JP4565803B2 - ポリビニルアルコール系フィルム及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水溶性のポリビニルアルコール(以下、PVAと略記することがある)系フィルムに関し、更に詳しくは、長期間にわたって柔軟性に優れ、かつ、長期保存後のスリット適性に優れたPVA系フィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、PVA系フィルムは、その水溶性を生かして、農薬や洗剤等の薬剤の包装(ユニット包装)用途、(水圧)転写用フィルム、ナプキン・紙おむつ等の生理用品、オストミーバッグ等の汚物処理用品、吸血シート等の医療用品、育苗シート・シードテープ・刺繍用基布等の一時的基材、等に用いられている。中でも、農薬や洗剤等の薬剤のユニット包装用途では、使用時に薬剤量を一々計量する手間が省けるうえ、手を汚したりすることもないという利点がある。
【0003】
これら水溶性フィルムを製造するにあたっては、通常、原料であるPVA系樹脂の柔軟化を目的として、PVA系樹脂に可塑剤を添加し製膜される。
【0004】
かかる可塑剤としては、例えば、グリセリンや、ジグリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、トリメチロールプロパン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ペンタエリスリトール、マンニトール、ソルビトール等を用いることができる(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。
【0005】
中でも特に、グリセリンが一般的に使用されることが多いが、グリセリンは良好な可塑化効果を示すものの、その可塑化効果の持続性が劣るものであり、得られるPVA系フィルム等の成形物の柔軟性が低下することになるため、かかる対策として、PVA100重量部に対して、グリセリン及びジグリセリンからなり配合割合が20/80〜80/20である可塑剤8重量部以上含有するPVA系フィルムが提案されている(特許文献3参照。)。
【0006】
又、高ケン化度PVAを用いた溶融成形に関しては、該高ケン化度PVA100重量部に対しトリメチロールエタン又はトリメチロールプロパン3〜10重量部とグリセリン5〜12重量部とをこれら両者の合計量が10〜20重量部になるように配合した組成物を実質的無水の状態で溶融成形する方法も提案されている(特許文献4参照。)。
【0007】
【特許文献1】
特開平4−170405号公報
【特許文献2】
特開2001−329130号公報
【特許文献3】
特開平7−18145号公報
【特許文献4】
特公昭46−7456号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1の開示技術では、冷水溶解性、耐アルカリ性、機械的強度が、特許文献2の開示技術では、耐ブロッキング性や耐衝撃性がそれぞれ改善されているものの、長期間にわたっての柔軟性や、長期保存後のスリット適性についてはいずれも満足するものではなかった。
又、特許文献3の開示技術では、長期間にわたっての柔軟性は良好であるものの、長期保存後のスリット適性については不十分であり、更なる改良が必要である。
【0009】
一方、特許文献4の開示技術は、高ケン化度PVAを用いて溶融成形してなるフィルムであるが、かかるフィルムは水難溶性のフィルムであり、水溶性フィルムの物性を改善しようとする本発明とは技術分野が異なる技術である。
【0010】
そこで、本発明ではこのような背景下において、水溶解性に優れたフィルムであって、長期間にわたって柔軟性に優れ、かつ、長期保存後におけてもスリット適性に優れたPVA系フィルム及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
しかるに、本発明者等はかかる課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、平均ケン化度70〜98モル%のポリビニルアルコール系樹脂(A)100重量部に対して、グリセリン及びトリメチロールプロパンを含む可塑剤(B)5〜45重量部、及び界面活性剤(C)0.01〜3.0重量部を含有してなる樹脂組成物[I]を製膜してなるフィルムであって、上記グリセリン(b1)とトリメチロールプロパン(b2)との含有重量比が、(b1)/(b2)=15/85〜85/15であり、上記フィルムの含水率がカールフィッシャー法(JIS K 0068)により測定して3〜10重量%であるとともに、下記(X)の測定方法による水溶解性が60秒以内であるPVA系フィルムが上記目的に合致することを見出し、本発明を完成した。
(X)フィルムを3cm×5cmのサイズにカットして、治具に固定する一方、1リットルビーカーに水(1リットル)を入れ、スターラーにより撹拌しながら水温を25℃に保ち、この水中に、治具に固定したフィルムを浸漬し、撹拌を続けながらフィルムが溶解するまでの時間(秒)を測定した。
【0012】
又、本発明は、10〜40重量%の樹脂組成物[I]の水分散液を50〜100℃のエンドレスベルト上に流延し、150〜50℃の間で温度勾配をもつ熱風乾燥機中で1〜12分間乾燥するPVA系フィルムの製造方法も提供するものである。
【0013】
尚、本発明において、溶解とはフィルムを水中に浸漬したときにフィルムの残渣が視認できなくなることをいうものであるが、このとき直径1mm以下の不溶微粒子が分散している場合も本発明では溶解の意味に含めるものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0015】
本発明のPVA系フィルムは、PVA系樹脂(A)に、グリセリン及びトリメチロールプロパンを含む可塑剤(B)、及び界面活性剤(C)を含有してなる樹脂組成物[I]を製膜してなるものである。
【0016】
本発明で用いられるPVA系樹脂(A)としては、平均ケン化度70〜98モル%のものであれば、特に限定されることなく、公知の方法で製造することができる。即ち、ビニルエステル系化合物を重合して得られたビニルエステル系重合体をケン化して得られるものである。
【0017】
かかるビニルエステル系化合物としては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、トリフルオロ酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリル酸ビニル、バーサティック酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等が単独又は併用で用いられるが、実用上は酢酸ビニルが好適である。
【0018】
又、本発明においては、本発明の目的を阻害しない範囲、例えば0.5〜10モル%、好ましくは1〜7モル%において、他の単量体を共重合させることも可能で、かかる単量体としては、例えばエチレン、プロピレン、イソブチレン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等のオレフィン類、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和酸類あるいはその塩あるいはモノ又はジアルキルエステル等、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル類、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸あるいはその塩、アルキルビニルエーテル類、N−アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド、ジメチルアリルビニルケトン、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリオキシエチレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキシプロピレン(メタ)アリルエーテル等のポリオキシアルキレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリルアミド、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリルアミド等のポリオキシアルキレン(メタ)アクリルアミド、ポリオキシエチレン(1−(メタ)アクリルアミド−1,1−ジメチルプロピル)エステル、ポリオキシエチレンビニルエーテル、ポリオキシプロピレンビニルエーテル、ポリオキシエチレンアリルアミン、ポリオキシプロピレンアリルアミン、ポリオキシエチレンビニルアミン、ポリオキシプロピレンビニルアミン、ジアクリルアセトンアミド等が挙げられる。
【0019】
更に、N−アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドエチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、2−アクリロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、2−メタクリロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、メタアリルトリメチルアンモニウムクロライド、3−ブテントリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド、ジエチルジアリルアンモニウムクロライド等のカチオン基含有単量体等も挙げられる。
又、アセトアセチル基を含有させたポリビニルアルコール系樹脂等も使用することができる。
【0020】
重合(又は共重合)を行うに当たっては、特に制限はなく公知の重合方法が任意に用いられるが、普通メタノール、エタノールあるいはイソプロピルアルコール等のアルコールを溶媒とする溶液重合が実施される。勿論、乳化重合、懸濁重合も可能である。
【0021】
又、重合反応は、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化アセチル、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル等の公知のラジカル重合触媒を用いて行われ、反応温度は35℃〜沸点(更には40〜80℃、特には50〜80℃)程度の範囲から選択される。
【0022】
得られたビニルエステル系重合体をケン化するに当たっては、該重合体をアルコールに溶解してアルカリ触媒の存在下に行なわれる。アルコールとしてはメタノール、エタノール、ブタノール等が挙げられる。アルコール中の共重合体の濃度は20〜50重量%の範囲から選ばれる。
【0023】
ケン化触媒としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート等のアルカリ金属の水酸化物やアルコラートの如きアルカリ触媒を用いることができる。かかる触媒の使用量はビニルエステルに対して1〜100ミリモル当量にすればよい。尚、場合によっては、酸触媒によりケン化することも可能である。
【0024】
かくしてPVA系樹脂(A)が得られるが、かかるPVA系樹脂の平均ケン化度は、70〜98モル%であることが必要であり、より好ましくは75〜97モル%、特に好ましくは80〜96モル%である。かかる平均ケン化度が70モル%未満では、水溶解性が低下することとなり、逆に98モル%を越えても水溶解性が低下することとなり好ましくない。
【0025】
又、PVA系樹脂(A)の20℃における4重量%水溶液粘度については特に限定されないが、2〜70mPa・sであることが好ましく、更に好ましくは2〜60mPa・s、特に好ましくは3〜50mPa・sである。かかる4重量%水溶液粘度が2mPa・s未満ではフィルムの機械強度が低下することとなり、70mPa・sを越えるとフィルム製膜時の水溶液粘度が高くなり、生産性が低下することとなり実用上好ましくない。
【0026】
尚、平均ケン化度の測定は、JIS K 6726 3.5に準じて行われ、粘度の測定は、JIS K 6726 3.11.2に準じて行われる。
本発明においては、上記PVA系樹脂(A)を1種のみならず、2種以上併用して用いることも可能である。
【0027】
本発明で用いられる可塑剤(B)は、グリセリン及びトリメチロールプロパンを必須成分とするが、必要に応じて、これら以外にジグリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ペンタエリスリトール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS、N−メチルピロリドン、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、2,3−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、還元麦芽糖水あめ類、還元乳糖、還元水あめ(還元澱粉糖化物)を併用することも可能である。
【0028】
かかる可塑剤(B)の含有量については、PVA系樹脂(A)100重量部に対して5〜45重量部であることが必要であり、特には7〜40重量部、更には10〜35重量部であることが好ましい。該含有量が5重量部未満では可塑効果が低く、45重量部を越えると経時的に可塑剤が表面よりブリードしやすくなり好ましくない。
【0029】
又、本発明では、可塑剤(B)において、グリセリン(b1)及びトリメチロールプロパン(b2)の含有重量比(b1)/(b2)が、15/85〜85/15であることが必要であり、特には20/80〜80/20、更には25/75〜75/25であることが好ましい。該含有重量比が15/85未満では耐ブロッキング性が低下することとなり、85/15を越えると経時的柔軟性が低下することとなり好ましくない。
【0030】
本発明で用いられる界面活性剤(C)としては、特に限定されず、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルノニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルモノエタノールアミン塩、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンステアリルアミノエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアミノエーテル等が挙げられ、1種又は2種以上併用して用いられる。中でも、剥離性の点でポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルモノエタノールアミン塩、ポリオキシエチレンアルキルアミノエーテルが好適である。
【0031】
かかる界面活性剤(C)の含有量については、PVA系樹脂(A)100重量部に対して0.01〜3.0重量部であることが必要であり、特には0.03〜2.5重量部、更には0.05〜2.0重量部であることが好ましい。該含有量が0.01重量部未満では製膜装置のドラムやベルト等の金属表面と製膜したフィルムとの剥離性が低下して製造困難となり、3.0重量部を越えるとフィルム表面にブリードしてブロッキングの原因となり取り扱い性が低下することとなり好ましくない。
【0032】
かくして本発明では、上記PVA系樹脂(A)に、グリセリン及びトリメチロールを含む可塑剤(B)、及び界面活性剤(C)を含有して樹脂組成物[I]を得るのであるが、必要に応じて、更にフィラーや澱粉等を含有させることができる。
【0033】
かかるフィラーとしては、無機フィラーや有機フィラーが挙げられる。
無機フィラーとしては、その平均粒子径が1〜10μmのものであることが好ましく、かかる平均粒子径が1μm未満ではフィルムのブロッキング抑制効果が少なく、10μmを越えるとフィルムの外観が悪くなり商品価値が低下し好ましくない。具体例としては、例えば、タルク、クレー、二酸化ケイ素、ケイ藻土、カオリン、雲母、アスベスト、石膏、グラファイト、ガラスバルーン、ガラスビーズ、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸アンモニウム、亜硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、ウイスカー状炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドーソナイト、ドロマイト、チタン酸カリウム、カーボンブラック、ガラス繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、加工鉱物繊維、炭素繊維、炭素中空球、ベントナイト、モンモリロナイト、銅粉、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸亜鉛、硫酸銅、硫酸鉄、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム、硝酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸アルミニウム、塩化アンモニウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、リン酸ナトリウム、クロム酸カリウム、クエン酸カルシウム等が挙げられる。
【0034】
かかる無機フィラーの含有量は特に限定されないが、PVA系樹脂100重量部に対して0.1〜50重量部であることが好ましく、特に好ましくは0.5〜10重量部である。かかる含有量が0.1重量部未満ではブロッキング抑制効果が少なく、50重量部を越えるとフィルムの引張伸度が低下し好ましくない。
【0035】
又、有機フィラーとしては、その平均粒子径が0.5〜10μmのものであることが好ましく、より好ましくは0.5〜7μm、特に好ましくは0.5〜5μm、更に好ましくは0.5〜3μmである。該平均粒子径が0.5μm未満ではコスト面で高くなり、10μmを越えると分散性が低下することとなり好ましくない。
【0036】
かかる有機フィラーの具体例としては、例えば、澱粉、メラミン系樹脂、ポリメチル(メタ)アクリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂の他、ポリ乳酸、米澱粉等の生分解性樹脂等も挙げられるが、特にはポリメチル(メタ)アクリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、生分解性樹脂が好適に用いられる。
【0037】
かかる有機フィラーの含有量は、特に限定されないが、PVA系樹脂(A)100重量部に対して5〜25重量部であることが好ましく、特には5〜15重量部であることが好ましい。かかる含有量が5重量部未満では包材としての機械強度が不足し、25重量部を越えるとフィルムの可とう性が得られなくなり好ましくない。
【0038】
又、澱粉はブロッキング防止や機械強度の調整の目的で含有されるが、その平均粒子径が10μm以上のものであることが好ましく、具体例としては、生澱粉(トウモロコシ澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、コムギ澱粉、キッサバ澱粉、サゴ澱粉、タピオカ澱粉、モロコシ澱粉、コメ澱粉、マメ澱粉、クズ澱粉、ワラビ澱粉、ハス澱粉、ヒシ澱粉等);物理的変性澱粉(α−澱粉、分別アミロース、湿熱処理澱粉等);酵素変性澱粉(加水分解デキストリン、酵素分解デキストリン、アミロース等);化学分解変性澱粉(酸処理澱粉、次亜塩素酸酸化澱粉、ジアルデヒド澱粉等);化学変性澱粉誘導体(エステル化澱粉、エーテル化澱粉、カチオン化澱粉、架橋澱粉等)等が挙げられる。尚、化学変性澱粉誘導体のうちエステル化澱粉としては、酢酸エステル化澱粉、コハク酸エステル化澱粉、硝酸エステル化澱粉、リン酸エステル化澱粉、尿素リン酸エステル化澱粉、キサントゲン酸エステル化澱粉、アセト酢酸エステル化澱粉等、エーテル化澱粉としては、アリルエーテル化澱粉、メチルエーテル化澱粉、カルボキシメチルエーテル化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉、ヒドロキシプロピルエーテル化澱粉等、カチオン化澱粉としては、澱粉と2−ジエチルアミノエチルクロライドの反応物、澱粉と2,3−エポキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドの反応物等、架橋澱粉としては、ホルムアルデヒド架橋澱粉、エピクロルヒドリン架橋澱粉、リン酸架橋澱粉、アクロレイン架橋澱粉等が挙げられ、中でも入手の容易さや経済性点から、生澱粉が好適である。
【0039】
かかる澱粉の含有量は特に限定されないが、PVA系樹脂(A)100重量部に対して0.1〜40重量部であることが好ましく、特に好ましくは1〜30重量部である。かかる含有量が0.1重量部未満ではブロッキング抑制効果が低く、又機械強度の改善効果も少なく、40重量部を越えるとフィルムの外観や引張伸度が大幅に低下し好ましくない。
【0040】
かくして本発明では、PVA系樹脂(A)に、グリセリン及びトリメチロールを含む可塑剤(B)、及び界面活性剤(C)を含有してなる樹脂組成物[I]を製膜(フィルム化)してPVA系フィルムとすればよく、かかる製膜に当たっては、特に限定されることなく流延法等の方法を採用することができる。
【0041】
例えば、流延法について、より具体的に説明すれば、上記樹脂組成物[I](粉末)に水を加えて固形分濃度が10〜40重量%(好ましくは11〜39重量部、更に好ましくは12から38重量%)の樹脂組成物[I]の水分散液を得る、或いは、PVA系樹脂(A)(粉末)に水を加えて固形分濃度を10〜40重量%(好ましくは11〜38重量部、更に好ましくは13〜35重量%)に調整したPVA系樹脂水溶液に可塑剤(B)及び界面活性剤(C)を加えて固形分濃度が10〜40重量%(好ましくは11〜39重量部、更に好ましくは12〜38重量%)の樹脂組成物[I]の水分散液を得る。
【0042】
かかる水分散液をT−ダイ等のスリットを通過させ、表面温度が50〜100℃、好ましくは55〜95℃のエンドレスベルトやドラムロール(好ましくは生産性の点でエンドレスベルトである。)の金属表面に流延し、乾燥し、必要に応じて更に熱処理して本発明のPVA系フィルムを得ることができる。
【0043】
上記樹脂組成物[I]の固形分濃度が10重量%未満あるいは40重量%を越えると製膜性が悪くなり好ましい。金属表面の温度が50℃未満では乾燥効率が低下し、100℃を越えると発泡する恐れがあり好ましくない。
【0044】
又、本発明では特に、乾燥に当たっては、150〜50℃、好ましくは145〜60℃の間で温度勾配をもつ熱風乾燥機中で1〜12分間、好ましくは1〜11分間乾燥することが適正な残存水分量を得る点で好ましい。
乾燥温度の勾配範囲が150℃を越えたり、乾燥時間が12分を越えると乾燥過多となり、一方乾燥温度の勾配範囲が50℃未満であったり、乾燥時間が1分間未満では乾燥不足となり好ましくない。
【0045】
本発明における温度勾配は、150〜50℃の間で段階的に乾燥温度を変えていくもので、通常は乾燥開始時から温度を除々にあげて行き、所定の含水率になるまで一旦設定した乾燥温度範囲の、最高の乾燥温度にいたらせ、次に徐々に乾燥温度を低くして最終目的の含水率とすることが有利であり、これは結晶性や剥離性、生産性等をコントロールするために行われるものであり、例えば、120℃−130℃−115℃−100℃、130℃−120℃−110℃、115℃−120℃−110℃−90℃、等、適宜選択され実施される。
【0046】
又、アプリケーターを用いて、樹脂組成物[I]の水分散液をポリエチレンテレフタレートフィルムやポリエチレンフィルム等のプラスチック基材あるいは金属基材上にキャストして、乾燥させてPVA系フィルムを得ることもできる。
ここで、流延法について説明したが、本発明ではこれに限定されるものではない。
【0047】
かくして上記方法によりPVA系フィルムが得られるのであるが、本発明では特に、フィルムの含水率がカールフィッシャー法(JIS K 0068)により測定して3〜10重量%であることが耐破袋性、スリット適性の点で必要であり、好ましい含水率は4〜10重量%、特に好ましくは4〜9重量%である。かかるフィルムの含水率が3重量%未満では耐破袋性が低下することとなり、10重量%を越えるとスリット適性が低下することとなり、本発明の効果が得られない。
【0048】
かかるフィルムの含水率を上記範囲に調整する方法としては、特に限定されないが、(1)製膜時の乾燥工程で調整する方法、(2)製膜乾燥後に加湿する方法、(3)製膜乾燥後に再度乾燥する方法、等が挙げられ、中でも(2)の方法が好適である。
【0049】
又、本発明では、フィルムのガラス転移温度が20℃以下、特には−10〜15℃、更には−5〜10℃であることが好ましく、20℃を越えると環境によるフィルムの機械強度の変化が大きくなり好ましくない。
該PVA系フィルムのガラス転移温度を20℃以下とするに当たっては、可塑剤の種類及び添加量、PVA系樹脂のケン化度、製膜時の熱処理温度、フィルム中の水分量を、適宜調整することにより達成できる。
【0050】
ここで、PVA系フィルムのガラス転移温度とは、調湿型粘弾性測定装置(アイティ計測制御(株)製、「DVA−225」)を用いて、20℃、乾燥雰囲気条件下で、測定周波数2Hz、−50〜150℃まで昇温速度3℃/minでフィルムを昇温しながら、連続的に動的粘弾性を測定したときの主分散のピーク温度のことである。
尚、「乾燥雰囲気」とは、水分率1000ppm以下の状態のことをいう。
【0051】
又、本発明では、得られたフィルムが下記(X)の測定方法における水溶解性が60秒以内であることも必要であり、かかる溶解性の調整は、PVA系樹脂のケン化度や、重合度、変性PVAであれば変性種や変性量等を適宜調整することにより達成される。
【0052】
水溶解性の測定方法(X):フィルムを3cm×5cmのサイズにカットして、治具に固定する一方、1リットルビーカーに水(1リットル)を入れ、スターラーにより撹拌しながら水温を25℃に保ち、この水中に、治具に固定したフィルムを浸漬し、撹拌を続けながらフィルムが溶解するまでの時間(秒)を測定した。
【0053】
上記測定方法において溶解とは、かかるフィルムが視認できなくなることをいい、このとき直径1mm以下の不溶微粒子が分散している場合も溶解の意味に含めるものである。
【0054】
本発明のPVA系フィルムにおいては、その厚みは、用途により一概に言えないが、5〜100μm、特には10〜80μmであることが好ましく、かかる厚みが5μm未満ではフィルムの機械的強度が低下し、逆に100μmを越えると冷水での溶解速度が大幅に遅くなり、又製膜時の効率も低下し好ましくない。
【0055】
又、該PVA系フィルムの表面はプレーンであってもよいが、該フィルムの片面或いは両面にエンボス模様や梨地模様等を施しておいても良い。
【0056】
尚、本発明のPVA系フィルムには、本発明の目的を阻害しない範囲で、他の水溶性高分子(ポリアクリル酸ソーダ、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、デキストリン、キトサン、キチン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等)、香料、防錆剤、着色剤、増量剤、消泡剤、紫外線吸収剤等を含有させることも可能である。
【0057】
かくして得られたPVA系フィルムは、水溶解性、特に冷水溶解性に優れ、更に、長期間にわたって柔軟性に優れ、かつ、長期保存後におけてもスリット適性に優れたフィルムであり、各種用途に有用で、例えば農薬や洗剤等の薬剤の包装(ユニット包装)用途をはじめ、(水圧)転写用フィルム、ナプキン・紙おむつ等の生理用品、オストミーバッグ等の汚物処理用品、吸血シート等の医療用品、育苗シート・刺繍用基布等の一時的基材、等の用途にも利用することができるが、中でも薬剤包装用途に非常に有用である。
【0058】
薬剤包装用途として用いる場合に、充填する薬剤としては、粉末は勿論のこと、常温において液体である薬剤(液体洗剤等)であってもよい。
【0059】
【実施例】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明する。
尚、例中「%」、「部」とあるのは特に断りのない限り重量基準である。
【0060】
実施例1
ケン化度88.0モル%、20℃における4%水溶液粘度23mPa・sのPVA(A)を水に溶解させて、22%濃度の水溶液とし、更に、該PVA100部に対して、可塑剤(B)としてグリセリン10部及びトリメチロールプロパン15部、界面活性剤(C)としてソルビタンエステルエーテル0.5部及びポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル0.5部を配合して樹脂組成物[I]の水分散液(固形分濃度28%)を得た。
得られた樹脂組成物[I]の水分散液を80℃のエンドレスベルトの金属表面に流延し、110℃−120℃−115℃−100℃の4つの乾燥工程を各45秒ずつ通過して合計3分間乾燥して、含水率6%、厚さ40μmのPVA系フィルムを得た。
得られたPVA系フィルムのガラス転移温度は12℃であり、又、25℃の水に40秒で溶解するフィルムであった。
【0061】
尚、フィルムの含水率は、カールフィッシャー法(JIS K 0068)に準じて測定した。
又、得られたPVA系フィルムの25℃の水に対する水溶解性は、該フィルムを3cm×5cmのサイズにカットし、治具に固定する一方、1リットルビーカーに水(1リットル)を入れ、スターラーにより撹拌しながら水温を25℃に保ち、この水中に、治具に固定したフィルムを浸漬し、撹拌を続けながらフィルムが溶解するまでの時間(秒)を測定した。ここで溶解とはかかるフィルムが視認できなくなることをいい、このとき直径1mm以下の不溶微粒子が分散している場合も溶解の意味に含めるものである。
【0062】
得られたPVA系フィルムについて、以下の評価を行った。
(柔軟性;耐破袋性)
80×80mmの二方シール袋を作製し、内容物としてタルク70gを包装した後、アルミ袋中に密封して、40℃の環境下に3ヶ月放置した。その後、23℃×50%RHの環境下にて24時間放置した後、包装体を高さ2mの位置から5回繰り返し落下させ、落下試験後の袋の様子を下記の基準で評価した。
○・・・袋は破れなかった
△・・・袋は2回目の落下までは破れなかったが、3回目以降の落下で破れた
×・・・袋は1回目の落下で破れた
【0063】
(スリット適性)
幅1mの上記PVA系フィルムを、2kg/mのテンションで6インチの鉄芯に500m巻き取り、これを30℃×80%RHの環境下に宙づり状態で横置きに1ヶ月保管した。その後、スリッター機(萩原工業社製、「HDF30−1600」)を用いて、500mm幅にスリット加工するときのPVA系フィルムの原反巻き出し性をスリット速度で評価した。評価基準は、スリット速度50m/min以上でスリットが可能な場合を○、そうでない場合を×とする。
【0064】
実施例2
ケン化度88.0モル%、20℃における4%水溶液粘度23mPa・sのPVA(A)を水に溶解させて、15%濃度の水溶液とし、更に、該PVA100部に対して、可塑剤(B)としてグリセリン18部及びトリメチロールプロパン12部、界面活性剤(C)としてソルビタンエステルエーテル0.5部及びポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル0.5部を配合して樹脂組成物[I]の水分散液(固形分濃度20%)を得た。
得られた樹脂組成物[I]の水分散液を70℃のエンドレスベルトの金属表面に流延し、110℃−105℃−100℃−80℃の4つの乾燥工程を各60秒ずつ通過して合計4分間乾燥して、含水率8%、厚さ40μmのPVA系フィルムを得た。
得られたPVA系フィルムのガラス転移温度は8℃であり、又、25℃の水に35秒で溶解するフィルムであった。
得られたPVA系フィルムについて、実施例1と同様の評価を行った。
【0065】
実施例3
ケン化度88モル%、20℃における4%水溶液粘度23mPa・sのPVA(A)を水に溶解させて、22%濃度の水溶液とし、更に、該PVA100部に対して、可塑剤(B)としてグリセリン5部及びトリメチロールプロパン10部、界面活性剤(C)としてソルビタンエステルエーテル0.5部及びポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル0.5部を配合して樹脂組成物[I]の水分散液(固形分濃度26%)を得た。
得られた樹脂組成物[I]の水分散液を80℃のエンドレスベルトの金属表面に流延し、110℃−120℃−115℃−100℃の4つの乾燥工程を各45秒ずつ通過して合計3分間乾燥して、含水率5%、厚さ40μmのPVA系フィルムを得た。
得られたPVA系フィルムのガラス転移温度は14℃であり、又、25℃の水に43秒で溶解するフィルムであった。
得られたPVA系フィルムについて、実施例1と同様の評価を行った。
【0066】
実施例4
ケン化度88モル%、20℃における4%水溶液粘度17mPa・sのPVA(A)を水に溶解させて、25%濃度の水溶液とし、更に、該PVA100部に対して、可塑剤(B)としてグリセリン10部及びトリメチロールプロパン15部、界面活性剤(C)としてソルビタンエステルエーテル0.5部及びポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル0.5部を配合して樹脂組成物[I]の水分散液(固形分濃度32%)を得た。
得られた樹脂組成物[I]の水分散液を80℃のエンドレスベルトの金属表面に流延し、110℃−120℃−115℃−100℃の4つの乾燥工程を各45秒ずつ通過して合計3分間乾燥して、含水率6%、厚さ40μmのPVA系フィルムを得た。
得られたPVA系フィルムのガラス転移温度は10℃であり、又、25℃の水に35秒で溶解するフィルムであった。
得られたPVA系フィルムについて、実施例1と同様の評価を行った。
【0067】
比較例1
ケン化度88.0モル%、20℃における4%水溶液粘度23mPa・sのPVA(A)を水に溶解させて、17%濃度の水溶液とし、更に、該PVA100部に対して、可塑剤(B)としてグリセリン15部、界面活性剤(C)としてソルビタンエステルエーテル0.5部及びポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル0.5部を配合して樹脂組成物[I]の水分散液(固形分濃度20%)を得た。
得られた樹脂組成物[I]の水分散液を、実施例1と同様にして製膜し、含水率6%、厚さ40μmのPVA系フィルムを得た。
得られたPVA系フィルムのガラス転移温度は10℃であり、又、25℃の水に38秒で溶解するフィルムであった。
得られたPVA系フィルムについて、実施例1と同様の評価を行った。
【0068】
比較例2
ケン化度88.0モル%、20℃における4%水溶液粘度23mPa・sのPVA(A)を水に溶解させて、17%濃度の水溶液とし、更に、該PVA100部に対して、可塑剤(B)としてトリメチロールプロパン15部、界面活性剤(C)としてソルビタンエステルエーテル0.5部及びポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル0.5部を配合して樹脂組成物[I]の水分散液(固形分濃度20%)を得た。
得られた樹脂組成物[I]の水分散液を、実施例1と同様にして製膜し、含水率4%、厚さ40μmのPVA系フィルムを得た。
得られたPVA系フィルムのガラス転移温度は16℃であり、又、25℃の水に39秒で溶解するフィルムであった。
得られたPVA系フィルムについて、実施例1と同様の評価を行った。
【0069】
比較例3
ケン化度88モル%、20℃における4%水溶液粘度23mPa・sのPVA(A)を水に溶解させて、24%濃度の水溶液とし、更に、該PVA100部に対して、可塑剤(B)としてグリセリン5部及びトリメチロールプロパン10部、界面活性剤(C)としてソルビタンエステルエーテル0.5部及びポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル0.5部を配合して樹脂組成物[I]の水分散液(固形分濃度28%)を得た。
得られた樹脂組成物[I]の水分散液を80℃のエンドレスベルトの金属表面に流延し、110℃−120℃−115℃−100℃の4つの乾燥工程を各45秒ずつ通過して合計3分間乾燥して、含水率1%、厚さ40μmのPVA系フィルムを得た。
得られたPVA系フィルムのガラス転移温度は15℃であり、又、25℃の水に38秒で溶解するフィルムであった。
得られたPVA系フィルムについて、実施例1と同様の評価を行った。
【0070】
比較例4
ケン化度88モル%、20℃における4%水溶液粘度23mPa・sのPVA(A)を水に溶解させて、20%濃度の水溶液とし、更に、該PVA100部に対して、可塑剤(B)としてグリセリン18部及びトリメチロールプロパン12部、界面活性剤(C)としてソルビタンエステルエーテル0.5部及びポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル0.5部を配合して樹脂組成物[I]の水分散液(固形分濃度26%)を得た。
得られた樹脂組成物[I]の水分散液を70℃のエンドレスベルトの金属表面に流延し、110℃−105℃−100℃−80℃の4つの乾燥工程を各60秒ずつ通過して合計4分間乾燥して、含水率15%、厚さ40μmのPVA系フィルムを得た。
得られたPVA系フィルムのガラス転移温度は5℃であり、又、25℃の水に35秒で溶解するフィルムであった。
得られたPVA系フィルムについて、実施例1と同様の評価を行った。
【0071】
比較例5
ケン化度88モル%、20℃における4%水溶液粘度23mPa・sのPVA(A)を水に溶解させて、16%濃度の水溶液とし、更に、該PVA100部に対して、可塑剤(B)としてグリセリン10部及びジグリセリン15部、界面活性剤(C)としてソルビタンエステルエーテル0.5部及びポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル0.5部を配合して樹脂組成物[I]の水分散液(固形分濃度20%)を得た。
得られた樹脂組成物[I]の水分散液を、実施例1と同様にして製膜し、含水率7%、厚さ40μmのPVA系フィルムを得た。
得られたPVA系フィルムのガラス転移温度は9℃であり、又、25℃の水に36秒で溶解するフィルムであった。
得られたPVA系フィルムについて、実施例1と同様の評価を行った。
実施例及び比較例の評価結果を表1及び表2に示す。
【0072】
[表1]
フィルムの 25℃の水に フィルムの
ガラス転移温度 対する水溶解性 含水率
(℃) (秒) (%)
実施例1 12 40 6
〃 2 8 35 8
〃 3 14 43 5
〃 4 10 35 6
比較例1 10 38 6
〃 2 16 39 4
〃 3 15 38 1
〃 4 5 35 15
〃 5 9 36 7
【0073】
[表2]
柔軟性 スリット適性
実施例1 ○ ○
〃 2 ○ ○
〃 3 ○ ○
〃 4 ○ ○
比較例1 × ×
〃 2 × ○
〃 3 ○ ×
〃 4 ○ ×
〃 5 ○ ×
【0074】
【発明の効果】
本発明のPVA系フィルムは、平均ケン化度70〜98モル%のポリビニルアルコール系樹脂(A)100重量部に対して、グリセリン及びトリメチロールプロパンを含む可塑剤(B)5〜45重量部、及び界面活性剤(C)0.01〜3.0重量部を含有してなる樹脂組成物[I]を製膜してなるフィルムであって、上記グリセリン(b1)とトリメチロールプロパン(b2)との含有重量比が、(b1)/(b2)=15/85〜85/15であり、上記フィルムの含水率がカールフィッシャー法(JIS K 0068)により測定して3〜10重量%であるとともに、特定の水溶解性を有するフィルムであるため、水溶解性、特に冷水溶解性に優れ、更に、長期間にわたって柔軟性に優れ、かつ、長期保存後におけてもスリット適性に優れた効果を有し、各種用途、例えば農薬や洗剤等の薬剤の包装(ユニット包装)用途をはじめ、(水圧)転写用フィルム、ナプキン・紙おむつ等の生理用品、オストミーバッグ等の汚物処理用品、吸血シート等の医療用品、育苗シート・刺繍用基布等の一時的基材、等の用途にも利用することができ、中でも薬剤包装用途に非常に有用である。
Claims (2)
- 平均ケン化度70〜98モル%のポリビニルアルコール系樹脂(A)100重量部に対して、グリセリン及びトリメチロールプロパンを含む可塑剤(B)5〜45重量部、及び界面活性剤(C)0.01〜3.0重量部を含有してなる樹脂組成物[I]を製膜してなるフィルムであって、上記グリセリン(b1)とトリメチロールプロパン(b2)との含有重量比が、(b1)/(b2)=15/85〜85/15であり、上記フィルムの含水率がカールフィッシャー法(JIS K 0068)により測定して3〜10重量%であるとともに、下記(X)の測定方法による水溶解性が60秒以内であることを特徴とするポリビニルアルコール系フィルム。
(X)フィルムを3cm×5cmのサイズにカットして、治具に固定する一方、1リットルビーカーに水(1リットル)を入れ、スターラーにより撹拌しながら水温を25℃に保ち、この水中に、治具に固定したフィルムを浸漬し、撹拌を続けながらフィルムが溶解するまでの時間(秒)を測定した。 - 請求項1記載のポリビニルアルコール系フィルムを製造するにあたり、10〜40重量%の樹脂組成物[I]の水分散液を50〜100℃のエンドレスベルト上に流延し、150〜50℃の間で温度勾配をもつ熱風乾燥機中で1〜12分間乾燥することを特徴とするポリビニルアルコール系フィルムの製造方法。
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