JP2016016610A - 塗布膜転写具 - Google Patents
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Abstract
Description
通常、第1リールと、第2リールとは、ケースの内部に収納されている。
他方転写部は、ケースの外部にケースに設けられた開口を介して常時露出するようになっている場合と、ケースの外部と内部をケースに設けられた開口を通って移動可能とされている場合がある。転写部は、塗布膜を被転写面に転写するというその機能的な必然性から少なくとも塗布膜転写具の使用時においてはケースの外部に露出している必要があり、上述の必然性を、常時ケースの外部に転写部が位置するようにすること、又はケースの内外で移動可能な転写部を使用時においてケースの外部に位置させられるようにすることによって担保している。
他方、転写部がケースの外に常時位置する場合であっても、転写部がケースの内外を移動する場合であっても、塗布膜転写具は通常、蓋を備えている。蓋は、転写部をケースの外部から隔離することにより転写部とテープを保護するものであり、ケースの外部に露出した転写部が何かに当たって破損する可能性や、或いは転写部又はテープがゴミや誇りで汚れる可能性を低減する。蓋は、ケースに、着脱自在に、或いは可動にして取付けられるようになっているのが通例である。
転写部がケースの内外にわたって移動するタイプの塗布膜転写具は、転写部が常にケースの外に位置するものに比較して構造が複雑で部品点数が多くなりがちであり、コスト的にも不利になる場合もあるものの、転写部やテープを保護するという所期の目的を達成しやすい。
また、蓋がケースに対して移動可能な塗布膜転写具は、蓋がケースに対して着脱自在なものに比較してこれも構造が複雑になりやすいが、蓋がケースに対して着脱自在なものに起こりやすい蓋の紛失の問題からは無縁である。
そのような点が、上述の如き塗布膜転写具を本願出願人が採用したいと考える理由である。
そして、実際にそれを可能とするための技術も既に提案されている。
第1の技術は、蓋として柔軟な樹脂素材である蓋を用いた技術である。この場合には、ケースの外側に露出した操作部材を操作することにより、転写部が開口に向かって前後することにより転写部をケースの外と、内との間で移動させることができるようになっているとともに、蓋を開口を塞ぐ閉位置と開口を開く開位置の2つの位置の間で移動させられるようになっている。蓋は上述の如く柔軟であり、閉位置から開位置に移動するときに、ケースの内側面に沿って湾曲しながら移動して、開位置に至ったときにはケースの内側に入り込む。
第2の技術は、蓋として回転可能な硬質の素材でできたキャップを用いた技術である(特許文献1)。この場合には、ケースの外側に露出した操作部材を操作したときに、転写部が開口に向かって前後することにより転写部をケースの外と、内との間で移動させることができるようになっているとともに、蓋を、開口を塞ぐ閉位置と開口を開く開位置の2つの位置の間で回転により移動させられるようになっている。蓋は、開位置においてはケースの外に位置する。
また、第2の技術は、蓋が硬質で有る故に第1の技術における上述の課題は生じないものの、開位置にある蓋がケースの外に位置するため、蓋が開位置にあるとき、つまり塗布膜転写具が使用されるときに、蓋が邪魔になり易く、それ故蓋が壊れやすいという課題がある。また、第2の技術は、バネなどの複雑な機構を用いるため、コストが嵩みやすい。
以上のように、塗布膜転写具の転写部と蓋の移動がワンアクションで行われるというのを前提とした場合に、転写部の保護が十分であり、塗布膜転写具が使用されるときに蓋が邪魔にならず、そして製造コストを抑制することができる技術は存在していない。
本願発明は、その片面に剥離可能な状態で塗布膜が設けられた長尺のテープが巻き付けられたリールである第1リールと、前記第1リールから送られた前記テープの前記塗布膜を前記塗布膜を塗布すべき面である対象面に塗布する転写部と、前記転写部で前記塗布膜が転写された後の前記テープを巻き取るリールである第2リールと、前記第1リールと、前記第2リールとを収納するとともに、前記転写部を収納可能とされた、開口を備えたケースと、前記開口を塞ぐ閉位置と前記開口を開く開位置の間で回転可能として前記ケースに取付けられた蓋と、を備える塗布膜転写具である。
そして、この塗布膜転写具の前記ケースには、ユーザの操作によって第1位置と第2位置の間で移動可能とされた操作部材が取付けられており、前記操作部材が第1位置にあるときには、前記蓋が閉位置にあり、且つ前記転写部が前記ケースの内にあるとともに、前記操作部材を第2位置に移動させると、前記蓋が開位置に回転移動し、且つ開いた前記開口を通って前記転写部が前記ケースの外に移動するようになっているとともに、前記蓋は前記開位置に移動するときに、前記開口から前記ケースの中へ移動するようになっている。
この塗布膜転写具は、第1位置と第2位置との間を移動させることのできる操作部材を備えている。そして、一つの操作部材を第1位置から第2位置へ移動させることにより、例えば、ワンアクションで、蓋と転写部とをまとめて移動させることができる。このときの蓋と転写部との移動は、蓋においては閉位置から開位置への回転による移動であり、転写部についてはケースの内から外への移動である。なお、操作部材を第2位置から第1位置に移動させた場合には、蓋と転写部はそれぞれ、上述したのと逆向きに移動を行う。
回転を行うことで閉位置と開位置の間を移動する蓋は、硬質の材料で作ることができるので、蓋の素材が原因でコストの上昇を招くことはないし、蓋の素材が原因で転写部の保護が不十分となることもない。
また、この塗布膜転写具では、蓋は開位置にあるとき、ケースの中に位置するようになっている。したがって、蓋が開位置にある場合に、つまり、塗布膜転写具が使用されているときにおいても、蓋がケースの外に存在する場合のように蓋が邪魔になることがない。
つまり、本願の塗布膜転写具は、転写部と蓋の移動がまとめて可能でありつつも、転写部の保護が十分であり、塗布膜転写具が使用されるときに蓋が邪魔にならず、そして製造コストを抑制することができるものとなっている。
操作部材がラックを、蓋がピニオンをそれぞれ備えている場合には、前記操作部材を前記第1位置から前記第2位置に平行移動させると、平行移動する前記ラックが備える前記ラック歯と噛み合う前記ピニオン歯を有する前記ピニオンが設けられた前記蓋が回転することにより、前記蓋が閉位置から開位置に移動するようになる。
このようにいわゆるラック・アンド・ピニオン機構を用いることにより、蓋の回転運動を容易に実現することができる。
上述のように操作部材は、ケースに対して平行移動を行う場合がある。そのような場合には、操作部材の平行移動を、転写部の移動に転換することが可能である。一部品であるか否かはともかく、操作部材と転写部が一体となっており、操作部材が移動したのと同じ方向と量だけ、操作部材を移動させたときに、転写部が移動するようにすることにより、最も簡単に転写部の移動を実現できることになる。
このようにすると、操作部材を移動させたときに、転写部と、第1リールと、第2リールとの相対的な位置関係を変化させることなく、転写部を移動させることができるようになる。第1リールから転写部までの間と、転写部から第2リールまでの間とには、テープが張り渡される。そして、一般的に、テープには適度なテンションがかけられている。操作部材を移動させることで転写部を移動させる場合に、転写部と、第1リールと、第2リールとの相対的な位置関係を変化させないのであれば、テープにかかったテンションを変化させないで済む。
第1リールと、第2リールが、転写部との相対的な位置関係を変化させずに、操作部材を移動させたときに移動するようになっている場合には、本願の塗布膜転写具は以下のようなものとすることができる。
例えば、前記本体には、前記第1リールの回転の軸となるようにして前記第1リールを支持する第1軸の基端が取付けられているとともに、前記ケースには、前記操作部材の平行移動の方向と平行とされた溝であり、前記第1軸の先端が挿入されることで、平行移動する前記本体にしたがって平行移動する前記第1軸の先端を案内する第1溝が設けられている、ようにすることができる。そうすることにより、その先端が第1溝に挿入された状態で、第1軸を安定して平行移動させられるようになるので、本体の平行移動を安定したものとすることができる。或いは、前記本体には、前記第2リールの回転の軸となるようにして前記第2リールを支持する第2軸の基端が取付けられているとともに、前記ケースには、前記操作部材の平行移動の方向と平行とされた溝であり、前記第2軸の先端が挿入されることで、平行移動する前記本体にしたがって平行移動する前記第2軸の先端を案内する第2溝が設けられていても良い。これによっても、上記の場合と同様の効果を得られる。もちろん、第1軸の先端を第1溝に挿入することと、第2軸の先端を第2溝に挿入することを、同時に採用することも可能である。
閉位置に位置する蓋は、転写部の保護を行うという機能を有する。かかる機能が確実に発揮されるには、閉位置に位置する蓋は、ユーザが操作部材を第1位置から第2位置に移動させた場合を除き、ユーザが意図しないときに開位置に移動するべきではない。操作部材と転写部の移動が上述のようにして完全に連動しているのであれば、操作部材が動かない限り転写部が動かなくなる。これは、転写部の質量が、操作部材の質量や、場合によっては両者を接続する本体や、それに取付けられた第1軸、第1リール、第2軸、第2リールまで含めた質量を持つということを意味する。そのようにして転写部の質量を大きくして、その慣性を大きくすることにより、意図しないときに蓋が回転して移動するという可能性を低減できる。例えば、塗布膜転写具が上述したラック・アンド・ピニオン機構を持つのであれば、操作部材が第1位置と第2位置との間を移動する間のすべての範囲において、操作部材と接続されたラックのラック歯と、蓋に設けられたピニオンのピニオン歯とが噛んでいれば、蓋と操作部材との移動を完全に連動させることができる。
蓋が予期せぬときに閉位置から開位置に移動するのをより確実に防ぐには、例えば、以下のようにすれば良い。前記操作部材は、前記操作部材に対して所定の操作をユーザが行った場合に限り、前記所定の動作を行っていない場合に比して小さな力でも、前記ケースに対して平行移動を行わせることができるようになっていてもよい。これはつまり、ユーザが操作部材に対して所定の操作を行った場合にのみ、操作部材が動くようになるか、動きやすくなるということである。これは、裏を返せば、ユーザが所定の操作を行わない限り、操作部材はロックされて動かないか、或いは大きな力を加えない限り動かないということである。操作部材が移動しない限り蓋が回転しないのであれば、これは操作部材に所定の操作がなされない限り蓋が回転しないか、少なくとも回転しにくいということを意味する。所定の操作は、操作部材に対して、操作部材を蓋が閉位置にある第1位置から蓋が開位置にある第2位置へ移動させるのとは異なる方向、例えばその移動の方向とは直角な方向に移動させる、というものとすることができる。例えば、塗布膜転写具がユーザの鞄の中に入れられているときに、鞄の中にある他の物との干渉により、操作部材に、操作部材を第1位置から第2位置に向けて移動させる力と、操作部材の移動の方向と直交する向きの力とが働くことは、殆ど考えにくい。したがって、そのようにすることにより、予期せぬときに蓋が閉位置から開位置に移動するということを良く防止できる。
以下の説明では、便宜上、ケースを上から見たときに右側に位置する部材を右部材100R、左に位置する部材を左部材100Lと呼ぶこととし、左右の概念はそれに倣うことにする。右部材100Rと左部材100Lの固定は周知、或いは公知の方法で行えば良く、例えば何らかの手段による係止でも構わないし、或いは接着により固定されても構わない。
ケース100の前面には、これには限られないが略矩形とされた開口110が設けられている。また、ケース100の上面には、その前後方向に延びる開口である操作スリット120が設けられている。
ケース100の内側の空間には、後述するスライド部材が取付けられている。スライド部材の上側には、後述するようにして操作部220が設けられている。操作部220は、操作スリット120を介してケース100の上面に露出している。
スライド部材の前側には、また、転写部250が設けられている。転写部250は、後述するテープに設けられた粘着剤である塗布膜を、塗布膜を転写すべき面である対象面に転写する機能を有している。転写部250は、塗布膜転写具の不使用時には、ケース100の内部に収納されるようになっている。他方、塗布膜転写具を使用するときには、転写部250は、開口110を通って開口110の前側に移動し、ケース100の外側に露出するようになっている。図1に示した塗布膜転写具では、転写部250は、ケース100の外側に露出した状態となっている。
また、開口110は、後述する蓋で塞ぐことができるようになっている。蓋は、開口110を塞ぐ閉位置と、開口100を開く開位置の間で移動できるようになっている。
図中100Rが右部材である。左部材100Lも同様であるが、右部材100Rは、板状の略小判型で比較的広い小判部100R1と、小判部100R1を略一周囲む、その接続部分では面取りはされているものの小判部100から垂直に立上がる側壁部100R2とを備えている。
右部材100Rの前側に当たる部分の側壁100R2には、開口110を形成するための開口110の半分に相当する略矩形の切欠き110Rが設けられている。かかる切欠き110Rは、左部材100Lの側壁100L2の右部材100Rの切欠き110Rと左右対称となる位置に存在する、右部材100Rの切欠き110Rと同じ大きさで左右対称の形状となっている切欠き110Lと一体となって、開口110を形成する。
右部材100Rの上側に当たる部分の側壁100R2には、操作スリット120を形成するための操作スリット120の半分に相当する略矩形でその前後の部分の幅がやや太くなっている切欠き120Rが設けられている。かかる切欠きは、左部材100Lの側壁100L2の右部材100Rの切欠き120Rと左右対称となる位置に存在する、右部材100Rの切欠き120Rと同じ大きさで左右対称の形状となっている切欠き120Lと一体となって、操作スリット120を形成する。
右部材100Rの操作スリット120を形成する切欠き110Rよりも更に前側の部分の側壁100R2の内側には、側壁100R2に略直角な方向に張り出すリブ140が設けられている。リブ140は、後述する蓋が開位置に位置したときに、その回転が過剰になるのを防止するためのものである。
案内レール131、132、リブ140がどのように機能するかについては後述する。
つまり、上述の係止板221Aの存在と、接続部221の持つ弾性のおかげで、この実施形態の操作部220は、操作部220の移動方向とは異なる向きに操作部220を移動させる、つまり操作部220をケースに向けて押し込んだ場合に限り、操作部220をケース100の前後方向に移動させることができるようになっている。もっとも、操作部220を押し込まなくても大きな力を操作部220にかければ、係止板221Aが操作スリット120の前端の幅広の部分の中にある場合には当該幅広の部分の最も後の端部に対して滑って、或いは、係止板221Aが操作スリット120の後端の幅広の部分の中にある場合には当該幅広の部分の最も前の端部に対して滑って、ケース100内に入り込むこともあり得るので、例えば係止板221Aが存在していたとしても、係止板221Aが操作スリット120の前端か後端の幅広の部分の中に嵌っており且つ操作部220がケース100の上面に対して押し込まれていない場合に、操作部220がケース100に対して完全にロックされているとは言えないこともあり得る。ただし、その場合であっても、操作部220は、操作部220の移動方向とは異なる向きに操作部220を移動させた場合に限り、少なくともそのような操作をしなかった場合に比べて小さな力で、操作部220をケース100の前後方向に移動させることができるようになっていると言える。
つまり、この実施形態では、操作部220は、操作部に対して所定の操作をユーザが行った場合に限りケース100に対して、所定の動作を行っていない場合に比して小さな力で、ケース100に対して平行移動を行わせることができるようになっている。この場合の所定の動作は、ケース100に対する押し込みであるが、所定の動作はこれには限らず、例えば、ケース100の幅方向への操作部220の移動など、ケース100に対して行う平行移動とは異なる方向への移動とすることができる。
第1軸230と、第2軸240とは、スライド部材200の本体部210に対して垂直に設けられている。第1軸230と、第2軸240は、ともに断面円形の棒状体である。第1軸230と第2軸240はともに、ケース100の幅方向の長さに略対応した長さとされている。ケース100の左部材100Lの小判部100L1の内側には、図6に示したような、スライド部材200の移動の方向に沿って延びている細長い小判型形状とされた2つのリブ150、160が設けられており、リブ150と、160の内側にはそれぞれ、溝151、161が構成されている。第1軸230と、第2軸240とはそれぞれ、その先端が、溝151と、溝161に挿入された状態とされる。第1軸230と、第2軸240が、スライド部材200が移動するときに溝151と、溝161に案内されるので、スライド部材200の移動は更に安定したものとなる。なお、第1軸230と、第2軸240は、スライド部材200の本体部210を、右部材100Lの小判部100R1の内側面に近接する部分に位置決めする機能をも有している。それにより、本体部210は、案内レール131と、案内レール132との間に正しく位置することになる。
第1軸230には、また、第1回転部材232が取付けられている。第1回転部材232は、円筒形とされた円筒部232Aと、円筒部232Aの側面の三方対称位置に、円筒部232Aの側面から半径方向に突出するようにして設けられた板状の羽232Bとを有する。第1回転部材232は、円筒部232Aが有する孔を第1軸230に貫通させた状態で第1軸230に取付けられており、第1軸230の周りを回転することができるようになっている。
第1回転部材232の本体部210よりには、歯車である第1ギア233が、円筒部232Aと同軸として取付けられており、第1回転部材232とともに、第1軸230周りに回転できるようになっている。第1ギア233には、その弧に沿うような3つの弓状の孔である弓状孔233Aが穿たれている。この弓状孔233Aは、上述したラチェット歯231に対応する位置に存在している。弓状孔233Aの長さ方向の端部は、ラチェット歯231の傾斜方向に沿う方向に第1ギア233が回転した場合においてはラチェット歯231に係止されることはないが、ラチェット歯231の傾斜方向とは逆方向に第1ギア233が回転した場合においてはラチェット歯231に係止されるようになっている。これにより、第1回転部材232は、所望の一方向にしか回転できないようになっている。
第1回転部材232には、第1リール300(図3、図4参照)が取付けられている。第1リール300は、円筒形であり、その内側の孔310にはその幅方向に、多数の係止歯311が切られている。係止歯311と係止歯311の間の適当な位置に、第1回転部材232の3枚の羽232Bが入り込むようにして、第1リール300の孔310に第1回転部材232の円筒部232Aを挿入することによって、第1リール300は、第1回転部材232に、滑らない状態で取付けられている。
第1リール300には、長尺のテープ320が巻付けられている。テープ320は、周知、或いは公知のもので良い。テープ320の片面には、それが転写される転写体正面に対して付着させられるようにして転写される塗布膜が配されている。これには限られないが、この実施形態におけるテープ320は、粘着剤層である。粘着剤層は、テープ320のうち転写部250で転写面に対して当接させられる側の面にのみ設けられている。
図示を省略するが、第2リール400の右部材100Rの小判部100R1よりの面には、第2リール400と同軸とされた図示を省略の歯車である第2ギアが設けられている。そして、第2ギアは、上述の第1ギア233と噛み合っている。したがって、第1ギア233が回転すれば、第2ギアは第1ギア233と逆向きに回転する。これにより、第1リール300と第2リール400は、前者が回転すれば、後者が前者の角速度に比して一定の角速度で、前者と逆向きに回転することになる。
軸受孔253には、円柱形のローラ254が、ローラ254と同軸とされたその両端の軸254Aを軸受孔253に挿入することよって、回転可能として取付けられている。
図3、図4では図示を省略しているが、上述のテープ320は、第1リール300から、その粘着剤層を外側に向けた状態でローラ254に掛け回され、第2リール400に至るようになっている。第1リール300から巻解かれたテープ320は、ローラ254に至り、そこでその粘着剤層を対象面に転写される。そして、言わば使用済みとなったテープ320は第2リール400に至り第2リール400に巻き取られるようになっている。
蓋500は、平行に配された、ともに略扇型の板である右側面部510及び左側面部520と、右側面部510及び左側面板520の弧状の部分を繋ぐように湾曲した板である湾曲部530とを備えている。
右側面部510には上述した右蓋軸がその中に嵌る右軸受孔511が、左側面部520には上述した左蓋軸がその中に嵌る左軸受孔521が、それぞれ設けられている。蓋500は、右蓋軸を右軸受孔511に嵌め、左蓋軸を左軸受孔521に嵌めることにより、回転可能としてケース100に取付けられている。
右側面部510の下方には、また、上述のラック260のラック歯と噛み合うピニオン歯を有するピニオン512が、右蓋軸と左蓋軸とを繋ぐ直線を中心とする円弧上に位置するようにして、設けられている。ラック260とピニオン512はいわゆるラック・アンド・ピニオン機構を構成し、ラック260をその長さ方向に移動させると、ピニオン512が回転するようになっている。つまり、スライド部材200がその前後方向に移動すると、蓋500は回転する。
この状態では、操作部220は操作スリット120の一番後ろに位置しており、それ故、スライド部材200もケース100内で一番後ろに位置している。このとき、操作部220は、ケース100の上面から幾らか浮いた状態となっており、また、係止板221Aは、操作スリット120の後端の幅広の部分に嵌り込んだ状態となっている。
塗布膜転写具を使用しようとするユーザは、塗布膜転写具をこれには限られないが、例えば親指を除く4本の指で持ち、例えば空いた親指で操作部220をケース100の上面に向けて押し込む。そうすると、操作スリット120の後端の幅広の部分に嵌って、ケース100の上側の面を構成する部材と係止し合っていた係止板221Aがケース100の内部に入り込む。それにより、係止板221Aとケース100の上側の面を構成する部材との係止が外れる。それにより、操作部220は操作スリット120に沿って前方に移動可能となる。
操作部220をケース100の上側の面に向けて押し込んだままユーザは操作部220をケース100の前方に移動させる。そうすると、操作部220を有するスライド部材200全体がケース100の前方に移動する。このときスライド部材200の本体部210は、その上下を、案内レール131、132で案内され、且つ本体部210から延びる第1軸230、第2軸240はそれぞれ、リブ150と、リブ160の内側に設けられた溝151と、溝161にその先端を案内されるので、スライド部材200の前方への移動は安定したものとなる。
回転を終えた後の蓋500は、図4に示すように、ケース100の中に位置した状態となる。このときの蓋500の位置が開口110を露出させる開位置である。なお、ピニオン512のピニオン歯とラック260のラック歯は、蓋500の回転が行われている間中互いに噛み合った状態となっている。また、蓋500の回転が過剰になることは、リブ140が存在し、回転を過剰にしようとした蓋500はリブ140に当たるため、完全に防止される。
蓋500が回転を行っている間にも、スライド部材200は前進を続ける。転写部250は、開位置へと移動しつつある蓋500の下側から、開口110を通ってケース内からケース外へと移動してくる。その結果、操作部220が操作スリット120の最も前方まで移動すると、転写部250は、図4に示したようにケース100の開口110の更に前側に位置することになり、ケース100から露出した状態となる。
なお、スライド部材200が移動を行っても第1リール300、第2リール400、及び転写部250の相対的な位置関係には変わりはない。したがって、テープ320にかかっているテンションにも変化がない。
ユーザが操作部220から親指を離すと、操作部220がケース100の上面から幾らか浮いた状態となる。このとき、係止板221Aは、操作スリット120の前端の幅広の部分に嵌り込んだ状態となっているから、操作部220をケース100の上面に向けて押し込まない限り操作部220は後ろには移動しない。
塗布膜転写具を使用するには、ユーザは、図8に示したようにして塗布膜転写具を傾けて、その転写部250のローラ254を対象面Sに押し付けつつ、太い矢印で示したように塗布膜転写具を後方に移動させる。そうすると、テープ320の粘着剤層が、ローラ254によってテープ320越しに対象面Sに押付けられ、対象面Sに転写されていく。
テープ320には適度なテンションがかかっている。したがって、テープ320がローラ254の部分で移動すると、テープ320は図8中の細い矢印で図示された方向に全体として移動する。テープ320が移動すると、その力が第1リール300に伝わり、第1リール300が回転することによって第1リール300からテープ320が巻き解かれていく。他方、第1リール300と固定の関係にあり第1リール300とともに回転する第1ギア233と噛み合う第2ギアを有する第2リール400は、第1リール300とは逆方向に回転し、粘着剤層が対象面Sに転写された後の言わば使用済みと言えるテープ320を回収する。なお、第1リール300の回転方向はラチェット歯231によって規制されるから、逆方向への回転は生じない。
このようにしてユーザは、対象面Sの所望の部分に粘着剤層を転写することができる。
ユーザは、塗布膜転写具を持ち、操作部220をケース100の上面に向けて押し込む。そうすると、操作スリット120の前端の幅広の部分に嵌って、ケース100の上側の面を構成する部材と係止し合っていた係止板221Aがケース100の内部に入り込む。それにより、係止板221Aとケース100の上側の面を構成する部材との係止が外れる。それにより、操作部220は操作スリット120に沿って後方に移動可能となる。
操作部220をケース100の上側の面に向けて押し込んだままユーザは操作部220をケース100の後方に移動させる。そうすると、操作部220を有するスライド部材200全体がケース100の後方に移動する。スライド部材200の本体部210が、その上下を、案内レール131、132で案内されること、及び本体部210から延びる第1軸230、第2軸240がそれぞれ、リブ150と、リブ160の内側に設けられた溝151と、溝161にその先端を案内されることは、スライド部材200の前方への移動の場合と同じである。
蓋500が回転を行っている間にも、スライド部材200は後進を続ける。転写部250は、閉位置へと移動しつつある蓋500の下側から、開口110を通ってケース外からケース内へと移動する。操作部220が操作スリット120の最も後ろまで移動すると、転写部250は、図3に示したようにケース100の内部に移動した状態となる。このとき開口110は蓋500で閉ざされている。したがって、転写部250やテープ320は蓋500によって、ケース100外部の例えば埃から保護される。
この状態では上述したように、操作部220をケース100の上側の面に向かって押し込まない限り操作部220は前方には移動しない。したがって、塗布膜転写具を例えば、剥き出しのまま鞄の中に入れていたとしても、鞄の中の何かと干渉して操作部220が前方に移動して蓋500が開位置に移動し、転写部250とテープ320がケース100外に露出することはない。
110 開口
200 スライド部材
210 本体部
220 操作部
230 第1軸
240 第2軸
221A 係止板
260 ラック
300 第1リール
400 第2リール
500 蓋
512 ピニオン
Claims (8)
- その片面に剥離可能な状態で塗布膜が設けられた長尺のテープが巻き付けられたリールである第1リールと、
前記第1リールから送られた前記テープの前記塗布膜を前記塗布膜を塗布すべき面である対象面に塗布する転写部と、
前記転写部で前記塗布膜が転写された後の前記テープを巻き取るリールである第2リールと、
前記第1リールと、前記第2リールとを収納するとともに、前記転写部を収納可能とされた、開口を備えたケースと、
前記開口を塞ぐ閉位置と前記開口を開く開位置の間で回転可能として前記ケースに取付けられた蓋と、
を備える塗布膜転写具であって、
前記ケースには、ユーザの操作によって第1位置と第2位置の間で移動可能とされた操作部材が取付けられており、
前記操作部材が第1位置にあるときには、前記蓋が閉位置にあり、且つ前記転写部が前記ケースの内にあるとともに、前記操作部材を第2位置に移動させると、前記蓋が開位置に回転移動し、且つ開いた前記開口を通って前記転写部が前記ケースの外に移動するようになっているとともに、
前記蓋は前記開位置に移動するときに、前記開口から前記ケースの中へ移動するようになっている、
塗布膜転写具。 - 前記操作部材は、前記ケースに対して平行移動するようになっているとともに、その平行移動の方向と平行な、ラック歯を備えたラックを備えており、
前記蓋は、前記ラックの前記ラック歯と噛み合うピニオン歯を備えたピニオンを備えており、
前記操作部材を前記第1位置から前記第2位置に平行移動させると、平行移動する前記ラックが備える前記ラック歯と噛み合う前記ピニオン歯を有する前記ピニオンが設けられた前記蓋が回転することにより、前記蓋が閉位置から開位置に移動するようになっている、
請求項1記載の塗布膜転写具。 - 前記操作部材は、前記ケースに対して平行移動するようになっているとともに、
前記操作部材は、前記転写部と接続されており、前記操作部材を前記第1位置から前記第2位置に平行移動させると、前記ケースの内部から、前記開口を通って前記ケースの外へと前記操作部材が平行移動するようになっている、
請求項1又は2記載の塗布膜転写具。 - 前記操作部材は、板状の本体を介して前記転写部と接続されているとともに、前記本体に、前記第1リールと、前記第2リールとが取付けられるようになっており、
前記操作部材を前記第1位置から前記第2位置に平行移動させると、前記転写部と、前記第1リールと、前記第2リールとが、それら相互の位置関係を維持したまま平行移動するようになっている、
請求項3記載の塗布膜転写具。 - 前記本体には、前記第1リールの回転の軸となるようにして前記第1リールを支持する第1軸の基端が取付けられているとともに、
前記ケースには、前記操作部材の平行移動の方向と平行とされた溝であり、前記第1軸の先端が挿入されることで、平行移動する前記本体にしたがって平行移動する前記第1軸の先端を案内する第1溝が設けられている、
請求項4記載の塗布膜転写具。 - 前記本体には、前記第2リールの回転の軸となるようにして前記第2リールを支持する第2軸の基端が取付けられているとともに、
前記ケースには、前記操作部材の平行移動の方向と平行とされた溝であり、前記第2軸の先端が挿入されることで、平行移動する前記本体にしたがって平行移動する前記第2軸の先端を案内する第2溝が設けられている、
請求項4記載の塗布膜転写具。 - 前記操作部材の前記第1位置と前記第2位置との間での移動と、前記蓋の閉位置と開位置との間とでの移動とは、前記操作部材が移動すれば前記蓋が移動し、前記操作部材が移動しなければ前記蓋も移動しないように、完全に連動している、
請求項1記載の塗布膜転写具。 - 前記操作部材は、前記操作部材に対して所定の操作をユーザが行った場合に限り前記ケースに対して、前記所定の動作を行っていない場合に比して小さな力で、前記ケースに対して平行移動を行わせることができるようになっている、
請求項1又は7記載の塗布膜転写具。
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