JP4573088B2 - 有機顔料組成物の製造方法および顔料分散体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種の用途、特にインキ、塗料、プラスチック、カラートナーおよびカラーフィルター等の着色に有用な有機顔料組成物の製造方法および顔料分散体に関する。
【0002】
【従来の技術】
有機顔料は無機顔料に比べ、高い着色力・鮮明性等の特徴を持ち、インキ・塗料・プラスチック・カラートナーおよびカラーフィルター等の様々な用途において、有用な着色剤として広く使用されている。有機顔料の特徴として、染料が媒体中に分子状態で分散して使用されるのに対し、結晶状粒子の形態で媒体中に分散して使用されている。そのため有機顔料は染料に比較し堅牢性に優っている。
この優れた堅牢性が発現する要因として有機顔料の化学構造中の水素結合、とくに分子間水素結合が強く寄与していることが知られている。
【0003】
このような有機顔料は一般に、原料物質からの合成直後(後に詳述する、粗製顔料を製造する工程である第1工程の直後)は着色剤としての適性を有していない。これは合成直後の有機顔料の粒子径が非常に微細で強く凝集しているため、または非常に巨大な結晶粒子径をもつ状態にあるため、着色剤用途で有機顔料として十分な性能を有するための適当な粒子径の大きさから逸脱しているためである。
【0004】
そのためこれらの着色剤としての適性が不十分な有機顔料は、粗製顔料、粗顔料、クルード、またはプレ顔料(Prepigment)等と当業界において称されている。このような粗製顔料とよばれる状態の物質の窒素吸着法によるBET比表面積測定法で測定した比表面積は、通常は有機顔料として使用される形態時より低い値をとり、このまま有機顔料として使用した場合、粗製顔料を形成する微細な粒子の凝集体や巨大な結晶粒子を分散媒体中で分散して着色剤として最適な粒子径までの分散・微細化することができない。そのため例えば粗製顔料から製造した分散体は鮮明性、着色力等に劣り、粗製顔料は、通常は着色剤としての使用に適していない。
【0005】
これらの問題を解決するため粗製顔料は、有機顔料として使用するため何らかの後処理を必要とし、粗製顔料を、それを製造したのとは異なる液媒体中で加熱処理を行ってやることにより顔料結晶を大きくして凝集状態をほぐしたり、分散助剤とともにニーダーやボールミル等の機械的分散力を使用して巨大結晶を微細化したりする方法が一般的に行われている。これらの後処理は一般的に「顔料化」と呼ばれている。
【0006】
即ち有機顔料は、粗製顔料を製造する第1工程と、この第1工程で得られた粗製顔料を顔料化して有機顔料とする第2工程とからなる製造方法により、一般的には製造されている。
【0007】
粗製顔料を顔料化して有機顔料とする前記第2工程における、顔料化の手段としては、例えば下記特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4,特許文献5、特許文献6及び特許文献7等の文献が公知である。
【0008】
これらは、粗製顔料を固形粉砕助剤とハロゲンアルコールまたはシアノアルコールで粉砕したり、粗製顔料を高温の水中で加熱したり、粗製顔料を固体粉砕助剤と塩素系溶剤と粉砕し次いでテトラクロロエチレン等の水性エマルジョン中で攪拌したり、粗製顔料を安息香酸と無機塩を含む中性から酸性で加温したり、粗製顔料をアルカリ土類金蔵水酸化物、無機アンモニウム塩、アルカリ可溶性芳香族化合物またはアミノ酸のような粉砕助剤の存在下で乾式粉砕したり、粗製顔料を水可溶性基を有する芳香族化合物と高温で加熱したりする方法である。
【0009】
このような顔料化を経て得られた有機顔料の粒子径は、当該有機顔料を使用した分散体の様々な適性に影響を与えており、例えば印刷インキに於ける用途適性では、鮮明性、透明性、着色力、色相、流動性等に関連しており、有機顔料の粒子径が微細なほど、着色画像の透明性、着色力が向上する傾向にある事が広く知られている。そのため有機顔料の凝集をほぐすために、その粒子径をいたずらに大きくすると、例えば印刷インキに使用した場合には着色画像の透明性や着色力が失われ、またトナー用途ではトナー定着後の着色画像の透明性や発色性が低下する。また巨大結晶から微細化を行う場合、多大なエネルギーを必要とするだけでなく、求められる適性に必要な粒子径まで有機顔料を微細化することが困難な場合が多い。これらの問題点は、前記に挙げられたような公知の文献ではいまだ十分な解決がなされていない。
【0010】
特許文献7に記載された技術は、予め製造した粗製顔料を、特定一般式(I)で示されるベタイン型両性界面活性剤を含む液媒体中で加熱処理することで顔料化する有機顔料組成物の製造方法である。ここでは、ベタイン型両性界面活性剤として、カルボキシベタイン型と2−アルキルイミダゾリンの誘導型の両性界面活性剤が用いられている。この方法は、顔料結晶を大きくして凝集状態をほぐす方法としてある程度は有用ではある。しかしながら、実際そこで用いられているベタイン型両性界面活性剤が特異的構造を有するため、着色画像の着色力が依然として不充分であるという欠点を有している。ちなみに、特定一般式(II)で示される両性界面活性剤は、ベタイン型両性界面活性剤ではない。
【0011】
また、これらの問題を解決する手段として、前記顔料化に関する第2工程ではなく、粗製顔料の製造時である第1工程において、適当な処理剤の存在下でこの粗製顔料の製造を行うことにより顔料粒子の凝集状態をほぐし、引き続き第2工程の顔料化を行って、前記処理剤を含む有機顔料組成物を製造することで、有機顔料による着色画像の着色力等の適性を改良する方法が知られている。
【0012】
しかし、処理剤の種類によってはこれらの改良効果が十分得られず、また処理剤の存在が粗製顔料の製造時の反応を妨げることにより、第1工程を行った段階で望まない分解生成物が生じ、引き続き第2工程を行ったとしても、結果として得られた処理剤を含む有機顔料組成物から得られた着色画像が、色相汚れ(鮮明性の低下)を招いてしまう場合がある。本発明者らの知見によれば、特許文献7に記載されているようなベタイン型両性界面活性剤は、粗製顔料の製造時である第1工程でそれを用いて粗製顔料組成物を製造し引き続き第2工程の顔料化を行って有機顔料組成物を製造すると、着色画像には、前記したような色相汚れが発生することがわかっている。特許文献7における特定一般式(II)で示されるベタイン型でない両性界面活性剤でも同様な色相汚れが発生することがわかっている。
【0013】
【特許文献1】
特公昭37−16166号公報(第2頁右欄第23〜29行等)
【特許文献2】
特開昭57−141457号公報(第1頁左欄第4行〜第12行等)
【特許文献3】
特開昭56−22356号公報(第1頁左欄第5行〜同頁右欄第7行等)
【特許文献4】
特開昭56−67370号公報(第1頁左欄第4〜10行等)
【特許文献5】
特開平1-193366号公報(第1頁左欄第3行〜同頁右欄第16行等)
【特許文献6】
特開平8−295815号公報(第2頁第1欄第1〜33行等)
【特許文献7】
特開平11−302554公報(第2頁第1欄第1行〜同頁第2欄22行等)
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記特許文献7に記載された特定一般式(I)に包含される数あるベタイン型両性界面活性剤の中から、そこに具体的に明記されていない特定化学構造のベタイン型両性界面活性剤のみを選択し、これを有機顔料の製造工程である前記第1工程及び/または前記第2工程で用いて有機顔料組成物を製造することで、分散媒である着色すべき媒体(以下、被着色媒体という)を鮮明性を維持したまま良好な着色力と良好な透明性でもって着色できる有機顔料組成物の製造方法を提供することを目的とする。また本発明の顔料分散体は、優れた鮮明性と優れた着色力と優れた透明性を兼備する顔料分散体を提供することを目的とする。
【0015】
本発明が解決しようとする課題は、主に、従来よく使用されているものと異なる化学構造のベタイン型両性界面活性剤の存在下で粗製顔料を製造し、この粗製顔料を顔料化して有機顔料組成物を得るか、または、ベタイン型両性界面活性剤の不存在下で粗製顔料を製造し、この粗製顔料を特定化学構造のベタイン型両性界面活性剤の存在下で顔料化して有機顔料組成物を得ることにより、従来よく使用されているベタイン型両性界面活性剤の存在下で顔料化して製造される有機顔料組成物では達成できなかった、優れた鮮明性と優れた着色力と優れた透明性を兼備する、着色された媒体(以下、着色媒体という)である顔料分散体が容易に得られる有機顔料組成物を得ることにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明者は鋭意研究の結果、ベタイン型両性界面活性剤の中から、特定の化学構造のものだけを選択しこの存在下で有機顔料を製造することにより、分散媒に対して容易に微細かつ凝集が少なく分散できる有機顔料組成物が得られ、結果的に、優れた鮮明性と優れた着色力と優れた透明性を兼備する着色媒体である顔料分散体が得られることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
すなわち本発明は、ベース成分を冷鉱酸水溶液中で亜硝酸ソーダと反応させることにより得たジアゾニウム塩と、アルカリ水溶液中に溶解させたカップラー成分とを、必要に応じて反応pHを一定に制御するための緩衝剤や表面処理剤を存在下で、pH4〜13、温度−5〜60℃の範囲でジアゾカップリング反応させ、必要に応じてカップリング反応後の反応溶液を温度60〜95℃とし、1〜5時間保持することで粗製ベンツイミダゾロンアゾ顔料を製造する第1工程と、この第1工程で得られた粗製ベンツイミダゾロンアゾ顔料を顔料化してベンツイミダゾロンアゾ顔料とする第2工程とからなり、前記第1工程及び/または第2工程をベタイン型両性界面活性剤の存在下で行う、ベタイン型両性界面活性剤とベンツイミダゾロンアゾ顔料とを含有する有機顔料組成物の製造方法において、前記ベタイン型両性界面活性剤として、下記一般式(1)で表されるベタイン型両性界面活性剤を、粗製顔料の理論収量また実使用量の質量換算100部当たり、0.5〜12部となるように用いることを特徴とする、ベタイン型両性界面活性剤とベンツイミダゾロンアゾ顔料とを含有する有機顔料組成物の製造方法及び前記製造方法で得られた有機顔料組成物と分散媒とを含んで成る顔料分散体を提供する。以下、下記一般式(1)で表されるベタイン型両性界面活性剤を、当該界面活性剤という。また、粗製ベンツイミダゾロンアゾ顔料を粗製顔料、ベンツイミダゾロンアゾ顔料を有機顔料とそれぞれ略記する。
【0018】
【化2】
一般式(1)
【0019】
〔尚、一般式(1)中、R1は炭素原子数8〜24の脂肪族炭化水素基であり、
R2およびR3は同一でも異なっていてもよい、水素原子またはメチル基である。〕
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明の有機顔料組成物の製造方法は、粗製顔料を製造する第1工程と、この第1工程で得られた粗製顔料を顔料化して有機顔料とする第2工程とからなり、前記第1工程及び/または第2工程を当該界面活性剤の存在下で行う、当該界面活性剤と有機顔料とを含有する有機顔料組成物の製造方法である。
【0021】
本発明の製造方法で得られる有機顔料組成物は、当該界面活性剤と有機顔料とを含有するものである。
【0022】
本発明における有機顔料は、ベンツイミダゾロンアゾ顔料であるが、特に鮮明性、着色力及び透明性がいずれも優れた有機顔料組成物が得られる。
【0023】
本発明における当該界面活性剤としては、前記一般式(1)に該当する公知慣用のものがいずれも使用できる。前記一般式(1)におけるR2とR3は、同一でも異なっていても良い、水素原子またはメチル基である。R2とR3とは、いずれも水素原子、水素原子とメチル基との組み合わせ、いずれもメチル基の3通りがある。R1は炭素原子数8〜24の脂肪族炭化水素基であり、例えば不飽和二重結合や不飽和三重結合を1から5個含んでいても良い炭化水素基である。
【0024】
当該界面活性剤で最も一般的なアルキルジメチルアミノ酢酸ベタインは、前記一般式(1)におけるR2とR3がいずれもメチル基の物質である。
【0025】
当該界面活性剤としては、例えばオクチルアミノ酢酸ベタイン、オクチルジメチルアミノ酢酸ベタイン、デシルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、エイコシルジメチルアミノ酢酸ベタイン、テトラコシルジメチルアミノ酢酸ベタイン等のN−モノ長鎖アルキルベタイン型両性界面活性剤、N−モノ長鎖アルキルモノメチルベタイン型両性界面活性剤、N−モノ長鎖アルキルジメチルベタイン型両性界面活性剤が挙げられる。
【0026】
当該界面活性剤は、前記一般式(1)中のR1が嵩高いほど(分子量が大きいほど)得られる有機顔料組成物の分散媒中での分散安定性が増すが、 逆に後に詳述する粗製顔料の製造工程において、粗製顔料を微細化する能力が小さくなる傾向にある。したがって、使用する粗製顔料および顔料分散体の調製に使用される分散媒並びに顔料分散体の用途に応じて適当な当該界面活性剤を選択して使用する事が望ましい。
【0027】
当該界面活性剤を使用した場合の技術的効果は、有機顔料および分散媒の種類により変化するが、当該界面活性剤のR1の炭素原子数12以上である時に、特に分散媒中における有機顔料の分散安定化効果が大きくなる。従って、当該界面活性剤としては、R2とR3がいずれもメチル基であり、R1が炭素原子数12〜24のアルキル基であるN−アルキルベタイン型両性界面活性剤を用いることが好ましい。
【0028】
当該界面活性剤としては、例えば水溶液や含水スラリーとして市販されている、花王(株)製アンヒトール(登録商標)86B〔前記一般式(1)において、R1が炭素原子数18のステアリル基である当該界面活性剤を含む〕、アンヒトール(登録商標)20BS〔前記一般式(1)において、R1が炭素原子数12のラウリル基である当該界面活性剤を含む〕等が挙げられる。
【0029】
当該界面活性剤の一般式(1)中のR1の鎖長と改良効果が認められる評価項目との関係は、次の通りである。例えば、着色力の他に透明性の改良も課題とされる様な平版印刷用インキの分野においては、当該界面活性剤の同一使用量における対比で、当該界面活性剤の一般式(1)中のR1が炭素原子数12〜24のアルキル基の範囲で、よりアルキル基の鎖長が短いほうが好ましい結果を与える。一方、着色力の他に粘度の改良も課題とされる様なグラビア印刷用インキの分野においては、当該界面活性剤の同一使用量における対比で、当該界面活性剤の一般式(1)中のR1が炭素原子数12〜24のアルキル基の範囲で、よりアルキル基の鎖長が長いほうが好ましい結果を与える。
【0030】
本発明の製造方法で得られる有機顔料組成物は、有機顔料と当該界面活性剤を含んでいれば、それらの比率は特に制限されるものではないが、質量換算で有機顔料100部当たり、当該界面活性剤0.5〜12部であることが好ましい。
【0031】
本発明の製造方法には、粗製顔料を製造する第1工程と、この第1工程で得られた粗製顔料を顔料化して有機顔料とする第2工程とからなり、(1)前記第1工程を当該界面活性剤の存在下で行って、当該界面活性剤と有機顔料とを含有する有機顔料組成物を得る製造方法と、(2)前記第2工程を当該界面活性剤の存在下で行って、当該界面活性剤と有機顔料とを含有する有機顔料組成物の製造方法とが包含される。勿論、第1工程と第2工程との両方を当該界面活性剤の存在下で行うことも出来る。
【0032】
しかしながら、少なくとも前記第1工程において、当該界面活性剤を用いる前記有機顔料組成物の製造方法が、鮮明性、着色力及び透明性のいずれにも優れる好適な有機顔料組成物が得られるので好ましい。
【0033】
当該界面活性剤の鎖長と改良効果が認められる評価項目との前記した様な関係は、前記第1工程を当該界面活性剤の存在下で行う(1)の製造方法〔製造方法(1)という〕の場合でも、前記第2工程を当該界面活性剤の存在下で行う(2)の製造方法〔製造方法(2)という〕の場合でも発現する。
【0034】
しかしながら、前記製造方法(1)の場合に、本発明における最適な有機顔料組成物を調製することが出来る。
【0035】
本発明の有機顔料組成物の製造方法は、具体的には、前記製造方法(1)の場合には、粗製顔料の理論収量を基準として、前記製造方法(2)の場合には、粗製顔料の実使用量を基準として、適当量の当該界面活性剤、好ましくは粗製顔料の質量換算100部当たり、当該界面活性剤を0.5〜12部を存在させて行う。このようにすることで、質量換算で有機顔料100部当たり、当該界面活性剤0.5〜12部である好適な有機顔料組成物を得ることが出来る。
【0036】
本発明の製造方法によれば、予め得られた有機顔料に対して当該界面活性剤を添加する場合と異なり、粗製顔料から顔料への転移時に、常に粗製顔料の粒子間に当該界面活性剤分子が配置される、或いは粗製顔料の表面に当該界面活性剤分子が吸着される等の結果、顔料化に伴って刻々と変化する粒子表面状態のうちの、分子間水素結合に起因する凝集をも効果的に阻害することが出来るので好ましい。以下この方法について詳述する。
【0037】
本発明の製造方法では、粗製顔料を製造する第1工程が、当該界面活性剤の存在下又は不存在下で行われる。
【0038】
本発明の第1工程において粗製顔料を製造するとは、一種または二種以上の原料物質を化学反応させて粗製顔料の化学構造を形成することを意味する。粗製顔料には多くの種類がありその原料物質も多岐に亘るため、各々の粗製顔料の製造方法を例示することは出来ないが、それは当業者の常識に当たるものである。粗製顔料の種類に関しては、前記した有機顔料に対応する各々の粗製顔料がいずれも使用できる。中でも、粗製ベンツイミダゾロン系アゾ顔料を用いて本発明の製造方法に従って有機顔料組成物を製造すると、従来対比で、鮮明性、着色力及び透明性のいずれの点でも大きな改良効果が見られる。
【0039】
本発明の製造方法(1)においては、当該界面活性剤の存在下に第1工程に当たる粗製顔料の製造が行われる。こうして第1工程で当該界面活性剤の存在下で公知慣用の製造方法に従って粗製顔料を製造すると、生成物は、当該界面活性剤と粗製顔料とを含む粗製顔料組成物となる。一方、本発明の製造方法(2)においては、当該界面活性剤の不存在下で第1工程に当たる粗製顔料の製造が行われる。従って、ここでの生成物は、当該界面活性剤を含まない粗製顔料であり、公知慣用の粗製顔料がそのまま使用できる。
【0040】
本発明の製造方法(1)に従って、第1工程に当たる粗製顔料の製造を行いたければ、当該界面活性剤の存在下で公知慣用の製造方法に従って粗製顔料を製造すれば良い。以下、当該界面活性剤の不存在下で行う場合を例に、粗製キナクリドン顔料と粗製ベンツイミダゾロン系アゾ顔料の製造方法について詳述する。
【0043】
粗製ベンツイミダゾロン系アゾ顔料の場合には常法に従い、ベース成分を冷鉱酸水溶液中で亜硝酸ソーダと反応させることにより得たジアゾニウム塩と、アルカリ水溶液中に溶解させたカップラー成分とを、ジアゾカップリング反応させることにより得られる。この反応は通常pH4〜13、温度−5〜60℃の範囲でおこなわれ、ベース成分をカップラー成分中に添加しても、カップラー成分をベース成分中に添加しても、あるいは同時にベース成分とカップラー成分とを一定速度で反応させても良い。
【0044】
このとき、必要に応じて反応pHを一定に制御するための緩衝剤や表面処理剤を存在させることができる。緩衝剤はその種類、量は特に限定されないが、酢酸ナトリウム等を使用することができる。表面処理剤としては、例えばロジン類、界面活性剤等、公知の添加剤を使用することができる。粗製顔料を濾過しやすくするため、カップリング反応後の反応溶液を温度60〜95℃とし、1〜5時間保持することができる。こうして得られた粗製ベンツイミダソロン系アゾ顔料は、含水状態あるいは乾燥した状態で使用することができる。
【0046】
本発明の有機顔料組成物の製造方法においては、第1工程に引き続き、第1工程で得た粗製顔料を顔料化して有機顔料とする。
【0047】
本発明の有機顔料組成物の製造方法の第2工程では、粗製顔料組成物または粗製顔料を顔料化して有機顔料組成物とする。本発明の製造方法(1)においては、当該界面活性剤の存在下に第1工程に当たる粗製顔料の製造が行われるから、この第2工程は当該界面活性剤の不存在下で顔料化を行うことができる。一方、本発明の製造方法(2)においては、当該界面活性剤の不存在下で第1工程に当たる粗製顔料の製造が行われるから、この第2工程は当該界面活性剤の存在下で顔料化が行われる。
【0048】
ちなみに、従来技術に記載した特許文献7の方法は、本発明の有機顔料組成物の製造方法に照らすと製造方法(2)に相当し、第1工程を当該界面活性剤の不存在下で行い製造された粗製顔料に、当該界面活性剤の存在下で下記に説明する第2工程に当たる顔料化処理を行うことにより有機顔料組成物を得るものである。
【0049】
この顔料化方法としては、従来公知のソルベントソルトミリング法(前者の方法という)やソルベント法(後者の方法という)を採用することができる。以下、当該界面活性剤の不存在下で行う場合を例に説明する。本発明の製造方法(2)に従って、第2工程に当たる粗製顔料の顔料化を行いたければ、当該界面活性剤の存在下で以下のような顔料化を行えば良い。
【0050】
前者の方法は、一定量の粗製顔料を、質量換算で粗製顔料の3〜20倍相当量の水溶性無機塩および粗製顔料の0.5〜10倍相当量の水溶性有機溶剤の存在下に60〜120℃で混練する方法である。水溶性無機塩としては、例えば塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム等が挙げられ、水溶性有機溶剤としては、ジエチレングリコールやトリエチレングリコール等が挙げられる。この際の混練時間は特に制限されないが0.5〜8時間が望ましい。このようにしてソルベントソルトミリング法で得られた生成物は、例えば水または湯で洗浄後、必要に応じて乾燥等の工程を経て有機顔料組成物とすることができる。
【0051】
後者の方法は、粗製顔料と粗製顔料よりも大過剰の体積の水及び/または有機溶剤とを混合して加熱することである。より具体的には、一定量の粗製顔料を、粗製顔料の質量換算3〜15倍相当量の大過剰の水、有機溶剤もしくはその混合液中で80〜150℃で攪拌する方法である。ここでの有機溶剤としては、例えばキシレン、2−ブタノール、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジメチルイミダゾリジノン等が挙げられる。この際の攪拌時間は特に制限されないが、通常0.5〜15時間が望ましい。有機溶剤には、有機顔料組成物の使用対象の適性にあわせて、酸、塩基、表面処理剤等を含有させることができる。このようにしてソルベント法で得られた生成物は、例えば濾過後、水または湯で洗浄し、必要に応じて乾燥等を行うことにより有機顔料組成物とすることができる。
【0052】
従来の条件対比で本発明における顔料化の方法としては、ソルベントミリング法より低エネルギーで有機顔料組成物を得られる前記ソルベント法を採用することが好ましい。
【0053】
こうして、当該界面活性剤の存在下に第1工程を行う製造方法(1)、当該界面活性剤の存在下に第2工程を行う製造方法(2)、或いは、当該界面活性剤の存在下に第1工程及び第2工程の両方を行う製造方法により、当該界面活性剤と有機顔料とを含む有機顔料組成物が得られる。
【0054】
前記好適な方法を各々組み合わせた本発明の製造方法から得られた有機顔料組成物は、従来の製法から得られた有機顔料組成物に比べ、粒子径が小さく粒子間の結合力が弱い凝集物となるため、窒素吸着法によるBET比表面積を大きくすることが出来るので好ましい。
【0055】
本発明の製造方法から得られた有機顔料組成物の窒素吸着法によるBET比表面積は、一般的には50〜90m2/gである。
【0056】
尚、本発明における窒素吸着法におけるBET比表面積は、日本工業規格(Japanese Industrial Standard;JIS) Z 8830−1990の附属書2(気体吸着による粉体の比表面積測定方法;試料の前処理;温度120℃、20分、試料採取量;0.25g、吸着量の測定方法;1点法、窒素分圧;0.3)に従って測定できる。マイクロデータ株式会社製マイクロソープ4232IIは、これに準拠した比表面積測定装置である。
【0057】
本発明の顔料分散体は、本発明の製造方法から得られた有機顔料組成物と分散媒とを含んで成るものであり、これらを必須成分として混合することで調製することが出来る。この分散媒は液体でも固体でも良い。本発明の有機顔料組成物には、分散媒の必須成分として樹脂を含めることで顔料分散体とすることが出来る。この際の樹脂としては、熱可塑性樹脂が一般的である。
【0058】
本発明の製造方法から得られた有機顔料組成物と熱可塑性樹脂とを含有する顔料分散体には、その性状により、固形の顔料分散体と、液状の顔料分散体が含まれる。本発明の顔料分散体は、例えば、有機顔料と当該界面活性剤とを含有する有機顔料組成物を、顔料分散用熱可塑性樹脂に分散させることにより供給される。
【0059】
本発明の顔料分散体は、本発明の製造方法から得られた有機顔料組成物と熱可塑性樹脂のみからなる顔料分散体、例えばプラスチック着色用マスターバッチや静電荷像現像用カラートナーのためのマスターバッチ等だけでなく、さらに熱硬化性樹脂等の樹脂、溶剤、その他添加剤等を加えた顔料分散体、例えば平版印刷用インキ、グラビア印刷インキ、塗料、着色プラスチック成形品、静電荷像現像用カラートナー、カラーフィルター作製用レジストインキ等を包含する。
【0060】
本発明の顔料分散体を製造する場合には、粉末顔料組成物と、固形熱可塑性樹脂とを後者樹脂の溶融温度以上にて混合する様にしても良い。
【0061】
一般に含水状態の有機顔料組成物は、乾燥工程における顔料粒子間の凝集を防げるため、粉末状態より凝集が少なく、透明性・着色力を重視する用途に有利である。これは、顔料粒子間に存在する水の表面張力により乾燥時に顔料粒子間の凝集を促進させるためであり、そのため含水状態にある有機顔料組成物と、液状の熱可塑性樹脂や熱可塑性樹脂有機溶剤溶液とを水や溶媒の沸点未満で混合することにより、顔料粒子表面の水が直接樹脂や有機溶剤で置き換わり、より透明性・着色力にすぐれた顔料分散体を得ることができる。この場合、必要であれば、水や有機溶剤を適時除去する様にしてもよい。
【0062】
したがって、本発明において顔料分散体を製造するに当たっては、本発明の製造方法から得られた有機顔料組成物と熱可塑性合成樹脂とを必須成分としてフラッシングすると、より分散性に優れ、結果的により透明性に優れた顔料分散体とすることが出来る。
【0063】
ここで、フラッシングとは、含水状態の有機顔料組成物と熱可塑性樹脂とを必須成分として混合し、有機顔料組成物を水相から油相に転相した後、水を除去する工程を意味する。尚、この水の除去は、デカンテーションと加熱・真空吸引とを組み合わせて行うことが出来る。
【0064】
また本発明で用いられる有機顔料組成物は、熱可塑性樹脂のみに分散させてもよいが、熱可塑性樹脂を必須成分として含有する印刷インキ用ビヒクルや塗料用ビヒクル等に分散させることも出来る。
【0065】
熱可塑性樹脂としては、たとえばポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン、ポリアルキレンテレフタレートやポリ塩化ビニル樹脂等の樹脂が分散用樹脂として使用できる。
【0066】
たとえば平版印刷用インキのビヒクルは、たとえばロジン変性フェノール樹脂、石油樹脂、アルキッド樹脂等の樹脂を20〜50(質量)%、アマニ油、桐油、大豆油等の動植物油を0〜30(質量)%、n−パラフィン、イソパラフィン、ナフテン、α−オレフィン、アロマティック等の溶剤を10〜60(質量)%、その他可溶化剤、ゲル化剤等の添加剤を数(質量)%の原料から製造される。
【0067】
またグラビア印刷インキ、フレキソ印刷インキ用ビヒクルの場合は、たとえばロジン類、マレイン酸樹脂、ポリアミド樹脂、ビニル樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ニトロセルロース、酢酸セルロース等から選ばれる一種以上の樹脂を10〜50(質量)%、アルコール類、トルエン、n−ヘキサン、酢酸エチル、セロソルブ、酢酸ブチルセロソルブ等の溶剤30〜80(質量)%の原料等から製造される。
【0068】
塗料用のビヒクルでは、たとえばアルキド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、水溶性樹脂等の樹脂20〜80(質量)%、炭化水素類、アルコール類、ケトン類、水等の溶剤10〜60(質量)%の原料等から製造される。
【0069】
着色プラスチック成形品を得る場合には、たとえばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンやポリ塩化ビニル樹脂等の、射出成形やプレス成形等の熱成形用の熱可塑性樹脂(プラスチック)が分散用樹脂として使用される。尚、これらの樹脂を用いて得た本発明の顔料分散体は、必要な形状に成形することにより着色成形品とすることが出来る。
【0070】
静電荷像現像用トナーを得る場合には、たとえばポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂等の常温で固形の皮膜形成性の熱可塑性樹脂が分散用樹脂として使用される。後に詳述するが、これらの樹脂を用いて得た本発明の常温固形の顔料分散体は、必要な粒径の粒子状となる様に、粉砕、分級することにより静電荷像現像用トナーとすることが出来る。
【0071】
これら顔料分散体は、必要に応じて、他の樹脂、ゴム、添加剤、顔料や染料等と混合され最終的な印刷インキ、塗料、着色プラスチック成形品、静電荷像現像用トナー、カラーフィルター等に調整され使用される。
【0072】
顔料分散体を製造する際の、有機顔料組成物を熱可塑性樹脂に分散する分散機としては、たとえばディスパー、ホモミキサー、ビーズミル、二本ロール、三本ロール、常圧および加圧ニーダー、超音波分散機等の公知の分散機があげられるが、これらに限定されるものではない。
【0073】
分散条件は、分散媒および分散機によって異なるため、分散温度や分散時間は問わないが、分散温度が室温〜300℃、好ましくは室温〜240℃、分散時間は1分〜120時間、好ましくは3分〜7時間である。
【0074】
顔料分散体中の有機顔料組成物の含有率は、特に制限されるものではなく、数〜50(質量)%程度であるが、用途によって異なっており、最終製品中の本発明の有機顔料組成物分は、たとえば平版印刷インキでは13〜20(質量)%、グラビア印刷インキでは3〜20(質量)%、塗料では0.3〜15(質量)%、またプラスチックの着色用途では0.01〜1(質量)%、静電荷像現像用トナーでは2〜10(質量)%程度、カラーフィルター用途ではたとえばレジストインキとして使用される場合4〜7(質量)%程度である。
【0075】
本発明の顔料分散体は、例えばペーストカラー、ドライカラーとして使用することが出来るが、それ自体を、前記熱成形用や静電荷像現像用トナーの結着樹脂として使用される未着色の熱可塑性樹脂の、着色用マスターバッチとして用いると、直接、熱可塑性樹脂の全量と均一に混合するのに比べて、より短時間により均一に着色された成形品や静電荷像現像用トナーを得ることができる。
【0076】
有機顔料組成物と熱可塑性樹脂を含有する本発明の顔料分散体においては、有機顔料組成物の性能を最大限発揮させるため、前記した通り、フラッシング法による分散体の製造法が特に有効である。
【0077】
特に顔料の透明性が要求される用途には、乾燥時に顔料粒子の強い凝集を引き起こしやすく、熱可塑性樹脂への分散性が低下しやすい粉末状態の有機顔料組成物と熱可塑性樹脂とを混合するよりも、含水状態の有機顔料組成物を熱可塑性樹脂とでフラッシングすることにより、品質のより優れた顔料分散体が得られる。
【0078】
本発明の製造方法から得られた有機顔料組成物の、着色力だけでなく透明性に優れる着色媒体を与えるという特徴は、それから顔料分散体を調製した際に発揮され、特に、各色静電荷像現像用トナーを重ね合わせてカラー画像を形成するフルカラートナーの分野において、発色が良好で鮮明な画像が得られるという効果につながるものである。
【0079】
本発明の製造方法から得られた有機顔料組成物および顔料分散体を構成成分として製造される静電荷像現像用トナーは、トナー中に磁性体を含有する1成分色磁性トナー(磁性一成分現像用カラートナー)、磁性体を含有しない非磁性1成分色カラートナー(非磁性一成分現像用カラートナー)、又は、キャリアーを混合した2成分色現像剤用カラートナー(二成分現像用カラートナー)として用いることができる。
【0080】
1成分色磁性トナーは、通常使用されているものと同様に、例えば着色剤、結着樹脂、磁性粉、電荷制御剤(CCA)や離型剤に代表されるその他添加剤等から構成出来る。
【0081】
静電荷像現像用トナー中に占める有機顔料組成物の使用量は特に限定されないが、結着樹脂100質量部に対し0.5〜25質量部の割合で使用することが好ましく、着色剤自身の有する帯電性能を一層顕著ならしめる点から結着樹脂100質量部に対し4〜10質量部であることが更に好ましい。
【0082】
静電荷像現像用トナーに用いられる結着樹脂としては、前記熱可塑性樹脂として例示した公知慣用のものがいずれも使用できるが、熱又は圧力の適用下で接着性を示す合成樹脂、天然樹脂、天然ゴム、合成ゴム、合成ワックス等がいずれも使用できる。
【0083】
静電荷像現像用トナーに用いられる合成ワックスとしては、例えば、塩素化パラフィンワックス、パラフィンワックス、ポリプロピレンワックス、PVC等が挙げられる。
【0084】
また、前記の天然樹脂としては、例えばバルサム樹脂、ロジン、シェラック、コーバル等であり、これらの樹脂は後述するビニル樹脂、アクリル樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂等から選ばれる1種又はそれ以上の樹脂で変性されていてもよい。
【0085】
また、天然又は合成ゴム物質としては、例えば天然ゴム、塩素化ゴム、環化ゴム、ポリイソブチレンゴム、エチレン−プロピレンゴム、ポリブタジエンゴム、ブチルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム等が挙げられる。
【0086】
静電荷像現像用トナーを調製する際に用いられる結着樹脂は、これらに限定されるものではなく、結着樹脂成分の2種以上が適宜混合されて用いられてもよい。
【0087】
この結着樹脂としては、示差走査熱量計(DSC)によるガラス転移温度45〜85℃、定荷重押出し形細管式レオメーター(高架式フローテスター;(株)島津製作所製、島津フローテスタCFT−C形。ピストン断面積1cm2、シリンダ圧力0.98MPa、ダイ長さ1mm、ダイ穴径1mm、測定開始温度50℃、昇温速度6℃/min、試料質量1.5g)による溶融粘度が1×105ポイズとなる温度が95〜170℃であるものが好ましい。
【0088】
尚、これら結着樹脂のうちでもスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂及びエポキシ樹脂が、その透明性及び静電荷像現像用トナーの色相面から有利に使用できるが、特にポリエステル樹脂が好ましい。
【0089】
静電荷像現像用トナーを調製する際に用いられる磁性粉は、特に限定されるものではないが、それ自身の色が再現された色に影響を及ぼしにくいものが好ましく使用でき、例えば、γ−酸化鉄、黄色γ−酸化鉄、フェライト等の酸化鉄;鉄、コバルト、ニッケルのような金属、或いはこれらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、錫、亜鉛のような金属との合金、ポリ−1,4−ビス(2,2,6,6,−テトラメチル−4−オキシル−4−ピペリジル−1−オキシル)ブタジエンポルフィリン金属錯体の様な有機磁性体及びそれらの混合物等が挙げられる。また、これらの中で特に色相の面から、黄色γ−酸化鉄の使用が好ましい。
【0090】
これら磁性粉としては平均粒子径0.1〜1μmのものが使用でき、帯電安定性及び色相の点から0.1〜0.5μmのものを使用することが好ましい。また、これらを静電荷像現像用トナーに含有させる量としては、質量換算で結着樹脂100部に対して30〜150部で使用でき、帯電安定性及び色相の点から質量換算で結着樹脂100部に対して40〜120部が好ましい。
【0091】
静電荷像現像用トナーを調製する際には、前記各成分のほかに必要に応じて静電荷像現像用トナーの熱特性、電気特性、物理特性等を調整する目的で各種の可塑剤、抵抗調整剤及び電荷制御剤を更に添加してもよい。
【0092】
可塑剤としては、例えば、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル等が、抵抗調整剤としては酸化スズ、酸化鉛、酸化アンチモン等が、電荷制御剤としては四級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、含金属染料等が夫々挙げられる。
【0093】
更に、本発明においては静電荷像現像用トナー粒子の製造後、これにTiO2、Al2O3、SiO2等の微粉末を添加してトナーの流動性改良を図ったり、ステアリン酸亜鉛、フタル酸等を添加して感光体の劣化防止を図っても良い。
【0094】
本発明による有機顔料組成物および顔料分散体から静電荷像現像用トナーを調製する際には、特定の製造方法に依らず極めて一般的な製造方法を採用出来る。
例えば、前記の各成分を押し出し機、2本ロール、3本ロール又は加熱ニーダー等の混練手段により混合し、本発明の有機顔料組成物および顔料分散体を含む混練物を得て、これを冷却後、ジェットミル等の粉砕機で撹拌し、風力分級機により分級して、粒子状となすことにより、本発明の有機顔料組成物および顔料分散体から、目的とする粉体の静電荷像現像用トナーが得られる。
【0095】
本発明の製造方法で得られた有機顔料組成物を、従来より容易に分散媒への分散が可能であるという特徴を活かして、転相乳化法や酸析法等の湿式法による静電荷像現像用トナーに適用することも出来る。これらの方法で得られた静電荷像現像用トナーは、有機顔料が結着樹脂に被覆された球形の複合粒子状となるため、前記した乾式法よりも優れた特性を有する。
【0096】
また、熱可塑性樹脂として前記した様な静電荷像現像用トナーの調製に適した結着樹脂を用い、有機顔料組成物を高濃度で含む本発明の顔料分散体のマスターバッチを予め製造しておき、前記したのと同一又は前記したのと異なるトナー用結着樹脂で希釈する様にして混練して、所定の有機顔料組成物濃度の得る様にすると、マスターバッチを介しないで製造する場合よりは、より透明性に優れた画像が得られる静電荷像現像用トナーを製造することが出来る。
【0097】
さらに、前記フラッシングとマスターバッチの手法を組み合わせることにより、同一樹脂を用いた場合における対比においては、最も透明性に優れ、発色が良好で鮮明な画像が得られる静電荷像現像用トナーを製造することが出来る。
【0098】
尚、本発明で言う静電荷像現像用カラートナーは、有機顔料組成物が前記結着樹脂に分散した粒子状の分散体であるが、その静電荷像現像用トナー粒子の平均粒子径は3〜15μmであることが好ましい。
【0099】
2成分色現像剤用カラートナーとして用いる場合も1成分色磁性トナーに使用されているものと同じ着色剤、結着樹脂、前記した様なその他添加剤等を使用できる。
【0100】
更に、静電荷像現像用トナーに用いられるキャリアーとしては、例えば、鉄粉、ニッケル粉、フェライト粉、ガラスビーズ、或いはこれらを芯材とし表面にスチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル重合体、メタクリル酸エステル重合体、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂等又はこれらの樹脂の混合物をコーティングしたものが使用でき、その粒子径は50〜300μmの範囲にあるものが好ましい。
【0101】
2成分色現像剤用カラートナーは、これらのキヤリアー粒子と本発明のカラートナーとを水平円筒形、V形等の容器回転型混合機で摩擦混合することによって得ることができる。
【0102】
また、キャリアーと静電荷像現像用トナーとの混合比は適切な画像濃度を得るために通常、質量換算でキャリアー100部に対して静電荷像現像用トナー2〜10部、好ましくは4〜6部の範囲で使用できる。
【0103】
【実施例】
以下、製造例、実施例および比較例を挙げ、本発明を詳細に説明する。なお、例中の部および%は質量基準である。
【0104】
実施例1(顔料化時のみに当該界面活性剤を含ませる実験例)
〈第1工程〉
1,2−ビス(2−アミノフェノキシ)−エタン271.9部を、水2700部に攪拌分散しながら、35%塩酸645.9部を加えた。1時間攪拌後、氷を加えて温度を0〜5℃に調整し、40%亜硝酸ソーダ水溶液404.2gを加え、ジアゾ化反応を行った。1時間以上攪拌後、過剰の亜硝酸塩を除去するため118.1部の10%スルファミン酸水溶液を加えて30分以上攪拌し、さらに27部の活性炭を加え30分以上攪拌し、ビスジアゾニウム塩溶液の調製を行った。
【0105】
一方、5−アセトアセチルアミノ−ベンズイミダゾロン539.2部を水4000部に分散後、25%水酸化ナトリウム水溶液712.9部を加えて溶解させ、カップラー成分を得た。ジアゾ成分およびカップラー成分は、水および氷を加えてそれぞれ液量を8100部および5400部に調製した。
【0106】
90%酢酸35.8部を水8100部に加えた後、この溶液の温度を40℃、pHを5.0に調製した。カップリングのため、カップラー成分の添加調整によりpHを8.0にあわせながら、同時にジアゾ成分を一定速度で加えた。カップリング中温度が40℃、またpH8.0を維持するよう適時氷または5%水酸化ナトリウム水溶液を添加しながら、カップリングを約3時間で終了した。未反応のジアゾ成分が反応溶液中に含まれていないことを確認後、90℃に加熱し1時間保持した。次いで、濾過、水洗を行い、含水状態の粗製ベンツイミダゾロン系アゾ顔料を得た。
【0107】
〈第2工程〉
攪拌装置付きの加圧可能な反応容器に、上記の含水状態の粗製ベンツイミダゾロン系アゾ顔料の131.1部(固形分換算20部)、アンヒトール(登録商標)86B〔花王株式会社製ステアリルベタインの含水ペースト。前記一般式(1)において、R2及びR3がいずれもメチル基であり、R1がステアリル基である界面活性剤を主成分とする。固形分26%。〕の1.58部を仕込んだ。水を加えて容器内の質量を600部に調整後、攪拌下に約2時間かけて常温から140℃まで昇温し、5時間保持後、室温まで冷却して内容物を取り出した。この内容物を濾過洗浄後、90℃で12時間以上乾燥を行った。乾燥後の固形物をジューサーミキサーで粉砕し、前記アンヒトール(登録商標)86Bとベンツイミダゾロン系アゾ顔料とを含む有機顔料組成物を得た。
【0108】
実施例2(粗製顔料製造時のみに当該界面活性剤を含ませる実験例)
〈第1工程〉
1,2−ビス(2−アミノフェノキシ)−エタン271.9部を、水2700部に攪拌分散しながら、35%塩酸645.9部を加えた。1時間攪拌後、氷を加えて温度を0〜5℃に調整し、40%亜硝酸ソーダ水溶液404.2gを加え、ジアゾ化反応を行った。1時間以上攪拌後、過剰の亜硝酸塩を除去するため118.1部の10%スルファミン酸水溶液を加えて30分以上攪拌し、さらに27部の活性炭を加え30分以上攪拌し、ビスジアゾニウム塩溶液の調製を行った。
【0109】
一方、5−アセトアセチルアミノ−ベンズイミダゾロン557.4部を水4000部に分散後、25%水酸化ナトリウム水溶液712.9部を加えて溶解させ、カップラー成分を得た。ジアゾ成分およびカップラー成分は、水および氷を加えてそれぞれ液量を8100部および5400部に調製した。
【0110】
90%酢酸35.8部を水8100部に加えた後、この溶液の温度を40℃、pHを5.0に調整する。カップリングのため、カップラー成分の添加調整によりpHを8.0にあわせた後、157.4部のアンヒトール(登録商標)86Bを添加し、カップラー成分と同時にジアゾ成分を一定速度で加えた。カップリング中温度が40℃、またpH8.0を維持するよう適時氷または5%水酸化ナトリウム水溶液を添加しながら、カップリングを約3時間で終了した。
【0111】
未反応のジアゾ成分が反応溶液中に含まれていないことを確認後、90℃に加熱し1時間保持した。次いで、濾過、水洗を行い、含水状態のアンヒトール(登録商標)86Bと粗製ベンツイミダゾロン系アゾ顔料とを含む粗製顔料組成物を得た。
【0112】
〈第2工程〉
攪拌装置付きの加圧可能な反応容器に、上記の含水状態の粗製顔料組成物の133.7部(固形分換算20部)を仕込んだ。水を加えて容器内の質量を600部に調整後、攪拌下に約2時間かけて常温から140℃まで昇温し、5時間保持後、室温まで冷却して内容物を取り出した。この内容物を濾過洗浄後、90℃で12時間以上乾燥を行った。乾燥後の固形物をジューサーミキサーで粉砕し、前記アンヒトール(登録商標)86Bとベンツイミダゾロン系アゾ顔料とを含む有機顔料組成物を得た。
【0113】
比較例1(ベタイン型両性界面活性剤を含ませない実験例)
アンヒトール(登録商標)86Bを用いず、含水状態の粗製ベンツイミダゾロン顔料131.1部(固形分換算20部)だけを用いる以外は実施例1と同様の操作を行い、界面活性剤を含まないベンツイミダゾロン系アゾ顔料を得た。
【0114】
比較例2
157.4部のアンヒトール(登録商標)86Bの代わりに136.4部のアンヒトール(登録商標)55AB〔花王株式会社製コカミドプロピルベタインの含水ペースト。前記一般式(1)に含まれない構造のベタイン型両性界面活性剤。固形分30%。〕を添加した以外は実施例2の第1工程と同様にして、前記アンヒトール(登録商標)55ABと粗製ベンツイミダゾロン系アゾ顔料とを含む含水状態の粗製顔料組成物を得た。
次いで、この粗製顔料組成物66.3部(固形分換算20部)を仕込んで加熱攪拌を行った以外は実施例2の第2工程と同様にして、前記アンヒトール(登録商標)55ABとベンツイミダゾロン系アゾ顔料とを含む有機顔料組成物を得た。
【0115】
比較例3
157.4部のアンヒトール(登録商標)86Bの代わりに116.9部の のアンヒトール(登録商標)20N〔花王株式会社製のラウリルジメチルアミンオキサイド型界面活性剤。前記一般式(1)に含まれない構造の界面活性剤。固形分35%。〕を添加した以外は実施例2の第1工程と同様にして、前記アンヒトール(登録商標)20Nと粗製ベンツイミダゾロン系アゾ顔料とを含む含水状態の粗製顔料組成物を得た。
次いで、この粗製顔料組成物82.3部(固形分換算20部)を仕込んで加熱攪拌を行った以外は実施例2の第2工程と同様にして、前記アンヒトール(登録商標)20Nとベンツイミダゾロン系アゾ顔料とを含む有機顔料組成物を得た。
【0116】
比較例4
157.4部のアンヒトール(登録商標)86Bの代わりに136.4部のアンヒトール(登録商標)20HD〔花王株式会社製のラウリルヒドロキシスルホベタイン。前記一般式(1)に含まれない構造のベタイン型界面活性剤。固形分30%。〕を添加した以外は実施例2の第1工程と同様にして、前記アンヒトール(登録商標)20HDと粗製ベンツイミダゾロン系アゾ顔料とを含む含水状態の粗製顔料組成物を得た。
次いで、この粗製顔料組成物77.3部(固形分換算20部)を仕込んで加熱攪拌を行った以外は実施例2の第2工程と同様にして、前記アンヒトール(登録商標)20HDとベンツイミダゾロン系アゾ顔料とを含む有機顔料組成物を得た。
【0117】
比較例5
157.4部のアンヒトール(登録商標)86Bの代わりに102.3部のアンヒトール(登録商標)20YB〔花王株式会社製の2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン。前記一般式(1)に含まれない構造の界面活性剤。固形分40%。〕を添加した以外は実施例2の第1工程と同様にして、前記アンヒトール(登録商標)20YBと粗製ベンツイミダゾロン系アゾ顔料とを含む含水状態の粗製顔料組成物を得た。
次いで、この粗製顔料組成物75.8部(固形分換算20部)を仕込んで加熱攪拌を行った以外は実施例2の第2工程と同様にして、前記アンヒトール(登録商標)20YBとベンツイミダゾロン系アゾ顔料とを含む有機顔料組成物を得た。
【0118】
比較例6
157.4部のアンヒトール(登録商標)86Bの代わりに136.4部のアンヒトール(登録商標)20AB〔花王株式会社製のラウリン酸アミドプロピルベタイン。前記一般式(1)に含まれない構造のベタイン型界面活性剤。固形分30%。〕を添加した以外は実施例2の第1工程と同様にして、前記アンヒトール(登録商標)20ABと粗製ベンツイミダゾロン系アゾ顔料とを含む含水状態の粗製顔料組成物を得た。
次いで、この粗製顔料組成物78.1部(固形分換算20部)を仕込んで加熱攪拌を行った以外は実施例2の第2工程と同様にして、前記アンヒトール(登録商標)20ABとベンツイミダゾロン系アゾ顔料とを含む有機顔料組成物を得た。
【0119】
比較例7(特許文献7に対応する実験例)
アンヒトール(登録商標)86Bの1.58部のかわりに、アンヒトール(登録商標)55ABの1.37部を使用した以外は実施例1と同様にして、前記アンヒトール(登録商標)55ABとベンツイミダゾロン系アゾ顔料とを含む有機顔料組成物を得た。
【0120】
比較例8
アンヒトール(登録商標)86Bの1.58部のかわりに、アンヒトール(登録商標)20Nの1.17部を使用した以外は実施例1と同様にして、前記アンヒトール(登録商標)20Nとベンツイミダゾロン系アゾ顔料とを含む有機顔料組成物を得た。
【0121】
比較例9(特許文献7に対応する実験例)
アンヒトール(登録商標)86Bの1.58部のかわりに、アンヒトール(登録商標)20HDの1.37部を使用した以外は実施例1と同様にして、前記アンヒトール(登録商標)20HDとベンツイミダゾロン系アゾ顔料とを含む有機顔料組成物を得た。
【0122】
比較例10(特許文献7に対応する実験例)
アンヒトール(登録商標)86Bの1.58部のかわりに、アンヒトール(登録商標)20YBの1.03部を使用した以外は実施例1と同様にして、前記アンヒトール(登録商標)20YBとベンツイミダゾロン系アゾ顔料とを含む有機顔料組成物を得た。
比較例11(特許文献7に対応する実験例)
アンヒトール(登録商標)86Bの1.58部のかわりに、アンヒトール(登録商標)20ABの1.37部を使用した以外は実施例1と同様にして、前記アンヒトール(登録商標)20ABとベンツイミダゾロン系アゾ顔料とを含む有機顔料組成物を得た。
【0123】
尚、比較例で用いられた各種界面活性剤は以下の通りである。
【0124】
アンヒトール(登録商標)55AB(下記一般式でR=炭素原子数11及び13のアルキル基である化合物を主成分とする)及び同20AB(下記一般式でR=炭素原子数11のアルキル基である化合物を主成分とする)
【0125】
【化3】
【0126】
アンヒトール(登録商標)20N(下記一般式でR=炭素原子数12のアルキル基である化合物を主成分とする)
【0127】
【化4】
【0128】
アンヒトール(登録商標)20HD(下記一般式でR=炭素原子数12のアルキル基である化合物を主成分とする)
【0129】
【化5】
【0130】
アンヒトール(登録商標)20YB(下記一般式でR=炭素原子数11及び13のアルキル基である化合物を主成分とする)
【0131】
【化6】
【0132】
評価方法
平版印刷用インキ試験
実施例1〜2、比較例2〜11で得られた各有機顔料組成物、比較例1で得られた有機顔料およびMG−63(大日本インキ化学工業(株)社製の平版印刷インキ用ワニス)を下記の組成で混合した後、フーバーマーラーを使用して、150lbsの荷重下で100回転の分散を3回繰り返して評価用のオフセットインキを調整した。
各有機顔料組成物または有機顔料 0.4部
MG−63 1.6部
【0133】
着色力は、前記で調整したオフセットインキを1部、銅フタロシアニンブルー顔料、チタンホワイト顔料およびワニスからなる青色基準インキ5部をフーバーマーラーで、加重100ポンド下、100回転×3回練肉して調整した緑色インキをアート紙上に展色して、実施例1から得られた展色板を標準として、目視判定7段階〔1(着色力小)>>>7(着色力大)〕で判定した。
【0134】
透明性は、オフセットインキをアート紙に展色(ドローダウン)して、評価した。実施例1で得た有機顔料組成物を用いた展色板を標準とした相対評価により、透明性を目視判定7段階〔1(透明性小)>>>7(透明性大)〕で判定した。
【0135】
鮮明性を定量化する方法として、インキを展色して得た展色板を分光測色計で測色して彩度(C*値)の大きさを求めた。ミノルタ(株)製分光測色計CM−2600dを用いて測定を行った。
【0136】
実施例1〜2及び比較例1〜11について得られた評価結果を表1にまとめて示した。
【0137】
【表1】
表 1
【0138】
第2工程においてベタイン型両性界面活性剤を用いて製造した有機顔料組成物に関する、実施例1と比較例2との対比からわかる様に、ベタイン型両性界面活性剤であっても、本発明で用いる一般式(1)で表される界面活性剤を用いたものは、着色力、透明性及び彩度のいずれにも優れているのに対し、一般式(1)に包含されない(しかし、特許文献7において最も優れていると記載されている)ベタイン型界面活性剤を用いたものでは、着色力と彩度が劣っていることが明らかである。尚、実施例1の有機顔料組成物は、界面活性剤未処理の有機顔料である比較例1に対して着色力が改善されるのに対し、この比較例2の有機顔料組成物は、実施例1での傾向とは逆に、着色力が低下する。
【0139】
また、第2工程においてベタイン型両性界面活性剤を用いて製造した有機顔料組成物に関する実施例1と、第1工程においてベタイン型両性界面活性剤を用いて製造した有機顔料組成物に関する実施例2との対比からわかる様に、同一のベタイン型界面活性剤を用いる場合には、第1工程においてベタイン型両性界面活性剤を用いて製造した有機顔料組成物の方が、着色力と透明性の改善が著しく、着色力、透明性、彩度のいずれにおいても優れていることが明らかである。
【0140】
さらに比較例7と比較例2との対比からわかる様に、一般式(1)に包含されないベタイン型界面活性剤を用いて製造した有機顔料組成物の間では、一般式(1)で表されるベタイン型界面活性剤を用いて製造した有機顔料組成物に関する、この実施例1と2との間での着色力の改善効果は見られないことから、本発明における一般式(1)で表されるベタイン型界面活性剤は、有機顔料の製造方法において、その他の界面活性剤からは予想できない特異的な効果を発現することが明らかである。
【0141】
グラビア印刷用インキ試験
実施例1〜2、比較例2〜4で得られた有機顔料組成物及び比較例1で得られた有機顔料を下記の配合で250mlの容器に秤量し、ペイントコンディショナーで120分間練肉して黄色ウレタングラビア系インキを作製した。
トルエン 18.3部
メチルエチルケトン 10.1部
ウレタン樹脂系ワニス 19.8部
各有機顔料組成物または有機顔料 11.8部
スチールビーズ 180 部
【0142】
作製したウレタングラビア系インキの作製直後のインキ粘度を、B型粘度計を使用して20℃、回転数12r.p.m.、60r.p.m.にて測定した。また作製したウレタングラビア系インキをポリエステルフィルム上にバーコータ(Webstar No.6)にて展色し、塗膜を測色計D186型(グレタグ社製)を用いて測色した。YフィルターでのDensity値を測定して着色力とし、BフィルターでのDensity値を測定して透明性とした。また同様に、ヘイズ−グロス リフレクトメーター(ビック−ガードナー社製)で60°光沢を測定した。結果を、比較例1を標準とした場合の相対値として、表2に示す。
このとき粘度は相対値の値が小さいほど、また着色力、透明性および光沢は値が大きいほど望ましい。実施例1〜2における彩度は、比較例1〜4のそれより優れていた。
【0143】
【表2】
表 2
【0144】
【発明の効果】
本発明に有機顔料組成物の製造方法は、粗製顔料を製造する第1工程と、この第1工程で得られた粗製顔料を顔料化して有機顔料とする第2工程とからなり、前記第1工程及び/または第2工程をベタイン型両性界面活性剤の存在下で行う、ベタイン型両性界面活性剤と有機顔料とを含有する有機顔料組成物の製造方法において、前記ベタイン型両性界面活性剤として、特定一般式(1)で表されるものを用いるので、それを第1工程、第2工程のいずれで用いても、従来のベタイン型両性界面活性剤を用いる場合に比べて、微細であり凝集も少ない。
従って、被着色媒体である分散媒中における有機顔料組成物の分散性に優れ、着色媒体である顔料分散体の着色力、透明性及び鮮明性を、いずれもより優れたものとすることが出来るという格別顕著な効果を奏する。
【0145】
特に、本発明の顔料分散体は、印刷インキ、塗料、着色プラスチック成形品、静電荷像現像用トナー、カラーフィルター用レジストインキ等に使用した場合、より優れた着色力を付与することができる。
Claims (3)
- ベース成分を冷鉱酸水溶液中で亜硝酸ソーダと反応させることにより得たジアゾニウム塩と、アルカリ水溶液中に溶解させたカップラー成分とを、pH4〜13、温度−5〜60℃の範囲でジアゾカップリング反応させることで粗製ベンツイミダゾロンアゾ顔料を製造する第1工程と、この第1工程で得られた粗製ベンツイミダゾロンアゾ顔料を顔料化してベンツイミダゾロンアゾ顔料とする第2工程とからなり、前記第1工程及び/または第2工程をベタイン型両性界面活性剤の存在下で行う、ベタイン型両性界面活性剤とベンツイミダゾロンアゾ顔料とを含有する有機顔料組成物の製造方法において、前記ベタイン型両性界面活性剤として、下記一般式(1)で表されるベタイン型両性界面活性剤を、粗製顔料の理論収量また実使用量の質量換算100部当たり、0.5〜12部となるように用いることを特徴とする、ベタイン型両性界面活性剤とベンツイミダゾロンアゾ顔料とを含有する有機顔料組成物の製造方法。
- 前記第2工程が、粗製顔料と粗製顔料の質量換算3〜15倍相当量の大過剰の水、有機溶剤もしくはその混合液中で80〜150℃で攪拌することである、請求項1記載の有機顔料組成物の製造方法。
- 請求項1または2のいずれか記載の有機顔料組成物の製造方法で得られたベタイン型両性界面活性剤とベンツイミダゾロンアゾ顔料とを含有する有機顔料組成物と分散媒とを含んで成る顔料分散体。
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