JP4580873B2 - アイオノマー組成物を用いたゴルフボール - Google Patents

アイオノマー組成物を用いたゴルフボール Download PDF

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Description

本発明は、ゴルフボールを作製するのに好適に用いることのできる新規なゴルフボール用アイオノマー組成物およびこれを用いたゴルフボールに関する。
従来のゴルフボールとしては、バラタカバーを有する糸巻きゴルフボールやアイオノマーカバーを有するツーピースゴルフボールやスリーピースゴルフボールなどが知られている。バラタカバーを有する糸巻きゴルフボールは、打球感やコントロール性に優れるが、製造工程が複雑なため高価になり、また、耐久性や耐擦過傷性に劣るという問題がある。アイオノマーカバーを有するゴルフボールは、比較的硬質なために反発性、耐擦過傷性、加工性等に優れているが、打球感やコントロール性が低いという問題がある。
そこで、例えば、特許文献1〜5には、アイオノマーカバーの打球感やコントロール性を改良することが提案されている。特許文献1には、例えば、硬質アイオノマーと軟質アイオノマーをブレンドする技術が開示されている。特許文献2には、比較的低いモジュラス値を有する2またはそれ以上のアイオノマー樹脂を使用する技術が開示されている。特許文献3には、アイオノマー樹脂とα―オレフィンと不飽和カルボン酸エステルと不飽和カルボン酸との三元共重合体樹脂とグリシジル基含有α−オレフィン性共重合樹脂との加熱混合物をカバーの基材樹脂として使用することが開示されている。特許文献4には、アイオノマー樹脂と無水マレイン酸変性オレフィン性共重合体とJIS−A硬度が30〜90のグリシジル基変性スチレンベースブロック共重合体との3種類の加熱混合物をカバーの基材樹脂として使用することが開示されている。特許文献5には、ゴルフボールカバー用組成物を製造する方法であって、2〜8個の炭素原子を有するオレフィンモノマーを含む第一のモノマー成分と不飽和カルボン酸に基づく4〜22個の炭素原子を有するアクリレート類エステルを含む第2のモノマー成分と一酸化炭素、二酸化イオウ、無水物モノマー、不飽和モノカルボン酸、2〜8個の炭素原子を有するオレフィン及びビニルエステルまたは4〜21個の炭素原子を有するアルキル酸のビニルエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーを含む任意の第3のモノマー成分を含むポリマーを無機金属塩基によって約1〜50%の鹸化度を得るように鹸化したポリマー塩を製造する方法が開示されている。
特開平1−308577号公報 特開平5−277208号公報 特開平7−132152号公報 特開平8−182777号公報 特表平11−500776号公報
上記のような改良技術によれば、アイオノマーカバーの打球感は、ある程度向上するものの、耐擦過傷性や反発性が低くなる傾向があり、反発性、耐擦過傷性、打球感のバランスの良いゴルフボールを一層高いレベルで実現することが望まれている。
上記課題を解決することのできた本発明のゴルフボール用アイオノマー組成物は、少なくとも下記成分を構成成分として含有するポリマーのカルボキシル基の少なくとも10モル%以上が無機金属化合物で中和されていることを特徴とする。
第一成分:炭素数が2〜8個のオレフィンモノマー
第二成分:炭素数が2〜18個の不飽和カルボン酸、および、
第三成分:ジエンまたはジエン重合体
すなわち、本発明の要旨は、ゴルフボール用アイオノマー組成物として使用するアイオノマーのポリマー成分として、ジエンまたはジエン重合体のようなゴム成分を用いることによって、耐擦過傷性を損なうことなく打球感を改善することができ、反発性、耐擦過傷性および打球感のバランスが良いゴルフボールを一層高いレベルで実現できたという点にある。
本発明によれば、反発性、耐擦過傷性、打球感のバランスに優れるゴルフボールが得られる。
(1)本発明のゴルフボール用アイオノマー組成物について
本発明のゴルフボール用アイオノマー組成物は、少なくとも下記成分を構成成分として含有するポリマーのカルボキシル基の少なくとも10モル%以上が無機金属化合物で中和されていることを特徴とする。
第一成分:炭素数が2〜8個のオレフィンモノマー
第二成分:炭素数が2〜18個の不飽和カルボン酸、および、
第三成分:ジエンまたはジエン重合体
まず、少なくとも下記成分を構成成分として含有するポリマーについて説明する。
第一成分:炭素数が2〜8個のオレフィンモノマー
第二成分:炭素数が2〜18個の不飽和カルボン酸、および、
第三成分:ジエンまたはジエン重合体
前記第一成分は、炭素数が2〜8個のオレフィンモノマーである。ここで、オレフィンとは、分子内に二重結合を1つもつ脂肪族不飽和炭化水素である。炭素数が2〜8個のオレフィンモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、へプテン、オクテンなどを挙げることができ、これらの中でもエチレン、プロピレンが好ましく、より好ましくはエチレンである。前記オレフィンモノマーは、単独であるいは2つ以上を組み合わせて使用することができる。
前記第二成分は、炭素数が2〜18個の不飽和カルボン酸であり、より好ましくは、炭素数が3〜8のα,β−不飽和カルボン酸である。前記不飽和カルボン酸とは、分子内に少なくとも1つ以上の二重結合とカルボキシル基とを有するものである。前記炭素数が2〜18個の不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸(trans−2−ブテン酸)、イソクロトン酸(cis−2−ブテン酸)、ソルビン酸、シトラコン酸、メサコン酸等が挙げられ、特に、アクリル酸、メタクリル酸等が好ましい。
前記第三成分は、ジエンまたはジエン重合体である。ここで「ジエン」とは、分子内に2個の二重結合をもつ化合物であり、好ましくは共役ジエンである。前記ジエンとしては、例えば、1,2−プロパジエン、1,2−ブタジエン、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,2−ペンタジエン、1,3−ペンタジエン、1,4−ペンタジエン、1,2−ヘキサジエン、1,3−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエンなどを挙げることができ、好ましくは1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)である。なお、本発明では、分子内に2個以上の二重結合とカルボキシル基とを有する化合物は、第二成分に分類するものとする。
ジエン重合体としては、前記ジエンの重合体を挙げることができ、好適にはポリブタジエンである。前記ジエン重合体としては、例えば、数平均分子量が500以上、より好ましくは1,000以上であって、10,000以下、より好ましくは5,000以下のものを使用することが望ましい。
前記ジエン重合体としては、ポリマー中に導入するために、両末端に官能基を有するジエン重合体を使用することが好ましい。前記両末端の官能基としては、例えば、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、イソシアネート基、ハロゲン、ニトロ基、チオール基、エポキシ基を挙げることができ、好ましくは、ヒドロキシル基、カルボキシル基、または、エポキシ基である。また、両末端の官能基は、異なっていても同一であってもよいが、同一であることが好ましい。
両末端に官能基を有するジエン重合体としては、カルボキシル基末端ポリブタジエン、ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、あるいは、エポキシ基末端ポリブタジエンなどが好適であり、具体的には、日本曹達社製ポリブタジエングリコールGシリーズ(ヒドロキシル基末端)、ポリブタジエンジカルボン酸Cリシーズ(カルボキシル基末端)、出光石油化学社製のR−45HT、poly ip(ヒドロキシル基末端)などを挙げることができる。
また、本発明で使用するポリマーは、必要に応じて、第四成分として不飽和カルボン酸エステルを含有しても良い。前記不飽和カルボン酸エステルとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸(trans−2−ブテン酸)、イソクロトン酸(cis−2−ブテン酸)、ソルビン酸、シトラコン酸、メサコン酸などのメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、イソブチルエステル等を挙げることができ、特に、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルが好ましい。
本発明で使用する前記ポリマーとしては、少なくとも上記第一成分、第二成分、及び、第三成分を構成成分として含有するものであれば良く、より好ましくは第一成分、第二成分、および、第三成分を構成成分として含有する三元ポリマーであり、さらに好ましくは、第一成分としてエチレンを、第二成分として(メタ)アクリル酸を、第三成分としてヒドロキシル基末端ポリブタジエンを用いた三元ポリマーである。
本発明において使用する前記ポリマー中の第一成分の含有率は、1質量%以上、より好ましくは、5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であって、95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下であることが望ましい。第一成分の含有率が上記範囲外であると、得られる組成物の反発弾性が不十分になる場合があるからである。
前記ポリマー中の第二成分の含有率は、1質量%以上、より好ましくは、5質量%以上、さらに好ましくは8質量%以上であって、50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下であることが望ましい。第二成分の含有率が上記範囲外であると、得られる組成物の反発弾性が不十分になる場合があるからである。
前記ポリマー中の第三成分の含有率は、4質量%以上、より好ましくは、5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であって、70質量%以下、より好ましくは65質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下であることが望ましい。第三成分の含有率が上記範囲外であると、得られる組成物の反発弾性が不十分になる場合があるからである。
尚、前記第一成分〜第三成分、必要に応じて第四成分を使用する場合の各成分の含有率は、その合計含有率が100質量%となるように、上記範囲の中から適宜選択することが好ましい態様である。
本発明のゴルフボール用アイオノマー組成物は、前記ポリマーのカルボキシル基の少なくとも10モル%以上が無機金属化合物で中和されている。前記ポリマー中のカルボキシル基の中和度は、10モル%以上、より好ましくは20モル%以上であり、さらに好ましくは30モル%以上である。カルボキシル基の中和度が10モル%未満であると、アイオノマー化の効果が小さくなり、耐擦過傷性および反発性が不十分になる。一方、アイオノマー化の効果が飽和するので、カルボキシル基の中和度は、95モル%以下が好ましく、90モル%以下がより好ましく、80モル%以下がさらに好ましい。尚、前記カルボキシル基の中和度は、前記ポリマーが含有するカルボキシル基の総モル数に対する中和されているカルボキシル基のモル数の割合である。
前記中和度は、原料仕込量から算出されるものであるが、例えば、前記ポリマーをテトラヒドロフランに熱時融解し、加熱状態で規定濃度の水酸化カリウムで滴定することにより求めたポリマー中の不飽和カルボン酸の未中和カルボキシル基([COOH])のモル数と、金属分析によって算出した中和カルボキシル基([COOM])のモル数から、下記式によって算出することも可能である。
中和度(モル%)=[COOM]/([COOH]+[COOM])×100
金属分析としては、例えば、ナトリウムなどの1価金属については、日立製作所社製偏光ゼーマン原子吸光分光光度計180−80型などにより行うことができ、亜鉛などの2価金属については、例えば、セイコー電子工業社製シーケンシャル型ICP発光分光分析計SPS1100型を用いて行うことができる。
カルボキシル基を中和する無機金属化合物としては、周期律表の1族から17族、ランタノイド、および、アクチノイドの中から選ばれる1つの金属の水酸化物、炭酸化物(炭酸塩)、炭酸水素化物(炭酸水素塩)、酸化物、リン酸化物(リン酸塩)、硫酸化物(硫酸塩)、酢酸金属塩のいずれであっても良い。
前記無機金属化合物として好ましいのは、ナトリウム、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属;マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウムなどの2価の金属;アルミニウム、ネオジムなどの3価の金属;錫、ジルコニウムなどのその他の金属の水酸化物、酸化物、炭酸水素化物(炭酸水素塩)を挙げることができ、単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
前記アイオノマー組成物のスラブ硬度は、ショアD硬度で、20以上、より好ましくは30以上、さらに好ましくは40以上であって、70以下、より好ましくは65以下、さらに好ましくは60以下であることが望ましい。スラブ硬度が20未満では、カバーに用いる際に、柔らか過ぎて耐擦過傷性や反発性が低くなる場合がある。一方、スラブ硬度がショアD硬度で70を超えると、硬すぎてクラブで打撃する際の衝撃で割れが生じる場合がある。
本発明のゴルフボール用アイオノマー組成物の製造方法は、特に限定されるものではなく、第一成分である炭素数が2〜8個のオレフィンモノマーと第二成分である炭素数が2〜18個の不飽和カルボン酸とを共重合してなる二元共重合体、および/または、第一成分である炭素数が2〜8個のオレフィンモノマーと第二成分である炭素数が2〜18個の不飽和カルボン酸と第四成分である不飽和カルボン酸エステルとを共重合してなる三元共重合体と、両末端に官能基を有するジエン重合体(以下、「テレケリック型ジエン重合体」という場合がある)とを反応させて反応生成物を得る工程と、前記二元共重合体、前記三元共重合体、または、得られた反応生成物のカルボキシル基を無機金属化合物で中和する工程とを含むことを特徴とする。また、前記二元共重合体または三元共重合体の両末端に適切な官能基を導入して、二元共重合体または三元共重合体の両末端に官能基が導入されたテレケリック型共重合体を作製すれば、共重合体の両末端の官能基とテレケリック型ジエン重合体の両末端官能基とを選択的に反応させることもできる。ここでいう、両末端とは、テレケリック型共重合体の主鎖の両末端であり、両末端に導入する官能基は、不飽和カルボン酸に由来するものではなく、後述する別な方法により共重合体の末端に導入されるものである。
前記テレケリック型共重合体の末端の官能基としては、例えば、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、イソシアネート基、ハロゲン、ニトロ基、チオール基、エポキシ基を挙げることができ、好ましくは、ヒドロキシル基、アミノ基、または、イソシアネート基である。また、テレケリック型共重合体の両末端の官能基は、異なっていても同一であってもよいが、同一であることが好ましい。
本発明で好適に使用できるテレケリック型共重合体の製造は、公知の方法を採用することができ、例えば、高圧ポリエチレンを製造するのと同様の撹拌機を持った槽型リアクターで、反応圧力約100〜300KPa、反応温度約150℃から350℃の条件の下、ラジカル開始剤を重合触媒として合成することができる。この際に、官能基を導入できる開始剤もしくは連鎖移動剤を用いれば、得られる共重合体の両末端に官能基を導入することができる。
例えば、ヒドロキシル基を導入できる開始剤として、過酸化水素、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}ジハイドロクロライド(和光純薬工業製VA−60)、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド](和光純薬工業製VA−086)、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}(和光純薬工業製VA−080)などを挙げることができ、カルボキシル基を導入できる開始剤としては、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ハイドレート(和光純薬工業製VA−057)、アミノ基を導入できる開始剤としては、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライド(和光純薬工業製V−50)などを挙げることができる。また、アリル基を導入できる開始剤2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド](和光純薬工業製VF−096)を用いて、一旦アリル基を導入してから、さらに付加反応や酸化反応を行うことにより、エポキシ基などの所望の官能基に変性しても良い。さらに、様々な官能基を有するアルコキシアミン型開始剤を挙げることができる。
官能基を導入できる連鎖移動剤としては、例えば、ハロゲンを導入できる連鎖移動剤として、四塩化炭素、四臭素化炭素などを挙げることができ、ハロゲンを一旦導入してから、これをニトロ基、チオール基、アミノ基、ヒドロキシル基などに置換することも好ましい態様である。ヒドロキシル基を導入できる連鎖移動剤としては、メルカプトエタノールを挙げることができる。また、CH=C(CHX)Y、X=BrやSOArなどの構造の付加開裂型連鎖移動剤を用いることによって、末端に官能基Xを導入することもできる。二元共重合体および/または三元共重合体の両末端に同一の官能基を導入する場合には、前記開始剤および連鎖移動剤として同一の官能基を導入できるものを採用することが好ましい。
また、末端にイソシアネート基を導入する方法としては、例えば、一旦共重合体の末端にヒドロキシル基またはアミノ基を導入し、次いでポリイソシアネートと反応させる方法や、一旦アミノ基を導入してから、ホスゲンと反応させてイソシアネート基に変性する方法を挙げることができる。
前記ポリイソシアネートとしては、例えば、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネートと2,6−トルエンジイソシアネートの混合物(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート(NDI)、3,3’−ビトリレン−4,4’−ジイソシアネート(TODI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PPDI)等の芳香族ポリイソシアネート;4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、水素添加キシリレンジイソシアネート(HXDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)等の脂環式ポリイソシアネート又は脂肪族ポリイソシアネート等のうちの1種、または、2種以上の混合物などを挙げることができる。
二元共重合体あるいは三元共重合体と、テレケリック型ジエン重合体との反応は、テレケリック型ジエン重合体に導入された官能基の種類に応じて、適宜選択することができる。
例えば、テレケリック型ジエン重合体の末端に導入された官能基がヒドロキシル基の場合、前記共重合体のカルボキシル基とヒドロキシル基末端ジエン重合体のヒドロキシル基とを脱水縮合反応させる態様を挙げることができる。前記脱水縮合反応は、例えば、濃硫酸の存在下で加熱還流すればよい。
また、二元共重合体または三元共重合体の両末端に官能基が導入されたテレケリック型共重合体と、テレケリック型ジエン重合体との反応は、テレケリック型共重合体、および、テレケリック型ジエン重合体に導入された官能基の種類に応じて、適宜選択することができる。例えば、テレケリック型共重合体の末端に導入された官能基がイソシアネート基であり、テレケリック型ジエン重合体の末端に導入された官能基がヒドロキシル基の場合、テレケリック型共重合体のイソシアネート基とテレケリック型ジエン重合体のヒドロキシル基とを選択的に付加反応させることができる。また、テレケリック型共重合体の末端に導入された官能基がヒドロキシル基であり、テレケリック型ジエン重合体の末端に導入された官能基がヒドロキシル基である場合、ポリイソシアネート化合物を介して両者を反応させることができる。
カルボキシル基を中和してアイオノマー化する方法としては、二元共重合体、三元共重合体あるいはテレケリック型共重合体とテレケリック型ジエン重合体との反応の種類に応じて適宜選択することができ、例えば、二元共重合体等のカルボキシル基を予め中和してから、テレケリック型ジエン重合体と反応させる態様、あるいは、二元共重合体等とテレケリック型ジエン重合体とを反応させて得られる反応性生物のカルボキシル基を中和する態様を挙げることができる。
二元共重合体等または得られる反応生成物のカルボキシル基の中和は、例えば、前記共重合体等または反応生成物を溶融させ、溶融した前記共重合体等または反応生成物に、所定量の無機金属化合物を添加し、混練することにより行うことができ、具体的には、前記共重合体等または反応生成物と前記無機金属化合物とを押出成形機を用いて、140〜300℃で溶融混練することによって行うことができる。無機金属化合物としては、上述した金属の水酸化物、酸化物、炭酸化物(炭酸塩)、炭酸水素化物(炭酸水素塩)、リン酸化物(リン酸塩)、硫酸化物(硫酸塩)、酢酸塩などを使用すれば良く、好ましくは、水酸化物または酸化物である。
(2)本発明のゴルフボールについて
本発明のゴルフボールは、ゴルフボールを構成する材料として、前記ゴルフボール用アイオノマー組成物を使用したものであれば、特に限定されないが、具体的には、
(A)ゴルフボール本体を構成する樹脂成分として、前記ゴルフボール用アイオノマー組成物を用いることを特徴とするワンピースゴルフボール;
(B)コアと前記コアを被覆するカバーとを有するツーピースゴルフボールであって、
前記コアおよび/またはカバーを構成する樹脂成分として、前記ゴルフボール用アイオノマー組成物を用いることを特徴とするツーピースゴルフボール、より好ましくはカバーを構成する樹脂成分として前記ゴルフボール用アイオノマー組成物を用いることを特徴とするツーピースゴルフボール;
(C)コアと前記コアを被覆する中間層と前記中間層を被覆するカバーとを有するスリーピースゴルフボールにおいて、コア、中間層、および、カバーの少なくとも一つを構成する樹脂成分として、前記ゴルフボール用アイオノマー組成物を用いることを特徴とするスリーピースゴルフボール、より好ましくは最外層のカバーを構成する樹脂成分として前記ゴルフボール用アイオノマー組成物を用いることを特徴とするスリーピースゴルフボール;
(D)少なくとも4層以上のマルチピースゴルフボールにおいて、少なくとも一層を構成する樹脂成分として、前記ゴルフボール用アイオノマー組成物を用いることを特徴とするマルチピースゴルフボール、より好ましくは最外層のカバーを構成する樹脂成分として前記ゴルフボール用アイオノマー組成物を用いることを特徴とするマルチピースゴルフボール;および
(E)糸巻きコアと前記糸巻きコアを被覆するカバーとを有する糸巻きゴルフボールであって、前記カバーを構成する樹脂成分として、前記ゴルフボール用アイオノマー組成物を用いることを特徴とする糸巻きゴルフボール、より好ましくは最外層のカバーを構成する樹脂成分として前記ゴルフボール用アイオノマー組成物を用いることを特徴とする糸巻きゴルフボールを挙げることができる。
以下、本発明のゴルフボール用アイオノマー組成物を、カバーまたは中間層を構成する樹脂成分として使用する態様について説明するが、本発明は斯かる態様に限定されるものではない。本発明のゴルフボール用アイオノマー組成物を用いて、カバーまたは中間層を形成する場合、カバーまたは中間層を形成する組成物(以下、単に『カバー(中間層)用組成物』と称する場合がある)として、前記アイオノマー組成物を樹脂成分として含有するものを使用すればよい。前記カバー(中間層)用組成物の樹脂成分における前記アイオノマー組成物の含有量は、樹脂成分100質量部中、50質量部以上が好ましく、60質量部以上がより好ましく、70質量部以上が更に好ましい。また、カバー(中間層)用組成物の樹脂成分として、前記アイオノマー組成物のみを使用することも好ましい態様である。
また、カバー(中間層)用組成物の樹脂成分として、本発明の効果を損なわない範囲で併用できる他の樹脂成分としては、従来公知のアイオノマー樹脂の外、アルケマ(株)から商品名「ペバックス(例えば、「ペバックス2533」)」で市販されている熱可塑性ポリアミドエラストマー、東レ・デュポン(株)から商品名「ハイトレル(例えば、「ハイトレル3548」、「ハイトレル4047」)」で市販されている熱可塑性ポリエステルエラストマー、BASFポリウレタンエラストマーズ社から商品名「エラストラン(例えば、「エラストランXNY97A」)」で市販されている熱可塑性ポリウレタンエラストマー、三菱化学(株)から商品名「ラバロン」で市販されている熱可塑性ポリスチレンエラストマー等が挙げられる。前記アイオノマー樹脂としては、特にエチレンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸の共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したアイオノマー樹脂、エチレンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したもの、又は、これらの混合物を挙げることができる。
前記アイオノマー樹脂の具体例を商品名で例示すると、三井デュポンポリケミカル(株)から市販されているハイミラン(Himilan)1555(Na)、ハイミラン1557(Zn)、ハイミラン1605(Na)、ハイミラン1706(Zn)、ハイミラン1707(Na)、ハイミランAM7311(Mg)等が挙げられ、三元共重合体アイオノマー樹脂としては、ハイミラン1856(Na)、ハイミラン1855(Zn)等が挙げられる。
さらにデュポン社から市販されているアイオノマー樹脂としては、サーリン(Surlyn)8945(Na)、サーリン9945(Zn)、サーリン8140(Na)、サーリン8150(Na)、サーリン9120(Zn)、サーリン9150(Zn)、サーリン6910(Mg)、サーリン6120(Mg)、サーリン7930(Li)、サーリン7940(Li)、サーリンAD8546(Li)等が挙げられ、三元共重合体アイオノマー樹脂としては、サーリン8120(Na)、サーリン8320(Na)、サーリン9320(Zn)、サーリン6320(Mg)等が挙げられる。
またエクソンモービル化学(株)から市販されているアイオノマー樹脂としては、アイオテック(Iotek)8000(Na)、アイオテック8030(Na)、アイオテック7010(Zn)、アイオテック7030(Zn)等が挙げられ、三元共重合体アイオノマー樹脂としては、アイオテック7510(Zn)、アイオテック7520(Zn)等が挙げられる。
尚、前記アイオノマー樹脂の商品名の後の括弧内に記載したNa、Zn、K、Li、Mgなどは、これらの中和金属イオンの金属種を示している。 本発明のゴルフボールのカバー(中間層)用組成物は、前記ゴルフボール用アイオノマー組成物の外、酸化チタン、青色顔料などの顔料成分、炭酸カルシウムや硫酸バリウムなどの比重調整剤、分散剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光材料または蛍光増白剤などを、所望の性能を損なわない範囲で含有してもよい。
また、本発明のゴルフボール用アイオノマー組成物を用いたカバーおよび中間層の厚みは、0.1mm以上、より好ましくは0.3mm以上、更に好ましくは0.5mm以上であって、2.0mm以下が好ましく、1.5mm以下がより好ましく、1.2mm以下がさらに好ましい。0.1mm未満では、カバーや中間層の成形が困難になる虞があるからである。2.0mm超では、カバーや中間層が厚くなりすぎて、得られるゴルフボールの反発性が、却って低下する場合があるからである。
カバーまたは中間層を形成する方法としては、例えば、コアをカバー(中間層)用組成物で被覆してカバーまたは中間層を成形する。カバーまたは中間層を成形する方法は、特に限定されるものではなく、例えば、カバー(中間層)用組成物を予め半球殻状のハーフシェルに成形し、それを2枚用いてコアを包み、130〜170℃で1〜5分間加圧成形するか、またはカバー(中間層)用組成物を直接コア上に射出成形してコアを包み込む方法が用いられる。
また、カバーを成形してゴルフボール本体を作製する際には、通常、表面にディンプルと呼ばれるくぼみが形成される。カバー成形後、ペイント仕上げ、スタンプ等も必要に応じて施し得る。さらに、ゴルフボール本体表面は、必要に応じて、マークや塗膜との密着性を向上するために、サンドブラスト処理のような研磨処理がなされてもよい。
前記態様は、ツーピースゴルフボール、スリーピースゴルフボール、マルチピースゴルフボールなどの多層構造を有するゴルフボールにおいて、中間層またはカバーとして前記アイオノマー組成物を使用する態様であるが、本発明では、これら多層構造を有するゴルフボールのコアまたはワンピースゴルフボール本体として、前記アイオノマー組成物を使用してもよい。もちろん、多層構造を有するゴルフボールのコアとして、通常のコア用ゴム組成物を使用することもできる。
前記アイオノマー組成物をコアまたはゴルフボール本体に成型する方法としては、特に限定されず、前記アイオノマー組成物を射出成型する方法を挙げることができる。
多層構造を有するゴルフボールのコアとして使用できる通常のコア用ゴム組成物としては、例えば、基材ゴム、共架橋剤、架橋開始剤、充填剤を含むコア用ゴム組成物を加熱プレスして成形したもの(ゴム製コア)であることが好ましい。
前記基材ゴムとしては、天然ゴムおよび/または合成ゴムを使用することができ、例えば、ポリブタジエンゴム、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレンポリブタジエンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)などを使用できる。これらの中でも、特に、反発に有利なシス結合が40%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上のハイシスポリブタジエンを用いることが好ましい。
前記架橋開始剤としては、有機過酸化物を好適に使用できる。前記有機過酸化物としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t―ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物が挙げられ、これらのうちジクミルパーオキサイドが好ましく用いられる。有機過酸化物の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.3質量部以上、より好ましくは0.4質量部以上であって、5質量部以下、より好ましくは3質量部以下であることが望ましい。0.3質量部未満では、コアが柔らかくなりすぎて、反発性が低下する傾向があり、5質量部を超えると、硬くなりすぎて、打球感が低下するからである。
前記共架橋剤としては、炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸またはその金属塩を使用できる。前記金属塩を構成する金属としては、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、ナトリウムを挙げることができ、反発性が高くなるということから、亜鉛を使用することが好ましい。前記α,β−不飽和カルボン酸またはその金属塩として好ましいのは、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸亜鉛、メタクリル酸亜鉛である。
前記共架橋剤の使用量は、基材ゴム100質量部に対して、10質量部以上、より好ましくは15質量部以上、さらに好ましくは20質量部以上であって、55質量部以下、より好ましくは50質量部以下、さらに好ましくは48質量部以下であることが望ましい。共架橋剤の使用量が10質量部未満では、適当な硬さとするために有機過酸化物の使用量を増加しなければならず、反発性が低下する傾向がある。一方、共架橋剤の使用量が55質量部を超えると、コアが硬くなりすぎて、打球感が低下する虞がある。
前記充填材は、ゴルフボールのコアに通常配合されるものであればよく、無機塩(具体的には、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等)、高比重金属粉末(例えば、タングステン粉末、モリブデン粉末等)およびそれらの混合物が挙げられる。前記充填剤の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.5質量部以上、好ましくは1質量部以上であって、30質量部以下、好ましくは20質量部以下であることが望ましい。0.5質量部未満では、比重調整が困難になり適正な重量が得られなくなり、30質量部を超えるとコア全体に占めるゴム分率が小さくなって反発性が低下するからである。
前記コア用ゴム組成物には、基材ゴム、共架橋剤、有機過酸化物、及び、充填剤に加えて、さらに、有機硫黄化合物、老化防止剤、または、しゃく解剤等を適宜配合することができる。
前記有機硫黄化合物としては、例えば、ジフェニルジスルフィド、ビス(4−クロロフェニル)ジスルフィド、ビス(3−クロロフェニル)ジスルフィド、ビス(4−ブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(3−ブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(4−フルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(4−ヨードフェニル)ジスルフィド,ビス(4−シアノフェニル)ジスルフィド等のモノ置換体;ビス(2,5−ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(3,5−ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6−ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,5−ジブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(3,5−ジブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2−クロロ−5−ブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2−シアノ−5−ブロモフェニル)ジスルフィド等のジ置換体;ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2−シアノ−4−クロロ−6−ブロモフェニル)ジスルフィド等のトリ置換体;ビス(2,3,5,6−テトラクロロフェニル)ジスルフィド等のテトラ置換体;ビス(2,3,4,5,6−ペンタクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,3,4,5,6−ペンタブロモフェニル)ジスルフィド等のペンタ置換体等が挙げられる。これらのジフェニルジスルフィド類はゴム加硫体の加硫状態に何らかの影響を与えて、反発性を高めることができる。これらの中でも、特に高反発性のゴルフボールが得られるという点から、ジフェニルジスルフィド、ビス(ペンタブロモフェニル)ジスルフィドを用いることが好ましい。
前記老化防止剤の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上、1質量部以下であることが好ましい。また、しゃく解剤は、基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上、5質量部以下であることが好ましい。
前記コアは、前述のコア用ゴム組成物を混合、混練し、金型内で成形することにより得ることができる。この際の条件は、特に限定されないが、通常は130〜180℃、圧力2.9〜11.8MPaで10〜40分間で行われる。
前記コアの直径は、30mm以上、より好ましくは32mm以上であって、41mm以下、より好ましくは40.5mm以下であることが望ましい。前記コアの直径が30mmよりも小さいと、中間層またはカバー層を所望の厚さより厚くする必要があり、その結果反発性が低下する場合がある。一方、コアの直径が41mmを超える場合は、中間層またはカバー層を所望の厚さより薄くする必要があり、中間層またはカバー層の機能が十分発揮されない。
前記コアは、直径30mm〜41mmの場合、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの圧縮変形量(圧縮方向にゴルフボールが縮む量)が、2.5mm以上、より好ましくは3.0mm以上であって、5.0mm以下、より好ましくは4.5mm以下であることが望ましい。前記圧縮変形量が、2.5mm未満では打球感が硬くて悪くなり、5.0mmを超えると、反発性が低下する場合がある。
本発明のゴルフボールは、直径42.60mm〜42.90mmの場合、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの圧縮変形量(圧縮方向にゴルフボールが縮む量)が、2.0mm以上、より好ましくは2.1mm以上、さらに好ましくは2.2mm以上であって、4.5mm以下、より好ましくは4.0mm以下、さらに好ましくは3.5mm以下であることが望ましい。前記圧縮変形量が、2.0mm未満では打球感が硬くて悪いものとなり、4.5mmを超えると反発性が低下する場合がある。
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
[評価方法]
(1)スラブ硬度(ショアD硬度)
ゴルフボール用アイオノマー組成物またはカバー(中間層)用組成物を用いて、熱プレス成形により、厚み約2mmのシートを作製し、23℃で2週間保存した。このシートを、測定基板等の影響が出ないように、3枚以上重ねた状態で、ASTM−D2240に規定するスプリング式硬度計ショアD型を備えた高分子計器社製自動ゴム硬度計P1型を用いて測定した。
(2)耐擦過傷性
ゴルフラボラトリー社製のスイングロボットに市販のピッチングウエッジを取り付け、ヘッドスピード36m/秒でボールの2箇所を各1回打撃し、打撃部を観察して、3段階で評価した。
評価基準
○:ゴルフボール表面に傷がわずかに残るがほとんど気にならない。
△:ゴルフボール表面に傷がくっきり残り若干毛羽立ちが見られる。
×:ゴルフボール表面がかなり削れ、毛羽立ちが目立つ。
(3)圧縮変形量(mm)
ゴルフボールまたはコアに初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの圧縮方向の変形量(圧縮方向にゴルフボールが縮む量)を測定した。
(4)飛距離(ヤード)及びスピン速度(rpm)
ツルーテンパー社製のスイングロボットにメタルヘッド製#W1ドライバー(10度)を取り付け、ヘッドスピード45m/秒でゴルフボールを打撃し、飛距離(発射始点から静止地点までの距離(ヤード))を測定した。測定は、各ゴルフボールについて10回ずつ行って、その平均値をそのゴルフボールの飛距離とした。また、スピン速度、打出し直後の打出角(単位:度)およびボール速度は、打撃されたゴルフボールを連続写真撮影することによって求めた。
(5)打球感
ゴルファー10人(プロ2人、ハンディキャップ5以下の上級アマ8人)により、メタルヘッド製W#1ドライバーを用いて実打テストを行って、打撃時の衝撃の反発感を下記基準に基づいて評価を行い、最も多い評価結果をそのゴルフボールの打球感とした。
○:反発感があって良い
△:普通
×:重い感じで反発感が弱くて悪い
[アイオノマー組成物の合成]
(1)内容積1.5リットルの撹拌式オートクレーブ型連続反応器に、エチレンとメタクリル酸の単量体混合物(エチレン:メタクリル酸=80:10質量比)と、ラジカル重合開始剤として2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピロンアミジン]ハイドレート(和光純薬工業製V−057)を、単量体混合物に対して4質量ppmになるように供給し、反応器内の圧力を1600kg/cmに保ちながら160℃で反応を行った。得られた共重合体と未反応のモノマーを調節弁を通して分離容器に取り出し、共重合体を分離して両末端にカルボキシル基を導入した共重合体を得た。得られたカルボキシル基両末端エチレン−メタクリル酸共重合体90質量部とジエン重合体としてポリブタジエングリコール(日本曹達社製ポリブタジエングリコールG−1000:分子量1000)10質量部とをトルエンに溶解して、そこに触媒として濃硫酸を加えて加熱還流して、カルボキシル基両末端エチレン−メタクリル酸共重合体とポリブタジエングリコールとを脱水縮合反応させた後、トルエンをエバポレーターで留去して、得られた反応生成物のカルボキシル基の50モル%を中和するように水酸化ナトリムを配合し、二軸混練押出機で押出ししてアイオノマー組成物1を得た。
(2)水酸化ナトリウムの代わりに、得られた反応生成物のカルボキシル基の70モル%を中和するように水酸化亜鉛を用いた以外は、アイオノマー組成物1と同様の方法により、アイオノマー組成物2を作製した。
(3)単量体混合物として、エチレンとメタクリル酸の単量体混合物(エチレン:メタクリル酸=70:10質量比)を80質量部用い、ジエン重合体として、ポリブタジエングリコール(日本曹達社製ポリブタジエングリコールG−2000:分子量2000)を20質量部用いた以外は、アイオノマー組成物1と同様の方法により、アイオノマー組成物3を作製した。
(4)水酸化ナトリウムの代わりに、得られた反応生成物のカルボキシル基の70モル%を中和するように水酸化亜鉛を用いた以外は、アイオノマー組成物3と同様の方法により、アイオノマー組成物4を作製した。
(5)単量体混合物として、エチレンとメタクリル酸の単量体混合物(エチレン:メタクリル酸=66:9質量比)を75質量部用い、ジエン重合体として、ポリブタジエングリコール(日本曹達社製ポリブタジエングリコールG−3000:分子量3000)を25質量部用いた以外は、アイオノマー組成物1と同様の方法により、アイオノマー組成物5を作製した。
(6)水酸化ナトリウムの代わりに、得られた反応生成物のカルボキシル基の70モル%を中和するように水酸化亜鉛を用いた以外は、アイオノマー組成物5と同様の方法により、アイオノマー組成物6を作製した。
[ゴルフボールの作製]
(1)コアの作製
表1に示す配合のコア用ゴム組成物を混練し、半球状キャビティを有する上下金型内で170℃で20分間加熱プレスすることにより球状コアを得た。
Figure 0004580873
ポリブタジエンゴム:JSR(株)製のBR−18(ハイシスポリブタジエン)
アクリル酸亜鉛:日本蒸留製のZNDA−90S
酸化亜鉛:東邦亜鉛製の銀嶺R
硫酸バリウム:堺化学製硫酸バリウムBD
ジクミルパーオキサイド:日本油脂製のパークミルD
尚、硫酸バリウムは、得られるゴルフボールの質量が、45.4gとなるように適量加えた。
(2)カバー(中間層)用組成物の調製
表2に示した配合材料を用いて、表3に示したように二軸混練型押出機によりミキシングして、ペレット状のカバー(中間層)用組成物をそれぞれ調製した。押出条件は、スクリュー径45mm、スクリュー回転数200rpm、スクリューL/D=35であり、配合物は、押出機のダイの位置で160〜230℃に加熱された。
Figure 0004580873
Figure 0004580873
PBG−1000〜3000:日本曹達社製ポリブタジエングリコール(分子量1000〜3000)
ハイミラン:三井デュポンポリケミカル(株)製アイオノマー樹脂
サーリン:デュポン社製のアイオノマー樹脂
エラストランXNY97A:BASF(株)製の熱可塑性ポリウレタンエラストマー
(3)ゴルフボール本体の作製
上記で得たカバー(中間層)用組成物を、前述のようにして得たコア上に射出成形することにより、前記コアを被覆する中間層および/またはカバーを形成した。成形用上下金型は、半球状キャビティを有し、ディンプル付きで、ディンプルの一部が進退可能なホールドピンを兼ねている。上記ホールドピンを突き出し、コアを投入後ホールドさせ、80トンの圧力で型締めした金型に210℃に加熱した樹脂を0.3秒で注入し、30秒間冷却して型開きしてゴルフボールを取り出した。得られたゴルフボール本体の表面をサンドブラスト処理をして、マーキングを施した後、クリアーペイントを塗布し、40℃のオーブンで塗料を乾燥させ、直径42.7mm、質量45.4gのゴルフボールを得た。尚、ゴルフボール表面には、表4及び図1〜図3に示したディンプルパターンを形成した。
得られたゴルフボールの構成、並びに、耐擦過傷性、飛距離、打球感、スピン量などについて評価した結果を表5に示した。
Figure 0004580873
表4中のディンプルの「直径」は図4におけるDiを、「深さ」は接線Tと最深箇所Pとの距離であり、「容積」は、ディンプル10の輪郭を含む平面と仮想球14とに囲まれた部分の容積を意味する。
Figure 0004580873
表5中、ゴルフボールNo.1〜No.8およびNo.15は、ゴルフボールのカバーとして、第一成分としてエチレンと、第2二成分としてメタクリル酸と、第三成分としてポリブタジエンとを構成成分として含有するポリマーのカルボキシル基の少なくとも10モル%以上を中和して得られるゴルフボール用アイオノマー組成物を用いて作製した場合である。いずれのゴルフボールも、飛距離(反発性)、耐擦過傷性、打球感のバランスに優れるゴルフボールが得られていることが分かる。ゴルフボールNo.9〜No.12およびNo.14は、従来のアイオノマー樹脂の混合物を用いた場合であるが、耐擦過傷性がいずれも悪く、ゴルフボールNo.9からNo.11は、打球感も低くなっていることが分かる。ゴルフボールNo.13は、ウレタンカバーを有する従来例であるが、打球感が低下した。
本発明によれば、飛距離(反発性)、耐擦過傷性、打球感のバランスに優れるゴルフボールを提供できる。
ゴルフボール表面に形成したディンプルパターンの平面図である。 ゴルフボール表面に形成したディンプルパターンの正面図である。 ゴルフボール表面に形成したディンプルパターンの底面図である。 ゴルフボール表面に形成したディンプルの断面の拡大図である。
符号の説明
2:ゴルフボール、10:ディンプル、12:ランド、14:仮想球、A:ディンプルA、B:ディンプルB、C:ディンプルC、D:ディンプルD、E:ディンプルE、F:ディンプルF、G:ディンプルG、Ed:エッジ

Claims (7)

  1. ワンピースゴルフボール、コアと前記コアを被覆するカバーとを有するツーピースゴルフボール、コアと前記コアを被覆する中間層と前記中間層を被覆するカバーとを有するスリーピースゴルフボール、または、少なくとも4層以上のマルチピースゴルフボールにおいて、
    ワンピースゴルフボールの本体を構成する樹脂成分、または、ツーピースゴルフボール、スリーピースゴルフボールもしくはマルチピースゴルフボールの少なくとも一層を構成する樹脂成分として、
    少なくとも下記成分を構成成分として含有するテレケリック型共重合体の両末端にジエン重合体が結合しているポリマーのカルボキシル基の少なくとも10モル%以上が無機金属化合物で中和されているアイオノマー組成物を用いることを特徴とするゴルフボール
    第一成分:炭素数が2〜8個のオレフィンモノマー、および、
    第二成分:炭素数が2〜18個の不飽和カルボン酸
  2. 前記ジエン重合体の数平均分子量が、500以上10,000以下である請求項1に記載のゴルフボール
  3. 前記無機金属化合物が、周期律表の1族から17族、ランタノイド、および、アクチノイドの中から選ばれる1つの金属の水酸化物、炭酸化物、炭酸水素化物、酸化物、リン酸化物、硫酸化物のいずれかである請求項1または2に記載のゴルフボール
  4. 前記ポリマー中の第一成分の含有率が1質量%〜95質量%である請求項1〜3のいずれか一項に記載のゴルフボール
  5. 前記ポリマー中の第二成分の含有率が1質量%〜50質量%である請求項1〜4のいずれか一項に記載のゴルフボール
  6. 前記ポリマー中のジエン重合体成分の含有率が4質量%〜70質量%である請求項1〜5のいずれか一項に記載のゴルフボール
  7. 前記ジエン重合体成分が、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,2−プロパンジエンからなる群より選択される少なくとも一種のジエンの重合体である請求項1〜6のいずれか一項に記載のゴルフボール
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