JP4573123B2 - 地盤改良装置および液状化防止工法 - Google Patents
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すなわち、過去の耐震基準で構築されたままで現存している各種の既存不適格構造物に対しては現在の耐震基準に適合させるための耐震改修を行うことが急務とされ、特に埋め立て地に立地している石油タンクはその支持地盤が液状化地盤である場合も多いことから早急な液状化防止対策が必要とされており、そのような既存構造物の支持地盤を対象とする液状化防止対策としての地盤改良を特許文献1に示されるような地盤改良装置により実施できれば効率的であり有効であると考えられる。
しかしながら、特許文献1に示されている地盤改良装置は攪拌混合機を垂直姿勢として地中に挿入して横方向に移動させる構成であるので、既存構造物の周囲に対する地盤改良は可能であるものの既存構造物の下方地盤に対してまで地盤改良を行うことは不可能であり、既存構造物の下方地盤に対する液状化防止対策としての地盤改良にはそのまま適用することはできないものであった。
これは、既存の石油タンクの周囲からその下方の支持地盤である液状化層に対して薬液注入を行って地盤改良することを基本とするものであり、特に図12に示すように既存のタンク1の下方地盤の全体をタンク1の外周部に沿う環状の外殻改良ゾーン2とその内側の内部改良ゾーン3とに区分して、後者の改良率を前者のそれよりも低く設定するというものである。これによれば、外殻改良ゾーン2の改良率をたとえば90%程度と充分に高めておけば、内部改良ゾーン3の改良率はたとえば70%程度に留めることでも全体として優れた液状化防止効果を確保できるとされ、したがってタンク1の下方地盤全体を一律に高改良率とする場合に比較して改修に要する費用と手間を軽減でき、その点では既存不適格構造物を対象とする液状化防止対策として有効であると考えられている。
本発明の地盤改良装置においては、攪拌混合機には、地盤中において後方に向かって伸張することにより、後方地盤から反力をとって攪拌混合機全体を前方に押し出すための前進用ジャッキを搭載することが好ましい。
さらに、ベースマシンの揺動アームに垂直アームを設けて、該垂直アームの下端部に攪拌混合機を回動自在に支持するとともに、攪拌混合機を回動させるための回動駆動源を具備することが好ましい。
本発明の液状化防止工法においては、外殻改良ゾーンの形成に際しての固化材としてセメントないしセメント系固化材を用いることにより、外殻改良ゾーンをセメント改良ゾーンとして形成することが好ましく、さらにその場合においては外殻改良ゾーンの内側に薬液注入を行うことにより外殻改良ゾーンの内側にそれよりも相対的に低強度の内部改良ゾーンを形成することが好ましい。
特に、攪拌混合機に前進用ジャッキを搭載して後方地盤から反力をとって前進させる構成とすることにより、攪拌混合機を確実かつ容易に前進させて既存構造物の下方地盤に対する地盤改良を確実に行うことが可能である。
また、攪拌混合機をベースマシンの垂直アームの下端部に回動自在に設けることにより、攪拌混合機を鉛直姿勢とすることも可能であるので、浅層混合処理工法による通常の地盤改良装置と同様に使用することも可能である。
特に、固化材として自ずと高強度が得られかつ安価なセメントないしセメント系固化材を用いることにより、薬液注入による場合に比べて遙かに高強度のセメント改良ゾーンを形成できるし、固化材コストとその所要量も大幅に削減することができる。
また、外殻改良ゾーンの内部に薬液注入による内部改良ゾーンを形成することにより、既存構造物の下方地盤全体の液状化防止強度をより一層高めることが可能である。
なお、本実施形態においても、従来と同様に外殻改良ゾーン2の内側には薬液注入による内部改良ゾーン3を形成しており、そこでの改良率を70%程度と比較的低く設定しているが、後述するようにその内部改良ゾーン3は必ずしも形成することはなく、不要な場合には省略しても差し支えない。
加えて、本実施形態の攪拌混合機13には、その後部に反力板18を備えた前進用ジャッキ19が搭載され、その前進用ジャッキ19を後方に伸張させることにより後方地盤から反力をとって攪拌混合機13の全体を前方に押し出すことができるものとなっている。
なお、攪拌混合機13の全長および前進用ジャッキ19のストロークは、形成するべき外殻改良ゾーン2の幅寸法d1(図1、図5参照)や、後述する事前改良部20の幅寸法d3(図2参照)を考慮して、外殻改良ゾーン2を効率的に形成し得るように設定すれば良いし、前進用ジャッキ19の所要ストロークが特に大きいような場合には必要に応じて多段伸張式ジャッキを採用すれば良い。
その事前改良部20の形成は適宜行えば良いが、特許文献1に示される従来の地盤改良装置を用いて固化材(本実施形態ではセメントないしセメント系固化材)を原地盤に供給しつつ原位置土と攪拌混合することで行うと良く、それにより事前改良部20の粘度を攪拌混合機13を挿入可能な程度の充分に柔軟で半流動性を有する状態としておく。
なお、事前改良部20は最終的には攪拌混合機13により形成される外殻改良ゾーン2と一体となるものであり、その幅寸法d3は少なくとも攪拌混合部13の全体を水平姿勢のままで挿入できる程度とし、その深さは少なくとも形成するべき外殻改良ゾーン2の底部に達する深度とする。
そして、攪拌混合機13のチェーン16を循環駆動するとともに固化材としてのセメント(セメントペーストあるいはセメントミルク)ないしセメント系固化材を噴出させつつ、前進用ジャッキ19をさらに伸張させて攪拌混合機13の先端部をタンク1の下方地盤に進入させていき、これにより固化材を原位置土と攪拌混合する。その際、チェーン16の駆動方向は攪拌混合機13の先端部が地盤に容易に食い込んでいく方向(図示では半時計回り)に設定すると良い。
そして、図5に示すように攪拌混合機13が事前改良部20の底部(つまり形成するべき外殻改良ゾーン2の底部)まで達したら、この段階での作業が終了する。
そこで、前進用ジャッキ19を縮退させ、攪拌混合機13全体を事前改良部20の上部まで引き上げ、その位置をやや側方にずらしてから以上の作業を繰り返し、さらに以上の作業をタンク1の全周にわたって繰り返して、最終的には環状の外殻改良ゾーン2を隙間なく連続的に形成し、所定期間が経過して固化材が硬化すれば外殻改良ゾーン2の完成となる。なお、外殻改良ゾーン2の内部に内部改良ゾーン3を形成する場合には、外殻改良ゾーン2の形成後に、あるいはそれに相前後して、適宜の薬液注入工法により所望の改良率となるように実施すれば良い。
具体的な設計例を挙げて検討してみると、外径寸法が12〜15m程度の中規模のタンク1を対象とする場合、薬液注入による従来工法では図12に示したように改良率90%とする外殻改良ゾーン2の所要幅寸法d2が5m程度は必要であるのに対し、本実施形態の工法では外殻改良ゾーン2を浅層混合処置工法によるセメント改良ゾーンとして形成することにより、その外殻改良ゾーン2の強度を10〜20倍にも高めることができることから、その所要幅寸法d1を2.5m程度と半減させることができ、しかも固化材単価は1/3〜1/5程度で済み、全体として大幅なコスト削減を実現できることが確認されている。
図6〜図7は地盤改良装置10の他の構成例を示すものである。これは、上記実施形態の装置における攪拌混合機13を水平軸21により鉛直アーム14に対して鉛直面内において回動自在に軸支するとともに攪拌混合機13を回動させるための回動駆動源としての起倒用ジャッキ22を設けたものである。
この実施形態の地盤改良装置10による場合には、図6に示すように攪拌混合機13を鉛直姿勢(下向き)として事前改良部20に挿入した後に、図7に示すように起倒用ジャッキ22を操作して攪拌混合機13を水平姿勢とすることができ(その際にはチェーン16を循環駆動して図示方向に回転させることにより前方壁を掘削すれば良い)、以降は上記実施形態と同様の作業手順と全く同様である。これによれば、事前改良部20の幅寸法d3を攪拌混合機13の全長よりも小さくすることができるし、前進用ジャッキ19の所要ストロークも小さくすることができる。さらに、攪拌混合機13を鉛直姿勢とした状態では特許文献1に示される従来の地盤改良装置と同様に機能するから、事前改良部20もこの地盤改良装置10自体で施工することが可能であるし、換言すれば事前改良部20を特に形成することなく、この地盤改良装置10で外殻改良ゾーン2の全体を施工することができる。
これらはいずれも既存建物30の外周部の下方地盤にその外形輪郭に沿う閉鎖環状(図示例では矩形枠状)の外殻改良ゾーン2を上記と同様の工法により形成するものであり、いずれも既存建物30の下方地盤の液状化を有効に防止できるばかりでなく、杭31に対する補強効果も得られて地震時における杭31の損傷を防止できる効果が得られるものである。
なお、これら場合も、原地盤の状況や要求される液状化強度、その他の諸条件を考慮して、必要であれば外殻改良ゾーン2の内部に薬液注入による内部改良ゾーン3を形成すれば良く、その内部改良ゾーン3の形成パターンとしては、たとえば図8に示すように外殻改良ゾーン2の内部全体に形成したり、図9に示すように杭31の位置を中心に格子状に形成したり、図10に示すように梯子状に形成することが考えられる。勿論、外殻改良ゾーン2のみで充分な液状化防止効果が得られる場合には、内部改良ゾーン3は不要であるので、図11に示すように外殻改良ゾーン2を形成するのみで内部改良ゾーンを省略すれば良い。
また、本発明は上記実施形態のように既存の石油タンクや既存建物のみならず様々な形態、規模、用途の構造物の下方地盤に対しても同様に適用できるものであるし、さらには地盤改良するべき対象地盤の上方に何らかの障害物があって直上からの作業が行えないような場合にも有効に適用可能である。
たとえば、上記実施形態のように攪拌混合機13に前進用ジャッキ19を搭載して後方地盤から反力をとって攪拌混合機13を前進させる構成とすることにより、より確実かつ容易に前進させることが可能であるので、そのように構成することが好ましいが、ベースマシン11による操作のみで攪拌混合機13を前進させることも可能である場合には前進用ジャッキ19は必ずしも設けることはない。
また、図6〜図7に示した実施形態では攪拌混合機13を鉛直アームに対して鉛直面内において回動可能としたが、それに加えて、構成が若干複雑化することにはなるが、攪拌混合機13を水平面内においても(つまり全方向に)回動可能とすることも考えられるし、さらには攪拌混合機13をそれ自身の軸線廻りに回転可能に構成することも考えられ、そのようにすれば攪拌混合機を様々な姿勢とできるし、既存構造物の下方地盤において各方向(前後方向、上下方向、左右方向)に自由に移動させることも可能となり、より効率的な攪拌混合を行うことが可能となる。
1a 基礎
2 外殻改良ゾーン(セメント改良ゾーン)
3 内部改良ゾーン(薬液改良ゾーン)
10 地盤改良装置
11 ベースマシン
12 揺動アーム
13 攪拌混合機
14 鉛直アーム
15 揺動ジャッキ
16 チェーン
17 スプロケット
18 反力板
19 前進用ジャッキ
20 事前改良部
21 水平軸
22 起倒用ジャッキ(回動用ジャッキ)
30 既存建物(既存構造物)
Claims (6)
- 既存構造物の支持地盤に対して液状化防止対策としての地盤改良を行うために用いる地盤改良装置であって、
地盤中に挿入されて固化材を供給しつつ原位置土と攪拌混合する攪拌混合機と、該攪拌混合機を水平姿勢で上下方向および水平各方向に移動可能に保持して該攪拌混合機を既存構造物の周囲地盤に挿入しかつそこから既存構造物の下方地盤に進入せしめるベースマシンとを具備してなることを特徴とする地盤改良装置。 - 攪拌混合機に搭載されて地盤中において後方に向かって伸張することにより、後方地盤から反力をとって攪拌混合機全体を前方に押し出す前進用ジャッキを具備してなることを特徴とする請求項1記載の地盤改良装置。
- ベースマシンの揺動アームに垂直アームを設けて該垂直アームの下端部に攪拌混合機を回動自在に支持するとともに、攪拌混合機を回動させるための回動駆動源を具備してなることを特徴とする請求項1または2記載の地盤改良装置。
- 請求項1,2または3記載の地盤改良装置によって既存構造物の支持地盤に対して液状化防止対策としての地盤改良を行うための液状化防止工法であって、
既存構造物の周囲地盤に攪拌混合機を挿入してその先端部を既存構造物の下方地盤に進入せしめて、該攪拌混合機より既存構造物の外周部の下方地盤に対して固化材を供給するとともに原位置土と攪拌混合することにより、既存構造物の外周部の下方地盤に既存構造物の外形輪郭に沿う閉鎖環状の外殻改良ゾーンを形成することを特徴とする液状化防止工法。 - 外殻改良ゾーンの形成に際しての固化材としてセメントないしセメント系固化材を用いることにより、外殻改良ゾーンをセメント改良ゾーンとして形成することを特徴とする請求項4記載の液状化防止工法。
- 外殻改良ゾーンの内側に薬液注入を行うことにより、外殻改良ゾーンの内側にそれよりも相対的に低強度の内部改良ゾーンを形成することを特徴とする請求項5記載の液状化防止工法。
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