JP4566431B2 - 塗布膜転写具 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ヘッド本体の転写部にローラーヘッドを用い、塗布膜転写テープ角度を自由に変化でき、塗布膜を紙面に対して確実に塗布する塗布膜転写具に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より誤字等を修正するための字消し具として塗布膜転写具は多数発売され出願されている。例えば、実開平6−73026号公報には、図15に示すように、本体ケース100の先端側に転写ヘッド200をねじる方向に角度変更可能な転写ヘッド保持部300を設け、転写ヘッド200は基端側において転写ヘッド保持部300に取付ける構造が示されている。
また、他の従来例として特許第2829699号公報には、図16に示すように、本体ケース100の先端部に塗膜転写テープを被転写部上(紙面等)に加圧する塗膜転写用ヘッド200が突設され、このヘッドは上記塗布膜転写テープを案内及び加圧するヘッド本体201と、本体ケースの先端部に保持される被軸受部202とからなり、この被軸受部が上記先端部に回転可能に軸支されて、ヘッドはその軸心まわりに角度調整可能な塗膜転写具の構造が示されている。
【0003】
しかしながら、これらの従来技術は、ヘッド先端部に樹脂製のへら状ヘッドを用いているために、使用時に紙面への接触が硬いので使用感が良くなく、重ね塗りの様に転写した場合には先に転写してある部分を剥してしまう事があり、また紙面への接触が強すぎると塗布膜転写テープを切ってしまう等々の欠点があった。
【0004】
この点、ヘッド本体の転写部にローラーヘッドを用いると、上記のような欠点は解消される。
しかしながら、従来のローラーヘッド方式ではヘッドをねじる方向に回転させると、塗膜転写テープと転写部の角度が変わることで塗布膜転写テープがローラー中心から左右方向にずれたり、ヘッド本体から塗布膜転写テープが外れたりして転写作業が不可能となったり、塗布膜転写テープ側面がガイドフランジに接触することで転写膜は剥がれが発生したりして転写不良となったりする等の不具合が生じた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は上記従来技術の問題点に鑑みなされたもので、ヘッド本体の角度変化により塗布膜転写テープと転写部の角度が変わることで生じるローラー軸方向のスライド荷重を、塗布膜転写テープをひねる方向に変化させることで打ち消し、常にローラー軸方向中心部で塗布膜転写テープを走行させ、転写作業をすることができる塗布膜転写具を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、ヘッド本体の転写部に塗布膜転写テープを案内及び加圧するローラーを使用した塗布膜転写具において、前記ヘッド本体をねじる方向に回転可能なように塗布膜転写具の本体に取付け、前記ヘッド本体の先端部には、前記ヘッド本体が前記塗布膜転写具の本体に対して回転していない基本位置にあるときに、懸架される塗布膜転写テープに直交するように前記ローラーが軸支され、前記ヘッド本体の後端近傍には、前記ローラーの軸方向に対して平行となるようにリブが設けられ、前記リブは、少なくとも前記塗布膜転写具の本体から繰り出される前記塗布膜転写テープの内側に当接する下側当接部を有しており、前記ヘッド本体が前記塗布膜転写具の本体に対して所定の角度で回動したときに前記ローラーと共に前記下側当接部が回動して前記塗布膜転写具の本体から繰り出される前記塗布膜転写テープを前記下側当接部によってねじることで、前記塗布膜転写テープを案内及び加圧するときに、前記ローラー軸の軸方向への前記塗布膜転写テープの移動を抑制する
【0007】
【0008】
【0009】
本発明によれば、従来式のローラーヘッドタイプと比較して、塗布膜転写テープの角度を変化させるリブをヘッド本体に備えているので、ヘッド本体をねじる方向に回動させると上記リブがヘッド本体の回動と同期して作動する。即ち、リブがヘッド本体と共に一体的に回動するため塗布膜転写テープがローラーからずれ、最終的にヘッドから塗布膜転写テープが外れるという不具合はない。これは、ヘッド本体を回動させたときに、ローラーとの接触部において転写テープがローラー軸の軸方向に対して直交方向から変化しないように、リブによって転写テープをひねる方向に変化させて、ローラー軸の軸方向に転写テープを移動させるスライド荷重を打ち消し、ローラー軸の軸方向への塗布膜転写テープの移動(横ずれ)を抑制することができるためである。
【0010】
また、本発明によれば、従来式のへら状ヘッドタイプと比較しても、転写部にローラーヘッドを用いているので紙面へのタッチが柔らかく、使用心地が良い。そして、ローラーヘッドが回転するためにクラッチやラチェットの回転がスムーズに行われる。またへら状に比べて摩擦抵抗が低いので、紙面に軽く転写できる。重ね塗りの様に転写した場合、へら状ヘッドは先に転写してある部分をけずってしまうことがあるが、本発明ではローラーが回転しているので、先に転写してある部分を剥さずに転写できる。さらに、紙面に多少の凹凸があってもローラーヘッドが回転するので転写作業が妨げられない。また、ローラーと塗布膜転写テープが滑りにくく、塗布膜転写テープが横ずれしにくい。そして、ローラー径を小さくすることで、余計な部分まで転写する失敗がなく、また必要な部分だけ転写できて経済的である。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載した発明であって、ヘッド本体の両側縁に上記塗布膜転写テープを案内するガイドフランジを設けるようにした。これにより、塗布膜転写テープの移動を抑制して塗布膜転写テープがヘッド本体から外れてしまうことを防止できると共に、塗布膜転写テープがローラーの長手方向におけるほぼ中央に位置するように当該塗布膜転写テープを案内することができる。
【0012】
また、本発明によれば、リブの形状は特に限定されず、ヘッド本体の回動角度によってローラーの軸方向に対して平行(直線)から凹形状とすることにより、上記塗布膜転写テープを常にローラー軸方向中心部で走行させることができる。即ち、リブの形状は設定したいヘッド幅、ヘッド回動角度及びローラー中心部での塗布膜転写テープ走行性によって変化する。例えば、図12の場合にはヘッドの回動角度は少なく、ヘッド幅が狭くなる。即ち、ヘッドの回動角度が少ない場合、ローラー軸の軸方向と塗布膜転写テープ走行方向が直角に近く、ローラー軸方向に発生する塗布膜転写テープをスライドさせる荷重が小さいため、リブが直線であっても塗布膜転写テープの左右移動量は少ない。そのため、塗布膜転写テープは若干左右に動く程度であり、ヘッド幅を狭くできる。
また図13の場合には、ヘッドの回動角度は大きく、ヘッド幅が大きくなる。即ち、ヘッドの回動角度が大きければリブが直線の場合、ヘッド幅を広く取らなければならない。そのため、ヘッド自体は大型化するが、リブを付けない場合よりは塗布膜転写テープの移動量は少ない。
そして図14の場合には、ヘッドの回動角度は大きいが、ヘッド幅が狭くなる。即ち、幅の狭いヘッドを大きく回動させ、かつ塗布膜転写テープスライド荷重を完全に打ち消す、つまり横ずれが起きないように転写テープをローラー軸の軸方向とほぼ直交となるようにするには、リブに凹形状を付けて塗布膜転写テープ移動角度を調節する。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項又は請求項に記載した発明であって、前記ヘッド本体に設けたリブの形状が内側に湾曲した曲線形状であることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、ヘッド本体の回動角度を大きくしつつ、ヘッド幅を狭くするために、リブの形状を内側に湾曲した曲線形状とした。このリブはローラー軸方向に対して平行に設けられ、どの程度内側に曲線形状となっているかによってヘッド幅の大きさが定まる。
【0015】
【0016】
【0017】
請求項4記載の発明は、請求項乃至請求項3の何れか1項に記載された発明であって、前記リブは、前記塗布膜転写具の本体へ巻取られる前記塗布膜転写テープの内側に当接する上側当接部を有していることを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、ヘッド本体にはその下側に少なくともリブの当接部が設けられている。このリブの当接部は下側(塗布膜転写テープ側)に設けることが重要であり、上側(使用済み塗布膜転写テープ側)に必ずしも設けることは必要ではない。しかしながら、本発明のように塗布膜転写テープの張りやずれを防ぐ意味ではヘッド本体の上下に当接部を設けることが好ましい
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明は、ローラーヘッド方式の塗布膜転写具に関する。即ち、その構成は、ヘッド本体の転写部に塗布膜転写テープを案内及び加圧するローラーを使用し、前記ヘッド本体をねじる方向に回転可能なように塗布膜転写具の本体に取付け、ヘッド本体の先端部には、ヘッド本体が塗布膜転写具の本体に対して回転していない基本位置にあるときに、懸架される塗布膜転写テープに直交するようにローラーが軸支され、ヘッド本体の後端近傍には、ローラーの軸方向に対して平行となるようにリブが設けられ、リブは、少なくとも塗布膜転写具の本体から繰り出される塗布膜転写テープの内側に当接する下側当接部を有しており、ヘッド本体が塗布膜転写具の本体に対して所定の角度で回動したときにローラーと共に下側当接部が回動して塗布膜転写具の本体から繰り出される塗布膜転写テープを下側当接部によってねじることで、塗布膜転写テープを案内及び加圧するときに、ローラー軸の軸方向への塗布膜転写テープの移動を抑制するようにした。
【0020】
【実施例】
以下、図面に基づいて本発明に係る一実施例を詳細に説明する。
図1は、本発明に係る塗布膜転写具の分解斜視図を示す。
塗布膜転写具における本体1のケースは、分解組立可能に構成することにより、塗布膜転写テープ4(以下転写テープという)を使い切った場合には、上ケース2と下ケース3を開いて新しい転写テープと交換可能としている。
前記上ケース2と下ケース3はそれぞれ樹脂で成形されており、組立て状態で互いに係合する連結手段を備えている。この連結手段は、具体的には上ケース2に設けた係止爪と、下ケース3に設けた係合凹部で構成されているが、本発明の要部ではないので図面上では省略している。前記係止爪と係合凹部は、上ケース2と下ケース3の互いの部材に複数設けて形成すると共に、開閉ボタン21の操作で容易に分解可能としている。この開閉ボタン21は、上ケース2に設けられており、これを前後方向へスライドさせることでその下部に形成された係止部の固定と解除を行う。即ち、下ケース3にはケースの組立て状態において開閉ボタンと対向する位置に突起が形成されており、開閉ボタン21をLOCK方向へ移動させると、開閉ボタンの下面に形成された係止部が下ケース3側の突起と係合してケースが閉じられる。反対に、OPEN方向に開閉ボタンを移動させることにより、前記係止部が外れてケースが開く。
【0021】
本発明に係る塗布膜転写具の主要な機構は何れも下ケース3の内部に設けられており、交換を要する部材以外は下ケース3側に保持させて、ケースを開けた状態で誤って転写具を落とした場合にも内部の機構が分解しない構成となっている。これは、使用済み転写テープの交換作業に配慮したものである。下ケース3の内部には、転写テープ4を繰出す供給リール5が容易に着脱可能な状態で収納されている他、転写テープの駆動機構が収納されている。
【0022】
次に図2を参照して、供給リール周辺部材の構成及びその取付け構造を説明する。
供給リール5は、転写テープを巻回できるドラム部51を備え、このドラム部の下部には供給リール5と巻取リール6を連動させる歯車7が配設されている。
この歯車7の上面には、歯形の外径よりも小さい内径の周壁部71を立設し、その周壁部内には、周壁と接触して摩擦を生じる摺接アーム81を設けたリール支持体8を収納してクラッチ機構を形成している。このクラッチ機構は、後述するように転写テープの繰出し速度と巻取り速度の違いによって生じる問題を解決するためにある。また、使用時におけるテープの滑らかな繰出しを可能とする機能も果たす。
また歯車7の中央部には、中空な軸72を立設しており、この軸の外周壁72aの一部には切欠部72bを形成している。この切欠部72bには、突起72cを備えるアーム72dを設けている。軸72の横断面形状は略円形をなしており、前記突起72cは軸72の断面よりも若干外部に突出した状態で設けられている。この突起72cは、前記リール支持体8を歯車7に嵌合する際に、リール支持体8の抜け止めとして機能する。前記歯車7とリール支持体8は互いの部材にそれぞれ設けた中空な軸72と82とを嵌め合わせることにより連結され、このときの軸72と軸82の関係は、軸72の外径よりも軸82の内径が一回り大きく形成されているため、軸72が軸82の内部に嵌る状態となる。そして、軸72の方が軸82よりも高く形成されており、リール支持体8を所定位置に納めた状態で前記突起72cがリール支持体の軸82の上に出て、軸82の上端を係止する状態となる。
【0023】
このようにして歯車7とリール支持体8は連結され、リール支持体8は歯車7上で回転自在な状態となる。
リール支持体8上に取付けられる供給リール5は、図2に示すように部材中央に位置するドラム部51の内面に複数の突起51aを設けて形成されており、供給リールをリール支持体8に取付ける際には前記突起がリール支持体8の軸82の外周に設けたリブ82aと係合した状態となり、供給リール5が空転することを防止する。また供給リール5の上下の面に設けた複数の溝52もこれと同様に機能するものであり、リール支持体8の上面に形成したリブ83と係合して供給リール5が空転することを防止する。リール支持体8を取付けた歯車7は下ケース3に立設される軸34に取付けられ、歯車7は下ケース3上で回転自在な状態となる。
そして、歯車7の底部には爪73aを備えたアーム73が設けられており、このアームは下ケースに形成した係止爪36と係合してラチェット機構として作用する。即ち、爪73aは片側にのみなだらかに傾斜した勾配面を有しており、他面は垂直に形成されている。また、下ケースに形成した係止爪36は、軸34を中心とした円周上に連設されており、その断面形状は鋸歯状をなしている。このため、前記歯車7は一方向へのみ回転可能となり、反対方向、即ち互いの爪の垂直面同士が接触する方向へ回転することはない。
【0024】
次に、図1を参照して、巻取リール6の構成及びその取付け構造を説明する。
巻取リール6は、樹脂で成形されており、その中央部には軸穴61が、そしてまたその下部には歯車62がそれぞれ設けられている。前記軸穴61は、巻取リール6を下ケース3に設けた軸35に取付けるために設けられており、軸穴61の内径は軸35の外径よりも若干大きく形成している。また、前軸35の上部には前記アーム72dと同様な係止手段が設けられており、巻取リール6を軸35に嵌めると、巻取リール6はこの軸に保持された状態で回転可能となる。
【0025】
次に、図1乃至図8を参照して、ヘッド本体周辺部材の構成とその取付構造を説明する。
図3は、ヘッド保持体及びヘッド保持体の取付部の構成を示す。
図4は、ヘッド保持体にヘッド本体を取付けた状態を拡大して示す。
図5は、図4における縦断面図を示す。
図6は、ヘッド本体を穴94側から見た状態を示す。
図7は、ヘッド本体からローラーを取外した状態における正面図を示す。
図8は、図7における縦断面図を示す。
ヘッド本体9は樹脂で成形されている。ヘッド本体の先端部には転写部として塗布膜転写テープを案内及び加圧するローラー91を設けており、またヘッド本体には、ガイドフランジ92とリブ93を設けている。ガイドフランジ92は、図示されるように、ヘッド本体の両側縁に設けられている。また、リブ93は、ヘッド本体の後端近傍において、ローラー91の軸方向に対して平行となるように設けられている。このリブ93は、塗布膜転写具の本体から繰り出される未使用の塗布膜転写テープ4の内側に当接する下側当接部と、塗布膜転写具の本体へ巻取られる使用済みの塗布膜転写テープ4の内側に当接する上側当接部と、を有している。そして、リブ93における上側当接部及び下側当接部は、内側に湾曲した曲線形状とされている。前記ローラー91は、金属製の軸91bにゴムローラー91aを被覆して構成している。軸91bの両端はヘッドに設けた軸穴95に通して軸支することで、ローラー91を回転自在に軸支している。ガイドフランジ92とリブ93は共に転写テープ4の移動を抑制して、転写テープが常にローラー91の長手方向に関してその中央に位置するように案内する機能を担う。この機能の詳細については、後述する。
そして、ヘッド本体9の略中央には内径が大きい穴94を設けており、ヘッド本体9はヘッド保持体10に設けた軸101を前記穴94に通してヘッド保持体10と連結される。軸101は、溝101bを設けて先割れ形状に形成すると共にその先端に爪101aを設けており、ヘッド本体9の穴94に軸101を嵌合した場合には、爪101aが穴94の周縁に係止してヘッド本体9の脱落を防止する。そしてまた、前記軸101は丸軸であり、ヘッド本体9は軸101に対して回転自在となっている。つまり、ヘッド本体9は、塗布膜転写具の本体に対してねじる方向に回動可能とされ、ヘッド本体9が塗布膜転写具の本体に対して回動したとき、供給リール5からヘッド本体9に引き出される転写テープ4やヘッド本体9から巻取リール6に引き込まれる転写テープ4にはねじれが生じることとなる。
【0026】
このようにしてヘッド本体9を取付けたヘッド保持体10は、下ケース3に設けた取付部31に取付けられる。この取付部31は、下ケース3の底面から鉛直方向に立設されており、その形状は円弧状に形成されている。なお、取付部31の形状が円ではなく円弧状に形成されているのは、取付部31に隣設する中間歯車11が取付部31と接触することを防ぎ、その動作を妨げないようにするためである。
取付部31には、ヘッド保持体10を取付けた状態で保持するための一対の爪31aを設けている。ヘッド保持体10の開口104の内径は取付部31の外形よりも若干大きく形成しており、その内縁102の高さは取付部31の爪31aが係ることのできる高さに形成している。このため、ヘッド保持体10の開口104を取付部31に嵌める場合には、ヘッド保持体10を取付部31の上から嵌め合せて軽く押すことにより、ヘッド保持体10はまずこの爪31aにより保持される。このときヘッド保持体10に設けたアーム103の位置は、下ケース3に設けた案内板32の位置よりも右側に位置した状態で取付ける必要がある。これは爪31aにより仮止めされたヘッド保持体10を反時計方向に回動させることにより、前記アーム103と案内板32を係合して、ヘッド保持体10を定位置で固定するためである。アーム103の先端には突起103aを設けており、この突起103aは、ヘッド保持体10を反時計方向に回転させることにより案内板32の側壁に設けた穴32aに嵌り、ヘッド保持体10の左右方向への回転移動を規制する。
【0027】
次に、中間歯車周辺部材の構成とその取付構造を説明する。
中間歯車11は樹脂成形により形成されており、その中心には穴111を設けている。この歯車は、下ケース3の底面から鉛直方向に立設される軸33に前記穴111を通すことにより回転自在に軸支される。また、軸33には爪33bを有するアーム33aを設けており、前記爪33bが中間歯車11の穴111の上部周縁を係止して中間歯車11の上下方向への移動を規制する。アーム33aの構造は前記歯車7の切欠部に設けたものと同様である。軸33に取付けられた中間歯車11は巻取リール6下部に形成された歯車62と、供給リール5の下部に位置する歯車7の双方に噛合し、巻取リール6と供給リール5の動作を連動させる。
使用時において、供給リールを回転させる力は、転写テープ4と紙面の間に作用する摩擦によってもたらされ、即ち、転写テープを紙面に押し当てて塗布膜転写具をスライドさせる際に転写テープが引き出される力を利用して供給リールを回転させている。この回転を中間歯車11を介して巻取リール6に伝達することにより、巻取リール6は従動的に回転される。このとき、転写テープは供給される速度と、巻取りされる速度が等しくなる必要がある。この関係が成立しない場合には、例えば、巻取る速度が供給速度を超過した場合には転写テープがちぎれてしまうことになり、反対に転写テープの供給速度が巻取る速度を超過した場合には、転写テープが弛んで絡まるか、ヘッド先端から転写テープが外れるなどのトラブルを招くこととなる。
転写テープの供給速度と巻取り速度の関係は、転写テープを巻き取るドラムの直径を調節することにより、または供給リール側の歯車と巻取リール側の歯車のギア比を調整することによりある程度調整することが可能であるものの、このような手段だけでは微妙な調整を行なうことは困難である。
そこで、本発明では、この問題を解決するため前述した構成により歯車7と供給リール5の間にクラッチ機構を設けている。即ち、供給リールから送出される転写テープ(即ち、塗布膜転写具の本体から繰り出される未使用の塗布膜転写テープ)速度よりも巻取リールが巻取る転写テープ(即ち、塗布膜転写具の本体へ巻取られる使用済みの塗布膜転写テープ)の速度が若干超過する関係で前記ギア比やドラムの外径を調節しておき、巻取り速度が供給速度を超過している分を前記クラッチ機構の滑動で吸収する構成としている。
これにより転写テープを適度に緊張した状態とすることができ、転写テープの弛みやちぎれを防止している。
【0028】
図9乃至図11は、転写テープ4を使用する状態を下方から見た状態を示す。例えばこれは、アクリル板などの透明な板上で塗布膜転写具を使用する状態を板の下から透かして見た状態に相当する。
図9は、ヘッドが基本位置にある場合を示し、図10及び図11は、それぞれヘッドが所定の角度で回動した状態を示す。なお、前記基本位置とは、ヘッドが本体に対して回動していない状態での位置のことである。
図9に示す状態では、ヘッド本体9がケースに対して回動していない。即ち、図示されているように、ローラー91は、ヘッド本体が塗布膜転写具の本体に対して回転していない基本位置にあるときに、当該ローラー91が懸架される転写テープ4に直交するようにヘッド本体の先端部において軸支されている。このため、転写テープをローラー91の軸方向へ横ずれさせる力は働かず、転写テープ4はローラー91の中央に位置している。
図10及び図11は、それぞれヘッドが所定の角度で回動した状態にあるため、転写テープ4の走行方向とローラー91の回転軸方向が斜めとされ、塗布膜転写テープをローラー91の軸方向へ横ずれさせる力が発生する。即ち、図9に示すように、ヘッドが基本位置にあるときには、ローラ91に懸架される転写テープ4はローラー91に直交して配置されているが、図10及び図11に示すように、ヘッドを回動させるとローラー91が転写テープ4に対して傾くことになる。そして、ヘッドを塗布膜転写具の本体に対して所定の角度で回動させた状態(即ち、ローラー91が転写テープ4に対して傾いた状態)でヘッドを紙面に押し当てて紙面に塗布膜を転写すると、ローラー91が転写テープ4を当該ローラー91と直交する方向に引き出すように案内及び加圧することになる。そうすると、転写テープ4がローラー91に対して傾いた状態にあるため、ローラー91と転写テープ4との摩擦力が当該転写テープ4を傾いたまま引き出そうとする方向(ローラー91と直交する方向)に作用して、塗布膜転写具の本体から繰り出される転写テープ4(即ち、塗布膜転写具の下側に位置する転写テープ4)が、ローラー軸の軸方向であるローラー91の横方向へと移動させられることになる。即ち、ローラー91と直交する方向に転写テープ4を引き出すように働く力が、結果として転写テープ4をローラー軸の軸方向に移動させるスライド荷重として作用することになる。しかしながら、本発明にあってはリブ93が内側に曲線形状に湾曲して設けられており、これが転写テープをローラー91の軸方向へ横ずれさせる力に抗して転写テープをリブ93中央に案内するように作用する。即ち、リブ93の端部が中央部に比べて張り出しているため、転写テープ4の横ずれ移動を抑制することができる。また、ヘッド本体を回動させたときに、ローラー91との接触部において転写テープ4がローラー91の軸方向に対して直交方向から変化しないように、リブ93によって転写テープ4をひねる方向に変化させて、ローラー軸の軸方向に転写テープ4を移動させるスライド荷重を打ち消すことができる。このため、ローラー軸の軸方向への塗布膜転写テープ4の移動(横ずれ)を抑制することができることになる。したがって、転写テープの走行が安定し、転写テープがローラー中心から左右方向へずれてしまったり、ヘッドから転写テープが外れてしまう等の問題が解決される。また、リブ93が内側に湾曲しているために、転写テープの側面が左右のガイドに接触しにくくなるという効果が得られ、転写テープの側面が左右のガイドに接触して塗布膜が剥離してしまうといった問題も解決される。
【0029】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したような形態で実施され、次のような効果を有する。
本発明によれば、従来式のローラーヘッドタイプのように、ヘッドをねじる方向に回転させると塗布膜転写テープがローラーからずれ、最終的にヘッドから塗布膜転写テープが外れる欠点を解消した。
【0030】
また本発明によれば、従来式のローラーヘッドタイプと比較して、塗布膜転写テープの角度を変化させるリブをヘッド本体に備えているので、ヘッド本体をねじる方向に回動させると上記リブがヘッド本体の回動と同期して作動する。即ち、リブがヘッド本体と共に一体的に回動するため塗布膜転写テープがローラーからずれ、最終的にヘッドから塗布膜転写テープが外れるという不具合はない。具体的には、ヘッド本体を塗布膜転写具の本体に対して所定の角度で回動させると、ローラーと共に下側当接部が回動して塗布膜転写具の本体から繰り出される塗布膜転写テープが下側当接部によってねじられることになる。ここで、ローラーとの接触部において転写テープがローラー軸の軸方向に対して直交方向から変化しないように、リブによって転写テープをひねる方向に変化させることができるため、転写テープを案内及び加圧するときに、ローラー軸の軸方向のスライド荷重を打ち消すようにして小さくすることができる。このため、ローラー軸の軸方向への塗布膜転写テープの移動(横ずれ)を抑制することができることになる。さらに、リブの端部が中央部に比べて張り出しているため、転写テープの横ずれ移動を効果的に抑制することができる。
【0031】
また本発明によれば、従来式のへら状ヘッドタイプと比較しても、転写部にローラーヘッドを用いているので紙面へのタッチが柔らかく、使用心地が良い。そして、ローラーヘッドが回転するためにクラッチやラチェットの回転がスムーズに行われる。またへら状に比べて摩擦抵抗が低いので、紙面に軽く転写できる。重ね塗りの様に転写した場合、へら状ヘッドは先に転写してある部分をけずってしまうことがあるが、本発明ではローラーが回転しているので、先に転写してある部分を剥さずに転写できる。さらに、紙面に多少の凹凸があってもローラーヘッドが回転するので転写作業が妨げられない。また、ローラーと塗布膜転写テープが滑りにくく、塗布膜転写テープが横ずれしにくい。そして、ローラー径を小さくすることで、余計な部分まで転写する失敗がなく、また必要な部分だけ転写できて経済的である。
【0032】
また本発明によれば、リブの形状は特に限定されず、ヘッド本体の回動角度によってローラーの軸方向に対して平行(直線)から凹形状とすることにより、上記塗布膜転写テープを常にローラー軸方向中心部で走行させることができる。即ち、リブの形状は設定したいヘッド幅、ヘッド回動角度及びローラー中心部での塗布膜転写テープ走行性によって変化する。例えば、図12の場合にはヘッドの回動角度は少なく、ヘッド幅が狭くなる。即ち、ヘッドの回動角度が少ない場合、ローラー軸の軸方向と塗布膜転写テープ走行方向が直角に近く、ローラー軸方向に発生する塗布膜転写テープをスライドさせる荷重が小さいため、リブが直線であっても塗布膜転写テープの左右移動量は少ない。そのため、塗布膜転写テープは若干左右に動く程度であり、ヘッド幅を狭くできる。
また図13の場合には、ヘッドの回動角度は大きく、ヘッド幅が大きくなる。即ち、ヘッドの回動角度が大きければリブが直線の場合、ヘッド幅を広く取らなければならない。そのため、ヘッド自体は大型化するが、リブを付けない場合よりは塗布膜転写テープの移動量は少ない。
そして図14の場合には、ヘッドの回動角度は大きいが、ヘッド幅が狭くなる。即ち、幅の狭いヘッドを大きく回動させ、かつ塗布膜転写テープスライド荷重を完全に打ち消す、つまり横ずれが起きないように転写テープをローラー軸の軸方向とほぼ直交となるようにするには、リブに凹形状を付けて塗布膜転写テープ移動角度を調節する。
【0033】
また本発明によれば、ヘッド本体の回動角度を大きくしつつ、ヘッド幅を狭くするために、リブの形状を内側に湾曲した曲線形状とした。このリブはローラー軸方向に対して平行に設けられ、どの程度内側に曲線形状となっているかによってヘッド幅の大きさが定まる。
【0034】
【0035】
また本発明によれば、ヘッド本体にはその下側に少なくともリブの当接部が設けられている。このリブの当接部は下側(塗布膜転写テープ側)に設けることが重要であり、上側(使用済み塗布膜転写テープ側)に必ずしも設けることは必要ではない。しかしながら、塗布膜転写テープの張りやずれを防ぐ意味ではヘッド本体の上下に当接部を設けることが好ましい
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る塗布膜転写具の分解斜視図を示す。
【図2】 図1において、供給リール及びその周辺部材を拡大した図である。
【図3】 ヘッド保持体及びヘッド保持体の取付部の構成を示す図である。
【図4】 ヘッド保持体にヘッド本体を取付けた状態を拡大して示す平面図である。
【図5】 図4における縦断面図である。
【図6】 ヘッド本体を穴94側から見た状態を示す図である。
【図7】 ヘッド本体からローラーを取外した状態における正面図である。
【図8】 図7における縦断面図である。
【図9】 塗布膜転写具を使用する状態を下方から見た状態に関し、ヘッド本体が基本位置にある場合を示す図である。
【図10】 塗布膜転写具を使用する状態を下方から見た状態に関し、ヘッド本体が傾斜した位置にある場合を示す図である。
【図11】 塗布膜転写具を使用する状態を下方から見た状態に関し、図10に示す方向とは逆方向にヘッド本体が傾斜した位置にある場合を示す図である。
【図12】 ヘッドの回動角度が少ない場合に用いるヘッドの構造を示しており、塗布膜転写具を使用する状態を下方から見た状態を示す図である。
【図13】 ヘッドの回動角度が大きい場合に用いるヘッドの構造を示しており、塗布膜転写具を使用する状態を下方から見た状態を示す図である。
【図14】 ヘッドの回動角度が大きい場合においてもヘッド幅を狭くすることのできるヘッドの構成を示しており、塗布膜転写具を使用する状態を下方から見た状態を示す図である。
【図15】 従来の塗布膜転写具の構成を示す図である。
【図16】 従来の塗布膜転写具の構成を示す図である。
【符号の説明】
1 本体
9 ヘッド本体
91 ローラー
92 ガイドフランジ
93 リブ

Claims (4)

  1. ヘッド本体の転写部に塗布膜転写テープを案内及び加圧するローラーを使用した塗布膜転写具において、前記ヘッド本体をねじる方向に回転可能なように塗布膜転写具の本体に取付け、
    前記ヘッド本体の先端部には、前記ヘッド本体が前記塗布膜転写具の本体に対して回転していない基本位置にあるときに、懸架される塗布膜転写テープに直交するように前記ローラーが軸支され、
    前記ヘッド本体の後端近傍には、前記ローラーの軸方向に対して平行となるようにリブが設けられ、
    前記リブは、少なくとも前記塗布膜転写具の本体から繰り出される前記塗布膜転写テープの内側に当接する下側当接部を有しており、前記ヘッド本体が前記塗布膜転写具の本体に対して所定の角度で回動したときに前記ローラーと共に前記下側当接部が回動して前記塗布膜転写具の本体から繰り出される前記塗布膜転写テープを前記下側当接部によってねじることで、前記塗布膜転写テープを案内及び加圧するときに、前記ローラー軸の軸方向への前記塗布膜転写テープの移動を抑制することを特徴とする塗布膜転写具。
  2. 請求項1において、ヘッド本体の両側縁に上記塗布膜転写テープを案内するガイドフランジが設けられていることを特徴とする塗布膜転写具。
  3. 請求項1又は請求項2において、前記ヘッド本体に設けたリブの形状は内側に湾曲した曲線形状であることを特徴とする塗布膜転写具。
  4. 請求項1乃至請求項3の何れか1項において、前記リブは、前記塗布膜転写具の本体へ巻取られる前記塗布膜転写テープの内側に当接する上側当接部を有していることを特徴とする塗布膜転写具。
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