JP4580434B2 - スラグのフォーミング鎮静材及びその鎮静方法 - Google Patents
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このようなスラグの溢れ出しを回避する方法として、例えば、精錬処理の速度を下げるという方法、あるいは精錬処理を一時中断するといった方法があるが、これらは生産性に悪影響を与えるので好ましい方法とはいえない。
このように、フォーミングしたスラグの溢れ出しを防止するには、スラグに気泡が滞留した層(泡沫層)を破壊してスラグを収縮させ、鎮静化することが必要である。そのため、スラグ内でガス化する物質を投入し、その際の体積膨張エネルギーを泡沫層の破壊に利用する方法が、一般的に行われている。このような効果を有する物質を鎮静材と呼ぶ。
この方法では、転炉内においてスラグのFeO濃度を高め、溶銑中のCと、スラグと溶銑の界面で激しく反応させてフォーミングさせることで、スラグの排出性を良好にしている。このように、フォーミングさせたスラグ中には、スラグと溶銑の界面での激しいCO気泡の発生に伴って、粒鉄が多く巻き込まれている。このため、転炉から排出されたスラグは、排滓鍋に排出された直後から、スラグの内部に含まれる粒鉄中のCとFeOが反応してCO気泡を発生するので、急速にフォーミングし易い。また、一旦フォーミングを鎮静化させても、次々に排出されてくるスラグによって継続的にフォーミングし易い。
ここで、鎮静材の効果が小さい場合には、スラグの溢れ出しを回避するために排滓量を少なくせざるをえず、これは、排滓後の脱炭処理における復P(復燐)の増大や、スロッピングの発生につながり易い。また、この復P及びスロッピングを抑制するためには、CaO使用量を多くすればよいが、これでは、CaO濃度が高いスラグの生成量が増加することになり、精錬コストだけでなく、スラグ処理の観点からも好ましくない。
また、特許文献2には、ガスを発生する物質として、石炭、石灰石、プラスチック、紙等の熱分解性物質40%未満と、微粒鉄粉、バインダーを混合してブリケット成形し、見かけ比重を2〜5とした鎮静材が開示されている。
排滓鍋におけるフォーミングの鎮静化について、特許文献1の鎮静材は、パルプ廃滓の燃焼によって発生するCOやCO2のガス及び水分からのH2Oガスを利用しているが、水分が20%以下と低いことから、投入直後のガス発生量が少ない。よって、フォーミングが速いスラグに対しては、多量に投入しなければならない。
また、特許文献2の鎮静材は、熱分解性物質から発生するCOやCO2のガスを利用するものであるが、この熱分解性物質に比して微粒鉄粉の比率が高いことから、COやCO2のガス発生量が少ない。よって、特許文献1の場合と同様に、フォーミングが速いスラグに対しては、多量に投入しなければならない。
これらの鎮静材のスラグへの多量投入は、1)精錬コストの増加、2)ガス発生した後の鎮静材の残渣が不純物としてスラグ内に残留する量の増加、3)残渣が白煙となって吹き上がる量が多くなることによる作業環境の悪化、を招くという問題がある。
(1)転炉から排滓鍋に排出されたスラグのフォーミング鎮静材であって、水分を35質量%以上60質量%以下、パルプ廃滓中のセルロース、プラスチック、トレー、食用油、エンジンオイルの廃油、及び含油スラッジのいずれか1種以上からなる燃料分を35質量%以上55質量%以下含有する混合物が、不透水性の有機物で構成される容器に収納されていることを特徴とするスラグのフォーミング鎮静材。
(2)前記容器に収納されている前記混合物の質量が1kg以上10kg以下であることを特徴とする(1)記載のスラグのフォーミング鎮静材。
(4)前記スラグのフォーミング鎮静材を、転炉より排出する前記溶融スラグの排出位置に、該溶融スラグの排出開始から30秒の間に投入することを特徴とする(3)記載のスラグのフォーミング鎮静方法。
以上に示した水分、燃料分、及び灰分の関係を示すと、以下の通りである。
(鎮静材を構成する混合物)=(水分)+(燃料分)+(灰分)=100(質量%)
ここで、図1は本発明の一実施の形態に係るスラグのフォーミング鎮静方法の説明図、図2はスラグのフォーミング鎮静材1kg当たりのガス発生速度の時間変化の一例を示す説明図である。
少量の鎮静材で、溶融スラグのフォーミングを確実に鎮静化するには、この鎮静材の条件として、フォーミングしている溶融スラグ内で、迅速にガス発生が起こり、かつ、それがある程度継続する必要がある。
そこで本発明者らは、様々な物質のガス発生の迅速性と継続性を明らかにするため、種々の実験を行った。
このことから、水分は、ガス発生の迅速性を満たすのに適していることが判明した。これは、溶融スラグ中に投入した水が、この溶融スラグの熱により爆発的に気化したためと考えられる。
このことから、燃料分は、ガス発生の継続性を満たすのに適していることが判明した。これは、燃料分が溶融スラグ中のFeOと酸化反応(燃焼)を起こして、CO、CO2、H2O等のガスを発生したためと考えられる。
この測定は、実験室において、電気炉内の坩堝でスラグ10kgを溶解し、坩堝に接続したガラス管に流量計を取り付け、鎮静材5gを上記したスラグに投入し、発生したガス体積の時間変化を連続的に測定することで行った。その結果の一例を図2に示す。なお、図2は、鎮静材を構成する混合物中の水分量が45質量%、燃料分量が35質量%の場合の結果である。図2から、鎮静材1kg当たりに換算したガス発生速度は、鎮静材の投入直後から2.0m3/(秒・kg)以上となり、それが5秒以上継続していることが分かった。
ここで、混合物中の水分量が30質量%未満の場合、鎮静材の投入後1秒間における鎮静材1kg当たりのガス発生速度が2.0m3/(秒・kg)未満となり、迅速なガス発生が難しくなる。一方、水分量が60質量%を超える場合、鎮静材の投入後1秒間における鎮静材1kg当たりのガス発生速度を2.0m3/(秒・kg)以上にはできるが、後述する燃料分量が適正範囲から外れてしまい、継続的なガス発生が難しくなるものと推定される。また、混合物中の水分量が多過ぎると、水蒸気爆発を起こして周辺設備を損傷する危険性があるので、安全性の観点からも、水分量は本発明の範囲内とするのが良い。
以上のことから、混合物中の水分量を30質量%以上60質量%以下としたが、好ましくは、下限を35質量%、更には40質量%、上限を55質量%、更には50質量%とする。
ここで、混合物中の燃料分量が35質量%未満の場合、鎮静材の投入の1秒後から5秒後までの鎮静材1kg当たりのガス発生速度が2.0m3/(秒・kg)未満となり、継続的なガス発生が難しくなる。一方、燃料分量が65質量%を超える場合、前記した水分量が適正範囲から外れてしまい、迅速なガス発生が難しくなるものと推定される。
以上のことから、混合物中の燃料分量を35質量%以上65質量%以下としたが、好ましくは、下限を38質量%、上限を55質量%、更には50質量%とする。なお、燃料分は、前記したパルプ廃滓中のセルロース、プラスチック、トレー、食用油、廃油(例えば、エンジンオイル)、及び有機物(例えば、含油スラッジ)のいずれか1種又は2種以上を使用できる。
ここで、容器を不透水性とするのは、鎮静材を製造してから投入するまでの間に、水分量が減少するのを防止するためである。また、容器を有機物で構成するのは、溶融スラグ内で早期にガス化して消滅させるためであり、溶融スラグへの鎮静材の投入直後からガスを発生し易くし、より効率良く泡沫層を破壊し易くするためである。このような容器としては、例えば、ペットボトルやビニール袋などを使用できる。
鎮静材が軽過ぎる場合は、溶融スラグへの潜り込みが不十分となって、鎮静効果を得にくくなる。一方、鎮静材が重過ぎる場合は、鎮静材の製造あるいは搬送の際に取り扱いにくくなる。
従って、これらを両立させるという観点から、混合物の質量を1kg以上10kg以下としたが、下限を2kg、更には3kg、上限を8kg、更には7kgとするのが好ましい。
まず、転炉10内で溶銑Pを脱燐した後、この転炉10内の溶融スラグS1を炉下に設置した排滓鍋11に排出する。なお、ここでは、3分程度の短時間で、10〜15トンの溶融スラグS1を排出するため、転炉10内での溶融スラグS1のFeO(酸化鉄)濃度を、15質量%以上25質量%以下の範囲内に高め、溶融スラグS1をフォーミングさせる(泡立たせる)ことで、その排滓性を良好にしている。
このような特性を有する鎮静材12に、前記した本発明の一実施の形態に係る鎮静材を使用する。この鎮静材は、水分により投入直後の迅速なガス発生を可能としているので、COガスの抜け道を形成し易い。加えて、鎮静材に含まれる燃料分は、溶融スラグ中に多く含まれるFeOと酸化反応(燃焼)を起こしてガスを発生するので、FeO濃度が高いスラグに対してその効果を得やすいという利点がある。
このように、FeO濃度が15質量%以上25質量%以下の溶融スラグに前記した鎮静材を投入することで、鎮静材の効果がより顕著に現れる。
これにより、鎮静材12をより確実に溶融スラグS2に潜り込ませ易くできる。また、鎮静材12の投入量は、排滓開始から30秒の間に、30kg以上とするのがより好ましく、30秒経過した後は、フォーミングの状況に応じて鎮静材12を更に投入すればよい。
なお、図1中の番号13は操業床であり、番号14は移動台車である。
鎮静材は、水分含有量が60質量%のパルプ廃滓と廃プラスチック(フレーク状に粉砕したペットボトル)に、必要に応じて、サラダ油と、製鋼スラグ(平均粒度:0.5mm)と、水分調整用の水を添加して混合した混合物を、ビニール袋又はプラスチックボトルの容器に収納して製造した。この鎮静材の混合物の原料配合比率を表1に示す。また、表1には、各原料配合比率を、水分、燃料分、及び灰分に換算して得た混合物の組成も記載している。更に、表1には、鎮静材1個当たりの質量も記載しているが、容器はビニール袋又はプラスチックボトルであり、その質量は、混合物量に対して僅かであるため、鎮静材1個の質量が、鎮静材1個当たりの混合物量となる。
一方、実施例3は、ビニール袋に収納した混合物の質量を12kg(10kg超)とした鎮静材を使用したため、溶融スラグへの潜り込みは十分であり、実施例1と同じく14トンの溶融スラグを排出できた。ただし、鎮静材の質量が重過ぎるため、製造や搬送などの作業性が、実施例1より悪くなった。
また、実施例5は、鎮静材を排滓鍋の端付近に投入したため、実施例1と比較して、鎮静材を溶融スラグに潜り込ませにくくなり、溶融スラグの排出量が10トンとなった。
そして、実施例6は、排滓開始から30秒までの鎮静材の投入量を、実施例1〜5と比較して少ない24kgに留めたため、溶融スラグの排出量は11トンとなった。
また、比較例3、4は、鎮静材を構成する混合物中の燃料分量が35質量%を下回り、燃料分が不足したため、ガス発生の継続性が不十分となり、いずれも実施例1〜7と同じ投入量ではフォーミングを抑制しきれず、約1.5倍の鎮静材を投入することが必要であった。なお、比較例3については、鎮静材を構成する混合物中の水分量を、実施例1〜7の鎮静材より多くしている(60質量%超)にも関わらず、鎮静材を過剰に投入する必要があった。
更に、比較例6は、混合物を透水性の紙袋に収納したため、鎮静材を溶融スラグへ投入する前に、水分量が24質量%まで低下してしまった。このため、溶融スラグの溢れ出しを防止する目的から、溶融スラグの排出速度を抑えることが必要となり、溶融スラグの排出量が9トン(10トン未満)に留まった。
以上のことから、本発明のスラグのフォーミング鎮静材及びその鎮静方法を使用することで、フォーミングするスラグを少ない使用量で迅速かつ確実に鎮静化させ、スラグの溢れ出しによる設備損傷を防止して、生産性の安定維持を実現できることを確認できた。
Claims (4)
- 転炉から排滓鍋に排出されたスラグのフォーミング鎮静材であって、
水分を35質量%以上60質量%以下、パルプ廃滓中のセルロース、プラスチック、トレー、食用油、エンジンオイルの廃油、及び含油スラッジのいずれか1種以上からなる燃料分を35質量%以上55質量%以下含有する混合物が、不透水性の有機物で構成される容器に収納されていることを特徴とするスラグのフォーミング鎮静材。 - 請求項1記載のスラグのフォーミング鎮静材において、前記容器に収納されている前記混合物の質量が1kg以上10kg以下であることを特徴とするスラグのフォーミング鎮静材。
- 請求項1及び2のいずれか1項に記載のスラグのフォーミング鎮静材を、酸化鉄濃度が15質量%以上25質量%以下の泡立っている溶融スラグ中に投入することを特徴とするスラグのフォーミング鎮静方法。
- 請求項3記載のスラグのフォーミング鎮静方法において、前記スラグのフォーミング鎮静材を、転炉より排出する前記溶融スラグの排出位置に、該溶融スラグの排出開始から30秒の間に投入することを特徴とするスラグのフォーミング鎮静方法。
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