以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施の形態による紙葉類取扱装置の断面図である。
その紙葉類取扱装置1は、自動化機器、例えば現金自動預金支払機(ATM)に用いられることを想定した、紙葉類として紙幣を扱うものである。図1に示すように、1枚以上の紙幣を重ねた紙葉類束Bを顧客が挿入した場合に内部に取り込むプレ・アクセプタ(Pre-acceptor)100と、紙幣を収納する下部ユニット200と、及び下部ユニット200とプレ・アクセプタ100間の紙幣の搬送を行う上部ユニット300と、を備えて構成されている。プレ・アクセプタ100は本願発明で云う搬送ユニットに相当する。以降、それは「アクセプタ」或いは「PAC」と表記する。
図2は、アクセプタ100の搬送系の構成を説明する図である。図2に示すように、アクセプタ100は、搬送路102の上方に設けられたクランプ103と、搬送路102の下方に設けられたトレイ104と、そのトレイ104に取り付けられたフック105と、紙幣束Bを搬送路102に沿って搬送するための搬送ベルト106と、搬送ベルト106による紙幣束Bの搬送量を確認するためのエンコーダ107と、搬送路102上の異なる位置に設けられたセンサ109〜112と、搬送路102上の異なる位置に設けられ、搬送路102上への突出、及び退避が行えるストッパ113、114とを備えて構成されている。フック105、ストッパ113、114は、紙幣束Bの搬送方向の交差方向に並べた形で複数、配設されている。
上記エンコーダ107は、搬送ベルト106に動力を伝達するモータの回転に伴い回転するディスク107aと、そのディスク107aの円周上に設けられたスリット検出用のセンサ107bと、を備えている。そのセンサ107bは発光素子、及び受光素子を有する光学センサである。その発光素子から射出された光は、ディスク107aの回転により断続的に遮光される。それにより受光素子からパルス信号が出力され、そのパルス信号をカウントすることで実際の搬送量を特定する。
上記トレイ104は、投入出口101から挿入された紙幣束Bを板状の部材で支持するものである。それに取り付けられたフック105は、搬送路102上への突出、退避が行えるようになっている。紙幣束Bの挿入時には、図2に示すように、紙幣束Bを挿入すべき長さのガイドに用いている。
トレイ104の搬送路102に沿った移動は、図2の視点では搬送ベルト106と重なるように張設されたベルトを用いて行っている。その移動量を特定するために図2に示すようなエンコーダ107を別に用意している。ストッパ113、114については、混乱を避けるために、前面側に設けられたストッパ113をAストッパ、後面側に設けられたストッパ114をDストッパとそれぞれ呼ぶことにする。
上記クランプ103には、紙幣束B搬送用の4本の搬送ベルトが張設されている。そのクランプ103は、挿入された紙幣束Bをトレイ104との間で挟む状態で搬送するために、搬送路102に沿った方向の交差方向に移動できるようにさせている。その移動を可能とするための動力源としては不図示のステッピングモータを採用している。
上記の構成において動作を説明する。紙葉類取扱装置1は、入出金が行えるものである。このことから、動作の説明は、入金時、出金時に分けて説明することとする。それを搭載した自動化機器としてはATMを想定、つまり紙葉類取扱装置1は、ATM本体(制御部)からの指示に従って動作することを想定する。
アクセプタ100に設けられた投入出口101は、顧客が入金のための紙幣束Bの投入、或いは顧客への出金のための紙幣束Bの外部への排出を行うためのものである。ATMに搭載される場合、投入出口101の外側には開閉されるシャッタ(不図示)が配置される。以降、顧客の視点から、アクセプタ100の投入出口101側は前面側、その反対側は後面側とそれぞれ呼ぶことにする。また、下部ユニット200から見て上部ユニット300側を上方、その逆を下方とそれぞれ表現することにする。
始めに、入金時の動作について詳細に説明する。その入金は、例えば顧客がATMの操作部(不図示)を操作して入金を要求することにより行われる。その要求を顧客が行うと、ATM本体はシャッタを開けさせて紙幣束Bの投入出口101への挿入(投入)を行える状態に移行させ、紙葉類取扱装置1には挿入される紙葉類Bの取り込みを指示する。
投入出口101の近傍には、挿入された紙幣束Bを検出するためのセンサ109、110が配設されている。紙葉類取扱装置1は、ATM本体からその指示を受けると、そのセンサ109、110が紙幣束Bを検出するのを待って搬送を行う。その搬送により、紙幣束Bは搬送路102を介して上部ユニット300のセパレータ(SEP)部310に運ばれる。
紙葉類取扱装置1は、顧客が挿入した紙幣束Bを取り込むと、その旨をATM本体に通知する。ATM本体は、その通知によりシャッタを閉じさせる。
セパレータ部310の下部には、紙幣束Bから紙幣を1枚ずつ繰り出すための繰り出し機構311が設けられている。その繰り出し機構311は、例えば周知の構成のものである。具体的には、例えば最も下に位置する紙幣に繰り出し方向の動力を伝達するピックローラ、そのピックローラによって繰り出された紙幣を搬送するフィードローラ、及び紙幣の2重搬送防止用にそのフィードローラと接触する状態に設けられたセパレータを備えた構成のものである。
アクセプタ100がセパレータ部310に搬送することによって、紙幣束Bは図2に示す状態のステージ312上に運ばれる。そのステージ312、及びその上方に位置するプッシャ313は共に上下方向に移動できるようになっている。それにより、繰り出し機構311が紙幣を繰り出せる位置への紙幣束Bの搬送は、ステージ312を下方に移動させることで行われる。ステージ312、プッシャ313の図2に示す位置はそれぞれ移動可能とする範囲のなかでの上端であることから、共に上端、或いは上端位置と呼ぶことにする。
紙幣の繰り出しには、周知のように、紙幣とピックローラを適切な圧力で接触させる必要がある。プッシャ313は、その圧力でそれらを接触させる加圧に用いている。その加圧は、ステージ312を下方に下端まで移動させた後、プッシャ313を下方に移動させて、紙幣束Bの上方から圧力を加えることで行っている。
上記ピックローラは、不図示の弾性部材に支持させて、上下方向に移動可能な状態とさせている。これは、紙幣の繰り出しに適切な圧力が加えられているか否かをピックローラの位置の変化から判定するためである。このため、圧力が加えられることで下方に移動したピックローラを検出するためのセンサを設けている。そのセンサの検出結果を監視して、適切な圧力が加えられるようにプッシャ313を下方に移動させている。このようなことから、ステージ312、プッシャ313を移動させる駆動系はそれぞれ別個に用意している。その移動用の動力源としては共にステッピングモータを採用している。
セパレータ部310から繰り出し機構311によって1枚ずつ繰り出された紙幣は、搬送路301を介して鑑別部320に搬送され、鑑別が行われる。その鑑別により、紙幣が正常券か否かの判別や、正常券の金種の特定が行われる。偽の紙幣、鑑別不能な紙幣、或いは破損しているような紙幣は、異常券と判別される。鑑別後の紙幣は搬送路302を搬送される。
上部ユニット300には、3つのリジェクトボックス351〜3が設けられている。顧客が投入した紙幣を一旦、収納するために一時保留部330が設けられている。一時保留部330に紙幣を収納できるように搬送路303、リジェクトボックス351〜3の何れかに紙幣を収納できるように搬送路304がそれぞれ形成されている。
搬送路302には、紙幣の搬送先を切り換えるために2つの切換爪302a、302bが配設されている。搬送路302を搬送中の紙幣を次に搬送させる搬送路は、切換爪302aによって搬送路303に、切換爪302bによって搬送路304にそれぞれ切り換えることができる。鑑別後の紙幣は、切換爪302aによって搬送路302から搬送路303に送られて一時収納部330に収納される。
一時収納部330には、上下方向に移動可能な2つのステージ331、332が設けられている。ステージ331は異常券と判別された紙幣の収納、ステージ332は正常券と判別された紙幣の収納にそれぞれ用いている。ここでは便宜的に、ステージ331によって実現される収納部をリザーバ部、ステージ332によって実現される収納部をエスクロ部とそれぞれ呼ぶことにする。また、ステージ331はRSVステージ、ステージ332はESCステージとも呼ぶことにする。
それらのステージ331、332は、上下方向に間隔を空けて設けた2つのプーリ333、334の間に張設されたベルト335に取り付けられている。2つのプーリ333、334、及びベルト335は、ステージ別に用意することにより、各ステージ331、332はそれぞれ個別に移動させられるようになっている。
紙幣の搬送先をリザーバ部、及びエスクロ部のなかから選択できるように、搬送路303には切換爪が一つ配設されている。それにより、搬送路303を搬送する紙幣は、リザーバ部、或いはエスクロ部に収納される。搬送路304には、紙幣をリジェクトボックス351〜3のうちの何れかに収納させるために、2つの切換爪が配設されている。
紙幣の鑑別、その鑑別結果に応じた一時保留部330への収納は、セパレータ部310から1枚ずつ繰り出された全ての紙幣に対して行う。このため、セパレータ部310からの紙幣の繰り出しが完了した後は、繰り出された紙幣は一時保留部330のリザーバ部、或いはエスクロ部に収納されていることになる。繰り出しの完了は、セパレータ部310内に紙幣が存在しないことをセンサで確認するか、或いは繰り出しを行っても搬送路301に紙幣が繰り出されないことをセンサで確認することで判定される。
紙幣束Bの形で投入された紙幣の一時収納部330への収納が完了すると、紙葉類取扱装置1はその旨をATM本体に通知する。鑑別部320が正常券と判別した紙幣の枚数を金種毎にカウントして算出した入金額も併せて通知する。それらの通知により、ATM本体は顧客に対して入金額を提示し、取り引きを行うか否か、追加入金の有無、などの問い合わせを行う。以降は、その問い合わせ結果に応じて動作する。
顧客が追加入金を要求した場合、ATM本体は、シャッタを再度、開けさせ、紙葉類取扱装置1には挿入される紙葉類Bの取り込みを指示する。顧客が挿入した紙幣束Bを構成する紙幣は、上述したようにして、一時収納部330のリザーバ部、或いはエスクロ部に収納される。
顧客が取り引きのキャンセルを要求した場合には、ATM本体は紙葉類取扱装置1に取り込んだ紙幣の返却を指示する。その紙幣は通常、一時収納部330のリザーバ部、エスクロ部、或いはそれらの両方に収納されている。紙葉類取扱装置1は、紙幣が収納された場所に応じて、以下のようにして返却を行う。
一時保留部330の上方には、紙幣束Bを搬送するための搬送路305が設けられている。その搬送路305は、一時保留部330に収納された紙幣束Bをアクセプタ100に搬送できるものである。その搬送路305上の紙幣束Bの搬送は、キャリア341を用いて行うようになっている。そのキャリア341は、紙幣束Bを搬送方向の後方から押す形で搬送するためのものである。そのように搬送することにより、紙幣束Bとして重ねられた各紙幣はキャリア341によって支えられる形となる。このため、紙幣束Bは適切、且つ確実に搬送され、重ねられた方向の交差方向に紙幣が搬送中に突出してしまうようなことは確実に回避される。
搬送路305上にはキャリア341に動力を伝達するためのギアが多数、設けられている。キャリア341は、そのギアからの動力伝達により、搬送路305上に設けられたガイド(不図示)に沿って移動するようになっている。それにより、キャリア341に動力を伝達するギアはそのキャリア341の搬送路305上の位置によって異なるようになっている。そのガイドは、各ステージ331、332、312にも設けられている。
紙幣がリザーバ部のみに収納されているケースでは、RSVステージ331を搬送路305上の位置(リリース位置)に移動させる。このとき、キャリア341は、そのリリース位置にあるステージ331の後面側の位置(エスクロ退避位置)に既に移動させている。ステージ331上の紙幣束Bは、そのキャリア341をアクセプタ100の手前の位置(リリース位置)まで移動させた後、アクセプタ100により投入出口101まで搬送する。シャッタを開けさせるために、ATM本体には、例えばキャリア341をリリース位置まで移動させた時点で通知を行う。ステージ331を移動する前のキャリア341の位置、及びATM本体に通知するタイミングは他のケースでも基本的に同様である。
紙幣がエスクロ部のみに収納されているケースでは、RSVステージ331は搬送路305の上に退避させた位置(上端位置)に移動させ、ESCステージ332は搬送路305上の位置(リリース位置)に移動させる。そのステージ332上の紙幣束Bは、キャリア341をアクセプタ100の手前の位置(リリース位置)まで移動させた後、アクセプタ100により投入出口101まで搬送する。
紙幣がリザーバ部、及びエスクロ部の両方に収納されているケースでは、RSVステージ331を搬送路305上の位置(リリース位置)に移動させる。このとき、ステージ312、及びプッシャ313はそれぞれ上端位置に移動させた状態になっている。RSVステージ331上の紙幣束Bは、キャリア341をセパレータ部310に移動させることにより、ステージ312上に運ぶ。次に、ステージ312は下方に移動させ、プッシャ313は、ステージ312の上端位置である合流準備位置に移動させる。プッシャ313を合流準備位置に移動させた後、図1に示すフォーク342をプッシャ313(前面)に向けて突出させる。その突出後、プッシャ313は上端位置に移動させる。
紙幣は弾性を有していることから、折り曲げられた紙幣はその折り曲げられた状態を維持しようとする。それにより、紙幣を単に積み重ねた場合、その高さは各紙幣で働く弾性力によって変化する。折り曲げられた紙幣が多いほど、その高さは高くなる傾向がある。このようなことから、フォーク342は、ステージ312上の紙幣束Bが搬送路305上に突出するのを回避させるために設けている。
そのフォーク342は、合流準備位置の高さに、搬送路305に沿って突出、突出した状態からの退避が行えるように設けられている。その突出が行えるように、プッシャ313には凹部が設けられている。それにより、プッシャ313でステージ312上の紙幣束Bを抑えた状態でフォーク342を突出させ、プッシャ313を上方に移動させた後はフォーク342により紙幣束Bが搬送路305上に突出しないように抑えている。
RSVステージ331上の紙幣束Bをセパレータ部310に搬送させたキャリア341は、エスクロ退避位置に戻す。その後に、各ステージ331、332は順次、上端位置に移動させる。ESCステージ332の上端位置は、RSVステージ331のリリース位置に相当する。それにより、キャリア341を移動させて、ESCステージ332上の紙幣束Bをセパレータ部310に搬送する。
セパレータ部310に搬送することにより、紙幣束Bはフォーク342上に運ばれる。その紙幣束Bが運ばれた後、フォーク342は退避させる。それにより、ステージ312上には、リザーバ部に収納された紙幣束B、エスクロ部に収納された紙幣束Bがその順序で積み重ねられ、一つにまとめられる。一つにまとめた紙幣束Bは、ステージ312を上端位置に移動させることにより、キャリア341でアクセプタ100のリリース位置まで搬送し、更にアクセプタ100により投入出口101に搬送する。それにより、顧客に返却する。
このように、本実施の形態では、リザーブ部、エスクロ部にそれぞれ収納された紙幣を一つにまとめて返却する。これは、それらに収納された紙幣を別々に返却することにより生じる顧客の取り忘れを回避するためである。顧客が取り忘れた紙幣は、例えばリジェクトボックス353に収納する。
顧客が取り引き(入金)を要求した場合には、ATM本体は紙葉類取扱装置1に取り込んだ紙幣の収納を指示する。その紙幣は、一時収納部330のリザーバ部、エスクロ部、或いはそれらの両方に収納されている。紙葉類取扱装置1は、紙幣が収納された場所に応じて、以下のようにして収納を行う。
異常券、つまり正常券と判別されなかった紙幣はリザーバ部に収納される。このため、紙幣がリザーバ部のみに収納されているケースでは、その紙幣は返却する。その際の動作は、顧客のキャンセル要求によりリザーバ部のみに収納された紙幣を返却するケースと基本的に同じである。
紙幣がエスクロ部のみに収納されているケースでは、RSVステージ331は搬送路305の上に退避させた上端位置に移動させ、ESCステージ332は搬送路305上のリリース位置に移動させて、そのステージ332上の紙幣束Bをセパレータ部310に搬送する。搬送した紙幣束Bから紙幣を1枚ずつセパレータ部310に繰り出させ、搬送路301、鑑別部320、及び搬送路302を介して下部ユニット200に搬送する。
下部ユニット200には、収納する紙幣の金種別に着脱可能な紙幣カセット210が搭載される。搭載された各紙幣カセット210内の上部には、紙幣の収納、及び収納された紙幣の繰り出しを行える繰り出し機構211が設けられている。下部ユニット200に搬送された紙幣は、搬送路201を搬送され、その搬送路201に設けられた切換爪により収納すべき紙幣カセット210に誘導されて繰り出し機構211により収納される。それにより、顧客が挿入した紙幣は、その金種別に紙幣カセット210に収納される。
紙幣がリザーバ部、及びエスクロ部の両方に収納されているケースでは、リザーバ部に収納されている紙幣は上述したようにして顧客に返却し、エスクロ部に収納された紙幣のみをセパレータ部310に搬送する。搬送した紙幣は1枚ずつセパレータ部310に繰り出させ、正常券と判別された紙幣は搬送路301、鑑別部320、及び搬送路302を介して下部ユニット200に搬送させて金種別に紙幣カセット210に収納させる。異常券と判別された紙幣は、搬送路301、鑑別部320、搬送路302、及び搬送路304を介してリジェクトボックス351、或いは352に収納する。或いは、例えば一旦リザーバ部に収納した後、セパレータ部310に搬送することにより、異常券の再度の鑑別を行う。
ところで、紙幣を全て繰り出せるとは限らない。全ての紙幣を繰り出せなかった場合、繰り出せなかった紙幣はセパレータ部310に残留することになる。その残留紙幣は、特には図示していないが、一時保留部330に収納した紙幣とまとめて返却するようにしている。そのような返却は、セパレータ部310に搬送したリザーバ部の紙幣をエスクロ部の紙幣とまとめるのと基本的に同じ方法を用いて実現させている。
残留紙幣が存在していると、追加入金された紙幣束Bからの紙幣の繰り出しを行うことはできない。このことから、追加入金時には、特には図示していないが、残留紙幣を返却した後、顧客に紙幣束Bの挿入を促すようにしている。リザーバ部に収納した紙幣が存在する場合には、その紙幣は残留紙幣とまとめて返却するようにしている。これは、取り引き内容を確認した顧客が取り引きを要求、つまりエスクロ部の紙幣を紙幣カセット210に収納する場合も同様である。
次に、出金時の動作について詳細に説明する。その出金は、例えば顧客がATMの操作部を操作して、指定した出金額の出金を要求することにより行われる。その要求を顧客が行うと、ATM本体は紙葉類取扱装置1に出金額分の紙幣の排出を指示する。顧客が所望の紙幣を指定した場合には、その指定内容は紙葉類取扱装置1に通知される。
紙葉類取扱装置1は、ATM本体からその指示を受けると、例えば金種別に繰り出すべき紙幣の枚数を決定し、その決定に従い、紙幣を繰り出すべき紙幣カセット210から紙幣を1枚ずつ繰り出し機構211により繰り出させる。繰り出された紙幣は搬送路201、及び上部ユニット300の搬送路306を介して鑑別部320に搬送され、鑑別される。その鑑別により、正常券と判別された紙幣はエスクロ部に搬送され、異常券と判別された紙幣はリジェクトボックス351、或いは352に搬送される。
繰り出された紙幣を、搬送路201、306を介して鑑別部320に搬送することにより、入金時、出金時ともに搬送路302を利用できるようになる。それにより、1枚ずつ紙幣を搬送する搬送路全体の長さをより短くすることができる。
エスクロ部への紙幣の搬送は、顧客が指定した出金額分の紙幣を収納するまで行われる。その出金額分の紙幣の収納が終了した後は、エスクロ部にのみ収納された紙幣を返却するケースと同様にして、キャリア341をアクセプタ100の手前のリリース位置まで移動させた後、アクセプタ100により投入出口101まで搬送する。
このように、出金時の紙幣も紙幣束Bの状態でアクセプタ100の投入出口101に搬送するようにしている。このため、紙葉類取扱装置1は、投入出口101周辺に確保できるスペースが小さくとも設置できるようになっている。
上記アクセプタ100、下部ユニット200、及び上部ユニット300は、それぞれモジュール化させている。これは以下のような理由からである。
周知のように、ATM等の自動化機器に用いられる紙葉類取扱装置は、金庫内に設置される。その金庫は、同じ金融機関であっても自動化機器によって異なるのが普通である。それにより、紙葉類取扱装置の設置環境、例えば金庫の厚さや、入金用、或いは出金用に設けられた穴の大きさ等は自動化機器によって異なるのが普通となっている。このため、従来は、必要に応じて、設置環境に合った紙葉類取扱装置を設計・製造するようにしていた。
しかし、アクセプタ100、下部ユニット200、及び上部ユニット300をそれぞれモジュール化すると、金庫の壁の厚さにはその厚さ分、紙幣束Bを搬送できるアクセプタ100を採用することにより対応できるようになる。具体的には図15(a)に示すように、金庫500の外側に壁510がある場合には、搬送路102の距離が長いタイプのアクセプタ100を採用すれば良いことになる。また図15(b)に示すように、金庫500のみの場合には、逆に搬送路102の距離が短いタイプのアクセプタ100を採用すれば良いことになる。紙幣の外部への排出、及び外部からの取り入れは紙幣束Bの状態で行うために、金庫に設ける穴は小さくて済むようになる。これらのことから、アクセプタ100、及び上部ユニット300に対する設置環境に応じた設計は基本的に行わなくとも済むようになって、その設計を行う必要性は回避できるようになる。この結果、紙葉類取扱装置1の製造コストはより抑えられるようになり、メーカにとっては納品する紙葉類取扱装置1をより迅速に用意できるようになる。
また、金庫に設けられた扉の位置の違いは、下部ユニット200、或いはそれに収納された紙幣カセット210を動かせる方向の変更により対応できるようになる。このため、下部ユニット200も同様に、設置環境に応じた設計は基本的に行わなくとも済むようになる。それにより、より柔軟に設置環境の違いに対応できるようになっている。
図3は、紙葉類取扱装置1の回路構成図である。
上記アクセプタ100は、センサ群161、モータ群162、及びソレノイド群163を備えた構成となっている。センサ群161は、上記センサ109〜112やエンコーダ107のセンサ107b等から構成されている。モータ群162は、クランプ103を移動させる動力源であるモータ、クランプ103に張設された搬送ベルト、及びその下方に張設された搬送ベルト106の駆動用モータ、トレイ104の移動用モータから構成されている。それらのモータは全てステッピングモータである。フック105、Aストッパ113、及びDストッパ114の突出、退避はソレノイドを用いて行っている。ソレノイド群163は、それらソレノイドから構成されている。
下部ユニット200は、プリント基板(PCB)260の制御により動作する。そのプリント基板260には、モータ群271、272、センサ群273、及びソレノイド群274が接続されている。
モータ群271は、例えば複数のステッピングモータ(パルスモータ)から構成されている。各ステッピングモータは、対応する紙幣カセット210内に設けられたステージを移動させるための動力源に用いられる。モータ群272は、例えば複数のDCモータから構成されている。各DCモータは、対応する紙幣カセット210内に設けられた繰り出し機構211の動力源に用いられる。
センサ群273は、搬送路201上に紙幣検出用に設置されたセンサ、紙幣カセット210の検出用のセンサ(例えばスイッチ)、紙幣カセット210のステージの位置検出用のセンサ、及びそれに収納された紙幣検出用のセンサ、等から構成される。ソレノイド群274は、搬送路201上の切換爪毎に用意された状態切換用のソレノイド、各紙幣カセット210内に用意された繰り出し機構211への動力伝達用のソレノイド等から構成されている。
プリント基板260上には、紙葉類取扱装置1全体の制御を行うCPU261と、そのCPU261が実行するプログラムや各種制御データを格納したROM262と、CPU261がワークに用いるRAM263と、センサ群273を構成するセンサを駆動するセンサ駆動部264と、ソレノイド群274を構成するソレノイドを個別に駆動できるソレノイド駆動部265と、モータ群271を構成するステッピングモータを駆動するモータ駆動部266と、モータ群272を構成するDCモータを駆動するモータ駆動部267と、例えば上部ユニット300と通信を行うための通信インターフェース(I/F)268と、例えばATM本体などの上位の装置と通信を行うための通信インターフェース(I/F)269と、が搭載されている。
上部ユニット300もプリント基板(PCB)360の制御により動作する。そのプリント基板360には、モータ群371、162、DCモータ372、センサ群373、161、ソレノイド群374、163、及び鑑別部320が接続されている。それにより、アクセプタ100は上部ユニット300で制御するようになっている。
モータ群371は、例えば複数のステッピングモータから構成されている。キャリア341、各ステージ312、331、332、及びプッシャ313はそれぞれステッピングモータを動力源にして移動が行われる。DCモータ372は、セパレータ部310から紙幣を繰り出して搬送するための動力源である。
センサ群373は、各搬送路301〜305に紙幣、或いはキャリア341検出用にそれぞれ複数、設置されたセンサ、セパレータ部310に設置された複数のセンサ、一時保留部330に設置された複数のセンサ等から構成される。ソレノイド群374は、搬送路301上の切換爪302a、302b、及び他の搬送路303、304上にそれぞれ設けられた切換爪の状態切換用のソレノイド等から構成されている。
プリント基板360上には、上部ユニット300全体の制御を行うCPU361と、そのCPU361が実行するプログラムや各種制御データを格納したROM362と、CPU361がワークに用いるRAM363と、センサ群373、161を構成するセンサを駆動するセンサ駆動部364と、モータ群371、162を構成するステッピングモータを駆動するモータ駆動部365と、DCモータ372を駆動するモータ駆動回路366と、ソレノイド群374、163を構成するソレノイドを個別に駆動できるソレノイド駆動部367と、鑑別部320との間で信号の送受信を行うインターフェース(I/F)368と、及び下部ユニット200と通信を行うための通信インターフェース(I/F)369と、が搭載されている。
以上の構成において動作を説明する。
各プリント基板260、360上のCPU261、361は、それぞれROM262、362に格納されたプログラムを実行することで制御を行う。CPU261は、通信I/F269を介してATM本体からの指示を受け取り、その指示に従って下部ユニット200の制御を行い、上部ユニット300への指示を行う。その指示は、通信I/F268、369を介して上部ユニット300のCPU361に送られる。
CPU261は、センサ駆動部264にセンサ群273を駆動させることで得られる各種検出結果はその駆動部264から随時、受け取り、上部ユニット300、或いはATM本体から通信された内容は通信I/F268、或いは269から随時、受け取る。それら検出結果、及び通信内容を解析して、ソレノイド駆動部265、モータ駆動部266、267にそれぞれ状況に応じた指示を行う。それにより、CPU261の制御下で下部ユニット200を動作させる。また、通信I/F268、或いは269を介して、通知すべき情報を随時、送信させる。
他方の上部ユニット300のCPU261は、下部ユニット200からの指示により、上部ユニット300、及びアクセプタ100を制御する。その制御は、センサ駆動部364にセンサ群373、161を駆動させることで得られる各種検出結果をその駆動部364から随時、受け取って解析し、ソレノイド駆動部367、モータ駆動部365、モータ駆動回路366、及び鑑別部320にそれぞれ状況に応じた指示をすることで行う。それにより、CPU361の制御下で上部ユニット300、及びアクセプタ100を動作させる。鑑別部320への指示はI/F368を介して行い、下部ユニット200に通知すべき情報は、通信I/F369を介して随時、送信させる。顧客が挿入した紙幣束Bを取り込んだ際には入金額、紙幣の収納時には正常券と判別した紙幣の金種、などがその情報として下部ユニット200に送信される。
各CPU261、361がそのような制御を行うことにより、図1を参照して説明した紙葉類取扱装置1の動作が実現される。
次に、図4〜図9に示す説明図を参照して、アクセプタ100の上部ユニット300への取付方法について詳細に説明する。
図4は、アクセプタ100を上部ユニット300に取り付けた後の状態を示す側面図である。図4に示すように、アクセプタ100、及び上部ユニット300におけるアクセプタ100が取り付けられる近傍はそれぞれフレーム171、381が露出している。
図5は、アクセプタ100を回転可能に上部ユニット300に支持させるための構成を説明する図である。図5(a)は正面図(前面から見た図)であり、同図(b)は側面図である。
図5(a)及び(b)に示すように、フレーム381には端付近にスタッド381が取り付けられている。一方のアクセプタ100のフレーム171の端には、図5(b)に示すように、スタッド381の形状に合わせて形成された凹部172が設けられている。それにより、アクセプタ100は、凹部172内にスタッド381を挿入することで上部ユニット300に軸支される。
図6は、上部ユニット300のアクセプタ100と対向する部分を示す背面図、図7は、その部分を示す側面図である。
アクセプタ100は、側面から見て全体的にはL字形の形状となっている。このため、図7に示すように、上部ユニット300のアクセプタ100と対向する部分はその形状に合わせて形成されている。図7に示す矢印は、上部ユニット300を設置した際の上下方向を示している。
フレーム381の上下方向と交差方向に平行な面には、上下方向に移動可能な部材385が配置されている。その部材385には、その面の下方に設けた台386に支持されているスプリング387によって上向きの弾性力を作用させている。その弾性力としては、アクセプタ100を支えられる大きさのものを作用させている。それにより、図4に示すような状態時では、アクセプタ100を部材385により支えさせている。
図8、及び図9は、アクセプタ100の上部ユニット300への取付方法を説明する図である。
アクセプタ100を上部ユニット300に取り付ける場合、図8に示すように、始めに凹部172内にスタッド382を挿入して軸支させる。それにより、アクセプタ100は側面から見て時計回り、反時計回りに回転可能に支持される。
上部ユニット300のフレーム381には、軸381aでリンク391が取り付けられ、そのリンク391には軸392aによりリンク392が更に取り付けられている。リンク392には、軸393aにより金具393、軸394bによりステー394が取り付けられている。
ステー394にはL字形の穴394aが設けられている。その穴394aには、リンク391に設けられた突起391bが挿入されている。
リンク392の端部には、凹部392bが設けられている。アクセプタ100を軸支させた後は、図9に示すように、その凹部392b内にアクセプタ100に取り付けられたスタッド173を挿入し、そのスタッド173が凹部392bから抜けないように金具393で保持させる。保持させた状態でスタッド173をネジ等によりリンク392に固定する。その固定により、アクセプタ100の取り付けは完了する。取り付け後、ステー394を図9に示す矢印方向に押せば、ステー394によるロックが解除され、アクセプタ100は図9に示す状態から図4に示す状態に移行できるようになる。
このように、本実施の形態では、上部ユニット300に取り付けたアクセプタ100を固定させないようにしている。図4に示す状態では、アクセプタ100は部材305により支えさせている。このため、金庫に入金用、或いは出金用に設けられた穴にアクセプタ100の前面側を挿入するための微調整をアクセプタ100の回転により行うことができる。アクセプタ100はその穴に固定される。
リンク391にはスプリング395により図9に示す視点で時計回りに回転させる弾性力を作用させている。ステー394には、その端部とリンク392間に配置したスプリング396により、リンク392に対して反時計回りに回転させる弾性力を作用させている。リンク391にそのような弾性力を作用させるのは、アクセプタ100を支える力を生じさせるためである。ステー394にそのような弾性力を作用させるのは、アクセプタ100を例えば図4に示す状態から図9に示す状態に移行させた際、ステー394の穴394a内で突起391bを図9に示す状態に自動的に移行させて、アクセプタ100の状態をロックさせるためである。また、リンク391と同様に、アクセプタ100を支える力を生じさせる意味もある。
そのように支える力を生じさせることにより、アクセプタ100はより軽い力で回転させることができる。その支えを失った際には、ゆっくりした速さで図4に示す状態に移行することから、高い安全性や操作性が実現される。また、図9に示す状態にロックさせることができることから、保守・点検作業も容易に行うことができる。そのロックは、複数の状態でロックを行えるようにしても良い。
アクセプタ100と上部ユニット300間の位置関係としては、その間における紙幣束Bの搬送を直線か、或いはほぼ直線で行えるものを前提としている。しかし、アクセプタ100の回転による微調整を行う場合、前提とする位置関係からズレが生じることになる。そのズレには以下のように対応するようにしている。
紙幣束Bを適切に搬送するには、搬送中に紙幣束Bに衝撃を与えないようにすることが望まれる。このことから、紙幣束Bと接触する部材でその衝撃を与えないように、入金時では図12に示すように、ステージ312を通常時より僅かに低い位置とさせている。プッシャ313は通常時と同じ位置か、或いは高い位置とさせる。逆に出金時では、図13に示すように、ステージ312を通常時より僅かに高い位置とさせている。プッシャ313は通常時より低い位置とさせる。そのような位置への変更は、例えば位置検出用のセンサが検出した後の移動量を変えることで行うことができる。
そのような位置への変更を行うための設定は、紙葉類取扱装置1の設置時に係員に行わせれば良い。しかし、例えば図13に示すように、アクセプタ100にプッシャ313検出用のセンサ181を設け、そのセンサ181の検出結果によりアクセプタ100と上部ユニット300間の位置関係の変化に自動的に対応させるようにしても良い。これはステージ312でも同様である。
次に図10、及び図11を参照して、アクセプタ100に設けたセンサ109〜112の配置、及び用途について説明する。
本実施の形態では、投入出口101の近傍に設置したセンサ109〜111間の搬送路102に沿った方向での位置関係は搬送路102の長さが異なるアクセプタ100でも同じとさせている。また、クランプ103の上部ユニット300側の端とセンサ112のその方向での位置関係も同様に同じとさせている。それにより、搬送路102の長さが異なるアクセプタ100間ではセンサ112、111間の位置関係のみ異なるようにさせている。これは以下のような理由からである。
紙葉類束Bは紙幣の長手方向を横にして、つまり短手方向に投入出口101に挿入することを前提としている。センサ109〜111は、投入出口101に挿入された紙幣束Bの検出、及びその紙幣束Bが取り込むべき条件を満たしているか否かの判定に用いられることを想定している。その条件判定のために、特には図示していないが、センサ109は紙幣束Bの搬送方向の交差方向上に複数、並べる形で配設されている。これは、紙幣束Bの長手方向の長さを検出するためである。
それらセンサ109〜111の配置を共通にすると、各センサの検出結果に着目する形で動作させることにより、動作制御用のプログラム(ここではROM362に格納されているプログラムが相当)をアクセプタ100によって変更しなくとも済むようになる。例えば紙幣束Bが条件を満たしているか否かは、アクセプタ100が異なってもセンサ109〜111間の位置関係は同じであるため、制御内容も同じとなる。入金時、取り込みの対象となる紙幣束Bが投入出口101に挿入されたか否かの判定は、図10(a)に示すように、センサ109、110を用いて行っている。紙幣束Bの短手方向の長さチェック、及びその斜行チェックは、図10(b)に示すように、紙幣束Bを搬送して行っている。センサ111、112の位置関係の変化は、センサ112が紙幣束Bを検出するのを待ってその検出後の制御を行うことで対応できる。
これは、排出のために紙幣束Bをアクセプタ100に搬送させる場合も同様である。図11(a)に示すように、アクセプタ100が異なっても、アクセプタ100に上部ユニット300から紙幣束Bが搬送されたことはセンサ112によって検出することができる。それにより、その検出後に図11(b)に示すような動作を行わせれば良いことになる。紙幣束Bをセンサ111が検出した後も同様である。
なお、アクセプタ100に配置するセンサの数や配置位置、それらの間の位置関係は、紙幣束Bの搬送方法や上部ユニット300の構成などに応じて適宜、設定すれば良いものである。また、アクセプタ100の上部ユニット300への取り付け方も適宜、変形させることが望ましい。