングされた正負の電源電圧+EB,−EBの高周波成分が除去され、その出力は、負荷RLに供給されることにより音声として負荷RLから出力される。
パルス幅変調回路1は、図2に示すように、オーディオ信号変換回路11と、充電用バイアス電流源12と、電流加算回路13と、スイッチ回路14と、クロック発生回路15と、放電用バイアス電流源16と、第1及び第2積分回路17,18と、第1及び第2比較回路19,20と、第1及び第2リセット回路21,22と、信号出力回路23とによって構成されている。
オーディオ信号変換回路11は、オーディオ信号発生源AU(図1参照)からパルス幅変調回路1に供給されるオーディオ信号eSを電圧−電流変換するための回路である。ここで、オーディオ信号変換回路11における変換コンダクタンスをGとすると、下流の電流加算回路13に流れ込む電流は、G・eSで表すことができる。
充電用バイアス電流源12は、所定の正の電源電圧+Vaをバイアス電流Ibに変換して下流の電流加算回路13に供給する回路である。電流加算回路13は、オーディオ信号変換回路11によって変換された電流(G・eS)と、充電用バイアス電流源12によって変換されたバイアス電流Ibとを加算した和電流(G・eS+Ib)を、下流のスイッチ回路14に供給する回路である。
スイッチ回路14は、第1ないし第4スイッチSW1〜SW4を備えており、電流加算回路13によって加算された和電流(G・eS+Ib)を、クロック発生回路15から出力される第1ないし第2クロック信号φ1,φ2(後述)によって切り替えて、後段の第1及び第2積分回路17,18に供給する回路である。
接続構成を説明すると、電流加算回路13には、第1及び第2スイッチSW1,SW2の各一端が接続され、第1スイッチSW1の他端(図2のA点参照)は、第1積分回路17に接続されており、これにより、第1積分回路17の充電経路が形成される。第1スイッチSW1の他端は、第3スイッチSW3の一端にも接続され、第3スイッチSW3の他端は、放電用バイアス電流源16に接続されており、これにより、第1積分回路17の放電経路が形成される。一方、第2スイッチSW2の他端(図2のB点参照)は、第2積分回路18に接続されており、これにより、第2積分回路18の充電経路が形成される。第2スイッチSW2の他端は、第4スイッチSW4の一端にも接続され、第4スイッチSW4の他端は、放電用バイアス電流源16に接続されており、これにより、第2積分回路18の放電経路が形成される。
クロック発生回路15は、スイッチ回路14の第1ないし第4スイッチSW1〜SW4を切り替える切替信号(クロック信号)を第1ないし第4スイッチSW1〜SW4にそれぞれ与えるものであり、図3に示すような、デューティ比がほぼ50%の第1クロック信号φ1と、第1クロック信号φ1に対して逆位相の第2クロック信号φ2とを出力するものである。なお、クロック発生回路15は、パルス幅変調回路1の外部に設けられ、外部クロック信号として第1クロック信号φ1及び第2クロック信号φ2をパルス幅変調回路1に与えるように構成されていてもよい。
スイッチ回路14の第2及び第3スイッチSW2,SW3は、ともに第1クロック信号φ1によってオン、オフ制御され、第1及び第4スイッチSW1,SW4は、ともに第2クロック信号φ2によってオン、オフ制御される。そのため、第2及び第3スイッチSW2,SW3と、第1及び第4スイッチSW1,SW4とは、交互にオン、オフ動作される。
例えば、図3に示すように、第1クロック信号φ1がハイレベルで第2クロック信号φ2がローレベルであるときには(以下、「第1期間T1」という)、第2及び第3スイッチSW2,SW3がオン動作し、第1及び第4スイッチSW1,SW4がオフ動作する(図2のスイッチ回路4の状態参照)。この場合、電流加算回路13からの和電流(G・eS+Ib)は、第2スイッチSW2を介して第2積分回路18に流れ、これにより、第2積分回路18が充電される。
一方、第1クロック信号φ1がローレベルで第2クロック信号φ2がハイレベルであるときには(以下、「第2期間T2」という)、第1及び第4スイッチSW1,SW4がオン動作し、第2及び第3スイッチSW2,SW3がオフ動作する。この場合、和電流(G・eS+Ib)は、第1スイッチSW1を介して第1積分回路17に流れ、これにより、第1積分回路17が充電される。
第1及び第2積分回路17,18は、第1積分用コンデンサC1及び第2積分用コンデンサC2によってそれぞれ構成されている。第1積分用コンデンサC1は、上述したように、第2期間T2において、第1スイッチSW1がオン動作するとともに、第3スイッチSW3がオフ動作することにより、電流加算回路13からの和電流(G・eS+Ib)によって充電される。第1積分用コンデンサC1は、次の半周期の期間(以下、「第3期間T3」という)において、第1スイッチSW1がオフ動作するとともに、第3スイッチSW3がオン動作することにより、充電された電荷が放電用バイアス電流源16に流れることによって一定の放電量で放電される。
一方、第2積分用コンデンサC2は、第1期間T1(図3参照)において、第2スイッチSW2がオン動作するとともに、第4スイッチSW4がオフ動作することにより、電流加算回路13から流れる和電流によって充電される。第2積分用コンデンサC2は、次の第2期間T2において、第2スイッチSW2がオフ動作するとともに、第4スイッチSW4がオン動作することにより、充電された電荷が放電用バイアス電流源16に流れることによって一定の放電量で放電される。すなわち、第1及び第2積分用コンデンサC1,C2は、第1及び第2クロック信号φ1,φ2のレベルが維持される単位期間(例えば第1期間T1)ごとにおいて、交互に充電及び放電が行われる。
放電用バイアス電流源16は、負の電源電圧−Vaに接続され、第1又は第2積分用コンデンサC1,C2が放電されるときに、充電用バイアス電流源12において流れるバイアス電流Ibと同じ大きさのバイアス電流Ibを流すためのものである。
第1及び第2比較回路19,20は、第1及び第2積分回路17,18において蓄積される電圧と、所定の基準電圧Vrefとを比較することにより、その出力においてパルス幅変調信号PWM−OUTのパルス幅を規定するための回路である。また、第1及び第2比較回路19,20は、第1及び第2積分回路17,18の放電時に、第1及び第2積分回路17,18を強制的にリセットするための回路である。なお、第1及び第2比較回路19,20が例えばCMOSインバータ素子で構成される場合、基準電圧Vrefは、CMOSインバータ素子のハイレベルとローレベルとで規定される閾値に相当し、通常、この閾値はそのCMOSインバータ素子の電源電圧の約1/2に設定される。例えば、CMOSインバータ素子の電源電圧が約5Vであるとすると、基準電圧Vrefは、その半分の約2.5Vとなる。
第1及び第2比較回路19,20の正(+)側入力端子には、基準電圧Vrefがそれぞれ入力され、負(−)側入力端子には、第1及び第2積分用コンデンサC1,C2の一端がそれぞれ接続されている。第1及び第2比較回路19,20は、例えばCMOSインバータ素子(図略)で構成することが可能であり、CMOSインバータ素子で構成される場合には、CMOSインバータ素子のハイレベル及びローレベルを規定する閾値が基準電圧Vrefとして設定される。
第1及び第2比較回路19,20の出力(図2のC点及びD点参照)は、通常ハイレベルであり、各負側入力端子における電圧(第1及び第2積分用コンデンサC1,C2による充電電圧)が基準電圧Vrefより高くなると、出力端子からローレベルの信号が出力される。
第1及び第2リセット回路21,22は、第1及び第2積分回路17,18がそれぞれ放電されている期間において、第1及び第2積分用コンデンサC1,C2における放電を強制的に終了させる(リセットする)ための回路である。第1リセット回路21は、第1AND回路A1及び第5スイッチSW5からなり、第2リセット回路22は、第2AND回路A2及び第6スイッチSW6からなる。
第1AND回路A1は、その一方の入力端子が第1比較回路19の出力端子に接続され、他方の入力端子がクロック発生回路15に接続されて第1クロック信号φ1が入力される。第1AND回路A1の出力端子(図2のE点参照)は、第5スイッチSW5に接続され、第1AND回路A1の出力は、第5スイッチSW5のオン、オフ動作を制御する。
一方、第2AND回路A2は、その一方の入力端子が第2比較回路20の出力端子に接続され、他方の入力端子がクロック発生回路15に接続されて第2クロック信号φ2が入力される。第2AND回路A2の出力端子(図2のF点参照)は、第6スイッチSW6に接続され、第2AND回路A2の出力は、第6スイッチSW6のオン、オフ動作を制御する。
図4は、第2クロック信号φ2の信号変化における、第1積分用コンデンサC1の一端(図2のA点参照)の電圧波形を示す図である。
図2のA点においては、第2クロック信号φ2がハイレベルのとき(第2期間T2参照)、第1スイッチSW1がオン動作するとともに、第3スイッチ素子SW3がオフ動作するので、第1積分用コンデンサC1は充電される。この充電時における電圧波形(図2のA点の電圧)の傾きは、和電流(G・eS+Ib)の大きさ、すなわちオーディオ信号eSの正負の状態と、その振幅の大きさに依存する。
ここで、図4の符号W0の電圧波形は、オーディオ信号eSが無信号のときの波形を示し、符号W1の電圧波形は、オーディオ信号eSが正(0<(G・eS)<(Ib/2))であってその振幅が比較的大きいとき(すなわち変調率mが比較的高いとき)の波形を示し、符号W2の電圧波形は、オーディオ信号eSが負(0>(G・eS)>(−Ib/2))であってその振幅が比較的大きいときの波形を示している。
同図によると、オーディオ信号eSが正であってその振幅が比較的大きいときの電圧波形W1は、その傾きが、オーディオ信号eSが無信号のときの電圧波形W0に比べて急であり、オーディオ信号eSが負であってその振幅が比較的大きいときの電圧波形W2は、その傾きがオーディオ信号eSが無信号のときの電圧波形W0に比べてなだらかになる。
第1積分用コンデンサC1における充電は、第2クロック信号φ2のレベルが反転するまで継続され、第2クロック信号φ2が反転してローレベルになると(第3期間T3参照)、第1スイッチSW1がオフ動作するとともに、第3スイッチSW3がオン動作するので、第1積分用コンデンサC1は放電される。
したがって、第1積分用コンデンサC1における充電は、第2クロック信号φ2のレベルが反転するときに最大となり、図4に示すように、例えばオーディオ信号eSが無信号のとき、最大充電電圧はVm0となる。また、オーディオ信号eSが正であって振幅が比較的大きいとき、最大充電電圧はVm1(>Vm0)となる。また、オーディオ信号eSが負であって振幅が比較的大きいとき、最大充電電圧はVm2(<Vm0)となる。なお、オーディオ信号eSが無信号のときの最大充電電圧Vm0は、基準電圧Vrefの約2倍の値になるように、回路定数が設定されている。
一方、第3期間T3であって第1積分用コンデンサC1の放電時における電圧波形は、放電用バイアス電流源16に流れるバイアス電流Ibが常時一定であるので、オーディオ信号eSの正負の状態及び振幅の大きさにかかわらず、その傾きが一定となる。すなわち、図4に示すように、第1積分用コンデンサC1が放電されるときの電圧波形の傾きは、第1積分用コンデンサC1の充電時(第2期間T2)の電圧波形の傾きにかかわらず、一定となる。
第3期間T3においては、第1積分用コンデンサC1の放電が一定の電圧波形の傾きを有して継続され、第1積分用コンデンサC1のA点における電圧が第1比較回路19の基準電圧Vrefを下回ると、第1リセット回路21の第5スイッチSW5がオン動作される。すなわち、第1比較回路19は、第1積分用コンデンサC1の一端(図2のA点参照)における電圧が基準電圧Vrefを下回ると、ハイレベルを出力する。そのため、第1AND回路A1は、第3期間T3においては第1クロック信号φ1がハイレベルであり、かつ第1比較回路19の出力がハイレベルになったとき、リセット信号を第5スイッチSW5に出力し、このタイミングで第5スイッチSW5をオン動作させる。
第5スイッチSW5がオン動作すると、第1積分用コンデンサC1の一端における電圧が瞬時にグランド電位に供給され、第1積分用コンデンサC1に蓄積されていた電荷が強制的に放電され、第1積分用コンデンサC1における電圧がゼロになるようにリセットされる(図4のtR参照)。このリセットされるタイミングは、オーディオ信号eSの正負の状態と振幅の大きさとに依存する。
すなわち、第2期間T2において第1積分用コンデンサC1は充電されるのであるが、この充電における電荷量は、オーディオ信号eSの正負の状態及び振幅の大きさに依存する。そして、第3期間T3においては第1積分用コンデンサC1が放電されるが、この場合の放電量は一定とされるため、第1積分用コンデンサC1の放電が開始されてから(第3期間T3に移行してから)、第1積分用コンデンサC1の電圧が基準電圧Vrefに至るまでの時間tは、オーディオ信号eSの正負の状態及び振幅の大きさに依存することになる。
例えば、オーディオ信号eSが正であって振幅の大きさが比較的大きいと、第1積分用コンデンサC1における電圧は最大充電電圧Vm1となり、この場合、第1積分用コンデンサC1の電圧が基準電圧Vrefに至るまでの時間(図4のt1参照)は、オーディオ信号eSが無信号の場合のそれ(図4のt0参照)と比べ長くなる。逆に、オーディオ信号eSが負であって振幅の大きさが比較的大きいと、第1積分用コンデンサC1における電圧は最大充電電圧Vm2となり、この場合、第1積分用コンデンサC1の電圧が基準電圧Vrefに至るまでの時間(図4のt2参照)は、オーディオ信号eSが無信号の場合のそれ(図4のt0参照)と比べ短くなる。
つまり、第1積分用コンデンサC1の放電が開始されてから第1積分用コンデンサC1の電圧が基準電圧Vrefに至るまでの時間tは、オーディオ信号eSの正負の状態及び振幅の大きさに依存することになり、この時間tに基づいて、パルス幅変調信号のパルス幅を生成するようにすれば、周期が一定のクロック信号φ1,φ2に基づいてパルス幅を生成することができる。
ここで、第1及び第2積分用コンデンサC1,C2の容量を同一(=C)とし、第1及び第2積分用コンデンサC1,C2の充電時間である期間をT(例えば第1期間T1に相当)とすると、最大充電電圧Vmは、Vm=[(Ib+G・eS)・T]/Cで表される。
基準電圧VrefをVref=(Ib・T)/2Cが成立するように、回路定数を設定すれば、最大充電電圧Vmは、Vm=2Vref+(G・eS・T)/Cとなり、この式を変形すると、Vm−Vref=Vref+(G・eS・T)/Cとなる。
第1積分用コンデンサC1(又は第2積分用コンデンサC2)の放電が開始されてから第1積分用コンデンサC1(又は第2積分用コンデンサC2)の電圧が基準電圧Vrefに至るまでの期間をtとすると、t=[C・(Vm−Vref)]/Ibであるので、t=(C・Vref)/IB+(G・eS・T)/C=T/2+(G・eS・T)/Cとなる。
そのため、t/T=1/2+(G・eS・T)/Cとなり、変調度mは、m=2G・eS/Ibで表されるため、t/T=(1+m)/2となる。
したがって、第1積分用コンデンサC1(又は第2積分用コンデンサC2)の放電が開始されてから第1積分用コンデンサC1(又は第2積分用コンデンサC2)の電圧が基準電圧Vrefに至るまでの期間tは、変調度mに比例するとともに、オーディオ信号eSの振幅の大きさに比例することになる。
第2積分用コンデンサC2、第2比較回路20、第2リセット回路22の各動作は、図4を用いて説明した第1積分用コンデンサC1、第1比較回路19、第2リセット回路21の各動作と、クロック信号が半周期分ずれた期間において同様の動作を行う。例えば第1期間T1において第2積分用コンデンサC2は、オーディオ信号eSに応じた充電が行われ、第2期間T2において第2クロック信号φ2がハイレベルであり、かつ第2比較回路20の出力がハイレベルのとき、第2AND回路A2は、リセット信号を第6スイッチSW6に出力し、第6スイッチSW6をオン動作させる。
第2比較回路20では、第2積分用コンデンサC2における電圧が基準電圧Vrefを下回ると、ハイレベルが出力されるので、このタイミングで第6スイッチSW6がオン動作する。第6スイッチSW6がオン動作すると、第2積分用コンデンサC2における電圧が瞬時にグランド電位に供給され、第2積分用コンデンサC2に蓄積されていた電荷が強制的に放電され、リセットされる。
信号出力回路23は、第1及び第2NOR回路N1,N2と、OR回路O1とによって構成されている。第1NOR回路N1は、その一方の入力端子が第1比較回路19の出力端子に接続され(図2のC点参照)、他方の入力端子がクロック発生回路15に接続されて第2クロック信号φ2が入力される。一方、第2NOR回路N2は、その一方の入力端子が第2比較回路20の出力端子に接続され(図2のD点参照)、他方の入力端子がクロック発生回路15に接続されて第1クロック信号φ1が入力される。第2NOR回路N2の出力端子は、OR回路O1の他方の入力端子に接続されている。
第1NOR回路N1の出力端子(図2のG点参照)及び第2NOR回路N2の出力端子(図2のH点参照)は、OR回路O1の各入力端子に接続され、OR回路O1の出力端子は、パルス幅変調信号PWM−OUTとして後段のスイッチング回路2(図1参照)に接続される。
第1NOR回路N1は、第2クロック信号φ2と、第1比較回路19の出力との否定論理和を演算することにより、第1積分用コンデンサC1による放電が開始されてから、第1積分用コンデンサC1の電圧が基準電圧Vrefに至るまでの時間tにおいて、ハイレベルを出力する。第2NOR回路N2は、第1クロック信号φ1と、第2比較回路20の出力との否定論理和を演算することにより、第2積分用コンデンサC2による放電が開始されてから、第2積分用コンデンサC2の電圧が基準電圧Vrefに至るまでの時間tにおいて、ハイレベルを出力する。
OR回路O1は、第1及び第2NOR回路N1,N2の各出力の論理和を演算し、第1及び第2NOR回路N1,N2の各出力を一つのパルス幅変調信号PWM−OUTにしてスイッチング回路2に出力するものである。
図5ないし図7は、上記パルス幅変調回路1における各信号のタイミングチャートを示す図である。図5は、オーディオ信号eSが無信号の場合(G・eS=0)を示しており、図6は、オーディオ信号eSが正(0<G・eS<Ib/2)の場合を示しており、図7は、オーディオ信号eSが負(0>G・eS>−Ib/2)の場合を示している。
図5における第1期間T1では、クロック発生回路15からの第1クロック信号φ1がハイレベル(第2クロック信号φ2がローレベル)であり、これによって第2スイッチSW2がオン動作(第4スイッチ素子SW4はオフ動作)する。そのため、第2積分回路18の第2積分用コンデンサC2には、電流加算回路13からの和電流(G・eS+Ib)が供給され、第2積分用コンデンサC2は充電される(B点波形参照)。
第1期間T1においては、第2比較回路20において第2積分用コンデンサC2が充電されたことによる電圧が基準電圧Vrefを上回り、第2比較回路20の出力がハイレベルからローレベルになり(D点波形参照)、第2AND回路A2の一方端子にそのローレベルの信号が入力されても、他方端子に入力される第2クロック信号φ2がローレベルを維持しているため、第2AND回路A2からはリセット信号は出力されない。
また、第1期間T1において第1スイッチSW1がオフ動作し、第3スイッチSW3がオン動作することにより、第1積分回路17の第1積分用コンデンサC1では、第1期間T1の半周期前の期間T0において充電された電荷が放電用バイアス電流源16に流れ、一定の放電量で放電される(A点波形参照)。
第1期間T1においては、第1比較回路19において第1積分用コンデンサC1が充電されたことによる電圧が基準電圧Vrefを下回ると、第1比較回路19の出力がローレベルからハイレベルになり(C点波形参照)、第1AND回路A1の一方の入力端子に入力される。第1AND回路A1の他方の入力端子には、第1クロック信号φ1のハイレベルが入力されているため、第1AND回路A1の出力端子もローレベルからハイレベルになり(E点波形参照)、これがリセット信号として第5スイッチSW5に出力される。
これにより、第5スイッチSW5がオフ状態からオン状態になり、第1積分用コンデンサC1で放電されていた電荷は、第5スイッチSW5を介してグランド端子に流れ、強制的にかつ一気に放電が行われる。
第1NOR回路N1には、第2クロック信号φ2と、第1比較回路19の出力とが入力されるため、第1NOR回路N1は、第1期間T1において第1積分回路17が放電を開始してから強制的にリセットされるまでの時間tにおいてハイレベルを出力する(G点波形参照)。また、第2NOR回路N2には、第1クロック信号φ1と、第2比較回路20の出力とが入力されるが、第2NOR回路N2の出力は、ローレベルを維持する(H点波形参照)。したがって、OR回路O1の出力は、第1NOR回路N1の出力としてのハイレベルがそのままパルス幅変調信号PWM−OUTとして出力される。
次に、第2期間T2の期間では、クロック発生回路15からの第1クロック信号φ1がハイレベルからローレベルとなり(第2クロック信号φ2はローレベルからハイレベルになる。)、これによって、第1スイッチSW1がオン動作(第3スイッチ素子SW3はオフ動作)する。そのため、第1積分回路17の第1積分用コンデンサC1には、電流加算回路13からの和電流(G・eS+Ib)が供給され、第1積分用コンデンサC1は充電される(A点波形参照)。
また、第2期間においては、第2スイッチSW2がオフ動作し、第4スイッチSW4がオン動作することにより、第2積分回路18の第2積分用コンデンサC2では、第1期間T1において充電された電荷が放電用バイアス電流源16に流れ、一定の放電量で放電される(B点波形参照)。
その後、第2比較回路20において第2積分用コンデンサC2が充電されたことによる電圧が基準電圧Vrefを下回ると、第2比較回路20の出力がローレベルからハイレベルになり(D点波形参照)、第2AND回路A2に一方の入力端子に入力される。第2AND回路A2の他方の入力端子には、第2クロック信号φ2のハイレベルが入力されているため、第2AND回路A2の出力端子もローレベルからハイレベルになり(F点波形参照)、これがリセット信号として第6スイッチSW6に出力される。
これにより、第6スイッチSW6がオフ状態からオン状態になり、第2積分用コンデンサC2で放電されていた電荷は、第6スイッチSW6を介してグランド端子に流れ、強制的にかつ一気に放電が行われる。
第1NOR回路N1には、第2クロック信号φ2と、第1比較回路19の出力とが入力されるが、第1NOR回路N1の出力は、ローレベルを維持する(G点波形参照)。一方、第2NOR回路N2には、第1クロック信号φ1と、第2比較回路20の出力とが入力されるため、第2NOR回路N2は、第2期間T2において第2積分回路18が放電を開始してから強制的にリセットされるまでの時間tにおいてハイレベルを出力する(H点波形参照)。したがって、OR回路O1の出力は、第2NOR回路N2の出力としてのハイレベルがそのままパルス幅変調信号PWM−OUTとして出力される。
その後、第3期間T3では、第1及び第2クロック信号φ1,φ2がそれぞれ反転されるため、第2積分用コンデンサC2において充電が行われる一方、第1積分用コンデンサC1において放電が行われる。以降、半周期が経過するごとに、第1及び第2クロック信号φ1,φ2がそれぞれ反転され、第1及び第2積分用コンデンサC1,C2が交互に充電及び放電を繰り返す。
図6に示すように、オーディオ信号eSが正の場合には、和電流(G・eS+Ib)が大となり、第1又は第2積分用コンデンサC1,C2の一端(A点又はB点)における電圧波形の傾きも、オーディオ信号eSが無信号の場合に比べて急となる。そのため、第1又は第2クロック信号φ1,φ2のレベルが反転する時点での第1又は第2積分用コンデンサC1,C2の一端における充電電圧Vmは比較的大きくなり、これらが放電されるとき、オーディオ信号eSが無信号の場合に比べて、基準電圧Vrefを下回る時間、すなわち放電を開始してから強制的にリセットされるまでの時間tが長くなる。したがって、図6に示すタイミングでパルス幅変調信号PWM−OUTが出力される。このように、オーディオ信号eSの振幅に応じたパルス幅変調信号PWM−OUTが出力されることになる。
また、図7に示すように、オーディオ信号eSが負の場合には、和電流(G・eS+Ib)が小となり、第1又は第2積分用コンデンサC1,C2の一端における電圧波形の傾きも、オーディオ信号eSが無信号の場合に比べてなだらかとなる。そのため、第1又は第2クロック信号φ1,φ2のレベルが反転する時点での第1又は第2積分用コンデンサC1,C2の一端における充電電圧Vmは比較的小さくなり、これらが放電されるとき、オーディオ信号eSが無信号の場合に比べて、基準電圧Vrefを下回る時間、すなわち放電を開始してから強制的にリセットされるまでの時間tが短くなる。したがって、図7のパルス幅変調信号PWM−OUTに示すタイミングでパルス幅変調信号PWM−OUTが出力される。
従来の構成におけるパルス幅変調回路51(図22参照)では、オーディオ信号eSの振幅が大きくなると、キャリア周波数fが低下し、キャリア周波数fのキャリア成分の漏洩分が増加しスピーカからノイズとなって出力されるといった問題点があったが、上記第1実施形態による構成のパルス幅変調回路1によれば、周期がほぼ一定の第1及び第2クロック信号φ1,φ2が用いられているため、キャリア周波数fをほぼ一定にすることができる。これら第1及び第2クロック信号φ1,φ2は、第1及び第2積分用コンデンサC1,C2による充放電時間を規定しているため、キャリア成分の漏洩分が増加するといったことを抑制することができるといった、新規な構成のパルス幅変調回路1を提供することができる。
また、キャリア周波数fが固定されているため、これがローパスフィルタ回路53(図21参照)の直列共振周波数に近づくことがなく、スイッチング回路52に適用されているスイッチング用出力トランジスタに過大な電流が流れることもない。したがって、これを破壊するおそれを解消することができる。
さらに、このパルス幅変調回路1を複数のチャンネルを有するマルチチャンネルのスイッチングアンプに適用された場合でも、パルス幅変調回路1は第1及び第2クロック信号φ1,φ2に同期したパルス幅変調を行うことができるので、チャンネル間同士でキャリア周波数fが微妙に異なることがなくなり、被変調信号(キャリア)間におけるビート成分が音声周波数に混在するといったことを抑制することができる。
また、上記構成によれば、バイアス電流Ib、基準電圧Vref、第1及び第2積分用コンデンサC1,C2の充電容量が適正に設定されておれば、第1及び第2クロック信号φ1,φ2のデューティサイクルが理想的な50%から多少ずれて発生しても、その影響がクロック1周期の間にキャンセルされるという作用効果を奏する。
なお、上記パルス幅変調回路1では、放電用バイアス電流源16に流れるバイアス電流Ibは、充電用バイアス電流源12において流れるバイアス電流Ibと同じ大きさであるとしたが、放電用バイアス電流源16に流れるバイアス電流は、個別に設定可能であることがより好ましい。
例えば第1積分用コンデンサC1において放電が開始されるときの第1積分用コンデンサC1のコンデンサ電圧Vcは、Vc=[(Ib+G・eS)・T]/Cで表されるので(Tは第1積分用コンデンサC1の充電期間又は放電期間)、第1積分用コンデンサC1の放電が開始されてから第1積分用コンデンサC1の電圧が基準電圧Vrefに至るまでの期間をta、放電用バイアス電流源16に流れるバイアス電流をIcとすると、期間taは、ta=[(Vm−Vref)・C]/Icで表される。
第1積分用コンデンサC1の電圧が基準電圧Vrefに至ってから充電が開始されるまでの期間をtbとすれば、期間Tは、T=ta+tbで表されるので、このときの変調度mは、m=|ta−tb|/T=2G・eS/Ic+2Ib/Ic−(2C・Vref)/(Ic・T)−1となる。一方、第1積分用コンデンサC1のコンデンサ電圧Vcの許容される最大電圧をVmとすれば、変調度mを最大限に活用するためには、コンデンサ電圧VcがVc=(Vm+Vref)/2のときに、ta=T/2となる条件が必要である。
より詳細には、第1比較回路19がCMOSインバータ素子で構成されている場合、通常、基準電圧Vrefは、電源電圧Vccの1/2に設定されている(Vref=Vcc/2)。第1積分用コンデンサC1の充電期間中に、最低でも基準電圧Vrefまで充電を行わなければならないことから、変調度mを最大限に活用するためには、オーディオ信号eSの無信号において第1積分用コンデンサC1の充電完了時のコンデンサ電圧Vcは、Vc=(Vcc+Vref)/2=(3/2)Vrefである必要がある。
この場合、充電期間Tに上記コンデンサ電圧Vcの値まで充電するバイアス電流Ibの充電値は、Ib=[(3/2)Vref・C]/Tであり、変調時に電源電圧Vccまで充電された場合に、基準電圧Vrefの値に至るまで放電するバイアス電流Icは、Ic=Vref・C/Tとなる。したがって、充電用バイアス電流源12に流れるバイアス電流Ibと、放電用バイアス電流源16に流れるバイアス電流Icとの関係は、Ib=(3/2)Icとなり、この式が満足する設定値に、充電用バイアス電流源12に流れるバイアス電流Ibと、放電用バイアス電流源16に流れるバイアス電流Icとを設定すればよい。
また、上式が成立するように各回路の定数を設定すれば、変調度mは、m=2G・eS/Icとなり、オーディオ信号eSに比例した変調を行うことができる。また、回路の部品誤差等の影響により充放電のバイアス電流値Ib,Icに差異が生じると、パルス幅変調信号PWM−OUTにオフセットが生じることがあるが、充放電のバイアス電流値Ib,Icを個別に設定することで、上記オフセットを打ち消すことができる。
なお、Ib=(3/2)Icの3/2は、CMOSインバータ素子の電源電圧Vcc及び基準電圧Vrefの各値を変化させることで、任意の値に設定することができる。換言すれば、適正な充放電のバイアス電流値Ib,Icをそれぞれ個別に設定することによって、多様な電源電圧Vcc及び基準電圧Vrefの設定に対応することができる。
図8は、図2に示すパルス幅変調回路1の詳細な回路図である。
図8に示す回路図によると、オーディオ信号変換回路11、充電用バイアス電流源12、及び電流加算回路13は、組み合わされて一つの回路として構成されている。クロック発生回路15は、複数のインバータ、抵抗及びコンデンサからなるマルチバイブレータによって構成されている。また、充放電の電流方向を切り替えるスイッチ回路14は、汎用の電子スイッチによって構成されている。第1及び第2比較回路19,20は、複数のCMOSインバータ素子から構成されている。
なお、図中、ダイオードD1〜D4は、CMOSインバータ素子の電源電圧によって充電電流がバイアスされるのを防止するための逆電流防止用のダイオードである。図中、抵抗R1〜R4は、スイッチ回路14としての電子スイッチの電源電圧(例えば15V)と、第1及び第2比較回路19,20、第1及び第2リセット回路21,22及び信号出力回路23の電源電圧(例えば5V)とを、レベル合わせするための減衰器として機能するものである。
また、第1及び第2リセット回路21,22の一部、並びに信号出力回路23の論理回路は、図2に示す構成の論理回路とは厳密には異なっているが、正負の値を調整するためのものであり、実質的な動作は共通するものである。また、図8に示す回路は一例であって、本実施形態に係るパルス幅変調回路1はこれに限定されるものではない。
図9は、図8に示すクロック生成回路15の他の変形例を示す図である。同図に示すクロック生成回路24は、充電用バイアス電流源12及び放電用バイアス電流源16並びにスイッチ回路14が付加されてなる複数のCMOSインバータ素子から構成されている。このように、図9に示す、充電用バイアス電流源12、放電用バイアス電流源16及びスイッチ回路14を含んだクロック生成回路24は、複数のCMOSインバータ素子によって構成されていてもよく、図9に示す回路を図8に示すパルス幅変調回路1に適用すれば、回路全体をCMOSインバータ素子を用いて構成することができる。なお、図9の一点鎖線で囲まれる部分の回路25は、例えば5V系回路を15V系回路に変換するためのレベルシフト回路を示している。
図10は、オーディオ信号変換回路11、充電用バイアス電流源12、及び電流加算回路13が組み合わされて一つの回路として構成された場合の変形例を示す図である。また、図11は、放電用バイアス電流源16の変形例を示す図である。なお、第1及び第2リセット回路21,22は、オープンドレインのNANDゲートによって構成されていてもよい。
ところで、上記クロック発生回路15では、図5ないし図7に示すように、第1クロック信号φ1と第2クロック信号φ2とを、例えばインバータ15a(図8のクロック発生回路15の最終段参照)によって互いに反転させて生成するようにしている。この場合、インバータ15aを用いると、第1及び第2クロック信号φ1,φ2間にインバータ15aの伝播遅延時間TDによるタイミングのずれが生じる。
図12は、伝播遅延時間TDが生じる場合のタイミングチャートを示す図である。図12(a),(b)によると、第1クロック信号φ1がローレベルからハイレベルに反転するとき、第2クロック信号φ2は、通常、同じタイミングでハイレベルからローレベルに反転するが、第2クロック信号φ2となる第1クロック信号φ1がインバータ15aを通過するために、インバータ15aによる伝播遅延時間TD(図12のTD部参照)が生じ、この伝播遅延時間TDにおいて、第1クロック信号φ1及び第2クロック信号φ2が同時にハイレベルになってしまうことが生じる。
第1及びクロック信号φ1,φ2が同時にハイレベルになる期間TDが生じると、第1及び第2積分用コンデンサC1,C2において例えば同時に充電動作が行われることになり、第1及び第2積分用コンデンサC1,C2が適正なタイミングで交互に充放電動作を行うことが不可能となり、パルス幅変調信号PWM−OUTの出力に誤差が生じることになる。
このような場合には、図13に示すように、クロック発生回路15の後段に、第1クロック信号φ1及び第2クロック信号φ2が同時にハイレベルになる期間TDを生じなくさせるデッドタイムを生成するデッドタイム生成回路26を設けるようにしてもよい。
具体的には、デッドタイム生成回路26は、適切な論理ゲートで構成され、図13に示すように、NOT回路NT1と、EX−OR(排他的論理和)回路EX1と、第1及び第2NOR回路NR1,NR2とからなる。接続構成を説明すると、第2クロック信号φ2の出力に、NOT回路NT1が接続され、NOT回路NT1の出力と第1クロック信号φ1の出力にEX−OR回路EX1が接続され、このEX−OR回路EX1の出力と第1クロック信号φ1の出力とに、第1NOR回路NR1が接続されており、この第1NOR回路NR1の出力が新たに第1クロック信号φ1′の出力としてパルス幅変調回路1に出力される。また、EX−OR回路EX1の出力とNOT回路NT1の出力とに、第2NOR回路NR2が接続されており、この第2NOR回路NR2の出力が新たに第2クロック信号φ2′の出力としてパルス幅変調回路1に出力される。
上記構成によれば、図12(c)〜(f)のタイミングチャートに示すように、第2クロック信号φ2の出力がNOT回路NT1によって反転され、出力される(図12,図13のK点参照)。このとき、NOT回路NT1によっても伝播遅延時間が生じる。NOT回路NT1の出力は、EX−OR回路EX1によって第1クロック信号φ1との排他的論理和が演算され出力される(図12,図13のL点参照)。この場合、EX−OR回路EX1によっても伝播遅延時間が生じる。
EX−OR回路EX1の出力は、第1NOR回路NR1によって第2クロック信号φ2との反転論理和が演算されて第1クロック信号φ1′となって出力される。この場合、第1NOR回路NR1によっても伝播遅延時間が生じる。また、EX−OR回路EX1の出力は、第2NOR回路NR2によってNOT回路NT1の出力との反転論理和が演算されて第2クロック信号φ2′となって出力される。この場合、第2NOR回路NR2によっても伝播遅延時間が生じる。
これにより、第1クロック信号φ1′の出力と、第2クロック信号φ2′の出力とでは、図12の(e),(f)に示す期間としてデッドタイムDDが生成され、両信号が同時にハイレベルになることを抑制することができる。なお、デッドタイム生成回路26は、上記構成に限らず、種々の論理回路の構成を採用することができる。
<第2実施形態>
図14は、本願発明の第2実施形態に係るパルス幅変調回路の構成を示すブロック回路図である。この第2実施形態のパルス幅変調回路30は、第1クロック信号φ1(又は第2クロック信号φ2)の半周期ごとに第1及び第2積分用コンデンサC1,C2を充電及び放電させていた第1実施形態に対して、第1及び第2積分用コンデンサC1,C2が充電のみを行う点で第1実施形態と異なる。
このパルス幅変調回路30は、第1及び第2充電用バイアス電流源31,32と、オーディオ信号変換回路33と、クロック発生回路34と、スイッチ回路35と、インバータ回路36と、第3及び第4積分回路37,38と、第3及び第4比較回路39,40と、第3及び第4リセット回路41,42と、第1及び第2RSフリップフロップ回路43,44と、信号出力回路45とによって構成されている。
第1及び第2充電用バイアス電流源31,32は、所定の電源電圧Vaをバイアス電流Ibに変換して下流の第3及び第4積分回路37,38にそれぞれ供給するものである。第1及び第2充電用バイアス電流源31,32は、第1実施形態の構成とは異なり、スイッチ回路を介さずに直接的に第3及び第4積分回路37,38に接続されている。具体的には、第1充電用バイアス電流源31の出力(図14のA点参照)は、第3積分回路37に接続されており、第2充電用バイアス電流源32の出力(図14のB点参照)は、第4積分回路38に接続されている。したがって、第1及び第2充電用バイアス電流源31,32において生成されるバイアス電流Ibは、常時第3及び第4積分回路37,38にそれぞれ供給される。
オーディオ信号変換回路33は、オーディオ信号発生源AU(図1参照)からパルス幅変調回路1に供給されるオーディオ信号eSを電圧−電流変換するための回路であり、この第2実施形態に係るオーディオ信号変換回路33においても、このオーディオ信号変換回路33から出力される電流は、G・eSで表すことができる。
クロック発生回路34は、第1実施形態に係るクロック発生回路15と異なり、図15に示す単一の第3クロック信号φ3を出力するものである。第3クロック信号φ3は、スイッチ回路35を切り替えるためのものである。なお、クロック発生回路34は、第3クロック信号φ3を出力するとともに、例えばインバータ回路36と組み合わせた構成とすることにより、第3クロック信号φ3を反転させた逆位相のクロック信号(図略)を出力するものであってもよい。
スイッチ回路35は、クロック発生回路34からの第3クロック信号φ3によって切り替えられ、オーディオ信号変換回路33からの電流(G・eS)が第3積分回路37に供給される状態と、オーディオ信号変換回路33からの電流(G・eS)が第4積分回路38に供給される状態とを切り替えるものである。
例えば、第3クロック信号φ3がハイレベルのとき、スイッチ回路35は、第3積分回路37側に切り替わり(図14におけるスイッチ回路35の状態参照)、これにより、オーディオ信号変換回路33からの電流(G・eS)は、第1充電用バイアス電流源31からのバイアス電流Ibと合成され、第3積分回路37に供給される。このとき、第2充電用バイアス電流源32からのバイアス電流Ibは、第4積分回路38に直接的に供給される。
一方、第3クロック信号φ3がローレベルになると、スイッチ回路35は、第4積分回路38側に切り替わり、これにより、オーディオ信号変換回路33からの電流(G・eS)は、第2充電用バイアス電流源32からのバイアス電流Ibと合成され、第4積分回路38に供給される。このとき、第1充電用バイアス電流源31からのバイアス電流Ibは、第3積分回路37に直接的に供給される。
第3及び第4積分回路37,38は、第1実施形態に係る第1及び第2積分回路17,18と同様に積分用コンデンサによって構成され、第3積分用コンデンサC3及び第4積分用コンデンサC4をそれぞれ有している。第1実施形態に係る第1積分用コンデンサC1及び第2積分用コンデンサC2は、第1又は第2クロック信号φ1,φ2の半周期ごとに充電期間及び放電期間がそれぞれ設けられ、この充放電動作を半周期ごとに繰り返し行っていたが、この第2実施形態に係る第3積分用コンデンサC3及び第4積分用コンデンサC4は、後述するように、1周期において充電動作が継続して行われる。
第3及び第4比較回路39,40は、第1実施形態に係る第1及び第2比較回路19,20と、その構成及び機能は略同様であり、第3積分用コンデンサC3及び第4積分用コンデンサC4における電圧と、所定の基準電圧Vrefとを比較することにより、その出力においてパルス幅変調信号PWM−OUTのパルス幅を規定するための回路である。第3比較回路39の出力(図14のC点参照)は、第1RSフリップフロップ回路43のセット端子(S)に接続され、第4比較回路40の出力(図14のD点参照)は、第2RSフリップフロップ回路44のセット端子(S)に接続されている。
第3及び第4リセット回路41,42は、第3及び第4積分用コンデンサC3,C4がそれぞれ充電されている期間において、第3及び第4積分用コンデンサC3,C4における充電状態を強制的に終了させる(リセットする)ための回路である。第3リセット回路41は、第3NOR回路N3及び第7スイッチSW7からなり、第4リセット回路42は、第4NOR回路N4及び第8スイッチSW8からなる。
第3NOR回路N3は、その一方の入力端子が第1RSフリップフロップ回路43のQ(/)端子(図14のE点参照)に接続され、他方の入力端子がクロック発生回路34に接続されて第3クロック信号φ3が入力される。第3NOR回路N3の出力端子(図14のI点参照)は、第7スイッチSW7に接続され、第3NOR回路N3の出力は、第7スイッチSW7のオン、オフ動作を制御する。
第4NOR回路N4は、その一方の入力端子が第2RSフリップフロップ回路44のQ(/)端子(図14のF点参照)に接続され、インバータ回路36によって第3クロック信号φ3が反転されたクロック信号が入力される。第4NOR回路N4の出力端子(図14のJ点参照)は、第8スイッチSW8に接続され、第4NOR回路N4の出力は、第8スイッチSW8のオン、オフ動作を制御する。
第1RSフリップフロップ回路43は、第1比較回路39の出力を所定の期間保持するための回路である。第1RSフリップフロップ回路43は、第5及び第6NOR回路N5,N6が組み合わされて構成され、第1RSフリップフロップ回路43内では、第5及び第6NOR回路N5,N6の各出力端子が互いの一方の入力端子に接続されている。第5及び第6NOR回路N5,N6の他方の入力端子は、それぞれ抵抗R5,R6を介してグランド端子に接続され、通常、ローレベルに維持されている。
第5NOR回路N5の他方の入力端子は、RSフリップフロップとしてセット信号(S)が入力される端子であり、第6NOR回路N6の他方の入力端子は、RSフリップフロップとしてリセット信号(R)が入力される端子である。また、第5NOR回路N5の出力端子は、RSフリップフロップのQ(/)端子に相当し、第6NOR回路N6の出力端子は、RSフリップフロップのQ端子に相当する。
第5NOR回路N5の他方の入力端子は、第1比較回路39の出力端子に接続されており、第6NOR回路N6の他方の入力端子は、クロック発生回路34に接続されて、第3クロック信号φ3が入力される。
第2RSフリップフロップ回路44は、第2比較回路40の出力を所定の期間保持するための回路である。第2RSフリップフロップ回路44は、図14に示すように、第7及び第8NOR回路N7,N8によって構成され、第1RSフリップフロップ回路43と略同様の構成を有している。
信号出力回路45は、第9NOR回路N9によって構成され、第9NOR回路N9の入力端子には、第1RSフリップフロップ回路43の第6NOR回路N6の出力端子(Q端子)及び第2RSフリップフロップ回路44の第8NOR回路N8の出力端子(Q端子)が接続されている。第9NOR回路N9の出力端子からは、パルス幅変調信号PWM−OUTが出力される。
図15は、第3クロック信号φ3の信号変化における、第3積分用コンデンサC3の一端(図14のA点参照)の電圧波形を示す図である。
図14のA点においては、第3クロック信号φ3がハイレベルのとき(第1期間T1参照)、スイッチ回路35が第3積分回路37側に切り替わり、これにより、第3積分用コンデンサC3が充電される。すなわち、第1充電用バイアス電流源31からのバイアス電流Ibと、オーディオ信号変換回路33からの電流(G・eS)とが合成され、第3積分用コンデンサC3には、合成された和電流(Ib+G・eS)が流れ、第3充電用コンデンサC3において充電が行われる。
図15の符号W0の電圧波形は、オーディオ信号eSが無信号のときの波形を示し、符号W1の電圧波形は、オーディオ信号eSが正(0<(G・eS)<(Ib/2))であってその振幅が比較的大きいとき(すなわち変調率mが比較的高いとき)の波形を示し、符号W2の電圧波形は、オーディオ信号eSが負(0>(G・eS)>(−Ib/2))であってその振幅が比較的大きいときの波形を示している。
図15によると、オーディオ信号eSが正であってその振幅が比較的大きいときの電圧波形W1は、その傾きが、オーディオ信号eSが無信号のときの電圧波形W0に比べて急であり、オーディオ信号eSが負であってその振幅が比較的大きいときの電圧波形W2は、その傾きがオーディオ信号eSが無信号のときの電圧波形W0に比べてなだらかになる。
第3充電用コンデンサC3における充電は、第3クロック信号φ3のレベルが反転するまで継続され、すなわち、第3積分用コンデンサC3における充電は、第3クロック信号φ3のレベルが反転するときに最大となる。例えば、図15に示すように、オーディオ信号eSが無信号のとき、最大充電電圧はVm0となる。また、オーディオ信号eSが正であって振幅が比較的大きいとき、最大充電電圧はVm1(>Vm0)となる。また、オーディオ信号eSが負であって振幅が比較的大きいとき、最大充電電圧はVm2(<Vm0)となる。
第3クロック信号φ3が反転してローレベルになると(第2期間T2参照)、スイッチ回路35が第4積分回路38側に切り替わり、第4充放電コンデンサC4が充電される。この第2期間T2における第3積分用コンデンサC3には、スイッチ回路35が第4積分回路38側に切り替わっているため、オーディオ信号変換回路33からの電流(G・eS)が流れず、第1充電用バイアス電流源31からのバイアス電流Ibのみが流れるため、オーディオ信号eSの正負の状態及び振幅の大きさにかかわらず、この第2期間T2における電圧波形(A点波形)の傾きは、常時一定となる。
第2期間T2においては、第3積分用コンデンサC3の充電が一定の電圧波形の傾きを有して継続され、第3積分用コンデンサC3のA点における電圧が第3比較回路39の基準電圧Vrefに達すると、第3リセット回路41によって第7スイッチSW7がオン動作する。
すなわち、第3積分用コンデンサC3のA点における電圧が基準電圧Vrefに達すると、第3比較回路39の出力は、瞬間的にハイレベルになり、これが第1RSフリップフロップ回路43のセット端子(S)に入力される。これにより、第1RSフリップフロップ回路43のQ(/)端子は、ローレベルになって、これが第3リセット回路41の第3NOR回路N3に入力される。第3NOR回路N3では、第3クロック信号φ3のローレベルの信号(第2期間T2のため)が入力されているので、第3NOR回路N3の出力は、ハイレベルとなり、これがリセット信号として、第7スイッチSW7に出力され、第7スイッチSW7がオン動作する。
第7スイッチSW7がオン動作すると、第3積分用コンデンサC3の一端における電圧が瞬時にグランド電位に供給され、第3積分用コンデンサC3に蓄積されていた電荷が強制的に放電され、第3積分用コンデンサC3における電圧がゼロになるようにリセットされる(図15のtR参照)。このリセットされるタイミングは、オーディオ信号eSの正負の状態と振幅の大きさとに依存する。
すなわち、第1期間T1において第3積分用コンデンサC3が充電されるが、この充電における電荷量は、オーディオ信号eSの正負の状態及び振幅の大きさに依存する。そして、第2期間T2において第3積分用コンデンサC3がバイアス電流Ibによって充電されるが、この場合の充電量は一定とされるため、第3積分用コンデンサC3のバイアス電流Ibのみによる充電が開始されてから(第2期間T2に移行してから)、第3積分用コンデンサC3の電圧が基準電圧Vrefに至るまでの時間tは、オーディオ信号eSの正負の状態及び振幅の大きさに依存することになる。
例えば、オーディオ信号eSが正であって振幅の大きさが比較的大きいと、第3積分用コンデンサC3における電圧は最大充電電圧Vm1となり、この場合、第3積分用コンデンサC3の電圧が基準電圧Vrefに至るまでの時間(図15のt1参照)は、オーディオ信号eSが無信号の場合のそれ(図15のt0参照)と比べ長くなる。逆に、オーディオ信号eSが負であって振幅の大きさが比較的大きいと、第3積分用コンデンサC3における電圧は最大充電電圧Vm2となり、この場合、第3積分用コンデンサC3の電圧が基準電圧Vrefに至るまでの時間(図15のt2参照)は、オーディオ信号eSが無信号の場合のそれ(図15のt0参照)と比べ短くなる。
つまり、第3積分用コンデンサC3のバイアス電流Ibのみによる充電が開始されてから第3積分用コンデンサC3の電圧が基準電圧Vrefに至るまでの時間tは、オーディオ信号eSの正負の状態及び振幅の大きさに依存することになり、この時間tに基づいて、パルス幅変調信号のパルス幅を生成するようにすれば、周期が一定の第3クロック信号φ3に基づいてパルス幅を生成することができる。
ここで、第3及び第4積分用コンデンサC3,C4の容量を同一(=C)とし、第3及び第4積分用コンデンサC3,C4の充電時間である期間(例えば第1期間T1に相当)をTとすると、最大充電電圧Vmは、Vm=[(Ib+G・eS)・T]/Cで表される。
バイアス電流Ibのみによる充電が開始されてから第3積分用コンデンサC3(又は第4積分用コンデンサC4)の電圧が基準電圧Vrefに至るまでの期間をtとすると、基準電圧Vrefは、Vref=Vm+(Ib・t)/Cで表される。
ここで、両式を変形して、tについて求めると、tは、t=[C・(Vref)]/Ib−[(1+(G・eS)/Ib)]・Tとなり、T−t=2T+(G・eS)/Ib・T−(C・Vref)/Ibとなる。
一方、変調度mは、m=[t−(T−t)]/Tで表されるので、m=[2C・(Vref)]/(Ib・T)−3−2(G・eS)/Ibとなる。変調度mがオーディオ信号eSに比例する条件は、[2C・(Vref)]/(Ib・T)=3であり、すなわち、(Ib・T)/C=2Vref/3を満足するようにバイアス電流Ib及び第3及び第4積分用コンデンサC3,C4の容量を選択するようにすれば、適切なパルス幅変調を実現することができる。
図16ないし図18は、上記パルス幅変調回路30における各信号のタイミングチャートを示す図である。図16は、オーディオ信号eSが無信号の場合(G・eS=0)を示しており、図17は、オーディオ信号eSが正の値の場合(0<G・eS<Ib/2)を示しており、図18は、オーディオ信号eSが負の場合(0>G・eS>−Ib/2)を示している。
図16における第1期間T1では、クロック発生回路34からの第3クロック信号φ3がハイレベルであり、これによってスイッチ回路35が第3積分回路37側に切り替えられる。そのため、第3積分回路37の第3積分用コンデンサC3には、第1充電用バイアス電流源31からのバイアス電流Ibと、オーディオ信号変換回路33からの電流(G・eS)とが合成された和電流(Ib+G・eS)が供給され、第3積分用コンデンサC3は充電される(A点波形参照)。
第1期間T1においては、スイッチ回路35が第3積分回路37側に切り替えられているため、第4積分回路38の第4積分用コンデンサC4には、第2充電用バイアス電流源32からのバイアス電流Ibが供給され、第4積分用コンデンサC4はこのバイアス電流Ibによって一定の充電量で充電される(B点波形参照)。
第1期間T1においては、第4比較回路40において第4積分用コンデンサC4が充電されたことによる電圧が基準電圧Vrefに達すると、第4比較回路40の出力が瞬間的にローレベルからハイレベルになる(D点波形参照)。第4比較回路40の出力は、第2RSフリップフロップ回路44のセット端子(S)に入力されているため、第2RSフリップフロップ回路44のQ(/)端子は、ハイレベルからローレベルにセットされる。
第2RSフリップフロップ回路44のQ(/)端子は、第4リセット回路42の第4NOR回路N4の一方の入力端子に接続されており、第4NOR回路N4の他方の入力端子は、インバータ回路36によってローレベル(第3クロック信号φ3はハイレベル)が入力されているので、第4NOR回路N4の出力は、ローレベルからハイレベルになり(J点波形参照)、このリセット信号が第8スイッチSW8に出力される。
これにより、第8スイッチSW8がオフ動作からオン動作になり、第4積分用コンデンサC4に蓄えられていた電荷は、第8スイッチSW8を介してグランド端子に流れ、強制的にかつ一気に放電が行われる。
第2RSフリップフロップ回路44のQ端子の出力(H点波形参照)は、第9NOR回路N9に入力され、パルス幅変調信号PWM−OUTとして出力される。
次いで、第2期間T2の期間では、クロック発生回路34からの第3クロック信号φ3がハイレベルからローレベルとなり、これによってスイッチ回路35が第4積分回路38側に切り替えられる。そのため、第4積分回路38の第4積分用コンデンサC4には、和電流(Ib+G・eS)が供給され、第4積分用コンデンサC4はこれによって充電される(B点波形参照)。
第2期間T2においては、スイッチ回路35が第4積分回路38側に切り替えられているため、第3積分回路37の第3積分用コンデンサC3には、第2充電用バイアス電流源32からのバイアス電流Ibのみが供給され、第3積分用コンデンサC3はこのバイアス電流Ibによって一定の充電量で充電される(A点波形参照)。
第2期間T2においては、第3比較回路39において第3積分用コンデンサC3が充電されたことによる電圧が基準電圧Vrefに達すると、第3比較回路39の出力が瞬間的にローレベルからハイレベルになる(C点波形参照)。第3比較回路39の出力は、第1RSフリップフロップ回路43のセット端子(S)に入力されるため、第1RSフリップフロップ回路43のQ(/)端子は、ハイレベルからローレベルにセットされる(E点波形参照)。
第1RSフリップフロップ回路43のQ(/)端子は、第3リセット回路41の第3NOR回路N3の一方の入力端子に接続されており、第3NOR回路N3の他方の入力端子は、クロック発生回路34からの第3クロック信号φ3(第2期間T2ではローレベル)が入力されているので、第3NOR回路N3の出力は、ローレベルからハイレベルになり(I点波形参照)、このリセット信号が第7スイッチSW7に出力される。
これにより、第7スイッチSW7がオフ動作からオン動作になり、第3積分用コンデンサC3に蓄えられていた電荷は、第7スイッチSW7を介してグランド端子に流れ、強制的にかつ一気に放電が行われる。
第1RSフリップフロップ回路43のQ端子の出力(G点波形参照)は、第9NOR回路N9に入力され、パルス幅変調信号PWM−OUTとして出力される。
その後、第3期間T3では、第3クロック信号φ3が反転されるため、第3積分用コンデンサC3においてオーディオ信号eSの振幅に応じた充電が行われる一方、第4積分用コンデンサC4においてはバイアス電流Ibに応じた充電が行われる。以降、半周期が経過するごとに、第3クロック信号φ3が反転され、第3及び第4積分用コンデンサC3,C4がオーディオ信号eSの振幅に応じた充電及びバイアス電流Ibに応じた充電が交互に繰り返される。
図17に示すように、オーディオ信号eSが正の場合には、和電流(G・eS+Ib)の大きさが大となり、第3又は第4積分用コンデンサC3,C4の一端(A点又はB点)における電圧波形の傾きも急となる。そのため、半周期の期間が変わる時点における第3又は第4積分用コンデンサC3,C4の充電電圧Vmは比較的大きくなり、これらが次の半周期で充電されるとき、オーディオ信号eSが無信号の場合に比べて、基準電圧Vrefに達する時間、すなわちバイアス電流Ibの供給のみで充電が開始されてから強制的にリセットされるまでの時間tが短くなる。したがって、図17に示すタイミングでパルス幅変調信号PWM−OUTが出力される。このように、オーディオ信号eSの振幅に応じたパルス幅変調信号PWM−OUTが出力されることになる。
また、図18に示すように、オーディオ信号eSが負の場合には、和電流(G・eS+Ib)の大きさが小となり、第3又は第4積分用コンデンサC3,C4の一端における電圧波形の傾きもなだらかとなる。そのため、半周期の期間が変わる時点における第3又は第4積分用コンデンサC3,C4の一端における充電電圧Vmは比較的小さくなり、これらが次の半周期で充電されるとき、オーディオ信号eSが無信号の場合に比べて、基準電圧Vrefに達する時間、すなわちバイアス電流Ibの供給のみで充電が開始されてから強制的にリセットされるまでの時間tが長くなる。したがって、図7のパルス幅変調信号PWM−OUTに示すタイミングでパルス幅変調信号PWM−OUTが出力される。
この第2実施形態においても、周期がほぼ一定の第3クロック信号φ3が用いられるため、キャリア周波数fをほぼ一定にすることができ、キャリア成分の漏洩分が増加するといったことを抑制することができるほか、第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
第1実施形態に係るパルス幅変調回路1では、第1及び第2比較回路19,20が汎用のCMOSインバータ素子で構成されると、第1及び第2比較回路19,20の基準電圧Vrefは、CMOSインバータ素子の電源電圧が約5Vであるとすると、その半分の約2.5Vとなる。オーディオ信号eSが無信号時のときに、第1又は第2積分用コンデンサC1,C2が単位期間(例えば第1期間T1)において充電される最大充電電圧Vmは、基準電圧Vrefの2倍の値になるように回路定数が設定されている。そのため、例えば最大の振幅を有するオーディオ信号eSが入力された場合には、最大充電電圧Vmは、CMOSインバータ素子の電源電圧をはるかに越えてしまう(例えば7.5V近傍まで上昇する)ことが生じる。また、場合によっては、最大充電電圧Vmが高いと、これがCMOSインバータ素子のゲート酸化膜の耐圧を超えてしまう可能性があり、CMOSインバータ素子が破壊するおそれがある。
しかしながら、この第2実施形態によれば、第3又は第4積分用コンデンサC3,C4の最大充電電圧Vmが基準電圧Vrefを超えることはないので(図15参照)、最大充電電圧VmがCMOSインバータ素子の電源電圧を越えてしまうといったことを防止することができ、CMOSインバータ素子が破壊するおそれを解消することができる。
また、第1実施形態に係るパルス幅変調回路1では、第1及び第2積分用コンデンサC1,C2の充放電動作における電流方向を切り替えるためのスイッチ回路14は、通常、汎用の電子スイッチによって構成される場合が多いが、この電子スイッチに、第1及び第2積分用コンデンサC1,C2による最大の充電電圧Vmが供給されることがあるので、電子スイッチには、第1及び第2積分用コンデンサC1,C2の最大の充電電圧Vmよりも高い電源電圧が供給されている。
また、充電用バイアス電流源11には、最大の充電電圧Vmよりも十分高い電源電圧が供給されており、放電用バイアス電流源16には、CMOSインバータ素子の電源電圧の低電位電圧よりも低い電源電圧が供給されている。したがって、第1実施形態に係るパルス幅変調回路1では、各回路に対してそれらに応じた出力電圧値の異なる多数の電源電圧を必要とし、必要となる電源の種類が多くなるといったことがあった。
しかしながら、この第2実施形態に係るパルス幅変調回路30では、最大充電電圧Vmが基準電圧Vrefを超えることがないので、第1実施形態のスイッチ回路14に相当するスイッチ回路35や第1実施形態の充電用バイアス電流源11に相当する第1及び第2充電用バイアス電流源31,32に対して最大充電電圧Vmよりも高い電源電圧を供給する必要がない。また、CMOSインバータ素子の電源電圧によって充電電流がバイアスされるのを防止するための逆電流防止用のダイオードD1〜D4(図8参照)も必要がなくなる。
また、第1実施形態に係るパルス幅変調回路1では、入力されるオーディオ信号eSの基準レベルと、パルス幅変調出力の基準レベルとは異なっているので、信号のレベルシフトを行う回路(グランド電位を基準とした信号を充電用バイアス電流源11の基準電位と同じに変換する回路、例えば図8に示すR1〜R4参照)も必要となる。
ところが、第2実施形態に係るパルス幅変調回路30では、最大充電電圧Vmが基準電圧Vrefを超えることはないので、上記レベルシフト回路は不要であり、また、各回路に供給する電源電圧値を共通化することができ、出力電圧値の異なる多数の電源電圧を必要とすることがない。例えば、後述する図19に示すように、このパルス幅変調回路30に必要な電源は、第1及び第2充電用バイアス電流源31,32、並びに電圧電流変換回路33に供給される±10V系電源と、第3及び第4比較回路39,40や第1及び第2RSフリップフロップ43,44等の論理ゲートに供給される5V系電源との2種類でよい。したがって、部品コストの削減化に寄与することができる。
図19は、図14に示すパルス幅変調回路の詳細な回路図である。
図19に示す回路図によると、第1及び第2充電用バイアス電流源31,32は、複数のCMOSインバータ素子が組み合わされて一つの回路として構成されている。クロック発生回路34は、複数のインバータ、抵抗及びコンデンサからなるマルチバイブレータによって構成されている。スイッチ回路35は、2つのスイッチ素子35a,35bからなり、スイッチ素子35aは、第3クロック信号φ3によってオン、オフ制御され、スイッチ素子35bは、第3クロック信号φ3が反転された第4クロック信号φ4によってそれぞれオン、オフ制御される。
また、第3及び第4リセット回路41,42は、そのリセット信号が第1及び第2RSフリップフロップ回路43,44のQ端子の出力をそれぞれ用いており、図14のG点及びI点の電圧波形、並びに図14のH点及びj点の電圧波形は、同様となるため、第1及び第2RSフリップフロップ回路43,44のQ(/)端子の出力は用いられていない。
図20は、図14に示すパルス幅変調回路30の変形例を示す図である。図14及び図19のパルス幅変調回路30では、オーディオ発生源AU(図1参照)から出力されるオーディオ信号eSが基準電位に対して正負の振幅を有しているため、電圧電流変換回路33は、オーディオ信号eSの正負の振幅を正負の電流に変換して出力するいわゆる両極性の信号電流を出力するものである。そのため、充電用バイアス電流源31,32によって第3及び第4積分回路37,38にバイアス電流Ibが常時供給される構成となっている。
ここで、オーディオ発生源AUが、例えば電流出力型DAコンバータ(図略)のように、両極性の信号電流に固定のバイアス電流Ib1が付加されて出力するといった単極性の信号電流を出力するタイプである場合には、図20に示すように、固定のバイアス電流Ib2を出力する充電用バイアス電流源47を別途設け、単極性の信号電流と固定のバイアス電流Ib2とが切り換えられて第3及び第4積分回路37,38を充電するようにしてもよい。
具体的には、両極性の信号電流に固定のバイアス電流Ib1が付加されて出力するオーディオ信号変換回路46の出力と、充電用バイアス電流源47の出力とを第3クロック信号φ3に基づいて切り換える切換スイッチ48が設けられる。例えば図15に示した第1期間T1では、オーディオ信号変換回路46の出力が第3積分回路37側に、充電用バイアス電流源47の出力が第4積分回路38側にそれぞれ切り換えられ、第2期間T2では、オーディオ信号変換回路46の出力が第4積分回路38側に、充電用バイアス電流源47の出力が第3積分回路37側にそれぞれ切り換えられる。
これにより、第1期間T1では、第3積分回路37は、固定のバイアス電流Ib1とオーディオ信号eSとの和電流(Ib1+eS)で充電される一方、第4積分回路38は、固定のバイアス電流Ib2で充電される。また、第2期間T2では、第3積分回路37は、固定のバイアス電流Ib2で充電される一方、第4積分回路38は、固定のバイアス電流Ib1とオーディオ信号eSとの和電流(Ib1+eS)で充電される。そのため、図14及び図19のパルス幅変調回路30と、ほぼ同様の動作を実現でき、適切なパルス幅変調信号PWM−OUTを出力することができる。
なお、オーディオ信号変換回路46では、単極性の信号電流を出力するために、固定のバイアス電流Ib1は、オーディオ信号eSの絶対値より大きいことが必要である(Ib1≧|eS|)。また、バイアス電流Ib1とバイアス電流Ib2とは、同じ値に設定する必要はなく、オーディオ信号eSの無信号時に、変調度mがゼロになるように、かつオーディオ信号eSの最大信号時にm<1が満足するように、Ib2≧Ib1であることが望ましい。
もちろん、この発明の範囲は上述した実施の形態に限定されるものではなく、第1及び第2実施形態に示した回路構成は一例であり、同等の機能を有するものであれば、種々の回路を適用することができる。