JP5812419B2 - 芳香族ニトロ化合物検知センサーの製造方法、芳香族ニトロ化合物検知センサーおよびそれを用いた芳香族ニトロ化合物の検知方法 - Google Patents
芳香族ニトロ化合物検知センサーの製造方法、芳香族ニトロ化合物検知センサーおよびそれを用いた芳香族ニトロ化合物の検知方法 Download PDFInfo
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Description
本発明の請求項1に記載の芳香族ニトロ化合物検知センサーの製造方法は、チタニアブトキシドとポリスチレン又はポリチオフェンのポリマーとピレンモノマーまたはその誘導体とを混合して混合液を得る混合工程と、前記混合液を基板に塗布し、相分離により、チタニア層と前記チタニア層に挟み込まれ且つ前記ピレンモノマーまたはその誘導体を含有するポリマー層からなる3層構造を形成する層形成工程を有する方法である。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)親水性であるチタニアの層にポリスチレン又はポリチオフェンのポリマー層が挟まれているので、水中または空気中の親水性分子をすばやくポリマー層に伝えることができる。
(2)機能性分子のピレンモノマーまたはその誘導体を前記ポリマー層に含んでいるので、ピレンモノマーまたはその誘導体の変化により3層構造の膜が有する、光学的な性質が変化する。
(3)相分離を利用しているので、製造の工程が簡単であり、芳香族ニトロ化合物検知センサーを大量生産しやすい。
(4)機能性分子のピレンモノマーまたはその誘導体が蛍光色素であるので、検知できる性質の変化が肉眼でも見ることができる芳香族ニトロ化合物検知センサーを提供できる。
(5)芳香族ニトロ化合物の検知に必要なシステムがコンパクトにできるので、機動性に優れたものとなる。
(6)ピレンモノマーおよびその誘導体は芳香族ニトロ化合物との結合によって2量体と単量体との平衡が変化し、蛍光スペクトルが変化するので、より細かい芳香族ニトロ化合物の分析が可能となる。
本発明に用いる溶媒としては、例えば、クロロホルム、ベンゼン、トルエンが挙げられる。これらの中でも、前記成分の溶解性が優れるという観点から、クロロホルムが好ましい。
前記混合液中におけるポリマーの濃度は、モノマー換算で、50mM以上400mM以下であることが好ましく、100mM以上200mM以下であることがより好ましい。ポリマーの濃度が前記下限未満では、3層構造の膜となりにくい傾向にあり、他方、前記上限を超えると、3層構造の膜における親水性が不足する傾向にある。また、前記混合液中におけるポリマーの量は、モノマー換算で、前記チタニアブトキシド1モルに対して0.25モル以上4モル以下であることが好ましく、0.5モル以上2モル以下であることがより好ましい。ポリマーの量が前記下限未満では、3層構造の膜を形成しにくい傾向にあり、他方、前記上限を超えると、3層構造の膜を形成しにくい傾向にある。
前記混合液中における機能性分子の濃度は、0.1mM以上100mM以下であることが好ましく、0.5mM以上50mM以下であることがより好ましい。機能性分子の濃度が前記下限未満では、芳香族ニトロ化合物検知センサーの感度が不足する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、芳香族ニトロ化合物検知センサーのコストが高くなる傾向にある。
前記混合液中におけるポリマーの量は、モノマー換算で、前記チタニアブトキシド1モルに対して0.5モル以上4モル以下であることが好ましく、1モル以上2モル以下であることがより好ましい。ポリマーの量が前記下限未満では、芳香族ニトロ化合物検知センサーの感度が不足する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、芳香族ニトロ化合物検知センサーのコストが高くなる傾向にある。
すなわち、本発明においては、前記チタニアブトキシドと前記ポリスチレン又はポリチオフェンのポリマーとの相分離構造が形成されることにより、チタニアブトキシド層に挟み込まれたポリスチレン又はポリチオフェンのポリマー層からなる3層構造が形成される。前記ピレンモノマーまたはその誘導体は、通常疎水性が高いものであることから、3層構造のうち主としてポリマー層中に含有される。そして、前記チタニアブトキシドは湿気により加水分解してチタニアとなりチタニア層を形成する。
この構成により、請求項1で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)基板を取り除き、センサー膜単体で使用できるので、透過光を利用した芳香族ニトロ化合物検知センサーを得ることができる。
(2)基板がないので薄膜センサーとして、高い可塑性を有する芳香族ニトロ化合物検知センサーを得ることができる。
(3)その他基板への応用が可能であり、様々なデバイスの界面修飾が簡単で且つ大量生産が可能となる芳香族ニトロ化合物検知センサーを得ることができる。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)親水性であるチタニアの層にポリスチレン又はポリチオフェンのポリマー層が挟まれているので、水中または空気中の親水性分子をすばやくポリマー層に伝えることができる。
(2)芳香族ニトロ化合物の検知に必要なシステムがコンパクトにできるので、機動性に優れた芳香族ニトロ化合物検知センサーとすることができる。
(3)ピレンモノマーおよびその誘導体は芳香族ニトロ化合物との結合によって2量体と単量体との平衡が変化し、蛍光スペクトルが変化するので、より細かい芳香族ニトロ化合物の分析が可能となる。
(4)TiO 2 とのスピノーダル分解が可能で、ナノスケール構造の相分離構造を作製できる。
(5)TiO 2 等の無機材料とPS等の有機材料の混合比率によって、ドット状や紐状等の相分離構造をコントロールでき、サンドイッチ状の3層構造を持つ薄膜を作製できる。(6)TiO 2 /PSは表裏面がTiO 2 の親水性、膜内部がPSの疎水性であるため、疎水場にピレンモノマーまたはその誘導体を導入し、ピレンモノマーまたはその誘導体をプローブとして、芳香族ニトロ化合物の検知をすることができる。
この構成により、請求項3で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)センサー膜単体で使用できるので、透過光を利用した芳香族ニトロ化合物検知センサーとすることができる。
(2)基板がないので薄膜センサーとして、高い可塑性を有する芳香族ニトロ化合物検知センサーとすることができる。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)高感度な芳香族ニトロ化合物検知センサーで検知するので非常に高精度に芳香族ニトロ化合物を検知できる。
(2)蛍光変化によりニトロ化合物を検知するので、迅速に爆薬の存在を検知できる。
請求項1に記載の発明によれば、以下のような効果を有する。
(1)親水性であるチタニアの層にポリスチレン又はポリチオフェンのポリマー層が挟まれているので、水中または空気中の親水性分子をすばやくポリマー層に伝えることができる芳香族ニトロ化合物検知センサーを提供できる。
(2)ピレンモノマーまたはその誘導体を前記ポリマー層に含んでいるので、ピレンモノマーまたはその誘導体の変化により3層構造の膜が有する、光学的な性質が変化する芳香族ニトロ化合物検知センサーを提供できる。
(3)相分離を利用しているので、製造の工程が簡単であり、芳香族ニトロ化合物検知センサーを大量生産がしやすい。
(4)機能性分子のピレンモノマーまたはその誘導体が蛍光色素であるので、検知できる性質の変化が肉眼でも見ることができる芳香族ニトロ化合物検知センサーを提供できる。
(5)芳香族ニトロ化合物の検知に必要なシステムがコンパクトにできるので、機動性に優れた芳香族ニトロ化合物検知センサーを提供できる。
(6)ピレンモノマーおよびその誘導体は芳香族ニトロ化合物との結合によって2量体と単量体との平衡が変化し、蛍光スペクトルが変化するので、より細かい芳香族ニトロ化合物の分析が可能となる芳香族ニトロ化合物検知センサーを提供できる。
(1)基板を取り除き、センサー膜単体で使用できるので、透過光を利用した芳香族ニトロ化合物検知センサーを提供できる。
(2)基板がないので薄膜センサーとして、高い可塑性を有する芳香族ニトロ化合物検知センサーを提供できる。
(3)その他基板への応用が可能であり、様々なデバイスの界面修飾が簡単で且つ大量生産が可能となる芳香族ニトロ化合物検知センサーを提供できる。
(1)親水性であるチタニアの層にポリスチレン又はポリチオフェンのポリマー層が挟まれているので、水中または空気中の親水性分子をすばやくポリマー層に伝えることができる芳香族ニトロ化合物検知センサーを提供できる。
(2)ピレンモノマーまたはその誘導体を前記ポリマー層に含んでいるので、ピレンモノマーまたはその誘導体の変化により3層構造の膜が有する、光学的な性質が変化する芳香族ニトロ化合物検知センサーを提供できる。
(3)機能性分子のピレンモノマーまたはその誘導体が蛍光色素であるので、検知できる性質の変化が肉眼でも見ることができる芳香族ニトロ化合物検知センサーを提供できる。
(4)芳香族ニトロ化合物の検知に必要なシステムがコンパクトにできるので、機動性に優れた芳香族ニトロ化合物検知センサーを提供できる。
(5)ピレンモノマーおよびその誘導体は芳香族ニトロ化合物との結合によって2量体と単量体との平衡が変化し、蛍光スペクトルが変化するので、より細かい芳香族ニトロ化合物の分析が可能となる芳香族ニトロ化合物検知センサーを提供できる。
(6)TiO 2 とのスピノーダル分解が可能で、ナノスケール構造の相分離構造も提供できる。
(7)TiO 2 等の無機材料とPS等の有機材料の混合比率によって、ドット状や紐状等の相分離構造をコントロールでき、サンドイッチ状の3層構造を持つ薄膜を提供できる。(8)TiO 2 /PSは表裏面がTiO 2 の親水性、膜内部がPSの疎水性であるため、疎水場にピレンモノマーまたはその誘導体を導入し、ピレンモノマーまたはその誘導体をプローブとして、芳香族ニトロ化合物の検知を簡易迅速に行うことが可能な芳香族ニトロ化合物検知センサーを提供できる。
(2)基板がないので薄膜センサーとして、高い可塑性を有する芳香族ニトロ化合物検知センサーを提供できる。
(1)高感度な芳香族ニトロ化合物検知センサーで検知するので非常に高感度な芳香族ニトロ化合物の検知方法を提供できる。
(2)蛍光変化によりニトロ化合物を検知するので、迅速に爆薬の存在を検知できる芳香族ニトロ化合物の検知方法を提供できる。
(実施の形態1)
図1は本発明の芳香族ニトロ化合物検知センサーの製造方法における層形成工程の一実施形態を示す工程概略図である。図1(A)は基板上に混合液を塗布した直後の状態を示しており、図1(B)はスピンコート法により混合液中の溶媒が除去されている状態を示しており、図1(C)はチタニアブトキシドが湿気により加水分解することによりチタニア層となっている状態を示している。
(1)親水性であるチタニアの層にポリスチレンのポリマー層が挟まれているので、水中または空気中の親水性分子をすばやくポリマー層に伝えることができる。
(2)ピレンモノマーまたはその誘導体を前記ポリマー層に含んでいるので、ピレンモノマーまたはその誘導体の変化により3層構造の膜が有する、光学的な性質が変化する。
(3)相分離を利用しているので、製造の工程が簡単であり、芳香族ニトロ化合物検知センサーを大量生産がしやすい。
本発明の実施の形態2は、実施の形態1の芳香族ニトロ化合物検知センサーの製造方法において、前記基板を取り去ることで、前記チタニア層に挟み込まれた前記ポリマー層からなる3層構造を持つ自立膜とする基板除去工程を有している。
実施の形態2においては、先ず、前記基板に犠牲層を設けておくことが好ましい。犠牲層としては、例えば、ポリ(4−ビニルフェノール)層(PVP層)、ポリ(4−スチレンスルホン酸ナトリウム)層(PSS層)が挙げられる。
次いで、実施の形態1と同様にして層形成工程を行い、その後、前記基板を取り去ることで、前記チタニア層に挟み込まれた前記ポリマー層からなる3層構造を持つ自立膜とする基板除去工程を行う。このような基板除去工程において犠牲層を除去する方法としては、犠牲層を溶解させることが可能な溶媒を用いて犠牲層を除去する方法を採用することができ、例えば、犠牲層としてPVPを用いる場合には溶媒としてエタノールを用いることができ、犠牲層としてPSSを用いる場合には溶媒として水を用いることができる。
(1)基板を取り除き、センサー膜単体で使用できるので、透過光を利用した芳香族ニトロ化合物検知センサーを得ることができる。
(2)基板がないので薄膜センサーとして、高い可塑性を有する芳香族ニトロ化合物検知センサーを得ることができる。
(3)その他基板への応用が可能であり、様々なデバイスの界面修飾が簡単で且つ大量生産が可能となる芳香族ニトロ化合物検知センサーを得ることができる。
動的光散乱法(DLS)による粒子径測定装置(Sysmex社製、Zetasizer Nano−ZS)を用いて、温度25℃の条件下にて粒子径の測定を行った。
(ii)表面観察または断面観察
薄膜の表面形態や断面構造は、走査型電子顕微鏡(SEM、Hitachi社製、「S−5200 Field emission microscope」)、原子間力顕微鏡(AFM、日本電子社製、「Scanning probe microscope JSPM−5200」、測定モード:ノンコンタクトモード)、または、透過型電子顕微鏡(TEM、日本電子社製、「JEOL JEM 3010」、加速電圧:200kV)を用いて観察した。
(iii)紫外可視吸収スペクトル
紫外可視吸収スペクトル測定装置(日本分光社製、「UV/VIS/NIR spectrometer V−570」、励起側スリット幅:2.5nm、検出器側スリット幅:5.0nm)を用いて測定した。
(iv)表面接触角
表面接触角測定装置(KYOWA INTERFACE SCIECE社製、「DROP Master 100」)を用いて測定した。
(v)蛍光強度および蛍光スペクトル
分光蛍光光度計(HITACHI社製、「F−4500 Fluorescence Spectrometer」、励起側スリット幅:2.5nm、検出器側スリット幅:5.0nm)を用いて測定した。
(1)混合液の作製(混合工程)
ポリマーとしてポリスチレン(PS、Aldrich社製、重量平均分子量(Mw):280,000g mol-1)、チタニアブトキシド(Ti(OnBu)4、Kanto Chemicals社製)および機能性分子としてピレン(Aldrich社製)をそれぞれ溶媒のクロロホルムに溶解させてポリスチレン溶液、チタニアブトキシド溶液およびピレン溶液を調製した。
そして、これらの溶液およびクロロホルムを用いて、混合液中のTi(OnBu)4濃度、PS濃度およびPyrene濃度(Ti(OnBu)4濃度/PS濃度/Pyrene濃度)がそれぞれ以下に示すようになるように、混合して混合液を得た。なお、PS濃度については、モノマー換算の濃度である。
実施例1:100mM/100mM/1mM
実施例2:50mM/100mM/1mM
実施例3:100mM/200mM/1mM
比較例1:0mM/100mM/1mM
ポリビニルアルコール(PVA、Polysciences社製、ケン化度:98mol%、Mw:78,000g mol-1)の0.5質量%水溶液を調製した。そして、シリコンウエハ基板(サイズ:2.5cm×2.5cm)の表面上に、スピンコート法により、塗布量を64μL/cm2とし、回転数を3000rpmとし、展開時間を1分間として、PVA水溶液を塗布した。このようにして、基板の表面上にPVA層を形成した。
時間を1分間として、混合工程で得られた混合液を塗布した。その後、蒸留水中に1分間浸漬することにより、チタニアブトキシドを加水分解させて、芳香族ニトロ化合物検知センサーを得た。実施例1で得られた芳香族ニトロ化合物検知センサーの断面を示すSEM像を図4に示す。
実施例1で得られた芳香族ニトロ化合物検知センサーに対し、100ppmの2,4−DNT水溶液を滴下すると共に254nmの紫外光を照射して、蛍光の消光の状態を観察した。得られた結果を図5に示す。図5に示す結果からも明らかなように、実施例1で得られた芳香族ニトロ化合物検知センサーにおける蛍光の消光は肉眼ではっきりと見ることができることが確認された。このように、実施例1で得られた芳香族ニトロ化合物検知センサーは、紫外光の照射を行うと蛍光を発し、爆薬分子の吸着を行うと蛍光が消光することが確認された。
実施例1で得られた芳香族ニトロ化合物検知センサーに対し340nmの紫外光を照射した後に、100ppmの2,4−DNT水溶液中に浸漬した。そして、浸漬前、並びに浸漬後1分間、2分間、5分間、10分間、20分間、30分間および60分間経過後における蛍光スペクトルを測定した。得られた結果を図6に示す。図6に示す結果からも明らかなように、実施例1で得られた芳香族ニトロ化合物検知センサーに2,4−DNTを吸着させた場合には、2分間で吸着前の半分程度まで蛍光強度が減少し、10分間で吸着前の20%程度まで蛍光強度が減少することが確認された。
実施例1〜3および比較例1で得られた芳香族ニトロ化合物検知センサーに対し、それぞれ340nmの紫外光を照射した後に、100ppmの2,4−DNT水溶液中に浸漬した。そして、浸漬前、並びに浸漬後1分間、2分間、5分間、10分間、20分間および30分間経過後における蛍光スペクトルを測定した。得られた結果のうち、30分間経過後における蛍光スペクトルを図7に示す。図7に示す結果からも明らかなように、実施例1〜3で得られた芳香族ニトロ化合物検知センサーは、比較例1で得られた芳香族ニトロ化合物検知センサーと比較して消光の程度が大きいことが確認された。
実施例1で得られた芳香族ニトロ化合物検知センサーに対し、それぞれ340nmの紫外光を照射した後に、100ppm、1ppm、10ppb、100pptおよび1pptの2,4−DNT水溶液中、並びに比較用の水に浸漬した。そして、浸漬前、並びに浸漬後1分間、2分間、5分間、10分間、20分間および30分間経過後における、波長395nmにおける蛍光強度を測定した。そして、波長395nmにおける浸漬前の蛍光強度I0と浸漬後
処置時間経過後の蛍光強度IXを求め、その比率(蛍光消光値:IX/I0)(単位:%)を求めた。得られた結果を図9に示す。図9に示す結果からも明らかなように、実施例1で得られた芳香族ニトロ化合物検知センサーを用いれば、2,4−DNTの濃度が1pptと非常に低い場合にも検知でき、またその消光反応は2分間以内に完了していることが確認された。
実施例1で得られた芳香族ニトロ化合物検知センサーに対し、340nmの紫外光を照射した後に、50ppmのジメチルジニトロブタン(DMNB)水溶液中に浸漬した。そして、浸漬前、並びに浸漬後1分間、2分間、5分間、10分間、20分間および30分間経過後における蛍光スペクトルを測定した。得られた結果を図12に示す。
(1)混合液の作製(混合工程)
ポリスチレン(PS、Aldrich社製、重量平均分子量(Mw):280,000g mol-1)、チタニアブトキシド(Ti(OnBu)4、Kanto Chemicals社製)およびピレン(Aldrich社製)をそれぞれクロロホルムに溶解させてポリスチレン溶液、チタニアブトキシド溶液およびピレン溶液を調製した。
そして、これらの溶液およびクロロホルムを用いて、混合液中のTi(OnBu)4濃度、PS濃度およびPyrene濃度(Ti(OnBu)4濃度/PS濃度/Pyrene濃度)がそれぞれ以下に示すようになるように、混合して混合液を得た。なお、PS濃度については、モノマー換算の濃度である。
実施例4:100mM/100mM/1mM
実施例5:100mM/100mM/2.5mM
実施例6:100mM/100mM/5mM
実施例7:100mM/100mM/10mM
実施例8:100mM/100mM/20mM
実施例9:100mM/100mM/30mM
実施例10:100mM/100mM/40mM
実施例11:100mM/100mM/50mM
比較例2:100mM/0mM/50mM
比較例3:0mM/100mM/50mM
ポリビニルアルコール(PVA、Polysciences社製、ケン化度:98mol%、Mw:78,000g mol-1)の0.5質量%水溶液を調製した。そして、シリコンウエハ基板(サイズ:2.5cm×2.5cm)の表面上に、スピンコート法により、塗布量を64μL/cm2とし、回転数を3000rpmとし、展開時間を1分間として、PVA水溶液を塗布した。このようにして、基板の表面上にPVA層を形成した。
その後、ポリ(4−ビニルフェノール)(PVP、Aldrich社製、重量平均分子量(Mw):8,000g mol-1)の200g/Lエタノール溶液を調製した。そして、PVA層が形成された基板のPVA層側の表面上に、スピンコート法により、塗布量を64μL/cm2とし、回転数を3000rpmとし、展開時間を1分間として、PV
Pエタノール溶液を塗布した。このようにして、基板の表面上にPVA層およびPVP層を形成した。
実施例4〜11および比較例2〜3で得られた芳香族ニトロ化合物検知センサーに対し340nmの紫外光を照射した場合の蛍光スペクトルを測定した。得られた結果を図15に示す。
実施例9で得られた芳香族ニトロ化合物検知センサーに対し340nmの紫外光を照射した後に、水中に浸漬した。そして、浸漬前、並びに浸漬後60分間、120分間および180分間経過後における蛍光スペクトルを測定した。得られた結果を図17に示す。図17に示す結果からも明らかなように、浸漬したときの蛍光スペクトルの経時変化であるが、エキシマー発光の減少とモノマー発光の増加が見られることが確認された。この理由については必ずしも明らかではないが、図18に示す現象によるものと推察される。すなわち、チタニアブトキシドの加水分解によってアモルファス状態のチタニアは、膜中に存在する未反応のアルコキシド成分の反応が促進され、チタニアの結晶度が増す。チタニアは電子吸引性の物質なのでピレンのもっている豊富な電子を奪い蛍光の消光を引き起こす。そして、電子の多いエキシマー発光の方が優先的にチタニアの影響を受けて電子が奪われるため、ダイマーからモノマーに分解し、結果としてモノマー発光の増加が起こったものと推察される。
図17および図19に示す結果から、波長395nm(ピレンのモノマー発光)における蛍光強度変化および波長470nm(ピレンのエキシマー発光)における蛍光強度変化と浸漬時間との関係をグラフに示した。得られた結果を図20に示す。図20に示す結果からも明らかなように、TNT濃度を10倍とした時も応答挙動が見られ、濃度依存性があることが確認された。また、TNTの吸着による消光反応は1〜10pptでほぼ完了していた。さらに、図18で表した現象によるものかは不明であるが、エキシマー発光の消光に伴って、モノマー発光の発光強度が倍近く上昇していていることが確認された。
図17、図19および図21に示す結果から、波長395nm(ピレンのモノマー発光)における蛍光強度変化および波長470nm(ピレンのエキシマー発光)における蛍光強度変化と浸漬時間との関係をグラフに示した。得られた結果を図22に示す。図22に示す結果からも明らかなように、TNTと比較して2,4−DNTは100pptでも反応は完了しておらず、10ppqの反応スピードも遅いことが確認された。また、2,4−DNTについては、TNTと比較してモノマー発光に関する蛍光強度変化の値が半分ほどであることから、芳香族ニトロ化合物検知センサーにはニトロ基の数の違いで分子選択性があることが確認された。
実施例9で得られた芳香族ニトロ化合物検知センサーについて空気中における検知試験を行った。すなわち、図24に示すように、コットン(Osaki社製、「滅菌パール綿状S」、滅菌済み)に検体を500μL染み込ませ、50mlのサンプル瓶に入れてふたをして温度25℃に保持しながら30分間安定させた。その後、実施例9で得られた芳香族ニトロ化合物検知センサーを積層している基板をそのサンプル瓶に入れ検体ガスの吸着を行った。そして、投入前、並びに投入後1分間、5分間、10分間、20分間および30分間経過後における蛍光スペクトルを測定した。検体としては20ppmのTNT水溶液を用いた場合の結果を図25に示す。また、検体としては水を用いた場合の結果を図26に示す。
(1)塗布用溶液の作製
ポリスチレン(PS、Aldrich社製、重量平均分子量(Mw):280,000g mol-1)およびチタニアブトキシド(Ti(OnBu)4、Kanto Chemicals社製)をそれぞれクロロホルムに溶解させてポリスチレン溶液およびチタニアブトキシド溶液を調製した。
そして、これらの溶液およびクロロホルムを用いて、塗布用溶液中のTi(OnBu)4濃度およびPS濃度(Ti(OnBu)4濃度/PS濃度)がそれぞれ以下に示すようになるように、混合して塗布用溶液を得た。なお、PS濃度については、モノマー換算の濃度である。
試験例1:0mM/100mM
試験例2:100mM/0mM
試験例3:100mM/5mM
試験例4:100mM/10mM
試験例5:100mM/15mM
試験例6:100mM/20mM
試験例7:100mM/25mM
試験例8:100mM/30mM
試験例9:100mM/40mM
試験例10:100mM/50mM
試験例11:100mM/60mM
試験例12:100mM/70mM
試験例13:100mM/80mM
試験例14:100mM/90mM
試験例15:100mM/100mM
ポリビニルアルコール(PVA、Polysciences社製、ケン化度:98mol%、Mw:78,000g mol-1)の0.5質量%水溶液を調製した。そして、シリコンウエハ基板(サイズ:2.5cm×2.5cm)の表面上に、スピンコート法により、塗布量を64μL/cm2とし、回転数を3000rpmとし、展開時間を1分間として、PVA水溶液を塗布した。このようにして、基板の表面上にPVA層を形成した。
試験例1〜4、6〜10および15に用いた塗布用溶液中について、DLS測定により粒子径を測定し、粒子径分布曲線を作成した。得られた結果を図29に示す。図29に示す結果からも明らかなように、チタニアブトキシド中に少しの比率でもポリスチレンが存在すると、ポリスチレン単独では4〜5nmの粒子径分布であるのに対し、8〜13nmの粒子が溶液中で形成されることが確認された。従って、相分離は溶液中で既に起こっていることが確認された。
(i)シリコンウエハ基板、(ii)試験例1で得られた薄膜(ポリスチレン薄膜)、(iii)試験例2で得られた薄膜(チタニア薄膜)、(iv)〜(viii)試験例3〜7で得られた薄膜(Ti(OnBu)4濃度/PS濃度=100mM/5〜25mM)、(ix)試験例10で得られた薄膜(Ti(OnBu)4濃度/PS濃度=100mM/50mM)および(x)試験例10で得られた薄膜(Ti(OnBu)4濃度/PS濃度=100mM/100mM)について、AFMおよびSEMを用いて表面観察を行った。得られた結果を図30に示す。なお、図30において、左側の表面像がAFM像であり、右側の表面像がSEM像であり、またSEM像のスケールは1μmを表す。
試験例2〜3で得られた薄膜について、TEMを用いて観察を行った。図31および図33にそれぞれ試験例3で得られた薄膜のTEM像を示す。図32に試験例3で得られた薄膜の断面のTEM像を示す。図34に試験例2で得られた薄膜のTEM像を示す。図33および図34を比較すると、試験例2で得られたチタニア膜は平滑で均一な薄膜であるが、試験例3で得られた薄膜(Ti(OnBu)4濃度/PS濃度=100mM/5mM)はSEM像やAFM像で観察されたものと同様の形状の球状の凝集体が見られる。そして、凝集物以外の膜の形状はチタニア膜と同じであることから、凝集体はポリスチレンで構成されていることが確認された。また、図32に示す試験例3で得られた薄膜の断面形状を確認すると、基板のすぐ上に厚みが17nmの薄膜があり、幅30〜100nm、高さ30〜40nmの島状の構造体となっていることが確認された。従って、ポリスチレン凝集体はチタニア層の上または、埋め込まれた形で存在していると推察される。
試験例2〜6および8〜15で得られた薄膜の紫外可視吸収スペクトルを測定した。得られた結果を図35に示す。また、チタニアブトキシドを加水分解し、ゲル化するとアモルファスなチタニアになるが、その場合、波長260nmをピークトップに吸収を有するので、波長260nmの紫外可視吸収とポリスチレンの量との関係を示すグラフを作成した。得られた結果を図36に示す。図35および図36に示す結果からも明らかなように、チタニアブトキシド濃度が一定にも関わらず、波長260nmの吸収がポリスチレン濃度とともに増加している。特に、ポリスチレン濃度が0〜30mMにおいてチタニア吸収の増加は顕著である。ポリスチレン濃度が0mMの場合に比べると、30mMの場合は吸収が1.5倍高くなっている。また、30〜100mMのポリスチレン濃度では、チタニア吸収がほぼ一定の値であった。ポリスチレン濃度が0〜30mMの場合、構造変化に伴い、チタニアが表面にもう1つの層を形成し、ポリスチレン濃度が30mMを超える場合、表面をほとんど覆ってしまうようになるためにチタニア吸収がほとんど変化しなかったもの推察される。従って、チタニアはPVA層の水酸基や水分残渣と反応してPVAのすぐ上に層を形成するが、ポリスチレンがチタニア層の上で比率増加に伴った相分離構造を形成するときに、ポリスチレンの周りを覆うようにしてチタニア層が形成されるものと推察される。
試験例2〜15で得られた薄膜の表面接触角を測定した。得られた結果を図37に示す。試験例1で得られた薄膜(ポリスチレン薄膜)に水を接触させた状態を図38に示す。また、試験例12で得られた薄膜(Ti(OnBu)4濃度/PS濃度=100mM/70mM)に水を接触させた状態を図39に示す。図37〜図39に示す結果からも明らかなように、試験例2〜15で得られた薄膜は親水的であることから、試験例2〜15で得られた薄膜においてはポリスチレンの周りを覆うようにしてチタニア層が形成されているものと推察される。
(1)塗布用溶液の作製
ポリスチレン(PS、Aldrich社製、重量平均分子量(Mw):280,000g mol-1)およびチタニアブトキシド(Ti(OnBu)4、Kanto Chemicals社製)をそれぞれクロロホルムに溶解させてポリスチレン溶液およびチタニアブトキシド溶液を調製した。
そして、これらの溶液およびクロロホルムを用いて、塗布用溶液中のTi(OnBu)4濃度およびPS濃度(Ti(OnBu)4濃度/PS濃度)がそれぞれ以下に示すようになるように、混合して塗布用溶液を得た。なお、PS濃度については、モノマー換算の濃度である。
試験例16:100mM/100mM
試験例17:50mM/100mM
試験例18:25mM/100mM
試験例19:0mM/100mM
ポリビニルアルコール(PVA、Polysciences社製、ケン化度:98mol%、Mw:78,000g mol-1)の0.5質量%水溶液を調製した。そして、シリコンウエハ基板(サイズ:2.5cm×2.5cm)の表面上に、スピンコート法により、塗布量を64μL/cm2とし、回転数を3000rpmとし、展開時間を1分間として、PVA水溶液を塗布した。このようにして、基板の表面上にPVA層を形成した。
試験例16〜19で得られた薄膜の断面をSEMにて観察した。図40〜図43に試験例16〜19で得られた薄膜の断面のSEM像をそれぞれ示す。図40〜図43に示す結果からも明らかなように、ポリスチレン濃度100mMに対してチタニアブトキシド濃度が25mMである場合には、薄膜が3層構造をとらないことが確認された。従って、チタニアブトキシド1モルに対するポリスチレンの量は、モノマー換算で、4モル未満であることが好ましい。
Claims (5)
- チタニアブトキシドとポリスチレン又はポリチオフェンのポリマーとピレンモノマーまたはその誘導体とを混合して混合液を得る混合工程と、前記混合液を基板に塗布し、相分離により、チタニア層と前記チタニア層に挟み込まれ且つ前記ピレンモノマーまたはその誘導体を含有するポリマー層からなる3層構造を形成する層形成工程を有することを特徴とする芳香族ニトロ化合物検知センサーの製造方法。
- 前記基板を取り去ることで、前記チタニア層に挟み込まれた前記ポリマー層からなる3層構造を持つ自立膜とする基板除去工程を有することを特徴とする請求項1に記載の芳香族ニトロ化合物検知センサーの製造方法。
- 基板の上にチタニア層に挟み込まれ且つピレンモノマーまたはその誘導体を含有するポリスチレン又はポリチオフェンのポリマー層からなる3層構造の膜を有することを特徴とする芳香族ニトロ化合物検知センサー。
- チタニア層に挟み込まれ且つピレンモノマーまたはその誘導体を含有するポリスチレン又はポリチオフェンのポリマー層からなる3層構造の膜からなることを特徴とする芳香族ニトロ化合物検知センサー。
- 請求項1又は2で記載された方法で製造された芳香族ニトロ化合物検知センサー若しくは請求項3又は4で記載された芳香族ニトロ化合物検知センサーの蛍光変化によって、芳香族ニトロ化合物の存在を検知することを特徴とする芳香族ニトロ化合物の検知方法。
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