JP4567671B2 - らせん分子構造を有するポリマーフィルム - Google Patents

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Description

本発明は、ピッチ勾配を調節し得るらせん分子構造を有するポリマーフィルムと、上記フィルムの製造方法および上記フィルムの使用に関する。
多くの光学的応用において、光の偏光成分を吸収することにより無偏光の光を偏光に変換するフィルムが使用される。したがって、理想的な場合には、光の最大50%がこの種の偏光フィルムを透過させられる。この方法は、光収量の損失のほかに、特に光源が明るい場合、吸収によって偏光子の大幅な加熱が生ずるというもう一つの短所を有している。これら双方の短所は、望ましくない偏光成分を光源に逆反射する反射型偏光子の場合に回避される。この成分は、光源の光学的成分のそれぞれの配置に応じ、その偏光を反射または散乱によって所望の偏光に変え、こうして少なくとも部分的に光収量の増加に貢献することができる。
米国特許第5,235,443号はコレステリック液晶からなるフィルムの形で、反射型偏光子を実現するための一つの可能性を記載している。コレステリック液晶とは分子がらせん状に配向した状態を有する物質である。その薄層は2枚の適切な支持体の間で、へリックス軸が支持体表面に対して垂直をなすようにして作製することができる。へリックスのリード(ピッチ)は物質に依存し、層の厚さ全体にわたってコンスタントである。この種の層は、物質中の光の回転方向と波長λとがコレステリックへリックスの回転方向およびピッチpと一致しかつ層の厚さがピッチの複数倍であれば、円偏光成分をほぼ完全に反射する(コレステリック反射)。これに対して、反対の回転方向を有する第二の円偏光成分および異なった波長の光成分は理想的な場合に完全に透過させられる。応用に応じて必要とされる場合には、円偏光成分は補助的な4分の1波長位相差層によって直線偏光に変換することができる。
コレステリック反射は2つの波長λ=p・nとλ=p・n(ここでnとnは異常光屈折率と常光線屈折率を表している)との間のスペクトル帯域で生ずる。この帯域は、物質の平均屈折率n=(n+n)/2とピッチpとに依存する平均波長λ=p・nと、ピッチpが所与の場合に複屈折Δn=n−nによって決定される幅Δλ=p・Δnとによって特徴づけられる。実際のところ大半のコレステリック物質の複屈折は可視スペクトル領域において0.3以下の値に限定されている。これから、生じ得る最大帯域幅は約100nmとなるが、ほとんどの場合に30nmから50nmにしか達しない。コレステリック帯域で反射される光の強度は層におけるピッチλ/nの数と共に増大し、無偏光の入射光については入射強度の50%で最大値に達する。反射は層厚さがピッチの約3倍以上になって初めて観察される。したがって、必要とされる最小の層厚さは大半のコレステリック物質につき可視スペクトル領域において数μmである。
反射型偏光子またはLC顔料などの応用に液晶物質を使用するための前提条件はらせん分子構造の十分な熱的および機械的安定性である。この安定性は重合による配向状態の固定化によるかまたはガラス転移点以下の温度への急冷によって達成することができる。この種の安定したコレステリック層はたとえばR.Maurer et al.により“Polarizing Color Filters made from Cholestric LC Silicones”,SID 90 Digest,1990,p.110−113に述べられている。
偏光フィルムとしての応用以外に、文献中には、多様な光学素子におけるコレステリックフィルムのなおその他の応用が述べられているが、これらについてはこれ以上立ち入って論じないこととする。あらゆる応用において、コレステリック帯域の中心波長λと幅Δλとは的確に調節可能とされる必要があろう。たとえばLCDの明るさの改善に利用される反射型偏光子としての特別な応用には、反射帯域が可視スペクトル域の全体をカバーすること、つまり、帯域幅Δλは300nm以上を有することが特に必要である。ただし、この種のフィルムの反射特性と特に透過光の偏光とはフィルム上に立てた法線に対する相対視角に依存している。反射型偏光子の帯域はすべての当該視角につき少なくとも450nmから600nmの領域をカバーする必要があろう。したがって、S.Ishihara et al.により“Preparation and properties of optical notch filters of cholesteric liquid crystals”,Polymer,Vol.29,1988,p.2141−2145に述べられた、視角の関数としての色ずれ効果を補償するため、帯域はたとえば45°までの所望の視角範囲につき、垂直方向からの観察下で、少なくとも450nmから850nmに及ぶ必要があろう。またさらに、フィルムは、偏光の視角依存性を最小限にするため、できるかぎり薄い必要があろう。たとえば可視域において特別な色彩効果を産み出すことのできる広帯域LC顔料には、100nmだけ小さい帯域幅も求められるが − これはただし6μm以下の厚さの層で達成されることとなる。
液晶物質に対応する値λ・(n−n)/nよりも大きな帯域幅Δλを有するポリマーフィルムは、特にR.Maurer et al.の上記引用論文に述べられているように、光学素子を中心波長の異なる複数のコレステリック層で構成することによって製造することができる。ただし、この方法は非常にコスト集約的でありかつ光学的品質が、欠陥箇所での散乱と不均質性とに基づいて、それぞれの付加的な層と共に低下するという短所を有している。加えてこの方法は、個々の層をもっと薄くした複数の層によって6μm以下の総厚さを実現することが困難であるために、LC顔料には適用不可能である。広帯域コレステリック偏光子を作製するための適切な方法は、コンスタントなピッチのらせん分子構造を有した個々の層の配列を、ピッチが連続的に増加もしくは減少する個々の層によって置き換えることである。へリックスのリード勾配(ピッチ勾配)による反射帯域の拡大は理論的研究によりすでにかなり以前から知られている(たとえば、S.Mazkedian,S.Melone,F.Rustichelli,J.Physique37,731(1976)またはL.E.Hajdo,A.C.Eringen,J.Opt.Soc.Am.36,1017(1979))。目下の技術によれば、ピッチ勾配を有したこの種の層の作製を可能にする複数の技法が存在している。これらの技法は基本的に以下の3つのカテゴリに区分することができる:
1. 非架橋成分の拡散による架橋密度勾配の創出。
2. 化学的組成の異なる少なくとも2つの層の積層と続いての拡散。
3. 部分重合されたフィルムからの、深さに応じた、非重合成分の抽出。
これらの方法はいずれも、それぞれの方法に合わされた特別な混合物質を必要とする。
欧州特許出願公開第0 606 940 A2号には、重合特性の点で反応性の異なるキラルモノマーとネマチックモノマーからなる混合物が僅かな線量のUVで比較的長時間にわたって重合され、その結果、重合の間に双方のモノマの拡散が生じ、これが、混合された物質組成に基づいて、ピッチ勾配をつくり出すという方法が記載されている。拡散の推進力は、物質中のUV強度の勾配によって惹起される架橋密度の勾配である。フィルム中のUV強度の減少は色素の添加によって制御されるが、これはフィルムの安定性と光学的性質とにとって短所を有している。良好な機械的安定性を達成するには、フィルムは最終的に完全に重合されていなければならないとの要件からして、高いUV吸収は不可能であり、したがって、フィルム中のUV勾配は特に高いわけではない。これはプロセス全体を比較的緩慢化することから、連続的に走行する支持体たとえばプラスチックフィルムをベースとした広帯域コレステリック偏光子の工業的製造には相対的に不適である。弱いUV勾配はピッチ勾配にも影響を及ぼすため、この層の最小厚さは求められる反射帯域幅にとって十分ではなく、10μm以下の薄層が肝心となる応用にとって不十分である。欧州特許出願公開第0 606 940 A2号の実施例において、フィルムの層厚さは20μmである。
欧州特許出願公開第0 982 605 A1号に記載された方法もまた、ピッチ勾配をつくり出すために、コレステリック層におけるUV線の吸収を利用している。使用されたLC混合物において、重合の間に、コレステリック相から、らせん構造の回転をもたらすスメクチック相への相転移が生ずる。ただし、このプロセスは純粋な拡散プロセスよりも速い可能性があり、挙示された実施例において広帯域フィルムは30sの露光時間下では達成されない。この方法のもう一つの短所は、スメクチック相へのメソゲンの再配向が小さなドメインの形成を結果することである。ドメイン境界に起因する光の散乱は透過光の偏光率を低下させる。
欧州特許出願公開第0 885 945 A1号に記載のもう一つの方法は、UV露光プロセスを2つのステップに区分し、これらのステップの間にフィルム温度の変化を生じさせることにより、欧州特許出願公開第0 606 940 A2号に記載の方法における弱い架橋密度勾配によって惹起される緩慢な拡散プロセスという短所を克服する。こうしてコレステリック相のサーモクロミー特性が利用され、これによって、メソゲンのより急速な再配向と共に架橋強度の異なるフィルムゾーンにおけるより急速なピッチ調節がもたらされる。ただしこの方法の短所は、300nm以上の所要の帯域幅が工業的製造に必要な条件下では達成困難なことである。
米国特許明細書第6,099 758 A号は、UV勾配に加えて、使用される支持体の阻害作用によってもう一つの勾配が生ずることにより、架橋密度勾配が増強される方法を主張している。このプロセスは確かに欧州特許出願公開第0 606 940 A2号に記載のプロセスよりも速やかであるが、挙示された実施例において広帯域フィルムは30sの露光時間下では達成されない。記載された露光時間とUV強度とから得られるUV総線量は僅かであることから、フィルムの熱的、機械的安定性は低い。また、コレステリックフィルムが2つの異なった支持体の間で製造されなければならないか、または単一の支持体を使用し、空気雰囲気中で重合が行われる場合には、支持体上に補助的な酸素遮断層が必要であることにより、製造プロセスは技術的に複雑でコスト高である。
同じく欧州特許出願公開第0 606 940 A2号には、化学的組成の異なる2つの層 − そのうち一方はコレステリック配列している − が接触させられる方法が記載されている。拡散によってコレステリック層は膨張させられ、こうして、ピッチ勾配が生ずる。最終的にフィルムは重合させられる。欧州公開公報第0 881 509 A2号に記載のこの方法の別途実施例において、ピッチの異なる2つのコレステリックフィルムが積層されて、制御された拡散により高い温度で融着され、こうして、双方の勾配の間に連続的な移行が生ずる。この方法の短所は、少なくとも2つの異なった層の使用によって製造がコスト高になると共に、2つの層間の拡散プロセスの技術的制御が困難なことである。
欧州特許出願公開第0 875 525 A1号には、支持体に被着された部分重合コレステリックフィルムが、フィルムの非重合成分の抽出を結果する有機溶剤からなる浴中に浸漬される方法が記載されている。この効果はフィルムの表面で最も強いことから、フィルムの乾燥と調質後に、深さに依存した収縮と共にピッチ勾配がつくられる。再現性ある結果を得るためには、大量の溶剤が不断に交換されなければならず、これは環境保護の観点からして望ましくない。さらに加えて、こうした溶剤に必要となる浄化と複雑なプロセス制御によってコストは著しく高くなる。
公知の特許文献中には、たとえば、視角依存性をできるだけ小さくしてできるだけ高い光収量を達成するには、上述した方法によって作製されたコレステリック偏光子がLCDに配置されていなければならないというような一部矛盾した結果が論じられている。光源と電気的に切換え可能な液晶セルとの間にコレステリック偏光子が配置される場合には、公知の実施例においてコンスタントなまたは数学的な意味で単調増加ないし単調減少する勾配として予め定められた連続的なピッチ勾配を有する非対称フィルムでは、短いピッチを有する側が光源の方向に向いているかまたは長いピッチを有する側が光源の方向に向いていてよい。米国特許第6,099,758 A号に仮説として記載された対称フィルムの場合には好ましい方向は存在しない。他方、我々の調査によれば、光収量と色との視角依存性を低下させるには、青、赤および緑の反射色にほぼ一致する短いピッチ、長いピッチおよび平均のピッチの順序を有し − 好ましくは短いピッチが光源に最も近い − 勾配分布を有するフィルムの使用が有利であることが判明した。この種のピッチ分布は従来の技術によれば、多層構造のフィルムによってしか作製することができず、しかもこれは上述したように複雑でコスト高な方法を必要とするであろう。
本発明の目的の一つは、たとえばLCDに使用する際に、LCDの明るさと色との相対的な視角依存性の変化をできるだけわずかにして、できるだけ高い明度増強をつくり出すポリマーフィルムを提供することであった。この課題は、フィルム表面に対して垂直な方向に短いピッチ、長いピッチおよび平均のピッチの順序のらせん構造を含んだらせん分子構造を有するポリマーフィルムによって解決される。
したがって、本発明の対象は、らせん分子構造を有するポリマーフィルムであり、フィルム表面に対して垂直な方向に短いピッチ、長いピッチおよび平均ピッチの順序のらせん構造を含み、その際、該ピッチは反射波長/平均屈折率から計算されるポリマーフィルムであって、重合性液晶物質からなる混合物の単一層から製造され、短いピッチと長いピッチとの間の交代はらせん構造の巻数10未満で生じ、かつ短いピッチ、長いピッチおよび平均ピッチを有する層はそれぞれ少なくとも3ピッチの層厚を有することを特徴とするポリマーフィルムである。
容易な製造方法を可能とするために、重合性液晶物質からなる混合物の単一層から製造されるフィルムが開発された。このフィルムにおいて、短いピッチと長いピッチとの間の移行は好ましくはらせん構造の巻数10以下で生じ、巻数5以下で速やかな移行が生ずるのが極めて好ましい。本発明はさらに、このフィルムの更にその他の使用可能性に関する。
ピッチ勾配を有したコレステリックポリマーフィルムの公知の製造方法は先述したような固有の長所と短所とを有している。従来、これらの方法のいずれによっても、単一の支持体へのコーティングによって十分とされる、LCDに適した広帯域反射型偏光子または広帯域LC顔料の完全に連続的な工業的生産を実現することは不可能であった。本発明によるピッチ勾配を調節し得るらせん分子構造を有するポリマーフィルムは、
− 重合性液晶物質からなる混合物(これは
a)それぞれ少なくとも1メソゲン基と少なくとも1重合性官能基とを有するモノマーまたはオリゴマーおよび
b)1キラル化合物を含む)を単一の支持体上に単一層として被着するステップと、
− らせん構造軸が層に対して横方向に延びるらせん構造にメソゲン基が配列されるように物質を配向するステップと、
− 重合阻害的に作用する環境中での化学線の作用によるこの層の部分重合ステップと、
− 物質が部分重合構造中で新たに配向された後に、フィルムの完全な重合またはガラス状態へのフィルムの冷却によって最終的な固定を実施するステップと
からなる方法によって製造できる。
したがって、以下のステップつまり、
− 重合性液晶物質からなる混合物(これは
a)それぞれ少なくとも1メソゲン基と少なくとも1重合性官能基とを有するモノマーまたはオリゴマーおよび
b)1キラル化合物を含む)を単一の支持体上に単一層として被着するステップと、
− らせん構造軸が層に対して横方向に延びるらせん構造にメソゲン基が配列されるように物質を配向するステップと、
− 重合阻害的に作用する環境中での化学線の短時間の作用によるこの層の部分重合ステップと、
− 物質が部分重合構造中で新たに配向されることとなる所定の待機時間後に、フィルムの完全な重合またはガラス状態へのフィルムの冷却によって最終的な固定を実施するステップと
からなる、ピッチ勾配を調節し得るらせん分子構造を有するポリマーフィルムの製造方法も同様に本発明の対象である。
本発明による方法により、今や、上述した従来の技術の短所を回避することのできる、広い反射帯域を有するポリマーフィルムの安価な工業的製造方法が得られる。
驚くべきことに、本方法によって製造されたらせん分子構造を有するポリマーフィルムは、2枚の支持体の間でまたは窒素雰囲気中で重合された同じ物質からなるフィルムと同様に、著しく広い反射帯域を有することが見出された。欧州特許出願公開第0 606 940 A2号と同様に、コレステリック層の架橋密度の勾配がつくり出されるが、ただしこれは、この場合、化学線の強度勾配に帰着されるものではなく、環境の阻害作用の勾配に帰着される。環境の阻害作用は環境からコレステリック層への分子の拡散に基づいており、分子は上記層においてラジカル捕獲剤として作用する。層内には化学線の短時間の作用によって所定量のラジカルが形成され、これらは一部のみが、コレステリック層内にすでに存在するラジカル捕獲剤によって中和される。この時点で、ラジカルとラジカル捕獲剤との分布は層の厚さ全体にわたってほぼコンスタントである。残りのラジカルは重合を開始させ、この重合は爾後の経過において、環境から層内に拡散する分子によって再び停止させられる。この拡散は十分に緩慢であることから、これによって、化学線光の吸収によるよりも遥かに急峻な勾配がつくり出される。この勾配は、短時間露光の時間と強度を拡散係数と重合速度に合わせることによって調節される。したがって、米国特許第6,099,758 A号、欧州特許出願公開第0 606 940 A2号および従来の技術のその他の方法におけるような長時間の露光は不要である。
らせん構造のピッチの勾配dp/dx(xは層の表面に対して垂直方向の位置座標である)は好ましくは、反射光の強度ができるだけ高くかつポリマーフィルムの厚さができるだけ薄いように調節される。反射帯域における十分な強度のために少なくとも3ピッチの層厚さを仮定すれば、これから最大勾配dp/dx<0.33・Δn/nとなる。ただし、もっと急峻な勾配も、それぞれの応用においてそれと結びついた反射光強度の損失が許容される場合には、可能である。従来の技術と比較した本方法の特別な利点は、個々の層のらせん構造のピッチにこの種の急峻な勾配を実現することができることである。これにより、層の厚さを最小限にしてかつ反射帯域の拡大されたポリマーフィルムの製造が可能となる。本発明によるポリマーフィルムの層厚さは所望の幅の反射帯域の2/Δn倍より厚くかつ20/Δn倍よりも薄いのが好ましい。本発明によるポリマーフィルムの反射型偏光子としての応用には、所望の幅の反射帯域の3/Δn倍よりも厚くかつ6/Δn倍よりも薄いのが特に好ましい。この基準を満たす本発明によるポリマーフィルムは反射帯域の透過光の偏光の視角依存性が大幅に低下することを示している。約0.2のΔnと300nmの所望の幅の反射帯域とを有する重合性液晶物質については、反射型偏光子を製造するのに、5μmから10μmまでの厚さのポリマーフィルムで十分である。6μm以下の層厚さを有する広帯域LC顔料の要求も本方法によって満足させることが可能である。しかしながら、架橋密度勾配の創出とそれに続く非架橋成分の拡散とをベースとする、従来の技術による公知のその他の方法(たとえばドイツ特許出願公開第198 42 701 A1号、欧州特許出願公開第0 606 940 A2号では、ほとんどの場合に、15μm以上の層厚さしか得られない。
部分重合は、メソゲンが、らせん配向した相域において、一定温度にて、化学線光による所定の露光によって開始される。この場合、欧州特許出願公開第0 606 940 A2号に記載されているように、層厚さ全体にわたって強度の変化する化学線が重合性液晶物質に作用することは必要ではない。フィルムの安定性と光学的特性にとっては、かえって、物質に補助的なUV吸収色素は添加されないのが有利である。本願明細書に記載の方法では、数μmの層厚さによる化学線光の吸収は僅かであるため、層の化学線光の強度勾配はほぼコンスタントであるとみなすことができる。したがって、この種のフィルムは阻害環境の作用がなければコレステリック帯域の拡大を示さない(実施例1dおよび1e)。他方、たとえばドイツ特許出願公開第198 42 701 A1号に記載のポリマーフィルムはコレステリック帯域の拡大を示す。ただし、本発明によって使用される重合性液晶物質がそれでもなお化学線の有意な吸収を示しても、それは本願明細書に記載の方法にとって支障ではなく、場合により、帯域幅の最適化のために利用することが可能である。
ドイツ特許出願公開第198 42 701A1号および欧州特許出願公開第0 606 940 A2号に記載されているような低強度のUV線による連続的露光に比較した本方法のもう一つの利点は、達成された配向状態の固定が別個の最終ステップにおいて行われ、そのため、フィルムの高度な熱的、機械的安定性が保証される点にある。たとえば、LCDの熱い背景照明に対する反射型偏光子の長期安定性は応用にとって重要である。今や、驚くべきことに、本発明による方法によって製造されたポリマーフィルムは、高温時の安定性テストにおいて、LCDへの応用にとって十分な高い安定性を有することが判明した(実施例1c)。層の最終的固定が重合反応によって行われる場合、この反応は好ましくは高い強度の化学線光による露光によるか、電子線照射によるかまたはラジカル形成熱重合開始剤たとえば過酸化物によって開始されるのがよい。この場合、同時に環境の阻害作用が低下されるのが好ましい。特に好ましくは最終的な重合は不活性ガス雰囲気中たとえば窒素雰囲気中で実施されるのがよい。ただし、前以ての露光と短い待機時間の後に、不透過性ポリマーフィルムを部分重合されたフィルム上に貼り合わせて、最終固定の間の環境の阻害作用を低下させることも可能である。
酸素は重合反応の阻害剤であることから、阻害作用を及ぼす環境として好ましくは酸素を含んだガスが使用される。特に好ましいのは空気または酸素富化された空気である。阻害作用を有するその他の適切なガスは、たとえば、酸素と同様に気体混合物中でも使用することのできる一酸化窒素である。LC混合物を早期重合を防止して安定させかつ酸素の阻害作用を制御するため、重合性液晶混合物は酸素によって活性化されるラジカル捕獲剤たとえば2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)を含んでいるのが好ましい。このラジカル捕獲剤の量は好ましくは1−5000ppm、特に好ましくは100−3000ppmがよい。ガス状の阻害作用環境に代えて、阻害作用を及ぼす液体または好ましくは薄膜の形の固体が重合性物質と一時的に接触させられてもよい。このため、阻害作用物質に対して高い透過性を有する膜を重合性液晶物質上に被着することも可能である。
化学線光による短時間の露光と、その間に物質が新たに配向される爾後の待機時間とにより、ドイツ特許出願公開第198 42 701 A1号において必然的に要される、支持体内側面に設けられる酸素遮断層は不要である。好ましくは補助的な遮断層のない支持体が使用されるのがよい。待機時間は好ましくは、グランジャン[Grandjean]構造中に大きなドメインが形成されて、ドメイン境界に起因する散乱光成分が総強度の数パーセント以下になるまで長く選択されるのがよい。この場合、最長ピッチが必ずしもドイツ特許出願公開第198 42 701 A1号で求められているように製造時に空気側に向いたフィルム表面にはない不斉なピッチ勾配が形成される。それどころか、本発明による方法の実施例1c)と2c)では、PET支持体の側に、製造時に空気側に向いたフィルムの表面近傍におけるよりも長いピッチを有するピッチ分布が存在している。待機時間の間、フィルムの環境温度が変化させられて、欧州特許出願公開第0 885 945 A1号と同様にさらにコレステリック物質のサーモクロミーを利用することができる。好ましくはこのプロセスはコンスタントな温度にて液晶相域において実施されるのがよい。
適切な重合性液晶物質混合物につき、第一の露光ステップにおける化学線の線量と照射時に作用する環境中の阻害作用分子の濃度との調整によって、フィルムの架橋密度の推移を − その後の拡散プロセスにより、短いピッチ、長いピッチそして平均のピッチの順序を有したらせん構造のピッチ勾配が生ずるように − 調節することができる。この場合、短いピッチは、開放表面での第一の露光ステップの後、阻害作用のためにほとんどまたは全く重合していない、配向状態における重合性液晶物質混合物のピッチにほぼ等しい。長いピッチは開放表面近傍における部分重合物質の膨張によって生じ、平均のピッチはやや強度に重合した、したがってあまり膨張しない支持体側物質のピッチである。
本発明によるポリマーフィルムに求められるピッチは − 要求される反射波長/重合状態における液晶物質の平均屈折率 − から計算される。この場合、この式による平均ピッチは反射帯域の中心の波長に相当し、短いピッチと長いピッチは好ましくは平均波長から10%以上相違する短い波長または長い波長に相当し、特に好ましくは要求されるコレステリック帯域幅の端に位置する波長に相当している。
重合性液晶物質は好ましくは、メソゲン基と重合性官能基とを有しかつ少なくとも1キラル成分を含むモノマーまたはオリゴマーからなる混合物を含み、これらのモノマーまたはオリゴマーは重合に関して反応性が相違しているのがよい。特に好ましいのは、
− モノマーまたはオリゴマー(A)(この場合、モノマーまたはオリゴマー(A)のそれぞれは、(メト−)アクリレートエステル基、エポキシ基およびビニルエーテル基を含む群から選択される少なくとも2重合性官能基を有する)と、
− 液晶モノマーまたはオリゴマー(B)(この場合、モノマーまたはオリゴマー(B)のそれぞれは、(メト−)アクリレートエステル基、エポキシ基およびビニルエーテル基を含む群から選択される正確に1重合性官能基を有する)と、
− 重合性混合物(A+B+C+D)を基準として1から50重量%以下の、モノマーまたはオリゴマー(A)および(B)の重合性官能基と反応し得る基を含まないモノマー(C)と、
− 1キラル基を有するモノマーまたはオリゴマー(D)と
を含む重合性コレステリック液晶である。
本発明の趣旨のメソゲン基と称されるのは、分子中に液晶性を惹起し得る化学基である。メソゲン基を含む化学化合物はほとんどの場合にカラミチック配列またはディスコチック配列を有している。これらはそれ自体として液晶相を有している必要はなく、他のメソゲン化合物との混合物中で液晶相に貢献するものであっても十分である。基本的に、文献によって公知のすべてのメソゲン基は成分(A)、(B)および(C)に適している。たとえば、定期的に更新される公知のメソゲン基のコレクションはV.Vill et al.によってLiqCrystの表題のデータバンクとして公表されている(LCI Publisher GmbH,Eichenstr.3,D−20259 Hamburgより入手可)。好ましくは、工業的規模で合成によって容易に達成可能であって、ポリマーフィルムとしての応用にとって十分な安定性を長期にわたって保証する化合物を生ずる類のメソゲン基を使用するのがよい。それらの例を挙げれば、化学的構造要素たとえばフェニル誘導体、ビフェニル誘導体、シアノビフェニル誘導体、ナフチル誘導体およびシアノナフチル誘導体をベースとしたアルコールおよびカルボン酸エステルならびにこれらの群のコンビネーションである。
好ましい1実施形態は、非重合状態に比較して少なくとも50%拡大した反射帯域を有することを特徴とする本発明によるポリマーフィルムである。
さらにもう一つの好ましい実施形態は、部分重合および/または最終的固定に際して、化学線の作用がマスクを通して行われ、続いてマスクが変えられるかまたは第二のマスクに替えられ、この方法ステップが場合によりその他の方法パラメータを変えて反復実施されて、まだ最終的に固定されていない物質部分が化学線によって照射されることを特徴とする、らせん分子構造を有する構造化ポリマーフィルムに関する。らせん分子構造を有するこの種の構造化ポリマーフィルムは、カラーピクセルの帯域幅を的確に調節してディスプレイの色調と明るさを最適化し得ることから、たとえばLCDディスプレイ用のカラーフィルタとして特に適している。
本発明の好ましい別途実施形態は、本発明によるポリマーフィルムが続いての方法ステップで破砕されて製造される、らせん分子構造を有するLC顔料に関する。
本発明はまた、らせん分子構造を有するポリマーフィルムの製造方法にも関する。文献から、重合性混合物から光学的異方性を有するポリマーフィルムを連続的または不連続的に製造するためのさまざまな方法が知られている。この場合、重合性混合物は支持体に被着され、配向され、続いて化学反応によるかまたはガラス状態への冷却によって固定される。
支持体表面への重合性混合物の被着は、溶液または溶剤なしのメルトとして、混合物のガラス転移点以上で、たとえばスピンコーティングにより、ドクターまたはロールを用いて実施することができる。被着のために溶剤が使用される場合には、これは爾後の乾燥ステップで除去されなければならない。支持体上の乾燥LC層の厚さは、らせん構造のピッチ数と共に反射帯域の形状を決定する。メルトの被着および溶液からの片側開放ポリマーフィルムの作製はたとえば欧州公開公報第0 358 208 A1号および同第0 617 111 A1号に記載されている。支持体の湿潤性の改善または開放表面でのメソゲン配向の改善のため、重合性混合物は、欧州特許出願公開第0 617 111 A1号に記載されているように、僅かな重量パーセンテージでたとえばラッカー製造における流れ改善用の公知の類の界面活性物質を添加剤として含んでいてよい。特に好適な界面活性物質は、たとえばラッカー助剤として使用されるオルガノシロキサンである。オルガノシロキサンはまたオリゴマーとしてそれ自体でメソゲン特性を有していてよい。ポリマーフィルムを架橋後に支持体上に残そうとする場合には、支持体との付着を、支持体表面の性状に応じ、重合性混合物に含まれた、同じく従来の技術から公知の適切な定着剤によって改善することができる。支持体とポリマーフィルムとの付着の改善は支持体の適切な前処理たとえばコロナ処理によって達成することもできる。添加剤自体がメソゲン特性を有していない場合には、これらは液晶相の形成を妨げない程度の僅かな量でのみ添加される。
重合性液晶物質は、メソゲン基がらせん構造に配列し、その軸が層に対して横方向に延びるようにして配向される。この場合、層に対して横方向に延びるとは、軸が好ましくは表面に立てた法線に対し20°以下の角度をなして傾いていることを意味している。特に好ましいのはらせん構造の軸がフィルム表面に対して垂直をなしていることである。重合性混合物中のメソゲンの配向は、たとえば、被着時または被着後の、メソゲンと適切に選択された支持体表面との相互作用または電場または磁場による、物質のずりによって行われる。これは好ましくはガラス転移点または融点以上から重合性液晶物質の透明化開始以下までの温度範囲内で行われるのがよい。容易な技術プロセスを可能とするために、重合性混合物の組成は好ましくは、最適配向温度が20℃から120℃の間にあるように調整される。コレステリック液晶のピッチは一般に温度依存的であることから、この配向温度によって反射帯域の中心波長にも影響が及ぼされる。メソゲンの配向を支持体表面との相互作用によって行わせようとする場合には、配向効果の改善のために、適切な配向層を公知の、文献に記載のコーティング法、プリント法または浸漬法によって支持体に被着することができる。この配向層または支持体には、補助的な処理たとえば摩擦によって、配向を促進する表面構造を付与することができる。局所に応じた配向方向の変化は、たとえば、マスクを通した偏光UV光での露光によってμmからmm範囲で配向層の構造化を行うための公知の方法によって可能である。液晶相のメソゲンとその界面との間の傾きを達成するための適切な方法は同じく文献中に記載の、たとえば偏光UV光による露光または斜め角度下での無機物質の蒸着である。配向層は光学的に一軸の複屈折媒質たとえば液晶混合物からなる配向重合層を含んでいてよい。特に好ましいのは、利用波長範囲において波長の0.25倍の光学的遅れを有する層である。
支持体は平らであるかまたは屈曲していてよい。特に好ましいのは、ポリマーフィルムの製造、加工および使用時に熱的、機械的に安定している支持体を使用することである。とりわけ特に好適な支持体は、ガラスまたは石英板、ポリマーフィルムたとえばポリカーボネート、ポリスルホン、ポリアルキレンテレフタレート、ポリアルキレンナフタレート、セルローストリアセテートおよびポリイミドである。必要に応じて支持体は、付加的な配向補助層たとえばポリイミド、ポリアミド、ポリビニルアルコール、酸化ケイ素からなる層または重合液晶からなる層を備えていてよい。らせん分子構造を有するポリマーフィルムをその製造後に支持体上に残そうとする場合には、好ましくは、従来の技術によって公知のその他の光学素子の製造にも使用される物質が支持体として適切である。特に好ましいのは、それぞれの応用にとって重要な波長範囲内で透明または半透明な支持体たとえば多くの有機または無機支持体である。ポリマーフィルムが直線偏光用の反射型偏光子として使用される場合には、特に好ましい支持体は、利用波長範囲において波長の0.25倍の光学的遅れを有する、光学的に一軸の複屈折支持体である。この種の4分の1波長位相差層、略称すればλ/4位相差層は、たとえば、ポリカーボネートフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルムまたはポリプロピレンフィルムの所定の延伸によるかまたはネマチックLCポリマーから製造される。別法として、延伸方向が互いに一定の角度をなしている2枚の異なった複屈折フィルムのラミネートも支持体として使用することができる。双方のフィルムの分散が相違することにより、ラミネートの総遅れも波長と共に変化する。フィルム材料と延伸度は、できるだけ、フィルタないし反射板によって利用される波長範囲の全体にわたって、波長の0.25倍の総遅れが生ずるように選択されなければならない。λ/4位相差層は、本発明によるコレステリック層と事後的にコンビネーションすることもできることは言うまでもない。支持体の光学的特性に関するこうした要件は、ポリマーフィルムが製造後に支持体から剥がされる場合には不要である。その場合には、重合性混合物の良好な配向を可能にすると共に表面付着力の僅かな支持体が特に好ましい。
昼光は、支持体表面への重合性混合物の被着時ならびにその後に続くメソゲンの配向中、できるだけ回避されなければならないが、それは昼光中に含まれている僅かなUV線が早くも液晶混合物の僅かな重合開始を招来し、これが粘度の増強と同時にメソゲンの配向の緩慢化を結果するからである。したがって、混合物の被着とそれに続くメソゲンの配向は好ましくはUV線の排除下で実施されるのがよい。粒子はフィルムに、偏光中に顕著な不均質性として可視化されるピッチ構造の乱れを引き起こす。これを避けるため、重合性混合物は、乾燥フィルムの厚さ以上の大きな粒子を含んでいてはならないであろう。特に好ましいのは、重合性混合物中に、最長直径がフィルム厚さの20%よりも大きい粒子が含まれていないことである。これは重合性混合物またはその成分またはこれらの成分を含む溶液が被着前に濾過されかつ支持体表面がクリーンルーム条件下で浄化されることによって保証される。好ましくは、重合性液晶物質の濾過、被着、配向および重合もクリーンルーム条件下で行われるのがよい。
配向が行われた後、重合性混合物は温度不変にて短時間にわたって化学線の作用に曝露され、その際、部分的に重合または共重合が行われる。化学線は光化学活性線たとえばUV線、X線、γ線または、高エネルギ粒子たとえば電子またはイオンによる照射である。好ましくはUV−A線が使用される。照射はすべての重合可能分子の一部のみが照射後に重合しているようにして実施される。照射後の重合分子の割合は好ましくは重合性分子の0.1%から70%、特に好ましくは1%から50%である。重合分子の割合が低い場合には、層の最終的な固定後に中心波長の変位のみが観察され、反射帯域の拡大は観察されない。他方、第一の露光時に重合される基が多すぎれば、らせん構造のピッチは最初から非常に強く固定されており、ピッチ勾配の発生は阻止されることとなる。このケースは重合性分子の70%以上が網状構造に組み込まれることとなる単一の露光による従来の方法に特に当てはまる。重合分子の割合はたとえば試料露光と続いての適切な溶剤中での抽出によって明らかにすることができる。これは単位面積と単位時間当たりの照射露光エネルギによって制御される。したがって、照射露光エネルギと共にその時間的分布は本発明によるポリマーフィルムの反射帯域の幅の調節にとって重要なパラメータである。たとえば、空気中での短時間に及ぶUV−A線での露光は実施例1から3で使用された重合性混合物につき良好な結果を示している。必要な露光エネルギは、使用される化学線の種類、使用される物質、光重合開始剤および層厚さに依存している。第一の露光につき、UV−A線の単位面積当たりの好ましい露光エネルギは1から500mJ/cmの範囲内にあり、特に好ましくは10から50mJ/cmの範囲内にある。露光時間は好ましくは30s以下、特に好ましくは10s以下である。これに対して、重合性分子の70%以上の重合が結果する従来の露光に際しては、500mJ/cm以上の露光エネルギが適用される。
重合阻害的に作用する環境中での短時間の照射に続いて、フィルムは、化学線の排除下で、物質が部分重合構造中で新たに配向されることとなる所定の待機時間に付される。この待機時間は、重合性液晶物質の組成、環境の阻害作用、フィルムの厚さおよび温度に応じて、方法の要件に適合させられる。これは好ましくは10sから60sの範囲内にあるが、方法にとって必要であれば、もっと長くすることも可能である。待機時間は第一のステップにおける露光と同じ温度で、または第一のステップにおける露光とは異なった温度で経過してよい。したがって、たとえば、反射帯域拡大の速度に影響を及ぼすため、待機時間の温度を第一の配向相における温度に比較して100℃まで変化させることが可能である。待機時間において可能な最大温度は重合層の明澄点[Klaerpunkt]によって制限されている。好ましくは、第一の配向相の温度から10℃までの範囲内でこの明澄点以下の温度が選択されるのがよい。ただし、部分重合プロセスと最終的な固定プロセスとを切り離すため、待機時間を延長しかつ/または待機時間の温度を低下させることも可能である。
第一の方法ステップにおける露光の照射エネルギと並んで、待機時間の長さならびに温度も本方法によるポリマーフィルムの反射帯域の所望の幅の調節にとって極めて重要なパラメータである。待機時間の温度と長さが同じでかつ露光時間が同じであれば、反射帯域の幅は第一の方法ステップにおける露光エネルギの増加と共に最大値まで増加し、その後再び、反射帯域が従来の方法による重合フィルムのもともとの形をとるまで減少する。他方、第一の方法ステップにおける露光エネルギが同じであれば、待機時間が長くなればなるほど、反射帯域のいっそうの拡大が生ずる。適切な先露光エネルギと適切な長さの待機時間とを選択することにより、本発明による方法を用いて300nm以上の帯域幅を実現することが可能である。
待機時間に続いてさらにもう一つの方法ステップが実施され、このステップで、達成されたフィルムの配向状態が最終的に固定される。このためにフィルムは完全に重合されるかまたはガラス状態に冷却される。固定が重合反応によって行われる場合には、この反応は好ましくは高強度の化学線光による露光、電子線照射またはラジカルを形成する熱重合開始剤たとえば過酸化物によって開始されるのがよい。ただし、架橋はまた、ケイ素と直接結合した水素原子を含んだ架橋剤によって白金族金属触媒の触媒作用下で実現することも可能であり、あるいはカチオンまたはアニオンによって行うこともできる。特に好ましいのは500mJ/cm以上のエネルギ線量を有したUV光による架橋である。この場合、同時に、たとえば重合が不活性ガス雰囲気たとえば窒素雰囲気中で実施されることにより、先露光環境の阻害作用が低下されるのが好ましい。特に好ましいのは不活性ガス雰囲気の酸素含有量が1%以下であることである。ただし、部分重合フィルムはまた、環境の阻害作用に対する遮断層として機能するフィルムでカバーされてもよい。
結果するポリマーフィルムは支持体と共にラミネートの形で使用するかまたは支持体を取り去った後に自由なフィルムとして使用することも可能である。らせん構造を有するポリマーフィルムのさらに別の好ましい応用形態は、更なる方法ステップにおいてポリマーフィルムの破砕、粉砕および篩い分けによって製造されるLC顔料である。欧州特許出願公開第0 601 483 A1号には、カラー光を反射する、キラル相を有する液晶構造の顔料を、支持体からの重合コレステリックフィルムの剥離と、こうして得られた粗塊の続いての粉砕によって製造する方法が記載されている。顔料はその後に適切な結合剤系に混入され、支持体に被着される。LC顔料の場合には、粒子サイズは数多くの応用にとって重要なパラメータである。より薄い顔料は形状係数が同じであれば − たとえばより均質な視覚的印象の点で卓越し、またラッカリングにあってはより薄いトップコート層によっても卓越した − より小さな粒子を結果する。さまざまなプリント法において可能なのは一つの最大粒子サイズでしかない。本発明によるLC顔料の製造方法は、ピッチ勾配急峻度を調節し得ることにより、反射帯域の拡大されたできるだけ薄い顔料小板を製造することができるという利点を有している。多くの応用において好ましいのは1μmから10μmの厚さを有したLC顔料であり、特に好ましいのは1μmから6μmの厚さである。
拡大した反射帯域を有するLC顔料はその反射帯域がより広いことからより高い光反射を示し、そのためより優れた明るさを達成する。加えてさらに、適切に拡大された反射帯域により、従来のLC顔料(Helicone(登録商標)HC;Wacker−Chemie GmbH/Muenchen)に比較して、新しい色調ならびに効果を達成することが可能である。反射帯域の少なくとも一部が可視波長域にあるようにキラリカの濃度を選択すれば、これらのLC顔料は装飾的応用にとって極めて適している。また興味深いのは、反射帯域が可視スペクトル域全体をカバーし、こうしてメタリック効果を引き起こす、高反射性のカラーニュートラルLC顔料である。たとえば銀行券、有価印刷物、文書などの偽造を防止するための偽造防止標識の作製または商標保護等にLC顔料は特に有利に使用することができるが、それはこれがほとんどの場合に、これらの応用にすでに使用されているプリントまたはその他のコーティングプロセスに僅かなコストで組み入れることができるからである。これらに応用する場合には、色効果と反射光の偏光とによって、不当なコピーの優れた防止が達成される。この場合、本発明によるLC顔料の特別な利点は、反射帯域が広いため、右旋性ならびに左旋性円偏光子によるかまたは偏光に敏感な検光子による観察に際して、より高い明度コントラストを可能とし、それによって識別がより容易となることである。IR反射LC顔料は、人の眼に不可視であって、IR域における良好な反射のせいで、IR検出器を備えた装置によって検知することのできる標識を作製するのに適している。低濃度のキラリカを含むこの種のLC顔料は可視光の領域で好ましくは透明かつ無色である。この場合、反射帯域下端の波長は好ましくは750nm以上である。本発明によるLC顔料は、すべての波長域において、屈曲した支持体上に波長・偏光選択的な光学的収束素子を作製(欧州特許出願公開第0 685 749 A1号するためにも使用することが可能である。
支持体上にLC顔料を被着するため、これは、たとえば欧州特許出願公開第0 601 483 A1号または同第0 685 749 A1号に記載されているように、適切な結合剤系に混入される。結合剤系に求められる特性、特に光学的特性は、意図されるLC顔料の応用に依存している。好ましくは、少なくとも反射波長域において視覚的に透明な結合剤を使用するのがよい。光学素子には好ましくは、硬化後の平均屈折率がLC顔料の平均屈折率に類似している結合剤系を使用するのがよい。LC顔料を含んだ耐久的な層の作製には好ましくは硬化性結合剤系が適している。ただし特別な応用のため、非硬化性結合剤たとえば油およびペーストを使用することも可能である。特に好ましいのは、LC顔料の物理的特性を変化させないかまたは所定の形で変化させるだけにすぎない結合剤系である。適切な結合剤系はたとえば重合性樹脂(PU樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂)、分散液、溶剤含有ラッカーまたは水性ラッカーまたはすべての透明なプラスチックたとえばポリ塩化ビニル、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネートである。これらの等方性結合剤の他に、液晶系たとえば液晶ポリマーまたは重合性液晶樹脂も結合剤として使用することができる。特別な光学的異方性を有するフィルムの作製には、LC顔料が液体結合剤に混入される。層の表面と平行な小板の配向は、支持体への顔料・結合剤混合物からなる薄層の被着時、上記混合物の押出し時または乾燥時に行われる。それぞれの応用の要件ならびに結合剤の特性に応じ、硬化後にフィルムを支持体から剥がすことが可能である。
本発明による方法で可能となる、らせん分子構造を有するポリマーフィルムの反射帯域の中心波長と幅との制御により、光学素子たとえば偏光子、カラーフィルタ、顔料または反射板の所望の光度特性、特にまた左円偏光または右円偏光用の構造化フィルタおよび反射板の所望の光度特性を容易な方法で調節することが可能である。したがって本発明は、本発明によるらせん分子構造を有するポリマーフィルムからなる少なくとも1層を含んだ光学素子たとえばフィルタ、反射板および偏光子にも関する。光学素子中のこれらの層は、重合性液晶物質にもっぱらその屈折率異方性によって対応すると考えられる帯域幅Δλ=λ・(n−n)/nの好ましくは1.5倍の帯域幅の反射帯域を有している。本発明によるポリマーフィルムは支持体と一体で、または支持体を取り去った後の自由なフィルムとしても、光学素子または光学素子の一部として適している。このポリマーフィルムまたは支持体には、らせん分子構造を有するさらに別のポリマーフィルムまたはその他のフィルムたとえば等方または平面配向された位相差層(たとえばλ/4位相差層)、吸収作用偏光シート、カラーシートまたは接着層も被着することができる。ただし、本発明による方法により、たとえばできるだけ、利用される波長範囲の全体にわたって、それぞれの波長の1/4の位相差値を有する位相差層が重合性液晶物質のキャリアとして使用される光学素子を作製することも可能である。
偏光によって動作する光学装置たとえば液晶表示装置において本発明によるポリマーフィルムはカラー光あるいはまた白色光用の反射型円偏光子として有利に使用される。さらにその他の光学的応用例はフィルタ(欧州特許出願公開第0 302 619 A2号)および、赤外から近UV域までの全波長域用の波長・偏光選択的な光学的収束素子(欧州特許出願公開第0 631 157 A1号)である。これらの光学素子に考えられる応用形態はたとえばビームスプリッタ、鏡およびレンズである。本発明はまた、たとえば欧州特許出願公開第0 606 939 A1号および同第0 606 940 A2号に記載されている類の液晶表示装置の反射型偏光子としての本発明によるポリマーフィルムの使用にも関する。本発明によるらせん分子構造を有するポリマーフィルムからなる少なくとも1層および/または本発明によるLC顔料を含んだその他の装置も同じく本発明の対象である。この種の装置はたとえばプロジェクタ、投写型ディスプレイおよび、偏光による防眩照明を可能とするランプである。
可視波長域における光学的応用の他に、本発明によるポリマーフィルムは、キラリカの濃度が低ければ、赤外(IR)域で円偏光を反射するフィルタの製造に特に好適である。たとえば、屈曲された支持体の使用により、特に、IR域における偏光選択的な光学的収束素子の製造が可能となる。多くの応用にとって特に好ましいのは、可視光に対して完全な透光性を有するIR反射ポリマーフィルムとLC顔料である。このため、帯域下端の波長は750nm以上であるのが好ましい。この種のIR層の応用は、たとえば機械読み取り式の、人の眼に不可視の表記または標識たとえば有価印刷物に付されたまたは商標保護を目的とした偽造防止標識である。これらの応用において、反射されたIR線の円偏光は、再成困難な偽造防止標識であるために、特に有利である。IR反射ポリマーフィルムとIC顔料のさらに別の応用は、たとえば建物または自動車の熱絶縁ガラス用の無色透明の熱絶縁層である。この応用に際しては、できるだけすべての熱放射を反射することが重要であることから、できるだけ広い反射帯域を有しかつコレステリックへリックスの回転方向が反対向きの2層を組合わせて、左旋偏光と右旋偏光を反射するのが好ましい。
らせん構造の局所的変化を基礎とするデジタルあるいはまたアナログ式の光学式記憶媒体も、最終的な重合前にメソゲン基の配向を局所的に変化させることによって製造することが可能である。これは、たとえばUV線不透過マスクによる局所UV照射により、個々の露光ステップの間に外部から作用する配向力またはポリマーフィルムの温度が変化させられる場合に達成することができ、またはたとえばレーザによるポリマーフィルムの局所加熱によるか、または含有されているキラリクムのHTP(らせん捩れ力)をたとえばUV誘起される異性化によって局所的に変化させることによって達成することができる。
コレステリック液晶は非重合状態においてサーモクロミズムを示す。つまり、コレステリック相域の温度変化に際して、らせん分子構造のピッチは変化し、それと共に反射波長も変化する。米国特許第4,637,896号およびR.Maurer et al.,“Cholesteric Reflectors with a Color Pattern”,SID International Symposium Digest of Technical Papers,Vol.25,San Jose,June 14−16,1994,p.399−402には、温度が相違する際にフィルムの個々の領域をマスクを通して連続的に化学線光で照射することにより、この効果を利用してLCポリマーフィルムの面状の色彩構造化を達成する方法が述べられている。液晶相の温度範囲が十分に広ければ、このようにして、たとえばLCDカラーフィルタとして使用することのできる、赤、緑および青のピクセルを有したカラーフィルタ/偏光フィルタを製造することができる。この応用にとって特に好ましいのは、約80−110nmの反射帯域の幅を有するポリマーフィルムであるが、それはこの帯域幅が個々のカラーピクセルの最大の明るさと彩度とを可能にするからである。逆のらせん構造を有する白色光用の円偏光子と組合わせることにより、この種の構造化されたカラーフィルタはさらに、LCDまたはその他の、偏光で動作する光学装置の明るさをさらに向上させることができる。
反射帯域の拡大した、らせん分子構造を有する構造化ポリマーフィルムを製造するため、上述した方法は改良され、化学線による物質の個々の露光はマスクを通して行われる。続いてマスクはずらされるかまたは第二のマスクに替えられ、化学線による物質の露光は場合により先行ステップのその他のパラメータを変えて反復実施され、その際、まだ露光されていないフィルム部分が照射されかつ/またはまだ最終的に固定されていない物質部分が改めて照射される。「先行ステップのパラメータを変えて」とは、方法の反復実施に際して、たとえば第一の方法ステップにおける露光時の温度を変えることにより今や照射される物質域に別の反射色が設定されるかまたは待機時間の温度および/または長さを適切に選択することによりその後の方法ステップにおいて今や照射される物質域に帯域幅の異なった反射帯域が設定されることとして理解されなければならない。場合により、この方法は未照射の物質域につき必要な回数だけ反復される。このようにして、それらの個別カラーを反射帯域の中心波長と幅とのそれぞれの選択を経て自由に設定することのできる、たとえば多色の光構造化フィルタないし反射板を製造することができる。異なったピクセルの反射帯域の中心波長と幅との調節に際する詳細な処置例は欧州特許出願公開第0 885 945 A1号に挙げられている。
実施例
本発明を以下の実施例によって説明することとするが、ただし本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。これらの実施例において、それぞれ別段にことわらないかぎり、すべての量ならびにパーセンテージの記載は重量に基づいている。これらの実施例に使用される混合物成分ならびにそれらの合成は従来の技術において公知に属する。
実施例1
a)液晶混合物の作製(混合物1)
重合性メソゲン化合物、ヒドロキノン−ビス−(4−アクリロイルブトキシ)−ベンゾエート(欧州特許出願公開第1 059 282 A1号から公知の方法により作製)25gと、重合性メソゲン化合物、4−(4′−アクリロイルブトキシ)−安息香酸−(4′′−シアノビフェニル)−エステル(M.Portugall et al.,Macromol.Chem.183(1982)2311により作製)45gと、メソゲン化合物、4−アリールオキシ安息香酸−(4′−シアノビフェニル)エステル(欧州特許出願公開第0 446 912 A1号により作製)30gと、重合性キラリクム、2,5−ビス−[4−[(1−オキソ−2−プロペニル)オキシ]ベンゾエート]−1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−グルシトール(欧州特許出願公開第1 046 692 A1号による)8,2gと、シリコン油、AF98/300(Wacker−Chemie GmbH/Muenchen)90mgと、安定剤、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)220gとが、110gのテトラヒドロフラン(THF)と220gのトルオールとからなる溶剤混合物に溶解された。使用前に溶液は濾過されて1μm以上の粒子が除去されて、光重合開始剤、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパノン−1(Irgacure(登録商標)907;Ciba Spezialitaetenchemie GmbH/Lampertsheim)2,2gが添加された。
b)比較例
混合物1はコーティング装置により、クリーンルーム条件下でかつUV線を排除し、黄色環境光にて、連続的に走行するポリエチレンテレフタレートシート(PET)上に被着された。湿潤したフィルムは約1分間にわたり、110℃の熱風中で乾燥させられた。粘着性のある、室温にて白濁した、約6μmの均一な厚さを有するフィルムが生じた。このフィルムは、UV線の排除下で、2分間にわたり空気中で90℃にて調質された。その際、フィルムは完全に透明になり、次いで90℃にて低酸素窒素雰囲気(酸素含有量<0.5%)中で約650mJ/cmの高いUV線量にて照射され、こうして架橋された。
こうして生ずる非粘着、耐引掻き性フィルムは昼光にて垂直方向から観察すると青色を有していた。UV/VIS分光計での透過測定によれば、425nmにて半値幅70nmのほぼボックス形の帯域が判明した。
c)本発明によるポリマーフィルムの製造
混合物1は、比較例1b)と同様に、コーティング装置により、UV線の排除下で、連続的に走行するポリエチレンテレフタレートシート(PET)上に被着された。湿潤したフィルムは1分間にわたり、110℃の熱風中で乾燥させられた。粘着性のある、室温にて白濁した、約6μmの均一な厚さを有するフィルムが生じた。このフィルムはさらに1分間にわたり、空気中で90℃にて調質された。その際、フィルムは完全に透明になり、次いで0.3s間にわたりUV−A線(総線量25mJ/cm)で露光された。さらに1分間、温度不変にて、UV線排除下に置いた後、フィルムは90℃にて低酸素窒素雰囲気(酸素含有量<0.5%)中で約650mJ/cmの高いUV線量にて照射され、こうして最終的に架橋された。
こうして生ずる非粘着、耐引掻き性フィルムは昼光にて垂直方向から観察すると銀色様の色を有していた。フィルムによって反射された光は右円偏光され、フィルムを透過した光は左円偏光されていた。UV/VIS分光計(Spectro 320,Instrument System)による左円偏光の透過測定によれば、450nmから710nmのほぼボックス形の帯域が判明した(左円偏光につきそれぞれ50%透過にて測定)。
フィルムの断面が走査型電子顕微鏡で撮像されて、ピッチが測定された。PET支持体に向いた側の最初の3つのらせんの平均ピッチは320nmであった。これは、プリズム結合器(Metricon Model 2010)で測定された平均屈折率1,66にて、530nmの平均反射波長に相当している。ピッチは、その後、巻数8までほぼ直線的に420nm(700nmの波長に相当)まで増加し、その後、巻数10までコンスタントのままであった。巻数10と12との間でピッチは急激に270nm(450nmの波長に相当)に減少し、巻数14までこの値を維持する。巻数15で始まるフィルムの開放側表面では、表面に対して傾斜したメソゲンの配向を結果するらせんの軽度のねじれが観察される。
反射型偏光子としての使用に際する光増強効果を判定するため、一般市販のLCDディスプレイ用バックライト上に、LCポリマーフィルムと、λ/4特性を有する位相差シートと、λ/4シートの軸に対して45°に配向された直線偏光子が配置されて、光強度が測定された。同じ測定が、LCポリマーフィルムとλ/4シートなしの、直線偏光子付きLCDバックライト装置を用いて実施された。双方の測定の比較に際し、垂直方向から観察するとLCポリマーフィルム付きの装置の明るさはLCポリマーフィルムなしのそれよりも42%明るいことが見出された。60°までのすべての視角の平均で、明るさの増強は30%であった。
フィルムの安定性をテストするため、フィルムは80℃にてオーブン中に8日間にわたって放置され、続いて再度、UV/VIS分光計で透過測定が行われた。目視判定によって不変のフィルムは、透過についても変わることなく、450nmから710nmのほぼボックス形の帯域を示した。
d)比較例
混合物1は、比較例1b)と同様に、コーティング装置により、UV線の排除下で、連続的に走行するポリエチレンテレフタレートシート(PET)上に被着された。湿潤したフィルムは1分間にわたって110℃の熱風中で乾燥させられた。粘着性のある、室温にて白濁した、約6μmの均一な厚さを有するフィルムが生じた。このフィルム上に被覆層として第二のPETシートが貼り合わされた。この積層フィルムは、比較例1c)と同様に、1分間にわたって空気中で90℃にて調質された。その際、積層フィルムは完全に透明になり、次いで0.3s間にわたりUV−A線(総線量25mJ/cm)で露光された。温度不変にてさらに1分間、UV線排除下に置いた後、フィルムは90℃にて低酸素窒素雰囲気(酸素含有量<0.5%)中で約650mJ/cmの高いUV線量にて照射され、こうして最終的に架橋された。
こうして生ずる非粘着、耐引掻き性フィルムは昼光にて垂直方向から観察すると青色を有していた。UV/VIS分光計での透過測定によれば、430nmにて半値幅75nmのほぼボックス形の帯域が判明した。
e)比較例
比較例1d)と同様にしてポリマーフィルムを製造する際に、LCフィルムの乾燥後、ポリエチレンテレフタレートシート(PET)に代えて、セルローストリアセテートシート(TAC)が被覆層として貼り合わされた。最終的な架橋後の非粘着、耐引掻き性フィルムは昼光にて垂直方向から観察すると同じく青色を有していた。UV/VIS分光計での透過測定によれば、比較例1d)と同じく、430nmにて半値幅75nmのほぼボックス形の帯域が判明した。
実施例2
a)液晶混合物の作製(混合物2)
重合性メソゲン化合物、ヒドロキノン−ビス−(4−アクリロイルブトキシ)−ベンゾエート(欧州特許出願公開第1 059 282 A1号から公知の方法により作製)79gと、重合性メソゲン化合物、4−(4′−アクリロイルブトキシ)−安息香酸−4′′−ビフェニルエステル(米国特許第4,293,435号により作製)79gと、重合性キラリクム、2,5−ビス−[4−[(1−オキソ−2−プロペニル)オキシ]ベンゾエート]−1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−グルシトール(欧州特許出願公開第1 046 692 A1号による)13gと、シリコン油、AF98/300(Wacker−Chemie GmbH/Muenchen)110mgと、安定剤、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)350mgとが、120gのテトラヒドロフラン(THF)と240gのトルオールとからなる溶剤混合物に溶解された。使用前に溶液は濾過されて1μm以上の粒子が除去され、光重合開始剤、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパノン−1(Irgacure(登録商標)907;Ciba Spezialitaetenchemie GmbH/Lampertsheim)3.5gが添加された。
b)比較例
混合物2はコーティング装置により、クリーンルーム条件下でかつUV線を排除し、黄色環境光にて、連続的に走行するポリエチレンテレフタレートシート(PET)上に被着された。湿潤したフィルムは1分間にわたり、110℃の熱風中で乾燥させられた。粘着性のある、室温にて白濁した、約6μmの均一な厚さを有するフィルムが生じた。このフィルムは、UV線の排除下で、2分間にわたり空気中で95℃にて調質された。その際、フィルムは完全に透明となり、次いで95℃にて低酸素窒素雰囲気(酸素含有量<0.5%)中で約650mJ/cmの高いUV線量にて照射され、こうして架橋された。
こうして生ずる非粘着、耐引掻き性フィルムは昼光にて垂直方向から観察すると青色を有していた。UV/VIS分光計での透過測定によれば、470nmにて半値幅55nmのほぼボックス形の帯域が判明した。
c)本発明によるポリマーフィルムの製造
混合物2は、比較例2b)と同様に、コーティング装置により、UV線の排除下で、連続的に走行するポリエチレンテレフタレートシート上に被着された。湿潤したフィルムは1分間にわたり、110℃の熱風中で乾燥させられた。粘着性のある、室温にて白濁した、約6μmの均一な厚さを有するフィルムが生じた。このフィルムはさらに1分間にわたり、空気中で95℃にて調質された。その際、フィルムは完全に透明になり、次いで0.3s間にわたりUV−A線(総線量25mJ/cm)で露光された。さらに1分間、温度不変にて、UV線の排除下に置いた後、フィルムは95℃にて低酸素窒素雰囲気(酸素含有量<0.5%)中で約650mJ/cmの高いUV線量にて照射され、こうして最終的に架橋された。
こうして生ずる非粘着、耐引掻き性フィルムは昼光にて垂直方向から観察すると金色様の色を有していた。フィルムによって反射された光は右円偏光されていた。UV/VIS分光計での透過測定によれば、500nmから680nmの拡大された反射帯域が判明した(左円偏光につきそれぞれ50%透過にて測定)。ピッチ分布は非対称で、PET支持体側に最長ピッチを有していた。
d)LC顔料の製造
例2c)で得られたLCポリマーフィルムは、刃を用いてPETシートから剥がされて、破砕され、続いてラボ汎用ミルAlpine 200 LSで微粉砕された。このようにして、平均粒子直径が約50μmまでの粒子が製造された。こうした得られた粉末状物質は続いて、網目サイズ50μmの分析用ふるいで篩い分けされ、次いで従来のアルキド−メラミン−樹脂結合剤系(Sacolyd F410/Sacopal M110;Kolms Chemie/Krems,Oesterreich)に混入された。結合剤系の粘度は稀釈剤(芳香族炭化水素とメチルイソブチルケトンとからなる混合物)を用い、DIN−4−流出カップで約80sの流出時間に調整された。
このようにして得られたLC顔料と結合剤とからなる混合物は黒く下塗りされた薄板上にフィルム塗布ナイフ(Fa.Erichsen)を用いて厚さ120μmの湿潤フィルム層として被着された。続いて、この薄板は1時間にわたって80℃にて乾燥させられた。乾燥後の薄板は、垂直方向から見下ろすと、強度の光輝性を有する銀様金色を示し、もっと低い視角から眺めると銀様緑色の色調に変化した。右円および左円偏光子での観察によれば、昼光でも人工光でも、コレステリック帯域の拡大なしの、らせん分子構造を有するポリマーフィルムから製造されたHeliconen(登録商標)(Wacker−Chemie GmbH/Muenchen)の場合よりも視覚的にいっそう明瞭に現れる特に顕著な明暗コントラストが確認された。
実施例3
ガラス板に、ビロード布で一方向にこすられた、ポリイミド樹脂からなる配向層が設けられた。混合物2は、UV線の排除下で黄色環境光にて、スピンコーティングによりポリイミド層上に被着され、その後、数分間にわたって室温にて乾燥させられ、約5μmの厚さの白濁した粘着性フィルムが形成された。フィルムはその後、空気の満たされた、水晶窓付きの加熱ケーシング中に置かれた。このケーシングの温度は55℃に設定されていた。フィルムが透明になった後、フィルムの半分(ゾーン2)がアルミニウムフォイルで被覆され、次いで、被覆されていない半分(ゾーン1)が水晶窓を通して、空気中にて、0.8s間にわたってUV−A線(総線量、約26mJ/cm)で露光された。露光源としては、タイムスイッチでシャッターが制御される水銀アーク灯(Model 68810,L.O.T.−Oriel GmbH)が使用された。続いて、ケーシング内の温度は95℃に引上げられた。アルミニウムフォイルが取り去られ、フィルムが再び透明になった後、それは再度、空気中で、0.8s間にわたりUV−A線(総線量26mJ/cm)で露光された。続いてケーシングに窒素が満たされた。、温度不変にて1分後、フィルムは窒素雰囲気中で95℃にて約2J/cmのUV線量で最終的に架橋された。
こうして生ずる非粘着、耐引掻き性フィルムは昼光にて垂直方向から観察すると、ゾーン1は赤銅色を有し、ゾーン2は緑黄色を有していた。フィルムによって反射された光は右円偏光されていた。UV/VIS分光計での透過測定によれば、ゾーン1では550nmから710nmの拡大された反射帯域が判明し(左円偏光につきそれぞれ50%透過にて測定)、ゾーン2では480nmから650nmの拡大された反射帯域が判明した。ピッチ分布は非対称で、それぞれガラス板側により長いピッチを有していた。

Claims (2)

  1. 以下のステップ:
    − 重合性液晶物質からなる混合物(これは
    a)それぞれ少なくとも1メソゲン基と少なくとも1重合性官能基とを有するモノマーまたはオリゴマーおよび
    b)1キラル化合物を含む)を単一の支持体上に単一層として被着するステップと、
    −メソゲンと支持体表面との相互作用または電場または磁場による、物質のずりによって物質を配向し、この結果、軸が層を横切って延びるらせん構造にメソゲン基が配列されるステップと、
    − 重合阻害的に作用する環境中での化学線の作用によるこの層の部分重合ステップと、
    − 化学線の排除下で10s〜60s待機するステップと、この間に物質が部分重合構造中で新たに配向される、
    − フィルムの完全な重合またはガラス状態へのフィルムの冷却によって部分重合構造中で最終的な固定を実施するステップと
    からなる、ピッチ勾配を調節し得るらせん分子構造を有する、フィルム表面に対して垂直な方向に短いピッチ、長いピッチおよび平均ピッチの順序のらせん構造を含み、その際、該ピッチは反射波長/平均屈折率から計算されるポリマーフィルムであって、重合性液晶物質からなる混合物の単一層から製造され、短いピッチと長いピッチとの間の交代はらせん構造の巻数10未満で生じ、かつ短いピッチ、長いピッチおよび平均ピッチを有する層はそれぞれ少なくとも3ピッチの層厚を有し、ポリマーフィルムの厚さは反射帯域の幅を(n −n )(式中、n とn は複屈折媒質中の異常光屈折率(n )と常光線屈折率(n )である)で除した値の2から20倍であることを特徴とするポリマーフィルムの製造方法。
  2. 請求項に記載の方法において、重合性液晶物質からなる混合物の被着とそれに続くメソゲンの配向はクリーンルーム条件下でかつUV線を排除して実施されることを特徴とする方法。
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