JP4569185B2 - フィルム構造体の形成方法及びフィルム構造体 - Google Patents
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例えば、Si基板上に薄いプラスティック膜を成膜し、プラスティックのガラス転移点以上の温度にこのSi基板を加熱してナノサイズのパターンを有するモールドを高い圧力で押し当て、モールドの反転パターンを転写する方法が提案されている(例えば非特許文献1参照。)。
S. Y. Chou, P. R. Krauss, and P. J. Renstrom, Applied Physics Letters, Vol.67, No.21, pp3114-3116,(1995) Q.Xia, C.Keimel, H.Ge, Z.Yu, W.Wu, and S.Y.Chou, Applied Physics Letters, Vol.83, No.21, pp4417-4419,(2003)
ところが、この方法による場合においても、これを大面積化することは容易ではない。大面積Si基板を用いることは、大面積Si基板の取り扱い、搬送からして困難であり、現在のLSIプロセスでも直径300nm程度のSi基板が限界である。仮に、Si基板から液晶デバイス向けの大型ガラス基板を用いることにしても、大面積になると基板の重量が無視できなくなり、作製したデバイスの重量の大部分をこの基板が占めるようになってしまい種々の制約が生じる点はSi基板の場合と同様である。
また、本発明は、上述のフィルム構造体の形成方法において、フィルムの表面と光吸収層との間に材料層を設け、フィルム薄膜に形成した凹凸パターンをマスクとしたエッチングにより光吸収層に凹凸パターンを形成し、光吸収層に形成した凹凸パターンをマスクとしたエッチングにより材料層に凹凸パターンを転写形成することを特徴とする。
更に、本発明は、上述のフィルム構造体の形成方法において、光吸収層及びフィルムに照射する光の光源として、エキシマーレーザを用いることを特徴とする。
また、本発明によるフィルム構造体は、フィルム上に、このフィルムとは異なり、選択的に光を吸収する材料より成る光吸収層が、表面から10μmの範囲に形成され、この光吸収層上に形成された他の材料層に、凹凸パターンが形成されて成ることを特徴とする。
また、このフィルム構造体の形成方法において、フィルムの表面と光吸収層との間に材料層を設け、フィルム薄膜に形成した凹凸パターンをマスクとしたエッチングにより光吸収層に凹凸パターンを形成し、光吸収層に形成した凹凸パターンをマスクとしたエッチングにより材料層に凹凸パターンを転写形成することによって、例えば材料層として、金属や各種光学的特性を有する材料などを用いることによって、回折格子やこれを利用した偏光分離素子などの光学装置などに適用し、その大面積化が可能となる。
また、本発明のフィルム構造体の形成方法において、モールドに設ける光吸収層として、Siを用いることにより、確実に光吸収による加熱を行うことができる。
更に、上述のフィルム構造体の形成方法において、光吸収層及びフィルムに照射する光として、エキシマーレーザを用いることによって、同様に光吸収による加熱を確実に行うことができる。
また、本発明によるフィルム構造体は、フィルム上に、このフィルムとは異なる材料より成る材料層が形成され、この材料層又は材料層上に形成された他の材料層に、凹凸パターンが形成されて成る構成とすることによって、上述の本発明によるフィルム構造体の形成方法を適用して大面積のフィルム構造体を容易に形成することが可能となる。
図1は、微細構造を有するプラスティックより成るフィルム構造体の形成方法に本発明を適用した場合の一工程を示す概略断面図である。この例においては、使用するモールド3は、石英等より成る基板6の上に、Siより成る光吸収層5を有しており、光吸収層5には例えばナノサイズの凹凸パターン4が作製されて成る。
そしてこのモールド3を、石英等の窓を有する設置台(図示せず)に載置し、次にプラスティックより成るフィルム10をこのモールド3の上に配置して、その上に加圧するための加圧手段2を設置して矢印Fで示すように圧力を加える。この状態で、モールド3の基板6の下方から紫外線レーザ等の光を矢印Lで示すように照射して、モールド3のナノサイズの凹凸パターン4をプラスティックより成るフィルム10に転写する。
モールド3は、石英等より成る基板6上に例えばナノサイズの凹凸パターン4を有するSiより成る光吸収層5で構成され、この上に例えばプラスティックより成るフィルム10が配置され、その上から加圧手段2が載せられる。この状態で、フィルム10に加圧手段2の上方から矢印Fで示すように圧力を印加し、基板6の下方から紫外線レーザ等の光を矢印Lで示すように照射する。
これにより、紫外線レーザ光Lは選択的にSiより成る光吸収層5に吸収され、加熱される。紫外線レーザ光の強度は、光吸収層5の温度が短時間プラスティックフィルムのガラス転移点以上になり、且つこの光吸収層5の凹凸パターンを崩すことのない程度に調節される。これにより、フィルム10は、極短時間だけ表面層のみがガラス転移点以上の温度になるため、フィルム全体が加熱されて軟化することを回避できる。すなわち、図2Cに示すように、凹凸パターン4の転写を正確に表面層のみに行って、フィルム10上にナノサイズの凹凸パターン4が反転したパターンの転写凹凸パターン14を形成することができる。
そして、フィルム10からモールド3及び加圧手段2を取り除き、目的とするパターンが転写されたフィルム構造体20を得ることができる。
なお、このようなローラーを用いるフィルム構造体の形成方法において、ローラーに被着する薄膜モールド8としては、上記フィルム状の基材の上に凹凸パターンを有する光吸収層が設けられた構成の他、光吸収層上に、凹凸パターンを有する他の材料より成る材料層が設けられていてもよく、また、凹凸パターンを有する光吸収材料より成る基材を多数枚ローラー表面に被着して薄膜モールドを構成するなど、その他種々の構成を採ることが可能である。
この例においては、フィルム上に、このフィルムとは異なる材料より成る材料層が形成され、この材料層又は材料層上に形成された他の材料層に、凹凸パターンが形成されて成るいわば多層構造のフィルム構造体を得る場合を示す。これは、予めフィルムに加工を施す手間を要するが、モールドの作製が容易になり、且つフィルムを更に加工する際に応用が可能となるという利点を有する。
先ず、図4Aに示すように、プラスティック等よりなるフィルム10上に、Si等より成る光吸収層15を成膜し、更にその上層にフィルム10と同じ例えばプラスティック材料、または例えば熱硬化樹脂、紫外線硬化樹脂等より成るフィルム薄膜16を積層する。すなわち、この例においては、光吸収層をモールド側ではなく、フィルム表面近傍に設ける場合を示す。
このような構造とするフィルム10に対し、凹凸パターンを有するモールド3を、フィルム薄膜16の上面に配置し、またフィルム10の裏面側から、図4Bに示すように、加圧手段2を配置して矢印Fで示すように加圧した状態で、紫外線レーザ等の光を矢印Lで示すように照射する。最適な照射条件に調整されて照射された光を光吸収層15が選択的に吸収すると、この光吸収層15は加熱され、フィルム薄膜16がガラス転移点以上になることで、このフィルム薄膜16に押圧されたモールド3のナノサイズ等の凹凸パターン4が転写される。
この場合は、図4Bの工程においてフィルム10を挟んでいるモールド3や圧力手段2が照射する光Lに対し透過性を有する材料であれば、図示の例のようにフィルムの上方からのみでなく、加圧手段2の下方からも光照射が可能である。
なお、この例におけるように、光吸収層をモールドではなくフィルム表面またはその近傍に設ける場合、更に図示しないがモールドの凹凸パターンの近傍に設ける場合、凹凸パターン及びフィルム表面から0〜10μm程度の範囲に光吸収層を設けることによって、確実に光吸収による加熱を行うことができる。
このように、例えば金属の有無などによる凹凸パターンが形成されたフィルム構造体20を形成することによって、これを例えば回折格子やWire-grid polarizerとして呼ばれる偏光分離デバイスなどの光学部品、またはエッチングマスクなどに適用することが可能であり、かつ大面積の光学部品などを容易に形成することができるという利点を有する。
また、石英等の基板上にSi等より成る光吸収層を設け、その表面に熱酸化等によりSiO2 層を形成してこのSiO2層に凹凸パターンが形成されたモールドを用いることも可能である。
このようなモールドを用いる場合は、フィルムに光吸収層を設ける必要がなく、また凹凸パターン部分を損傷しにくい材料により構成することによって、パターンの磨耗等が抑制された比較的丈夫なモールドを得ることができ、これにより大面積におけるフィルムへの凹凸パターンの転写を精度良く行うことができる。
(1)実施例1
この例においては、上述の図1及び図2において説明した形態の例による場合を示す。
厚さ0.7mmの合成石英より成る基板6の上に、スパッター法により常温でa−Si(アモルファスシリコン)を厚さ200nm成膜し、500℃にてN2 ガス中で保持することにより膜中の不純物ガスを除去し、紫外線照射時の安定化を図った光吸収層5を形成してモールド3を構成した。この場合、例えば電子線リソグラフィにより、すなわち電子線レジストを塗布して所定のパターンの電子線を描画した後、現像及び残留するレジストをマスクとするRIE(Reactive Ion Etching:反応性イオンエッチング)等のエッチングを施すか、既にあるモールド用いてナノインプリントを利用したリソグラフィによって、マスクをパターニング後RIEでエッチングして、モールド3表面への凹凸パターン4の作製行うことができる。この実施例の凹凸パターンは、ピッチ200nm、ライン幅100nm、深さ100nmのラインアンドスペースパターンであった。モールド3の表面には、図示されていない離型剤を塗布した。この離型剤は、転写後のモールドとフィルムの剥離を容易にするものである。
(2)実施例2
この例においては、図3において説明した例によりフィルム構造体を形成した。大量且つ迅速にナノサイズ程度の凹凸パターン構造を転写するためには、ロールフィルムへ転写できることが重要である。この例においては、モールド3として、直径50cmの円筒形SUSより成るローラーの表面にSi製の薄膜モールド8を設置して構成した。このSi製凹凸パターンは、一辺が50mmの正方形、厚さ50μmのSi基板上に電子線リソグラフィによってマスクパターンを形成し、RIEによりエッチングを行ったものである。このナノパターンは、ピッチ200nm、ライン幅100nm、深さ100nmのラインアンドスペースパターンであった。Si製薄膜モールド8のローラー9への取り付けは、シリコーンゴム系の接着剤を用いて貼り付けることで行った。ローラー9のフィルム10と接触する位置に、このSi製薄膜モールド8を隙間無く複数枚貼り付けることで、繋ぎ目のある構造ではあるが連続したパターン転写が可能なモールドとなった。モールド表面には、転写後のモールド3とフィルム10の剥離を容易にする離型剤を塗布した。
(3)実施例3
この例においては、前述の図4A〜Cにおいて説明した構成の多層構造プラスティックを用いた。この例においては、厚さ120μmのPMMAより成るフィルム10上に、スパッター法を用いて常温で成膜した厚さ100nmのSiより成る光吸収層15を成膜して、更にその上に厚さ200nmのPMMAより成るフィルム薄膜16を積層した。フィルム薄膜16の積層は、フィルムを80℃に加熱した状態でスプレー噴霧法で行った。
(4)実施例4
この例においては、厚さ120μmのPMMAフィルム10上に、スパッター法により常温で厚さ100nmのSiより成る光吸収層15を成膜してモールド3の凹凸パターン4を転写した。この場合においてもモールド3にはSi等の光吸収層を設けず、直接石英基板にRIE法で凹凸パターンを作製して用いた。この凹凸パターン4は、ピッチ200nm、ライン幅100nm、深さ100nmのラインアンドスペースパターンであった。次に、このフィルム10を光吸収層側をモールド3の凹凸パターンに接触させた状態で、SUS製圧力手段2とモールド3で挟み、3MPaの圧力を印加した。
(5)実施例5
この例には、フィルム表面にエッチング用マスクを作製するのに好適な実施例である。先ず、厚さ120μmのPMMAより成るフィルム10の上に、スパッター法で常温成膜により厚さ100nmのAlより成る材料層17、厚さ100nmのSiより成る光吸収層15を形成し、その上にスプレー塗布法により厚さ200nmのPMMAより成るフィルム薄膜16を成膜した。
そしてこの上に配置するモールド3として、表面にRIE法によってナノサイズの凹凸パターン4を形成したモールド3を用意した。この凹凸パターン4は、ピッチ200nm、ライン幅100nm、深さ100nmのラインアンドスペースパターンであった。次に、フィルム10を、フィルム薄膜16側をモールド3の凹凸パターン4に接触させて、SUS製の圧力手段2とモールド3で挟み、3MPaの圧力を印加した。
なお、本発明は、上述の実施の形態の例及び実施例に何ら限定されるものではなく、各部の材料構成、寸法、プロセス条件等は本発明の主旨を逸脱しない限りにおいて変更が可能であり、例えば前述の図4及び図6において説明した例において、フィルム薄膜として液状の紫外線硬化樹脂を用いるなど、また図3において説明した例において、ローラー近傍に液状薄膜材料を塗布するノズルを設けるなど、更には、各例において、図面中に示されない保護層などを設けることもでき、その他フィルム材料、フィルム薄膜材料、材料層として各種材料を用いるなど、種々の変形、変更が可能であることはいうまでもない。
Claims (7)
- モールドのナノサイズの凹凸パターンをフィルムの表面に転写して、前記フィルム上にナノサイズの凹凸パターンを形成するフィルム構造体の形成方法であって、
選択的に光を吸収する光吸収層を、上記モールドの上記凹凸パターン又は上記フィルムの表面から10μmの範囲に、上記モールド自体又は上記フィルム自体とは別に設け、
上記フィルムを上記モールドと加圧手段との間に配置し、前記加圧手段及びモールドにより上記フィルムを加圧した状態で、上記光吸収層の温度が、上記モールドの凹凸パターンの溶融温度未満で、且つ、上記フィルムの表面のガラス転移点以上となるように光を照射して、上記フィルムの表面の温度を上昇せしめ、上記フィルムの表面に上記凹凸パターンを形成する
フィルム構造体の形成方法。 - 上記モールドが、基材上に凹凸パターンを有する光吸収層が形成されて成る薄膜モールドとされ、上記薄膜モールドをローラーの表面に設けて、
上記ローラー及び上記加圧手段との間に上記フィルムを配置して、上記モールドの凹凸パターンを上記フィルムの表面に転写形成する請求項1記載のフィルム構造体の形成方法。 - 上記フィルムの表面に、少なくとも上記光吸収層及びフィルム薄膜をこの順に形成し、
上記モールドの上記凹凸パターンを上記フィルム薄膜に転写形成して、上記フィルムの表面の上記フィルム薄膜に上記凹凸パターンを形成する請求項1記載のフィルム構造体の形成方法。 - 上記フィルムの表面と上記光吸収層との間に材料層を設け、
上記フィルム薄膜に形成した凹凸パターンをマスクとしたエッチングにより上記光吸収層に凹凸パターンを形成し、
上記光吸収層に形成した凹凸パターンをマスクとしたエッチングにより上記材料層に上記凹凸パターンを転写形成する請求項3記載のフィルム構造体の形成方法。 - 上記モールドに設ける光吸収層として、Siを用いる請求項1又は2に記載のフィルム構造体の形成方法。
- 上記光吸収層及び上記フィルムに照射する光の光源として、エキシマーレーザを用いる請求項1〜5のいずれか1項に記載のフィルム構造体の形成方法。
- フィルム上に、該フィルムとは異なり、選択的に光を吸収する材料より成る光吸収層が、表面から10μmの範囲に形成され、前記光吸収層上に形成された他の材料層に、凹凸パターンが形成されて成る
フィルム構造体。
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