JP5413665B2 - 液状化対策構造 - Google Patents

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Description

本発明は、既存構造物を支持する地盤の液状化対策構造に関する。
近年、過去の耐震基準で構築され現存しているタンクを新基準に適合させるための改修が行われている。
例えば、既存タンクに対する液状化対策工法として、既存タンクの基礎直下の地盤に薬液を注入する薬液注入工法などの浸透固化工法が行われている。この工法では、地盤に薬剤を注入した後にボーリング調査を行い、所定の地盤強度が確保できているかを確認している。
また、地盤を機械的に攪拌しながらセメント系スラリーや粉体などの固化材を噴射するセメント系の深層混合処理工法が行われている。深層混合処理工法では、所定範囲の地盤を確実に改良できるメリットがある。しかし、タンクの直下の地盤に改良を行うことは難しいという欠点があった。
そこで、特許文献1によれば、地盤中に挿入されて固化材を供給しつつ地盤の原位置土を攪拌する攪拌混合機を水平姿勢で上下方向および水平方向に移動可能に保持した構成で、攪拌混合機をタンクの周囲に挿入してタンクの下方地盤に進入させる地盤改良装置と、この地盤改良装置を使用する液状化防止工法とが提案されている。
特開2007−162337号公報
しかしながら、従来の液状化対策工法では以下のような問題があった。
薬液注入工法などの浸透固化工法による液状化対策工法では、薬液を地盤内部に均一に浸透させることが難しく、地盤全体に、どの程度浸透しているか確認することが難しいという問題があった。
また、地盤の原位置土と固化材とを攪拌混合させる深層混合処理工法による液状化対策工法では、タンク下の地盤を全面改良するため、改良のコストが高くなり、手間もかかっていた。
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、既存の構造物が構築されている地盤を部分的に改良して液状化による構造物の被害を低減させる液状化対策構造を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係る液状化対策構造では、液状化による既存構造物の被害を低減させる液状化対策構造であって、前記既存構造物の外周部の下方および周囲の地盤に、前記地盤の原位置土と固化材とを攪拌して形成されていて、前記既存構造物の外周に直交する向きもしくは直交に近い向きの地中壁が、前記既存構造物の外周に平行な方向に所定の間隔をあけて複数配設されていて、前記地中壁が配設された部分改良地盤の液状化強度は、改良前の地盤に地震時に生じるせん断応力を算出し、前記せん断応力に基づいて改良前の地盤のせん断ひずみを算出し、改良後の地盤の等価せん断剛性を算出し、
改良後の地盤における前記地中壁間の未改良地盤に生じるせん断ひずみを求め、前記せん断ひずみに応じた等価せん断剛性を再決定し、再決定した等価せん断剛性を用いてせん断ひずみが一定の値に収束するまで計算を行ってせん断ひずみを決定し、決定したせん断ひずみに基づいて未改良地盤に生じる過剰間隙水圧比を求め、前記過剰間隙水圧比に基づいて評価されていることを特徴とする。
また、本発明に係る液状化対策構造では、既存構造物は平面視円形の構造物で、地中壁は既存構造物に対して放射状に配設されていてもよい。
本発明では、既存構造物の外周部の下方および周囲の地盤に、地盤の原位置土と固化材とを攪拌して形成されていて、既存構造物の外周に直交する向きもしくは直交に近い向きの地中壁が、既存構造物の外周に平行な方向に所定の間隔をあけて複数配設されていることにより、地中壁間の地盤を地中壁が拘束し、地震時のせん断変形を抑えることができるので、液状化による既存構造物の被害を低減させることができる。
そして、複数の地中壁を所定の間隔をあけて配設することにより、地盤を全面改良する液状化対策構造と比べて、地盤改良の量を少なくすることができ、労力やコストを軽減できて、工期を短縮することができる。
また、部分改良地盤の液状化強度を事前に評価することにより、地中壁の形状を適切に計画することができるので、液状化による既存構造物の被害を防ぐことができると共に、過剰な地盤改良を行うことを防ぐことができる。
また、本発明に係る液状化対策構造では、既存構造物の中心部の下方地盤は改良されていることを特徴とする。
また、本発明に係る液状化対策構造では、既存構造物の中心部の下方の地盤には、前記地盤の原位置土と固化材とを攪拌して形成された地盤改良体が部分的に配設されていてもよい。
また、本発明による液状化防止構造では、既存構造物の中心部の下方地盤は、薬液を注入し浸透固化させることにより改良されていてもよい。
本発明では、既存構造物の中心部の下方地盤を改良することにより、既存構造物を支持する地盤の強度を高くすることができる。
また、本発明に係る液状化対策構造では、前記地中壁は下端部が前記地盤の非液状化層に根入れされていて、前記既存構造物の中心部の下方の地盤の改良は非液状化層に達していない構成としてもよい。
本発明では、地中壁は下端部が地盤の非液状化層に根入れされていることにより、地震時の地中壁の変位が抑えられて、隣り合う地中壁間の地盤がせん断変形することを抑制でき既存構造物の不同沈下を防ぐことができる。
また、既存構造物の中心部の下方の地盤の改良は非液状化層に達していないことにより、非液状化層と既存構造物の中心部の下方の地盤改良体との間には液状化層が介在し、地震時に非液状化層から既存構造物の中心部の下方の地盤改良体に伝達する振動の一部がこの液状化層によって吸収されるので、既存構造物に伝達する振動を減少させることができる。
また、既存構造物の中心部の下方の地盤を非液状化層に達するように改良する場合と比べて、地盤改良の量が少なくコスト削減と工期短縮を図ることができる。
また、本発明に係る液状化対策構造では、固化材はセメントまたはセメント系固化材であることが好ましい。
本発明では、固化材をセメントまたはセメント系固化材とすることにより、地中壁の強度を高めることができ、既存構造物を支持する地盤の強度を高めることができる。
本発明によれば、既存構造物の外周部の下方地盤および周囲地盤に、地中壁が配設されていることにより、液状化による既存構造物の被害を低減させて、地震による既存構造物の振動を抑制することができると共に、既存構造物の下方地盤を全面改良する場合と比べて、地盤改良の量を少なくすることができ、労力やコストを軽減でき、工期を短縮することができる。
(a)は本発明の第一の実施の形態による液状化対策構造の一例を示し(b)のA−A線断面図、(b)は(a)のB−B線断面図である。 図2は図1に示す液状化対策構造の単位周期構造体を示す図である。 本発明のバットレスの形状を決定する際に使用する部分改良地盤の変形量の算定に使用する、簡易チャートの例を示す図である。 本発明の部分改良地盤の液状化強度の簡易評価法の実施形態を示すもので、その全体手順を示すフローチャートである。 せん断ひずみとせん断応力の関係を示す図である。 せん断剛性低下率とせん断ひずみの関係を示す図である。 過剰間隙水圧比を求めるための図である。 液状化強度曲線の模式図である。 地盤改良装置によってタンクの下方地盤にバットレスを形成する工程を示すもので、事前改良部を施工した状態を示す図である。 図9において攪拌混合機を事前改良部に挿入した状態を示す図である。 攪拌混合機をタンクの下方地盤に到達させた状態を示す図である。 攪拌混合機を事前改良部の底部まで降下させた状態を示す図である。 (a)は本発明の第二の実施の形態による液状化対策構造の一例を示し(b)のC−C線断面図、(b)は(a)のD−D線断面図である。 (a)は本発明の第三の実施の形態による液状化対策構造の一例を示し(b)のE−E線断面図、(b)は(a)のF−F線断面図である。 (a)は本発明の第四の実施の形態による液状化対策構造の一例を示し(b)のG−G線断面図、(b)は(a)のH−H線断面図である。 (a)は構造物の下方の地盤の改良深さと構造物の沈下量との関係を検証する実験の概要を示す図、(b)は(a)の実験ケースの詳細を示す図である。 図16に示す実験の結果で実験ケースC0の沈下量を1として実験ケースC1〜C4の沈下量を示す図である。 (a)は本発明の実施の形態の変形例による液状化対策構造の一例を示し(b)のI−I線断面図、(b)は(a)のJ−J線断面図である。
以下、本発明の実施の形態による液状化防止構造について、図1乃至図4に基づいて説明する。
図1(a)、(b)に示すように、本実施の形態による液状化対策構造1は、液状化対策のされていない既存のタンク2の支持地盤に液状化対策として行う地盤改良の構造であって、タンク2の外周部2aの下方の地盤Gと周辺の地盤Gとに造成された複数のバットレス(地中壁)3と、既存のタンク2の中心部2bの下方の地盤Gを全面改良した内部地盤改良体4とから構成される。本発明において、タンク2の外周部2aとはタンク2の外周側の所定範囲の部分を示し、外周部2aの内側を中心部2bとする。
タンク2は、円柱状に形成されており、底面には基礎スラブ11を備えている。
バットレス3は、セメント系深層混合処理工法によって形成された板状の地盤改良体で、図1(a)に示すように、タンク2の中心軸を中心として放射状に複数配設されて、隣り合うバットレス3の間には所定の間隔が設けられている。
内部地盤改良体4は、セメント系深層混合処理工法によって改良されている。
このような液状化対策構造1において、バットレス3の配設された部分改良地盤G1の液状化強度を評価するには、まず、部分改良地盤G1を図2に示すように単位周期構造体G2の集合体として築造し、その単位周期構造体G2の剛性を数学的均質化理論に基づいて求めてこれを部分改良地盤G1全体の等価剛性とし、この等価剛性と築造後の部分改良地盤G1に作用する外力とから部分改良地盤G1の変形量を事前に予測算定する。
そして、改良前の地盤Gに地震時に生じるせん断応力を算出して、このせん断応力に基づいて改良前の地盤Gのせん断ひずみを算出する。改良後の部分改良地盤G1の等価せん断剛性を算出し、改良後の部分改良地盤G1におけるバットレス3間の未改良地盤に生じるせん断ひずみを求め、このせん断ひずみに応じた等価せん断剛性を再決定する。
そして、再決定した等価せん断剛性を用いてせん断ひずみが一定の値に収束するまで計算を行ってせん断ひずみを決定し、決定したせん断ひずみに基づいて未改良地盤に生じる過剰間隙水圧比を求める。
そして、この過剰間隙水圧比に基づいて部分改良地盤G1の液状化強度を評価する。
この部分改良地盤の液状化強度の簡易評価法について以下に説明する
まず、単位周期構造体G2の改良率Rを求める。
図2に示すように、部分改良地盤G1は、バットレス3の配設されたタンク2の外周部の下方および周囲の地盤Gでリング状に形成されている。単位周期構造体G2は、部分改良地盤G1を均等に円弧状に分割したもので、厚さl のバットレス3とその周辺の原地盤G3とからなる。
ここで、単位周期構造体G2の形状を図2に示すようにx方向の長さl 、y方向の長さl の矩形の内側に、厚さlのバットレス3がy方向に1枚配置されたものとして考える。
このとき、単位周期構造体G2の水平面積に対するバットレス3の水平面積の割合を示す改良率Rは、次式で表される。
Figure 0005413665
改良率Rの値は状況によって異なり任意に設定できるが、20〜60%を目安とする。
また、改良率Rは、後に説明する部分改良地盤G1の変形量が算定された際に、設計条件を満足していなければ、修正される。
次に、部分改良地盤G1の等価剛性を求める。
単位周期構造体G2は剛性の異なる2つの弾性体、すなわち未改良で低剛性の原地盤G3(その剛性をESとする)と、改良により高剛性とされたバットレス3(その剛性をERとする)の複合体と見なすことができ、さらにその複合体は、この複合体全体の剛性と等価とみなせる剛性(以下、これを等価剛性E という)を有する単一の均質体と見なすことができ、その均質体の等価剛性E は、数学的均質化理論に基づき単位周期構造体G2の特性と形状とをパラメータとして次のように求めることができる。
すなわち、数学的均質化理論によれば、2つの弾性体の複合体と等価の1つの均質体の弾性係数C をマトリックスで表記すると、次式で表される。
Figure 0005413665
上式においてCはミクロ周期構造としての単位周期構造体G2の弾性マトリックスである。
また、Xはミクロ周期構造に単位マクロ歪みIを与えた場合の応答変位であり、3次元では次式のように6成分からなるものである。
Figure 0005413665
また、均質体の弾性係数C の逆行列(コンプライアンスマトリックス)は次式で表され、この式から各方向の等価剛性を求めることができる。
Figure 0005413665
上式におけるEx は均質体のx方向の軸剛性、Ey はy方向の軸剛性、Ezはz方向の軸剛性、Gxy はx−y面内のせん断剛性、Gyz はy−z面内のせん断剛性、Gzx はz−x面(x−z面)内のせん断剛性であり、上式により求められる均質体の各剛性はすなわち単位周期構造体G2およびその集合体としての部分改良地盤G1全体の等価剛性を表すものである。
そして、本算定法においては、上式で求められる各方向の等価剛性と改良率Rとの関係を、単位周期構造体G2のパターンをパラメータとして予め簡易チャート化しておくことにより、その簡易チャートを用いて部分改良地盤G1の各方向の等価剛性(軸剛性およびせん断剛性)を簡易に求めるものである。
その簡易チャートは、具体例を図3に示すように、横軸に改良率Rをとり、縦軸に等価剛性Ex 、Ey 、Ez 、Gxy 、Gyz 、Gzx (バットレス3の軸剛性ERあるいはせん断剛性GRにより除して正規化してある)をとり、ES/ERあるいはGS/GR(バットレス3の剛性に対する原地盤G3の剛性の比)と、単位周期構造体G2の縦横比lx/lyをパラメータとして作成したものである。
図3(a)〜(f)に示す簡易チャートは、lx/ly=1、2、3とした場合のものあり、いずれもパラメータES/ERあるいはGS/GRを0、0.2、0.4、0.6、0.8としたものである。
このような簡易チャートを予め作成しておくことにより、改良率Rと、バットレス3の剛性ERあるいはGR、原地盤G3の剛性ESあるいはGSのみから、部分改良地盤G1の各方向の等価剛性を直ちに求めることができる。
次に、部分改良地盤G1の変形量を予測算定する。
部分改良地盤G1の周囲の液状化層が全て液状化するとして、液状化後に部分改良地盤G1にかかる外力を算定する。このとき部分改良地盤G1の内側の内部地盤改良体4は全面改良が行われているので、部分改良地盤G1の内部は液状化せず、内部地盤改良体4から部分改良地盤G1には外力がかからないものとする。
そして、等価剛性と部分改良地盤G1に作用する外力とから部分改良地盤G1の変形量を算定する。その算定は2次元弾性有限要素法によるか、あるいは、より簡易な手法として、部分改良地盤全体G1をせん断棒にモデル化することにより行うことができ、いずれの場合もほぼ同様の結果が得られる。
以上で算定された変形量が設計条件を満足すれば、その改良率Rを最終決定として対策決定とする。変形量の算定結果が設計条件を満足しなければ改良率Rを変更して以上の手順を繰り返す。すなわち、変形量が過大であれば改良不足であるので改良率Rを大きくするように変更し、変形量が過小であれば改良過剰であるので改良率Rを小さくするように変更し、満足すべき結果が得られるまで以上の手順を繰り返せば良い。勿論、その際に必要であれば、すなわち改良率Rの修正のみでは条件を満足できない場合には、バットレス3の剛性なども併せて見直せば良い。
次に、部分改良地盤G1の液状化強度の評価を行う。
液状化強度の評価法は、図4に示すフローチャートの一連のステップ(i)〜(vii)により構成されるものであり、以下にその詳細を説明する。
(i)地震時に地盤Gに生じるせん断応力τdを算出する。せん断応力τdは地震応答解析から算定するか、簡易液状化算定法に用いられている(1)式を用いて求める。
Figure 0005413665
(1) 式において、M:マグニチュード、αmax :地表面最大加速度、z:深度、σν':鉛直有効応力、σν :鉛直全応力、g:重力加速度である。
(ii)上記の(1)式で求めたせん断応力τ と、図5を用いて、改良前の地盤Gのせん断ひずみγiを算出する。図5は(2)式をもとに作成したものである。
Figure 0005413665
(2)式において、hmax は最大減衰定数で砂の場合は0.2〜0.25の値となる。初期せん断剛性Gsoや基準せん断ひずみγrfは砂の種類や拘束圧によって異なるが、典型的な例としてGso=50MPa、γrf=0.1%、hmax =0.2とした。
(iii)上述した算定法で説明した手法により、図3を用いて部分改良地盤G1の改良率、バットレス3の形状、改良パターン、および地盤Gとバットレス3のせん断剛性Gso、G に応じた等価せん断剛性Geqを算出する。
(iv)上記(i)で求めたせん断応力τ と、上記(iii)で仮算出した等価せん断剛性Geqを用いて、(3)式によりバットレス3間の地盤に生じるせん断ひずみγを求める。
Figure 0005413665
(v)上記(iv)で求めたせん断ひずみγ と図6とを用いて、せん断ひずみγに応じた等価せん断剛性Geqを再決定する。
(vi)再決定した等価せん断剛性Geqと、(1)式で求めたτ を用いて、(3)式により再度せん断ひずみγi を計算し、以上の計算をせん断ひずみγi が一定の値に収束するまで行う。
(vii)決定したせん断ひずみγ を用いて、図7により過剰間隙水圧比Δu/σν’を決定する。
図7は(2)式と次の(4)〜(6)式を用いて求めたものである。
Figure 0005413665
ここで、R は繰返せん断応力比、R20は液状化強度で20回で液状化に至るせん断応力比として規定している。N は液状化に至った繰返し回数である。kは実験定数で−0.25程度の値をとる。
図8は液状化強度曲線の模式図を示したものである。
(4)式はR 1回の繰返しで 1/N だけ液状化に近づいたとみなせるので、20回の繰返しせん断が生じた際の累積損傷度R は(5)式のように表せる。この状態で生じる過剰間隙水圧比は、De Albaの提案式である(6)式で表すことができる。αrfは実験定数であるが、緩い砂では0.7程度の値をとる。
そして、ステップ(vii)において図7を用いて過剰間隙水圧比Δu/σν’を求めることにより、その過剰間隙水圧比Δu/σν’が1.0未満であれば地盤Gは液状化に至らず過剰間隙水圧がある程度上昇するに留まることになり、そのことから部分改良地盤G1の液状化強度を評価することができる。そこで、仮に過剰間隙水圧比Δu/σν’が1.0以上であって地盤Gが液状化すると評価された場合には、改良率Rやその他の条件を再設定し、過剰間隙水圧比Δu/σν’が1.0未満になるまで以上の手順を繰り返し、バットレス3の形状を決定する。
このように、部分改良地盤G1の液状化強度を事前に評価しバットレス3の形状を決定しているので、液状化によるタンク2の被害を防ぐことができると共に、過剰な地盤改良を行うことを防ぐことができる。
次に、上述した液状化対策構造の施工方法(液状化対策工法)について図面を用いて説明する。
まず、図1に示すタンク2内の基礎スラブ11を撤去し、タンク2内部に地盤Gの表面を露出させる。
そして、図9に示すように、タンク2内部に地盤改良装置21を設置し、タンク2内部からバットレス3を造成する。
図9に示すように、本実施形態の地盤改良装置21は、バックホウ等をベースマシン22としてその揺動アーム23に対して攪拌混合機(トレンチャ)24を装着したものであるが、従来の地盤改良装置は攪拌混合機24を鉛直姿勢(つまり先端を下方に向けた状態)として揺動アーム23の先端部に直接的に装着したものであるのに対し、本実施形態の地盤改良装置21では揺動アーム23の先端部に鉛直アーム25を揺動ジャッキ26により揺動可能に連結し、その鉛直アーム25の先端部(下端部)に、攪拌混合機24を常にほぼ水平姿勢(つまり先端を前方に向けた状態)となるようにしてその後端部を固定したものとなっている。
攪拌混合機24は、基本的には周知の構造をしており、攪拌翼(図示せず)を取り付けた無端状のチェーン31を対のスプロケット32間に巻回して循環駆動するとともに、図示を略した固化材供給手段によって各種の固化材を地盤G中に噴出状態で供給可能なものであり、地盤G中に固化材を供給しつつチェーン31を循環駆動することによって固化材と原位置土とを効率的に攪拌混合し得るものである。
また、攪拌混合機24には、その後部に反力板33を備えた前進用ジャッキ34が搭載され、その前進用ジャッキ34を後方に伸張させることにより後方地盤から反力をとって攪拌混合機24の全体を前方に押し出すことができるものとなっている。
なお、攪拌混合機24の全長および前進用ジャッキ34のストロークは、形成するべきバットレス3の幅寸法d (図1参照)や、後述する事前改良部41の幅寸法d を考慮して、バットレス3を効率的に形成し得るように設定すれば良いし、前進用ジャッキ34の所要ストロークが特に大きいような場合には必要に応じて多段伸張式ジャッキを採用すれば良い。
上記構成の地盤改良装置21によりバットレス3を形成する場合の施工手順を図9〜図12を参照して説明する。まず、準備工程として、図9に示すように攪拌混合機24を地盤Gに挿入するための事前改良部41をタンク2の外周部2aの下方の地盤Gに形成する。
その事前改良部41の形成は適宜行えば良いが、従来の地盤改良装置を用いて固化材(本実施形態ではセメントないしセメント系固化材)を原地盤に供給しつつ原位置土と攪拌混合することで行うと良く、それにより事前改良部41の粘度を攪拌混合機24を挿入可能な程度の充分に柔軟で半流動性を有する状態としておく。
なお、事前改良部41は最終的には攪拌混合機24により形成されるバットレス3と一体となるものであり、その幅寸法dは少なくともバットレス3の全体を水平姿勢のままで挿入できる程度とし、その深さは少なくとも形成するべきバットレス3の底部に達する深度とする。
事前改良部41を形成した後、図10に示すようにベースマシン22の操作により攪拌混合機24を事前改良部41内に挿入し、タンク2の基礎スラブ11よりも深い位置に達したら、前進用ジャッキ34を後方に伸張させて反力板33を事前改良部41の後方壁に押し付け、それにより攪拌混合機24全体を前進せしめてその先端を事前改良部41の前方壁に押し付ける。
そして、攪拌混合機24のチェーン31を循環駆動するとともに固化材としてのセメント(セメントペーストあるいはセメントミルク)ないしセメント系固化材を噴出させつつ、前進用ジャッキ34をさらに伸張させて攪拌混合機24の先端部をタンク2の周辺の地盤Gに進入させていき、これにより固化材を原位置土と攪拌混合する。その際、チェーン31の駆動方向は攪拌混合機24の先端部が地盤Gに容易に食い込んでいく方向(図示では半時計回り)に設定すると良い。
図11に示すように前進用ジャッキ34を充分に伸張させて攪拌混合機24のほぼ全長がタンク2の周辺の地盤Gに進入したら、そのまま攪拌混合を継続しつつベースマシン22の操作により攪拌混合機24を徐々に降下させていく。
そして、図12に示すように攪拌混合機24が事前改良部41の底部(つまり形成するべきバットレス3の底部)まで達したら、この段階での作業が終了する。
そこで、前進用ジャッキ34を縮退させ、攪拌混合機24全体を事前改良部41の上部まで引き上げ、その位置をやや側方にずらしてから以上の作業を繰り返し、さらに以上の作業をタンク2の全周にわたって繰り返して、最終的にはバットレス3がタンク2を中心に放射状に配設され、所定期間が経過して固化材が硬化すればバットレス3が完成する。
次に、図1(a)、(b)に示す内部地盤改良体4の形成を行う。
内部地盤改良体4は、バットレス3の形成後に、あるいはそれに相前後して形成される。内部地盤改良体4は、図9に示す本実施の形態による地盤改良装置21または従来の地盤改良装置を用いてタンク2の中心部2bの下方の地盤Gを全体にわたって固化材と原位置土とを攪拌混合して地盤改良を行い、所定期間が経過して固化材が硬化すれば完成する。
そして、基礎スラブ11を復旧し、タンク2の支持地盤に液状化対策構造1が施される。
次に、上述した第一の実施の形態による液状化対策構造の作用について図面を用いて説明する。
第一の実施の形態による液状化対策構造1によれば、タンク2の外周部2aの下方の地盤Gと、周辺の地盤Gに複数のバットレス3が放射状に配設されていることにより、バットレス3がバットレス3間の地盤Gを拘束することができ、タンク2の外周部の下方および周囲の地盤Gの強度を増大させることができる。また、バットレス3はセメント系の固化材と原位置土とを攪拌混合して形成するので、タンク2を支持する地盤G全体の剛性を高めることができる。
上述した第一の実施の形態による液状化対策構造1では、タンク2の外周部2aの下方の地盤Gと、周辺の地盤Gに複数のバットレス3が放射状に配設されていることにより、液状化によるタンク2の被害を低減させると共に、地震によるタンク2の振動を抑制することができる効果を奏する。
また、タンク2の下方の地盤Gを全面改良する従来の液状化対策構造と比べて、地盤改良の量を少なくすることができ、労力やコストを軽減でき、工期を短縮することができる。
また、第一の実施の形態による液状化対策工法によれば、固化材と原位置土と攪拌混合する攪拌混合機24が水平姿勢で上下および水平方向に移動する地盤改良装置21によってバットレス3を形成することにより、確実な地盤改良が可能である。また、タンク2の中からタンク2周辺の地盤Gの改良を行うことができるので、効率的にバットレス3を造成することができ、バットレス3を形成する労力を軽減し、工期を短縮することができる。
また、バットレス3はタンク2の内部から形成されるので、タンク2の外部に配設されたタンク2の配管などをかわしながら作業を行わなくてよいので、バットレス3の形成が行いやすい。
次に、他の実施の形態について、添付図面に基づいて説明するが、上述の第一の実施の形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、第一の実施の形態と異なる構成について説明する。
図13に示すように、第二の実施の形態による液状化対策構造51では、内部地盤改良体54を部分改良地盤とし、格子状に地盤改良を行う。
このとき、内部地盤改良体54の改良率や地盤改良部分の剛性などの条件は、第一の実施の形態によるバットレス3と同様に、部分地盤改良体を単位周期構造体G2の集合体として部分地盤改良体の液状化強度を評価し、これを基に決定してもよい。
また、バットレス3の条件を決定する際には、液状化がした場合の内部地盤改良体54から受ける外力を考慮して液状化強度を算出し、この液状化強度を基に決定する。
第二の実施の形態による液状化対策構造51では、タンク2の外周部2aの下方の地盤Gと、周辺の地盤Gに複数のバットレス3が放射状に配設されていることにより、第一の実施の形態による液状化対策構造1と同様の効果を奏する。
図14に示すように、第三の実施の形態による液状化対策構造61では、内部地盤改良体64は薬液を浸透させる浸透固化工法により改良されている。
このとき、薬液により地盤Gの液状化に対する強度が上がるので、バットレス3の計画は、薬液注入の影響を考慮して行う。
第三の実施の形態による液状化対策構造61では、タンク2の外周部2aの下方の地盤Gと、周辺の地盤Gに複数のバットレス3が放射状に配設されていることにより、第一の実施の形態による液状化対策構造1と同様の効果を奏する。
また、内部地盤改良体64は薬液を浸透させる浸透固化工法により改良されていることにより、タンク2の基礎スラブ11を撤去しない場合であっても側方から薬液を注入することで内部地盤改良体64を形成することができる。
図15に示すように、第四の実施の形態による液状化対策構造81では、バットレス3の下端部3aが地盤Gの非液状化層G5に根入れされていて、タンク2の中心部2bの下方の地盤Gに形成された内部地盤改良体84はその下端部84aが非液状化層G5に達していなく、非液状化層G5と内部地盤改良体84との間には液状化層G6が介在している。
内部地盤改良体84の深度h1は、液状化層G6の深度h2の5〜8割程度とすることが好ましい。内部地盤改良体84は、セメント系深層混合処理工法によって形成されていてもよく、薬液を浸透させる浸透固化工法によって形成されていてもよい。また、内部地盤改良体84は、この他の方法で形成されていても。
内部地盤改良体84は、内部地盤改良体84が形成される領域全体が改良されたものでもよく、第二の実施の形態のように格子状に改良されたものとしてもよい。
第四の実施の形態による液状化対策構造81によれば、第一の実施の形態による液状化対策構造1と同様の効果を奏すると共に、バットレス3が非液状化層G5に根入れされていることにより、地震時のバットレスの3の変位が抑えられるので、隣り合うバットレス3間の地盤Gがせん断変形することを抑制できタンク2の不同沈下を防ぐことができる。
また、非液状化層G5と内部地盤改良体84との間に液状化層G6が介在していることにより、地震時に非液状化層G5から内部地盤改良体84に伝達する振動の一部が液状化層G6によって吸収されるので、タンク2に伝達する振動を減少させることができる。
また、内部地盤改良体84の下端部84aが非液状化層G5に達するように形成された場合と比べて、本実施の形態は内部地盤改良体84の施工量を少なくすることができるので、コスト削減と工期短縮を図ることができる。
ここで、構造物の下方の地盤の改良深さと構造物の沈下量との関係を検証する実験を行った。
図16(a)に示すように、非液状化層に相当する地盤Gに締め固めによる地盤改良を行い、この上に鋼鉄ブロック91を配設して所定の遠心振動実験(q=100kPa)を行い、鋼鉄ブロック91の沈下量を測定した。図16(a)において地盤改良された領域を地盤改良領域92とし、地盤改良領域92は平面視で鋼鉄ブロック91よりも大きい円形を断面とする円柱状に形成されている。
本実験では実験ケースC0〜C4の5つのケースについて行った。これらのケースC0〜C5では地盤改良領域92の深さh1が異なり、図16(b)にそれぞれの深さh1および地盤Gの深さh2に対する改良比(h1/h2)を示す。
図17の鋼鉄ブロックの沈下量を示す図からわかるように、ケースC2(改良比0.53)とケースC4(改良比1.00)では沈下量がほとんど変わらない。このことより、地盤Gの深さh2に対して約53パーセント以上の深さの地盤改良を行うことで地盤Gの全深さh2に改良を行った場合と鋼鉄ブロック91の沈下量を同等に抑えることができることがわかる。
以上、本発明による液状化対策構造の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上述した実施の形態では、タンク2の外周部2aの下方と周辺の地盤Gにバットレス3を配設し、タンク2の中心部2bの下方の地盤Gを改良しているが、タンク2の中心部2bの下方の地盤Gを改良せずに、タンク2の外周部2aの下方と周辺の地盤Gにバットレス3を配設する構造としてもよい。
また、上記の実施の形態では、基礎スラブ11を撤去してからタンク2の内部からバットレス3を施工しているが、タンク2の外方から本実施の形態による地盤改良装置21を使用してバットレス3を造成してもよい。
また、上記の実施の形態では、部分改良地盤G1の液状化強度を基に、バットレス3の形状を決定しているが、そのほか有限要素法(FEM)などを用いてバットレス3の検討を行ってもよい。
また、第二の実施の形態では、内部地盤改良体54は格子状に地盤改良された部分改良地盤であるが、所定の間隔で配設された柱状の地盤改良体が配設された部分改良地盤としてもよい。
また、本実施の形態では、円柱状のタンク2を支持する地盤Gに液状化対策構造を適用しているが、図18に示すように、平面視四角形などの他の形の構造物72に本実施の形態による液状化対策構造を適用してもよい。
1、51、61 液状化対策構造
2 タンク(既存構造物)
3 バットレス(地中壁)
4、54、64 内部地盤改良体
11 基礎スラブ
21 地盤改良装置
22 ベースマシン
24 攪拌混合機
G 地盤
G1、G4 部分改良地盤
G5 非液状化層
G6 液状化層
τ せん断応力
γ せん断ひずみ
eq 等価せん断剛性
Δu/σν’ 過剰間隙水圧比

Claims (7)

  1. 液状化による既存構造物の被害を低減させる液状化対策構造であって、
    前記既存構造物の外周部の下方および周囲の地盤に、前記地盤の原位置土と固化材とを攪拌して形成されていて、前記既存構造物の外周に直交する向きもしくは直交に近い向きの地中壁が、前記既存構造物の外周に平行な方向に所定の間隔をあけて複数配設されていて、
    前記地中壁が配設された部分改良地盤の液状化強度は、
    改良前の地盤に地震時に生じるせん断応力を算出し、
    前記せん断応力に基づいて改良前の地盤のせん断ひずみを算出し、
    改良後の地盤の等価せん断剛性を算出し、
    改良後の地盤における前記地中壁間の未改良地盤に生じるせん断ひずみを求め、
    前記せん断ひずみに応じた等価せん断剛性を再決定し、
    再決定した等価せん断剛性を用いてせん断ひずみが一定の値に収束するまで計算を行ってせん断ひずみを決定し、
    決定したせん断ひずみに基づいて未改良地盤に生じる過剰間隙水圧比を求め、
    前記過剰間隙水圧比に基づいて評価されていることを特徴とする液状化対策構造。
  2. 前記既存構造物の中心部の下方の地盤は改良されていることを特徴とする請求項1に記載の液状化対策構造。
  3. 前記地中壁は下端部が前記地盤の非液状化層に根入れされていて、前記既存構造物の中心部の下方の地盤の改良は非液状化層に達していないことを特徴とする請求項2に記載の液状化対策構造。
  4. 前記既存構造物の中心部の下方の地盤には、前記地盤の原位置土と固化材とを攪拌して形成された地盤改良体が部分的に配設されていることを特徴とする請求項2または3に記載の液状化対策構造。
  5. 前記既存構造物の中心部の下方地盤は、薬液を注入し浸透固化させることにより改良されていることを特徴とする請求項2または3に記載の液状化対策構造。
  6. 前記固化材はセメントまたはセメント系固化材であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の液状化対策構造。
  7. 前記既存構造物は平面視円形の構造物で、前記地中壁は前記既存構造物に対して放射状に配設されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の液状化対策構造。
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