JP4565092B2 - ガス検知素子及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
本発明は、アンモニア,ピリジン等のアミン系ガス、硫化水素,メチルメルカプタン等の含硫ガス、ホルムアルデヒド等のアルデヒド系ガス等の各種ガスのガス検知素子及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、アンモニア,ピリジン等のアミン系ガス、硫化水素,メチルメルカプタン等の含硫ガス等の各種ガスのガス検知素子が、民生用から産業用、さらには分析計測機器に至る様々な分野で使用されている。
このようなガス検知素子に関する従来の技術としては、例えば、(特許文献1)に「陰イオン交換膜の両面をガス検知電極と対向電極で挟み込んだ一酸化炭素やアンモニアガス等のガスセンサ」が開示されている。
(特許文献2)には「白金や白金合金で形成されたヒータと電極とを有するセンサ基体と、酸化スズと金とを含有し前記センサ基体を被覆した感ガス体と、を備えたアンモニアガスセンサ」が開示されている。
(特許文献3)には「一対の電極と、前記電極に接して設けられた感応部と、を備え、前記感応部が、WO3/ZrO2、SO4 2−/ZrO2、PO4 3−/ZrO2、SO4 2−/TiO2から選ばれる少なくとも1種であるアンモニアセンサ」が開示されている。
(特許文献4)には「絶縁基板上に形成された一対の電極と、スルホン酸基を有する側鎖が主鎖に結合した高分子を主体とし前記電極間に形成されたアンモニア感応膜と、を備えたアンモニアガスセンサ」が開示されている。
(特許文献5)には「揮発性有機塩素化合物を選択吸着する特定の脂質を塗布して作成した薄膜を電極表面に有する水晶振動子Aを含む発振器Aと、気体非吸着性膜で表面を気密に包囲した水晶振動子Bを含む発振器Bと、を備え、発振器Bからの発振周波数で発振器Aの発振周波数を補償する揮発性有機塩素化合物の検出装置」が開示されている。
【特許文献1】
特開2005−147790号公報
【特許文献2】
特開2005−127743号公報
【特許文献3】
特開2005−114355号公報
【特許文献4】
特開2003−161715号公報
【特許文献5】
特開平11−44625号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら上記従来の技術においては、以下のような課題を有していた。
(1)(特許文献1)に開示の技術は陰イオン交換膜における電気化学反応を利用して対象ガスの検知を行うので、イオンが陰イオン交換膜を通過するのに必要な100秒程度の応答時間を要し、また対象ガスは50ppm程度の濃度が必要でppbオーダーの低濃度のガスの検知が困難であるという課題を有していた。
(2)(特許文献2)や(特許文献3)に開示の技術は、酸化スズ半導体やWO3/ZrO2等の金属酸化物を加熱して、酸化スズ半導体や金属酸化物にアンモニアガス分子を吸脱着させてガス濃度を測定するものなので、計測時には酸化スズ半導体や金属酸化物を加熱しておく必要があり省エネルギー性に欠けるという課題を有していた。
(3)また、アンモニアガス分子の吸脱着に必要な100秒程度の応答時間を要し、また対象ガスは50ppm程度の濃度が必要でppbオーダーの低濃度のガスの検知が困難であるという課題を有していた。
(4)(特許文献4)に開示の技術は濃度が1ppm程度のアンモニアガスの検出が可能だが、応答時間が長く20分程度も保持する必要があるという課題を有していた。また、ppbオーダーの低濃度のガスを検知する場合は、さらに保持時間が長くなるという課題を有していた。
(5)(特許文献5)に開示の技術は短い応答時間で0.5ppm程度の低濃度のガスを検知することができるが、揮発性有機塩素化合物を選択吸着する脂質で形成された薄膜と電極表面との結合力が弱く、繰り返し使用により薄膜が電極表面から剥離し易く耐久性に欠けるという課題を有していた。
(6)対象ガスの種類に応じた脂質の合成が煩雑であり生産性に欠けるという課題を有していた。
[0004]
本発明は上記従来の課題を解決するもので、短い応答時間でppbオーダーの低濃度のガスを検知することができるとともに、有機吸着膜と基板との結合力が強く耐久性に優れ、また種々の有機吸着層を基板に容易に固定化できるので有機吸着層の選択肢が広く、複数種の有機吸着層を組み合わせることもでき多くのガス種に応答を示し汎用性に優れるガス検知素子を提供することを目的とする。
また、本発明は、層厚の薄い軽量の薄膜の有機吸着層を短時間で精度良く形成することができ、生産性に優れるとともに生産安定性に優れ、ガス検知精度が著しく向上したガス検知素子の製造方法を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
[0005]
上記従来の課題を解決するために本発明のガス検知素子及びその製造方法は、以下の構成を有している。
本発明の請求項1に記載のガス検知素子は、基板と、前記基板に形成された官能基を有する表面処理層と、前記表面処理層の表面に形成された有機吸着層と、を備え、前記有機吸着層の表面に、第2結合層と第2有機吸着層の交互積層が1乃至複数回行われた構成を有している。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)基板に形成された官能基を有する表面処理層と、表面処理層の表面に形成された有機吸着層と、を備えているので、表面処理層によって有機吸着層が基板に強固に結合され、繰り返し使用しても有機吸着層が基板から剥離し難く耐久性に優れる。
(2)官能基を有する表面処理層によって有機吸着層が基板に化学結合し、層厚の薄い軽量の薄膜の有機吸着層を形成することができ、微量のガス分子を吸着しても検知することができ検知感度を高めることができる。
(3)有機吸着層はガス分子が選択的に吸着する官能基を有するので、酸化スズ半導体や金属酸化物等のガス検知素子材料と比較して、応答時間の短縮化と精度の高いガス識別性を実現することができる。
(4)ガスを検知した後は、対象ガス分子が含まれない気体や液体を有機吸着層に接触させるとガス分子が脱着するので、ガス検知素子を容易に再生することができ繰り返し使用性に優れる。
(5)表面処理層を有しているので、種々の有機吸着層を基板に容易に固定化でき有機吸着層の選択肢が広く、また複数種の有機吸着層を組み合わせることもでき、有機吸着層の種類に応じたガス種に応答を示し汎用性に優れる。
(6)有機吸着層の表面に、第2結合層と第2有機吸着層の交互積層が1乃至複数回行われているので、第2有機吸着層に捕捉されずに第2結合層も拡散したガス分子を下層の有機吸着層等にも吸着させることができ、ガス分子の反応点が多くガス分子の吸着量を増やすことができ、ガス分子の吸着による大きな質量変化が得られるので検知感度を高めることができる。
(7)有機吸着層と第2有機吸着層を、第2結合層を介さないで直接積層すると、ガス分子を選択的に吸着させる有機吸着層等の官能基が層間の結合に用いられてしまうため、ガス分子の反応点を増やすことができず検知感度を高めることができないが、有機吸着層と第2有機吸着層との間に第2結合層を結合させているので、積層数にほぼ比例してガス分子の反応点が増え検知感度を高めることができる。
[0006]
ここで、基板としては、単結晶シリコン、窒化シリコン、水晶(SiO2),Bi12GeO20,LiIO3,LiNbO3,LiTaO3,BaTiO3等の圧電性結晶、Pb(Zr,Ti)O3系,PbTiO3系,PbNb2O6等の圧電セラミックス、ZnO薄膜,Bi12GeO20,CdS等の圧電性薄膜等の無機材料製やポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の圧電性高分子等の高分子製が用いられ、固有の振動数や共振周波数を有する基板をQCM(水晶天秤)、弾性表面波素子、マイクロカンチレバー等に適用することによって、基板に形成された有機吸着層に吸着したガス分子の質量に応じて基板の固有振動数等が変化するので、この変化を計測することによって有機吸着層へのガス分子の吸着量を計測し雰囲気中のガス濃度を検知できる。
基板には、必要に応じて電極を形成することができる。電極としては、白金、金、銀、銅等の金属製、インジウムスズ酸化物(ITO)、グラファイト等の炭素系電極等が用いられ、水晶等の圧電性結晶等の基板の両面に対向して形成したり、圧電性結晶,圧電セラミックス等の基板の片面に櫛形等にして形成することができる。電極の有無によって、表面処理層は、基板、電極、基板と電極の双方に形成することができる。また、表面処理層は、基板の片面又は両面に形成することができる。
[0007]
表面処理層としては、基板や電極をケイ素化剤で処理する、炭素系電極の表面に空気酸化又は湿式酸化によって水酸基を導入する、金等の電極の表面にメルカプトエタノール等の吸着により水酸基を導入する、ITO等の電極の表面に過酸化水素を接触させることにより水酸基を導入する等の手段によって、水酸基,カルボキシル基,アミノ基,アルデヒド基,カルボニル基,ニトロ基,炭素炭素二重結合,芳香族環等の官能基を基板又は電極の表面に導入されたものが用いられる。
[0008]
有機吸着層としては、ポリグルタミン酸等のペプチド系ポリマー、ポリアクリル酸、ポリアリルアミン塩酸塩、ポリエチレンイミン、ポリアニリン、ポリイミド、ポリアミド、ポリスルホン、ポリ酢酸ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、フェニルアラニン、ポリクロロトリフルオロエチレン等のガス分子が吸着する官能基を有する高分子化合物が用いられる。高分子化合物の種類は検知対象となるガスの種類に応じて適宜選択して用いられる。例えば、アンモニア,ピリジン等のアミン系ガスを検知対象とする場合には、ポリアクリル酸,ポリグルタミン酸が好適に用いられ、硫化水素,メチルメルカプタン等の含硫ガスを検知対象とする場合には、ポリエチレン、フェニルアラニン、ポリクロロトリフルオロエチレンが好適に用いられ、ホルムアルデヒド等のアルデヒド系ガスを検知対象とする場合には、ポリアリルアミン塩酸塩,ポリエチレンイミン,ポリアニリンが好適に用いられる。
第2有機吸着層としては、有機吸着層と同様のものが用いられるので説明を省略する。
第1結合層としては、表面処理層や有機吸着層に吸着する水酸基,カルボキシル基,アミノ基,アルデヒド基,カルボニル基,ニトロ基,炭素炭素二重結合,芳香族環等の官能基を有するポリペプチド,ポリマー等の重合体、酸化チタン,酸化ジルコニウム,シリカ等の金属酸化物等で薄膜状に形成されたものが用いられる。
有機吸着層や第2有機吸着層は、同種又は層ごとに異種の高分子化合物で形成することができる。層ごとに異種の高分子化合物で形成した場合は、ひとつの素子で高分子化合物の種類に応じた複数種のガスの検知ができ応用性に優れる。
なお、第2結合層と第2有機吸着層の交互積層の回数が多くなるにつれ、ガス分子の反応点が積層回数にほぼ比例して増加するため、検知感度が増加する傾向がみられる。しかし、製造工数も増加するため、交互積層回数は、検知感度と製造工数を考慮して、1〜30回程度の中から適宜選択することができる。
[0009]
有機吸着層の1層当たりの厚さとしては0.1〜10nmが好適に用いられる。有機吸着層の厚さが0.1nmより薄くなると、ガス分子が吸着する官能基の量が少なくガスの検知能が低下し、10nmより厚くなると有機吸着層が有する官能基同士が結合するなど官能基がガス分子の吸着に有効に使われず検知時間が長くなり、また湿度等の物理的な影響を受け易くなり雰囲気によってガス検知の精度が低下することがあるためいずれも好ましくない。
なお、有機吸着層の1層当たりの厚さは、有機吸着層の積層時に、QCM(水晶天秤)の固有振動数の変化を測定することにより算出することができる。具体的には、QCMの振動数変化量と質量変化量との関係を求めておき、形成した有機吸着層の面積、層数、密度等を考慮して、1層当たりの有機吸着層の厚さを算出することができる。
[0010]
本発明の請求項2に記載のガス検知素子は、基板と、前記基板に形成された官能基を有する表面処理層と、前記表面処理層の表面に形成された第1結合層と、前記第1結合層の表面に形成された第1有機吸着層と、を備え、前記第1有機吸着層の表面に、第2結合層と第2有機吸着層の交互積層が1乃至複数回行われた構成を有している。
この構成により、請求項1で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)第1有機吸着層が、表面処理層の表面に形成された第1結合層の表面に形成されているので、第1結合層の種類に応じて第1有機吸着層の選択肢を広げ検知可能なガス種を増やすことができるとともに、第1結合層の立体的な構造を制御することによって、そこに形成された第1有機吸着層における検知ガスの拡散性を改善することができ検知時間を短縮できる。
(2)第1有機吸着層の表面に、第2結合層と第2有機吸着層の交互積層が1乃至複数回行われているので、第2有機吸着層に捕捉されずに第2結合層も拡散したガス分子を下層の第1有機吸着層等にも吸着させることができ、ガス分子の反応点が多くガス分子の吸着量を増やすことができ、ガス分子の吸着による大きな質量変化が得られるので検知感度を高めることができる。
(3)第1有機吸着層と第2有機吸着層を、第2結合層を介さないで直接積層すると、ガス分子を選択的に吸着させる有機吸着層等の官能基が層間の結合に用いられてしまうため、ガス分子の反応点を増やすことができず検知感度を高めることができないが、第1有機吸着層と第2有機吸着層との間に第2結合層を結合させているので、積層数にほぼ比例してガス分子の反応点が増え検知感度を高めることができる。
[0011]
ここで、基板、表面処理層、第1有機吸着層としては、請求項1で説明した基板、表面処理層、有機吸着層と同様なので説明を省略する。
第1結合層としては、表面処理層や有機吸着層に吸着する水酸基,カルボキシル基,アミノ基,アルデヒド基,カルボニル基,ニトロ基,炭素炭素二重結合,芳香族環等の官能基を有するポリペプチド,ポリマー等の重合体、酸化チタン,酸化ジルコニウム,シリカ等の金属酸化物等で薄膜状に形成されたものが用いられる。
[0012]
第1有機吸着層、第2有機吸着層は、同種又は層ごとに異種の高分子化合物で形成することができる。層ごとに異種の高分子化合物で形成した場合は、ひとつの素子で高分子化合物の種類に応じた複数種のガスの検知ができ応用性に優れる。
なお、第2結合層と第2有機吸着層の交互積層の回数が多くなるにつれ、ガス分子の反応点が積層回数にほぼ比例して増加するため、検知感度が増加する傾向がみられる。しかし、製造工数も増加するため、交互積層回数は、検知感度と製造工数を考慮して、1〜30回程度の中から適宜選択することができる。
[0013]
[0014]
本発明の請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のガス検知素子であって、前記第1結合層,前記第2結合層が、3nm未満の厚さに形成された構成を有している
この構成により、請求項1又は2で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)第1結合層,第2結合層が3nm未満の厚さに形成されているので、ガス分子が第1結合層や第2結合層を拡散して下層の有機吸着層や第1有機吸着層等に到達するまでの時間を短縮できるため、ガス検知の応答が速く、再生も短時間で行うことができ取扱性に優れる。
(2)ガス分子が吸着し難い第1結合層や第2結合層の重量を小さくできるため、第1有機吸着層等へのガス分子の吸着量が少ないときでも検知することができ、検知感度を高めることができる。
[0015]
第1結合層や第2結合層の1層当たりの厚さは、第1結合層等の積層時に、QCM(水晶天秤)の固有振動数の変化を測定することにより算出することができる。具体的には、QCMの振動数変化量と質量変化量との関係を求めておき、形成した第1結合層等の面積、層数、密度等を考慮して、1層当たりの第1結合層等の厚さを算出することができる。
第1結合層や第2結合層の1層当たりの厚さは、QCMの検知感度以上で3nm未満、好ましくは0.1nm以上2nm以下が好適である。第1結合層や第2結合層の厚さが0.1nmより薄くなるにつれ、その上面に形成される第1有機吸着層や第2有機吸着層の吸着量が少なくなり、ガス検知能が低下する傾向がみられ、2nmより厚くなるにつれ第1結合層内や第2結合層内のガス分子の拡散時間が長くなり、応答時間が長くなり検知感度が低下する傾向や、第1結合層等の重量が増すため第1有機吸着層等へのガス分子の吸着量が少ないときはガスの検知ができず検知感度が低下する傾向がみられる。特に、0.1nm未満、3nm以上になると、これらの傾向が著しいためいずれも好ましくない。
[0016]
本発明の請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の内いずれか1に記載のガス検知素子であって、前記基板が、単結晶シリコン、窒化シリコン、圧電性結晶、圧電セラミックス、圧電性薄膜の内いずれか1種である構成を有している。
この構成により、請求項1乃至3の内いずれか1で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)基板が単結晶シリコン、窒化シリコン、圧電性結晶、圧電セラミックス、圧電性薄膜の内いずれか1種なので、圧電性結晶、圧電セラミックス、圧電性薄膜を用いることによりQCM(水晶天秤)、弾性表面波素子等として、単結晶シリコン、窒化シリコンを用いることによりマイクロカンチレバー等として、固有振動数の変化や共振周波数の変化等を利用してガス吸着量を計測することができ高精度・高分解能のガス検知ができる。
[0017]
本発明の請求項5に記載のガス検知素子の製造方法は、基板に形成された官能基を有する表面処理層の表面に有機吸着層を形成する有機吸着層形成工程と、前記有機吸着層に蒸気状態の金属酸化物前駆体を接触させ前駆体吸着層を形成する前駆体吸着層形成工程と、前記前駆体吸着層を加水分解して金属酸化物層の第2結合層を形成する第2結合層形成工程と、前記第2結合層の表面に第2有機吸着層を形成する第2有機吸着層形成工程と、を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)官能基を有する表面処理層によって有機吸着層が基板に化学結合し、層厚の薄い軽量の薄膜の有機吸着層を形成することができ、層厚の薄い軽量の薄膜の有機吸着層を短時間で精度良く形成することができ生産性に優れるとともに生産安定性に優れる。
(2)金属酸化物前駆体の気化の条件を整えることにより金属酸化物前駆体と不純物とを分離できるため、金属酸化物前駆体の吸着を分子レベルで制御して不純物がない又は著しく少ない金属酸化物層を形成することができ、有機吸着層の構造に沿って金属酸化物のネットワークを精密に形成でき、ガス分子が流通し易く拡散性に優れた金属酸化物層を形成できるため、第2有機吸着層だけでなく有機吸着層にもガス分子を吸着させることができ、ガス分子の吸着量を増やし検知感度を高めることができるとともに、吸着したガス分子を簡単な操作で脱着させることができ容易に再生させることができる。
[0018]
ここで、基板、表面処理層、有機吸着層としては、請求項1で説明したものと同様なので説明を省略する。
[0019]
表面処理層の表面に有機吸着層を形成する手段としては、プラズマ励起を利用して基板上で高分子化合物を反応・堆積させるプラズマCVD法、基板を高分子化合物の溶液に浸漬したり、基板に高分子化合物の溶液を滴下若しくは塗布したりする方法、基板の結晶構造を利用したポリマーエピタキシャル成長法、重合反応時のポリマー溶解度を利用した基板析出法等が用いられる。
[0020]
本発明の請求項6に記載のガス検知素子の製造方法は、基板に形成された官能基を有する表面処理層に蒸気状態の金属酸化物前駆体を接触させ前記基板に金属酸化物前駆体吸着層を形成する金属酸化物前駆体吸着層形成工程と、前記金属酸化物前駆体吸着層を加水分解して金属酸化物層の第1結合層を形成する第1結合層形成工程と、前記第1結合層の表面に第1有機吸着層を形成する第1有機吸着層形成工程と、を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)金属酸化物前駆体吸着層形成工程において基板に蒸気状態の金属酸化物前駆体を接触させるため、出発原料である金属酸化物前駆体を有機溶媒に溶解したりする操作が不要なため、金属酸化物前駆体の有機溶媒中における溶解性や安定性等の問題がなく品質の安定性に優れる。
(2)有機溶媒に溶解した金属酸化物前駆体を接触させる場合と比較して膜厚の薄い第1結合層を形成することができ、ガス分子が吸着し難い第1結合層を軽量化し、ガス濃度が低いときでもガス分子の吸着による微量の質量変化を検知できるようにして検知感度を高めることができる。
(3)表面処理層の表面に形成された第1結合層の表面に第1有機吸着層を形成するので、第1結合層の種類に応じて第1有機吸着層の選択肢を広げ検知可能なガス種を増やすことができるとともに、第1結合層の立体的な構造を制御することによって表面に形成された第1有機吸着層における検知ガスの拡散性を改善することができ検知時間を短縮できる。
[0021]
ここで、金属酸化物前駆体としては、基板の表面と結合できる基を有し、加水分解することによって金属酸化物となる化合物であれば、特に制限なく用いることができる。
具体的には、チタンブトキシド(Ti(O−nBu)4)、ジルコニウムプロポキシド(Zr(O−nPr)4)、アルミニウムブトキシド(Al(O−nBu)3)、ニオブブトキシド(Nb(O−nBu)5)等の金属アルコキシド;メチルトリメトキシシラン(MeSi(O−Me)3)、ジエチルジエトキシシラン(Et2Si(O−Et)2)等、2個以上のアルコキシル基を有する金属アルコキシド;アセチルアセトン等の配位子を有し2個以上のアルコキシル基を有する金属アルコキシド;BaTi(OR)X等のダブルアルコキシド化合物等の金属アルコキシドが挙げられる。
また、これらの金属アルコキシドに少量の水を添加し、部分的に加水分解、縮合させて得られるアルコキシドゲルの微粒子、チタンブトキシドテトラマー(C4H9O〔Ti(OC4H9)2O〕4C4H9)等、複数個或いは複数種の金属元素を有する二核或いはクラスター型のアルコキシド化合物、適当な溶媒に溶解することにより金属アルコキシドを形成するもの(例えばTiCl4等)や、溶媒中でゾルゲル反応を起こす化合物であって金属及び酸素を含有する化合物(例えばSi(OCN)4等)を使用することも可能である。
また、基板の表面の水酸基と化学吸着し、加水分解等によって表面に新たな水酸基を生じるような金属錯体も金属酸化物前駆体として使用することができる。このような金属錯体としては、具体的には、金属ハロゲン化物、ペンタカルボニル鉄(Fe(CO)5)等の金属カルボニル化合物、並びにこれらの多核クラスターも使用することができる。
【0022】
特に、金属酸化物前駆体が金属アルコキシドの場合、金属アルコキシドは基板の表面の官能基と化学結合し易く、加水分解によって水酸基等の官能基を生成するので、1層あたり1nm以下或いは1〜数nmの厚さの薄い金属酸化物層を容易に形成することができるとともに容易に多層化でき操作性に優れ好ましい。
【0023】
金属酸化物前駆体は、必要に応じて、2種以上を組み合わせて使用することにより、基板の表面に複合酸化物層を形成することもできる。金属酸化物前駆体の蒸気化条件を詳細に調整できるため、2種以上の金属酸化物前駆体を用いる場合も、純度の高い金属酸化物層を形成できる。
【0024】
金属酸化物前駆体を蒸気状態にする方法は、特に定めるものではなく、公知の方法を採用できる。例えば、金属酸化物前駆体を沸点以下の温度で保持し、不活性ガスを吹き込むことにより蒸気状態の金属酸化物前駆体を発生させることができる。この場合の沸点以下の温度としては、金属酸化物前駆体の種類によって異なるが、室温(例えば18℃)〜120℃が好適に用いられる。
不活性ガスとしては、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウム等が挙げられる。金属酸化物前駆体に吹き込む不活性ガスの量は、金属酸化物前駆体の沸点に強く依存し、沸点が低い場合は、不活性ガスや金属酸化物前駆体の温度を上げるか、不活性ガスの量を多くすることで、蒸気状態の金属酸化物前駆体を発生させることができる。
【0025】
基板に蒸気状態の金属酸化物前駆体を接触させるのは、発生した蒸気状態の金属酸化物前駆体を、移動媒体を用いて基板の表面に移動させ接触させるものが好適に用いられる。移動媒体としては、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウム等の不活性ガスが用いられる。蒸気状態のままで金属酸化物前駆体を移動させるためである。
また、蒸気状態の金属酸化物前駆体を基板の表面に接触させる工程は、金属酸化物前駆体を蒸気状態にする工程とは別の空間で行うのが好ましい。別の空間とは、例えば、互いに隔てられた空間であって、何らかの操作を施さない限り、蒸気状態の金属酸化物前駆体を基板が存在している空間に移動させることができないことをいう。これにより、金属酸化物前駆体の基板への吸着、基板に吸着していない非吸着金属酸化物前駆体の除去、加水分解等の一連の操作を、金属酸化物前駆体を蒸気状態にする工程とは別に連続的に行うことができ、飽和吸着までの時間を短縮させ吸着量も増やすことができ生産性に優れるからである。
【0026】
基板に蒸気状態の金属酸化物前駆体を接触させる時間及び温度は、用いる金属酸化物前駆体の吸着活性等に応じて適宜定めることができるが、例えば、時間1〜60分、温度18〜30℃の範囲内で決定すればよい。また、このときの媒体の流量としては1〜5L/分が好適に用いられる。
【0027】
金属酸化物前駆体吸着層形成工程において基板の表面に金属酸化物前駆体吸着層を形成するが、金属酸化物前駆体吸着層は、金属酸化物前駆体を基板に接触させることで形成してもよいし、金属酸化物前駆体を接触させた後何らかの処理を行うことによって形成するものでもよい。また金属酸化物前駆体吸着層は、基板の表面に物理吸着するものでもよいし化学吸着するものでもよい。好ましくは、基板の表面に導入された官能基と蒸気状態の金属酸化物前駆体とを化学吸着させ結合させるものが好適に用いられる。膜厚の非常に薄い軽量の薄膜を形成することができ、ガス分子が第1有機吸着層に吸着することによるわずかな質量変化を検知できるようにして検知感度を高めることができるからである。
【0028】
金属酸化物前駆体吸着層形成工程において基板の表面に金属酸化物前駆体吸着層を形成させた後、過剰の金属酸化物前駆体である弱い物理吸着種を除去することができる。これにより、基板の表面と化学結合するのみならず弱い物理吸着種として過剰に吸着した金属酸化物前駆体の内、弱い物理吸着種を除去して、基板の表面に化学結合したオングストローム乃至はナノメートル単位の厚さの超薄膜の金属酸化物前駆体吸着層を形成することができ検知感度を高めることができる。具体的には、蒸気状態の金属酸化物前駆体を基板の表面に接触させた後、不活性ガスのみを流して過剰の金属酸化物前駆体を除去することができる。不活性ガスとしては、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウム等が挙げられる。
【0029】
第1結合層形成工程において、金属酸化物前駆体吸着層を加水分解して金属酸化物層の第1結合層を形成できる。加水分解としては、金属酸化物前駆体を金属酸化物にすることができるものであれば、特に定めることなく、公知の方法を採用できる。例えば、金属酸化物前駆体吸着層が形成された基板を所定温度の水に所定時間浸漬する方法、金属酸化物前駆体吸着層が形成された基板を水蒸気を含んだ空気中に曝す方法、金属酸化物前駆体吸着層が形成された基板に熱風を吹き付ける熱風乾燥法等を用いることができる。これにより、基板の表面に吸着した金属アルコキシド等の金属酸化物前駆体を加水分解し重縮合することで、薄膜の金属酸化物層を形成することができる。
加水分解に用いる水は、不純物等の混入を防止し高純度の金属酸化物層を形成するため、イオン交換水を用いるのが好ましい。また、金属酸化物前駆体のうち、水との反応性が高いものは、空気中の水蒸気と反応させることにより加水分解を行うことができる。
加水分解後、必要により、窒素ガス等の乾燥ガスを用いて基板の表面を乾燥させてもよい。さらに、塩基等の縮合触媒等の触媒を用いることで、これらの工程に必要な時間を短縮することも可能である。
【0030】
第1結合層形成工程において形成される金属酸化物層の第1結合層は、一回の操作によって、例えば0.1〜10nm好ましくは0.1nm以上3nm未満の厚さに形成することができる。
なお、第1有機吸着層形成工程としては、請求項5で説明した有機吸着層形成工程と同様なので説明を省略する。
[0031]
本発明の請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のガス検知素子の製造方法であって、前記第1有機吸着層に蒸気状態の金属酸化物前駆体を接触させ前駆体吸着層を形成する前駆体吸着層形成工程と、前記前駆体吸着層を加水分解して金属酸化物層の第2結合層を形成する第2結合層形成工程と、前記第2結合層の表面に第2有機吸着層を形成する第2有機吸着層形成工程と、を備えた構成を有している。
この構成により、請求項6で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)金属酸化物前駆体の気化の条件を整えることにより金属酸化物前駆体と不純物とを分離できるため、金属酸化物前駆体の吸着を分子レベルで制御して不純物がない又は著しく少ない金属酸化物層を形成することができ、有機吸着層の構造に沿って金属酸化物のネットワークを精密に形成でき、ガス分子が流通し易く拡散性に優れた金属酸化物層を形成できるため、第2有機吸着層だけでなく有機吸着層や第1有機吸着層にもガス分子を吸着させることができ、ガス分子の吸着量を増やし検知感度を高めることができるとともに、吸着したガス分子を簡単な操作で脱着させることができ容易に再生させることができる。
[0032]
ここで、前駆体吸着層、前駆体吸着層形成工程、第2結合層形成工程としては、それぞれ請求項7で説明した金属酸化物前駆体吸着層、金属酸化物前駆体吸着層形成工程、第1結合層形成工程と同様なので説明を省略する。
[0033]
本発明の請求項8に記載の発明は、請求項5又は7に記載のガス検知素子の製造方法であって、前記前駆体吸着層形成工程と前記第2結合層形成工程と前記第2有機吸着層形成工程との一群が繰り返し行われる繰り返し工程を備えた構成を有している。
この構成により、請求項5又は7で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)第2有機吸着層の表面に、さらに蒸気状態の金属酸化物前駆体を接触させ金属酸化物前駆体の吸着層を形成した後、加水分解して金属酸化物層(第2結合層)を形成し、金属酸化物層(第2結合層)の表面へ第2有機吸着層を形成する交互積層を1乃至複数回行う繰り返し工程を備えているので、第2有機吸着層が第2結合層を介して複数積層されるため、第2有機吸着層の層数が増しガス分子の吸着量が増え検知感度をより高めることができる。
発明の効果
[0034]
以上のように、本発明のガス検知素子及びその製造方法によれば、以下のような有利な効果が得られる。
請求項1に記載の発明によれば、
(1)表面処理層によって有機吸着層が基板に強固に結合され、繰り返し使用しても有機吸着層が基板から剥離し難く耐久性に優れたガス検知素子を提供できる。
(2)官能基を有する表面処理層によって有機吸着層が基板に化学結合し、層厚の薄い軽量の薄膜の有機吸着層を形成することができ、微量のガス分子を吸着しても検知することができ検知感度の高いガス検知素子を提供できる。
(3)有機吸着層はガス分子が選択的に吸着する官能基を有するので、酸化スズ半導体や金属酸化物等のガス検知素子材料と比較して、応答時間の短縮化と精度の高いガス識別性が得られるガス検知素子を提供できる。
(4)ガスを検知した後は、対象ガス分子が含まれない気体や液体を有機吸着層に接触させるとガス分子が脱着するので、ガス検知素子を容易に再生することができ繰り返し使用性に優れたガス検知素子を提供できる。
(5)表面処理層を有しているので、種々の有機吸着層を基板に容易に固定化でき有機吸着層の選択肢が広く、また複数種の有機吸着層を組み合わせることもでき、有機吸着層の種類に応じたガス種に応答を示し汎用性に優れたガス検知素子を提供できる。
(6)有機吸着層の表面に、第2結合層と第2有機吸着層の交互積層が1乃至複数回行われているので、第2有機吸着層に捕捉されずに第2結合層も流通したガス分子を下層の有機吸着層等にも吸着させることができ、ガス分子の反応点が多くガス分子の吸着量を増やすことができ、ガス分子の吸着による大きな質量変化が得られるので検知感度の高いガス検知素子を提供できる。
(7)有機吸着層と第2有機吸着層を直接積層すると、ガス分子を選択的に吸着させる有機吸着層等の官能基が層間の結合に用いられてしまうため、ガス分子の反応点を増やすことができず検知感度を高めることができないが、有機吸着層と第2有機吸着層との間に第2結合層を結合させているので、積層数にほぼ比例してガス分子の反応点が増えるため、検知感度の高いガス検知素子を提供できる。
[0035]
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加え、
(1)第1結合層の種類に応じて第1有機吸着層の選択肢を広げ検知可能なガス種を増やすことができるとともに、第1結合層の立体的な構造を制御することによって、そこに形成された第1有機吸着層における検知ガスの拡散性を改善することができ検知時間を短縮でき応答性に優れたガス検知素子を提供できる。
(2)第1有機吸着層の表面に、第2結合層と第2有機吸着層の交互積層が1乃至複数回行われているので、第2有機吸着層に捕捉されずに第2結合層も流通したガス分子を下層の第1有機吸着層等にも吸着させることができ、ガス分子の反応点が多くガス分子の吸着量を増やすことができ、ガス分子の吸着による大きな質量変化が得られるので検知感度の高いガス検知素子を提供できる。
(3)第1有機吸着層と第2有機吸着層を直接積層すると、ガス分子を選択的に吸着させる有機吸着層等の官能基が層間の結合に用いられてしまうため、ガス分子の反応点を増やすことができず検知感度を高めることができないが、第1有機吸着層と第2有機吸着層との間に第2結合層を結合させているので、積層数にほぼ比例してガス分子の反応点が増えるため、検知感度の高いガス検知素子を提供できる。
[0036]
[0037]
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2の効果に加え、
(1)第1結合層,第2結合層が3nm未満の厚さに形成されているので、ガス分子が第1結合層や第2結合層を流通して下層の有機吸着層や第1有機吸着層等に到達するまでの時間を短縮できるため、ガス検知の応答が速く、再生も短時間で行うことができ取扱性に優れたガス検知素子を提供できる。
(2)ガス分子が吸着し難い第1結合層や第2結合層の重量を小さくできるため、第1有機吸着層等へのガス分子の吸着量が少ないときでも検知することができ、検知感度の高いガス検知素子を提供できる。
[0038]
請求項4に記載の発明によれば、請求項1乃至3の内いずれか1の効果に加え、
(1)QCM(水晶天秤)、弾性表面波素子、マイクロカンチレバー等を利用して固有振動数や共振周波数の変化等を計測することによってガス吸着量を計測することができ、高精度・高分解能のガス検知が可能なガス検知素子を提供できる。
[0039]
請求項5に記載の発明によれば、
(1)官能基を有する表面処理層によって有機吸着層が基板に化学結合し、層厚の薄い軽量の薄膜の有機吸着層を短時間で精度良く形成することができ、生産性に優れるとともに生産安定性に優れたガス検知素子の製造方法を提供できる。
(2)金属酸化物前駆体の吸着を分子レベルで制御して不純物がない又は著しく少ない金属酸化物層を形成することができ、有機吸着層の構造に沿って金属酸化物のネットワークを精密に形成でき、ガス分子が流通し易く拡散性に優れた金属酸化物層を形成できるため、第2有機吸着層だけでなく有機吸着層にもガス分子を吸着させることができ、ガス分子の吸着量を増やし検知感度を高めることができるとともに、吸着したガス分子を簡単な操作で脱着させることができ容易に再生させることができるガス検知素子の製造方法を提供できる。
[0040]
請求項6に記載の発明によれば、
(1)金属酸化物前駆体吸着層形成工程において基板に蒸気状態の金属酸化物前駆体を接触させるため、出発原料である金属酸化物前駆体を有機溶媒に溶解したりする操作が不要なため、金属酸化物前駆体の有機溶媒中における溶解性や安定性等の問題がなく品質の安定性に優れたガス検知素子の製造方法を提供できる。
(2)有機溶媒に溶解した金属酸化物前駆体を接触させる場合と比較して膜厚の薄い第1結合層を形成することができ、ガス分子が吸着し難い第1結合層を軽量化し、ガス濃度が低いときでもガス分子の吸着による微量の質量変化を検知できるようにして検知感度の高いガス検知素子の製造方法を提供できる。
(3)第1結合層の種類に応じて第1有機吸着層の選択肢を広げ検知可能なガス種を増やすことができるとともに、第1結合層の立体的な構造を制御することによって、そこに形成された第1有機吸着層における検知ガスの拡散性を改善することができ検知時間を短縮でき応答性に優れたガス検知素子が得られるガス検知素子の製造方法を提供できる。
[0041]
請求項7に記載の発明によれば、請求項6の効果に加え、
(1)金属酸化物前駆体の気化の条件を整えることにより金属酸化物前駆体と不純物とを分離できるため、金属酸化物前駆体の吸着を分子レベルで制御して不純物がない又は著しく少ない金属酸化物層を形成することができ、有機吸着層の構造に沿って金属酸化物のネットワークを精密に形成でき、ガス分子が流通し易く拡散性に優れた金属酸化物層を形成できるため、第2有機吸着層だけでなく有機吸着層や第1有機吸着層にもガス分子を吸着させることができ、ガス分子の吸着量を増やし検知感度を高めることができるとともに、吸着したガス分子を簡単な操作で脱着させることができ容易に再生させることができるガス検知素子の製造方法を提供できる。
[0042]
請求項8に記載の発明によれば、請求項5又は7の効果に加え、
(1)第2有機吸着層が第2結合層を介して複数積層されるため、第2有機吸着層の層数が増しガス分子の吸着量が増え、より高い検知感度を実現できるガス検知素子の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施の形態1におけるガス検知素子の模式断面図
【図2】本発明の実施の形態2におけるガス検知素子の模式断面図
【図3】本発明の実施の形態3におけるガス検知素子の模式断面図
【図4】本発明の実施の形態4におけるガス検知素子の模式断面図
【図5】本発明の実施の形態5におけるガス検知素子の模式断面図
【図6】実験例3のガス検知素子の振動数変化の時間応答特性を、アンモニアガス濃度毎にプロットした図
【図7】実験例3のガス検知素子において、フローセルにアンモニアガスを流入させて20秒後(試験開始から40秒後)の振動数変化とアンモニア濃度との関係を示した図
【図8】は実験例1〜3のガス検知素子において、フローセルにアンモニアガスを流入させて20秒後(試験開始から40秒後)の振動数変化とアンモニア濃度との関係を示した図
【図9】実験例3と比較例1のガス検知素子のフローセルにアンモニアガスを流入させて20秒後(試験開始から40秒後)の振動数変化とアンモニア濃度との関係を示した図
【図10】実験例3と実験例4のガス検知素子のガス検知素子を配置したフローセルに3ppmのアンモニアガス(1L/分)を流したときのガス検知素子の振動数変化の時間応答特性を示した図
【図11】実験例3のガス検知素子を配置したフローセルに3ppmのアンモニアガス(1L/分)を30秒間流した後、空気(ブランクガス)を流したときのガス検知素子の振動数変化の時間応答特性をプロットした図
【図12】実験例3のガス検知素子の振動数変化の時間応答特性を、ブチルアミンガス濃度毎にプロットした図
【図13】実験例3のガス検知素子において、フローセルにブチルアミンガスを流入させて20秒後(試験開始から40秒後)の振動数変化とブチルアミン濃度との関係を示した図
【図14】実験例3のガス検知素子の振動数変化の時間応答特性を、ピリジンガス濃度毎にプロットした図
【図15】実験例3のガス検知素子において、フローセルにピリジンガスを流入させて20秒後(試験開始から40秒後)の振動数変化とピリジン濃度との関係を示した図
【図16】実験例3のガス検知素子の振動数変化の時間応答特性を、エタノールガス濃度毎にプロットした図
【図17】実験例3のガス検知素子の振動数変化の時間応答特性を、クロロホルムガス濃度毎にプロットした図
【図18】実験例3のガス検知素子の振動数変化の時間応答特性を、トルエンガス濃度毎にプロットした図
【図19】実験例5のガス検知素子の振動数変化の時間応答特性をプロットした図
【図20】実験例5のガス検知素子を配置したフローセルに3ppmのアンモニアガス(1L/分)を30秒間流した後、空気(ブランクガス)を流したときのガス検知素子の振動数変化の時間応答特性をプロットした図
【図21】実験例5のガス検知素子を配置したフローセルに3ppmのホルムアルデヒドガス(1L/分)を30秒間流した後、空気(ブランクガス)を流したときのガス検知素子の振動数変化の時間応答特性をプロットした図
【図22】実験例6〜9のガス検知素子において、フローセルにアンモニアガスを流入させて20秒後の振動数変化とアンモニア濃度との関係を示した図
【図23】実験例10、11のガス検知素子において、フローセルにアンモニアガスを流入させて20秒後の振動数変化とアンモニア濃度との関係を示した図
【図24】実験例10、11のガス検知素子において、フローセルにホルムアルデヒドガスを流入させて20秒後の振動数変化とホルムアルデヒド濃度との関係を示した図
【符号の説明】
【0044】
1,1a,1b,1c,1d ガス検知素子
2 基板
3 表面処理層
4 有機吸着層
5 第1結合層
6 第1有機吸着層
7,7a,9 第2結合層
8,8a 第2有機吸着層
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1におけるガス検知素子の模式断面図である。
図中、1は実施の形態1におけるガス検知素子、2は単結晶シリコン、窒化シリコン、圧電性結晶、圧電セラミックス、圧電性薄膜の内いずれか1種で形成された基板、3は基板2の表面に導入された水酸基,カルボキシル基,アミノ基,アルデヒド基,カルボニル基,ニトロ基,炭素炭素二重結合,芳香族環等の官能基を有する表面処理層、4はポリアクリル酸,ポリグルタミン酸,ポリアリルアミン塩酸塩,ポリエチレンイミ,ポリアニリン,ポリイミド,ポリアミド,ポリスルホン,ポリ酢酸ビニル,ポリプロピレン,ポリエチレン,フェニルアラニン,ポリクロロトリフルオロエチレン等の高分子化合物で表面処理層3の表面に形成された有機吸着層である。
【0046】
以上のように構成された実施の形態1におけるガス検知素子について、以下その製造方法を説明する。
基板2を2−アミノエタンチオール等に浸漬する等の手段により基板2の表面に官能基を導入し表面処理層3を形成した後、有機吸着層形成工程において、基板2をポリアクリル酸等の高分子化合物の溶液に浸漬する等の手段により、表面処理層3の表面に有機吸着層4を形成する。
【0047】
以上のように構成された実施の形態1におけるガス検知素子によれば、以下のような作用が得られる。
(1)基板2に形成された官能基を有する表面処理層3と、表面処理層3の表面に形成された有機吸着層4と、を備えているので、表面処理層3の官能基を介して有機吸着層4が基板2に強固に結合され、繰り返し使用しても有機吸着層4が基板から剥離し難く耐久性に優れる。
(2)基板2が単結晶シリコン、窒化シリコン、圧電性結晶、圧電セラミックス、圧電性薄膜の内いずれか1種なので、基板2をQCM(水晶天秤)、弾性表面波素子、マイクロカンチレバー等に適用することによって、有機吸着層4にガス分子が吸着して質量が増すと基板2の固有振動数や共振周波数が変化するので、この変化を測定することで高精度・高分解能のガス検知ができる。
(3)官能基を有する表面処理層3によって有機吸着層4が基板2に化学結合し、層厚の薄い軽量の薄膜の有機吸着層4を形成することができ、微量のガス分子が吸着しても質量変化による振動数等の変化を検知することができ検知感度を高めることができる。
(4)有機吸着層4はガス分子が選択的に吸着する官能基を形成できるので、酸化スズ半導体や金属酸化物等のガス検知素子材料と比較して、応答時間の短縮化と精度の高いガス識別性を実現することができる。
(5)ガスを検知した後は、対象ガス分子が含まれない気体や液体を有機吸着層4に接触させるとガス分子が脱着するので、ガス検知素子1を容易に再生することができ繰り返し使用性に優れる。
【0048】
また、実施の形態1におけるガス検知素子の製造方法によれば、以下のような作用が得られる。
(1)官能基を有する表面処理層3によって有機吸着層4が基板2に化学結合し、層厚の薄い軽量の薄膜の有機吸着層4を短時間で精度良く形成することができ生産性に優れるとともに生産安定性に優れる。
【0049】
(実施の形態2)
図2は本発明の実施の形態2におけるガス検知素子の模式断面図である。なお、実施の形態1と同様のものは、同じ符号を付して説明を省略する。
図中、1aは実施の形態2におけるガス検知素子、5は水酸基,カルボキシル基,アミノ基,アルデヒド基,カルボニル基,ニトロ基,炭素炭素二重結合,芳香族環等の官能基を有するポリペプチド,ポリマー等の重合体、酸化チタン,酸化ジルコニウム等の金属酸化物等で形成され表面処理層3に結合した第1結合層、6はポリアクリル酸,ポリグルタミン酸,ポリアリルアミン塩酸塩,ポリエチレンイミン,ポリアニリン,ポリイミド,ポリアミド,ポリスルホン,ポリ酢酸ビニル,ポリプロピレン,ポリエチレン,フェニルアラニン,ポリクロロトリフルオロエチレン等の高分子化合物で第1結合層5の表面に形成された第1有機吸着層である。
【0050】
以上のように構成された実施の形態2におけるガス検知素子について、以下その製造方法を説明する。
実施の形態1で説明したのと同様にして基板2に表面処理層3を形成した後、金属酸化物前駆体吸着層形成工程において、蒸気状態のチタンブトキシド,ジルコニウムプロポキシド,アルミニウムブトキシド,メチルトリメトキシシラン等の金属酸化物前駆体を接触させ、表面処理層3の表面に金属酸化物前駆体の吸着層である金属酸化物前駆体吸着層を形成する。次いで、第1結合層形成工程において、金属酸化物前駆体吸着層を加水分解して、表面処理層3の表面に金属酸化物層の第1結合層5を形成する。次に、第1有機吸着層形成工程において、基板2をポリアクリル酸等の高分子化合物の溶液に浸漬する等の手段により、第1結合層5の表面に第1有機吸着層6を形成する。
【0051】
以上のように構成された実施の形態2におけるガス検知素子によれば、実施の形態1に記載した作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)第1有機吸着層6が、表面処理層3の表面に形成された第1結合層5の表面に形成されているので、第1結合層5の種類に応じて第1有機吸着層6の選択肢を広げ検知可能なガス種を増やすことができるとともに、第1結合層5の立体的な構造を制御することによって、そこに形成された第1有機吸着層6における検知ガスの拡散性を改善することができ検知時間を短縮できる。
【0052】
また、実施の形態2におけるガス検知素子の製造方法によれば、実施の形態1に記載した作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)金属酸化物前駆体吸着層形成工程において基板2に蒸気状態の金属酸化物前駆体を接触させるため、出発原料である金属酸化物前駆体を有機溶媒に溶解したりする操作が不要なため、金属酸化物前駆体の有機溶媒中における溶解性や安定性等の問題がなく品質の安定性に優れる。
(2)有機溶媒に溶解した金属酸化物前駆体を接触させる場合と比較して膜厚の薄い第1結合層5を形成することができ、ガス分子が吸着し難い第1結合層5を軽量化し、ガス濃度が低いときでもガス分子の吸着による微量の質量変化を検知できるようにして検知感度の高めることができる。
【0053】
なお、本実施の形態においては、表面処理層3に蒸気状態の金属酸化物前駆体を接触させて金属酸化物前駆体吸着層を形成した後、加水分解して金属酸化物層(第1結合層5)を形成した場合について説明したが、ポリペプチド,ポリマー等の重合体等で第1結合層5を形成する場合もある。この場合は、水素結合や静電相互作用によってポリペプチド,ポリマー等の重合体等を表面処理層3に結合させて第1結合層5を形成することができる。また、溶液状態の金属酸化物前駆体を滴下した後、スピンコートやバーコート等で液膜を形成し金属酸化物前駆体吸着層を形成し、次いで加水分解して金属酸化物層の第1結合層5を形成する場合もある。
【0054】
(実施の形態3)
図3は本発明の実施の形態3におけるガス検知素子の模式断面図である。なお、実施の形態1と同様のものは、同じ符号を付して説明を省略する。
図中、1bは実施の形態3におけるガス検知素子、7は水酸基,カルボキシル基,アミノ基,アルデヒド基,カルボニル基,ニトロ基,炭素炭素二重結合,芳香族環等の官能基を有するポリペプチド,ポリマー等の重合体、酸化チタン,酸化ジルコニウム等の金属酸化物等で形成され有機吸着層4に結合した第2結合層、8はポリアクリル酸,ポリグルタミン酸,ポリアリルアミン塩酸塩,ポリエチレンイミン,ポリアニリン,ポリイミド,ポリアミド,ポリスルホン,ポリ酢酸ビニル,ポリプロピレン,ポリエチレン,フェニルアラニン,ポリクロロトリフルオロエチレン等の高分子化合物で第2結合層7の表面に形成された第2有機吸着層である。
【0055】
以上のように構成された実施の形態3におけるガス検知素子について、以下その製造方法を説明する。
実施の形態1で説明したのと同様にして基板2に表面処理層3、有機吸着層4を形成した後、前駆体吸着層形成工程において、蒸気状態のチタンブトキシド,ジルコニウムプロポキシド,アルミニウムブトキシド,メチルトリメトキシシラン等の金属酸化物前駆体を接触させ、有機吸着層4の表面に金属酸化物前駆体の吸着層である前駆体吸着層を形成する。次いで、第2結合層形成工程において、前駆体吸着層を加水分解して、有機吸着層4の表面に金属酸化物層の第2結合層7を形成する。次に、第2有機吸着層形成工程において、基板2をポリアクリル酸等の高分子化合物の溶液に浸漬する等の手段により、第2結合層7の表面に第2有機吸着層8を形成する。
【0056】
以上のように構成された実施の形態3におけるガス検知素子によれば、実施の形態1に記載した作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)有機吸着層4の表面に形成された第2結合層7の表面に第2有機吸着層8が形成されているので、第2結合層7を流通したガス分子を下層の有機吸着層4にも吸着させることができガス分子の反応点が多くガス分子の吸着量を増やすことができ、ガス分子の吸着による大きな質量変化が得られるので検知感度を高めることができる。
【0057】
また、実施の形態3におけるガス検知素子の製造方法によれば、実施の形態1に記載した作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)金属酸化物前駆体の気化の条件を整えることにより金属酸化物前駆体と不純物とを分離できるため、金属酸化物前駆体の吸着を分子レベルで制御して不純物がない又は著しく少ない金属酸化物層を形成することができ、有機吸着層の構造に沿って金属酸化物のネットワークを精密に形成でき、ガス分子が流通し易く拡散性に優れた金属酸化物層を形成できるため、第2有機吸着層8だけでなく有機吸着層4にもガス分子を吸着させることができ、ガス分子の吸着量を増やし検知感度を高めることができるとともに、吸着したガス分子を簡単な操作で脱着させることができ容易に再生させることができる。
【0058】
(実施の形態4)
図4は本発明の実施の形態4におけるガス検知素子の模式断面図である。なお、実施の形態2と同様のものは、同じ符号を付して説明を省略する。
図中、1cは実施の形態4におけるガス検知素子、7aは水酸基,カルボキシル基,アミノ基,アルデヒド基,カルボニル基,ニトロ基,炭素炭素二重結合,芳香族環等の官能基を有するポリペプチド,ポリマー等の重合体、酸化チタン,酸化ジルコニウム等の金属酸化物等で形成され第1有機吸着層6に結合した第2結合層、8aはポリアクリル酸,ポリグルタミン酸,ポリアリルアミン塩酸塩,ポリエチレンイミン,ポリアニリン,ポリイミド,ポリアミド,ポリスルホン,ポリ酢酸ビニル,ポリプロピレン,ポリエチレン,フェニルアラニン,ポリクロロトリフルオロエチレン等の高分子化合物で第2結合層7aの表面に形成された第2有機吸着層である。
【0059】
以上のように構成された実施の形態4におけるガス検知素子について、以下その製造方法を説明する。
実施の形態2で説明したのと同様にして基板2に表面処理層3、第1結合層5,第1有機吸着層6を形成した後、前駆体吸着層形成工程において、蒸気状態のチタンブトキシド,ジルコニウムプロポキシド,アルミニウムブトキシド,メチルトリメトキシシラン等の金属酸化物前駆体を接触させ、第1有機吸着層6の表面に金属酸化物前駆体の吸着層である前駆体吸着層を形成する。次いで、第2結合層形成工程において、前駆体吸着層を加水分解して、第1有機吸着層6の表面に金属酸化物層の第2結合層7aを形成する。次に、第2有機吸着層形成工程において、基板2をポリアクリル酸等の高分子化合物の溶液に浸漬する等の手段により、第2結合層7aの表面に第2有機吸着層8aを形成する。
【0060】
以上のように構成された実施の形態4におけるガス検知素子によれば、実施の形態1に記載した作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)第1有機吸着層6の表面に形成された第2結合層7aの表面に第2有機吸着層8aが形成されているので、第2結合層7aを流通したガス分子を下層の第1有機吸着層6にも吸着させることができガス分子の反応点が多くガス分子の吸着量を増やすことができ、ガス分子の吸着による大きな質量変化が得られるので検知感度を高めることができる。
【0061】
また、実施の形態4におけるガス検知素子の製造方法によれば、実施の形態3に記載したのと同様の作用が得られる。
【0062】
(実施の形態5)
図5は本発明の実施の形態5におけるガス検知素子の模式断面図である。なお、実施の形態2又は4と同様のものは、同じ符号を付して説明を省略する。
図中、1dは実施の形態5におけるガス検知素子、9は水酸基,カルボキシル基,アミノ基,アルデヒド基,カルボニル基,ニトロ基,炭素炭素二重結合,芳香族環等の官能基を有するポリペプチド,ポリマー等の重合体、酸化チタン,酸化ジルコニウム等の金属酸化物等で形成され第2有機吸着層8aに結合した第2結合層である。第2結合層9と第2有機吸着層8aの交互積層は複数回行われている。
【0063】
以上のように構成された実施の形態5におけるガス検知素子について、以下その製造方法を説明する。
実施の形態2又は4で説明したのと同様にして基板2に表面処理層3、第1結合層5,第1有機吸着層6、第2結合層7a、第2有機吸着層8aを形成する。次いで、蒸気状態のチタンブトキシド,ジルコニウムプロポキシド,アルミニウムブトキシド,メチルトリメトキシシラン等の金属酸化物前駆体を接触させ、第2有機吸着層8aの表面に金属酸化物前駆体の吸着層を形成し、吸着層を加水分解して第2有機吸着層8aの表面に金属酸化物層の第2結合層9を形成する。次に、基板2をポリアクリル酸等の高分子化合物の溶液に浸漬する等の手段により第2結合層9の表面へ第2有機吸着層8aを形成する。第2結合層9と第2有機吸着層8aの交互積層を繰り返し行って、第2結合層9を介して第2有機吸着層8aを複数積層する(以上、交互積層工程)。
【0064】
以上のように構成された実施の形態5におけるガス検知素子によれば、実施の形態2又は4に記載した作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)第2有機吸着層8aが第2結合層9を介して複数積層されているので、第2有機吸着層8aの層数が増すためガス分子の吸着量が増え検知感度をより高めることができる。
【0065】
また、実施の形態5におけるガス検知素子の製造方法によれば、実施の形態3に記載したのと同様の作用が得られる。
【0066】
なお、本実施の形態においては、2層の第2結合層9と2層の第2有機吸着層8aが形成された場合について説明したが、さらに交互積層数を増やすことができる。
また、基板2に表面処理層3、第1結合層5、第1有機吸着層6、第2結合層7a、第2有機吸着層8aを順に積層し、その上に第2結合層9を積層した場合について説明したが、実施の形態3のように、基板2に表面処理層3、有機吸着層4、第2結合層7、第2有機吸着層8を順に積層し、その上に第2結合層9を積層する場合もある。この場合も、実施の形態5と同様の作用が得られる。
【実施例】
【0067】
以下、本発明を実験例により具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実験例に限定されるものではない。
(実験例1)
両面に金製の電極が形成された基準振動数9MHzの水晶振動子を基板として用いた。この基板をピラナ(H2SO4:H2O2=3:1)処理した後、メルカプトエタノールのエタノール溶液(10mmol/L)に12時間浸漬して基板の電極表面を水酸基修飾した。エタノール及びイオン交換水で十分洗浄した後、窒素ガスを吹き付けて乾燥させ、基板及び両面の電極に水酸基を有する表面処理層を形成した。
次いで、金属酸化物前駆体のチタンブトキシド(Ti(O-nBu)4)(キシダ化学製)10〜20mLを攪拌装置付き恒温槽の中で85℃に保持し、流量3L/分の窒素ガスを吹き込んでチタンブトキシドの蒸気を発生させ、発生したチタンブトキシドの蒸気を、窒素ガス(移動媒体)を用いて基板の表面に移動させ10分間接触させ、表面処理層の表面に金属酸化物前駆体吸着層を形成した。その後、さらに窒素ガス(移動媒体)のみを金属酸化物前駆体吸着層に十分吹き込み、過剰の金属酸化物前駆体である弱い物理吸着種を除去した(金属酸化物前駆体吸着層形成工程)。
次いで、イオン交換水によって金属酸化物前駆体吸着層を加水分解して金属酸化物層の第1結合層を形成した後、窒素ガスを吹き付けて乾燥させた(第1結合層形成工程)。
続いて、ポリアクリル酸(シグマアルドリッチ製、重量平均分子量400000、密度1.4g/cm3)の0.1wt%水溶液(30℃)に、第1結合層(金属酸化物層)が形成された基板を20分間浸漬した。次いで、基板をイオン交換水に1分間浸漬して過剰吸着分を洗浄し窒素ガスで乾燥して、第1結合層(金属酸化物層)の表面にポリアクリル酸の第1有機吸着層を形成した。
次に、チタンブトキシドの蒸気を、窒素ガス(移動媒体)を用いて第1有機吸着層に接触させ、第1有機吸着層の表面に金属酸化物前駆体の吸着層である前駆体吸着層を形成した。その後、さらに窒素ガス(移動媒体)のみを前駆体吸着層に十分吹き込み、過剰の金属酸化物前駆体である弱い物理吸着種を除去した(前駆体吸着層形成工程)。
次いで、イオン交換水によって前駆体吸着層を加水分解して金属酸化物層の第2結合層を形成した後、窒素ガスを吹き付けて乾燥させた(第2結合層形成工程)。
続いて、ポリアクリル酸の30℃の水溶液に、第2結合層(金属酸化物層)が形成された基板を20分間浸漬した。次いで、基板をイオン交換水に1分間浸漬して過剰吸着分を洗浄し窒素ガスで乾燥して、第2結合層(金属酸化物層)の表面にポリアクリル酸の第2有機吸着層を形成した。
次に、同様の方法で、第2有機吸着層の表面に金属酸化物前駆体の吸着層を形成し加水分解を行い金属酸化物層(第2結合層)を形成し、金属酸化物層(第2結合層)の表面への第2有機吸着層の形成を繰り返し行い(交互積層工程)、表面処理層の上に、金属酸化物層、有機吸着層が各々5層ずつ積層された実験例1のガス検知素子を得た。
なお、金属酸化物層、有機吸着層を形成する度に水晶振動子の固有振動数をQCM(水晶天秤)によって測定した結果、金属酸化物層では1層当たり平均19Hzの振動数変化がみられ、有機吸着層では1層当たり平均28Hzの振動数変化がみられた。
ここで、本システムでは1Hzの振動数変化は約0.9ngの質量変化を示していることに基づくと、1層当たりの金属酸化物層の厚さは1nm以下であり、有機吸着層の厚さは約1nmであると算出された。
【0068】
(実験例2)
実験例1と同様にして、基板に表面処理層及び第1結合層(金属酸化物層)を形成し、次に第2有機吸着層を形成した後、第2結合層(金属酸化物層)と第2有機吸着層の形成を交互に繰り返し行い、表面処理層の上に、金属酸化物層、有機吸着層が各々10層ずつ積層された実験例2のガス検知素子を得た。
なお、金属酸化物層、有機吸着層を形成する度に水晶振動子の固有振動数をQCM(水晶天秤)によって測定した結果、金属酸化物層では1層当り平均10Hzの振動数変化がみられ、有機吸着層では1層当り平均39Hzの振動数変化がみられた。実験例1と同様にして、1層当たりの金属酸化物層の厚さは1nm以下であり、有機吸着層の厚さは約1nmであると算出された。
【0069】
(実験例3)
実験例1と同様にして、基板に表面処理層及び第1結合層(金属酸化物層)を形成し、次に第2有機吸着層を形成した後、第2結合層(金属酸化物層)と第2有機吸着層の形成を交互に繰り返し行い、表面処理層の上に、金属酸化物層、有機吸着層が各々20層ずつ積層された実験例3のガス検知素子を得た。
なお、金属酸化物層、有機吸着層を形成する度に水晶振動子の固有振動数をQCM(水晶天秤)によって測定した結果、金属酸化物層では1層当り平均23Hzの振動数変化がみられ、有機吸着層では1層当り平均45Hzの振動数変化がみられた。実験例1と同様にして、1層当たりの金属酸化物層の厚さは1nm以下であり、有機吸着層の厚さは約1nmであると算出された。
【0070】
(実験例4)
両面に金製の電極が形成された基準振動数9MHzの水晶振動子を基板として用いた。この基板をピラナ(H2SO4:H2O2=3:1)処理した後、2−アミノエタンチオール(和光純薬製、分子量77.15)のエタノール溶液(10mmol/L)に30℃で12時間浸漬して、基板及び電極の表面をアミノ基修飾した。エタノール及びイオン交換水で十分洗浄した後、窒素ガスを吹き付けて乾燥させ、基板及び電極にアミノ基を有する表面処理層を形成した。
基板の両面に各々形成された表面処理層に、ポリアクリル酸(シグマアルドリッチ製、重量平均分子量400000、密度1.4g/cm3)の0.1wt%水溶液を20μLずつ塗布した後、シリカゲルを敷いた室温(約25℃)のデシケータ内で5時間乾燥して、基板の両面の表面処理層上に有機吸着層を形成し、実験例4のガス検知素子を得た。水晶振動子の固有振動数をQCM(水晶天秤)によって測定した結果、30372Hz(作成した3個のガス検知素子の平均値)の周波数変化がみられた。この結果、有機吸着層の厚さは約590nm(平均値)であると算出された。
また、ポリアクリル酸の水溶液を同様に表面処理層に塗布した後、デシケータ内で乾燥せず、室温(約25℃)の大気中で5時間乾燥したガス検知素子も比較のために作成した。
【0071】
(比較例1)
両面に金製の電極が形成された基準振動数9MHzの水晶振動子を基板として用いた。この基板をピラナ(H2SO4:H2O2=3:1)処理した後、メルカプトエタノールのエタノール溶液(10mmol/L)に12時間浸漬して基板及び電極を水酸基修飾した。エタノール及びイオン交換水で十分洗浄した後、窒素ガスを吹き付けて乾燥させ、基板及び電極に水酸基を有する表面処理層を形成した。
次いで、金属酸化物前駆体のチタンブトキシド(Ti(O-nBu)4)(キシダ化学製)10〜20mLを攪拌装置付き恒温槽の中で85℃に保持し、流量3L/分の窒素ガスを吹き込んでチタンブトキシドの蒸気を発生させ、発生したチタンブトキシドの蒸気を、窒素ガス(移動媒体)を用いて表面処理層の表面に移動させ10分間接触させ、表面処理層の表面に金属酸化物前駆体の吸着層を形成した。その後、さらに窒素ガス(移動媒体)のみを金属酸化物前駆体の吸着層に十分吹き込み、過剰の金属酸化物前駆体である弱い物理吸着種を除去した。次いで、イオン交換水によって加水分解し金属酸化物層を形成した後、窒素ガスを吹き付けて乾燥させた。
次に、同様の方法で金属酸化物層を積層し、20層の金属酸化物層が積層された比較例1のガス検知素子を得た。
なお、金属酸化物層を形成する度に水晶振動子の固有振動数をQCM(水晶天秤)によって測定した結果、1層当り平均20Hzの振動数変化がみられた。実験例1と同様にして、1層当たりの金属酸化物層の厚さは1nm以下であると算出された。
【0072】
(アンモニアに対するガス検知素子の応答)
得られたガス検知素子のガス応答性を測定した。まず、ガス検知素子をフローセル内に配置した後、フローセルに空気(ブランクガス)を1L/分で流し、水晶振動子の固有振動数の変化を測定し、これをガス検知素子のベースラインとした。
次に、空気(ブランクガス)を1L/分で水中に導入し、水中を通過した空気をフローセルに導入して、水晶振動子の固有振動数の変化を測定した。次いで、フローセルに空気(ブランクガス)を1L/分で20秒間流した後、濃度が300ppb、600ppb、900ppb、1.2ppm、1.5ppm、3ppm、4.5ppm、6ppm、7.5ppm、9ppm、10.5ppm、15ppmの各アンモニアガスをフローセルに1L/分で流し、水晶振動子の固有振動数の変化をQCMによって測定した。この測定はフローセルを25℃に保って行った。
なお、フローセルに一定の濃度のアンモニアガスを流してガス検知素子の応答を測定した後は、フローセルに空気(ブランクガス)を十分流して水晶振動子の固有振動数を初期の状態に戻した。
図6は実験例3のガス検知素子の振動数変化の時間応答特性を、アンモニアガス濃度毎にプロットした図である。プロットされた各点は、振動数変化の少ないものから順に、水中を通過させた空気(水蒸気)、アンモニアガス濃度300ppb、600ppb、900ppb、1.2ppm、1.5ppm、3ppm、4.5ppm、6ppm、7.5ppm、9ppm、10.5ppm、15ppmを示している。
図6から、実験例3のガス検知素子は水中を通過させた空気(水蒸気)では振動数変化がほとんど生じないことがわかった。また、アンモニアガスをフローセルに流入してから5秒以下(試験開始から25秒以下)の短時間で振動数変化が生じており、短時間でガス検知ができることがわかった。また、1ppm以下の濃度のアンモニアガスでも振動数変化が生じており、ppbオーダーの希薄なアンモニアガスを検知できることもわかった。
また、図7は実験例3のガス検知素子において、フローセルにアンモニアガスを流入させて20秒後(試験開始から40秒後)の振動数変化とアンモニア濃度との関係を示した図である。
図7から、アンモニアガス濃度と振動数変化との間には強い正の相関がみられるため、本ガス検知素子は振動数変化と関係付けることでガス濃度を決定できることが明らかになった。
【0073】
図8は実験例1〜3のガス検知素子において、フローセルにアンモニアガスを流入させて20秒後(試験開始から40秒後)の振動数変化とアンモニア濃度との関係を示した図である。
図8から、有機吸着層の積層数が多くなるにつれて大きな振動数変化を示すことが明らかであり、有機吸着層と第2結合層とを多層積層することによって検知感度を高められることが明らかになった。また、水晶振動子の周波数変化は、有機吸着層の積層数にほぼ比例して増加していることがわかった。表面の有機吸着層の官能基に吸着されなかったガス分子が有機吸着層及び第2結合層を通過し、下層の有機吸着層に吸着されているので、積層数にほぼ比例した周波数変化が生じたものと推察される。このため、多層化することによってガス分子の反応点が増えガス分子の吸着量を増やすことができ、ガス分子の吸着による大きな質量変化が得られるので検知感度を高めることができることが明らかである。
【0074】
図9は実験例3と比較例1のガス検知素子のフローセルにアンモニアガスを流入させて20秒後(試験開始から40秒後)の振動数変化とアンモニア濃度との関係を示した図である。
実験例3のガス検知素子は、有機吸着層が形成されていない比較例1のガス検知素子と比較して大きな振動数変化を示しており、検知感度の高いガス検知素子が得られることがわかった。
【0075】
図10は実験例3と実験例4のガス検知素子のガス検知素子を配置したフローセルに3ppmのアンモニアガス(1L/分)を流したときのガス検知素子の振動数変化の時間応答特性を示した図である。
ここで、実験例3のガス検知素子における有機吸着層の積層数は20層であり、有機吸着層の1層当たりの平均の振動数変化は約45Hzであったため、20層の有機吸着層の質量を振動数変化に換算すると約900Hzである。一方、実験例4のガス検知素子における有機吸着層の質量を振動数変化に換算すると30372Hzである。よって、実験例4のガス検知素子の有機吸着層の質量は、実験例3のガス検知素子の有機吸着層の約34倍である。有機吸着層の官能基が全てガス分子の吸着に使われるのであれば、実験例4のガス検知素子のガス分子の吸着による振動数変化は、実験例3のガス検知素子の振動数変化の約34倍になるはずである。
しかしながら、図10から、実験例4のガス検知素子(デシケータ内で乾燥したもの)の振動数変化は実験例3のガス検知素子よりも小さいことがわかった。これは、実験例4のガス検知素子では有機吸着層内でカルボキシル基(官能基)同士の結合により、有機吸着層の量に比してフリーに存在する官能基が少ないことが原因であると推察される。これに対し実験例3のガス検知素子では、有機吸着層の層間に金属酸化物層の第2結合層が積層されているため、フリーのカルボキシル基(官能基)が有効に存在するので、有機吸着層の量に比して大きな振動数変化が得られたと推察される。
また、実験例4のガス検知素子は、デシケータ内で乾燥したものとそうでないものとでは、振動数変化が大きく異なることがわかった。これは、実験例4のガス検知素子の有機吸着層が厚いため、水分を吸着し易く、湿度の影響に左右され易い傾向があるものと推察される。
【0076】
図11は実験例3のガス検知素子を配置したフローセルに3ppmのアンモニアガス(1L/分)を30秒間流した後、空気(ブランクガス)を流したときのガス検知素子の振動数変化の時間応答特性をプロットした図である。
図11から、ガスを検知した後、空気(ブランクガス)を300秒程度流すことで、水晶振動子の振動数を初期の状態に戻すことができ、容易に再生できることが明らかになった。これは、金属酸化物層や有機吸着層にガス分子が流通し易く拡散性に優れており、また有機吸着層のアンモニアガスの吸着は弱い分子間相互作用を利用しているため、脱着までの時間が短く容易に再生させることができたものと推察される。
【0077】
(ブチルアミンに対するガス検知素子の応答)
実験例3のガス検知素子をフローセル内に配置した後、フローセルに空気(ブランクガス)を1L/分で流し、水晶振動子の固有振動数の変化を測定し、これをガス検知素子のベースラインとした。
次に、フローセルに空気(ブランクガス)を1L/分で20秒間流した後、水中を通過させた空気(水蒸気)を流し、水晶振動子の固有振動数の変化を測定した。次に、フローセルに空気(ブランクガス)を1L/分で20秒間流した後、濃度が300ppb、600ppb、1ppm、1.5ppm、2ppm、3ppm、4ppm、6ppm、10ppmの各ブチルアミンガスをフローセルに1L/分で流し、水晶振動子の固有振動数の変化を測定した。
なお、フローセルに一定の濃度のブチルアミンガスを流してガス検知素子の応答を測定した後は、フローセルに空気(ブランクガス)を十分流して水晶振動子の固有振動数を初期の状態に戻した。
図12は実験例3のガス検知素子の振動数変化の時間応答特性を、ブチルアミンガス濃度毎にプロットした図である。プロットされた各点は、振動数変化の少ないものから順に、水中を通過させた空気(水蒸気)、ブチルアミンガス濃度300ppb、600ppb、1ppm、1.5ppm、2ppm、3ppm、4ppm、6ppm、10ppmを示している。
図12から、実験例3のガス検知素子は、ブチルアミンガスの場合も5秒以下(試験開始から25秒以下)の短時間で振動数変化が生じており、短時間でガス検知ができることを示している。
図13は実験例3のガス検知素子において、フローセルにブチルアミンガスを流入させて20秒後(試験開始から40秒後)の振動数変化とブチルアミン濃度との関係を示した図である。
図13から、ブチルアミンガスの場合も濃度と振動数変化との間には強い正の相関がみられるため、本ガス検知素子は振動数変化と関係付けることでガス濃度を決定できることが明らかになった。
【0078】
(ピリジンに対するガス検知素子の応答)
実験例3のガス検知素子をフローセル内に配置した後、フローセルに空気(ブランクガス)を1L/分で流し、水晶振動子の固有振動数の変化を測定し、これをガス検知素子のベースラインとした。
次に、フローセルに空気(ブランクガス)を1L/分で20秒間流した後、水中を通過させた空気(水蒸気)を流し、水晶振動子の固有振動数の変化を測定した。次に、濃度が600ppb、1.2ppm、1.8ppm、2.4ppm、3.6ppm、4.8ppm、8.4ppm、12ppmの各ピリジンガスをフローセルに1L/分で流し、水晶振動子の固有振動数の変化を測定した。この測定はフローセルを25℃に保って行った。
なお、フローセルに一定の濃度のピリジンガスを流してガス検知素子の応答を測定した後は、フローセルに空気(ブランクガス)を十分流して水晶振動子の固有振動数を初期の状態に戻した。
図14は実験例3のガス検知素子の振動数変化の時間応答特性を、ピリジンガス濃度毎にプロットした図である。プロットされた各点は、振動数変化の少ないものから順に、水中を通過させた空気(水蒸気)、ピリジンガス濃度600ppb、1.2ppm、1.8ppm、2.4ppm、3.6ppm、4.8ppm、8.4ppm、12ppmを示している。
図14から、実験例3のガス検知素子は、ピリジンガスの場合も5秒以下(試験開始から25秒以下)の短時間で振動数変化が生じており、短時間でガス検知ができることを示している。また、600ppbの低濃度のピリジンガスでも振動数変化が生じており、ppbオーダーの希薄なピリジンガスを検知できることも示している。
図15は実験例3のガス検知素子において、フローセルにピリジンガスを流入させて20秒後(試験開始から40秒後)の振動数変化とピリジン濃度との関係を示した図である。
図15から、ピリジンガスの場合も濃度と振動数変化との間には強い正の相関がみられるため、本ガス検知素子は振動数変化と関係付けることでガス濃度を決定できることが明らかになった。
【0079】
(アミン系ガス以外のガスに対するガス検知素子の応答)
実験例3のガス検知素子をフローセル内に配置した後、フローセルに空気(ブランクガス)を1L/分で流し、水晶振動子の固有振動数の変化を測定し、これをガス検知素子のベースラインとした。
次に、フローセルに空気(ブランクガス)を1L/分で20秒間流した後、濃度が300ppb、600ppb、900ppb、1.6ppm、4ppm、8ppm、10ppmの各エタノールガスをフローセルに1L/分で流し、水晶振動子の固有振動数の変化を測定した。この測定はフローセルを25℃に保って行った。
なお、フローセルに一定の濃度のエタノールガスを流してガス検知素子の応答を測定した後は、フローセルに空気(ブランクガス)を十分流して水晶振動子の固有振動数を初期の状態に戻した。
図16は実験例3のガス検知素子の振動数変化の時間応答特性を、エタノールガス濃度毎にプロットした図である。
図16から、実験例3のガス検知素子の振動数変化は、アンモニアガス,ブチルアミンガス,ピリジンガスの場合と比較して著しく小さく、エタノールガスに対してほとんど応答しないことがわかった。
【0080】
クロロホルムについても同様にして、フローセルに空気(ブランクガス)を1L/分で20秒間流した後、濃度が400ppb、800ppb、1.2ppm、2ppm、4ppm、6ppm、8ppm、10ppm、12ppmの各クロロホルムガスをフローセルに1L/分で流し、水晶振動子の固有振動数の変化を測定した。この測定はフローセルを25℃に保って行った。
なお、フローセルに一定の濃度のクロロホルムガスを流してガス検知素子の応答を測定した後は、フローセルに空気(ブランクガス)を十分流して水晶振動子の固有振動数を初期の状態に戻した。
図17は実験例3のガス検知素子の振動数変化の時間応答特性を、クロロホルムガス濃度毎にプロットした図である。
図17から、実験例3のガス検知素子の振動数変化は、アンモニアガス,ブチルアミンガス,ピリジンガスの場合と比較して著しく小さく、クロロホルムガスに対してほとんど応答しないことがわかった。
【0081】
トルエンについても同様にして、フローセルに空気(ブランクガス)を1L/分で20秒間流した後、濃度が350ppb、700ppb、1.4ppm、2.1ppm、2.8ppm、3.5ppm、4.9ppm、7ppmの各トルエンガスをフローセルに1L/分で流し、水晶振動子の固有振動数の変化を測定した。この測定はフローセルを25℃に保って行った。
なお、フローセルに一定の濃度のトルエンガスを流してガス検知素子の応答を測定した後は、フローセルに空気(ブランクガス)を十分流して水晶振動子の固有振動数を初期の状態に戻した。
図18は実験例3のガス検知素子の振動数変化の時間応答特性を、トルエンガス濃度毎にプロットした図である。
図18から、実験例3のガス検知素子の振動数変化は、アンモニアガス,ブチルアミンガス,ピリジンガスの場合と比較して著しく小さく、トルエンガスに対してほとんど応答しないことがわかった。
【0082】
以上のように、ポリアクリル酸の有機吸着層を形成した実施例1〜4のガス検知素子は、アンモニア,ブチルアミン,ピリジンのアミン系ガスに対して高い識別性と高い検知感度を有し、わずかな応答時間で検知できることが明らかになった。
【0083】
(実験例5)
両面に金製の電極が形成された基準振動数9MHzの水晶振動子を基板として用いた。この基板をピラナ(H2SO4:H2O2=3:1)処理した後、メルカプトエタノールのエタノール溶液(10mmol/L)に12時間浸漬して基板及び電極を水酸基修飾した。エタノール及びイオン交換水で十分洗浄した後、窒素ガスを吹き付けて乾燥させ、基板及び両面の電極に水酸基を有する表面処理層を形成した。
次いで、金属酸化物前駆体のチタンブトキシド(Ti(O-nBu)4)(キシダ化学製)10〜20mLを攪拌装置付き恒温槽の中で85℃に保持し、流量3L/分の窒素ガスを吹き込んでチタンブトキシドの蒸気を発生させ、発生したチタンブトキシドの蒸気を、窒素ガス(移動媒体)を用いて基板及び電極の表面に移動させ10分間接触させ、表面処理層の表面に金属酸化物前駆体吸着層を形成した。その後、さらに窒素ガス(移動媒体)のみを金属酸化物前駆体吸着層に十分吹き込み、過剰の金属酸化物前駆体である弱い物理吸着種を除去した(金属酸化物前駆体吸着層形成工程)。
次いで、イオン交換水によって金属酸化物前駆体吸着層を加水分解して金属酸化物層の第1結合層を形成した後、窒素ガスを吹き付けて乾燥させた(第1結合層形成工程)。
続いて、ポリアクリル酸(シグマアルドリッチ製、重量平均分子量400000)の0.1wt%水溶液(30℃)に、第1結合層(金属酸化物層)が形成された基板を20分間浸漬した。次いで、基板をイオン交換水に1分間浸漬して過剰吸着分を洗浄し窒素ガスで乾燥して、第1結合層(金属酸化物層)の表面にポリアクリル酸の第1有機吸着層を形成した。
次に、チタンブトキシドの蒸気を、窒素ガス(移動媒体)を用いて第1有機吸着層に接触させ、第1有機吸着層の表面に金属酸化物前駆体の吸着層である前駆体吸着層を形成した。その後、さらに窒素ガス(移動媒体)のみを前駆体吸着層に十分吹き込み、過剰の金属酸化物前駆体である弱い物理吸着種を除去した(前駆体吸着層形成工程)。
次いで、イオン交換水によって前駆体吸着層を加水分解して金属酸化物層の第2結合層を形成した後、窒素ガスを吹き付けて乾燥させた(第2結合層形成工程)。
続いて、ポリアリルアミン塩酸塩(シグマアルドリッチ製、重量平均分子量70000)の0.1wt%水溶液(30℃)に、第2結合層(金属酸化物層)が形成された基板を20分間浸漬した。次いで、基板をイオン交換水に1分間浸漬して過剰吸着分を洗浄し窒素ガスで乾燥して、第2結合層(金属酸化物層)の表面にポリアリルアミン塩酸塩の第2有機吸着層を形成した。
次に、同様の方法で第2結合層(金属酸化物層)、第2有機吸着層(ポリアクリル酸)、第2結合層(金属酸化物層)、第2有機吸着層(ポリアリルアミン塩酸塩)を交互に繰り返し積層して、表面処理層の上に、金属酸化物層が10層、ポリアクリル酸の有機吸着層が5層、ポリアリルアミン塩酸塩の有機吸着層が5層ずつ積層された実験例5のガス検知素子を得た。
なお、金属酸化物層、有機吸着層を形成する度に水晶振動子の固有振動数をQCM(水晶天秤)によって測定した結果、金属酸化物層では1層当たり平均17Hzの振動数変化がみられ、有機吸着層(ポリアクリル酸)では1層当たり平均217Hz、有機吸着層(ポリアリルアミン塩酸塩)では1層当たり平均565Hzの振動数変化がみられた。
ここで、本システムでは1Hzの振動数変化は約0.9ngの質量変化を示していることから推察すると、1層当たりの金属酸化物層の厚さは1nm以下であり、有機吸着層(ポリアクリル酸)の厚さは4nmであり、有機吸着層(ポリアリルアミン塩酸塩)の厚さは11nmであると算出された。
【0084】
(実験例5のガス検知素子の応答性の評価)
実験例5のガス検知素子をフローセル内に配置した後、フローセルに空気(ブランクガス)を1L/分で流し、水晶振動子の固有振動数の変化を測定し、これをガス検知素子のベースラインとした。
次に、フローセルに空気(ブランクガス)を1L/分で20秒間流した後、濃度が3ppmのアンモニアガスをフローセルに1L/分で流し、水晶振動子の固有振動数の変化を測定した。次いで、フローセルに空気(ブランクガス)を十分流して水晶振動子の固有振動数を初期の状態に戻した。次に、フローセルに空気(ブランクガス)を1L/分で20秒間流した後、濃度が3ppmのホルムアルデヒドガスをフローセルに1L/分で流し、水晶振動子の固有振動数の変化を測定した。
図19は実験例5のガス検知素子の振動数変化の時間応答特性をプロットした図である。
図19に示すとおり、実験例5のガス検知素子はアンモニアガスとホルムアルデヒドガスの両方に反応しており、1つの素子で2種類のガスの検知ができるガス検知素子を製造することができた。また、3ppmのアンモニアガスの場合、実験例5のガス検知素子は3秒程度で平衡に達しているのに対し、実験例3のガス検知素子は、図9に示すように平衡に達するまでに200秒程度を要しており、実験例5のガス検知素子は、実験例3のガス検知素子に比べて応答速度を60倍以上速くすることができた。これは、カルボキシル基を有する有機吸着層とアミノ基を有する有機吸着層が交互に積層されているため、ガス分子の吸着と反発が同時に行われ、有機吸着層や金属酸化物層へのガス分子の拡散を促進させるからであると推察される。
また、図20は実験例5のガス検知素子を配置したフローセルに3ppmのアンモニアガス(1L/分)を30秒間流した後、空気(ブランクガス)を流したときのガス検知素子の振動数変化の時間応答特性をプロットした図であり、図21は実験例5のガス検知素子を配置したフローセルに3ppmのホルムアルデヒドガス(1L/分)を30秒間流した後、空気(ブランクガス)を流したときのガス検知素子の振動数変化の時間応答特性をプロットした図である。
図20、21から、実験例5のガス検知素子は、ガスを検知した後、空気(ブランクガス)を20秒程度流すことで、水晶振動子の振動数を初期の状態に戻すことができ、容易に再生できることも明らかになった。
【0085】
なお、フェニルアラニンを用いて有機吸着層を形成したガス検知素子では、硫化水素,メチルメルカプタン等の含硫ガスに対して素早い応答を示すことを確認した。これにより、検知対象ガスに応じた有機吸着層の材質を選択することによって、アンモニア,ピリジン等のアミン系ガス、硫化水素,メチルメルカプタン等の含硫ガス、ホルムアルデヒド等のアルデヒド系ガス等の種々のガスが検知可能な汎用性に優れたガス検知素子が得られることが確認された。
【0086】
(実験例6)
実験例1と同様にして、基板に表面処理層及び第1結合層(金属酸化物層)を形成し、次に第2有機吸着層を形成した後、第2結合層(金属酸化物層)と第2有機吸着層の形成を交互に繰り返し行い、有機吸着層の上に、金属酸化物層、有機吸着層が各々20層ずつ積層された実験例6のガス検知素子を得た。
なお、金属酸化物層、有機吸着層を形成する度に水晶振動子の固有振動数をQCM(水晶天秤)によって測定したところ、1層当たりの金属酸化物層の厚さは0.3nmであり、有機吸着層の厚さは0.5nmと算出された。
(実験例7)
チタンブトキシドの蒸気を基板に接触させて金属酸化物層を形成するのに代えて、チタンブトキシド(Ti(O-nBu)4)(キシダ化学製)の1mMトルエン/エタノール溶液に基板を浸漬した後、加水分解して金属酸化物層を形成した以外は、実験例6と同様にして、実験例7のガス検知素子を得た。
なお、金属酸化物層、有機吸着層を形成する度に水晶振動子の固有振動数をQCM(水晶天秤)によって測定したところ、1層当たりの金属酸化物層の厚さは1nmであり、有機吸着層の厚さは0.7nmと算出された。
(実験例8)
チタンブトキシドの蒸気を基板に接触させて金属酸化物層を形成するのに代えて、チタンブトキシド(Ti(O-nBu)4)(キシダ化学製)の5mMトルエン/エタノール溶液に基板を浸漬した後、加水分解して金属酸化物層を形成した以外は、実験例6と同様にして、実験例8のガス検知素子を得た。
なお、金属酸化物層、有機吸着層を形成する度に水晶振動子の固有振動数をQCM(水晶天秤)によって測定したところ、1層当たりの金属酸化物層の厚さは2nmであり、有機吸着層の厚さは1nmと算出された。
(実験例9)
チタンブトキシドの蒸気を基板に接触させて金属酸化物層を形成するのに代えて、チタンブトキシド(Ti(O-nBu)4)(キシダ化学製)の10mMトルエン/エタノール溶液に基板を浸漬した後、加水分解して金属酸化物層を形成した以外は、実験例6と同様にして、実験例9のガス検知素子を得た。
なお、金属酸化物層、有機吸着層を形成する度に水晶振動子の固有振動数をQCM(水晶天秤)によって測定したところ、1層当たりの金属酸化物層の厚さは3nmであり、有機吸着層の厚さは1.1nmと算出された。
【0087】
(アンモニアに対するガス検知素子の応答)
実験例6〜9のガス検知素子のガス応答性を各々測定した。まず、ガス検知素子をフローセル内に配置した後、フローセルに空気(ブランクガス)を1L/分で流し、水晶振動子の固有振動数の変化を測定し、これをガス検知素子のベースラインとした。
次いで、フローセルに空気(ブランクガス)を1L/分で20秒間流した後、各濃度(30ppmまで)のアンモニアガスをフローセルに1L/分で流し、水晶振動子の固有振動数の変化(ベースラインとの差)を測定した。この測定はフローセルを25℃に保って行った。
図22は実験例6〜9のガス検知素子において、フローセルにアンモニアガスを流入させて20秒後(試験開始から40秒後)の振動数変化とアンモニア濃度との関係を示した図である。
図22から、金属酸化物層が厚くなるにつれて(実験例6,7,8の順に)ガス検知素子の振動数変化が大きくなる傾向がみられ、金属酸化物層の厚さが3nmの実験例9のガス検知素子は、振動数変化が比較的小さいことがわかった。これは、金属酸化物層が厚くなるにつれ金属酸化物層内のガス分子の拡散時間が長くなり、この結果、応答時間が長くなり検知感度が低下する傾向がみられるものと推察している。このため、1層当たりの金属酸化物層の厚さは3nm未満、好ましくは0.1nm以上2nm以下が好適であると推察される。
【0088】
(実験例10)
ポリアクリル酸(シグマアルドリッチ製、重量平均分子量400000)の0.1wt%水溶液(30℃)に代えて、ポリアクリル酸の0.05wt%水溶液を用いた以外は実験例5と同様にして、表面処理層の上に、金属酸化物層が10層、ポリアクリル酸の有機吸着層が5層、ポリアリルアミン塩酸塩の有機吸着層が5層ずつ積層された実験例10のガス検知素子を得た。
なお、金属酸化物層、有機吸着層を形成する度に水晶振動子の固有振動数をQCM(水晶天秤)によって測定したところ、1層当たりの金属酸化物層の厚さは0.2nmであり、有機吸着層(ポリアクリル酸)の厚さは2nmであり、有機吸着層(ポリアリルアミン塩酸塩)の厚さは6nmであると算出された。
【0089】
(実験例11)
両面に金製の電極が形成された基準振動数9MHzの水晶振動子を基板として用いた。この基板をピラナ(H2SO4:H2O2=3:1)処理した後、メルカプトエタノールのエタノール溶液(10mmol/L)に12時間浸漬して基板及び電極を水酸基修飾した。エタノール及びイオン交換水で十分洗浄した後、窒素ガスを吹き付けて乾燥させ、基板及び両面の電極に水酸基を有する表面処理層を形成した。
次いで、ポリアクリル酸(シグマアルドリッチ製、重量平均分子量400000)の0.005wt%水溶液(30℃)に、表面処理層が形成された基板を20分間浸漬した。次いで、基板をイオン交換水に1分間浸漬して過剰吸着分を洗浄し窒素ガスで乾燥して、ポリアクリル酸の有機吸着層を形成した。
続いて、ポリアリルアミン塩酸塩(シグマアルドリッチ製、重量平均分子量70000)の0.01wt%水溶液(30℃)に、有機吸着層(ポリアクリル酸)が形成された基板を20分間浸漬した。次いで、基板をイオン交換水に1分間浸漬して過剰吸着分を洗浄し窒素ガスで乾燥して、有機吸着層(ポリアクリル酸)の表面にポリアリルアミン塩酸塩の有機吸着層を形成した。
同様の方法で、有機吸着層(ポリアクリル酸)、有機吸着層(ポリアリルアミン塩酸塩)を交互に繰り返し積層して、表面処理層の上に、ポリアクリル酸の有機吸着層が10層、ポリアリルアミン塩酸塩の有機吸着層が10層ずつ積層された実験例11のガス検知素子を得た。
なお、有機吸着層を形成する度に水晶振動子の固有振動数をQCM(水晶天秤)によって測定したところ、有機吸着層(ポリアクリル酸)は1層当たり7nm、有機吸着層(ポリアリルアミン塩酸塩)は1層当たり7nmの厚さであると算出された。
【0090】
(アンモニア及びホルムアルデヒドに対するガス検知素子の応答)
実験例10、11のガス検知素子のガス応答性を各々測定した。まず、ガス検知素子をフローセル内に配置した後、フローセルに空気(ブランクガス)を1L/分で流し、水晶振動子の固有振動数の変化を測定し、これをガス検知素子のベースラインとした。
次いで、フローセルに空気(ブランクガス)を1L/分で20秒間流した後、各濃度(40ppmまで)のアンモニアガスをフローセルに1L/分で流し、水晶振動子の固有振動数の変化(ベースラインとの差)を測定した。この測定はフローセルを25℃に保って行った。
また、フローセルに空気(ブランクガス)を1L/分で20秒間流した後、各濃度(20ppmまで)のホルムアルデヒドガスをフローセルに1L/分で流し、水晶振動子の固有振動数の変化(ベースラインとの差)を測定した。この測定はフローセルを25℃に保って行った。
図23は実験例10、11のガス検知素子において、フローセルにアンモニアガスを流入させて20秒後(試験開始から40秒後)の振動数変化とアンモニア濃度との関係を示した図であり、図24は実験例10、11のガス検知素子において、フローセルにホルムアルデヒドガスを流入させて20秒後(試験開始から40秒後)の振動数変化とホルムアルデヒド濃度との関係を示した図である。
図23及び図24から、有機吸着層の間に金属酸化物層を介在させた実験例10のガス検知素子のガス濃度と振動数変化との間には、強い正の相関がみられるのに対し、有機吸着層の間に金属酸化物層を介在させていない実験例11のガス検知素子では、ガス濃度が増加するにつれて振動数変化が小さくなる傾向がみられることが明らかである。これは、実験例11のガス検知素子では、有機吸着層間の官能基同士の強い結合により、ガス分子の吸着に寄与するフリーな官能基が少なくなるのに対し、実験例10のガス検知素子では、有機吸着層の層間に金属酸化物層が積層されているため、ガス分子の吸着に寄与するフリーな官能基が有効に存在するので、ガス濃度に対して振動数がリニアに変化すると推察される。
この結果から、有機吸着層の間に金属酸化物層を介在させた実験例10のガス検知素子は、その固有の振動数変化と関係付けることでガス濃度を決定でき、定量性に優れていることが明らかになった。
【0091】
(実験例12)
基準振動数が9MHzの水晶振動子を用いるのに代えて、両面に金製の電極が形成された基準振動数30MHzの水晶振動子を基板として用いた以外は、実験例1と同様にして、表面処理層の上に、金属酸化物層、有機吸着層が各々5層ずつ積層された実験例12のガス検知素子を得た。
なお、金属酸化物層、有機吸着層を形成する度に水晶振動子の固有振動数をQCM(水晶天秤)によって測定した結果、金属酸化物層、有機吸着層を各々5層ずつ積層した状態で、約10000Hzの振動数変化がみられた。ここで、実験例1のガス検知素子では、金属酸化物層、有機吸着層を各々5層ずつ積層した状態の振動数変化は235Hzだったことから、実験例12のガス検知素子の感度は、実験例1のガス検知素子と比較して、40倍以上であると推察された。
次に、実験例12と実験例1のガス検知素子のガス応答性を測定し比較した。まず、ガス検知素子を各々フローセル内に配置した後、フローセルに空気(ブランクガス)を1L/分で流し、水晶振動子の固有振動数の変化を測定し、これをガス検知素子のベースラインとした。
次いで、フローセルに空気(ブランクガス)を1L/分で20秒間流した後、50ppb、100ppb、500ppb、1ppmの各濃度のアンモニアガスをフローセルに1L/分で流し、水晶振動子の振動数に経時変化がみられなくなったときの振動数変化(ベースラインとの差)を測定した。この測定はフローセルを25℃に保って行った。
この結果、実験例12のガス検知素子の振動数変化は、50ppbのときが2Hz、100ppbのときが10Hz、500ppbのときが26Hz、1ppmのときが52Hzであったのに対し、実験例1のガス検知素子の振動数変化は500ppbのときが0.59Hz、1ppmのときが0.96Hzであり、50ppbと100ppbのときは変化がみられなかった。
以上のことから、基準振動数30MHzの水晶振動子を基板として用いた実験例12のガス検知素子は、金属酸化物層と有機吸着層の交互積層数がわずか5層であるにも関わらず、ガス検知感度が高く、ppbオーダーの希薄なアンモニアガスを検知することができるとともに、生産性に優れることが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、アンモニア,ピリジン等のアミン系ガス、硫化水素,メチルメルカプタン等の含硫ガス等の各種ガスのガス検知素子及びその製造方法に関し、短い応答時間でppbオーダーの低濃度のガスを検知することができるとともに、有機吸着膜と基板との結合力が強く耐久性に優れ、また種々の有機吸着層を基板に容易に固定化できるので有機吸着層の選択肢が広く、複数種の有機吸着層を組み合わせることもでき多くのガス種に応答を示し汎用性に優れるガス検知素子を提供でき、また層厚の薄い軽量の薄膜の有機吸着層を短時間で精度良く形成することができ、生産性に優れるとともに生産安定性に優れたガス検知素子の製造方法を提供することができる。
Claims (8)
- 基板と、前記基板に形成された官能基を有する表面処理層と、前記表面処理層の表面に形成された有機吸着層と、を備え、前記有機吸着層の表面に、第2結合層と第2有機吸着層の交互積層が1乃至複数回行われていることを特徴とするガス検知素子。
- 基板と、前記基板に形成された官能基を有する表面処理層と、前記表面処理層の表面に形成された第1結合層と、前記第1結合層の表面に形成された第1有機吸着層と、を備え、前記第1有機吸着層の表面に、第2結合層と第2有機吸着層の交互積層が1乃至複数回行われていることを特徴とするガス検知素子。
- 前記第1結合層,前記第2結合層が、3nm未満の厚さに形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のガス検知素子。
- 前記基板が、単結晶シリコン、窒化シリコン、圧電性結晶、圧電セラミックス、圧電性薄膜の内いずれか1種であることを特徴とする請求項1乃至3の内いずれか1に記載のガス検知素子。
- 基板に形成された官能基を有する表面処理層の表面に有機吸着層を形成する有機吸着層形成工程と、前記有機吸着層に蒸気状態の金属酸化物前駆体を接触させ前駆体吸着層を形成する前駆体吸着層形成工程と、前記前駆体吸着層を加水分解して金属酸化物層の第2結合層を形成する第2結合層形成工程と、前記第2結合層の表面に第2有機吸着層を形成する第2有機吸着層形成工程と、を備えていることを特徴とするガス検知素子の製造方法。
- 基板に形成された官能基を有する表面処理層に蒸気状態の金属酸化物前駆体を接触させ前記基板に金属酸化物前駆体吸着層を形成する金属酸化物前駆体吸着層形成工程と、前記金属酸化物前駆体吸着層を加水分解して金属酸化物層の第1結合層を形成する第1結合層形成工程と、前記第1結合層の表面に第1有機吸着層を形成する第1有機吸着層形成工程と、を備えていることを特徴とするガス検知素子の製造方法。
- 前記第1有機吸着層に蒸気状態の金属酸化物前駆体を接触させ前駆体吸着層を形成する前駆体吸着層形成工程と、前記前駆体吸着層を加水分解して金属酸化物層の第2結合層を形成する第2結合層形成工程と、前記第2結合層の表面に第2有機吸着層を形成する第2有機吸着層形成工程と、を備えていることを特徴とする請求項6に記載のガス検知素子の製造方法。
- 前記前駆体吸着層形成工程と前記第2結合層形成工程と前記第2有機吸着層形成工程との一群が繰り返し行われる繰り返し工程を備えていることを特徴とする請求項5又は7に記載のガス検知素子の製造方法。
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