JP4569456B2 - 車両用シートのヘッドレスト移動制御方法及び移動制御装置 - Google Patents

車両用シートのヘッドレスト移動制御方法及び移動制御装置 Download PDF

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Description

本発明は、車両用シートのヘッドレスト移動制御方法及び移動制御装置に関する。詳しくは、車両後突時にシート着座者の頭部をヘッドレストによって受け止めるための車両用シートのヘッドレスト移動制御方法及び移動制御装置に関する。
従来、車両用シートのヘッドレストには、シート着座者の頭部を受け止める頭受部分を、頭部の位置に向けて移動させられるようになっているものがある。例えば、特許文献1には、車両後突の際に、この後突を予知または検知して、ヘッドレストの頭受部分を着座者の頭部の位置に向けて接近移動させる技術が開示されている。この開示では、車両後突時に着座者の頭部がヘッドレストと衝突する前に、このヘッドレストの頭受部分を前方移動させて頭部に接近させた状態或いは接触させた状態とする。これにより、車両後突発生時には、比較的早期の段階で着座者の頭部をヘッドレストに受け止めさせることができるため、頸椎の鞭打ち現象の防止を図ることができる。
国際公開第05/073019号パンフレット
しかしながら、上記従来の技術では、ヘッドレストの前方移動により、着座者の頭部が受け止められる位置と、シートバックによって胸部が受け止められる位置と、の間に前後方向の相対的なずれが生じることがある。そして、この頭部と胸部との間に相対的な受止位置のずれが生じることにより、頸部にせん断力の負荷が作用することがある。
本発明は、上記した問題を解決するものとして創案されたものであって、本発明が解決しようとする課題は、車両後突の発生時に、着座者の頭部とヘッドレストとが衝突することによって作用する頸部へのせん断力の負荷を軽減することにある。
上記課題を解決するために、本発明の車両用シートのヘッドレスト移動制御方法及び移動制御装置は次の手段をとる。
先ず、第1の発明は、車両後突時にシート着座者の頭部をヘッドレストによって受け止めるための車両用シートのヘッドレスト移動制御方法であって、車両の後突予知又は検知されたときに、ヘッドレストの一部又は全体を着座者の頭部から離間した初期位置の状態から着座者の頭部に近接又は接触する待受位置まで接近移動させる第1のステップと、第1のステップによって待受位置の状態とされたヘッドレストによって車両の後突に伴って衝突してきた頭部の衝撃力を所定時間受け止める第2のステップと、第2のステップの後となる衝撃力作用中の所定時間経過後に、ヘッドレストの一部又は全体を衝撃力の作用方向に退避移動させ、待受位置と初期位置との間の受止位置の状態としたヘッドレストによって頭部の衝撃力を更に所定時間受け止める第3のステップと、を有するものである。
この第1の発明によれば、車両後突が予知又は検知されると、ヘッドレストの一部又は全体が、第1のステップによって、初期位置の状態から着座者の頭部に近接又は接触する待受位置まで接近移動した状態となる。そして、この待受位置の状態とされたヘッドレストによって、車両の後突に伴って衝突してきた頭部の衝撃力が所定時間受け止められる(第2のステップ)。そして、この第2のステップの後となる衝撃力作用中の所定時間経過後に、ヘッドレストの一部又は全体が衝撃力の作用方向に退避移動して、待受位置と初期位置との間の受止位置の状態とされたヘッドレストによって頭部の衝撃力が更に所定時間受け止められる(第3のステップ)。これにより、頭部の衝撃力がヘッドレストによって受け止められる位置が、胸部がシートバックによって受け止められる位置に近づけられ、これらの受け止め位置のずれによって生じる頸部にかかるせん断力の作用が軽減される。
次に、第2の発明は、車両後突時にシート着座者の頭部をヘッドレストによって受け止めるための車両用シートのヘッドレスト移動制御装置であって、ヘッドレストの一部又は全体を移動させる駆動手段と、駆動手段の作動を制御する制御装置と、を有する。制御装置は、車両の後突予知又は検知されたときに、駆動手段を作動制御して、着座者の頭部がヘッドレストと衝突する前にヘッドレストの一部又は全体着座者の頭部から離間した初期位置の状態から着座者の頭部に近接又は接触する待受位置まで接近移動させ、この待受位置の状態とされたヘッドレストによって車両の後突に伴って衝突してきた頭部の衝撃力を所定時間受け止めさせ、更に、衝撃力作用中の所定時間経過後に退避手段によってヘッドレストの一部又は全体を衝撃力の作用方向に退避移動させ、待受位置と初期位置との間の受止位置の状態としたヘッドレストによって頭部の衝撃力を更に所定時間受け止めさせるようになっている。
この第2の発明によれば、車両後突が予知又は検知されると、制御装置による駆動手段の作動制御によって、ヘッドレストの一部又は全体が、初期位置の状態から着座者の頭部に近接又は接触する待受位置まで接近移動した状態となる。そして、この待受位置の状態とされたヘッドレストによって、車両の後突に伴って衝突してきた頭部の衝撃力が所定時間受け止められる。そして、この衝撃力作用中の所定時間経過後に、ヘッドレストの一部又は全体が衝撃力の作用方向に退避移動して、待受位置と初期位置との間の受止位置の状態とされたヘッドレストによって頭部の衝撃力が更に所定時間受け止められる。これにより、頭部の衝撃力がヘッドレストによって受け止められる位置が、胸部がシートバックによって受け止められる位置に近づけられ、これらの受け止め位置のずれによって生じる頸部にかかるせん断力の作用が軽減される。
次に、第3の発明は、上述した第2の発明において、退避手段は、駆動手段に備えられた駆動用モータの逆転駆動であることを特徴とする。
この第3の発明によれば、駆動用モータを逆転駆動させることにより、ヘッドレストの一部又は全体が、接近移動方向とは逆の退避方向に移動する。
本発明は上述した手段をとることにより、次の効果を得ることができる。
先ず、第1の発明によれば、車両後突時に、着座者の頭部を待受位置へ移動させたヘッドレストによって一旦受け止めさせ、その衝撃力作用中の所定時間経過後に、ヘッドレストを受止位置へと退避移動させて、胸部がシートバックによって受け止められる位置に近づけた位置で着座者の頭部をヘッドレストによって所定時間受け止める構成としたことにより、着座者の頭部とヘッドレストとが衝突することによって作用する頸部へのせん断力の負荷を軽減することができる。
更に、第2の発明によれば、車両後突時に、着座者の頭部を待受位置へ移動させたヘッドレストによって一旦受け止めさせ、その衝撃力作用中の所定時間経過後に、ヘッドレストを受止位置へと退避移動させて、胸部がシートバックによって受け止められる位置に近づけた位置で着座者の頭部をヘッドレストによって所定時間受け止める構成としたことにより、着座者の頭部とヘッドレストとが衝突することによって作用する頸部へのせん断力の負荷を軽減することができる。
更に、第3の発明によれば、ヘッドレストを待受位置へ移動させる駆動用モータの逆転駆動によってヘッドレストを受止位置へ移動させる構成としたことにより、ヘッドレストを上記各位置へ移動させる構成を簡便に得ることができる。
以下に、本発明を実施するための最良の形態の実施例について、図面を用いて説明する。
始めに、実施例1の車両用シートのヘッドレスト移動制御方法及び移動制御装置について、図1〜図7を用いて説明する。図1は車両用シートのヘッドレスト移動制御装置の概略構成を表した側面図である。図2は着座者Pの着座姿勢状態とヘッドレスト4の動作状態を表した側面図である。図3はヘッドレスト本体10の内部構造及び駆動装置20の構成を表した側面図である。図4は駆動装置20の構成を表した要部拡大斜視図である。図5はヘッドレスト移動制御装置の系を表したブロック線図である。図6はヘッドレスト移動制御装置の処理の手順を表したフローチャートである。図7は車両衝突発生時に着座者にかかる頭部G及び胸部GとNICとの関係の一例を表したグラフである。以下、車両用シートのヘッドレスト移動制御装置を、単にヘッドレスト装置と略称して説明する。
本実施例のヘッドレスト装置は、図1に良く示されるように、車両のシート1に備えられている。このシート1は、着座者Pの背もたれ部となるシートバック2と、着座部となるシートクッション3と、頭部hの受け止め部となるヘッドレスト4と、を有する。
詳しくは、図2の実線状態で示されるように、ヘッドレスト4は、ヘッドレスト本体10の脚部に取り付けられた2本のステー14がシートバック2の上面側に差し込まれることにより固定されている。ここで、ヘッドレスト4は、着座者Pがシートバック2に凭れ掛かった着座姿勢となるときに頭部hが当たる位置に設定されている。すなわち、ヘッドレスト4により頭部hが受け止められる前後方向の位置は、シートバック2により胸部cが受け止められる位置とほぼ同じ位置に設定されている。これにより、着座者Pを、自然な姿勢状態でシート1に着座させることができる。
しかし、上記した着座者Pの着座姿勢は、実際には、図2の実線状態で示されるように、腰部wの辺りをシートバック2に凭れ掛けさせ、胸部cや頭部hをシートバック2やヘッドレスト4から浮かした姿勢状態となっていることが多い。したがって、このような浮いた姿勢状態でいるときに、車両の後突が発生すると、シートバック2やヘッドレスト4から離間して位置する胸部cや頭部hが、慣性の作用によってシートバック2やヘッドレスト4に向けて附勢されて強く当たる。具体的には、車両後突が発生すると、先ず、頭部hに先行して胸部cがシートバック2に向けて附勢され、これに当たる。次いで、頭部hがヘッドレスト4に向けて附勢され、これに当たる。したがって、このように両者の衝撃力が受け止められるタイミングが異なると、頭部hが前後方向に揺さ振られ、頸椎の鞭打ちを招くことがある。
ここで、頸椎の鞭打ち損傷を評価する指標の1つとして、NICが知られている。このNICによる評価指標では、図7に示される関係から分かるように、車両後突時にかかる頭部G(破線で示された附勢加速度)に対する胸部G(二点鎖線で示された附勢加速度)の上回り量が大きくなるほど、頸椎の鞭打ち損傷が起こり易くなるとしている。したがって、胸部Gが頭部Gを上回る領域を低減させることが、頸椎の鞭打ち現象の防止に効果的となる。
そこで、本実施例のヘッドレスト装置では、図2の仮想線で示されるように、車両後突発生時に、胸部cや頭部hが後方に附勢される前に、予め、ヘッドレスト4の一部(頭受部12)を頭部hに接触する待受位置まで接近移動させるようにしている。これにより、車両後突発生時には、比較的早期の段階で頭部hをヘッドレスト4に受け止めさせることができる。すなわち、頭部hが受け止められる時期を、胸部cが受け止められる時期と近づけることができる。これを図7の関係で説明すれば、頭部Gが立ち上がる時間軸(横軸)の位置を、胸部Gが立ち上がる時間軸の位置に近づけているということである。これにより、胸部Gが頭部Gを上回る領域を低減させてNICを低減させることができ、頸椎の鞭打ち現象を効果的に防止することができる。
しかし、一方では、図2の仮想線状態で示されるように、上記のようにヘッドレスト4が単独で前方移動することにより、ヘッドレスト4によって頭部hが受け止められる位置と、シートバック2によって胸部cが受け止められる位置と、の間に前後方向の相対的なずれが生じることがある。かかる場合、頭部hと胸部cとの間で衝撃力の作用分布が偏向し、この間に位置する頸部nにせん断力の負荷が作用する。ここで、頸部nにかかるせん断力の負荷を評価する指標の1つとして、Nkmが知られている。この評価指標によれば、頸部nにかかるせん断力の負荷は、前述したNICの作用に対して時間的に遅れて作用するとされている。そして、頸部nにかかるせん断力の負荷を軽減させるには、頭部hが受け止められる位置と胸部cが受け止められる位置との間の前後方向の相対的なずれを低減させることが効果的であるとしている。
そこで、このヘッドレスト装置では、上記NICやNkmの評価指標を満足するために、ヘッドレスト4を次のように移動制御するようにしている。
すなわち、車両後突発生時には、先ず、図2の実線位置(初期位置)にあるヘッドレスト4の頭受部12を、着座者Pの頭部hに接触する待受位置(仮想線位置)まで移動させておく。そして、図1に良く示されるように、この待受位置(実線位置)状態のヘッドレスト4によって、車両後突に伴って衝突してきた頭部hの衝撃力を一旦受け止めさせる。そして、この状態位置で頭部hの衝撃力を一定の時間受け止める。これにより、頭部Gが胸部Gを上回る(図7参照)まで頭受部12の衝撃力を受け止めることができる。そして、頭部Gが胸部Gを上回ったら、待受位置(図1の実線位置)にあるヘッドレスト4の頭受部12を、シート1の後方に向けて退避させた受止位置(仮想線位置)まで移動させる。これにより、ヘッドレスト4により頭部hが受け止められる位置と、シートバック2により胸部cが受け止められる位置と、の間の前後方向の相対的なずれを低減させることができる。そして、この退避移動させた受止位置(仮想線位置)にて、その後の頭部hの衝撃力を受け止めさせる。そうすることにより、頚椎の鞭打ち現象の防止と、頸部nにかかるせん断力の負荷の軽減と、の両者を満足する支持を行うことができる。
以下、ヘッドレスト装置の構成について詳細に説明する。
先ず、ヘッドレスト本体10について説明する。
すなわち、ヘッドレスト本体10は、図3に良く示されるように、ステー14を取り付ける基部11と、頭部hを受け止める頭受部12と、が前後方向に分割されて形成されている。そして、これら基部11と頭受部12は、展開・収縮運動可能に構成された駆動装置20によって連結されている。ここで、駆動装置20は、制御装置26によって作動制御されており、同図の実線状態と仮想線状態とで示されるように、X字状に組み付けられた揺動リンク21,22を、連結ピン23の回りに揺動させる運動を行う。これにより、揺動リンク21,22がハサミの開閉運動のように運動し、それらの前端側に取り付けられた頭受部12が、後端側に取り付けられた基部11に対して、相対的に離間移動したり接近移動したりする。ここで、駆動装置20が本発明の駆動手段に相当する。
ここで、基部11は、金属板からなる取付ブラケット11aと、取付ブラケット11aに一体に取り付けられたパッド11bと、パッド11bを外部に対して被覆する表皮11cと、を有する。
詳しくは、取付ブラケット11aは、図4に良く示されるように、その両側の端部が前方に向けて折り曲げられており、コ字状に形成されている。また、図3に良く示されるように、この取付ブラケット11aの脚部には、2本のステー14が嵌合されて一体に取り付けられている。
次いで、パッド11bは、ウレタン樹脂が発泡成形されて形成されており、取付ブラケット11aの背裏面に一体に取り付けられている。
次いで、表皮11cは、上記パッド11bの全体を覆うようにして張設されており、その各周縁部位が取付ブラケット11aに固着されている。
また、取付ブラケット11aの両外側部には、基部11の両側部を外部に対して被覆する側壁部材11eが取り付けられている。この側壁部材11eは、樹脂によって板状に形成されている。
次に、頭受部12は、基部11とほぼ対応する構成を備えている。すなわち、金属板からなる取付ブラケット12aと、取付ブラケット12aに一体に取り付けられたパッド12bと、パッド12bを外部に対して被覆する表皮12cと、を有する。
詳しくは、取付ブラケット12aは、図4に良く示されるように、その両側の端部が後方に向けて折り曲げられており、コ字状に形成されている。
次いで、図3に良く示されるように、パッド12bは、ウレタン樹脂が発泡成形されて形成されており、取付ブラケット12aの前側面に一体に取り付けられている。
次いで、表皮12cは、上記パッド12bの全体を覆うようにして張設されており、その各周縁部位が取付ブラケット12aに固着されている。
また、取付ブラケット12aの両外側部には、頭受部12の両側部を外部に対して被覆する側壁部材12eが取り付けられている。この側壁部材12eは、樹脂によって板状に形成されている。ここで、側壁部材12eの設置間寸法は、基部11に取り付けられた側壁部材11eの設置間寸法よりもひとまわり小さくなっており、両側壁部材11eに挟まれるようにして配置されている。したがって、側壁部材12eは、頭受部12が基部11から離間移動する際には、側壁部材11eと板面を摺動させるようにして移動する。そして、側壁部材12eは、頭受部12が基部11に接近移動する際には、両側壁部材11eの間に嵌め込まれるようにして収納される。
ここで、基部11と頭受部12との間には、これらが互いに離間移動した際に露呈する上面側の内部空間を被覆する遮蔽シート13が取り付けられている。詳しくは、遮蔽シート13は、可撓性の布状部材によって形成されており、基部11の上端面部と、頭受部12の上端面部と、にそれぞれ固着されている。この遮蔽シート13は、頭受部12を離間移動させる前の収縮状態(図3の仮想線状態)では、基部11との間に折り畳まれた収納状態とされている。そして、頭受部12を離間移動させることにより、遮蔽シート13が展開されて基部11と頭受部12との間を上面側から被覆した状態となる。
次に、駆動装置20について説明する。
すなわち、駆動装置20は、図4に良く示されるように、揺動リンク21,22、連結軸24、駆動用モータ25及び制御装置26を有する。
詳しくは、揺動リンク21,22は、ヘッドレスト本体10の両外側部に一対で設けられている。これら揺動リンク21,22は、各々の中央部が連結ピン23により回動可能に連結されている。そして、揺動リンク21の前後の端部は、それぞれ、ピン21a,21bによって、基部11の取付ブラケット11aと頭受部12の取付ブラケット12aとに回動可能に連結されている。また、揺動リンク22の前後の端部は、それぞれ、ピン22a,22bによって、基部11の取付ブラケット11aと頭受部12の取付ブラケット12aとに対して上下方向にスライド移動可能に連結されている。詳しくは、前端側のピン22aは、取付ブラケット12aに形成された上下方向の長孔12d内に、スライド移動可能に組み付けられている。そして、後端側のピン22bは、取付ブラケット11aに形成された上下方向の長孔11d内に、スライド移動可能に組み付けられている。
次いで、連結軸24は、対向配置された揺動リンク22同士を、後端側のピン22bの位置で連結している。これにより、対向配置された揺動リンク21,22の開閉運動を同期させている。
次いで、駆動用モータ25は、基部11の取付ブラケット11aに固定されて設けられている。この駆動用モータ25は、制御装置26からの作動制御に基づいて、正転・逆転する。そして、この正転・逆転の動きに合わせて、これに連結された送りネジ25aを、図4で示す上下方向に移動させる。ここで、送りネジ25aは、その下端部が、連結軸24と連結されている。したがって、駆動用モータ25を正転・逆転駆動させることにより、連結軸24を上下動させて、揺動リンク21,22の開閉運動を行うことができる。ここで、揺動リンク21,22の開閉幅は、ピン22a,22bがそれぞれスライド移動する長孔11d,12dの長さ寸法によって規制されている。本実施例では、揺動リンク21,22の開閉幅を、頭受部12を前後方向に50mm移動させる長さに設定している。
次いで、制御装置26は、図5に良く示されるように、着座センサSsや頭部センサShからの検知信号に基づいて、駆動用モータ25の作動制御を行うように構成されている。なお、図示では省略されているが、制御装置26は、車両の後突を予知するセンサからの検知信号に基づいて、上記作動制御を行うようになっている。ここで、着座センサSsは、図2に良く示されるように、シートクッション3の着座面側に埋め込まれて設置されており、着座者Pの着座を検知するようになっている。また、頭部センサShは、図3に良く示されるように、頭受部12の頭受面側に埋め込まれて設置されており、頭部hに対する相対位置を非接触状態で検知するようになっている。これら着座センサSsや頭部センサShは、周知のものであるため、詳しい構成の説明は省略する。
次に、図6を用いて、制御装置26の作動制御、すなわちヘッドレスト4の位置制御の処理手順について説明する。なお、以下の説明において、ヘッドレスト4や頭受部12等の各構成については、図1及び図2を適宜参照することとする。
すなわち、ヘッドレスト4の位置制御は、大きくは、ステップT1における車両後突の予知、ステップT3における頭受部12と頭部hとの距離及びステップT5における車両後突予知後の経過時間の検知信号に基づいて行われる。なお、図中、フラグF1〜F3の初期値は、0となっている。
先ず、ステップT1において、車両後突が予知されると、フラグF1に1が立てられて、頭受部12の前方移動が始まる(ステップT2)。そして、この前方移動の進行により、頭受部12と頭部hとの距離Lが所定値X以内に近づいたら(ステップT3)、フラグF2に1が立てられて、頭受部12の移動が停止させられる(ステップT4)。すなわち、ここまでのステップにより、図2の仮想線で示されるように、頭受部12を、着座者Pの頭部hに接触する待受位置まで接近移動させている。ここで、上記接近移動にかかるステップが本発明の第1のステップに相当する。
次に、車両後突に伴って頭部hの衝撃力が頭受部12にかかったら、所定の時間が経過するまで、待受位置にて頭部hの衝撃力を一旦受け止める(ステップT5)。このステップT5が本発明の第2のステップに相当する。ここで、所定の時間とは、例えば前述したように、頭部Gが胸部Gを上回ることによってNICが収束するまでの時間のことである。この所定時間の経過は、車両後突予知からの経過時間によって定めることができる。すなわち、車両後突時における着座者Pの挙動は、衝突後の経過時間によってある程度推定することができるからである。そして、上記の所定時間が経過したら、頭受部12を受止位置(図1の仮想線位置)まで後方移動させ(ステップT6)、この受止位置にて頭部hの衝撃力を受け止める。そして、フラグF3に1が立てられる。ここで、受止位置にて頭部hの衝撃力を受け止めるまでのステップが本発明の第3のステップに相当する。この頭受部12の後方移動は、先に図3を用いて説明したように、駆動用モータ25の作動制御によって行われるため、頭部hが後方に附勢される附勢加速度と比べて遅くなりがちである。したがって、この頭受部12の後方移動の間、かかる相対加速度の差異により、ヘッドレスト4に頭部hの衝撃エネルギを吸収させることができる。
そして、車両後突に伴う一連の衝突現象が収束した所定時間経過後(ステップT7)には、頭受部12が図2の実線で示される初期位置まで戻され(ステップT8)、処理は終了する。
なお、本実施例の使用方法については、上記フローチャートの処理手順によって説明されているため、省略する。
このように、本実施例のヘッドレスト装置及びヘッドレスト制御方法によれば、車両後突の発生時には、着座者Pの頭部hとヘッドレスト4とが強く当たることによって作用する頸部nへのせん断力の負荷を軽減することができる。そして、この頸部nへのせん断力の負荷を軽減する作動制御は、駆動用モータ25を逆転駆動させるという既存構成を用いた制御によって簡単に行うことができる。
以上、本発明の実施形態を1つの実施例について説明したが、本発明は上記実施例のほか各種の形態で実施できるものである。
例えば、ヘッドレストの移動制御を、車両の後突の検知するセンサからの検知信号に基づいて行っても良い。この場合には、図6で示したステップT5の所定時間の算出は、例えば車両後突検知後の経過時間として算出することができる。なお、この所定時間の算出は、上記車両後突にかかる経過時間からではなく、頭部とヘッドレストとの衝突時からの経過時間として算出することもできる。また、時間経過による算出以外にも、例えば、ヘッドレストにかかる頭部の衝撃荷重や附勢加速度を測定して、これが所定値以上になったことを検知するものであっても良い。また、胸部Gと頭部Gとの差異に基づくものであっても良い。
また、頭受部の待受位置として、頭部と接触する位置を示したが、頭部に近接する位置であってもよい。
車両用シートのヘッドレスト移動制御装置の概略構成を表した側面図である。 着座者の着座姿勢状態とヘッドレストの動作状態を表した側面図である。 ヘッドレスト本体の内部構造及び駆動装置の構成を表した側面図である。 駆動装置の構成を表した要部拡大斜視図である。 ヘッドレスト移動制御装置の系を表したブロック線図である。 ヘッドレスト移動制御装置の処理の手順を表したフローチャートである。 車両衝突発生時に着座者にかかる頭部G及び胸部GとNICとの関係の一例を表したグラフである。
符号の説明
1 シート
2 シートバック
3 シートクッション
4 ヘッドレスト
10 ヘッドレスト本体
11 基部
11a 取付ブラケット
11b パッド
11c 表皮
11d 長孔
11e 側壁部材
12 頭受部
12a 取付ブラケット
12b パッド
12c 表皮
12d 長孔
12e 側壁部材
13 遮蔽シート
14 ステー
20 駆動装置(駆動手段)
21 揺動リンク
21a,21b ピン
22 揺動リンク
22a,22b ピン
23 連結ピン
24 連結軸
25 駆動用モータ
25a 送りネジ
26 制御装置
P 着座者
h 頭部
c 胸部
n 頸部
w 腰部
Sh 頭部センサ
Ss 着座センサ

Claims (3)

  1. 車両後突時にシート着座者の頭部をヘッドレストによって受け止めるための車両用シートのヘッドレスト移動制御方法であって、
    車両の後突予知又は検知されたときに、ヘッドレストの一部又は全体を着座者の頭部から離間した初期位置の状態から着座者の頭部に近接又は接触する待受位置まで接近移動させる第1のステップと、
    該第1のステップによって待受位置の状態とされたヘッドレストによって車両の後突に伴って衝突してきた頭部の衝撃力を所定時間受け止める第2のステップと、
    該第2のステップの後となる前記衝撃力作用中の所定時間経過後に、前記ヘッドレストの一部又は全体を前記衝撃力の作用方向に退避移動させ、前記待受位置と前記初期位置との間の受止位置の状態とした前記ヘッドレストによって頭部の衝撃力を更に所定時間受け止める第3のステップと、
    を有することを特徴とする車両用シートのヘッドレスト移動制御方法。
  2. 車両後突時にシート着座者の頭部をヘッドレストによって受け止めるための車両用シートのヘッドレスト移動制御装置であって、
    前記ヘッドレストの一部又は全体を移動させる駆動手段と、
    該駆動手段の作動を制御する制御装置と、
    を有し、
    前記制御装置は、車両の後突予知又は検知されたときに、前記駆動手段を作動制御して、着座者の頭部が前記ヘッドレストと衝突する前に前記ヘッドレストの一部又は全体着座者の頭部から離間した初期位置の状態から着座者の頭部に近接又は接触する待受位置まで接近移動させ、該待受位置の状態とされたヘッドレストによって車両の後突に伴って衝突してきた頭部の衝撃力を所定時間受け止めさせ、更に、該衝撃力作用中の所定時間経過後に退避手段によって前記ヘッドレストの一部又は全体を前記衝撃力の作用方向に退避移動させ、前記待受位置と前記初期位置との間の受止位置の状態とした前記ヘッドレストによって頭部の衝撃力を更に所定時間受け止めさせることを特徴とする車両用シートのヘッドレスト移動制御装置。
  3. 請求項2に記載の車両用シートのヘッドレスト移動制御装置であって、
    前記退避手段は、前記駆動手段に備えられた駆動用モータの逆転駆動であることを特徴とする車両用シートのヘッドレスト移動制御装置
JP2005349408A 2005-12-02 2005-12-02 車両用シートのヘッドレスト移動制御方法及び移動制御装置 Expired - Fee Related JP4569456B2 (ja)

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