JP5062460B2 - 粗製顔料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種の用途、特にインキ、塗料、プラスチック、カラートナーおよびカラーフィルターの着色に有用なアセト酢酸アリリド系ジスアゾ粗製顔料、およびそれを用いた粗製顔料分散体に関する。
【0002】
【従来の技術】
2,2’−[1,2−エタンジイルビス(オキシ−2,1−フェニレンアゾ)]ビス[N−(2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−ベンズイミダゾール−5−イル)−3−オキソ−ブタンアミド(以下、基本物質という)からなるC.I.ピグメントイエロー180は、有用な黄色着色剤として知られており、様々な用途で使用されている。この基本物質は、ジアゾカップリング反応により得られ、その一方の原料であるベンズイミダゾロン化合物に由来する骨格を有することから、従来のジスアゾ黄色顔料からなる黄色着色剤の中では、著しく高い日光堅牢性、塗料における改善された上塗り堅牢性、合成樹脂における改善された移行堅牢性及び高い熱安定性を有する。
【0003】
またこの基本物質は、ジアゾカップリング反応のもう一方のビスジアゾニウム塩の原料として1,2−ビス(2−アミノフェノキシ)エタンを用いており、変異原性を有するジクロロベンジジン類を用いないため、例えば静電荷像現像用トナーを調製するに当たって、ドイツ連邦環境庁が認定しドイツ品質保証・ラベル協会が運営するドイツ版エコマークであるブルーエンジェル(Blauer Engel、正式名Das Umweltzeichen「環境保護表示」)を取得出来る、アセト酢酸アリリド系ジスアゾ系では数少ない黄色着色剤である。
【0004】
この基本物質からなるC.I.ピグメントイエロー180に関しては、特開昭56−38354号公報、特開平8−209017号公報及び特開平8−295815号公報が知られている。
【0005】
これらの公報に記載されている、それの従来の具体的な製造方法は、いずれも、1,2−ビス(2−アミノフェノキシ)エタンのビスジアゾニウム塩と5−アセトアセチルアミノ−ベンズイミダゾロンとのカップリング反応を行って粗製顔料(crude pigment)を得る第一工程、次いで前工程で得られた粗製顔料を濾別して有機溶剤を必須として含む液媒体に加えその中で加熱処理して顔料とする第二工程とからなる。
【0006】
尚、当業界においては、上記した粗製顔料(crude pigment)は、プレ顔料(Prepigment)及びクルード(crude)と同義である。同様に、上記した第二工程は、後処理工程(aftertreating)、仕上げ工程(finishing or conditioning)または顔料化工程と呼ばれ、いずれも同義である。
【0007】
ところで、顔料自体の重要な物理的特性に、例えば窒素吸着法によるBET比表面積と、CuKα特性×線で測定した結晶のブラッグ角に基づく各回折ピークとそれらの強度とがある。これらの特性は、粒子径と共に、ビヒクルの様な分散媒体中への顔料の分散の容易さや、得られた着色された分散媒体の流動性等の応用用途での特性を推定する指標として、良く測定されている。
【0008】
上記基本物質からなるC.I.ピグメントイエロー180において、顔料の粒子径は、着色剤を使用して着色された分散媒体の様々な適性に影響を与えており、たとえば印刷インキに於ける用途適性では、鮮明性、透明性、着色力、色相、流動性等に関連しており、顔料に限ればその一次粒子径が小さいほど、鮮明性、透明性、着色力が向上する傾向にある。これは、粒子同士の凝集が後述する粗製顔料より少ない(または弱い)顔料においては、一次粒子の着色すべき分散媒体への分散性に優れるためである。この様な顔料は凝集がほとんど見られず、着色すべき分散媒体に一次粒子レベルで分散し得る。この様な鮮明性等に優れる顔料の比表面積を測定してみると後述する粗製顔料に比べて大きいことがわかる。つまり、顔料の場合は、一次粒子の粒子径が小さいほど比表面積は大きいという傾向がある。
【0009】
一方、C.I.ピグメントイエロー180に対応した上記基本物質からなる従来の粗製顔料は、顔料よりも一次粒子の結晶性が低く、小さい粒子径を有している。顔料に比べて小さな一次粒子であることに対応して表面エネルギーが著しく高く、粗製顔料は結果として一次粒子同士の凝集が強くなる。この様な粗製顔料の強い凝集は、機械的な剪断力では解すことが出来ない。この様な粗製顔料について、顔料と同様に比表面積を測定すると、結果的に対応する顔料よりも比表面積が小さいことがわかる。しかも、これをそのまま着色剤として使用しても、着色すべき分散媒体への分散性が不充分となるために、鮮明性等に劣り実用に耐えないものとなる。以上が、上記基本物質の粗製顔料自体の物理的特性と応用用途における特性との関係に関する、従来からの通説である。
【0010】
この通説通り、上記公報に記載された従来の製造方法で得た基本物質からなる粗製顔料は、強い凝集状態にあり、比表面積は10m2/g以下といった小さい値をとっている。
粉末X線回折図は、ブラッグ角を連続的に変化させたときの各ブラッグ角における物質のX線回折の強度を、回折強度ゼロを基準に連続的にプロットした図である。そして、粉末X線回折図における回折強度ゼロを基準して、各ブラッグ角におけるX線回折の絶対強度を定めることが出来る。
本発明者らは、これらの点に着眼し、粗製顔料と顔料とを明瞭に区別する基準として、ブラッグ角2θ=17.5°±0.2°と同2θ=18.2°±0.2°のX線回折絶対強度の比を採用するに至った。そして、この比が<1.8/1.0となっている従来の上記基本物質からなる粗製顔料から製造した着色分散媒体は、着色力・鮮明性等に劣り、使用に適さないことを見い出している。
【0011】
上記のような理由により、従来は基本物質からなる粗製顔料をそのまま着色剤として用いることはなく、上記第二工程を行って、一次粒子の結晶成長を行い粒子径を増すことにより凝集を解し、必要な鮮明性や着色力の顔料を得て、着色された分散媒体の流動性等を向上させている。これは上記公報に記載されている通りである。
【0012】
この様に、上記基本物質に関する従来技術においては、上記第二工程にて着色剤に要求される一定の適性を得ることが出来たため、敢えて、粗製顔料でありながら着色剤としての適性を持つものを当業者が開発する積極的動機は存在しなかった。着色剤としての適性改良を上記第二工程に依存する結果、粗製顔料をそのまま着色剤として用いることを検討する者はいなかった。
【0013】
しかも、上記した第二工程は、個々の粒子を成長させ一次粒子の粒子径を増すことにより凝集を弱めている結果、透明性や着色力を重要視する用途の様により高度な要求レベルを目標とした場合には、凝集さえ解せれば粗製顔料本来の小さい粒子径は透明性等では有利な結果をもたらすにもかかわらず、この第二工程で凝集を弱めることと引き替えに、折角の小さい一次粒子の粒子径をむしろ大きくしてしまい、着色剤としては、なかなか期待した性能が得られない。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明者らは、より弱い凝集状態の上記基本物質からなる粗製顔料が得られれば、その比表面積はより大きくなり、より弱い力でその凝集を簡単に解せる結果、粗製顔料であっても分散性が改善され鮮明性等に優れるようになる、と考えた。
【0015】
本発明が解決しようとする課題は、弱い力で分散可能な、透明性・着色力等の適性を重要視する用途に直接使用できる黄色粗製顔料を提供すること、また、カップリング直後の弱い凝集状態を保ち、既に解れているかより解れやすい粒子群からなる、顔料水準の大きな比表面積を有する黄色粗製顔料を提供することにある。
【0016】
また、着色剤としての適性付与のために従来行われている上記第二工程を経ずとも上記した優れた適性を有し、第二工程を経ないことで、単位時間当たりの着色剤の生産性も優れる黄色粗製顔料の製造方法を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、より弱い凝集状態からなる上記基本物質からなる粗製顔料を得るべく、抜本的な検討を行ったところ、粗製顔料を得る上記第一工程において、比表面積20m2/g以上の粗製顔料が得られれば、より弱い凝集状態となり、それで着色された分散媒体の着色力や透明性は向上することを見い出した。
【0018】
また、上記第二工程を経なくとも着色剤としての適性を有し、そのまま使用できる粗製顔料が得られる結果、製造工程を削減でき、単位時間当たりの生産性を向上できることを見い出した。
【0019】
しかも驚くべきことに、実際に得られた比表面積20m2/g以上の粗製顔料は、同一分散媒体を使用し同一含有率での比較においては、上記公報に記載されている比表面積45m2/g以上の顔料よりも、優れた着色力と透明性を有していることを見い出した。本発明者らは、これらの知見に基づき本発明を完成するに至った。
【0020】
即ち本発明の目的は、窒素吸着法によるBET比表面積が下記式(1)で表される比表面積20〜100m2/gかつCuKα特性×線による粉末×線回折図におけるブラッグ角2θ=17.5°±0.2°のX線回折の絶対強度(h1)と同2θ=18.2°±0.2°のX線回折の絶対強度(h2)の比(h1/h2)が1.8/1.0より小さい事を特徴とする粗製顔料、及び、熱可塑性樹脂100重量部に対して、この粗製顔料0.5〜100重量部を分散させた粗製顔料分散体を提供することにある。
【0021】
【化2】
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明の粗製顔料について説明する。本発明の粗製顔料は、上記基本物質であり、2,2’−[1,2−エタンジイルビス(オキシ−2,1−フェニレンアゾ)]ビス[N−(2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−ベンズイミダゾール−5−イル)−3−オキソ−ブタンアミドからなっている。即ち、これは物質上はC.I.ピグメントイエロー180と同一物質である。
【0023】
本発明の粗製顔料は、窒素吸着法による特定BET比表面積とCuKα特性×線による粉末×線回折図における特定の二つのブラッグ角でのX線回折の絶対強度比で定義される。
【0024】
本発明の粗製顔料は、その弱い凝集状態に基づき、その大きな比表面積の点で従来の粗製顔料と区別できると共に、CuKα特性×線による粉末×線回折図におけるブラッグ角2θ=17.5°±0.2°のX線回折の絶対強度(h1)と、同2θ=18.2°±0.2°のX線回折の絶対強度(h2)の比(h1/h2)が1.8/1.0より小さい点で、従来の顔料と区別できる。
【0025】
本発明における窒素吸着法におけるBET比表面積は、JIS Z 8830−1990(気体吸着による粉体の比表面積測定方法)に従って測定される。このJISの附属書2に従って測定条件を記載すると、試料の前処理;温度120℃、20分、試料採取量;0.25g、吸着量の測定方法;1点法、窒素分圧;0.3である。マイクロデータ株式会社製マイクロソープ4232IIは、これに準拠した比表面積測定装置である。
【0026】
本発明の粗製顔料は、窒素吸着法におけるBET比表面積20〜100m2/g、好ましくは30〜85m2/gである。
【0027】
本発明におけるX線回折強度の測定は、JIS K 0131−1996(X線回折分析通則)にしたがって行い、CuKα特性X線(波長0.1541ナノメーター)によるX線回折ピークが表示された粉末X線回折図から求められる。
【0028】
本発明におけるX線回折の絶対強度とは、粉末X線回折図の回折強度ゼロを基準として、ブラッグ角を連続的に変化させたときの任意のブラッグ角における物質のX線回折の強度を表したものである。
この粉末×線回折図では、従来の粗製顔料は対応する顔料に比べ結晶性が低いため、程度の差こそあれ、同じブラッグ角に発現する回折ピーク同士の対比においては、顔料に比べて粗製顔料は、回折ピークの半値幅が大きくなる傾向にある。本発明者らは、上記した基本物質の黄色着色剤においても前記したのと同様な傾向にあり、この傾向が最も顕著に現れるブラッグ角を見い出した。具体的には、顔料ではブラッグ角2θ=17.5°±0.2°に発現する回折ピークと、隣接する2θ=19.3°±0.2°の回折ピークとが明らかに分離独立した回折ピークとして観察できるのに対し、粗製顔料では前記2つの隣接する回折ピークがそれらの裾野部分で重なり合い、明瞭に両者を分離判別する事が出来ない。即ちブラッグ角2θ=17.5°±0.2°に発現する回折ピークの高角度側の裾野部分と、隣接する2θ=19.3°±0.2°の回折ピークの低角度側の裾野部分とが重なり合うことで、ブラッグ角の上昇に伴いX線回折の絶対強度の軌跡が谷を形成し谷底部が現れる。上記した基本物質の黄色着色剤において、この谷底部はブラッグ角2θ=18.2°±0.2°に発現する。そして、この谷底部も、X線回折において特定の絶対強度を有している(説明図参照)。
本発明者らは、これらの点に着眼し、上記基本物質からなる粗製顔料と同顔料とを区別する基準として、ブラッグ角2θ=17.5°±0.2°と同2θ=18.2°±0.2°のX線回折の絶対強度の比(h1/h2)を採用するに至った。粗製顔料では、ブラッグ角2θ=17.5°±0.2°でのX線回折の絶対強度(h1)と同2θ=18.2°±0.2°のX線回折の絶対強度(h2)の比(h1/h2)<1.8/1.0となる。
【0029】
本発明の粗製顔料は、粉体状態において、従来の粗製顔料に比べて凝集がかなり弱く、従来よりは弱い力により解れる特徴を有している。その結果、凝集が容易に解ける様にするために通常別途行う後処理工程または顔料化工程(上記第二工程)は、本発明では必要としない。結果的に、製造工程上も着色剤としても、粗製顔料でありながら、顔料としての使用に充分答えることが出来る。
【0030】
こうした本発明の粗製顔料は、カップリング直後の微細な粗製顔料粒子を弱い凝集状態のまま維持できる方法で製造できる。1,2−ビス(2−アミノフェノキシ)エタンのビスジアゾニウム塩(以下、ビスジアゾニウム塩という)をジアゾ成分として、5−アセトアセチルアミノ−ベンズイミダゾロン(以下、イミダゾロン化合物)をカップラー成分として、両者をカップリング反応させた構造の本発明の粗製顔料の製造方法としては、具体的には、前記ビスジアゾニウム塩と、イミダゾロン化合物とを、同時にpH4〜8の水溶液中に滴下してカップリング反応させる方法がある。
【0031】
このカップリング反応に当たり、原料の1,2−ビス(2−アミノフェノキシ)エタンは、通常、ビスジアゾニウム塩溶液としてから反応を行う。
【0032】
ビスジアゾニウム塩は、たとえば、1,2−ビス(2−アミノフェノキシ)エタンと塩酸と亜硝酸ソーダとを反応させれば得ることができる。
【0033】
一方、カップリング反応に当たり、イミダゾロン化合物は、通常、溶液としてから反応を行う。この溶液は、通常アルカリ性水溶液である。
【0034】
ビスジアゾニウム塩とイミダゾロン化合物との組み合わせでは、理論モル比1:2で同時にpH4〜8の水溶液中に滴下してカップリング反応させることにより、目的の粗製顔料とすることができる。
【0035】
この反応は、pH4〜8の水溶液に、より好ましくはpH5〜7、温度5〜30℃の範囲で、前記ビスジアゾニウム塩溶液とイミダゾロン化合物溶液を同時に前記pHの水溶液中に滴下後、温度60〜95℃とし、1〜5時間保持することにより行うことができる。本発明において、ビスジアゾニウム塩溶液とイミダゾロン化合物溶液の前記pH4〜8の水溶液中への滴下は1〜12時間、特に2〜7時間で終了することが望ましい。
【0036】
ビスジアゾニウム塩溶液とイミダゾロン化合物溶液とを滴下する前記pH4〜8の水溶液には、pHを一定にするための緩衝剤と、未処理の粗製顔料の0.1〜50重量%相当量、望ましくは1〜30重量%相当量の表面処理剤を存在させることが望ましい。表面処理剤としては、例えばロジン類、界面活性剤等、従来公知の添加剤を使用することができる。このような表面処理剤の内、界面活性剤を使用した場合、カップリング反応率の向上による収率の向上や色相の鮮明化、通常凝集した形態で得られる粗製顔料自身の分散性を向上させる働きがある。またロジン類を使用した場合には、透明性の向上や粗製顔料の凝集防止に効果がある。本発明に使用する緩衝剤の種類、量は特に限定されないが、例えば酢酸ナトリウム等を緩衝剤として使用することができる。
【0037】
カップリング反応時に上記した様に表面処理剤を併用した場合には、得られる粗製顔料は、未処理の粗製顔料にその0.1〜50重量%相当量の表面処理剤が付着したものとなる。
【0038】
本発明において、ビスジアゾニウム塩1モルに対する、イミダゾロン化合物のモル%は特に制限されるものではない。望ましくは、ビスジアゾニウム塩の1モルに対して、イミダゾロン化合物のモル数を1.995〜2.300とするのが好ましい。
【0039】
上記した通り、カップリング反応を行った反応液は、濾過して液媒体を除去してからその液媒体とは異なる、水、メタノール、ジメチルホルムアミド等の大過剰の液媒体に分散させて80〜150℃で1〜10時間という様な常套な顔料化のための加熱処理をするより、反応液はそのままで60〜95℃で加熱処理するほうが、生産工程を削減できる点で好ましい。即ち、カップリング反応終了後の反応液を、この様に加熱処理することにより、従来不可欠とされていた、常套な後処理工程や顔料化工程は不要となる。また、この反応液を、カップリング反応終了時よりも高いpH値となる様に、好ましくはpH10以上のアルカリ性としてから60〜95℃で加熱処理すると、粗製顔料の比表面積をより大きくすることが出来る。
【0040】
粗製顔料を含む反応液を濾過して、それと、反応液中の液媒体とは異なる化学組成の液媒体とを用いて顔料化のための後処理を実施するのは生産性から好ましくない。
【0041】
こうして得られた本発明の粗製顔料は、前記反応終了後のままの含水状態で、そのまま粉末状態で、またはウエットケーキ状態で、或いはスラリー状態で、従来のアゾ顔料と同様にして使用することができる。これらの各種状態の粗製顔料のうち、本発明では含水状態の粗製顔料を総称して、含水粗製顔料という。
【0042】
含水粗製顔料を構成する、水と粗製顔料との組成割合は、特に制限されるものではないが、両者合計を100重量%とした時、粗製顔料10〜90重量%、後述するフラッシングをする場合には好ましくは20〜50重量%である。
【0043】
上記の様にして得られた、上記式(1)で表される粗製顔料は、窒素吸着法によるBET比表面積が20〜100m2/gとなる。またCuKα特性×線による粉末×線回折図におけるブラッグ角2θ=17.5°±0.2°のX線回折の絶対強度と同2θ=18.2°±0.2°のX線回折の絶対強度の比(h1/h2)は1.8/1.0より小さくなる。
【0044】
本発明の粗製顔料と熱可塑性樹脂とを含めることにより、粗製顔料分散体を提供することができる。この粗製顔料分散体には、その性状により固形粗製顔料分散体と液状の粗製顔料分散体が含まれる。本発明の粗製顔料は、印刷インキ用ビヒクル、塗料用ビヒクル等の顔料分散用熱可塑性樹脂に分散させることにより粗製顔料分散体を供給する。これら熱可塑性樹脂は、公知の方法により製造される。
【0045】
本発明の粗製顔料分散体は、粗製アゾ顔料と熱可塑性樹脂のみからなる粗製顔料分散体、例えばプラスチック着色用マスターバッチやカラートナー用マスターバッチ等だけでなく、さらに熱硬化性樹脂等の樹脂、溶剤、その他添加剤等を加えた粗製アゾ顔料分散体、例えば平版印刷用インキ、グラビアインキ、塗料、プラスチック、カラートナー、カラーフィルター作製用レジストインキ等を包含する。
【0046】
粗製顔料と熱可塑性樹脂との組成割合は、特に制限されないが、例えば熱可塑性樹脂100重量部当たり、粗製顔料0.5〜100重量部である。前記マスターバッチの場合は熱可塑性樹脂100重量部当たり50〜80重量部が一般的である。
【0047】
本発明の粗製顔料分散体を製造する場合には、粉末粗製顔料と、固形熱可塑性合成樹脂とを後者樹脂の溶融温度以上にて混合する様にしても良い。
一般に含水粗製顔料は、乾燥工程における粗製顔料粒子間の凝集を防げるため、粉末状態より凝集が少なく、透明性・着色力を重視する用途にさらに有利である。粗製顔料粒子間に存在する水は、その表面張力により、乾燥時に粗製顔料粒子間の凝集を促進させるため、その様な状態を経ない様に、含水粗製顔料と、液状の熱可塑性樹脂や熱可塑性樹脂有機溶剤溶液とを水や溶媒の沸点未満で混合することにより、粗製顔料粒子表面の水が直接樹脂や有機溶剤で置き換わり、より透明性・着色力にすぐれた粗製顔料分散体を得ることができる。この場合、必要であれば、水や有機溶剤を適時除去する様にしてもよい。
【0048】
したがって、本発明において粗製顔料分散体を製造するに当たっては、含水粗製顔料と熱可塑性樹脂とを必須成分としてフラッシングすると、粉末粗製顔料を熱可塑性樹脂に分散するのに比べて、より分散性に優れ、結果的により透明性に優れた粗製顔料分散体とすることが出来る。
【0049】
ここで、フラッシングとは、含水粗製顔料と熱可塑性樹脂とを必須成分として混合し、粗製顔料を水相から油相に転相した後、水を除去する工程を意味する。尚、この水の除去は、デカンテーションと加熱・真空吸引とを組み合わせて行うことが出来る。
【0050】
また本発明で用いられる粗製顔料は、熱可塑性樹脂のみに分散させてもよいが、熱可塑性樹脂を必須成分として含有する印刷インキ用ビヒクルや塗料用ビヒクル等に分散させることも出来る。
【0051】
熱可塑性樹脂としては、たとえばポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン、ポリアルキレンテレフタレートやポリ塩化ビニル樹脂等の樹脂が分散用樹脂として使用できる。
【0052】
たとえば平版印刷用インキのビヒクルは、たとえばロジン変性フェノール樹脂、石油樹脂、アルキッド樹脂等の樹脂を20〜50(重量)%、アマニ油、桐油、大豆油等の動植物油を0〜30(重量)%、n−パラフィン、イソパラフィン、ナフテン、α−オレフィン、アロマティック等の溶剤を10〜60(重量)%、その他可溶化剤、ゲル化剤等の添加剤を数(重量)%の原料から製造される。
【0053】
またグラビア印刷インキ、フレキソ印刷インキ用ビヒクルの場合は、たとえばロジン類、マレイン酸樹脂、ポリアミド樹脂、ビニル樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ニトロセルロース、酢酸セルロース等から選ばれる一種以上の樹脂を10〜50(重量)%、アルコール類、トルエン、n−ヘキサン、酢酸エチル、セロソルブ、酢酸ブチルセロソルブ等の溶剤30〜80(重量)%の原料等から製造される。
【0054】
塗料用のビヒクルでは、たとえばアルキド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、水溶性樹脂等の樹脂20〜80(重量)%、炭化水素類、アルコール類、ケトン類、水等の溶剤10〜60(重量)%の原料等から製造される。
【0055】
着色成形品を得る場合には、たとえばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンやポリ塩化ビニル樹脂等の、射出成形やプレス成形等の熱成形用の熱可塑性樹脂(プラスチック)が分散用樹脂として使用される。尚、これらの樹脂を用いて得た本発明の顔料分散体は、必要な形状に成形することにより着色成形品とすることが出来る。
【0056】
静電荷像現像用トナーを得る場合には、たとえばポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂等の常温で固形の皮膜形成性の熱可塑性樹脂が分散用樹脂として使用される。後に詳述するが、これらの樹脂を用いて得た本発明の常温固形の顔料分散体は、必要な粒径の粒子状となる様に、粉砕、分級することにより静電荷像現像用トナーとすることが出来る。
【0057】
これら粗製顔料分散体は、必要に応じて、他の樹脂、ゴム、添加剤、顔料や染料等と混合され最終的な印刷インキ、塗料、成形品(プラスチック)、トナー、カラーフィルターに調整され使用される。
【0058】
粗製顔料分散体を製造する際の、粗製顔料を熱可塑性合成樹脂に分散する分散機としては、たとえばディスパー、ホモミキサー、ビーズミル、二本ロール、三本ロール、常圧および加圧ニーダー、超音波分散機等の公知の分散機があげられるが、これらに限定されるものではない。
【0059】
分散条件は、分散媒および分散機によって異なるため、分散温度や分散時間は問わないが、分散温度が室温〜300℃、好ましくは室温〜240℃、分散時間は1分〜120時間、好ましくは3分〜7時間である。
【0060】
粗製顔料分散体中の粗製顔料の割合は、特に制限されるものではなく、数〜30(重量)%程度であるが、用途によって異なっており、たとえば平版インキでは13〜20(重量)%、グラビアインキでは3〜20(重量)%、塗料では0.3〜15%、またプラスチックの着色用途では0.01〜1(重量)%、トナーでは4〜10%程度、カラーフィルター用途ではたとえばレジストインキとして使用される場合4〜7%程度である。
【0061】
本発明の粗製アゾ顔料分散体は、上記のように公知慣用の用途にいずれも使用できる。しかしながら、本発明の粗製アゾ顔料分散体は、高度な熱履歴を受ける用途、例えばポリフェニレンスルフイドやポリブチレンテレフタレート等の高融点熱可塑性樹脂の着色成形品や、ヒートセット定着過程を経る静電荷像現像用トナーに、好適に用いることが出来る。
【0062】
本発明の粗製顔料分散体は、例えばペーストカラー、ドライカラーとして使用することが出来るが、それ自体を、前記熱成形用や静電荷像現像用トナーの結着樹脂として使用される未着色の熱可塑性樹脂の、着色用マスターバッチとして用いると、直接、熱可塑性樹脂の全量と均一に混合するのに比べて、より短時間により均一に着色された成形品やトナーを得ることができる。
【0063】
本発明の粗製顔料と熱可塑性樹脂を含有する粗製顔料分散体においては、粗製顔料の性能を最大限発揮させるため、前記した通り、フラッシング法による分散体の製造法が特に有効である。
【0064】
特に顔料の透明性が要求される用途には、乾燥時に顔料粒子の強い凝集を引き起こしやすく、熱可塑性樹脂への分散性が低下しやすい、粉末状態の粗製顔料と熱可塑性樹脂とを混合するよりも、含水粗製顔料と熱可塑性樹脂とでフラッシングすることにより、品質のより優れた顔料分散体が得られる。
【0065】
透明性に優れるという本発明の粗製顔料分散体の特徴は、特に、各色トナーを重ね合わせてカラー画像を形成するフルカラートナーの分野において、発色が良好で鮮明な画像が得られるという効果につながるものである。
【0066】
本発明の粗製顔料を含む静電荷像現像用トナーは、トナー中に磁性体を含有する1成分色磁性トナー(磁性一成分現像用カラートナー)、磁性体を含有しない非磁性1成分色カラートナー(非磁性一成分現像用カラートナー)、又は、キャリアーを混合した2成分色現像剤用カラートナー(二成分現像用カラートナー)として用いることができる。
【0067】
1成分色磁性トナーは、通常使用されているものと同様に、例えば着色剤、結着樹脂、磁性粉、電荷制御剤(CCA)や離型剤に代表されるその他添加剤等から構成出来る。
【0068】
本発明の粗製顔料を用いた静電荷像現像用トナー中に占める粗製顔料の使用量は特に限定されないが、結着樹脂100重量部に対し0.5〜25重量部の割合で使用することが好ましく、着色剤自身の有する帯電性能を一層顕著ならしめる点から結着樹脂100重量部に対し2〜10重量部であることが更に好ましい。
【0069】
本発明の粗製顔料を含む静電荷像現像用トナーに用いられる結着樹脂としては、前記熱可塑性樹脂として例示した公知慣用のものがいずれも使用できるが、熱又は圧力の適用下で接着性を示す合成樹脂、天然樹脂、天然ゴム、合成ゴム、合成ワックス等がいずれも使用できる。
【0070】
本発明の粗製顔料を含む静電荷像現像用トナーに用いられる合成ワックスとしては、例えば、塩素化パラフィンワックス、パラフィンワックス、ポリプロピレンワックス、PVC等が挙げられる。
【0071】
また、本発明において有用な天然樹脂は、例えばバルサム樹脂、ロジン、シェラック、コーバル等であり、これらの樹脂は後述するビニル樹脂、アクリル樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂等から選ばれる1種又はそれ以上の樹脂で変性されていてもよい。
【0072】
また、天然又は合成ゴム物質としては、例えば天然ゴム、塩素化ゴム、環化ゴム、ポリイソブチレンゴム、エチレン−プロピレンゴム、ポリブタジエンゴム、ブチルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム等が挙げられる。
【0073】
本発明の粗製顔料を含む静電荷像現像用トナーに用いられる結着樹脂は、これらに限定されるものではなく、結着樹脂成分の2種以上が適宜混合されて用いられてもよい。
【0074】
この結着樹脂としては、示差走査熱量計(DSC)によるガラス転移温度45〜85℃、定荷重押出し形細管式レオメーター(高架式フローテスター;島津フローテスタCFT−C形。ピストン断面積1cm2、シリンダ圧力0.98MPa、ダイ長さ1mm、ダイ穴径1mm、測定開始温度50℃、昇温速度6℃/min、試料重量1.5g)による溶融粘度が1×105ポイズとなる温度が95〜170℃であるものが好ましい。
【0075】
尚、これらのうちでもスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂及びエポキシ樹脂がその透明性及びトナーの色相面から有利に使用できるが、特にポリエステル樹脂が好ましい。
【0076】
本発明の粗製顔料を含む静電荷像現像用トナーに用いられる磁性粉としては、特に限定されるものではないが、それ自身の色が再現された色に影響を及ぼしにくいものが好ましく使用でき、例えば、γ−酸化鉄、黄色γ−酸化鉄、フェライト等の酸化鉄;鉄、コバルト、ニッケルのような金属、或いはこれらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、錫、亜鉛のような金属との合金、ポリ−1,4−ビス(2,2,6,6,−テトラメチル−4−オキシル−4−ピペリジル−1−オキシル)ブタジエンポルフィリン金属錯体の様な有機磁性体及びそれらの混合物等が挙げられる。また、これらの中で特に色相の面から、黄色γ−酸化鉄の使用が好ましい。
【0077】
これら磁性粉の粒径は平均粒径0.1〜1μmで使用でき、帯電安定性及び色相の点から0.1〜0.5μmが好ましい。また、これらをトナーに含有させる量としては結着樹脂100重量部に対して30〜150重量%で使用でき、帯電安定性及び色相の点から結着樹脂100重量部に対して40〜120重量%が好ましい。
【0078】
本発明の粗製顔料を含む静電荷像現像用トナーは上記各成分のほかに必要に応じてトナーの熱特性、電気特性、物理特性等を調整する目的で各種の可塑剤、抵抗調整剤及び電荷制御剤を更に添加してもよい。
【0079】
可塑剤としては、例えば、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル等が、抵抗調整剤としては酸化スズ、酸化鉛、酸化アンチモン等が、電荷制御剤としては四級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、含金属染料等が夫々挙げられる。
【0080】
更に、本発明の粗製顔料を含む静電荷像現像用トナーにおいてはトナー粒子の製造後、これにTiO2、Al2O3、SiO2等の微粉末を添加してトナーの流動性改良を図ったり、ステアリン酸亜鉛、フタル酸等を添加して感光体の劣化防止を図っても良い。
【0081】
本発明の粗製顔料を含む静電荷像現像用トナーは、特定の製造方法に依らず極めて一般的な製造方法によって得ることができる。例えば、上記の各成分を押し出し機、2本ロール、3本ロール又は加熱ニーダー等の混練手段により混合し、本発明の顔料分散体を含む混練物を得て、これを冷却後、ジェットミル等の粉砕機で撹拌し、風力分級機により分級して、粒子状となすことにより、本発明の目的とする粉体カラートナーが得られる。
【0082】
また、熱可塑性樹脂としてトナー用結着樹脂を用い、粗製顔料を高濃度で含む本発明の粗製顔料分散体のマスターバッチを予め製造しておき、前記したのと同一又は前記したのと異なるトナー用結着樹脂で希釈する様にして混練して、所定の粗製顔料濃度の本発明の粗製顔料分散体を得る様にすると、マスターバッチを介しないで製造する場合よりは、より透明性に優れた画像が得られるトナーを製造することが出来る。
【0083】
さらに、上記フラッシングとマスターバッチの手法を組み合わせることにより、同一樹脂を用いた場合における対比においては、最も透明性に優れ、発色が良好で鮮明が画像が得られるトナーを製造することが出来る。
【0084】
尚、本発明の粗製顔料を含むカラートナーは、粗製顔料が前記結着樹脂に分散した粒子状の分散体であるが、そのトナー粒子の平均粒子径は3〜15μmが好ましい。
【0085】
2成分色現像剤用カラートナーとして用いる場合も1成分色磁性トナーに使用されているものと同じ着色剤、結着樹脂、上記した様なその他添加剤等を使用できる。
【0086】
更に、本発明の粗製顔料を含む静電荷像現像用トナーに用いられるキャリアーとしては、例えば、鉄粉、ニッケル粉、フェライト粉、ガラスビーズ、或いはこれらを芯材とし表面にスチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル重合体、メタクリル酸エステル重合体、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂等又はこれらの樹脂の混合物をコーティングしたものが使用でき、その粒径は50〜300μmの範囲にあるものが好ましい。
【0087】
2成分色現像剤用カラートナーは、これらのキヤリアー粒子と本発明の粗製顔料を含むカラートナーとを水平円筒形、V形等の容器回転型混合機で摩擦混合することによって得ることができる。
【0088】
また、キャリアーとカラートナーとの混合比は適切な画像濃度を得るために通常、キャリアー100重量部に対してカラートナー2〜10重量部の範囲で使用できるが、好ましくはカラートナー4〜6重量部の範囲である。
【0089】
【実施例】
以下、製造例、実施例および比較例を挙げ、本発明を詳細に説明する。なお、例中の部および%は重量基準である。
【0090】
製造例1
1,2−ビス(2−アミノフェノキシ)−エタン45部を水650部に分散後、35%塩酸107.7部を加え、氷を加えて5℃以下に保ちながら、40%亜硝酸ソーダ水溶液67.4部を滴下しジアゾ成分を作製した。次に5−アセトアセチルアミノ−ベンズイミダゾロン93部を水675部に分散後、25%水酸化ナトリウム水溶液119部を加えて溶解し、カップラー成分を得た。ジアゾ成分およびカップラー成分は、水および氷を加えてそれぞれ液量を1300部および900部に調整した。
【0091】
90%酢酸6部およびポリオキシエチレンラウリルエーテルを13.5部を水1300部に加えた後、この溶液の温度を20℃、pHを6.0に調整する。先に作製した酢酸溶液中に、カップラー成分を滴下しpHを6.0に調整後、ジアゾ成分を一定速度で滴下を開始した。
【0092】
酢酸溶液中に過剰のジアゾニウム塩が存在し得ないように、ジアゾ液の滴下と同時にカップラー成分の滴下を開始し、カップラー成分の滴下速度調整により酢酸溶液のpHを6.0に合わせながらカップリングを行った。カップリング中温度が20℃、またpHが6.0を維持するよう適時氷または5%水酸化ナトリウム溶液を添加しながら、カップリングを約3時間で終了後、90℃に加熱し一時間保持した。
【0093】
次いで、ろ過、水洗し、含水粗製顔料(粗製顔料分30%)を得、これを70℃で乾燥した。得られた固形物をジューサーミキサーで粉砕し、粉末の本発明による式(1)のジスアゾ黄色粗製顔料を得た。
【0094】
得られた粉末粗製顔料の窒素吸着法によるBET比表面積については、マイクロデータ株式会社製マイクロソープ4232IIを用いて測定したところ比表面積は35m2/g であった。同様に粗製顔料のCuKα特性×線による粉末×線回折図におけるブラッグ角2θ=17.5°±0.2°のX線回折の絶対強度(h1)と2θ=18.2°±0.2°のX線回折の絶対強度(h2)の比(h1/h2)は、1.44/1.00であった。
【0095】
製造例2
5−アセトアセチルアミノ−ベンズイミダゾロンの使用量を93部から90部へ変更し、ポリオキシエチレンラウリルエーテルを酢酸溶液中に添加せず、90℃加熱前に水酸化ナトリウム溶液でpHを12へ調整を行った以外は、製造例1にしたがって、含水粗製顔料(粗製顔料分28%)と粉末の本発明によるジスアゾ黄色粗製顔料を得た。
【0096】
得られた粉末粗製顔料の比表面積と前記X線回折の絶対強度の比(h1/h2)を上記したのと同様に測定した結果、それぞれ76.1m2/g、1.29/1.00であった。
【0097】
製造例3
1,2−ビス(2−アミノフェノキシ)−エタン73.2部を、水300部に攪拌分散しながら、35%塩酸132.9部を加えた。1時間攪拌後、氷を使って温度を0〜5℃に調整し、40%亜硝酸ソーダ水溶液41.8gを加え、ジアゾ化反応を行った。1時間以上攪拌後、過剰の亜硝酸塩を除去するため20部のスルファミン酸を加えて10分以上攪拌し、ビスジアゾニウム塩溶液の調整を行った。
【0098】
一方、5−アセトアセチルアミノ−ベンズイミダゾロン150.8部を水900部に分散後、25%水酸化ナトリウム溶液198部を加えて溶解させる。氷を使って温度を5℃に調整し、さらにジメチルココアルキルアミンオキシド12部の存在下に酢酸を使用してpHを5.3として沈殿を生じさせた。
【0099】
カップリングのため、25℃でカップラー溶液にジアゾ溶液を10分にわたって添加して行った。カップリング終了後、粉末チョーク40部を添加し、10分後にpHを5.0に調整した。
【0100】
次いで、ろ過、水洗し、含水粗製顔料(粗製顔料分32%)を得、これを乾燥した。得られた固形物をジューサーミキサーで粉砕し、粗製顔料を得た。得られた粉末粗製顔料の比表面積1m2/gであった。
【0101】
製造例4
ジメチルココアルキルアミンオキシド12部の代わりにアルキルエチレンオキシドポリグリコールホスファート6部およびイソトリデシルアルコールをベースにした脂肪族アルコールプロピレングリコールエステル6部を使用し、カップリングを25℃30分間で行った以外は、製造例3にしたがって粗製顔料を製造した。得られた粉末粗製顔料の比表面積は9.6m2/gであった。
【0102】
製造例5
製造例4による製造法で、加熱処理を行った粗製顔料スラリーをろ過・水洗後、そのままウエット品として取り出し、ジスアゾ黄色粗製顔料のウエット品を得た。(粗製顔料分 30%)
【0103】
このウエット粗製顔料367部を水1133部およびイソブタノール910部とともに110℃2時間の顔料化処理を行った。次いで、ろ過、水洗し、含水顔料(顔料分31%)を得、これを乾燥した。得られた固形物をジューサーミキサーで粉砕し、ジスアゾ黄色顔料を得た。得られた粉末アゾ顔料の比表面積は62m2/gであり、前記X線回折の絶対強度比(h1/h2)が2.19/1.00であった。
【0104】
実施例1
製造例1で得た粉末粗製顔料、KM−51(大日本インキ化学工業(株)社製の平版インキ用ワニス)及び軽油を混合した後、3本ロールミルを使用して粗製顔料分17%、タック値が8.5〜9.5のオフセットインキを調整した。最終のインキ組成を以下に示す。
【0105】
粉末粗製顔料 17部
KM−51ワニス 65部
軽油 18部
【0106】
実施例2、比較例1〜5
製造例1で製造した粉末粗製顔料に代えて、製造例2〜6で製造した粉末粗製顔料または粉末アゾ顔料および市販の粉末ピグメントイエロー180〔Novoperm Yellow P-HG、Toner Yellow HG VP2155;クラリアントジャパン(株)〕を 使用して、実施例1にしたがってオフセットインキを調製した。
【0107】
《評価方法》
インキ透明性は、オフセットインキをアート紙に展色(ドローダウン)して、評価した。実施例1で得た粗製顔料を用いた展色板を標準とした相対評価により、透明性を目視判定7段階〔1(透明性小)>>>7(透明性大)〕で判定した。また着色力は、上記で調整したオフセットインキを1部、フタロシアニンブルー、チタンホワイトおよびワニスからなる青色基準インキ5部をフーバーマーラーで、加重100ポンド下、100回転×3回練肉して調整した緑色インキをアート紙上に展色して、実施例1から得られた展色板を標準として、目視判定7段階〔1(着色力小)>>>7(着色力大)〕で判定した。実施例1〜3、比較例1〜5について得られた評価結果を表1にまとめて示した。
【0108】
【表1】
表1
【0109】
表中、比表面積は、窒素吸着法によるBET比表面積については、マイクロデータ株式会社製マイクロソープ4232IIを用いて測定した結果を示し、X線強度比は、CuKα特性×線による粉末×線回折図におけるブラッグ角2θ=17.5°±0.2°のX線回折の絶対強度(h1)と2θ=18.2°±0.2°のX線回折の絶対強度(h2)の比(h1/h2)である。尚、市販品のNovoperm Yellow P-HG、Toner Yellow HG VP2155については、製造例で得た着色剤と同様に比表面積とX線強度比を各々測定し、表中に記載した。
【0110】
実施例3
[静電荷現像用トナーの製造]
製造例1で得た含水粗製顔料(粗製顔料分30%)、ハイマーSBM100(三洋化成工業株式会社製スチレン−アクリル酸共重合体樹脂)を、下記の配合でニーダー中で100℃30分間混練してフラッシングを行い、本発明による粗製顔料分散体(マスターバッチ)を得た。
含水粗製顔料 267部
ハイマーSBM100 120部
【0111】
このマスターバッチを用い、下記の配合にて押出機で混練後、ジェットミルで粉砕分級して平均粒径10μmのトナーを得、これに疎水性シリカ(アエロジルR−972、日本アエロジル社製)を1.0%混合し、本発明の粗製顔料を含む静電荷像現像用(二成分現像用)イエロー色トナーとした。
マスターバッチ 12.5部
ハイマーSBM100 92.5部
【0112】
尚、ハイマーSBM100は、前記した装置及び条件において、溶融粘度1×105ポイズとなる温度が110〜170℃の範囲であった。
【0113】
[カラートナーの評価]
この二成分現像用イエロー色トナーを用い、これに市販の現像剤用フェライトキャリアに混合し二成分現像剤とした。この現像剤を用いて、乾式普通紙複写機(リコピーFT3010、株式会社リコー製;以下同じ)で現像を行ったところ、複写5000枚目でも地肌カブリのない鮮明なイエロー画像が得られた(評価:◎)。
【0114】
次に、C.I.Pigment Blue 15:3を使用したシアン色現像剤と組み合わせて現像を行ったところ鮮明な緑色が再現された。
又、C.I.Pigment Red 122を使用したマゼンタ色現像剤と組み合わせて現像を行ったところ鮮明な赤色が再現された。(評価:○)
【0115】
実施例4、比較例6〜8
製造例1で得た含水粗製顔料267部に代えて、製造例2〜4で得た含水粗製アゾ顔料および製造例5で得た含水顔料を乾燥時重量で80gに相当する量を使用した以外は、実施例3にしたがって本発明の粗製顔料を含む静電荷像現像用(二成分現像用)イエロー色トナーを調整した。得られた現像剤(二成分現像用イエロー色トナー)を、実施例3と同様に乾式普通紙複写機(リコピーFT3010、株式会社リコー製)で現像試験を行った。結果を表2に示した。
【0116】
表2から明らかなように、本発明によるカラートナーは分散性が改善されたため透明性・着色力が向上し、鮮明な画像が得られたのに対して、従来公知の物性の粗製顔料からなる粗製顔料分散体は分散性が劣っているために、これを使用した現像剤から得られた画像は不鮮明なものであった。
【0117】
また、本発明による粗製顔料分散体からなる現像剤と、C.I.Pigment Blue 15:3を使用したシアン色現像剤との組み合わせ、C.I.Pigment Red 122を使用したマゼンタ色現像剤との組み合わせ現像を行ったところ、それぞれ鮮明な緑色、赤色が再現された。
【0118】
これに対して、従来公知の物性の粗製顔料から製造した現像剤と、C.I.Pigment Blue 15:3を使用したシアン色現像剤との組み合わせ、C.I.Pigment Red 122を使用したマゼンタ色現像剤との組み合わせ現像を行ったところ、それぞれ青味、赤味が強く、鮮明な緑色、赤色は得られなかった。
【0119】
また従来公知の物性の顔料から製造した現像剤との比較においても、本発明の粗製顔料を含む現像剤はより良好な結果を示した。
【0120】
【表2】
【0121】
◎:鮮明性極めて良、色再現性極めて良
○:鮮明性良、色再現性良
△:鮮明性やや良、色再現性やや良
×:鮮明性不良、色再現性不良
【0122】
【発明の効果】
本発明の粗製顔料は、窒素吸着法によるBET比表面積が20〜100m2/gかつCuKα特性×線による粉末×線回折図におけるブラッグ角2θ=17.5°±0.2°のX線回折の絶対強度と2θ=18.2°±0.2°のX線回折の絶対強度の比が1.8/1.0より小さい上記基本物質からなるので、顔料化のための後処理を経ない粗製顔料でありながら、それを行なった顔料を越える優れた透明性と着色力を有する着色剤として使用できるという格別顕著な効果を奏する。
また本発明の粗製顔料分散体は、従来よりも弱い凝集状態の粗製顔料を用いているので、透明性、着色力に優れるという格別顕著な効果を奏する。
【0123】
【図面の簡単な説明】
【図1】CuKα特性×線による粉末×線回折図におけるブラッグ角2θ=17.5°±0.2°のX線回折の絶対強度(h1)と同2θ=18.2°±0.2°のX線回折における絶対強度(h2)の比の求め方を示した図である。
【図2】製造例1の粗製顔料の粉末X線回折図である。
【図3】製造例2の粗製顔料の粉末X線回折図である。
【図4】製造例5の粗製顔料の粉末X線回折図である。
【図5】市販の粉末ピグメントイエロー180〔Novoperm Yellow P-HG;クラリアントジャパン(株)〕の粉末X線回折図である。
【図6】市販の粉末ピグメントイエロー180〔Toner Yellow HG VP2155;クラリアントジャパン(株)〕の粉末X線回折図である。
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