本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。図1ないし図15に示す本実施形態の転写具は、例えば粘着剤や修正テープ、顔料等の転写物を転写テープ126から紙面その他の転写対象面に転写するための転写ヘッド125を備えた転写具本体1と、転写具本体1に装着されてこれを覆う外ケース2とを具備してなる。そして、外ケース2が転写具本体1に対して相対的に回転移動することにより、図1及び図2に示すように転写具本体1及び転写ヘッド125が外ケース2内に収納される非使用状態と、図4及び図5に示すように転写具本体1の転写ヘッド125が外ケース2外に露出する使用状態とをとり得るものである。
図6、図7及び図11に示すように、転写具本体1は、転写対象面に転写されるべき転写物が付着している(即ち、転写物を支持している)転写テープ126を繰り出す繰出リール124と、繰出リール124から繰り出される転写テープ126が巻き掛けられる転写ヘッド125と、転写ヘッド125を経由した後の転写テープ126を巻き取る巻取リール123と、繰出リール124の回転と巻取リール123の回転とを連動させる歯車伝動機構113とを備えている。本実施形態の転写具を使用する際には、転写ヘッド125が外ケース2の外部に露出する使用状態とした後、外ケース2の把持部を把持し、転写ヘッド125を転写対象面に対して押圧しながら、転写具を転写対象面に対して相対的に変位させる。さすれば、巻取リール123が繰り出された転写テープ126の外表面に付着している転写物を、転写テープ126から転写対象面に転写することができる。転写物が剥離し除去された使用済みの転写テープ126は、巻取リール123に巻き取られる。
外ケース2は、第一ケース部材21及び第二ケース部材22を要素とした半割構造をなす。外ケース2は、繰出リール124及び巻取リール123の回転軸の伸びる方向に沿って見た平面視において、基端側が円形で先端側に向かって徐々に先細りとなる略涙滴状の外形を有している。その基端側の円弧状の輪郭の中心が、当該外ケース2の転写具本体1に対する相対的な回転移動の中心となっており、外ケース2は繰出リール124及び巻取リール123の回転軸と略平行に伸びる軸回りに正逆回転する。
第一ケース部材21は、平面視略涙滴状をなす底壁211と、底壁211の外周縁から起立する周壁212とを有した樹脂一体成形品である。並びに、第二ケース部材22は、平面視略涙滴状をなし第一ケース部材21の底壁211と対向する頂壁221と、頂壁221の外周縁から垂下して第一ケース部材21の周壁と突合する周壁222とを有した樹脂一体成形品である。外ケース2の基端側にある底壁211及び頂壁221は、転写具を使用する使用者が把持することのできる把持部となる。
外ケース2の周壁212、222は、当該外ケース2の全周に亘って連続してはおらず、一部が切り欠かれている。具体的には、外ケース2の先端側から基端側に向かって直線的に延びる一方の側辺、及び外ケース2の部分円筒状をなす基端側の外周、他方の側辺近傍までの領域が開口している。この開口部23は、外ケース2の内部空間を外側方に連通せしめるとともに、転写具本体1の転写ヘッド125を含む先端側を出し入れするための出入口となる。
周壁212、222の切り欠かれていない部分は、外ケース2の内部空間を外側方から遮蔽する閉塞部となる。閉塞部は、外ケース2の先端部位、及び外ケース2の先端側から基端側に向かって直線的に延びる他方の側辺を含む。その上で、この直線状に拡張する部位に、第一ケース部材21と第二ケース部材22とを相対回動可能に連結するヒンジ24を付設している。
第二ケース部材22は、第一ケース部材21に対し、外ケース2の他方の側辺の延びる方向(閉塞部の拡張する方向)に略平行な軸回りに回動する。そして、図1ないし図5に示すように両ケース部材21、22が重なり合い外ケース2が閉じた状態となる閉成姿勢と、図6及び図7に示すように両ケース部材21、22が離反して外ケース2が開いた状態となる展開姿勢とをとり得る。回転軸の方向は、繰出リール124及び巻取リール123の回転軸の方向に対して略垂直である。第二ケース部材22が第一ケース部材21に対して展開姿勢をとるとき、平面視転写具本体1の略全域が外ケース2に覆われることなく露出する。
本実施形態におけるヒンジ24は、第一ケース部材21及び第二ケース部材22の各々とは別体をなす樹脂成形品である。図8ないし図10に示すように、ヒンジ24は、第一ケース部材21における閉塞部を構成する周壁212に固定される第一の取付部241と、第二ケース部材22における閉塞部を構成する周壁222に固定される第二の取付部242と、これら一対の取付部241、242を相対回動可能に連結する連結部243と、連結部243とは別に両取付部241、242に跨って設けられ両取付部241、242を弾性付勢するばね部244とを有している。
外ケース2が閉成姿勢をとるとき、第一ケース部材21の周壁212と第二ケース部材22の周壁222とが互いに略面一となり、故にヒンジ24の第一の取付部241と第二の取付部242とが互いに略面一となる。このとき、図8及び図9に示すように、連結部243は外ケース2の外側方に向かって突き出すような湾曲形状をなす。翻って、外ケース2が展開姿勢をとるとき、第一ケース部材21の周壁212と第二ケース部材22の周壁222とが優角をなすように拡開し、故にヒンジ24の第一の取付部241と第二の取付部242とが優角をなすように拡開する。このとき、図10に示すように、連結部243は外ケース2の内側方に向かって突き出すような湾曲形状をなす。
ヒンジ24の各取付部241、242は、第一ケース部材21及び第二ケース部材22の各々の周壁212、222の内側に取り付けられる。図2及び図5に示しているように、ヒンジ24(の取付部241、242、連結部243及びばね部244)は、外ケース2の周壁212、222の外側面よりも外側方には突出しない。
第二ケース部材22が閉成姿勢と展開姿勢との間の思案点よりも第一ケース部材21に近いと、ヒンジ24のばね部244は第二ケース部材22を閉成姿勢若しくはその近傍に向けて(即ち、外ケース2を閉じる方向に)弾性付勢する。これに対し、第二ケース部材22が思案点よりも第一ケース部材21から離れていると、ばね部244は第二ケース部材22を展開姿勢若しくはその近傍に向けて(即ち、外ケース2を開く方向に)弾性付勢する。このように、ヒンジ24はスナップヒンジとしての作用を営む。
第二の取付部242を第一の取付部241に対して回動させる過程で、換言すれば第二ケース部材22を第一ケース部材21に対して回動させる過程で、連結部243の突き出す方向は外ケース2の外側方から内側方に変化し、あるいは逆に外ケース2の内側方から外側方に変化する。連結部243の突き出す方向が変化する付近が、外ケース2の閉成姿勢と展開姿勢との中間の思案点である。
転写具本体1は、外ケース2の第一ケース部材21に離脱不能に取り付けられているベース部11と、このベース部11に着脱可能に取り付けられるとともに転写テープ126を保持するリフィル部12とを要素とする。本実施形態の転写具では、転写テープ126を交換して転写物を補給するにあたり、リフィル部12のみを交換し、ベース部11は交換しない。
図7に示すように、リフィル部12は、転写テープ126を巻く繰出リール124及び巻取リール123、並びに転写ヘッド125を、一体のフレーム120に支持させてなる。ベース部11は、繰出リール124と巻取リール123とを連動させる歯車伝動機構113、転写具の非使用時に転写ヘッド125及び転写テープ126を汚損から保護するためのカバー(または、シャッタ)14、並びに外ケース2を転写具本体1に対して回転移動させる際に押下操作される操作部材15を、一体のフレーム110に支持させてなる。
転写具本体1の外殻は、リフィル部12のフレーム120及びベース部11のフレーム110を要素とした半割構造をなす。図6に示すように、転写具本体1の外殻は、平面視において、基端側が円形で先端側に向かって徐々に先細りとなる略涙滴状の外形を有している。その基端側の円弧状の輪郭の中心が、外ケース2の転写具本体1に対する相対的な回転移動の中心となる。
ベース部11のフレーム110は、平面視略涙滴状をなす底壁111と、底壁111の外周縁から起立する周壁112とを有した樹脂一体成形品である。並びに、リフィル部12のフレーム120は、平面視略涙滴状をなしベース部11の底壁111と対向する頂壁121と、頂壁121の外周縁から垂下してベース部11の周壁112と突合する周壁122とを有した樹脂一体成形品である。
転写具本体1の外殻の周壁112、122は、当該転写具本体1の全周に亘って連続してはおらず、一部が切り欠かれている。特に、転写具本体1の先端側、及びその先端側から基端側に向かって直線的に延びる一方の側辺の部分が開口している。この開口部13には、カバー14が配置される。リフィル部12のフレーム120に支持させた転写ヘッド125は、転写具本体1の外殻の先端側よりも先方に位置している。
既に述べた通り、転写具本体1のリフィル部12は、ベース部11に対して着脱自在となっている。具体的には、図7及び図11に示しているように、リフィル部12のフレーム120の頂壁121からベース部11に向けて突出する係合片127を、ベース部11のフレーム110に設けられた被係合部115に挿入して係合させるとともに、ベース部11のフレーム底壁111からリフィル部12に向けて屹立する係合片114を、リフィル部12のフレーム120に設けられた被係合部128に挿入して係合させる。なおかつ、リフィル部12のフレーム120に支持された繰出リール124及び巻取リール123の内周に、ベース部11のフレーム110に設けられた支軸116、117を嵌入することで、リフィル部12をベース部11に組み付けることができる。
リフィル部12をベース部11に取り付けたとき、巻取リール123に一体的に形成されている歯車1231が、ベース部11に配設された歯車伝動機構113の所定の歯車1131に噛合する。歯車伝動機構113は、互いに噛合する複数の歯車を要素に含み、そのうちの一つ1132が繰出リール124と同軸となる。この歯車1132と、繰出リール124に嵌入される支軸117との間には、回転速度差を許容しつつトルクを伝達する滑りクラッチ(または、摩擦クラッチ)118が介在する。
転写テープ126を消費したリフィル部12を新品のリフィル部12に交換する際には、図6に示しているように外ケース2を開いて展開姿勢とした後、リフィル部12のフレーム120をベース部11のフレーム110から引き離すようにして、係合片114、127を被係合部128、115から抜出し、かつ巻取リール123及び繰出リール124を支軸116、117から脱離させる。その結果、図7に示すように、リフィル部12をベース部11から取り外すことができる。その上で、新品のリフィル部12をベース部11に取り付け、しかる後外ケース2を再び閉じて図1ないし図5に示す閉成姿勢とすればよい。
ベース部11に装着したリフィル部12のフレーム120の頂壁121の上面は、閉成姿勢をとる外ケース2の第二ケース部材22の頂壁221の下面に当接または近接する。図6に示すように、頂壁121の上面には、軸孔1211及び長孔1212が形成されている。軸孔1211は、平面視外ケース2の転写具本体1に対する相対回転移動の中心に位置しており、長孔1212は、平面視その中心と同心の部分円弧状をなす。第二ケース部材22の頂壁221の下面からは、係合突起2211、2212が突き出しており、外ケース2の第二ケース部材22を閉成姿勢としたときに、各係合突起2211、2212が軸孔1211及び長孔1212にそれぞれ挿入されてこれらに係合する。係合突起2211と軸孔1211との係合、及び係合突起2212と長孔1212との係合は、外ケース2の転写具本体1に対する相対回転移動の妨げとならない。
ベース部11のフレーム110の底壁111の下面は、外ケース2の第一ケース部材21の底壁211の上面に当接または近接する。図11に示すように、底壁111には、これを貫通する係止孔1111が形成されている。係止孔1111は、平面視外ケース2の転写具本体1に対する相対回転移動の中心に位置している。そして、第一ケース部材21の底壁211の上面からは、係止突起2111が突き出している。係止突起2111は、係止孔1111に挿入されてこれに係合する。係止突起2111の先端部には、当該係止突起2111の係止孔1111に対する挿入方向と略直交する方向に突き出した爪2112が存在し、この爪2112が抜け止めとなって、一旦係止孔1111に挿入された係止突起2111は係止孔1111から容易に抜出することはない。従って、ベース部11の底壁111は、第一ケース部材21の底壁211から離反することができない。つまり、転写具本体1のベース部11は、外ケース2の第一ケース部材21から離脱しない。また、係止突起2111と係止孔1111との係合は、外ケース2の転写具本体1に対する相対回転移動の妨げとならない。
本実施形態の転写具は、図1及び図2に示す非使用状態と、図4に示す第一の使用状態と、図5に示す第二の使用状態とを選択的にとり得る。非使用状態では、転写具本体1及び転写ヘッド125が外ケース2内に収容される。のみならず、転写具本体1のベース部11のフレーム110に支持されているカバー14が、外ケース2の先端部にある周壁212、222に(即ち、開口部23の端縁に)当接または極近接する閉位置まで進出する。外ケース2の開口部23は、外ケース2の基端側から一方の側辺に沿って先端部付近まで拡張している。このことから、非使用状態にあっては、外ケース2の先端部の周壁212、222と転写具本体1の外殻の周壁112、122との間に空隙が形成される。だが、カバー14が、転写具本体1の先端部に所在する転写ヘッド125の側方まで進出してこの空隙を閉じ、外ケース2の外部からの転写ヘッド125への接触を阻む。カバー14の存在により、転写具の非使用時に塵や埃が外ケース2内に侵入して転写ヘッド125や転写テープ126に付着することが抑制される。
第一の使用状態及び第二の使用状態では、転写具本体1の先端側及び転写ヘッド125が外ケース2外に露出する。このとき、カバー14は、転写ヘッド125の側方から変位し、転写ヘッド125と転写対象面との当接を妨げない開位置まで退避する。第一の使用状態は、非使用状態から外ケース2を転写具本体1に対し一定角度だけ相対回転移動させた状態であり、第二の使用状態は、この第一の使用状態からさらに外ケース2を同一方向に一定角度だけ相対回転移動させた状態である。
しかして、本実施形態の転写具では、外ケース2を、転写具本体1に対して、非使用状態、第一の使用状態及び第二の使用状態の何れかの位置に保定することが可能となっている。
詳述すると、図12ないし図15に示すように、第一ケース部材21の底壁211の上面に、ベース部11の底壁111に向かって突出する凸条213が形成されている。この凸条213は、平面視外ケース2の転写具本体1に対する相対回転移動の中心と同心の部分円弧状をなすレール214となる領域を囲繞している。加えて、外側にある凸条213の内周面の一部を、外ケース2の転写具本体1に対する相対回転移動の中心に向けて膨出または突出させることで、複数の保定位置215、216、217を構成している。
他方、転写具本体1のベース部11には、外ケース2の転写具本体1に対する保定を実現するとともにその保定を解除するために操作される操作部材15が設けられる。操作部材15は、ベース部11の底壁111の所定部位から突出するピン119に係合し、このピン119を中心にベース部11に対して相対的に回動し得る。また、ピン119と係合する位置から、ベース部11のフレーム110の基端側に向かって腕部155が伸長しており、この腕部155の先端はフレーム110の周壁112の内側面に当接する。さらに、ピン119と係合する位置から、ベース部11のフレーム110の先端側に向かって基部151が拡張している。
操作部材15の基部151における、第一ケース部材21の底壁211に形成されたレール214の直上に位置する部位には、第一ケース部材21の底壁211に向かってストッパ突起154が突出している。ストッパ突起154は、転写具本体1のベース部11の底壁111を貫通し、第一ケース部材21の底壁211に形成されたレール214内に収まる。このストッパ突起154が上記の保定位置215、216、217の何れかに係合することにより、外ケース2(の第一ケース部材21)の転写具本体1(のベース部11のフレーム110)に対する相対回転移動が抑制される、つまりは外ケース2が非使用状態、第一の使用状態及び第二の使用状態の何れかの位置に保定される。図12は非使用状態を、図14は第一の使用状態を、図15は第二の使用状態を、それぞれ表している。
基部151の一部は、使用者の手により押下操作される押下ボタン152、153となっている。押下ボタン152、153は、転写具本体1の外殻の周壁112、122に予め形成された窓161、162から転写具本体1の外側方に向けて表出する。但し、両押下ボタン152、153がともに使用者の手指の届く位置に露出しているとは限らない。図2及び図12に示す非使用状態では、押下ボタン152が外ケース2の開口部23を介して露出する一方、押下ボタン153は外ケース2の周壁212、222(の直線状に拡張する部位)に遮られており、使用者の手指でこれに触れることは困難である。対して、図14及び図15に示す使用状態では、押下ボタン153が外ケース2の開口部23から露出するようになり、使用者の手指が容易にこれに触れることができる。
外ケース2の転写具本体1に対する保定を解除したい場合には、転写具本体1の周壁112、122の窓161、162から表出している押下ボタン152、153を押下してこれを没入させればよい。さすれば、操作部材15が、ベース部11のフレーム110に対してピン119を中心に回動し、基部151に形成されたストッパ突起154が、外ケース2の転写具本体1に対する相対回転移動の中心に近づく方向、即ち外側にある凸条213の内周面から離反する方向に変位する。結果、ストッパ突起154が保定位置215、216、217から離脱して、外ケース2の転写具本体1に対する保定が解除される。
また、このとき、操作部材15の腕部155が、ベース部11のフレーム110の周壁112の内側面に押し付けられて弾性変形し反力を蓄える。従って、使用者が押下ボタン152、153を押下しなくなると、弾性反力によって操作部材15がピン119を中心に逆方向に回動し、ストッパ突起154が、外ケース2の転写具本体1に対する相対回転移動の中心から遠ざかる方向、即ち外側にある凸条213の内周面に接近する方向に変位する。結果として、再びストッパ突起154が何れかの保定位置215、216、217に係合可能となり、使用者が外ケース2を回転させることで任意の使用状態または非使用状態に外ケース2を保定できるようになる。外ケース2が転写具本体1に対して回動移動する際には、ストッパ突起154が凸条213の内周面に対して摺動しながらレール214内を移動し、保定位置215、216、217に到達したときに当該保定位置215、216、217に嵌まり込む。。
そして、外ケース2の第一ケース部材21と転写具本体1のベース部11との間には、ねじりコイルばね25が介在している。このばね25は、外ケース2の第一ケース部材21を、非使用状態の位置から使用状態の位置に向かう方向に弾性付勢する。
押下ボタン152は、外ケース2内に収納されている転写具本体1及びその転写ヘッド125を外ケース2外に露出させるために押下操作される。図1、図2及び図12に示す非使用状態において、使用者が押下ボタン152を押下すると、外ケース2の転写具本体1に対する保定が解除され、ねじりコイルばね25の発揮する弾性付勢力により、外ケース2が転写具本体1に対して少なくとも図3及び図13に示す第一の使用状態に近い状態まで自動的に回転移動する。
押下ボタン153は、外ケース2外に露出している転写具本体1及び転写ヘッド125の外ケース2に対する相対的な角度を変更するために押下操作される。転写具を使用する使用者は、転写具本体1の転写ヘッド125を転写対象面に対して押圧する。その反作用で、転写具本体1には、当該転写具本体1を第一の使用状態から第二の使用状態に向かわせる方向の力が加わる。図4及び図14に示す第一の使用状態において、ストッパ突起154と保定位置216との係合は、転写具の使用中に転写具本体1が外ケース2に対して意図せず回転することを抑止する。その上で、使用者が押下ボタン153(または、押下ボタン152)を押下すると、外ケース2の転写具本体1に対する保定が解除され、外ケース2または転写具本体1を第一の使用状態から図5及び図15に示す第二の使用状態に向けて回転移動させることが可能となる。
外ケース2または転写具本体1を、第二の使用状態から第一の使用状態または非使用状態に向けて回転移動させるためには、必ずしも押下ボタン152、153を押下する必要がない。とは言え、転写具本体1及び転写ヘッド125を外ケース2内に収納するときに、押下ボタン152、153を押下しても構わない。
転写具の非使用時に転写ヘッド125及び転写テープ126を保護するカバー14は、外ケース2の転写具本体1に対する相対回転移動に連動して開閉する。図12ないし図15に示しているように、第一ケース部材21の底壁211に形成された凸条213の外周面の一部には、歯218が存在している。この歯218は、転写具本体1のベース部11のフレーム110に支持された歯車17に噛合する。さらに、この歯車17が、ベース部11のフレーム110にスライド可能に支持されたカバー14に形成されているラック歯141に噛合する。
外ケース2の第一ケース部材21が、転写具本体1のベース部11に対し、図1、図2及び図12に示す非使用状態から、図4及び図14に示す第一の使用状態に向かって相対回転移動する過程で、凸条213の外周面の歯218が歯車17を回転させ、回転する歯車17がカバー14のフレーム110、120に対するスライド移動を惹起して、カバー14が閉位置から開位置に変位する。カバー14が図3及び図13に示す開位置に至ったとき、歯車17は、凸条213の外周面における、歯218の設けられていない部分に到達する。従って、外ケース2(の第一ケース部材21)が転写具本体1(のベース部11)に対してさらに回転移動したとしても、それ以上歯車17が回転することはなく、カバー14は開位置にあり続ける。
外ケース2の第一ケース部材21が、転写具本体1のベース部11に対し、図4及び図14に示す第一の使用状態に位置づけられたとき、ストッパ突起154が、第一の使用状態に対応した保定位置216に係合する。同時に、凸条213の外周面に一個または小数個設けられている歯219が、歯車17に噛合する。これにより、外ケース2が第一の使用状態の位置に保定されるとともに、ラック歯141に噛合する歯車17の回転が抑制され、カバー14に外力が作用したとしても、カバー14がベース部11に対してスライド移動することなく開位置に保定される。
さらに、外ケース2の第一ケース部材21が、転写具本体1のベース部11に対し、図5及び図15に示す第二の使用状態に位置づけられたとき、ストッパ突起154が、第二の使用状態に対応した保定位置217に係合する。同時に、凸条213の外周面に一個または小数個設けられている歯210が、歯車17に噛合する。これにより、外ケース2が第二の使用状態の位置に保定されるとともに、ラック歯141に噛合する歯車17の回転が抑制され、カバー14に外力が作用したとしても、カバー14がベース部11に対してスライド移動することなく開位置に保定される。
外ケース2の第一ケース部材21が、転写具本体1のベース部11に対し、第一の使用状態から非使用状態に向かって相対回転移動する過程では、凸条213の外周面の歯218が歯車17を逆回転させ、この歯車17がカバー14のベース部11に対するスライド移動を惹起して、カバー14が開位置から閉位置に変位することは言うまでもない。
補足すると、図16及び図17に示すように、カバー14のスライド移動を惹起する変換機構の要素である歯車17は、第一ケース部材21の底壁211におけるベース部11の底壁111に臨む面に形成された歯218、219、210に噛合する第一歯車要素171と、ベース部11のフレーム110にスライド可能に支持されているカバー14に形成された歯141に噛合する第二歯車要素172との組となっている。平常時、第一歯車要素171と第二歯車要素172とは一体となって回転し、一体の歯車17を構成する。
第一歯車要素171と第二歯車要素172とのうち一方(図示例では、第二歯車要素172)には、歯車17の回転軸の伸びる方向に沿って突出する軸部1721が設けられ、他方(図示例では、第一歯車要素171)には、当該軸部1721が挿入される軸孔1711が設けられる。これら軸部1721及び軸孔1711は、第一歯車要素171の回転と第二歯車要素172の回転とを連動させ同期させる滑りクラッチ(または、摩擦クラッチ)として機能する。軸孔1711の内周には、歯車17の回転軸と直交する径方向に沿って内方に凹む複数の凹部1712が連続的に成形されている。並びに、軸体1721の外周には、歯車17の回転軸と直交する径方向に沿って外方に突き出す凸部1722が連続的に成形されている。この凸部1722は、軸孔171の内周の凹部1712の何れかに係合する。また、軸体1721は、径方向に沿って内方に弾性変形できるよう、複数の部分に分割されて(図示例では、二分されて)いる。
歯車17に作用する回転トルクが過大でない平常時には、凹部1712と凸部1722との係合を通じて第一歯車要素171と第二歯車要素172との間でトルクが伝達され、第二歯車要素172が第一歯車要素171に対して相対的に回転せず、両者が一体の歯車17として回転する。
これに対し、歯車17に作用する回転トルクが過大となると、軸体1721の弾性変形を伴って凸部1722が係合している凹部1712から脱出し、隣接する凹部1712に遷移する。つまり、第一歯車要素171と第二歯車要素172とを繋ぐクラッチにおいて滑りが生じ、両者の間でトルクが伝達されず、第二歯車要素172が第一歯車要素171に対して相対的に回転するようになる。即ち、第一歯車要素171と第二歯車要素172とのうちの一方が回転するにもかかわらず、もう一方が回転しない状態となる。
本実施形態では、転写物を転写テープ126から転写対象面に転写するための転写ヘッド125を備えた転写具本体1と、転写具本体1に装着される把持部を有する外ケース2とを具備し、外ケース2が転写具本体1に対して相対的に回転移動することで、転写具本体1が外ケース2に覆われる非使用状態と転写具本体1の少なくとも転写ヘッド125が外ケース2外に露出する使用状態とをとり得る転写具であって、前記転写具本体1が、前記外ケース2に離脱不能に取り付けられたベース部11と、このベース部11に着脱可能に取り付けられ少なくとも前記転写テープ126を保持するリフィル部12とを備えている転写具を構成した。本実施形態によれば、転写テープ126の交換に際して付け外しされるのがリフィル部12に限定され、廃棄部品を減らすことができ、また使用者が誤ってベース部11まで廃棄してしまうことを防止できる。
特に、前記転写具本体1のリフィル部12に、前記転写テープ126を繰り出す繰出リール124と、繰出リール124から繰り出される転写テープ126が巻き掛けられる前記転写ヘッド125と、転写ヘッド125を経由した転写テープ126を巻き取る巻取リール123とが設けられ、前記転写具本体1のベース部11に、前記繰出リール124の回転と前記巻取リール123の回転とを連動させるための伝動機構113が設けられていることから、転写テープ126の交換のために伝動機構113の構成部品が廃棄されることがなくなる。
前記外ケース2が、当該外ケース2の前記転写具本体1に対する相対回転移動の過程で転写具本体1を通過させる開口部23と、転写具本体1を通過させない閉塞部とを有し、前記閉塞部に、前記転写具本体1の略全域を露出させるように前記外ケース2を展開するためのヒンジ24が設けられているので、外ケース2を展開して転写具本体1のリフィル部12を簡便に交換することができる。前記ヒンジ24は、前記閉塞部における直線的に拡張した部位に設けられている。
前記外ケース2が、第一ケース部材21と、第一ケース部材21に接合する第二ケース部材22とを備えており、前記ヒンジ24が、前記両ケース部材21、22が重なり合い前記外ケース2が閉じた状態となる閉成姿勢と、両ケース部材21、22が離反して外ケース2が開いた状態となる展開姿勢との間で、第二ケース部材22が第一ケース部材21に対して相対的に回動できるように、第二ケース部材22を第一ケース部材21に連結し、なおかつ、前記ヒンジ24が、前記第二ケース部材22が前記閉成姿勢と前記展開姿勢との間の思案点よりも前記第一ケース部材21に近いときに、当該第二ケース部材22を閉成姿勢若しくはその近傍に向けて付勢する一方、第二ケース部材22が思案点よりも第一ケース部材21から離れているときに、当該第二ケース部材22を展開姿勢若しくはその近傍に向けて付勢するスナップヒンジであるため、第二ケース部材22が思案点を超えれば外ケース2が自動的に展開するようになり、リフィル部12の交換作業がより容易となる。
前記ヒンジ24が、前記第一ケース部材21及び前記第二ケース部材22にそれぞれ取り付けられる一対の取付部241、242と、両取付部241、242を相対回動可能に連結する連結部243と、連結部243とは別に両取付部241、242に跨って設けられ両取付部241、242を前記閉成姿勢若しくはその近傍または前記展開姿勢若しくはその近傍に向けて弾性付勢するばね部244とを有し、前記ばね部244が、前記思案点を境として前記取付部241、242を付勢する方向が反転するようにその位置及び形状が設定されている。ヒンジ24は、両ケース部材21、22とは別体の部材となっているので、このヒンジ24のみを他の文具等に流用することが可能である。
前記ヒンジ24が、前記外ケース2の外側面から外側方に突出しないため、ヒンジ24の存在が転写具の意匠性を損なわず、またヒンジ24が手触りを悪くしたり他の物品と衝突または干渉したりすることも回避できる。
並びに、本実施形態では、転写物を転写対象面に転写するための転写ヘッド125を備えた転写具本体1と、転写具本体1を収容する外ケース2とを具備し、外ケース2が転写具本体1に対して相対移動することで、転写具本体1が外ケース2に覆われる非使用状態と転写具本体1の少なくとも転写ヘッド125が外ケース2外に露出する使用状態とをとり得る転写具であって、前記転写具本体1が、前記非使用状態において前記外ケース2と転写具本体1との間に形成される空隙を閉じて当該空隙を介した外部からの前記転写ヘッド125への接触を遮断するカバー14を備えており、そのカバー14が前記相対移動に連動して開閉する転写具を構成した。本実施形態によれば、転写具の非使用時に外ケース2内に塵や埃が侵入することを抑制し、転写ヘッド125または転写テープ126の汚損を効果的に防止できる。
前記相対移動は、前記外ケース2の前記転写具本体1に対する相対回転移動である。前記カバー14は、前記転写具本体1の先端側の他方の側辺に沿ってスライド移動可能に設けられおり、転写ヘッド125を転写対象面に押圧し転写物を転写対象面に転写する使用時に邪魔とならない。
本実施形態の転写具は、前記外ケース2と前記転写具本体1との相対回転移動を前記カバー14のスライド移動に変換する変換機構を具備する。変換機構は、凸条213の外周面の歯218、歯車17及びカバー14のラック歯141を構成要素とする。
前記変換機構は、前記外ケース2側に設けられた歯218と、前記カバー14側に設けられた歯141と、双方の歯218、141に噛合する歯車17とを有し、歯車17が外ケース2と前記転写具本体1との相対回転移動に連動して回転しカバー14を駆動してそのスライド移動を惹起するものである。前記歯車17は、前記使用状態において前記歯218と噛合しなくなる。従って、使用状態においてカバー14に外力が加わったとしても、転写具の構成部材の破損や機構の動作不良を招かずに済む。
また、前記変換機構の前記歯車17が、前記外ケース2側に設けられた歯218に噛合する第一歯車要素171と、前記カバー14側に設けられた歯141に噛合する第二歯車要素172と、前記第一歯車要素171と前記第二歯車要素172との間に介在し両者の回転を連動させるとともに過大なトルクが作用した場合に第一歯車要素171に対する第二歯車要素172の相対回転を許容するクラッチ1711、1721とを有しており、カバー14に過大な外力が加わる等した場合に、第一歯車要素171と第二歯車要素172との間でトルクの伝達が抑制されるため、転写具の構成部材の破損や機構の動作不良を防止できる。
前記変換機構は、前記カバー14を、前記非使用状態において前記空隙を閉じる閉位置から、前記使用状態において前記転写ヘッド125と転写対象面との当接を妨げない開位置までスライド移動させる。
前記外ケース2及び前記転写具本体1は、前記非使用状態から一定角度だけ相対回転移動した第一の使用状態と、第一の使用状態からさらに同一方向に一定角度だけ相対回転移動した第二の使用状態とをとり得るものであり、前記変換機構は、前記非使用状態から前記第一の使用状態までの間で前記カバー14をスライド移動させる。
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。例えば、上記実施形態では、使用状態において歯車17の歯が外ケース2側の歯218と噛合しなくなるように構成されていたが、使用状態において歯車17の歯がカバー14側の歯141と噛合しなくなるような構造とすることを妨げない。
上記実施形態では、外ケース2がばね25により非使用状態の位置から使用状態の位置に向かう方向に弾性付勢されており、非使用状態において使用者が押下ボタン152を押下することで、外ケース2が第一の使用状態に近い状態まで自動的に回転するようになっていた。しかしながら、必ず外ケース2を自動で回転するように弾性付勢しなければならないわけではなく、ばね25は必須の構成要素ではない。
外ケース2を自動で回転するように弾性付勢していない場合、外ケース2に覆われた転写ヘッド125を外ケース2外に露出させるために、使用者が自らの手で外ケース2または転写具本体1を非使用状態から使用状態に向けて回転させる操作を行う必要がある。図18ないし図20に示す変形例の転写具は、外ケース2を自動で回転するように弾性付勢していないものである。この変形例の転写具では、転写具本体1の基端側における部分円筒状をなす外殻の周壁112、122の外面に、僅かながら凹んだ凹部181、182を形成してある。それら凹部181、182は、図20に示すように、平面視または平断面視において、外ケース2の転写具本体1に対する相対的な回転移動の中心に対称な二箇所に所在している。なお、図20では、簡明化のため、外ケース2、転写具本体1のフレーム110、カバー14、ヒンジ24及び転写ヘッド125以外の内部構造の図示を省略している。
図18ないし図20に示す非使用状態において、転写具本体1の基端側の周壁112、122及び凹部181、182が、外ケース2の開口部23を介して表出している。使用者は、凹部181、182に指を掛け、転写具本体1の基端側の周壁112、122を二本の指で摘まむように保持し、転写具本体1を外カバー2に対して回転させる操作を行うことができる。
その他、各部の具体的構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。