JP2005083174A - 構造物の基礎地盤の液状化対策構造 - Google Patents

構造物の基礎地盤の液状化対策構造 Download PDF

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豊 桂
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Abstract

【課題】 地盤が液状化しても、構造物を安定的に支持できるとともに、液状化対策のための工費および工期を大幅に削減することができる構造物の基礎地盤の液状化対策構造を提供する。
【解決手段】 液状化層2と液状化層2下の非液状化層3とからなる地盤1上に、構造物4が構築されている。構造物4の直下には、液状化層2の液状化による構造物4の沈下量が許容沈下量以下となるような層厚を有する地盤改良体5が、液状化層2内に、平面視で構造物4が内包される領域に部分的に形成されている。また、地盤改良体5の下面は、略同一水平面内にある。
【選択図】 図1

Description

本発明は、構造物の基礎地盤の液状化対策構造に関する。
構造物直下の地層(以下、表層と呼ぶ。)あるいは構造物下方の比較的浅い位置にある地層(以下、中間層と呼ぶ。)にある砂質土層が地震時に液状化する場合、液状化による液状化層の体積変化により、構造物が沈下し、不具合が発生するおそれがある。
そこで、従来より、構造物直下あるいは下方の液状化層を地盤改良し、液状化そのものの発生を防止する対策が採られているが、液状化を完全に抑えるのは困難な場合もある。特に、既設構造物の場合には、既設構造物の外周から薬液注入を行うなど地盤改良の方法も限られ、構造物の規模や液状化層厚が大きくなるに伴い、地盤改良に掛かる工費や工期は膨大なものとなる(例えば、特許文献1参照。)。
これに対して、本発明者は、表層もしくは中間層のいずれかが地震時に液状化する可能性のある地層(以下、液状化層と呼ぶ。)により構成されている地盤上に構築される構造物の沈下低減構造を既に提案している(特願2003−190993参照。)。具体的には、液状化による構造物の沈下量を許容沈下量に抑えることのできる層厚を有する地盤改良体を、構造物直下もしくは構造物下方の液状化層内に、平面視で構造物が内包されるように形成するものである。
特開平05−059717号公報 (第2頁、第2図)
しかしながら、特許文献2に記載の発明も、従来の液状化対策ほどではないにしろ、構造物の規模が大きくなると、地盤改良に掛かる工費や工期は大きなものとなる。
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、地盤が液状化しても、構造物を安定的に支持できるとともに、液状化対策のための工費および工期を大幅に削減することができる構造物の基礎地盤の液状化対策構造を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係る構造物の基礎地盤の液状化対策構造では、表層もしくは表層下の中間層が液状化する可能性のある液状化層からなる地盤上に構築される構造物の基礎地盤の液状化対策構造であって、前記液状化層の液状化による前記構造物の沈下量が許容沈下量以下となるような層厚を有する地盤改良体が、前記構造物の直下もしくは下方の前記液状化層内に、平面視で前記構造物が内包される領域に部分的に形成されていることを特徴とする。
構造物の直下もしくは下方の液状化層内に、平面視で前記構造物が内包される領域に部分的に前記地盤改良体を形成することにより、前記地盤改良体と前記地盤改良体間の地盤未改良部とからなる複合地盤の等価剛性が増大する。その結果、地震時に液状化層に生じるせん断ひずみが小さくなり、液状化の発生が抑制されるものである。
液状化が一様に発生した場合には、液状化後の構造物の沈下量は液状化層厚に比例する。従って、液状化後の構造物の沈下量が許容沈下量以下となるように、前記地盤改良体の層厚、換言すれば液状化層内の前記地盤改良体の層厚を除いた液状化層厚、を決定すればよい。この際、構造物の基礎面積に対する地盤改良体の面積の割合を示す地盤改良率および地盤改良体のせん断弾性係数は、地盤条件に応じて設定する必要がある。
本発明では、液状化層の液状化による構造物の沈下量が許容沈下量以下となるような層厚を有する地盤改良体を、前記構造物の直下もしくは下方の前記液状化層内に、平面視で前記構造物が内包される領域に部分的に形成することにより、地盤が液状化しても、構造物を安定的に支持できるとともに、液状化対策のための工費および工期を大幅に削減することができる。
また、本発明に係る構造物の基礎地盤の液状化対策構造では、前記領域に部分的に形成された前記地盤改良体が、それぞれ鉛直方向に複数層に分割されて、前記液状化層内で所定の離間間隔をもって層状に形成されていてもよい。
液状化後の構造物の沈下量は、液状化層内の前記地盤改良体の層厚を除いた液状化層厚に比例する。従って、前記地盤改良体が鉛直方向に複数層に分割されていても、前記複数層の地盤改良体の各層厚の総和でもって、構造物の沈下量が許容沈下量以下となるように決定すればよい。
また、本発明に係る構造物の基礎地盤の液状化対策構造では、前記領域に部分的に形成された前記地盤改良体の各上面および各下面の少なくともいずれかが、略同一水平面内にあることが好ましい。
本発明では、前記領域に部分的に形成された前記地盤改良体の各上面および各下面の少なくともいずれかが、略同一水平面内にあることにより、液状化後の液状化層の体積ひずみが一様となり、有害な不同沈下が抑制される。
本発明によれば、液状化層の液状化による構造物の沈下量が許容沈下量以下となるような層厚を有する地盤改良体を、前記構造物の直下もしくは下方の前記液状化層内に、平面視で前記構造物が内包される領域に部分的に形成することにより、地盤が液状化しても、構造物を安定的に支持できるとともに、液状化対策のための工費および工期を大幅に削減することができる構造物の基礎地盤の液状化対策構造を実現することができる。
以下、本発明に係る構造物の基礎地盤の液状化対策構造の実施形態について、図面に基いて説明する。
図1は、本発明に係る構造物の基礎地盤の液状化対策構造の第一の実施形態を示す立断面図である。また、図2および図3は、箱型構造物の場合における本発明の第一の実施形態を示す平断面図、図4および図5は、円筒構造物の場合における本発明の第一の実施形態を示す平断面図である。
図1に示すように、本実施形態による構造物の基礎地盤の液状化対策構造では、液状化層2と液状化層2下の非液状化層3とからなる地盤1上に、構造物4が構築されている。構造物4の直下には、液状化層2の液状化による構造物4の沈下量が許容沈下量以下となるような層厚を有する地盤改良体5が、図2乃至5に示すように、液状化層2内に、平面視で構造物4が内包される領域に部分的に形成されている。また、地盤改良体5の下面は、略同一水平面内にある。
ここで、地盤改良を行う際に一般的に用いられるセメント系の固化材料又は液状化対策として用いられる水ガラス系薬液注入材料等により構成されている。構造物4の側方より掘削・改良・埋戻を構造物4の外周に沿って順次繰り返すことにより、使用中の構造物4であっても施工が可能である。
構造物4の直下の地盤改良体5と地盤改良体5間の地盤未改良部6とからなる複合地盤が、所定の等価せん断弾性係数を有することにより、地震時に液状化層2に生じるせん断ひずみが小さくなり、液状化の発生が抑制されるものである。
液状化が一様に発生した場合には、液状化後の構造物4の沈下量は液状化層2厚に比例する。従って、液状化後の構造物4の沈下量が許容沈下量以下となるように、地盤改良体5の層厚、換言すれば液状化層2内の地盤改良体5の層厚を除いた液状化層2厚、を決定すればよい。この際、構造物4の基礎面積に対する地盤改良体5の面積の割合を示す地盤改良率および地盤改良体5のせん断弾性係数は、地盤条件に応じて設定する必要がある。
上記実施形態では、地盤改良体5は構造物4の直下に形成されているが、必ずしもこれに従う必要はなく、その配置高さも、図6に示すように、液状化層2内であれば、中間部や下端部近傍でもよい。さらに、図6(c)に示すように、地盤改良体5を複数層に鉛直分割して、所定の離間間隔をもって液状化層2内に層状に配置してもよい。なぜならば、液状化後の構造物4の沈下量は、液状化層2内の地盤改良体5の層厚を除いた液状化層2の厚さに比例するからである。なお、この場合、地盤改良体5の各上面および各下面が、略同一水平面内にあることが好ましい。
第一の実施形態による構造物の基礎地盤の液状化対策構造では、液状化層2の液状化による構造物4の沈下量が許容沈下量以下となるような層厚を有する地盤改良体5を、構造物4の直下もしくは下方の液状化層2内に、平面視で構造物4が内包される領域に部分的に形成することにより、地盤1が液状化しても、構造物4を安定的に支持できるとともに、液状化対策のための工費および工期を大幅に削減することができる構造物の基礎地盤の液状化対策構造を実現することができる。
また、第一の実施形態による構造物の基礎地盤の液状化対策構造では、前記領域に部分的に形成された地盤改良体5の各上面および各下面の少なくともいずれかが、略同一水平面内にあることにより、液状化後の液状化層2の体積ひずみが一様となり、有害な不同沈下が抑制される。
図7は、本発明に係る構造物の基礎地盤の液状化対策構造の第二の実施形態を示す立断面図である。
第一の実施形態では、表層が液状化層2により形成されている場合を例に取り、構造物の基礎地盤の液状化対策構造を詳述したが、本構造を適用する地盤1は、必ずしもこれにこだわるものではない。例えば、図7(a)に示すように、非液状化層3よりなる表層と、当該表層の直下に位置し液状化層2からなる中間層を備える地盤1上に、構造物4を構築する際にも、地盤改良体5を構造物4下方の液状化層2内に平面視で構造物4が内包される領域に部分的に形成すればよい。
これら地盤改良体5は、液状化後の構造物4の沈下量が許容沈下量以下となるように層厚が設定されていれば良く、また、その配置高さも、図7(a)から(c)に示すように、液状化層2内であれば、上端部近傍、中間部、下端部近傍の何れでもよい。さらに、図7(d)に示すように、地盤改良体5を複数層に鉛直分割して、所定の離間間隔をもって液状化層2内に層状に配置してもよい。なお、この場合も、地盤改良体5の各上面および各下面が、略同一水平面内にあることが好ましい。
次に、液状化による構造物4の沈下量を許容沈下量以下とするための前提となる、液状化後の沈下量の計算方法について説明する。なお、液状化後の沈下量を精度良く行える方法であれば、本方法に限るものではない。
液状化後の沈下量Dは(1)式により求めることができる。
Figure 2005083174
ここで、残留体積ひずみ(εvrmaxは、液状化前後の砂要素の体積変化量を液状化前の砂要素の体積で除したものであり、(2)式で表すことができる。
Figure 2005083174
(2)式における真の最小間隙比emin は(3)式で表される。
Figure 2005083174
砂の最大間隙比emaxと砂の最小間隙比eminは、最小・最大密度試験により求めることが望ましいが、経験的には細粒分含有率Fより以下の式を用いて求めることができる。
Figure 2005083174
Figure 2005083174
また、液状化前の砂の間隙比eは、砂の最大間隙比emaxと砂の最小間隙比eminを用いて(6)式で表される。
Figure 2005083174
砂の相対密度Dは、現位置の砂の密度より求められるが、経験的には地盤の補正N値Nを用いて(7)式から計算できる。
Figure 2005083174
Figure 2005083174
ここに、細粒分含有率に応じた補正N値増分ΔNは、図8の補正N値増分と細粒分含有率との関係を示すグラフより求めることができる。
一方、(2)式における液状化時に最大せん断ひずみγmaxは、有効応力解析等の手段により求めることができるが、簡易的には、地震時に地盤の各深さに発生する等価繰り返しせん断応力比τ/σ’と補正N値Nより、図9を用いて求めることができる。ここで、図9中の等価繰り返しせん断応力比τ/σ’は次式により計算できる。
Figure 2005083174
さて、本発明では、構造物4直下の基礎地盤が、地盤改良体5、15と地盤未改良部6、16とからなる複合地盤であるため、(1)式により液状化後の沈下量を求めるに際し、複合地盤の地震時最大せん断ひずみγmax’を用いる必要がある。
複合地盤の地震時最大せん断ひずみγmax’は(10)式で示される。
Figure 2005083174
(10)式中の地震時の最大せん断応力τmaxは(11)式より、また、等価せん断弾性係数G’は(12)式より、それぞれ求めることができる。
Figure 2005083174
Figure 2005083174
以上、本発明に係る構造物の基礎地盤の液状化対策構造の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上記の実施形態では既設構造物を対象にしているが、新たに構造物を建設する場合には、構造物の建設に先立って基礎地盤の地盤改良を行うことにより、構造物の自重による即時沈下量を低減することができる。
本発明の第一の実施形態を示す立断面図である。 箱型構造物の場合における本発明の第一の実施形態を示す平断面図である。 箱型構造物の場合における本発明の第一の実施形態を示す平断面図である。 円筒構造物の場合における本発明の第一の実施形態を示す平断面図である。 円筒構造物の場合における本発明の第一の実施形態を示す平断面図である。 本発明の第一の実施形態を示す立断面図である。 本発明の第二の実施形態を示す立断面図である。 補正N値増分と細粒分含有率との関係を示すグラフである。 等価繰り返しせん断応力比と補正N値より液状化時に発生する最大せん断ひずみを予測するグラフである。
符号の説明
1、11 地盤
2、12 液状化層
3、13 非液状化層
4、14 構造物
5、15 地盤改良体
6、16 地盤未改良部

Claims (3)

  1. 表層もしくは表層下の中間層が液状化する可能性のある液状化層からなる地盤上に構築される構造物の基礎地盤の液状化対策構造であって、
    前記液状化層の液状化による前記構造物の沈下量が許容沈下量以下となるような層厚を有する地盤改良体が、前記構造物の直下もしくは下方の前記液状化層内に、平面視で前記構造物が内包される領域に部分的に形成されていることを特徴とする構造物の基礎地盤の液状化対策構造。
  2. 前記領域に部分的に形成された前記地盤改良体が、それぞれ鉛直方向に複数層に分割されて、前記液状化層内で所定の離間間隔をもって層状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の構造物の基礎地盤の液状化対策構造。
  3. 前記領域に部分的に形成された前記地盤改良体の各上面および各下面の少なくともいずれかが、略同一水平面内にあることを特徴とする請求項1又は2に記載の構造物の基礎地盤の液状化対策構造。
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