JP4571925B2 - 機能性離型油組成物、その製造方法と利用 - Google Patents

機能性離型油組成物、その製造方法と利用 Download PDF

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Description

本発明は、食品生地を、油脂を含有する離型油組成物を塗布した面と接触させ、この面上の食品生地を焼成または蒸成する時に、焼成または蒸成食品への浸透性が低い離型油組成物、それを用いる食品の製造方法、およびその製造方法で製造された食品に関する。
どら焼きやみたらし団子などのような焼き菓子は、食品生地に澱粉類や蛋白質、糖分などが含まれているので、食品生地を加熱焼成することによって製造する時に、例えば製造される焼き菓子などの焼成食品が部分的に天板や型ないしは容器に付着して天板や型ないしは容器から離れ難くなり、焼き菓子が型崩れして商品価値の低下を招く。このため、天板や型ないしは容器に離型油を塗布することが行われている。しかし、通常の離型油では焼き菓子などの焼成食品への油脂の浸透性が強いため、加工した食品が油っぽくなり、食品本来の風味以外の異味が伴うという問題があった。特にでんぷん系の焼成食品では、油の浸透が大きく焼成食品が油っぽくなり、その油っぽさが消費者に嫌われる。そのため高温で短時間で食品生地を焼成することが試みられている。高温で使用し得る離型油として、従来固形状の固形乳化脂が使用されてきた。しかし、固形乳化脂を焼成天板や型ないしは容器の表面にこすりつけながら焼成食品を連続的に製造すると、作業工程が(1)煩雑になる、(2)固形乳化脂の性能が不十分なため連続生産がとぎれ不良品が多く生じるなどの問題点が指摘されていた。
これを解決する方法として、液状の離型油を焼成天板や型ないしは容器に噴霧しながら作業を行う方法もとられているが、天板や型ないしは容器に離型油が残りそれが天板や型ないしは容器に、油ダレを生じさせたり、残った油脂が天板や型ないしは容器に粘着するなどの問題がある。この問題を解決するため、種々の液状の離型油が提案されている。例えば、構成脂肪酸組成がモノエン酸に富む油脂および中鎖飽和トリグリセライド(中鎖飽和トリアシルグリセロール)と、添加剤としてHLB7以下のポリグリセリン脂肪酸エステル、HLB7以下の蔗糖脂肪酸エステル並びにレシチン若しくはリゾレシチンを混合溶解してなる離型油組成物が知られている(特許文献1参照)。しかし、この離型油組成物では、モノエン酸に富む油脂と中鎖飽和トリアシルグリセロールに添加剤を3種類配合しなければ、離型性、発煙性が解決されないため、実用的でない。
また、常温で液状の油脂に、該油脂100重量部あたりレシチンまたはレシチンと油溶性乳化剤との混合物を0.1〜30重量部加えて溶解させた離型油を、静電塗油装置のノズルから噴霧して離型油微粒子をマイナスに帯電させ、その微粒子を塗布体表面に噴出塗布することを特徴とする焼き洋菓子用離型膜の形成方法が知られている(特許文献2参照)。しかし、本特許文献に記載の方法は、静電塗油装置という特別の装置で離型油をマイナスに帯電させなければ離型性は不良となり、また風味も悪いものとなる(特許文献2の比較例3参照)。
一方、C6-10の脂肪酸からなる中鎖脂肪酸トリアシルグリセロールは熱安定性やスプレー性に非常に優れているが、焼成時の離型油として使用した場合、発煙を起こし使用しづらく、また加熱により揮散してしまい離型効果が継続しないという問題がある。このことから、食用油脂90〜96重量%と中鎖トリアシルグリセロール4〜10重量%との混合油脂をエステル交換した油脂にレシチンなどの分散剤を配合した離型油が知られている(例えば、特許文献3参照。)しかし、該離型油も安定性や離型性の点から離型油としては不十分である。
また、水分が多くても比容積が大きく、沈みのない弾力性に富み、ソフトで口溶けが良く、食味、食感の優れた蒸しケーキの製造方法では、蒸しケーキの生地についての改良がなされているものが多い(特許文献4参照)が、蒸しケーキの型に使われる離型油については殆ど検討されておらず、これは蒸しケーキの製造で解決すべき課題の1つであった。
特開平6−253738号公報 特開2000−184849号公報 特公平1−18701号公報 特開平6−133695号公報
本発明は、170℃以上の高温焼成時に発煙が少なく、特別の塗油装置を使用しなくても離型性の優れた焼成食品の連続生産を可能とする離型油組成物を提供することを目的とする。さらに食品生地の蒸成時に蒸成食品への油脂の浸透性が低く、蒸成食品の比容積、弾力性、食味、食感を優れたものにする蒸成器の型ないしは容器に使われる離型油組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、油脂の構成脂肪酸としての炭素数14以下の脂肪酸含量が、油脂中の構成脂肪酸全量に対して82%以上である食用油脂と、リン脂質含量に対するホスファチジルコリンの割合が50%以上であるレシチンとを混合して得られる離型油組成物が、上記課題を解決することを見出した。更に前記離型油組成物に食用ワックス、植物ステロール、酢酸モノグリセライドまたはクエン酸モノグリセライドなどを添加することで離型性が更に向上することを見出した。本発明者らは、さらに鋭意研究を重ねて、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
[1](1)油脂の構成脂肪酸としての炭素数14以下の脂肪酸含量が、油脂中の構成脂肪酸全量に対して82%以上である食用油脂と、
(2)リン脂質含量に対するホスファチジルコリンの割合が50%以上であるレシチンとを含有し、
前記レシチンの量(リン脂質換算)が離型油組成物全体に対して0.1〜10質量%であることを特徴とする離型油組成物。
[2]さらに、食用ワックス、植物ステロールおよび有機酸モノグリセライドより成る群より選ばれる少なくとも1種を離型油組成物全体に対して0.01〜5質量%含有する上記[1]に記載の離型油組成物、
[3]離型剤として請求項1または2に記載の離型油組成物を、天板、型または容器と食品生地が接触する天板、型または容器の面に塗布し、離型油組成物が塗布された天板、型または容器を用いて食品生地を焼成または蒸成することを特徴とする食品の製造方法、
[4]上記[3]に記載の製造方法で製造された食品、
[5]食品が焼団子である上記[4]に記載の食品、
[6]食品がどら焼きである上記[4]に記載の食品、および
[7]食品が蒸しケーキである上記[4]に記載の食品、
に関する。
本発明に係る離型油組成物は、食品生地を約170℃以上の高温で焼成して製造される焼成食品を連続して生産することを可能ならしめる。さらに本発明に係る離型油組成物は、該離型油組成物を使用して焼成して製造された焼成食品において、該焼成食品への油脂の浸透性が少なく、焼成食品の風味を向上させ得る。また、前記焼成食品への油脂の浸透を抑える効果は、比較的低温(約90〜120℃)で食品生地を例えば蒸成などの加熱方法で加熱して製造される例えば蒸しケーキのような食品においても得られるので、本発明に係る離型油組成物は、比較的低温で製造される例えば蒸成食品などにおける型ないしは容器の離型油組成物としても使用することができる。本発明に係る離型油組成物を使用して製造された焼成または蒸成食品は、焼成または蒸成時に生地への油脂の浸透性が低いことから、比容積が大きく、中心部が沈み難く、弾力性に富む。
また、本発明に係る離型油組成物は、油脂の構成脂肪酸としての炭素数14以下の脂肪酸含量が油脂中の構成脂肪酸全量に対して82%以上である食用油脂を主体としている。本発明の離型油組成物は、発煙点が低く、揮発性であるので、天板や型ないしは容器に油が残り液ダレを起こし難く、また残った油脂が天板や型ないしは容器に粘着しにくい。また、本発明の組成物に、前記主体とする食用油脂にリン脂質含量に対するホスファチジルコリンの割合が50%以上であるレシチンが配合されていると、当該組成物の発煙点が低いにもかかわらず組成物の発煙を抑制できる。
本発明によれば、静電塗油装置などのような特別の塗油装置を使用しなくても、通常の噴霧や刷毛または布などによって本発明の離型油組成物を天板や型ないしは容器へ塗布でき、かつ、該天板や型ないしは容器において上記した液ダレや油脂の粘着あるいは発煙が抑制され、天板や型ないしは容器からの分離のよい焼成または蒸成食品が連続的に製造され得る。
本発明に係る離型油組成物は、少なくとも(1)油脂の構成脂肪酸としての炭素数14以下の脂肪酸(以下、炭素数14以下の脂肪酸と略記することもある。)含量が油脂中の構成脂肪酸全量に対して約82%以上である食用油脂(以下、炭素数14以下の脂肪酸が約82%以上である食用油脂と略記する。)と(2)リン脂質含量に対するホスファチジルコリンの割合が約50%以上であるレシチンとを含有する。
油脂を構成する炭素数14以下の脂肪酸としては、炭素数が14以下の脂肪酸であれば、特に限定はされず、例えば直鎖飽和脂肪酸、直鎖不飽和脂肪酸、分枝鎖飽和脂肪酸または分枝鎖不飽和脂肪酸が挙げられ、具体的には、例えば酪酸、カプロン酸(n−ヘキサン酸)、カプリル酸(n−オクタン酸)、ラウリン酸、ミリスチン酸、イソ酪酸又はミリストレイン酸などが挙げられるが、直鎖飽和脂肪酸が好ましい。油脂を構成するこれら脂肪酸は、1種単独であってもよく、2種以上の混合物であってもよい。
炭素数14以下の脂肪酸が約82%以上である食用油脂としては、食用に適する油脂であって、該油脂中の構成脂肪酸全量に対して炭素数14以下の脂肪酸を約82%以上含むものであれば特に限定されず、単一の食用に適する油脂であってもよく、2種類以上の食用に適する油脂を組み合わせて混合して炭素数14以下の脂肪酸が約82%以上である食用油脂としたものであってもよい。前記2種類以上の食用に適する油脂を組み合わせた食用油脂としては、例えば、炭素数14以下の脂肪酸が約82%以上である食用に適する油脂を2種類以上組み合わせて調製された食用油脂、または炭素数14以下の脂肪酸含量が油脂中の構成脂肪酸全量に対して約82%未満の食用に適する油脂と、炭素数14以下の脂肪酸含量が油脂中の構成脂肪酸全量に対して高い(約82%以上、好ましくは約90%以上)食用に適する油脂(例えば、中鎖トリアシルグリセロールなど)とを組み合わせて調製された、炭素数14以下の脂肪酸が約82%以上である食用油脂などが挙げられる。2種類以上の組み合わせに使用し得る食用に適する油脂としては、例えばオリーブ油、キャノーラ油、米油、米ぬか油、ゴマ油、サフラワー油、大豆油、大豆白紋油、コーン油、パーム油、パーム核油、米糠油、菜種油、菜種白絞油、ひまわり油、綿実油、やし油、落花生油、グレープシード油またはしそ油などの植物性油脂;牛脂、豚脂、魚油、乳脂またはラードなどの動物性油脂;中鎖トリアシルグリセロール;あるいはそれらを分別処理したもの、水素添加処理したもの、さらに前記食用油脂はエステル結合した脂肪酸を同一油脂,あるいは2種類以上を任意に組み合わせて混和した油脂とエステル交換処理した加工油脂などが挙げられる。これら食用に適する油脂の中でも、中鎖トリアシルグリセロールと、ヤシ油またはパーム核油との組み合わせが特に好ましい。炭素数14以下の脂肪酸が約82%以上である食用油脂を離型油組成物に使用すると、塗布された天板や型ないしは容器に該食用油脂が残らず、繰り返し焼成食品を製造しても天板や型ないしは容器が黒化せず、良好な離型性を維持できる。
前記中鎖トリアシルグリセロールとしては、1分子のグリセロールに、3分子の炭素数約4〜12、好ましくは約6〜12の脂肪酸(例えば、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸など)がエステル結合したものが挙げられる。
また、炭素数14以下の脂肪酸が約82%以上である食用油脂には長鎖トリアシルグリセロールが含有されていてもよい。長鎖トリアシルグリセロールとしては、1分子のグリセロールに、3分子の炭素数約16〜18の脂肪酸(例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸など)がエステル結合したものが挙げられる。
本発明に使用される食用油脂の構成脂肪酸は、基準油脂分析試験法 2.4.1.2-1996 メチルエステル化法(三フッ化ホウ素メタノール法)の記載に従いガスクロマトグラフ法により分析できる。本発明における炭素数14以下の脂肪酸の%は、前記基準油脂分析試験法 2.4.1.2-1996に従い得られたクロマトグラム上の脂肪酸の総ピーク面積に対する炭素数14以下の脂肪酸のピーク面積百分率である。
本発明に係る離型油組成物に使用されるレシチンは、リン脂質(例えばホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸など)含量のうちホスファチジルコリンの割合が約50%以上、好ましくは約60〜100%であるレシチンである。本発明で使用されるレシチンは、好ましくはリン脂質としてアセトン不溶物を60質量%以上含む。前記レシチンとしては、例えば、ナタネレシチンや大豆レシチンなどの植物性レシチン、あるいは卵黄由来の卵黄レシチンなどが挙げられる。また前記レシチンを、例えば溶媒分画などによりリン脂質含量に対するホスファチジルコリンの割合を約50%以上に、好ましくは約60〜100%となるよう調製されたものも本発明に使用されるレシチンに含まれる。溶媒分画における溶媒としては、例えば、エタノール、プロパノールまたはイソプロパノールなどが挙げられる。溶媒分画は、公知の方法で行うことができる、例えばエタノール分画の場合、レシチンと約2〜10倍量のエタノールとを接触させエタノール可溶部を遠心分離などで分離し、エタノール不溶部にエタノールを加え同様に両者を接触させ、遠心分離する工程を約2〜5回繰り返した後、エタノール可溶部を合わせてエタノールを留去する方法などが挙げられる。この方法によってレシチンにおけるリン脂質の含量に対するホスファチジルコリンの割合を増加させることができる。接触方法としては、攪拌、振とうなどが挙げられる。卵黄レシチンは、除蛋白が行われたものが好ましい。卵黄レシチンを除蛋白することにより、焼成または蒸成時に離型油による悪臭を抑制することができる。除蛋白は、公知の方法に従いまたは公知の方法に準じて行うことができる。レシチンにおけるリン脂質含量に対するホスファチジルコリンの割合が約50%以上の場合に、本発明に係る離型油組成物の発煙が抑制され得る。
本発明に係る離型油組成物は、ホスファチジルコリンを約50%以上含むレシチンを離型油組成物全体に対して約0.1〜10質量%含有せしめることが好ましく、約0.2〜6質量%含有せしめることがより好ましく、約0.3〜4質量%がさらに好ましい。該レシチンの含量が0.1質量%未満では離型性が悪く、また焼成または蒸成時における離型油組成物からの発煙量を抑えることができない。また、10質量%を超える量のレシチンを配合すると、焼成または蒸成に用いる天板上や型ないしは容器に残る油脂量がふえ、風味に悪影響を及ぼす。
なお、本発明において前記レシチン量はアセトン不溶物であるリン脂質換算の量を指し、該リン脂質量は日本油脂化学会編「基準油脂分析試験法 5.3.3.1−86 リン脂質リン組成」に記載の方法により測定することができる。また、本発明において、ホスファチジルコリンの割合は、基準油脂分析試験法 4.3.3.1-1996 リン脂質組成(薄層クロマトグラフ法)に従い分離定量したレシチンに含まれる各リン脂質に由来するリンの総リンに対するホスファチジルコリンに由来するリンの百分率をいう。
本発明に係る離型油組成物には、さらに食用ワックス、植物ステロールまたは有機酸モノグリセライドなど(以下、これらを食用ワックスなどということもある。)が配合されることが好ましい。前記食用ワックスなどが配合されることにより、離型性を更に高めることができる。これら食用ワックスなどは、焼成または蒸成される食品の物性、風味に合わせて適宜選択されるのが好ましい。食用ワックスなどの添加量は本発明に係る離型油組成物に対して約0.01〜5質量%とするのが好ましい。約0.01質量%未満では離型性の向上に役立たず、約5質量%を超える量では焼成または蒸成される食品の風味が悪くなるなどの悪影響を及ぼす。これら食用ワックスなどは、1種単独でも2種以上を混合して配合してもよい。
前記食用ワックスとしては、特に限定されず、動物性ワックスまたは植物性ワックスあるいはそれらの混合ワックスのいずれであってもよく、例えばカルナウバロウ、ライスワックス、キャンデリラロウ、木ロウまたは蜜蝋などが好ましく挙げられ、ライスワックスがより好ましい。
前記植物ステロールとしては、特に限定されず、例えばスチグマステロール、シトステロールまたはカンペステロールなどが好ましく挙げられる。
前記有機酸モノグリセライドとしては、例えば酢酸モノグリセライドまたはクエン酸モノグリセライドが好ましく挙げられる。
本発明に係る離型油組成物は、自体公知の方法で製造することができる。具体的には、上記した食用油脂およびレシチン、さらに所望により食用ワックス、植物ステロール、または有機酸モノグリセライドなどを、例えば攪拌機などで均一に攪拌することにより製造できる。
本発明の離型油組成物を、天板、型または容器と食品生地が接触する天板、型または容器の面に塗布し、離型油組成物が塗布された天板、型または容器を用いて食品生地を焼成または蒸成することにより、焼成または蒸成された食品を製造することができる。離型油組成物の塗布の方法としては、特に限定されず噴霧または刷毛や布などによる離型油組成物の上記面への塗布などが挙げられる。前記食品としては、澱粉や蛋白質などを含み焼成または蒸成された食品であれば特に限定されないが、例えば小麦粉や米粉などの穀物粉あるいはもち米などの穀物に卵、砂糖および水などを配合し、混和して、これを焼成または蒸成することによって製造される食品、例えば焼き団子、どら焼き、ホットケーキ、カステラまたはパンなどの焼成食品または蒸しケーキ、蒸しパンなどの蒸成食品などが好ましく挙げられる。
本発明に係る離型油組成物を食品の焼成に用いる場合、特に約170℃以上の高温で焼成する食品に好ましく使用することでき、焼成食品の連続生産が可能になる。
以下に本発明のいくつかの実施例を示し、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はそのような実施例の記載によって何らの制限を受けるものではない。また、本発明には以下の実施例の他にも、更には上記の具体的記述以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて種々の変更、修正、改良を加え得るものを含む。
試験例1 油脂およびレシチン含有油脂の加熱試験
銅板(厚さ10mm)を185〜195℃になるまで加熱し、下記の油脂およびレシチンを表1の割合で混合して調製した離型油組成物を3分に1回の間隔で塗布し、この操作を30分続け、30分後の銅板の状態や発煙性を確認した。
油脂(*は炭素数14以下の脂肪酸含量を示す):
ナタネ油(0%):なたね白絞油、辻製油株式会社製
パーム油(1.4%):PWLNS(N)、不二製油株式会社製
パーム核油(68.3%):精製パーム核油、不二製油株式会社製
ヤシ油(79.4%):精製ヤシ油、不二製油株式会社製
中鎖トリアシルグリセロール(MCT)(100%):スコレー64HG、日清オイリオグループ株式会社製
レシチン:
大豆レシチン:SLP−ペースト、辻製油株式会社製[アセトン不溶物(リン脂質含量)62質量%(リン脂質に対するホスファチジルコリンの割合:28%)]
大豆分画レシチンPC35:SLP−PC35、辻製油株式会社製[アセトン不溶物(リン脂質含量):65質量%(リン脂質に対するホスファチジルコリンの割合:70%)]
結果を表1に記す。
炭素数14以下の脂肪酸が約82%以上である食用油脂とリン脂質含量に対するホスファチジルコリンの割合が50%以上である大豆分画レシチンPC35(SLP−PC35)を含有する離型油組成物では、高温での焼成後も銅板は黒化せず、油を塗付しないものと変わらなかった(実施例1、2)。また、加熱による油脂からの発煙もほとんど認められなかった(実施例1、2)。一方大豆分画レシチンPC35(SLP−PC35)を含まない油脂では銅板の状態は良好であるが、MCT単独より少ないが発煙性が認められた(比較例1、2)。一方、MCTを等量混合したナタネ油またはパーム油を含み、炭素数14以下の脂肪酸含量は50%前後である油脂を含み、大豆分画レシチンPC35(SLP−PC35)を含まない離型油組成物では、銅板に黒茶色の膜が生じ黒化した(比較例3、4)。表1には示していないが、ナタネ油またはパーム油単独では黒化がさらに著しかった。いずれにしろこれらの油脂では高温での焼成食品の連続生産が不可である。また、焼成後の銅板の状態が良好な実施例1、2の大豆分画レシチンPC35(SLP−PC35)の代わりに通常の大豆レシチンを加えたものでは黒化は起こらないが銅板上に炭化した離型油組成物の粕が残り、連続生産に不適であった(比較例5,6)。なお発煙性もMCT単独の場合よりも低いが、実施例1または2より発煙性は高かった。
炭素数14以下の脂肪酸含量が79.4%のヤシ油に分画レシチンPC35(SLP−PC35)を添加した離型油組成物(比較例7)では、離型油組成物の発煙性は抑えられたが、銅板が黒化し、焼成食品の高温での連続生産が困難となった。
試験例2 離型油組成物の離型性、風味試験
試験例1と同じく、銅板を185〜195℃になるまで加熱し、離型油組成物を銅板に塗付後、該銅板に団子をのせて10秒間焼いた。この操作を10分間繰り返し行い、団子の臭い、風味、離型性を調べた。本発明の実施例1の離型油組成物に以下の添加物:
ライスワックス:SC−7001、セラリカ野田株式会社製
植物ステロール(スチグマステロール、シトステロール及びカンベステロールの混合物):辻製油株式会社製
酢酸モノグリセライド:ポエムG002、理研ビタミン株式会社製(酢酸モノグリセライドラウリン系)
クエン酸モノグリセライド:ポエムK−37V、理研ビタミン株式会社製(クエン酸モノグリセライドオレイン系)
を表2の配合量で加えた離型油組成物(実施例3〜6)を使用して、同様に前記操作を行った。
また、比較例として、上記比較例1の離型油組成物、およびヤシ油(脂肪酸含量:79.4%)99質量部と大豆分画レシチンPC35(SLP−PC35)1質量部の割合で混合した離型油組成物(比較例7)を使用した。
評価は以下の基準:
◎:最も良好、
○:良好、
△:普通、
×:劣る
の4段階で示した。
結果を表2に記す。
ヤシ油とMCTの等量混合油に大豆分画レシチンPC35(SLP−PC35)を配合した実施例1の離型油組成物はくり返し団子を焼成しても銅板の色などが変化せず、焼成品(団子)に適度の焼きめがつき、また団子の風味、臭いが良く良好であった。しかし、団子の連続焼成をくり返すと、団子が銅板からはずれ難くなった。しかし、ライスワックス、植物ステロール、酢酸モノグリセライドまたはクエン酸モノグリセライドを添加した離型油組成物は、最後まで離型性が実施例1より優れていた(実施例3〜6)。一方、大豆分画レシチンPC35(SLP−PC35)を添加していない離型油組成物では発煙性で問題があるばかりでなく、団子材料が銅板に付着し、時間と共にその頻度は大きく離型性で大きな問題があった。また、比較例1の離型油組成物を塗布して生産された団子は、実施例1、3〜6の離型油組成物で生産された団子と比較して臭い、風味の点においても劣った。炭素数14以下の脂肪酸を78.6%含むヤシ油と分画レシチンPC35(SLP−PC35)とを含む離型油組成物を用いる場合(比較例7)であっても離型性に問題があり、臭い、風味の点でも優れたものでなかった。
試験例3 蒸しケーキ試験
混合した卵2個と砂糖50gの中に、溶かしたバター40gを加えて混ぜた。これにホットケーキミックス(森永製菓(株)社製)200gおよび牛乳100mLを順に加えてよく混ぜ、クリーム状にした。ケーキの型(底面積19.6cm、上面積43.0cmの円錐型プラスチック製)の内壁面に離型油組成物1.0gを塗付し、上記の生地50gを入れて、強火で15分間蒸しあげた。
ケーキの物性[ケーキ生地の型の壁面へのくっつきに基づく変形、ケーキ生地に起泡が入ったすだち、ケーキ全体のボリューム(ケーキ全体がふっくらともりあがった状態)]を以下の基準:
◎優れている、
○良好、
△普通、
×劣る
の4段階で評価した。結果を表3に記す。
本発明の実施例1の離型油組成物およびこれにライスワックスを添加した離型油組成物(実施例3)ではケーキの物性が優れていた。しかし、比較例1や、比較例1に大豆分画レシチンPC35(SLP−PC35)を加えたものは、ケーキにすだちが入り、ボリュームも小さかった。即ち本発明の離型油組成物は、蒸しケーキの離型油にも使用し得ることが分かった。
試験例4 蒸しケーキへの離型油組成物の浸透試験
本発明の離型油組成物が蒸しケーキに及ぼす効果を知るため、試験例3と同様の方法で蒸しケーキを作製した。離型油組成物の生地への浸透性を知るため、離型油組成物にβ-カロチン(色素)を添加した。その結果を図1に記す。
図1から明らかなように、本発明の実施例1および3の離型油組成物を塗布して蒸成した蒸しケーキは膨らみ方も均一に大きく、かつ離型油組成物の浸透は蒸しケーキの表面にとどまり、蒸しケーキの中への浸透はほとんど認められなかった(図1の1,2)。一方、炭素数14以下の脂肪酸を含まない比較例3に大豆分画レシチンPC35(SLP−PC35)を添加した離型油組成物を塗布して蒸成した蒸しケーキにおいては、実施例1または3の離型油組成物を塗布して蒸成した蒸しケーキより膨らみ方が少なかった。また、比較例3の離型油組成物は蒸しケーキの表面にとどまらず、蒸しケーキの中まで浸透した(図1の3)。本結果から、炭素数14以下の脂肪酸を含む油脂とリン脂質含量に対するホスファチジルコリンの割合が50%以上であるレシチンとを組み合わせることにより焼成または蒸成食品への油脂の浸透を抑制させることが判明した。
本発明の離型油組成物は、生地の焼成または蒸成時において焼成または蒸成食品への油脂の浸透性が低く、天板や型ないしは容器と焼成または蒸成食品との分離が良好で、特に170℃以上の高温で生地を焼成する焼成食品の連続生産に有用である。
図1は、蒸しケーキの写真を示す。図中、1は実施例1の離型油組成物、2は実施例3の離型油組成物、3は比較例3の油に分画レシチンPC35を1.0質量%添加した離型油組成物を型に塗布して蒸成した蒸しケーキを示す。

Claims (4)

  1. (1)2種類以上の油脂を組み合わせてなり、少なくともヤシ油およびパーム核油のいずれか1種を含む食用油脂であって、油脂の構成脂肪酸としての炭素数14以下の脂肪酸含量が、油脂中の構成脂肪酸全量に対して82%以上である食用油脂と、
    (2)リン脂質含量に対するホスファチジルコリンの割合が50%以上であるレシチンとを含有し、
    前記レシチンの量(リン脂質換算)が離型油組成物全体に対して0.1〜10質量%であることを特徴とする離型油組成物。
  2. 前記(1)の食用油脂が、中鎖トリアシルグリセロールを含むことを特徴とする請求項1に記載の離型油組成物。
  3. さらに、食用ワックス、植物ステロールおよび有機酸モノグリセリドより成る群より選ばれる少なくとも1種を離型油組成物全体に対して0.01〜5質量%含有する請求項1または2に記載の離型油組成物。
  4. 離型剤として請求項1〜3のいずれかに記載の離型油組成物を、天板、型または容器と食品生地が接触する天板、型または容器の面に塗布し、離型油組成物が塗布された天板、型または容器を用いて食品生地を焼成または蒸成することを特徴とする食品の製造方法。
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