JP4580487B2 - ハロゲン化ホスホニトリルの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は触媒組成物の作製方法、特にハロゲン化ホスホニトリル触媒組成物を作製する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ハロゲン化ホスホニトリル化合物は、重合反応によりオルガノポリシロキサンを調製するに際して、触媒として使用することが当該分野で周知である。例えば、英国特許明細書第765,744 号には、液状オルガノシロキサン重合のための好ましいハロゲン化ホスホニトリルとして、式:(PNCl2)n(式中、nは少なくとも3、最も好ましくは3〜6の整数である)で示される重合性クロライドを使用することが開示され、また、英国特許明細書第910,513 号には、安定化高粘性オルガノポリシロキサン油の製造法に使用するハロゲン化ホスホニトリル触媒が開示される。オルガノポリシロキサン重合のための触媒として、当該分野で特に好ましいものは、式:(X(PX2=N)aPX3)+X-、または式:(X(PX2=N)aPX3)+(PX6)-(式中、Xはハロゲン、好ましくは塩素であり、およびaは1〜9の整数、好ましくは2である)のハロゲン化ホスホニトリル化合物である。最も一般的に使用される、これら後者ハロゲン化ホスホニトリル触媒を作製する方法は、米国特許第3,839,388 号に開示され、該方法は高沸点塩素化溶媒、例えば、トリクロロベンゼン、ジクロロベンゼンまたは1,1,2,2−テトラクロロエタン中で、五塩化リンを塩化アンモニウムと反応させることを含む。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような塩素化溶媒の使用は、その毒性およびオゾン消耗を誘因する能力から、ますます受け入れられなくなっており、問題は線状ハロゲン化ホスホニトリルは大抵の他の通常の有機溶媒への溶解性が非常に低いとの事実とからみあっている。それゆえ、塩素化溶媒を使用しないで線状ハロゲン化ホスホニトリルを得る別な方法が必要とされている。
【0004】
【課題を解決する手段】
本発明者らは、オルガノポリシロキサンの調製に使用する触媒として有用であるハロゲン化ホスホニトリル化合物への経路であって、塩素化溶媒を使用しない経路を見出した。
【0005】
【発明の実施の態様】
本明細書で使用される場合、「含む(comprises) 」との語は、「含む(includes)」、「包含する(comprehends)」および「成る(consists of) 」との概念を意味し、かつ包含するとのそのもっとも広い意義をもって使用される。
【0006】
本発明では、不活性非塩素化溶媒中で、冷却下に、PX5およびジシラザンを反応させる第1工程と、ハロゲン化ホスホニトリルを製造するに充分な時間、少なくとも50℃まで該反応混合物を加熱する第2工程と、を含む、式:(X(PX2=N)aPX3)+A-(式中、Xはハロゲンを示し、AはXまたは(PX6)-を示し、さらに、aは1〜9の整数である)のハロゲン化ホスホニトリルを作製する方法が提供される。
【0007】
本発明の方法は、線状および環状の両方の種を製造する米国特許第3,839,388 号の先行技術方法に比べて、実質的に線状ハロゲン化ホスホニトリル種のみを製造することに利点を有する。環状ハロゲン化ホスホニトリルは、オルガノポリシロキサンを重合する触媒として実質的に不活性であり、したがって、反応生成物としては望ましくない。本発明の方法は上記式を有する線状ハロゲン化ホスホニトリル種の混合物を製造し、生成物の大部分はa=1〜3を有し、より高い種、すなわち、a>3は少量である。オルガノポリシロキサンを重合する触媒として最も有効なハロゲン化ホスホニトリルは、a=2または3のものである。
【0008】
本発明の方法の第1工程では、ジシラザンは式:R3SiNHSiR3(式中、基Rはそれぞれ独立してアルキル基、好ましくはC1〜C6のアルキル基、より好ましくはメチル基、アルケニル基、例えば、ビニルまたはヘキセニル基、または水素原子である)を有していてもよい。好ましいジシラザンはヘキサメチルジシラザンである。
【0009】
本発明の方法の第1工程では、PX5とジシラザンとの反応は、該反応が発熱反応であることから、冷却下で実施される。好ましくは、該反応は0℃以下、例えば、塩または固体CO2で冷却しながら、または冷蔵再循環式冷却浴を使用して実施される。不活性非塩素化溶媒はPX5とジシラザンとの反応を阻害しない溶媒、例えば炭化水素などの非官能性溶媒であれば、いかなるものであってもよい。好適な溶媒としてはトルエン、ヘプタン、キシレンおよびシクロヘキサンが挙げられ、トルエンが好ましい。
【0010】
本発明の方法の第2工程では、第1工程で調製された反応混合物を50℃以上の温度、例えば、溶媒還流下に加熱する。ハロゲン化ホスホニトリル生成物を製造するに要する時間は、その反応条件に依存している。しかしながら、通常の条件は1〜4時間、溶媒の還流下に加熱することである。ハロゲン化ホスホニトリル生成物は、該反応混合物から容易に除去可能である溶媒から分離する。
【0011】
有機溶媒中のハロゲン化ホスホニトリルの可溶性を増加させ、取扱いを容易にし、さらに湿分感受性を減少させるために、これらをさらに、式:((CH3)2SiO)b(ヨ−ロッパ特許第0305737号に開示の方法参照) (式中、bは3〜6の整数(例えば、ヘキサメチルシクロトリシロキサンまたはオクタメチルシクロテトラシロキサン)、好ましくは3である)のシクロシロキサンと反応させて、式:Z−((CH3)2SiO)b−Z(式中、ZはXまたは基:OPX2(NPX2)aNPX2−であり、さらにXおよびaは上記したものである)の線状化合物を得てもよい。該シクロシロキサンは上記した第1および第2工程の実施により生成した反応混合物と単に混合し、さらに、好ましくは溶媒の還流下に加熱してもよい。
該反応は化合物の混合物を製造し、その内のあるものは、両末端基ZにXを有し、あるものは両末端基に基:OPX2(NPX2)aNPX2−を有し、あるものは、片方の末端基にXを、他方にOPX2(NPX2)aNPX2−を有する。触媒的活性種は、少なくとも1つのホスホニトリル末端基、すなわち、少なくとも1つの末端基ZにOPX2(NPX2)aNPX2−を有する。ハロゲン化ホスホニトリル含有種は、いくつかの有機溶媒、例えば、エチレングリコールジアセテートに可溶性であり、この特定の溶媒はハロゲン化ホスホニトリル含有種に対して不活性であり、さらにシロキサンに非常に可溶性であるとの利点を有する。該ハロゲン化ホスホニトリル含有種をエチレングリコールジアセテートに溶解して得られる溶液は、長期に安定であり、溶解したハロゲン化ホスホニトリル含有種は数ケ月間も触媒活性を保持することができる。上記した反応は、以下のように概略的に表され得る。
【0012】
【化1】
【0013】
【実施例】
本発明を、ここに実施例を用いて詳細に記述する。
比較例
4.83g(29.94ミリモル)のヘキサメチルジシラザン(HMDZ)を、9.56g(46.4ミリモル)のPCl5および50mlの無水トルエンを入れた100mlフラスコに加えた。この混合物を窒素雰囲気下に2時間、還流下に加熱した。反応生成物は2相、すなわち上部無色液体相と下部黄色固体相を示した。上部液体相は蒸留により除去した。固体相について31P NMRを調べ、所望の線状塩化ホスホニトリル種:(Cl(PCl 2 =N) aPCl3)+A−(式中、AはCl−および(PCl6)−の混合物である)は、a=1が2%モル、a=2が23%モル、a=3が37%モル、およびa≧4が12%モルの量で、環状物10%モルとともに存在することを確認した。
【0014】
実施例1
8.72g(41.8ミリモル)のPCl5および40mlのトルエンをフラスコ中で混合し、4.50g(27.92ミリモル)のHMDZを滴下して添加する前に、これを、固体二酸化炭素を使用して冷却した。次いで、このフラスコを室温まで加温し、2時間の還流下に加熱する前に、20分間放置した。生成物は黄色で透明な液体相と黄色固体相を有していた。溶媒を除去して、黄色固体を残し、冷却により結晶化させた。31P NMRを調べ、線状塩化ホスホニトリル種:(Cl(PCl 2 =N)aPCl3)+A−(式中、AはCl−および(PCl6)−の混合物である)は、a=1が2%モル、a=2が18%モル、a=3が40%モル、およびa≧4が26%モルの量で、環状物1%モルとともに存在することを確認した。
【0015】
実施例2
60.26g(289.71ミリモル)のPCl5および250mlのトルエンをフラスコ中で混合し、31.17g(193.14ミリモル)のHMDZを滴下して添加する前に、これを、固体二酸化炭素を使用して冷却した。その添加後、このフラスコを室温まで加温し、2時間の還流下に加熱する前に、10分間放置した。生成物は透明な液体トルエン相と黄色液体塩化ホスホニトリル含有相を示した。トルエンを除去し、黄色生成物を結晶化させて、31P NMRにより分析した。生成物は、線状塩化ホスホニトリル種:(Cl(PCl 2 =N)aPCl3)+A−(式中、AはCl−および(PCl6)−の混合物である)を、a=1が2%モル、a=2が15%モル、a=3が39%モル、およびa≧4が22.9%モルの量で、環状物1%モルとともに含んでいた。
次いで、15mlのトルエンに25.58g(115.2ミリモル)の無水D3を溶かした溶液をフラスコに加え、反応を15時間、一夜、還流下に続けた。次いで、トルエンを除去して、黄色液体を残し、31Pおよび29Si NMRにより分析した。これらの調査は、OCl2PNPCl2NPCl2OSi−基の存在を示した。
Claims (9)
- 式:(X(PX2=N)aPX3)+A−(式中、Xはハロゲンを示し、AはXまたは(PX6)−を示し、さらに、aは1〜9の整数である)のハロゲン化ホスホニトリルの製造方法であって、不活性非塩素化炭化水素溶媒中で、冷却下に、PX5およびジシラザンを反応させる第1工程と、ハロゲン化ホスホニトリルを製造するに充分な時間、50℃以上の温度に該反応混合物を加熱する第2工程と、を含むことを特徴とする方法。
- さらに、前記ジシラザンはヘキサメチルジシラザンであることを特徴とする請求項1記載の方法。
- さらに、前記Xは塩素であることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
- さらに、前記第1工程は0℃以下の温度で行うことを特徴とする請求項1、2または3記載の方法。
- さらに、前記第2工程は前記溶媒の還流下に行うことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の方法。
- さらに、前記溶媒はトルエンである請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の方法。
- さらに、前記第2工程により得られた反応混合物へ、式:((CH3)2SiO)b(式中、bは3〜6の整数である)のシクロシロキサンを添加して、式:Z−((CH3)2SiO)b−Z(式中、ZはXまたは基:OPX2(NPX2)aNPX2−である)のハロゲン化ホスホニトリル含有種を生成する第3工程を含み、該ハロゲン化ホスホニトリル含有種は、式:OPX2(NPX2)aNPX2−の基を少なくとも1つ有する、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の方法。
- さらに、前記シクロシロキサンは、実質的にヘキサメチルシクロトリシロキサンからなることを特徴とする請求項7記載の方法。
- さらに、前記ハロゲン化ホスホニトリル含有種は、エチレングリコールジアセテート中に溶解されていることを特徴とする請求項7または8記載の方法。
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