JP4573384B2 - 屋上設置物の取付構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、屋上に設置する屋上設置物を躯体に取り付けるための取付構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
最近では鉄骨造の躯体を持った住宅が増加している。このような住宅であっても屋上を利用することは一般的ではなく、単に物干し程度に利用されているに過ぎない。屋上に設置して利用し得る構造物として物置や温室、或いはパーゴラや物干し台等があるが、これらは全て地上に設置することを想定しており、固定方法は地中に打ち込んだ杭やコンクリートブロック或いはコンクリートにアンカーを取るように構成されている。また物置や温室等の構造物であっても、モジュールが住宅のモジュールと一致している保証はないのが一般的である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
既設の屋上に市販の物置や温室、或いはパーゴラや物干し台等を設置する場合、これらの設置物を躯体に対して固定することが出来ず、風に対する安定性をはかるためには重石によって対応せざるを得ない。このため、躯体に余分な荷重を作用させるにも関わらず、風や地震に対して充分な安定性を有する保証がないという問題がある。
【0004】
また新築時に上記設置物を屋上に設置することを計画した場合であっても、各設置物に対応させた個別の固定金具を設計して躯体に取り付けておくことが必要となり、コストの上昇要因となるという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、屋上に対して設置物を取り付ける際に有利な取付構造を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明に係る屋上設置物の取付構造は、住宅の屋上に屋上設置物を取り付ける取付構造であって、躯体に固定されると共に屋上面の上部に突出し雨仕舞された円筒管からなる柱金物と、前記柱金物に固定される固定片と該固定片に対し直角に配置され屋上設置物を取り付ける取付片を有する取付金具とを有し、前記取付金具の取付片に屋上設置物を取り付けると共に前記柱金物の側面に前記取付金具の固定片を当接し両端部にボルトを設けた可撓性を有するバンド、又はUボルトを用いて固定することで、屋上に屋上設置物を取り付けたものである。
【0007】
上記構成において、前記取付金具の固定片及び取付片には横方向に長い長孔が設けられており、前記固定片の柱金物への固定は該長孔に前記バンドの両端部のボルト又はUボルトを差し込んで締結するものであり、前記取付片に対する屋上設置物の取り付けは該長孔にボルトを差し込んで締結するものであることが好ましい。
【0008】
上記屋上設置物の取付構造では、屋上面から突出させた柱金物に、取付片と固定片を有する取付金具を固定し、取付片に屋上設置物を取り付けることで、間接的に躯体に取り付けることが出来る。このため、屋上設置物に重石を設ける必要がなく、安定した取付状態を保持することが出来る。
【0009】
特に、取付金具の固定片に長穴を形成することで屋上設置物の取付位置の自由度を向上することが出来、且つ取付金具の柱金物に対する固定をUボルトやバンド等によって行なうことで、高さ方向の取付位置の自由度を向上することが出来る。従って、屋上設置物の位置がグリッド,モジュールと異なる場合であっても、容易に取り付けることが出来る。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、屋上設置物の取付構造について図を用いて説明する。図1は屋上を設計する際の工程を説明するフロー図である。図2は図1の工程に於ける要所を表す図である。図3は屋上の設計例を示す図である。図4は屋上設置物の取付構造を説明する縦断面図である。図5は屋上設置物の取付構造を説明する平面図である。図6は温室を取り付ける構造を説明する図である。図7は物置を取り付ける構造を説明する図である。図8は木製のスクリーンを取り付ける構造を説明する図である。
【0011】
屋上の設計方法の好ましい手順を図1のフロー図に従って説明する。尚、予め用意されたツールとなる屋上の設計例として、屋上の広さや屋上に設置すべき設置物の種類等に応じて多数の例が用意され、夫々の例を実現するために屋上設置物の価格表、特に屋上設置物のサイズの変化に対応させた価格表、及び必要な屋上設置物の価格を積算した積算表等が用意される。
【0012】
設計例では、屋上の設計例の一例として図3のような屋上の例を示している。ここで、図3について概略的に説明する。図3は建物の屋上に庭園を構成する例を示すものであり、屋上Aの利用範囲を手摺り1によって他の部分から区画し、この範囲内に屋上設置物として、温室2、簡易水耕栽培器3、物置4、木製のスクリーン5、物干し台6、パーゴラ又はスカイフレーム7、遊具8を配置すると共に夫々固定金具によって建物の本体(躯体)に取り付けている。また図に於ける9はペントハウスである。
【0013】
尚、上記屋上の設計例は単なる例にすぎず、利用範囲の面積や形状、屋上Aに配置すべき屋上設置物の種類や数等は何ら限定すべきものではなく、異なる形状と面積を持った屋上に異なる種類や数の屋上設置物を配置した多数の屋上を設計することが可能であり、これらの設計例の数が多くなることが望ましい。
【0014】
以下の設計方法では、図3に示す例に基づいて該例を設計する場合について説明する。
【0015】
先ず、ステップS1に示す設計条件入力工程では、屋上Aを利用するに当たって必要な条件を抽出して入力する。このような条件としては法令に基づく規制や顧客の要望及び予算等がある。従って、目的の住宅に適用される法令に基づいて屋上Aの利用可能な範囲を設定することが可能であり、この利用可能な範囲の中から要望及び予算に基づいて最終的な設計を行なうことが可能である。
【0016】
次に、ステップS2に示す利用範囲設定工程では、ステップS1で設定された屋上Aの利用可能な範囲の中から実際に利用する範囲を決定すると共に決定された利用範囲の外周に手摺り1を配置する。屋上Aの利用範囲を決定するに当たり、予め用意された図3の屋上の設計例が基準とされ、顧客の要望や予算、ペントハウスからの導線及び建物全体の外観等を考慮する。
【0017】
また屋上Aに手摺り1を配置する場合には、住宅本体のグリッド(2階の天井を構成するグリッド),モジュールを基準とし、手摺り1が原則としてグリッドに一致するように考慮する。従って、屋上AはステップS1で設定された利用可能範囲の中に存在するグリッド,モジュールに規制されて決定される。
【0018】
上記グリッドは、鉄骨造の建物に於ける柱を含む平面をいい、構造計算を実施する上での基準である。しかし、建物に設定されたグリッドが全て同一の面積である必要はなく、個々のグリッドが互いに異なる形状と面積を有する場合もある。またモジュールは目的の建物に設定された基準寸法である。
【0019】
従って、手摺り1或いは他の屋上設置物をグリッドと一致させて配置すると共に該グリッドを構成する梁に固定することによって、これらの重量を建物の躯体によって支持すると共に作用する水平力を支持することが可能である。
【0020】
ステップS3に示すゾーニング工程では、手摺り1によって区画された屋上Aのスペースを、図3の設計例に基づく顧客の要望に従って用途別のスペースに割り振る。
【0021】
設計例では、図2(a)に示すように、ペントハウス9から出て正面に菜園スペース2aが割り振られ、該菜園スペース2aの左側に作業スペース4aが、ペントハウス9と作業スペース4aに囲まれた位置にプレイスペース8aが、菜園スペース2aの右側にホビー休息スペース7aが割り振られ、更にホビー休息スペース7aの近傍に緑化スペース10aが割り振られている。
【0022】
屋上Aを用途別にゾーニングする際には、特に、日照や隣家からの視線或いは隣家への視線、及びペントハウスからの導線等が検討され、夫々最適な位置に割り振りされる。
【0023】
次に、ステップS4に示すグリッド配置工程では、屋上Aに於ける手摺り1によって区画された範囲、特に屋上設置物(温室2〜スカイフレーム7,遊具8)等が配置されることが予測されるスペース2a〜8a,10a等に直下階(本実施例では2階)のグリッドを転記する。この場合、図2(b)に示すように、2階のグリッドを構成する梁11の位置を転記することが必須であり、梁11の位置を転記することによって、後述する屋上設置物を配置する作業を容易に行なうことが可能となる。
【0024】
次に、ステップS5に示す屋上設置物の配置工程では、ステップS3で割り振られた用途別のスペース2a〜8a,10aに対し、ステップS4で転記されたグリッドの梁11の位置を基準として温室2〜スカイフレーム7,遊具8を配置する。各スペース2a〜8a,10aに配置された温室2〜スカイフレーム7,遊具8は、図2(b)に示すように、梁11に一致させて或いは梁11の近傍に配置される。特に、屋上設置物の幅或いは長さが梁11の間隔に一致しないような場合、梁11の間にバランス良く位置し得るように配置する。
【0025】
屋上設置物の平面寸法が建物のモジュールと一致したモジュールに設定されている場合、該屋上設置物の位置を梁11に一致させることはさほど困難ではない。しかし、一般に温室や物置の基準寸法が建物のモジュールと一致することはまれである。このため、特に重量が大きい温室や物置を配置する場合、配置部位の付近に梁が存在しないときには、ステップS5に戻って2階のグリッドに新たな梁11を加えることが好ましい。このように、必要に応じて建物の躯体に新たな梁を加えることで、重量が大きい屋上設置物であっても安定した状態で取り付けることが可能となる。
【0026】
尚、本設計例に於いて、緑化スペース10aは花壇10として性格付けされている。
【0027】
次に、ステップS6に示す固定金具算出及び配置工程では、屋上設置物を建物の躯体に取り付ける固定金具12の数を算出すると共に該固定金具12の位置を決定する。前記固定金具12は、後述する取付構造で詳述するように、一方の端部が建物の躯体を構成する梁11に固定されると共に他方の端部が屋上Aの屋上面から突出した柱状の金物と、この柱状の金物と屋上設置物を接続する取付用の金具と、を有して構成されている。
【0028】
固定金具12は、該固定金具12を構成する柱状の金物の太さ,肉厚,長さ、梁11に対する固定構造等の条件を設定しておくことによって、耐引抜き力や曲げ強度等の設計条件を設定することが可能である。従って、屋上設置物が温室2や物置4である場合、これらの屋上設置物に収容する内容物を含む重量や平面積及び壁の面積が決まると、風や地震に伴って作用する水平力を計算することが可能である。このため、屋上設置物毎の重量及び計算された水平力に応じて固定金具12の数を決定することが可能である。
【0029】
但し、例えばスカイフレーム7のように、屋上設置物が平面的な形状を有するものである場合、重量が小さく且つ壁を有しないために風の影響を考慮する必要がなくとも、安定した取付状態を実現するために強度上過剰な数の固定金具12を用いることもある。
【0030】
上記の如くして、図2(c)に示すように、各屋上設置物に対応させて固定具12の数と配置位置を設定することが可能である。
【0031】
次に、ステップS7に示す構造チェック工程では、屋上Aに配置された屋上設置物の重量や、これらに作用する水平力を考慮して建物本体の構造計算を行い。安全性を充分に満足し得ることを確認してステップS8に移行する。
【0032】
ステップS8に示す詳細設計工程では、屋上設置物としての例えば温室2の内部設計や、温室2及び簡易水耕栽培器3への給排水,電気、屋上の仕上げ材料、装飾品等の設計、及びカラーコーディネイト等の設計を行なう。
【0033】
更に、ステップS9に示す図書の作成工程では、屋上Aの平面図(図2(d)参照)や設備図或いは鳥瞰図等の必要な図面及び書類を作成する。
【0034】
上記の如くして目的の建物に於ける屋上Aの設計が終了する。
【0035】
次に、固定金具12を用いて屋上設置物を建物の躯体に取り付ける取付構造について図4〜図8により説明する。
【0036】
固定金具12は、一方の端部が建物の躯体を構成する梁11に固定され且つ他方の端部が屋上Aの表面から片持ち梁状に突出した柱状の金物である柱部材13と、この柱部材13の長手方向の所望の位置に対して着脱可能に取り付けられ且つ所定部位に屋上設置物を取り付ける取付金具14と、を有して構成されている。
【0037】
このように、柱部材13は屋上Aを貫通して設けられるため、該柱部材13の外周面であって少なくとも屋上Aの近傍は雨仕舞がなされている。即ち、柱部材13は、屋上面との接合部位から所定長さ範囲にわたって屋上Aのシート防水15が施工されており、このシート防水15によって屋内への漏水を防止し得るように構成されている。
【0038】
従って、前述した屋上の設計方法に従って固定金具12を配置した屋上Aを構成する場合、先ず固定金具12の下端をボルト16によって梁11に固定し、その後、複数の梁11上にパネル(例えばALC(軽量気泡コンクリート)パネル、或いはPC(プレキャストコンクリート)パネル等)17を配列して固定し、このパネル17の上部に断熱材18を敷き込み、更に、断熱材18の上面に防水下地ボード19を敷き込んだ後、防水下地ボード19の上面にシート防水15を施工すると共に柱部材13の所定長さ範囲にシート防水15を施工する、という手順で施工される。
【0039】
柱部材13には取付金具14が取り付けられるが、柱部材13に対する取付金具14の取付位置は対象となる屋上設置物の寸法や形状に応じて異なる。即ち、取付金具14の柱部材13に対する取付位置は一義的に設定されるものではない。このため、取付金具14が柱部材13の外周に施工したシート防水15に損傷を与える虞がある。従って、予め柱部材13に於ける取付金具14の取付範囲を設定しておき、該取付範囲ではシート防水15を施工することなく、メッキ或いは塗装面としておくことが好ましい。そしてシート防水15を施工した部位と施工することのない部位との境界にフランジ13aを設けることで、シート防水15の施工部位と非施工部位を明確に区画すると共にフランジ13aによってシート防水15の端部の仕舞を施工することが好ましい。
【0040】
上記の如く、柱部材13は屋上面との接合部位に於ける防水性能を保証する機能と、取付金具14を取り付ける機能とを有する。このため、前記各機能を明確に分離させ、防水性能を有する下部部材13bと、下部部材13bの上端に設けたフランジ13aに着脱可能に接続され取付金具14を取り付ける機能を有する上部部材13cとによって構成することが好ましい。
【0041】
柱部材13は上部部材13cに取り付けた取付金具14を介して屋上設置物を支持するものである。しかし、柱部材13に対する屋上設置物の取付方向は一義的に設定されるものではない。このため、柱部材13は強さに方向性のない円筒管であることが好ましい。また柱部材13として円筒管を用いた場合、端部から入り込んだ雨水が屋内に漏水することを防止するために、該円筒管の端部をフランジ13dによって閉塞することが必要である。
【0042】
従って、柱部材13は下部部材13bの下端が梁11にボルト16によって固定され、該下部部材13bの上部に上部部材13cが同様にボルト16によって固定される。そして上部部材13cの上下方向の両端にはフランジ13dが配置され、これらのフランジ13dによって取付金具14の取付範囲が設定される。
【0043】
尚、柱部材13の上端にフランジ13dが設けられるため、人がこのフランジ13dに衝突する危険があるため、フランジ13dの上部に装飾物、例えば植木鉢20を設けておくことが好ましい。
【0044】
取付金具14は、平面形状が直角三角形に形成されており、直交する2辺に、柱部材13に固定される固定片14aと、対象となる屋上設置物を取り付ける取付片14bとが形成されている。また固定片14a,取付片14bには長穴14cが形成されている。
【0045】
固定片14aは直角三角形からなる本体部14dから折り曲げたフランジ状の片として形成されている。しかし取付片14bは取付対象である屋上設置物の形状や強度等の条件に応じて、固定片14aと同様なフランジ状の片として、或いは本体部14dの面を利用して形成されている。即ち、取付片14bは必ずしもフランジ片として形成されるものではなく、対象に応じて最も安定した取り付けを実現し得る形状で形成される。
【0046】
また前述した屋上の設計方法に於いて説明したように、屋上に配置された屋上設置物の位置或いは取付部は、必ずしも梁11の位置(固定金具12の位置)に一致するものではなく、且つ固定金具12からの離隔距離も全ての屋上設置物が等距離にあるわけではない。従って、取付金具14に於ける固定片14a,取付片14bが異なる寸法を持った複数種類の取付金具14が用意されており、対象となる屋上設置物に対応して選択的に用いるようにしている。
【0047】
取付金具14を柱部材13に固定する場合、図5(a)に示すように両端部にボルト21aを設けた可撓性を有するバンド21とナット22とを組み合わせて使用し、或いは同図(b)に示すようにUボルト23とナット22とを組み合わせて使用する。
【0048】
例えば、バンド21を用いる場合、バンド21の本体部分を柱部材13の外周に接触させてボルト21aを固定片14aの長穴14cに差し込んでナット22を締結することで、取付金具14を柱部材13に固定することが可能である。この場合、バンド21の柱部材13に対する接触面積が大きくなり、ズレやガタツキのない安定した状態で固定することが可能である。またUボルト23を用いる場合、Uボルト23と固定片14aとによって柱部材13を挟み込むようにして両端のボルト部分を固定片14aの長穴14cに差し込んでナット22を締結することで、取付金具14を柱部材13に固定することが可能である。この場合、Uボルト23の断面積はバンド21の断面積よりも大きいため、高い強度を発揮することが可能である。
【0049】
柱部材13に取り付ける取付金具14の数は限定されるべきものではなく、柱部材13の近傍に配置された屋上設置物の位置及び数に応じて、2個〜3個程度取り付けることが可能である。即ち、屋上Aに配置された屋上設置物の位置によっては、1個の固定金具12によって複数の屋上設置物を取り付けることが可能となる。例えば図4及び図5(b)は、柱部材13に2個の取付金具14を固定することによって2つの屋上設置物(温室2,物置4)を取り付けた状態を示している。
【0050】
次に、固定金具12に屋上設置物を取り付ける例について説明する。
【0051】
先ず、図5(a)によって物干し台6を取り付ける場合の例を説明する。図に於いて物干し台6は、円筒管によって形成され物干し竿を支持する支持部材6aと、コンクリートのブロックからなる台座6bとによって構成されている。そして挟持片24によって支持部材6aを取付金具14の取付片14bに挟み込むことで、物干し台6を柱部材13を介して建物の躯体(梁11)に取り付けることが可能である。
【0052】
上記の如くして躯体に取り付けられた物干し台6では、重量は台座6bを介して屋上Aの屋上面に伝達されて支持される。また風の影響によって支持部材6aが倒れる方向の力が作用したとき、この力は取付金具14の取付片14bと挟持片24,柱部材13を介して躯体に伝達されて支持される。このため、物干し台6の転倒を防止することが可能となる。
【0053】
図6(a)〜(c)は屋上設置物としての温室2を躯体に取り付ける構造を説明する図である。本実施例に於いて用いる温室2は、フレームがアルミニウムの押出成形材を用いて構成されており、充分に高い剛性と強度を有している。
【0054】
温室2を屋上Aに設置する場合、この屋上Aが雨水を自然流下させるための水勾配(図6(b)に点線と実線で示す)を有するため、予め外周に沿って水勾配を吸収するための枕25を設けておき、この枕25上に温室2を設置することで、該温室2の水平状態を保持し得るように構成されている。
【0055】
温室2のベース部材2bには外側にフランジ2cが形成されているため、このフランジ2cに取付金具14の本体部14dに形成された取付片14bを重ねてボルト16によって締結することで、温室2を取付金具14,柱部材13を介して躯体に取り付けることが可能である。
【0056】
上記取付構造では温室2の重量は枕25を介して屋上Aの屋上面に支持される。また風や地震時に温室2に作用する水平力は取付金具14を介して柱部材13に作用し、更に躯体に伝達されて支持される。特に、水平力が作用した柱部材13には、屋上面を支点とし取付金具14の固定位置を作用点とする曲げ力が作用することとなる。しかし、柱部材13の曲げ強さ等は予め想定される曲げ力に対抗し得るように設計されているため、温室2に作用する水平力を充分に安定した状態で支持することが可能である。
【0057】
特に、温室2に瞬間的に大きい水平力が作用し、この力に伴って温室2にズレが生じた場合、このズレは、例えば取付金具14の固定片14aに於けるバンド21が長穴14cの内部でズレることで吸収される。従って、柱部材13に極端に過大な曲げ力が作用することがない。
【0058】
更に、温室2が瞬間的に作用する水平力によって位置がズレた場合、温室2の内部に収容された花卉類を外に取り出した後、容易にズレた位置を修正することが可能である。
【0059】
また温室2に転倒するような水平力が作用した場合、取付金具14は柱部材13に沿って上端側のフランジ13dの方向に移動し、該フランジ13dに衝突する。このとき、柱部材13には梁11からの引抜き力が作用するものの、取付金具14が柱部材13から抜けることはなく、従って、温室2の転倒を防止することが可能である。
【0060】
図7(a)〜(c)は屋上設置物としての物置4を躯体に取り付ける構造を説明する図である。本実施例に於いて用いる物置4は僅かな力に応じて変形する比較的に薄い鋼板によって構成した床フレーム4bを有している。このため、取付金具14と物置4を接続する場合、多数の点によることが好ましい。また取付金具14と物置4の床フレーム4bとの間に取付片14bよりも充分に長い接続部材、或いはL字型に形成した接続部材26を設けている。
【0061】
温室2を屋上Aに設置する場合、温室2と同様な枕25を介在させて水平な状態を保持し、床フレーム4bに例えば多数のタッピングビス27によって接続部材26を取り付け、更に、この接続部材26をボルト16によって取付金具14の取付片14bに取り付けることで、接続部材26,取付金具14,柱部材13を介して躯体に取り付けることが可能である。
【0062】
特に、床フレーム4bが変形し易いため、該床フレーム4bに僅かな力が作用して変形した場合でも、この変形が取付金具14を柱部材13の周囲に回転させるような力を作用させる。従って、取付金具14を柱部材13に固定する際にUボルト23を用いたような場合では、該Uボルト23と柱部材13との接触面積が小さくなって容易に回転することがあり、取付状態が不安定となり、且つこのときの交番荷重によって床フレーム4bが金属疲労を起こす虞がある。このため、バンド21を用いて取付金具14を柱部材13に固定することが好ましい。
【0063】
また物置4に瞬間的に大きな水平力が作用して位置ズレが発生した場合、前述した温室2の場合と同様に、この位置ズレを吸収することが可能であり、且つズレた位置を容易に復帰させることも可能である。
【0064】
図8(a)〜(c)は物置4に隣接させて設置した木製のスクリーン5を躯体に取り付ける取付構造を説明する図である。尚、前述した物置4に対する取付構造は符号を付して説明を省略する。
【0065】
本実施例に於いて、スクリーン5は主として蔓草をからめたり、小形のプランターを取り付ける機能を有するものであり。外周に配置された枠体5aと、枠体5aに固定したラチス材5bとによって構成されている。ラチス材5bは比較的薄い木材を斜めに交差させて構成されており、大きい力が作用したとき、破壊されることがある。
【0066】
このため、ラチス材5bの一方の面に補強材28を添え、他方の面に挟持片24を添え、両者をボルト16によって締結することで、スクリーン5を取付金具14,柱部材13を介して躯体に取り付けることが可能である。
【0067】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように本発明に係る屋上設置物の取付構造では、屋上設置物の位置や方向に関わらず取り付けることが出来、且つ1つの固定金具に複数の取付金具を取り付けて複数の屋上設置物を取り付けることが出来る。このため、屋上のスペースを有効に活用することが出来る。
【0068】
屋上設置物の取付構造を標準化することによって設計や部品及び施工の標準化をはかることが出来る。また取付構造が簡易なため、殆どの屋上設置物に対応することが出来、力学的な安定性を確保することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 屋上を設計する際の工程を説明するフロー図である。
【図2】 図1の工程に於ける要所を表す図である。
【図3】 屋上の設計例を示す図である。
【図4】 屋上設置物の取付構造を説明する縦断面図である。
【図5】 屋上設置物の取付構造を説明する平面図である。
【図6】 温室を取り付ける構造を説明する図である。
【図7】 物置を取り付ける構造を説明する図である。
【図8】 木製のスクリーンを取り付ける構造を説明する図である。
【符号の説明】
A 屋上
1 手摺り
2 温室
2a 菜園スペース
2b ベース部材
2c フランジ
3 簡易水耕栽培器
4 物置
4a 作業スペース
4b 床フレーム
5 スクリーン
5a 枠体
5b ラチス材
6 物干し台
6a 支持部材
6b 台座
7 スカイフレーム
7a ホビー休息スペース
8 遊具
8a プレイスペース
9 ペントハウス
10 花壇
10a 緑化スペース
11 梁
12 固定金具
13 柱部材
13a,13d フランジ
13b 下部部材
13c 上部部材
14 取付金具
14a 固定片
14b 取付片
14c 長穴
14d 本体部
15 シート防水
16 ボルト
17 パネル
18 断熱材
19 防水下地ボード
21 バンド
21a ボルト
22 ナット
23 Uボルト
24 挟持片
25 枕
26 接続部材
27 タッピングビス
28 補強材

Claims (2)

  1. 住宅の屋上に屋上設置物を取り付ける取付構造であって、躯体に固定されると共に屋上面の上部に突出し雨仕舞された円筒管からなる柱金物と、前記柱金物に固定される固定片と該固定片に対し直角に配置され屋上設置物を取り付ける取付片を有する取付金具とを有し、前記取付金具の取付片に屋上設置物を取り付けると共に前記柱金物の側面に前記取付金具の固定片を当接し両端部にボルトを設けた可撓性を有するバンド、又はUボルトを用いて固定することで、屋上に屋上設置物を取り付けたことを特徴とする屋上設置物の取付構造。
  2. 前記取付金具の固定片及び取付片には横方向に長い長孔が設けられており、前記固定片の柱金物への固定は該長孔に前記バンドの両端部のボルト又はUボルトを差し込んで締結するものであり、前記取付片に対する屋上設置物の取り付けは該長孔にボルトを差し込んで締結するものであることを特徴とする請求項1に記載した屋上設置物の取付構造。
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