JP7175994B2 - 反射シート - Google Patents
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Description
また、特許文献1には、2層のコレステリック液晶層において、厚さ方向に連続的または段階的に螺旋ピッチを変化させることにより、より良好な金属調の光沢を得られることが記載されている。コレステリック液晶層が選択的に反射する波長帯域は、コレステリック液晶層が有する螺旋構造の螺旋ピッチの長さに相関する。従って、厚さ方向に螺旋ピッチが変化するコレステリック液晶層は、選択的な反射波長帯域が広くなり、より良好な金属調の光沢が得られる。
コレステリック液晶層は、断面を走査型電子顕微鏡で観察した際に、コレステリック液晶相に由来して、明部と暗部との縞模様が観察される。光を鏡面反射する通常のコレステリック液晶層は、この明部と暗部の縞模様が面方向に沿った直線状になる。
これに対して、特許文献2に示されるような、配向膜と接触する液晶化合物のダイレクターの方向がランダムになったコレステリック液晶層では、液晶化合物の螺旋軸が様々な方向を向く。その結果、このようなコレステリック液晶層は、明部と暗部の縞模様が、厚さ方向に波を打ったような波打ち構造となる。このような波打ち構造を有するコレステリック液晶層は、入射した光を鏡面反射せずに、螺旋軸の方向に応じて拡散反射する。
しかしながら、コレステリック液晶層を用いて、広い波長帯域の光を良好な拡散性で反射でき、かつ、ムラ等の目立たない良好な特性を有する反射シートは、未だ、実現されていない。
[1] コレステリック液晶相を固定化してなる反射層を、複数、積層した構成を有し、
反射層は、走査型電子顕微鏡によって観察される断面において、コレステリック液晶相に由来する明部および暗部の少なくとも一部が、波打ち構造を有し、
反射層の少なくとも1層は、厚さ方向で螺旋ピッチが変化している構造である、ピッチグラジエント構造を有し、
積層された複数層の反射層のうち、反射層の表面以外を形成面とする反射層を下層反射層とした際に、下層反射層は、他の反射層よりも厚さが薄いことを特徴とする反射シート。
[2] 下層反射層の厚さが3.5μm以下である、[1]に記載の反射シート。
[3] 下層反射層以外の反射層の少なくとも1層が、厚さが4μm以上である、[1]または[2]に記載の反射シート。
[4] 下層反射層以外の反射層の少なくとも1層が、厚さが下層反射層よりも1μm以上、厚い、[1]~[3]のいずれかに記載の反射シート。
[5] 下層反射層以外の反射層の少なくとも1層が、ピッチグラジエント構造を有する、[1]~[4]のいずれかに記載の反射シート。
[6] 全ての反射層がピッチグラジエント構造を有する、[5]に記載の反射シート。
[7] 積分反射スペクトルの半値幅が100nm以上である、[1]~[6]のいずれかに記載の反射シート。
[8] 反射層の波打ち構造におけるピーク間距離の平均値が0.5~50μmである、[1]~[7]のいずれかに記載の反射シート。
[9] 反射層を、2層、有する、[1]~[8]のいずれかに記載の反射シート。
[10] 支持体と、支持体の一方の表面に設けられる下地層と、を有し、下層反射層が下地層に隣接する、[1]~[9]のいずれかに記載の反射シート。
[11] 支持体を有し、下層反射層が支持体に隣接する、[1]~[9]のいずれかに記載の反射シート。
[12] 支持体が剥離可能である、[10]または[11]に記載の反射シート。
なお、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
本発明において、反射シートの波長λにおける積分反射率I-R(λ)は、反射シートの反射層面(コレステリック液晶層面)から光が入射するように、分光光度計(日本分光社製、V-550)に大型積分球装置(日本分光社製、ILV-471)を取り付けたものを用いて、光トラップによって測定すればよい。
本発明において、反射シートの波長λにおける鏡面反射率S-R(λ)は、反射シートの反射層面から光が入射するように、分光光度計(日本分光社製、V-550)に絶対反射率測定装置(日本分光社製、ARV-474)を取り付けたものを用いて、入射角5°において測定すればよい。
本発明において、硬化率は、重合性の官能基の消費割合を、IR(Infrared)吸収スペクトルを用いて測定した値である。
例えば、試料を斜めに切削して、膜厚方向を面内に露出させる。生成した試料切片をATR-IR(Attenuated Total Reflection-infrared spectroscopy)法によって、IR吸収スペクトルを測定する。得られた吸収スペクトルにおける1720cm-1付近のカルボニル基に基づく吸収強度と、810cm-1付近の炭素-炭素二重結合に基づく吸収強度との比から、重合性の官能基の消費割合を定量できる。
なお、反射層の両界面の硬化率を定量する場合は、生成した試料切片を膜厚方向に5等分して、最も外側の2領域に相当する領域について、上述したATR-IR法によるIR吸収スペクトルを測定することで、求めればよい。
本発明において、反射層(コレステリック液晶層)の選択反射中心波長、および、選択的な反射波長帯域における半値幅は、以下の方法で求めればよい。
すなわち、上述した方法によって積分反射率を測定すると、波長を横軸にした山型(上に凸型)である積分反射率のスペクトル波形が得られる。このときの積分反射率の最大値と最小値の平均反射率(算術平均)を求め、波形と平均反射率との2交点の2つの波長のうち、短波側の波長の値をλα(nm)、長波側の波長の値をλβ(nm)とし、下記式により算出する。
選択反射中心波長=(λα+λβ)/2
半値幅=(λβ-λα)
ここで、拡散反射性が低く、鏡面反射性(正反射性)の強い試料の場合は、積分反射率の積分反射スペクトルの波形が鋸歯状に乱れる場合がある。このような場合は、上述した鏡面反射率のスペクトル波形にて、鏡面反射率の最大値と最小値の平均反射率(算術平均)を求め、波形と平均反射率との2交点の2つの波長のうち、短波側の波長の値をλα(nm)、長波側の波長の値をλβ(nm)として、上述の式により選択反射波長を算出すればよい。
別の方法として、Axometrix社のAxoscan等で、試料の透過スペクトルを測定することで、選択反射中心波長および半値幅を測定する方法が例示される。透過スペクトルを測定すると、波長を横軸にした谷型(下に凸型)である透過スペクトル波形が得られる。このときの透過率の最大値と最小値の平均反射率(算術平均)を求め、波形と平均透過率の2交点の2つの波長のうち、短波側の波長の値をλα(nm)、長波側の波長の値をλβ(nm)とすることで、上述した式により、選択反射中心波長および半値幅を算出する。
図1に示す反射シート10は、支持体12と、支持体12の一方の表面に形成される下地層14と、下地層14の表面に形成される第1反射層16と、第1反射層16の表面に形成される第2反射層18とを有する。従って、反射層ではない、下地層14の表面に形成される第1反射層16は、本発明における下層反射層となる。
なお、以下の説明では、図中上方すなわち第2反射層18側を上、図中下方すなわち支持体12側を下、とも言う。
図1は、反射シート10の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)で観察した状態を概念的に示す図である(後述する図2および図3も同様)。
第1反射層16および第2反射層18は、いずれもコレステリック液晶相を固定してなる、コレステリック液晶層である。従って、第1反射層16および第2反射層18には、コレステリック液晶相に由来する明部Bと暗部Dとの縞模様が観察される。
反射シート10において、支持体12は、下地層14、第1反射層16および第2反射層18を支持するものである。
支持体12には、制限はなく、公知のシート状物(フィルム、板状物)が利用可能である。一例として、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル、ポリカーボネート(PC)、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、シクロオレフィン樹脂、ポリアミド、ポリオレフィン、セルロース誘導体、および、シリコーン等からなる樹脂フィルムが例示される。
剥離性の支持体12としては、セルロース誘導体、シクロオレフィン樹脂、および、ポリエチレンテレフタレートを含む樹脂等からなる樹脂フィルムが例示される。中でも、ポリエチレンテレフタレートを含む樹脂からなる樹脂フィルムは、好ましく例示される。
また、非剥離性の支持体12と下地層14との間に、公知の剥離層を設けることで、剥離性の支持体12としてもよい。さらに、非剥離性の支持体12の表面に公知の表面処理を施すことで、剥離性の支持体12としてもよい。
剥離性の支持体12は、例えば、加飾シートなどの他の反射シートおよび各種の光学デバイス等に貼着された後、画像表示装置を製造するために画像表示装置の構成部材に貼着された後、ならびに、自動車車内用の内装部材に貼着された後などに、反射シート(下地層14)から剥離される。
支持体12の厚さは、20μm以上が好ましく、40μm以上がより好ましい。また、剥離性の支持体12の厚さは、35μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましく、80μm以上がさらに好ましい。下地層14および第1反射層16等の反射層を形成する際の基材となる支持体12の厚さを20μm以上、特に剥離性の支持体12の厚さを50μm以上とすることにより、ムラのない層を得ることができる。
支持体12の厚さの上限には制限はないが、反射シート10が無駄に厚くなることを防止できる等の点で、1000μm以下が好ましく、500μm以下より好ましく、300μm以下がさらに好ましい。
図示例の反射シート10において、支持体12の上には下地層14が形成される。
下地層14としては、一例として、後述する第1反射層16を形成する際に、溶剤による支持体12の損傷を防止する保護層として作用する層、および、第1反射層16の形成面と第1反射層16の形成材料(後述する液晶組成物)との表面エネルギーの差を小さくする層、等が例示される。また、下地層14は、支持体12が剥離性である場合に、反射シート10を他の部材に貼着して、支持体12を剥離した後に、第1反射層16を保護するための保護層として作用してもよい。
下地層14の形成材料には、制限は無く、下地層14に要求される作用に応じて、公知の各種の材料が、各種、利用可能である。下地層14の形成材料としては、例えば、ポリアクリレート樹脂、ポリメタクリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、および、ポリイミド樹脂が挙げられる。中でも、ポリアクリレート樹脂、および、ポリメタクリレート樹脂は、好ましく例示される。下地層14としては、一例として、(メタ)アクリレートモノマーを含む非液晶性組成物を塗布して、硬化することで形成する下地層が例示される。
下地層14の厚さには制限はなく、下地層14の形成材料に応じて、要求される特性を満たすことができる厚さを、適宜、設定すればよい。下地層14の厚さは、0.01~8μmが好ましく、0.05~3μmがより好ましい。なお、支持体12にポリカーボネートを使用した場合には、支持体12からの成分抽出が反射層に影響する場合がある。従って、支持体12にポリカーボネートを使用した場合には、支持体12からの成分抽出による反射層への影響を防ぐため、下地層14の厚さは、0.01~8μmが好ましく、2.5~6μmがより好ましい。
従って、本発明の反射シートは、支持体12および下地層14の一方、または、両方を、有さなくてもよい。
反射シート10において、下地層14の表面には第1反射層16(下層反射層)が形成され、第1反射層16の表面には第2反射層18が形成される。
第1反射層16および第2反射層18は、共に、コレスティック液晶相を固定してなる、コレスティック液晶層である。ここで、第1反射層16は、反射層である第2反射層18以外の下地層14を形成面とする。従って、第1反射層16は、本発明における下層反射層である。
一般的なコレステリック液晶相において、選択反射の中心波長(選択反射中心波長)λは、コレステリック液晶相における螺旋ピッチPに依存し、コレステリック液晶相の平均屈折率nとλ=n×Pの関係に従う。そのため、この螺旋ピッチを調節することによって、選択反射中心波長を調節することができる。
コレステリック液晶相の選択反射中心波長は、螺旋ピッチが長いほど、長波長になる。
なお、螺旋ピッチとは、すなわち、コレステリック液晶相の螺旋構造1ピッチ分(螺旋の周期)であり、言い換えれば、螺旋の巻き数1回分であり、すなわち、コレステリック液晶相を構成する液晶化合物のダイレクターが360°回転する螺旋軸方向の長さである。ダイレクターは、例えば棒状液晶であれば、長軸方向である。
なお、ピッチの調節については富士フイルム研究報告No.50(2005年)p.60-63に詳細な記載がある。螺旋のセンスおよびピッチの測定法については「液晶化学実験入門」日本液晶学会編 シグマ出版2007年出版、46頁、および、「液晶便覧」液晶便覧編集委員会 丸善 196頁に記載される方法を用いることができる。
なお、コレステリック液晶相の旋回の方向は、コレステリック液晶層を形成する液晶化合物の種類および/または添加されるカイラル剤の種類によって調節できる。
図示例において、第1反射層16および第2反射層18は、上方に向かって、螺旋ピッチが、漸次、大きくなっている。すなわち、第1反射層16および第2反射層18は、上方に向かって、選択反射中心波長すなわち選択的に反射する光の波長帯域が、漸次、長波長になる。
以下の説明では、コレステリック液晶層において、厚さ方向で螺旋ピッチが変化するピッチグラジエント構造を、PG構造(Pitch Gradient構造)とも言う。
例えば、光の照射によってHTPが小さくなるカイラル剤を用いることにより、光の照射によってカイラル剤のHTPが低下する。
ここで、照射される光は、コレステリック液晶層の形成材料によって吸収される。従って、例えば、上方から光を照射した場合には、光の照射量は、上方から下方に向かって、漸次、少なくなる。すなわち、カイラル剤のHTPの低下量は、上方から下方に向かって、漸次、小さくなる。そのため、HTPが大きく低下した上方では、螺旋の誘起が小さいので螺旋ピッチが長くなり、HTPの低下が小さい下方では、カイラル剤が、本来、有するHTPで螺旋が誘起されるので、螺旋ピッチが短くなる。
すなわち、この場合には、コレステリック液晶層は、上方では長波長の光を選択的に反射し、下方では、上方に比して短波長の光を選択的に反射する。従って、厚さ方向で螺旋ピッチが変化するPG構造のコレステリック液晶層を用いることにより、広い波長帯域の光を選択的に反射できる。
すなわち、本発明において、第1反射層16および第2反射層18は、コレステリック液晶構造を有し、螺旋軸と反射層の表面とのなす角が周期的に変化する構造を有する層である。言い換えれば、両反射層は、コレステリック液晶構造を有し、コレステリック液晶構造はSEMにて観測される反射層の断面図において明部Bと暗部Dとの縞模様を与え、暗部がなす線の法線と反射層の表面となす角が周期的に変化する、反射層である。
好ましくは、波打ち構造とは、縞模様を成す明部Bまたは暗部Dの連続線において、コレステリック液晶層(反射層)の平面に対する傾斜角度の絶対値が5°以上である領域Mが少なくとも1つ存在し、かつ、領域Mを面方向に挟んで最も近い位置にある、傾斜角度が0°の山または谷が特定される構造である。
傾斜角度0°の山または谷とは、凸状、凹状を含むが、傾斜角度0°であれば、階段状および棚状の点も含む。波打ち構造は、縞模様の明部Bまたは暗部Dの連続線において、傾斜角度の絶対値が5°以上である領域Mと、それを挟む山または谷とが、複数、繰り返すのが好ましい。
先にも述べたが、図2に示すように、基板30上に形成されたコレステリック液晶層32の断面をSEMで観察すると、明部Bと暗部Dとの縞模様が観察される。すなわち、コレステリック液晶層の断面では、厚さ方向に明部Bと暗部Dとを交互に積層した層状構造が観察される。
コレステリック液晶層では、明部Bと暗部Dの繰り返し2回分が、螺旋ピッチに相当する。このことから、コレステリック液晶層すなわち反射層の螺旋ピッチは、SEM断面図から測定することができる。明部Bと暗部Dの繰り返し2回分とは、すなわち、明部3つ、および、暗部2つ分である。
つまり、コレステリック液晶相を固定してなるコレステリック液晶層において、明部Bと暗部Dとが波打ち構造を有することにより、拡散反射性の高い反射層が実現できる。
以下の説明では、コレステリック液晶層(反射層)が、SEMで観察する断面において、コレステリック液晶相に由来する明部Bと暗部Dとが、波打ち構造を有する構成を、単に『コレステリック液晶層(反射層)が波打ち構造を有する』とも言う。
波打ち構造を有するコレステリック液晶層は、ラビング等の配向処理を施さない形成面にコレステリック液晶層を形成することで、形成できる。従って、図示例であれば、下地層14にラビング処理等の配向処理を施さずに、第1反射層16を形成することで、波打ち構造を有する第1反射層を形成できる。
すなわち、配向処理を施さない下地層14にコレステリック液晶層である第1反射層16を形成すると、液晶化合物に対する水平配向規制力がないために、下地層14の物性に応じて、下地層14の表面において、液晶化合物の配向方向が様々な方向になる。このような状態で第1反射層16を形成すると、コレステリック液晶相を構成する液晶化合物の螺旋軸が様々な方向を向き、その結果、第1反射層16において、明部Bと暗部Dの縞模様が、波打ち構造となる。
従って、波打ち構造を有する第1反射層16の上に、コレステリック液晶層である第2反射層18を形成すると、第2反射層18は、第1反射層16の表面の配向状態を踏襲して、第2反射層18も第1反射層16と同様の波打ち構造を有するコレステリック液晶層となる。そのため、反射シート10において、第1反射層16と第2反射層18とは、波の周期すなわち波打ち構造の凹凸が、ほぼ一致した、同様の波打ち構造となる。
ここで、一般的なカイラル剤は、光を照射されることでHTPが低下する。また、カイラル剤のHTPを変化させるための光は、通常、支持体12とは逆側から照射される。特に、第2反射層18、さらに第2反射層18の後に形成される反射層は、先に形成した反射層(コレステリック液晶層)による影響を無くすため、カイラル剤のHTPを変化させるための光は、支持体12とは逆側から照射するのが好ましい。
また、第1反射層16および第2反射層18の内部では、波の振幅は同じでも異なってもよく、波の振幅が同じ領域と異なる領域とが混在してもよい。
すなわち、本発明の反射シート10において、第1反射層16および第2反射層18における明部Bおよび暗部Dは、ここで生じる欠陥部等に起因して波打ち構造になっていない領域を含んでもよい。
本発明の反射シート10は、このような構成を有することにより、広い波長帯域の光を良好な拡散性で反射でき、しかも、反射層(コレステリック液晶層)の欠陥に起因する色ムラおよび光量ムラ等が目立たない、良好な特性を有する反射シートを実現している。
ここで、上述したように、PG構造は、光の照射によってHTPが変化するカイラル剤を用い、コレステリック液晶層の形成時に、カイラル剤が吸収する波長の光を照射することで、厚さ方向の光の照射量すなわちHTPの変化量を変えることで得られる。従って、コレステリック液晶層を形成する際の光の照射量の差が、厚さ方向で大きいほど、選択的な反射波長帯域を広くできる。
一方、PG構造は、コレステリック液晶相の螺旋ピッチが変化する構造である。そのため、PG構造のコレステリック液晶層は、螺旋ピッチの変化に応じて、コレステリック液晶層の欠陥がある場合に、これを増幅するような働きをしてしまい、欠陥が目立つ。この欠陥の増幅作用は、コレステリック液晶層が厚いほど、大きくなる。
そのため、波打ち構造およびPG構造を有し、かつ、ある程度の厚さを有するコレステリック液晶層を反射層として用いる反射シートは、反射層の欠陥があると、通常のコレステリック液晶層に比べて欠陥が目立ち、年輪のような色ムラおよび反射光量ムラ等を生じてしまう。
上述したように、第1反射層16は、配向規制力の無い下地層14に形成されるので、欠陥が生じやすい。しかしながら、第1反射層16は波打ち構造に配向されたものであり、表面には、ある程度の配向規制力を有する。
また、上述したように、第2反射層18は、第1反射層16の表面の配向状態を踏襲する。ここで、第1反射層16は波打ち構造に配向された、表面に配向規制力を有するものであるので、結果的に、この上に形成される第2反射層18は、配向処理を施された形成面に形成された場合と同様になる。そのため、第2反射層18は、波打ち構造を有するにも関わらす、欠陥の発生を大幅に抑制でき、したがって、厚くしても欠陥が目立たない。
加えて、欠陥が多い第1反射層16は、第2反射層18よりも薄いので、PG構造を有していても、欠陥の増幅作用は小さく、欠陥を目立たなくできる。
従って、本発明によれば、波打ち構造およびPG構造を有するコレステリック液晶層を反射層としても用いる反射シートにおいて、第2反射層18を厚くすることができ、選択的な反射波長帯域が広く、良好な拡散反射性を有し、しかも、欠陥が目立たない、優れた特性を有する反射シートを実現できる。
すなわち、本発明の反射シートは、第1反射層16がPG構造を有し、第2反射層18は螺旋ピッチの均一な構造を有していてもよく、第1反射層16は螺旋ピッチが均一な構造を有し、第2反射層18がPG構造を有していてもよい。
しかしながら、本発明の反射シートにおいては、少なくとも第2反射層18はPG構造を有するのが好ましく、図示例のように、第1反射層16および第2反射層18が、共に、PG構造を有するのがより好ましい。
この点に関しては、反射層を3層以上有する場合も、同様である。すなわち、本発明の反射シートは、複数層の反射層の少なくとも1層がPG構造を有していればよい。しかしながら、本発明の反射シートにおいては、第1反射層16(下層反射層)以外の反射層の少なくとも1層はPG構造を有するのが好ましく、第1反射層16以外の反射層の複数層がPG構造を有するのがより好ましく、第1反射層16以外の全ての反射層がPG構造を有するのがさらに好ましい。この際には、第1反射層16は、PG構造を有していてもいなくてもよいが、PG構造を有するのが好ましい。
第1反射層16の厚さは、3.5μm以下が好ましく、3.2μm以下がより好ましく、2.7μm以下がさらに好ましい。
第1反射層16の厚さを3.5μm以下とすることにより、コレステリック液晶相の自己組織化による配向規制力を膜厚方向に伝播させることができるため、コレステリック液晶層の欠陥をより目立たなくできる点で好ましい。
なお、第2反射層18に対して十分な配向規制力を発現できる等の点で、第1反射層16の厚さは、0.3μm以上が好ましい。
第2反射層18の厚さは、4μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましく、6μm以上がさらに好ましい。
第2反射層18の厚さを4μm以上とすることにより、より広い波長帯域の光を選択的に反射でき、さらに高い反射率を得られる点で好ましい。
なお、反射シート10が無駄に厚くなることを防止できる点で、第2反射層18の厚さは7μm以下が好ましい。
第2反射層18の厚さを第1反射層16よりも1μm以上、厚くすることにより、より広い波長帯域の光を選択的に反射できる、コレステリック液晶層の欠陥をより目立たなくできる等の点で好ましい。
ここで、波打ち構造を有するコレステリック液晶層においては、ピーク間距離が短いほど高い拡散反射性を発現し、また、振幅が大きいほど高い拡散反射性を発現する。
欠陥の少ない波打ち構造を形成し、より優れた拡散反射性を得られる点で、第1反射層16の波打ち構造は、ピーク間距離の平均値が0.5~50μmであるのが好ましく、1.5~20μmであるのがより好ましく、2.5~10μmであるのがさらに好ましい。
なお、上述のとおり、第2反射層18は第1反射層16の波打ち構造を踏襲するので、第2反射層18のピーク間距離の平均値も、第1反射層16と、ほぼ同様になる。
ピーク間距離の平均値は、具体的には、以下のように測定する。まず、上述した、コレステリック液晶層の平面に対する傾斜角度の絶対値が5°以上である領域Mを挟み、最も近い位置にある、2点の傾斜角度0°の山(または谷)について、コレステリック液晶層の面方向の距離を計測する。このような計測を、コレステリック液晶層の断面長軸方向の長さ100μmについて行い、全膜厚において算術平均した値を、ピーク間距離の平均値とする。
従って、第1反射層16が選択的に反射する波長帯域と、第2反射層18が選択的に反射する波長帯域は、同じでも、異なってもよい。また、第1反射層16と第2反射層18とで、反射波長帯域が異なる場合には、重複する波長帯域を有してもよく、重複する波長帯域を有さなくてもよい。
また、第1反射層16が反射する円偏光と、第2反射層18が反射する円偏光とは、旋回方向が同じでも異なってもよい。
以上の点に関しては、3層以上の反射層を有する場合における、各反射層に関しても、同様である。
なお、上述しているが、本発明の反射シートは、3層以上の反射層を有してもよい。各反射層が反射する円偏光の旋回方向は、同じでも、異なっていてもよい。ここで、反射層の少なくとも1層がPG構造を有する本発明は、1つの反射層で広い波長帯域に対応して選択的な反射が可能であるので、反射層数を多くする必要は無く、反射層は2層が好ましい。好適な一例として、互いに反射する円偏光の旋回方向が異なる2層の反射層を有する反射シートが例示される。
ここで、第1反射層16および第2反射層18の少なくとも一方は、含有するカイラル剤が吸収する最大吸収波長±10nmの波長の光の吸光度が少なくとも3.2であるのが好ましい。一例として、第1反射層16および第2反射層18の少なくとも一方は、波長313nmの光の吸光度が3.2以上であるのが好ましい。
第1反射層16および第2反射層18の少なくとも一方において、含有するカイラル剤が吸収する最大吸収波長±10nmの波長の光の吸光度を3.2以上とすることにより、反射層に異性化光が染み込むほど光量が減衰し、膜厚方向に異性化光の到達光量分布を形成できるため、良好なPG構造を形成できる点で好ましい。
すなわち、本発明の反射シートにおいては、第1反射層16および第2反射層18のPG構造が、共に、下方に向かって螺旋ピッチが、漸次、長くなっていてもよい。すなわち、本発明の反射シートにおいては、第1反射層16(下層反射層)の形成面に向かって、PG構造の螺旋ピッチが、漸次、長くなってもよい。
あるいは、第1反射層16のPG構造は、上方に向かって螺旋ピッチが、漸次、長くなり、第2反射層18のPG構造は、下方に向かって螺旋ピッチが、漸次、長くなる構成のように、第1反射層16と第2反射層18とで、螺旋ピッチが、漸次、長くなる方向が異なってもよい。
以上の点に関しては、3層以上の反射層を有する場合における、各反射層に関しても、同様である。
なお、カイラル剤は、光の照射によってHTPが小さくなる場合が多いので、本発明の反射シートにおける各反射層の厚さ方向における螺旋ピッチは、硬化率の高い方が長く、硬化率が低い方が短い態様が好ましい。
本発明の反射シート10においては、波長λにおける積分反射率I-R(λ)が、波長λにおける鏡面反射率S-R(λ)の2倍以上であるのが好ましく、2.5倍以上であるのがより好ましく、3倍以上であるのがさらに好ましい。
波長λにおける積分反射率I-R(λ)を、波長λにおける鏡面反射率S-R(λ)の2倍以上とすることにより、より優れた拡散反射性を得られる等の点で好ましい。
より広い波長帯域の光を反射できる等の点で、積分反射スペクトルにおける半値幅は、100nm以上が好ましく、125nm以上がより好ましく、150nm以上がさらに好ましい。
第1反射層16および第2反射層18すなわちコレステリック液晶層は、液晶化合物およびカイラル剤を含有する液晶組成物を用いて形成できる。
コレステリック液晶層の形成に用いられる液晶化合物は、重合性基を2つ以上有することが好ましい。つまり、重合性液晶化合物が好ましい。また、300~400nmにおける平均モル吸光係数が5000未満であるのが好ましい。
液晶化合物は、棒状液晶化合物であっても、円盤状液晶化合物であってもよいが、棒状液晶化合物が好ましい。
コレステリック液晶構造を形成する棒状の液晶化合物としては、棒状ネマチック液晶化合物が例示される。棒状ネマチック液晶化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類、および、アルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類等が好ましく用いられる。低分子液晶化合物だけではなく、高分子液晶化合物も用いることができる。
液晶化合物としては、Makromol.Chem.,190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許第4683327号、米国特許第5622648号および米国特許第5770107号の各明細書、国際公開第1995/22586号、国際公開第1995/24455号、国際公開第1997/00600号、国際公開第1998/23580号、国際公開第1998/52905号、国際公開第2016/194327号および国際公開第2016/052367号公報、特開平1-272551号公報、特開平6-16616号公報、特開平7-110469号公報および特開平11-80081号公報、ならびに、特開2001-328973号公報等に記載されている各化合物が例示される。
液晶組成物すなわちコレステリック液晶層には、2種類以上の液晶化合物を併用してもよい。2種類以上の液晶化合物を併用すると、配向温度を低下させることができる場合がある。
コレステリック液晶層の形成に用いられるカイラル剤は、光の照射によってHTPが変化するカイラル剤であれば、公知の各種のカイラル剤が利用可能であるが、波長313nmにおけるモル吸光係数が30000以上のカイラル剤が好ましく利用される。
カイラル剤はコレステリック液晶相の螺旋構造を誘起する機能を有する。カイラル化合物は、化合物によって、誘起する螺旋のセンスまたは螺旋ピッチが異なるため、目的に応じて選択すればよい。
カイラル剤としては、公知の化合物を用いることができるが、シンナモイル基を有することが好ましい。カイラル剤の例としては、液晶デバイスハンドブック(第3章4-3項、TN、STN用カイラル剤、199頁、日本学術振興会第142委員会編、1989)、ならびに、特開2003-287623号公報、特開2002-302487号公報、特開2002-80478号公報、特開2002-80851号公報、特開2010-181852号公報および特開2014-034581号公報等に記載される化合物が例示される。
カイラル剤と液晶化合物とが、いずれも重合性基を有する場合は、重合性カイラル剤と重合性液晶化合物との重合反応により、重合性液晶化合物から誘導される繰り返し単位と、カイラル剤から誘導される繰り返し単位とを有するポリマーを形成することができる。この態様では、重合性カイラル剤が有する重合性基は、重合性液晶化合物が有する重合性基と、同種の基であることが好ましい。従って、カイラル剤の重合性基も、不飽和重合性基、エポキシ基またはアジリジニル基が好ましく、不飽和重合性基がより好ましく、エチレン性不飽和重合性基がさらに好ましい。
また、カイラル剤は、液晶化合物であってもよい。
液晶組成物における、カイラル剤の含有量は、液晶化合物量の0.01~200モル%が好ましく、1~30モル%がより好ましい。
液晶組成物は、重合開始剤を含有するのが好ましい。紫外線照射により重合反応を進行させる態様では、使用する重合開始剤は、紫外線照射によって重合反応を開始可能な光重合開始剤であるのが好ましい。
光重合開始剤の例には、α-カルボニル化合物(米国特許第2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書記載)、α-炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp-アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60-105667号公報、米国特許第4239850号明細書記載)、アシルフォスフィンオキシド化合物(特公昭63-40799号公報、特公平5-29234号公報、特開平10-95788号公報、特開平10-29997号公報、特開2001-233842号公報、特開2000-80068号公報、特開2006-342166号公報、特開2013-114249号公報、特開2014-137466号公報、特許4223071号公報、特開2010-262028号公報、特表2014-500852号公報記載)、オキシム化合物(特開2000-66385号公報、日本特許第4454067号公報記載)、ならびに、オキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書記載)等が挙げられる。重合開始剤は、例えば、特開2012-208494号公報の段落0500~0547の記載も参酌できる。
アシルフォスフィンオキシド化合物としては、例えば、市販品のIRGACURE810(BASF社製、化合物名:ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド)を用いることができる。オキシム化合物としては、例えば、IRGACURE OXE01(BASF社製)、IRGACURE OXE02(BASF社製)、TR-PBG-304(常州強力電子新材料有限公司製)、アデカアークルズNCI-831、アデカアークルズNCI-930(ADEKA社製)、および、アデカアークルズNCI-831(ADEKA社製)等の市販品を用いることができる。
重合開始剤は、1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
反射層(コレステリック液晶層)を形成する際に、カイラル剤のHTPを変化させるための光照射を行った後に、反射層を硬化するための光照射を行う場合には、カイラル剤のHTPを変化させるための光照射で重合が進行しにくい光重合開始剤を用いるのが好ましい。この場合には、液晶組成物中の光重合開始剤の含有量は、液晶化合物の含有量に対して0.05~3質量%が好ましく、0.3~1.5質量%がより好ましい。また、カイラル剤のHTPを変化させるための光照射と、反射層を硬化するための光照射とを、同時に行う場合には、液晶組成物中の光重合開始剤の含有量は、液晶化合物の含有量に対して0.01~0.3質量%が好ましく、0.01~0.2質量%がより好ましい。
液晶組成物は、硬化後の膜強度向上、耐久性向上のため、任意に架橋剤を含有してもよい。架橋剤としては、紫外線、熱、湿気等で硬化するものが好適に使用できる。
架橋剤には、制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートおよびペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の多官能アクリレート化合物;グリシジル(メタ)アクリレートおよびエチレングリコールジグリシジルエーテル等のエポキシ化合物;2,2-ビスヒドロキシメチルブタノール-トリス[3-(1-アジリジニル)プロピオネート]および4,4-ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン等のアジリジン化合物;ヘキサメチレンジイソシアネートおよびビウレット型イソシアネート等のイソシアネート化合物;オキサゾリン基を側鎖に有するポリオキサゾリン化合物;ならびに、ビニルトリメトキシシランおよびN-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアルコキシシラン化合物などが例示される。
また、架橋剤の反応性に応じて公知の触媒を用いることができ、膜強度および耐久性向上に加えて生産性を向上させることができる。触媒は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
液晶組成物中の架橋剤の含有量は、液晶組成物の固形分に対して、3~20質量%が好ましく、5~15質量%がより好ましい。
液晶組成物には、安定的にまたは迅速にプレーナー配向のコレステリック液晶構造とするために寄与する配向制御剤を添加してもよい。
配向制御剤としては、例えば、特開2007-272185号公報の段落[0018]~[0043]等に記載されるフッ素(メタ)アクリレート系ポリマー、および、特開2012-203237号公報の段落[0031]~[0034]等に記載される式(I)~(IV)で表される化合物等が例示される。
配向制御剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
液晶組成物は界面活性剤を含んでいてもよい。
界面活性剤は、安定的にまたは迅速にプレーナー配向のコレステリック構造とするために寄与する配向制御剤として機能できる化合物が好ましい。界面活性剤としては、例えば、シリコ-ン系界面活性剤およびフッ素系界面活性剤が挙げられ、フッ素系界面活性剤が好ましい。
(CaF2a+1)-(CbH2b)-、(CaF2a+1)-(CbH2b)-O-(CrH2r)-、(CaF2a+1)-(CbH2b)-COO-(CrH2r)-、(CaF2a+1)-(CbH2b)-OCO-(CrH2r)-
(CaF2a+1)-(CbH2b)-O-、(CaF2a+1)-(CbH2b)-COO-、(CaF2a+1)-(CbH2b)-O-(CrH2r)-O-、(CaF2a+1)-(CbH2b)-COO-(CrH2r)-COO-、(CaF2a+1)-(CbH2b)-OCO-(CrH2r)-COO-
上式におけるa、bおよびrの定義は直上の定義と同じである。
その他、液晶組成物は、重合性モノマー等の種々の添加剤から選ばれる少なくとも1種を含有していてもよい。また、液晶組成物中には、必要に応じて、さらに重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、色材、および、金属酸化物微粒子等を、光学性能を低下させない範囲で添加することができる。
液晶組成物の調製に使用する溶媒には、制限はなく、組成物に添加する液晶化合物等に応じて、適宜、選択すればよい。
溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒には、制限はなく、組成物に添加する液晶化合物等に応じて、適宜、選択することができ、例えば、ケトン類、アルキルハライド類、アミド類、スルホキシド類、ヘテロ環化合物、炭化水素類、エステル類、および、エーテル類等が例示される。これらの中でも、環境への負荷を考慮した場合にはケトン類が特に好ましい。
溶媒は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
第1反射層16(コレステリック液晶層)は、液晶化合物、カイラル剤および重合開始剤、さらに必要に応じて添加される界面活性剤等を溶媒に溶解させた液晶組成物を、下地層14に塗布し、乾燥させて塗膜を得、この塗膜に活性光線を照射して液晶組成物を硬化することで、形成できる。これにより、コレステリック規則性が固定化されたコレステリック液晶構造を有する第1反射層16を形成できる。
なお、下地層14に配向処理をラビング等の配向処理を施さないで、液晶組成物を塗布して第1反射層16を形成することで、波打ち構造を有する第1反射層を形成できることは、上述したとおりである。また、液晶組成物の硬化に先立ち、または、液晶組成物の硬化と同時に、カイラル剤のHTPを変化させる光を照射することにより、PG構造を有する第1反射層16を形成できることも、上述したとおりである。
第2反射層18は、第1反射層16を形成した後、第1反射層16の上に、同様にして形成すればよい。なお、第2反射層18は、第1反射層16の表面の配向を踏襲するので、第2反射層18も波打ち構造になるのは、上述したとおりである。また、3層以上の反射層を形成する場合も、反射層の上に、同様に形成すればよい。
液晶組成物の塗布方法には、制限はなく、塗布組成物の性状、ならびに、下地層14および支持体12の形成材料等に応じて、適宜、選択すればよい。
液晶組成物の塗布方法としては、例えば、ワイヤーバーコーティング法、カーテンコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、スプレーコーティング法、および、スライドコーティング法等が例示される。
また、別途、支持体上に塗設した液晶組成物を転写することによって、下地層14(第1反射層16)に、液晶組成物を塗布してもよい。また、液晶組成物を打滴することも可能である。打滴方法としては、インクジェット法が例示される。
塗布した液晶組成物を加熱することにより、液晶分子を配向させる。加熱温度は、200℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましい。この配向処理により、液晶化合物が、螺旋軸を有するようにねじれ配向する構造が得られる。
次いで、配向させた液晶化合物を重合させることにより、液晶組成物を硬化して、反射層を形成する。多官能性液晶化合物の重合は、熱重合および光重合のいずれでもよいが、光重合が好ましい。
液晶組成物の硬化のための光照射は、紫外線照射によって行うのが好ましい。紫外線の照度は、15~1500mW/cm2が好ましく、100~600mW/cm2がより好ましい。また、紫外線の照射エネルギーは、20mJ/cm2~50J/cm2が好ましく、100~1500mJ/cm2がより好ましい。
照射する紫外線の波長は、液晶組成物が含有する液晶化合物等に応じて、適宜、選択すればよい。液晶組成物の硬化には、200~430nmに発光を有する光源を用いるのが好ましく、300~430nmに発光を有する光源を用いるのがより好ましい。また、紫外線を照射する際には、使用する素材の分解および副反応等を防止する観点で、波長300nm以下の光の透過率を20%以下に抑えるために、短波長カットフィルター等を使用してもよい。
PG構造を有するコレステリック液晶層を形成する際には、液晶組成物の硬化に先立ち、カイラル剤のHTPを変化させる光を照射する。または、PG構造を有するコレステリック液晶層の形成において、カイラル剤のHTPを変化させるための光照射と、液晶組成物を硬化させるための光照射とを、同時に行ってもよい。
紫外線照射時の温度は、コレステリック液晶層が乱れないように、コレステリック液晶相を呈する温度範囲に維持するのが好ましい。具体的には、紫外線照射時の温度は、25~140℃が好ましく、30~100℃がより好ましい。
また、紫外線照射時の低酸素雰囲気は、窒素置換等の公知の方法により、雰囲気中の酸素濃度を低下させることで形成すればよい。酸素濃度は、5000ppm以下が好ましく、100ppm以下がより好ましく、50ppm以下がさらに好ましい。
本発明の反射シートは、加飾シート、光反射部材、光拡散板、ハーフミラー、透明スクリーン、撮像素子、センサー、光学デバイス、および、その他の光学素子等の各種の用途に利用可能である。例えば、本発明の反射シートを、反射シートと、反射シートを透過する光を利用する素子とを有する光学デバイスに利用する態様では、本発明の反射シートを用いることで、反射シートを透過する光を利用する素子の表面等で反射する光が、光学デバイスの外まで達しないようにするができ、反射シートを透過する光を利用する素子を認識しにくくできる。
画像表示素子は、公知の画像表示素子が、各種、利用可能である。一例として、液晶表示素子および有機エレクトロルミネッセンス表示素子等が例示される。
支持体として、厚さ50μmのPETフィルム(東洋紡社製、コスモシャインA4100)を用意した。このPETフィルムは、一面に易接着層を有する。
PETフィルムの易接着層の無い面に、下記の組成の下地層塗布液1を、#3.6のワイヤーバーコーターで塗布した。その後、45℃で60秒乾燥し、25℃にて、紫外線照射装置によって、500mJ/cm2の紫外線を照射して、膜厚1.4μmの下地層1を有する支持体を作製した。
[下地層塗布液1]
KAYARAD PET30(日本化薬社製) 100質量部
IRGACURE 907 (チバガイギー社製) 3.0質量部
カヤキュアーDETX(日本化薬社製) 1.0質量部
下記の界面活性剤 F1 0.01質量部
メチルイソブチルケトン 243質量部
下記の3種のカイラル剤A~Cを用意した。このカイラル剤のいずれかを用いて、後述する第1反射層および第2反射層を形成した。
カイラル剤A~Cの最大モル吸光係数、最大モル吸光係数となる波長を表す最大波長、および、波長313nmにおけるモル吸光係数を下記の表1に示す。
[第1反射層の形成]
下記に示す組成物を、25℃に保温された容器中にて、攪拌、溶解させ、反射層用塗布液Ch-Bを調製した。
メチルエチルケトン 144.9質量部
下記の棒状液晶化合物の混合物 100.0質量部
光重合開始剤A 0.02質量部
光重合開始剤B 1.00質量部
カイラル剤B 6.10質量部
上記の界面活性剤 F1 0.027質量部
下記の界面活性剤 F2 0.067質量部
光重合開始剤B; カヤキュアーDETX(日本化薬社製)
その後、低酸素雰囲気下(100ppm以下)にて、40℃で、照射量60mJのメタルハライドランプの光を、光学フィルタSH0350(朝日分光社製)越しに照射し、さらに、100℃で照射量500mJのメタルハライドランプの光を照射することで、コレステリック液晶層である第1反射層を作製した。
下記に示す組成物を、25℃に保温された容器中にて、攪拌、溶解させ、反射層用塗布液Ch-Cを調製した。
メチルエチルケトン 150.6質量部
上記の棒状液晶化合物の混合物 100.0質量部
光重合開始剤B 0.50質量部
カイラル剤C 11.00質量部
上記の界面活性剤 F1 0.027質量部
上記の界面活性剤 F2 0.067質量部
その後、低酸素雰囲気下(100ppm以下)にて、75℃で、照射量60mJのメタルハライドランプの光を、光学フィルタSH0350(朝日分光社製)を通して照射し、さらに、100℃で、照射量500mJのメタルハライドランプの光を照射することで、コレステリック液晶層である第2反射層を形成して、反射シートを作製した。
先に作製した下地層1を有する支持体に、反射層用塗布液Ch-Cを#10.5のワイヤーバーコーターで塗布し、105℃で60秒乾燥した。
その後、低酸素雰囲気下(100ppm以下)にて、75℃で照射量60mJのメタルハライドランプの光を、光学フィルタSH0350(朝日分光社製)を通して照射し、さらに、100℃で、照射量500mJのメタルハライドランプの光を照射することで、コレステリック液晶層である第1反射層を形成した。
その後、低酸素雰囲気下(100ppm以下)にて、40℃で、照射量60mJのメタルハライドランプの光を、光学フィルタSH0350(朝日分光社製)を通して照射し、さらに、100℃で、照射量500mJのメタルハライドランプの光を照射することで、コレステリック液晶層である第2反射層を形成して、反射シートを作製した。
比較例2において、ワイヤーバーコーターのバー番手を変更した以外は同様にして、コレステリック液晶層である第1反射層および第2反射層を形成して、反射シートを作製した。
なお、実施例8では、支持体として、PETフィルムに変えて、膜厚50μmのPCフィルム(住友化学社製、テクノロイ)を用い、さらに、下地層の作製において、ワイヤーバーコーターの番手を#13に変更した以外は、下地層1と同様の方法で、下地層3を作製した。
また、実施例9は、下地層を形成せず、支持体(PETフィルム)の表面に、直接、第反射層を形成した。
さらに、実施例6および実施例7は、下地層1に変えて、下記の下地層塗布液2を用いて下地層2を形成した。
詳細は、下記の表2に示す。
KAYARAD PET30(日本化薬社製) 50質量部
DCP(新中村化学工業社製) 50質量部
IRGACURE 907 (チバガイギー社製) 3.0質量部
カヤキュアーDETX(日本化薬社製) 1.0質量部
上記の界面活性剤 F1 0.01質量部
メチルイソブチルケトン 243質量部
比較例1において、第1反射層の形成に下記の反射層用塗布液Ch-Aを用い、かつ、第1反射層および第2反射層を形成した際のワイヤーバーコーターのバー番手を変更した以外は同様にして第1反射層および第2反射層を形成して、反射シートを作製した。
(反射層用塗布液Ch-A)
メチルエチルケトン 144.9質量部
上記の棒状液晶化合物の混合物 100.0質量部
光重合開始剤A 0.02質量部
光重合開始剤B 1.00質量部
カイラル剤A 6.10質量部
上記の界面活性剤 F1 0.027質量部
上記の界面活性剤 F2 0.067質量部
作製した反射シートの断面をSEMで観察して、SEM画像から、第1反射層および第2反射層の膜厚を確認した。されに、それぞれの反射層が、波打ち構造およびPG構造を有しているか否かを確認した。
波打ち構造を有している場合をA、波打ち構造を有していない場合をB、
PG構造を有している場合をA、PG構造を有していない場合をB、と評価した。
作製した反射シートについて、以下の評価を行った。
第2反射層側から光が入射するように、分光光度計(日本分光社製、V-550)に大型積分球装置(日本分光社製、ILV-471)を取り付けたものを用いて、光トラップを用いず、正反射光を含むようにして、反射シートの積分反射スペクトルを測定した。得られた積分反射スペクトルにおいて、波長350~750nmにおける最大反射率を最大積分反射率[%]とした。
第2反射層側から光が入射するように、分光光度計(日本分光社製、V-550)に大型積分球装置(日本分光社、ILV-471)を取り付けたものを用いて、入射角5°における反射シートの鏡面反射スペクトルを測定した。得られた鏡面反射スペクトルにおいて、波長350~750nmにおける最大反射率を最大鏡面反射率[%]とした。
測定した積分反射スペクトルから、上述のようにして積分反射スペクトルの半値幅[nm]を測定した。
反射シートの断面SEM画像から、上述のようにして、波打構造のピーク間距離の平均値[nm]を測定した。なお、ピーク間距離は、第1反射層および第2反射層の2層の平均とした。
作製した反射フィルムの面状を蛍光灯の下で観察し、塗布部の両端50mmを除く領域のムラを下記の観点で評価した。
A: 年輪状のムラが視認されない。
B: 年輪状のムラがわずかに視認されるが、許容できる。
C: 年輪状のムラがハッキリ視認され、許容できない。
結果を下記の表2に示す。
また、実施例2および実施例3に示されるように、第2反射層を第1反射層よりも1μm以上、厚くすることで、より好適に波打ち構造の欠陥に起因するムラの視認を防止できる。さらに、実施例5および実施例10に示されるように、第1反射層および第2反射層を、共にPG構造とすることにより、半値幅を広くでき、すなわち、選択的な反射波長帯域をより広くできる。
これに対して、同様に2層の反射層を有しても、下層反射層である第1反射層が第2反射層よりも厚い比較例1および比較例3、第1反射層と第2反射層の膜厚が等しい比較例2は、ムラが視認されてしまい、品質的に問題がある。
なお、下地層を下地層2とした実施例6および実施例7は、第2反射層に粘着剤を塗布して、他のシート状物に貼着した後、支持体を容易に剥離できた。
以上の結果より、本発明の効果は明らかである。
12 支持体
14 下地層
16 第1反射層
18 第2反射層
30 基板
32,34 コレステリック液晶層
B 明部
D 暗部
p 距離
Claims (10)
- コレステリック液晶相を固定化してなる反射層を、複数、積層した構成を有し、
前記反射層は、走査型電子顕微鏡によって観察される断面において、前記コレステリック液晶相に由来する明部および暗部の少なくとも一部が、波打ち構造を有し、
全ての前記反射層は、共に、厚さ方向で螺旋ピッチが、漸次、大きくなっている構造である、ピッチグラジエント構造を有し、
前記積層された複数層の反射層のうち、前記反射層の表面以外を形成面とする前記反射層を下層反射層とした際に、前記下層反射層は、他の反射層よりも厚さが薄いことを特徴とする反射シート。 - 前記下層反射層の厚さが3.5μm以下である、請求項1に記載の反射シート。
- 前記下層反射層以外の前記反射層の少なくとも1層が、厚さが4μm以上である、請求項1または2に記載の反射シート。
- 前記下層反射層以外の前記反射層の少なくとも1層が、厚さが前記下層反射層よりも1μm以上、厚い、請求項1~3のいずれか1項に記載の反射シート。
- 積分反射スペクトルの半値幅が100nm以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の反射シート。
- 前記反射層の前記波打ち構造におけるピーク間距離の平均値が0.5~50μmである、請求項1~5のいずれか1項に記載の反射シート。
- 前記反射層を、2層、有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の反射シート。
- 支持体と、前記支持体の一方の表面に設けられる下地層と、を有し、
前記下層反射層が前記下地層に隣接する、請求項1~7のいずれか1項に記載の反射シート。 - 支持体を有し、
前記下層反射層が前記支持体に隣接する、請求項1~7のいずれか1項に記載の反射シート。 - 前記支持体が剥離可能である、請求項8または9に記載の反射シート。
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