JP4562841B2 - 難燃ポリアミド樹脂組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は難燃性ポリアミド樹脂組成物に関する。更に詳細には、電気・電子分野のコネクター等の部品、自動車分野の電装部品等の部品の材料として、好適に用いられる難燃性ポリアミド樹脂組成物に関するものであり、成形品が低ソリであり、剛性、強度、耐熱性などの機械物性に優れ、かつ難燃性に優れるポリアミド樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリアミド樹脂は、その成形体が優れた機械的特性、耐熱性、耐薬品性を有し、また自己消化性という特性を有することから、各種ポリアミド樹脂と難燃剤とを配合した難燃性ポリアミド樹脂組成物が、従来より自動車部品、電気電子部品、工業機械部品などの各種部品に広く利用されている。例えば、ポリアミド樹脂、あるいはガラス繊維などで強化したポリアミド樹脂に、難燃剤を配合した難燃性ポリアミド樹脂組成物が、プリント積層板やコネクター用途などの電気・電子部品用途に使われてきた。
【0003】
難燃性ポリアミド樹脂組成物としては、より具体的には、例えば、ポリアミド樹脂と塩素置換多環式化合物を配合した組成物(特開昭48−29846号公報)が開示されている。また、ポリアミド樹脂に臭素系難燃剤を配合した難燃性ポリアミド樹脂組成物が多く提案されている。例えば、デカブロモジフェニルエーテルの配合(特開昭47−7143号公報)、臭素化ポリスチレンの配合(特開昭51−47044号公報や特開平4−175371号公報)、臭素化ポリフェニレンエーテルの配合(特開昭54−116054号公報)、臭素化架橋芳香族重合体の配合(特開昭63−317552号公報)、臭素化スチレン−無水マレイン酸共重合体の配合(特開平3−168246号公報)などが開示されている。
【0004】
しかしながら、剛性、強度、耐熱性などを高める目的で、ガラス繊維などで強化したポリアミド樹脂に、前記ハロゲン系難燃剤を配合した場合には、その成形体のソリが大きいなどの問題点があった。この問題点を解消するために、特開平8−269322号公報では、ポリアミド樹脂、膨潤性フッ素雲母、および臭素系難燃剤からなる難燃性ポリアミド樹脂組成物が開示されているが、ソリの改良効果は十分でない。すなわち、成形品が低ソリであり、剛性、強度、耐熱性などの機械特性に優れ、かつ高度な難燃性を有する難燃性ポリアミド樹脂組成物の開発が強く望まれていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、その成形体が低ソリであり、剛性、強度、耐熱性などの機械特性に優れ、かつ難燃性に優れるポリアミド樹脂組成物を提供することである。
【0006】
すなわち本発明は、
(1)ポリアミド形成成分と、リンに対する金属元素のモル比が1.5〜2.0であるリン酸系金属化合物と非リン酸系金属化合物との混合物からなり、平均粒子径にして0.001〜10μmであるアパタイト型化合物形成成分とを配合し、ポリアミドの重合反応およびアパタイト型化合物の合成反応を進行させて得られるポリアミド複合体であって、該アパタイト型化合物が、アパタイト型化合物100重量部に対して0.5〜100重量部のフェノールに不溶な有機物を含有するアパタイト型化合物である該ポリアミド複合体に、臭素系難燃剤を配合してなるポリアミド樹脂組成物、
(2)(C)臭素系難燃剤が臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ビスフェノール型エポキシ系重合体および臭素系架橋芳香族重合体からなる化合物類から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記1記載のポリアミド樹脂組成物、
(3)アパタイト型化合物が、平均粒子径にして0.001〜1μmであることを特徴とする上記1あるいは2記載のポリアミド樹脂組成物。
(4)(A)ポリアミド100重量部に対して、(B)アパタイト型化合物0.5〜300重量部、(C)臭素系難燃剤1〜300重量部であることを特徴とする上記1〜3いずれか一項に記載のポリアミド樹脂組成物、
である。以下、本発明について詳細に説明する。
【0009】
本発明は、ポリアミド樹脂とアパタイト型化合物とからなるポリアミド樹脂複合体に臭素系難燃剤を配合した難燃性ポリアミド樹脂組成物に係る。
本発明におけるポリアミドは、主鎖中にアミド結合(−NHCO−)を有する重合体でよい。
【0010】
本発明において好ましく用いるポリアミドは、ポリカプロラクタム(ナイロン6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリウンデカメチレンアジパミド(ナイロン116)、ポリウンデカラクタム(ナイロン11)、
【0011】
ポリドデカラクタム(ナイロン12)、ポリトリメチルヘキサメチレンテレフタルアミド(ナイロンTMHT)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ナイロン6I)、ポリノナンメチレンテレフタルアミド(9T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(6T)、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ナイロンPACM12)、ポリビス(3−メチル−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ナイロンジメチルPACM12)、
【0012】
ポリメタキシリレンアジパミド(ナイロンMXD6)、ポリウンデカメチレンヘキサヒドロテレフタルアミド(ナイロン11T(H))、およびこれらのうち少なくとも2種の異なったポリアミド成分を含むポリアミド共重合体、およびこれらの混合物などである。これらのポリアミドのうち、本発明課題を達成するのにより好ましいポリアミドは、ポリカプロラクタム(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ナイロン6I)、およびこれらのうち少なくとも2種の異なったポリアミド成分を含むポリアミド共重合体、およびこれらの混合物などである。
【0013】
更に、本発明においては、前記ポリアミドと他の樹脂とを混合して得られるポリアミド樹脂も用いることができる。この場合のポリアミド樹脂中のポリアミドの含有量は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、最も好ましくは70重量%以上である。ポリアミド樹脂中のポリアミドの含有量が50重量%未満の場合には、本発明の改良効果が顕著でない場合がある。
ポリアミドに配合する他の樹脂としては、熱可塑性樹脂やゴム成分を添加することができる。
【0014】
他の熱可塑性樹脂は、例えばアタクチックポリスチレン、アイソタクチックポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂などのポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなどのポリエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド、ポリオキシメチレンなどの縮合系樹脂、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレンープロピレン共重合体などのポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどの含ハロゲンビニル化合物系樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂などを挙げることができる。
【0015】
ゴム成分は、ゴムやそれらの変性体を挙げることができる。ゴムは、例えば天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ネオプレン、ポリスルフィドゴム、チオコールゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、エビクロロヒドリンゴム、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBR)、水素添加スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SEB)、
【0016】
スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、水素添加スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−イソプレンブロック共重合体(SIR)、水素添加スチレン−イソプレンブロック共重合体(SEP)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、水素添加スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、
【0017】
スチレン−ブタジエンランダム共重合体、水素添加スチレン−ブタジエンランダム共重合体、スチレン−エチレン−プロピレンランダム共重合体、スチレン−エチレン−ブチレンランダム共重合体、エチレン−プロピレン共重合体(EPR)、エチレン−(1−ブテン)共重合体、エチレン−(1−ヘキセン)共重合体、エチレン−(1−オクテン)共重合体、
【0018】
エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、あるいはブタジエン−アクリロニトリル−スチレン−コアシェルゴム(ABS)、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン−コアシェルゴム(MBS)、メチルメタクリレート−ブチルアクリレート−スチレン−コアシェルゴム(MAS)、オクチルアクリレート−ブタジエン−スチレン−コアシェルゴム(MABS)、
【0019】
アルキルアクリレート−ブタジエン−アクリロニトリル−スチレンコアシェルゴム(AABS)、ブタジエン−スチレン−コアシェルゴム(SBR)、メチルメタクリレート−ブチルアクリレートシロキサンをはじめとするシロキサン含有コアシェルゴムなどのコアシェルタイプを挙げることができる。また、ゴム変性体は、上記ゴムを、極性基を有する変性剤により変性したものであり、例えば無水マレイン酸変性SEBS、無水マレイン酸変性SEPS、無水マレイン酸変性エチレン−プロピレン共重合体、無水マレイン酸変性エチレン−(1−ブテン)共重合体、無水マレイン酸変性エチレン−(1−ヘキセン)共重合体、無水マレイン酸変性エチレン−(1−オクテン)共重合体、
【0020】
無水マレイン酸変性EPDM、エポキシ変性SEBS、エポキシ変性エチレン−プロピレン共重合体、エポキシ変性エチレン−(1−ブテン)共重合体、エポキシ変性エチレン−(1−ヘキセン)共重合体、エポキシ変性エチレン−(1−オクテン)共重合体などが好ましく用いられる。本発明では、ポリアミドに、上記熱可塑性樹脂、ゴム成分を1種類配合して用いても良いし、2種類以上組み合わせて配合して用いても良い。
【0021】
前記ポリアミド形成成分(原料)としては、重合可能なアミノ酸、重合可能なラクタム、あるいは重合可能なジアミン・ジカルボン酸塩、および重合可能な前記化合物のオリゴマーを挙げることができる。
重合可能なアミノ酸としては、例えば6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸をより具体的に挙げることができる。本発明では、これらの重合可能なアミノ酸を1種で用いても良いし、2種類以上組み合わせて用いても良い。
【0022】
重合可能なラクタムとしては、例えばブチルラクタム、ピバロラクタム、カプロラクタム、カプリルラクタム、エナントラクタム、ウンデカノラクタム、ドデカノラクタムなどをより具体的に挙げることができる。本発明では、これらの重合可能なラクタムを1種で用いても良いし、2種類以上組み合わせて用いても良い。
【0023】
重合可能なジアミン・ジカルボン酸塩のジアミンとしては、例えばテトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ノナンメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、2,4−ジメチルオクタメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、
【0024】
1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、3,8−ビス(アミノメチル)トリシクロデカン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5,−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジンなどを挙げることができる。本発明では、これらの重合可能なジアミンを1種で用いても良いし、2種類以上組み合わせて用いても良い。
【0025】
重合可能なジアミン・ジカルボン酸塩のジカルボン酸としては、例えばマロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、2,2−ジメチルグルタル酸、3,3−ジエチルコハク酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸、ドデカン二酸、エイコジオン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、
2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ジグリコール酸などを挙げることができる。本発明では、これらの重合可能なジカルボン酸は1種で用いても良いし、2種類以上組み合わせて用いても良い。
【0026】
本発明のポリアミド形成成分(原料)には、さらに分子量調節あるいは耐熱水性向上のために公知の末端封止剤を添加することができる。末端封止剤としては、モノカルボン酸またはモノアミンが好ましい。その他、無水フタル酸などの酸無水物、モノイソシアネート、モノ酸ハロゲン化物、モノエステル類、モノアルコール類などを挙げることができる。
【0027】
末端封止剤として使用できるモノカルボン酸としては、アミノ基との反応性を有するものであれば特に制限はないが、例えば酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、イソブチル酸などの脂肪族モノカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸などの脂環式モノカルボン酸、安息香酸、トルイル酸、α−ナフタレンカルボン酸、β−ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、フェニル酢酸などの芳香族モノカルボン酸などを挙げることができる。本発明では、これらのモノカルボン酸を1種で用いても良いし、2種類以上組み合わせて用いても良い。
【0028】
末端封止剤として使用するモノアミンとしては、カルボキシル基との反応性を有するものであれば特に制限はないが、例えばメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミンなどの脂肪族モノアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミンなどの脂環式モノアミン、アニリン、トルイジン、ジフェニルアミン、ナフチルアミンなどの芳香族モノアミンなどを挙げることができる。本発明では、これらのモノアミンを1種で用いても良いし、2種類以上組み合わせて用いても良い。
【0029】
本発明のポリアミドの分子量は、成形性および物性がより優れていることから、重量平均分子量(Mw)にして、1万〜100万であることが好ましく、更には2万〜50万、最も好ましくは3万〜20万のものである。重量平均分子量は、例えば、溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)を用い、分子量標準試料としてポリメタクリル酸メチル(PMMA)を用いて、ゲルパーミッショクロマトグラフィー(GPC)により求めることができる。
本発明で好ましく用いられるアパタイト型化合物は、下記一般式で示される。
(A)10−z(HPO(PO6−z(X)2−z・nH
ここで、0≦z<2、0≦n≦16であり、(A)は金属元素、またXは陰イオンまたは陰イオン化合物であるが、成形性および物性の観点から0≦z<1、0≦n≦4であることがより好ましい。
【0030】
好ましい金属元素(A)としては、元素周期律表の1A、2A、3A、4A、5A、6A、7A、8、1B、2B、3B族元素およびスズ、鉛を挙げることができる。これら金属元素は1種であっても、2種以上であってもかまわない。本発明においては、得られる樹脂組成物の経済性、安全性および物性の点から、2A族元素であるマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、あるいはこれらの2種以上からなる混合物であることが特に好ましい。
【0031】
前記一般式中のXで示される陰イオンまたは陰イオン化合物としては、水酸イオン(OH)、フッ素イオン(F)、塩素イオン(Cl)などを挙げることができる。これら陰イオン元素または陰イオン化合物は1種であっても、2種以上であってもかまわない。また、本発明においては、前記一般式中のリン酸水素イオン(HPO 2−)、リン酸イオン(PO 3−)、あるいはXの一部が炭酸イオン(CO 2−)に置換した炭酸含有アパタイトであってもよい。
【0032】
本発明においては、前記アパタイト型化合物の中、金属元素(A)がカルシウムである水酸アパタイト(Xが水酸イオン)、フッ素化アパタイト(Xの一部または全部がフッ素イオン)、塩素化アパタイト(Xの一部または全部が塩素イオン)、炭酸含有水酸アパタイト、炭酸含有フッ素化アパタイト、炭酸含有塩素化アパタイト、さらには、これらの混合物が最も好ましく用いられる。
かかるアパタイト型化合物形成成分(原料)としては、リン酸系金属化合物や、リン酸系金属化合物と非リン酸系金属化合物とからなる混合物などを挙げることができるが、本発明では、リン酸系金属化合物と非リン酸系金属化合物とからなる混合物であることがより好ましい。本発明では、アパタイト型化合物形成成分のリンに対する金属元素のモル比が0.9〜10.0であればよく、より好ましくは1.2〜5.0、さらに好ましくは1.5〜2.0である。
【0033】
前記リン酸系金属化合物のリン酸類としては、オルトリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、メタリン酸、亜リン酸、次亜リン酸などを挙げることができる。
より具体的には、リン酸系金属化合物としては、リン酸一水素カルシウム(CaHPO・mHO、但し0≦m≦2である。)、二リン酸二水素カルシウム(CaH)、リン酸二水素カルシウム一水和物(Ca(HPO・HO)、二リン酸カルシウム(α−およびβ−Ca)、リン酸三カルシウム(α−およびβ−Ca(PO)、
【0034】
リン酸四カルシウム(Ca(POO)、リン酸八カルシウム五水和物(Ca(PO・5HO)、亜リン酸カルシウム一水和物(CaHPO・HO)、次亜リン酸カルシウム(Ca(HPO)、リン酸マグネシウム第二・三水和物(MgHPO・3HO)、リン酸マグネシウム第三・八水和物(Mg(PO・8HO)、リン酸バリウム第二(BaHPO)などを挙げることができる。
【0035】
これらの中でも、本発明では経済性および物性により優れる点から、リン酸とカルシウムの化合物が好ましく用いられ、中でもリン酸一水素カルシウム(CaHPO・mHO、但し0≦m≦2である。)がより好ましく用いられ、特に無水リン酸一水素カルシウム(CaHPO)とリン酸一水素カルシウム二水和物(CaHPO・2HO)が最も好ましく用いられる。これらのリン系金属化合物は、1種であっても良いし、2種以上の組み合わせであっても良い。
【0036】
2種以上組み合わせる場合には、例えば、リン酸一水素カルシウム二水和物(CaHPO・2HO)と二リン酸二水素カルシウム(CaH)とを用いるように、同種の金属元素を含有する化合物の組み合わせや、リン酸一水素カルシウム二水和物(CaHPO・2HO)とリン酸マグネシウム第二・三水和物(MgHPO・3HO)とを用いるように、異種の金属元素を含有する化合物の組み合わせなどが例示されるが、いずれでも差し支えない。
【0037】
本発明におけるリン酸系金属化合物は、リン酸一水素カルシウム(CaHPO・mHO、但し0≦m≦2である。)を例にとると、Phosphorusand its Compounds,1(1958)で記載されているVan WazerによるCaO−HO−P系の状態図が示すように、水の存在下、リン酸化合物とカルシウム化合物を混合することによる公知の方法で得ることができる。より具体的には、例えば、20〜100℃の温度下、リン酸二水素カリウム溶液に、リン酸アルカリ溶液および塩化カルシウム溶液を滴下し反応させ合成する方法や、炭酸カルシウムまたは水酸化カルシウムとリン酸水溶液を混合する方法などによれば良い。
【0038】
ところで、本発明者らは、前記リン酸類のかわりに、砒素(As)やバナジウム(V)からなる化合物、すなわち砒酸類やバナジウム酸類を用いても、本発明と同様な効果が得られるものと推察している。しかしながら、本発明では、原料成分の安定性、形成成分の入手容易性、安全性の点で優れることから、リン酸類を用いることが最も好ましい。
【0039】
本発明における非リン酸系金属化合物としては、前記リン酸類以外で金属元素と化合物を形成するものであれば特に制限はなく、金属水酸化物(水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、水酸化マンガンなど)、金属塩化物(塩化カルシウム、塩化マグネシウム、
【0040】
塩化ストロンチウム、塩化バリウム、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アルミニウム、塩化鉄、塩化マンガンなど)、金属フッ化物(フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、フッ化バリウム、フッ化ストロンチウム、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化アルミニウムなど)、金属臭化物(臭化カルシウムなど)、金属ヨウ化物(ヨウ化カルシウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化銅など)、金属炭化物(炭化カルシウムなど)、金属酸化物(酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウムなど)、
【0041】
炭酸金属塩(炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アルミニウムなど)、硫酸金属塩(硫酸カルシウムなど)、硝酸金属塩(硝酸カルシウムなど)、ケイ酸金属塩(ケイ酸カルシウム、ヘキサフルオロケイ酸ナトリウムなど)などの無機金属化合物や、金属元素とモノカルボン酸との化合物(酢酸カルシウム、酢酸銅、安息香酸カルシウム、ステアリン酸カルシウムなど)、
金属元素とジカルボン酸との化合物(しゅう酸カルシウム、酒石酸カルシウムなど)、金属元素とトリカルボン酸との化合物(クエン酸カルシウムなど)などを挙げることができる。
【0042】
本発明では、これらの非リン酸系金属化合物は、1種であっても良いし、2種以上組み合わせても良い。2種以上組み合わせる場合には、例えば水酸化カルシウムと炭酸カルシウムとの混合物のように、同種の金属元素を含有する化合物を組み合わせても良いし、例えば、炭酸カルシウムと水酸化マグネシウムとの混合物のように、異種の金属元素を含有する化合物を組み合わせても良い。
【0043】
本発明では、これら化合物の中でも、経済性および物性がより優れていることから、金属水酸化物、金属フッ化物、金属塩化物、炭酸金属塩、金属酸化物、あるいはこれらの混合物が好ましく用いられる。特に元素周期律表の2A族元素であるカルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウムの水酸化物、フッ化物、塩化物、炭酸塩、あるいはこれらの混合物がより好ましく、更にはカルシウムの水酸化物、フッ化物、塩化物、炭酸塩、酸化物、あるいはこれらの混合物が好ましく用いられ、その中でも水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、フッ化カルシウムが最も好ましく用いられる。
【0044】
非リン酸系金属化合物の製造方法は特に制限されるものでなく、例えば炭酸カルシウムの場合を例にとると、天然材の粉砕品であっても、化学的に合成されたものであってもかまわない。また、その結晶形態や形状も特に制限されるものではなく、炭酸カルシウムの場合を例にとると、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、コロイド炭酸カルシウム、アラゴナイト型炭酸カルシウム、バテライト型炭酸カルシウム、針状型炭酸カルシウムなど、あるいはこれらの混合品など、いずれを用いてもかまわない。
【0045】
本発明のアパタイト型化合物形成成分であるリン酸系金属化合物や非リン酸系金属化合物は、好ましい平均粒子径が0.001〜10μm、より好ましくは0.001〜5μm以下、さらに好ましくは0.001〜1μmである。平均粒子径の測定は、アパタイト型化合物形成成分を純水あるいはアルコール類中に分散させ、超音波処理を行った後、レーザ回折/散乱式粒度分布装置で測定する方法によれば良い。
【0046】
本発明のポリアミド複合体の製造方法は、ポリアミド形成成分(原料)に、アパタイト型化合物形成成分(原料)を配合し、次いでポリアミドの重合とアパタイト型化合物の合成を行う方法を用いることが好ましい。ポリアミドの重合とアパタイト型化合物合成のより好ましい方法は、ポリアミド形成成分とアパタイト型化合物形成成分との配合物を加熱し、ポリアミド形成成分をアパタイト型化合物形成成分の存在下に重合し、その後アパタイト型化合物を合成する方法や、あるいはアパタイト型化合物形成成分をポリアミド形成成分の存在下に反応させ、その後ポリアミドを重合する方法である。
【0047】
更に好ましい方法は、前記両形成成分の配合物を40〜300℃の温度下で、ポリアミドの重合反応およびアパタイト型化合物の合成反応を進行させる方法であり、最も好ましい方法は、前記両形成成分の配合物を加圧下、40〜300℃の温度下で、ポリアミドの重合反応およびアパタイト型化合物の合成反応を同時並行的に進行させる方法である。
【0048】
ポリアミド形成成分とアパタイト型化合物の形成成分との配合方法としては、固体状のポリアミド形成成分とアパタイト型化合物の形成成分を直接混合する方法、ポリアミド形成成分の水溶液とアパタイト型化合物形成成分の水溶液や懸濁液とを配合する方法などのいずれによっても良い。また、アパタイト型化合物の分散性を向上させるために、必要に応じて、ポリアミド形成成分やアパタイト型化合物形成成分に分散剤や錯化剤などの化合物を添加しても良い。更には、アパタイト型化合物形成成分の懸濁液、あるいはアパタイト型化合物形成成分とポリアミド形成成分との混合液を、超音波による処理を行ったり、ホモジナイザーによる処理を行っても良い。
【0049】
本発明では、前記分散剤の種類を、特に制限するものではなく、公知の分散剤を用いることができる。例えば、「分散・凝集の解明と応用技術,1992年」(北原文雄監修・株式会社テクノシステム発行)の232〜237ページに記載されているようなアニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤などを用いることができる。
これらの中でもアニオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤を用いることが好ましく、特に、価格および物性の観点から、クエン酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸アンモニウム、スチレン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−無水マレイン酸などのオレフィン−無水マレイン酸共重合体、ショ糖ステアリン酸エステルなどのショ糖エステル類などを用いることがより好ましい。
【0050】
錯化剤としては、金属イオンと錯体を形成する化合物であれば特に制限されることがなく、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ニトリロ三酢酸、シクロヘキサンジアミン四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、クエン酸、グルコン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、エチレンジアミンなどの脂肪族アミン、尿素などを用いることができる。これらの中でも、価格および物性の観点からクエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレンジアミン(en)が特に好ましい。
【0051】
前記ポリアミドの重合は、公知の方法を用いることができる。例えば、11−アミノウンデカン酸などの水に難溶な成分を形成成分とし、40〜300℃で加熱し重縮合する方法、ε−カプロラクタムを形成成分とし、その水溶液を必要に応じてモノカルボン酸などの末端封鎖剤、あるいはε−アミノカプロン酸などの反応促進剤を加えて、不活性ガスを流通させながら、40〜300℃に加熱し重縮合するラクタム類の開環重縮合法、ヘキサメチレンアジパミドなどのジアミン・ジカルボン酸を形成成分とし、その水溶液を40〜300℃の温度下、加熱濃縮し、発生する水蒸気圧を常圧〜約1.96Mpa(ゲージ圧)の間の圧力に保ち、最終的には圧力を抜き常圧あるいは減圧し重縮合を行う熱溶融重縮合法などを用いることができる。さらには、ジアミン・ジカルボン酸固体塩や重縮合物の融点以下の温度で行う固相重合法、ジカルボン酸ハライド成分とジアミン成分とを溶液中で重縮合させる溶液法なども用いることができる。
【0052】
これらの方法は必要に応じて組合わせてもかまわない。また、重合形態としては、バッチ式でも連続式でもかまわない。また、重合装置も特に制限されるものではなく、公知の装置、例えば、オートクレーブ型の反応器、タンブラー型反応器、ニーダーなどの押出機型反応器などを用いることができる。
本発明のアパタイト型化合物の確認は、例えば、ポリアミド複合体、ポリアミド樹脂複合体、あるいはポリアミド樹脂組成物やその成形体を用いて、広角X線回折、赤外吸収スペクトルなどで直接確認する方法や、ポリアミドや配合した他の樹脂が可溶な溶媒で、ポリアミドあるい配合した他の樹脂を溶出し、アパタイト型化合物成分を分離し、分離したアパタイト型化合物の広角X線回折、赤外吸収スペクトルなどで確認する方法などによれば良い。
【0053】
前記ポリアミドや他の樹脂が可溶な溶媒とは、特に制限されるものではなく、公知の溶媒を用いることができる。例えば、「POLYMERHANDBOOKThirdEdition」(J.BrandrupandE.H.Immergut監修/AWiley−IntersciencePublication)の第VII(SolventsandNon−solventsForPolymers)に記載されている溶媒を用いれば良いが、本発明においては、ポリアミドを溶解する溶媒としては、フェノール溶媒を用いるのが好ましい。また、ポリアミド樹脂がポリアミドとポリフェニレン系樹脂との混合物のような場合には、例えば、ポリフェニレン系樹脂の可溶溶媒として、クロロホルム溶媒、ポリアミドの可溶溶媒としてフェノール溶媒を用いれば良い。溶解操作は、具体的には、まず十分な量のクロロホルム溶媒を用いてポリフェニレン系樹脂を溶解し、その後ポリアミドを十分な量のフェノール溶媒を用いて溶解するという多段の溶解操作を行えば良い。
【0054】
本発明のアパタイト型化合物は、結晶性アパタイト型化合物であっても、非晶性アパタイト型化合物であってもかまわないが、物性の観点から、結晶性アパタイト型化合物であることがより好ましい。アパタイト型化合物が結晶性であることの確認は、具体的には、X線の線源として、銅Kα(波長λ=0.1542nm)を用いて、広角X線回折を測定し、回折角(2θ)が25.5〜26.5度に(002)面ピークが存在し、さらに回折角(2θ)が32.5〜33.5度に(300)面ピークが存在することを確認すればよい。本発明では、上記のように確認される結晶性アパタイト型化合物であることが特に好ましい。
【0055】
本発明のアパタイト型化合物の含有量は、ポリアミド100重量部に対して0.5〜300重量部であることが好ましく、より好ましくは1〜200重量部、更には3〜100重量部、特に好ましくは5〜75重量部である。アパタイト型化合物の含有量は、例えば、ポリアミド複合体を用いて、JISR3420に従って強熱減量(Ig.loss)を測定し、その重量減少量から求めることができる。また、上記強熱減量と溶媒抽出、NMR、あるいは赤外吸収スペクトルなどとを必要に応じて組み合わせて、ポリアミド樹脂複合体、あるいは本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物またはその成形品からでもアパタイト型化合物の含有量を求めることができる。アパタイト型化合物の含有量がポリミド100重量部に対して、0.5重量部未満の場合には、得られる成形体の機械特性の改良効果が本発明の目的を達成し得る程に顕著でなく、一方300重量部を越えた場合には、成形加工がしにくくなるなどの問題が発生しやすい。
【0056】
本発明のアパタイト型化合物のリンに対する金属元素の比は、モル比にして0.9〜10.0であることが好ましく、より好ましくは1.2〜5.0、特に好ましくは、1.3〜2.5である。この比が0.9未満の場合には、押出や成形加工時に気泡の混入や発泡が起こりやすくなり、得られる成形体の収率が低下する懸念がある。また、この比が10.0を越えた場合には、靭性の低下が著しくなる恐れがある。
【0057】
本発明のアパタイト型化合物が含有する有機物は、アパタイト型化合物100重量部あたり、0.5〜100重量部であることが必要である。より好ましくは、1〜100重量部、更には3〜75重量部、特に好ましくは4〜50重量部である。該有機物は、イオン結合反応、吸着反応あるいはグラフト化反応などの物理的、化学的相互作用によりアパタイト型化合物の内部や表面に取り込まれている有機物であるため、たとえポリアミドが可溶なフェノール溶媒を用いて溶解操作を行っても、溶媒中に溶解・溶出しないという性質を有しおり、このことがアパタイト型化合物とマトリックスであるポリアミドとの固着、接着性を非常に向上させている。該有機物の量が、アパタイト型化合物100重量部あたり0.5重量部未満の場合には、得られる成形体の靭性の低下が大きくなる恐れがある。
また100重量部を越えた場合には、成形加工性が低下する傾向にある。
【0058】
本発明者らの検討によれば、本発明における前記有機物は、分離したアパタイト型化合物の熱分解ガスクロマトグラフィーおよび熱分解成分のマススペクト(MS)、赤外吸収スペクトルの測定結果から、ポリアミド形成成分、ポリアミド、あるいはこれらの反応生成物である。従って本発明の前記有機物は、特にマトリックスであるポリアミドとの固着、接着性がより向上する点から、前記有機物の少なくとも一部がポリアミドであることが好ましい。また、前記有機物には、水が含有されてもかまわない。
【0059】
本発明の前記有機物の含有量は、具体的には、(i)アパタイト型化合物の分離操作、(ii)熱減量率の測定、(iii)熱分解成分の測定による有機物の定量、を行うことによって求めることができる。
以下に、詳細に説明する。
【0060】
(i)アパタイト型化合物の分離操作:
ポリアミド複合体、ポリアミド樹脂複合体、ポリアミド樹脂組成物あるいはその成形品10gを秤量し、90重量%フェノール200mlと混合し、40℃で2時間攪拌し、遠心分離器を用いて分離操作を行い、上澄み溶媒を除去する。さらに200mlのフェノールを加え、以後同様な溶解操作と遠心分離器を用いた分離操作を4回繰り返し行う。引き続き、99.5重量%エタノール200mlを加えて、23℃で2時間攪拌し、遠心分離器を用いて分離操作を行い、上澄み溶媒を除去する。この操作をさらに4回繰り返した後、減圧乾燥器中で乾燥し、アパタイト型化合物を得る。なお、ポリアミド樹脂がポリアミドと他の樹脂との混合物の場合には、上記ポリアミド溶解操作前あるいはその後に、他の樹脂が可溶な溶媒を用いて、混合したポリアミド以外の樹脂の溶解・分離操作を行えば良い。
【0061】
(ii)熱減量率(X(重量部/アパタイト型化合物100重量部))の測定:
得られたアパタイト型化合物5〜15mgを秤量し、熱重量分析(TGA)装置により、30℃から550℃まで99.9℃/minで昇温後、550℃で1時間保持する。30℃における初期重量(W)と、550℃で1時間保持した後の最終重量(W)を用いて、下式に熱減量率Xを算出できる。
熱減量率X(重量部/アパタイト型化合物100重量部)=(W−W)×100/W
【0062】
(iii)熱分解成分の測定による有機物の定量:
前記(i)により得られたアパタイト型化合物を1〜10mg秤量し、熱分解ガスクロマトグラフィーにより、熱分解温度550℃、カラム温度50〜320℃(昇温速度20℃/min)の条件下で測定する。得られた熱分解ガスクロマトグラフィーのパイログラムを、保持時間2min未満と2min以上に分けそのピーク面積を算出する。2min以下の成分は二酸化炭素などの低分子量成分であるため、この低分子量成分を全体から差し引き、有機物の量とした。具体的には、それぞれの面積Sa(2min未満)とSb(2min以上)を算出し、前記(ii)の熱減量率Xを用いて、下式にて有機物の量を算出する。
有機物の量(重量部/アパタイト型化合物100重量部)=X・Sb/(Sa+Sb)
【0063】
本発明のアパタイト型化合物の平均粒子径は、好ましくは0.001〜1μm、より好ましくは0.001〜0.5μmである。本発明における平均粒子径は、電子顕微鏡写真法により求めることができ、該平均粒子径は次のようにして算出することができる。すなわち、ポリアミド複合体、ポリアミド樹脂複合体、あるいはポリアミド樹脂組成物や得られる成形体から切り出した超薄切片の透過型電子顕微鏡(TEM:写真倍率5万倍あるいは10万倍)を撮影し、アパタイト型化合物の粒子径d、粒子数nを求め、次式により平均粒子径を算出する。
平均粒子径=Σd・n/Σn
この場合、粒子径が球状とみなせない場合には、その短径と長径を測定し、両者の和の1/2を粒子径とする。また、平均粒子径の算出には最低2000個の粒子径を測定する。
【0064】
本発明の臭素系難燃剤は、好ましくは臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ビスフェノール型エポキシ系重合体および臭素系架橋芳香族重合体からなる化合物類から選ばれる少なくとも1種の難燃剤である。
以下、難燃剤について詳細に説明する。
臭素化ポリスチレンの臭素含有量は、難燃化効果の観点から55〜75重量%が好ましく、分子量は数平均分子量にして、100〜50万のものが好ましい。
臭素化ポリフェニレンエーテルの分子量は数平均分子量にして、1000〜5万のものが好ましい。
臭素化ビスフェノール型エポキシ系重合体は下記式で示されるものである。
【0065】
【化1】
Figure 0004562841
【0066】
ここで、Xは臭素原子、Yは水素、グリシジル基、アルキル基、フェニル基、ベンジル基及びそれらの誘導体から選ばれる基、Rは直接結合、アルキレン基、カルボニル基、エーテル基、チオエーテル基、スルホン基から選ばれる基、nはエポキシ当量2500以上にするために必要な整数、pは1〜4の整数である。
臭素化ビスフェノール型エポキシ系重合体のエポキシ当量は、通常2500〜5万のものが好ましい。
【0067】
臭素化架橋芳香族重合体としては、たとえば、ポリスチレンとジビニルベンゼンとの共重合により得られた架橋芳香族重合体を臭素化したものが挙げられ、その臭素含有量は30〜70重量%のものが好ましい。このような臭素化架橋芳香族重合体は、三次元構造を有し実質的に不溶・不融であり、0.1〜30μm程度に粉砕されたのち、ポリアミド複合体、あるいはポリアミド樹脂複合体に配合される。これら臭素系難燃剤の中でも、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテルが耐熱性、非ブリードアウト性の点から特に好ましい。
【0068】
前記臭素系難燃剤の具体例としては、フェロ社製パイロチェック68PB<登録商標>、パイロチェックLM<登録商標>、グレートレークス社製PDBS−80<登録商標>、PDBS−10<登録商標>、マナック社製ERB−370FK<登録商標>、グレートレークス社製PO64P<登録商標>、マクテシム社製F2400<登録商標>などを挙げることができる。
【0069】
本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物には、必要に応じて難燃助剤を添加することができる。難燃助剤としては、三酸化二アンチモン、四酸化二アンチモン、五酸化二アンチモン、アンチモン酸ナトリウム、酒石酸アンチモンなどのアンチモン化合物や、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、水和アルミナ、酸化ジルコニウム、ポリリン酸アンモニウム、酸化スズ、酸化鉄などを挙げられるが、この中でも、難燃効果が向上するいう観点から、アンチモン化合物が好ましく、三酸化二アンチモンが最も好ましい。
【0070】
難燃助剤は、難燃効果が向上するという観点から、平均粒子径が0.01〜10μmであることが好ましい。
前記アンチモン化合物の具体例としては、日本精鉱社製パトックスC<登録商標>、パトックスM<登録商標>、アポックスS<登録商標>、住友金属鉱山社製酸化アンチモンKU及びFS<登録商標>、第一工業製薬社製ピロガードAN−700、AN−800およびAN−900<登録商標>等の酸化アンチモンが挙げられる。また、アンチモン酸ナトリウムとしては日産化学社製サンポックNA−1075<登録商標>、日本精鉱社製アンチモン酸ソーダSなどを挙げることができる。
【0071】
本発明の臭素系難燃剤の配合量は、ポリアミド100重量部に対して1〜300重量部であることが好ましく、3〜200重量部がより好ましく、5〜100重量部が最も好ましい。配合量が1重量部未満の場合には、難燃性の改良効果が顕著でなくなる傾向にあり、また300重量部を越えた場合には、成形加工性や機械特性の低下を引き起こす懸念がある。
また、前記難燃助剤の配合量は、ポリアミド100重量部に対して0.1〜100重量部であることが好ましく、2〜70重量部がより好ましい。配合量が0.1重量部未満の場合には、難燃性の改良効果が顕著でなくなる傾向にあり、また100重量部を越えた場合には、成形加工性や機械特性の低下を引き起こす懸念がある。
【0072】
本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物の製造方法は、ポリアミド複合体、あるいはポリアミド樹脂複合体と臭素系難燃剤、必要に応じて難燃助剤とを混合する方法であればよく、特に限定されるものではない。混合方法としては、例えば、ポリアミド複合体、あるいはポリアミド樹脂複合体と臭素系難燃剤とをヘンシュルなどを用いて混合し、溶融混練機に供給し混練する方法や、単軸または2軸押出機で溶融状態にしたポリアミド複合体、あるいはポリアミド樹脂複合体にサイドフィダーから臭素系難燃剤を配合する方法などが例示できる。
【0073】
ポリアミド複合体、あるいはポリアミド樹脂複合体と臭素系難燃剤とを混練する装置としては、特に制限されるものではなく、公知の装置を用いることができる、例えば単軸あるいは2軸押出機、バンバリーミキサーおよびミキシングロールなどの溶融混練機が好ましく用いられる。
さらに本発明の目的を達成するために、ポリアミドと臭素系難燃剤との間に作用する混和剤を用いることも出来る。混和剤としては、酸無水物構造を置換基の一部に有するポリフェニレンエーテル樹脂や、スチレンと無水マレイン酸との共重合体が特に好ましく、これらの混和剤を少量用いると、本発明で得られる難燃性ポリアミド樹脂組成物を成形した際、ウエルド部強度の高い成形品が得られ、更に臭素系難燃剤の分散粒径が小さくなることにより部品組立の際の折れ、割れが改善される。
【0074】
本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物は、マトリックスであるポリアミドあるいはポリアミド樹脂に、アパタイト型化合物が均一にかつ微細に分散しかつポリアミドとアパタイト型化合物との界面が極めて良好に固着、接着したポリアミド複合体に臭素系難燃剤を配合したものであり、従来の難燃性ポリアミド樹脂組成物に比較し、得られる成形体がソリが少なく、剛性、強度、耐熱性などの機械特性に優れ、かつ難燃性に優れるという特徴を有する。
【0075】
従って、自動車部品、電子電気部品、工業機械部品などの各種部品への応用が期待される。各種部品としては、スィッチ類、超小型スライドスイッチ、DIPスイッチ、スイッチのハウジング、ランプソケット、結束バンド、コネクター、コネクターのハウジング、コネクターのシェル、ICソケット類、コイルボビン、ボビンカバー、リレー、リレーボックス、コンデンサーケース、モーターの内部部品、小型モーターケース、ダンシングプーリー、電磁開閉器、ホルダー、プラグ、ブレーカーなどを挙げることができる。
【0076】
本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物は、公知の成形方法、例えばプレス成形、射出成形、ガスアシスト射出成形、溶着成形、押出成形、吹込成形、フィルム成形、中空成形、多層成形、溶融紡糸など、一般に知られているプラスチック成形方法を用いても、良好に成形加工ができる。
【0077】
本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物には、必要に応じて本発明の目的を損なわない範囲で、成形性改良剤として、例えば、リン酸トリフェニルなどのリン酸エステル化合物、亜リン酸トリフェニルなどの亜リン酸エステル化合物、ステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸などの高級脂肪酸化合物、ステアリン酸カルシウム、モンタン酸カルシウムなどの高級脂肪酸金属塩化合物、ステアリルステアレートなどの高級脂肪酸エステル化合物、高級脂肪酸アミド化合物、ポリアルキレングリコールあるいはその末端変性物、低分子量ポリエチレンあるいは酸化低分子量ポリエチレン、置換ベンジリデンソルビトール、カプロラクトン類、タルクなどの無機結晶核剤を含有させることができる。
【0078】
また、本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物には、必要に応じて本発明の目的を損なわない範囲で通常のポリアミド樹脂に用いられる充填剤、例えばガラス繊維、ガラスフレーク、炭素繊維などの無機充填剤や、チタンホワイト、カーボンブラックなどの顔料や着色剤、亜リン酸ソーダやヒンダードフェノールに代表される熱安定剤、種々の可塑剤、耐候性向上剤、帯電防止剤などの各種添加剤を含有させることができる。
【0079】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に制限されるものではない。なお、以下の実施例、比較例において記載した物性評価は、以下のように行った。
1.ポリアミド形成成分とアパタイト型化合物形成成分の特性
(1−1)アパタイト型化合物形成成分の含有量(重量%)
ポリアミド形成成分とアパタイト型化合物形成成分の配合量から算出した。
(1−2)アパタイト型化合物形成成分のリンに対する金属元素のモル比
アパタイト型化合物形成成分中の金属元素およびリンを定量し、モル比を算出した。
【0080】
(a)金属元素の定量:以下、金属元素としてカルシウムの場合につき説明するが、他の金属元素についても同様にして求めることができる。
アパタイト型化合物形成成分0.5gを白金皿に秤量し、500℃電気炉で炭化する。冷却後、塩酸5mlおよび純水5mlを加えヒーター上で煮沸溶解する。再び冷却し、純水を加え500mlとした。装置はThermoJarrellAsh製IRIS/IPを用いて、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析により、波長317.933nmにて定量した。
【0081】
(b)リンの定量:アパタイト型化合物形成成分0.5gを秤量し濃硫酸を20ml加え、ヒーター上で湿式分解した。冷却後、過酸化水素5mlを加え、ヒーター上で加熱し、全量が2〜3mlになるまで濃縮した。再び冷却し、純水で500mlとした。装置はThermoJarrellAsh製IRIS/IPを用いて、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析により、波長213.618(nm)にて定量した。
【0082】
2.ポリアミド樹脂組成物の特性
(2−1)ポリアミドの重量平均分子量(Mw)
ポリアミド複合体を用いて、ゲルパーミッショクロマトグラフィー(GPC)により求めた。装置は東ソー(株)製HLC−8020、検出器は示差屈折計(RI)、溶媒はヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)、カラムは東ソー(株)製TSKgel−GMHHR−Hを2本とG1000HHRを1本用いた。溶媒流量は0.6ml/min、サンプル濃度は、1〜3(mgサンプル)/1(ml溶媒)であり、フィルターでろ過し、不溶分を除去し、測定試料とした。得られた溶出曲線をもとに、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)換算により、重量平均分子量(Mw)を算出した。
【0083】
(2−2)アパタイト型化合物の含有量の定量(重量部/100重量部ポリアミド)
ポリアミド複合体を100±20℃で8時間乾燥し冷却する。組成物を白金皿に1g秤量し、650±20℃の電気炉で灰化し、冷却後、その重量を秤り、アパタイト型化合物の含有量を定量した。
(2−3)アパタイト型化合物のリンに対する金属元素のモル比
アパタイト型化合物の金属元素およびリンを定量し、モル比を算出した。
【0084】
(a)金属元素の定量:以下、金属元素としてカルシウムの場合につき説明するが、他の金属元素についても同様にして求めることができる。
ポリアミド複合体を0.5gを白金皿に秤量し、500℃電気炉で炭化する。冷却後、塩酸5mlおよび純水5mlを加えヒーター上で煮沸溶解する。再び冷却し、純水を加え500mlとした。装置はThermoJarrellAsh製IRIS/IPを用いて、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析により、波長317.933nmにて定量した。
【0085】
(b)リンの定量:ポリアミド複合体を0.5gを秤量し濃硫酸を20ml加え、ヒーター上で湿式分解した。冷却後、過酸化水素5mlを加え、ヒーター上で加熱し、全量が2〜3mlになるまで濃縮した。再び冷却し、純水で500mlとした。装置はThermoJarrellAsh製IRIS/IPを用いて、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析により、波長213.618(nm)にて定量した。
【0086】
(2−4)有機物量(重量部/アパタイト型化合物100重量部)
(a)アパタイト型化合物の分離操作:ポリアミド複合体を秤量し、90重量%フェノール200mlと混合し、40℃で2時間攪拌し、遠心分離器〔国産遠心器(株)製H103RLH〕を用いて20000rpmで1時間、分離操作を行い、上澄み溶媒を除去した。さらに200mlのフェノールを加え、以後同様な溶解操作と遠心分離器を用いた分離操作を4回繰り返し行った。引き続き、99.5重量%エタノール200mlを加えて、23℃で2時間攪拌し、遠心分離器を用いて20000rpmで1時間、分離操作を行い、上澄み溶媒を除去する。この操作をさらに4回繰り返した後、減圧乾燥器中で80℃で12時間乾燥し、目的のアパタイト型化合物を得た。
【0087】
(b)分離したアパタイト型化合物の熱減量率(X(重量部/アパタイト型化合物))測定:(2−4)の(a)で得られたアパタイト型化合物10mgを秤量し、熱重量分析(TGA)装置により熱減量率Xを求めた。装置は島津製作所製TGA−50、温度条件としては、30℃から550℃まで99.9℃/minで昇温後、550℃で1時間保持した。30℃における初期重量(W)と、550℃で1時間保持した後の最終重量(W)を用いて、下式により、有機物量を算出した。
熱減量率X(重量部/アパタイト型化合物100重量部)=(W−W)×100/W
【0088】
(c)有機物の定量:(2−4)の(a)で得たアパタイト型化合物を3mg秤量し、以下の条件で熱分解クロマトグラフィー(GC)および熱分解GC/MSのパイログラムを得た。
・熱分解
装置:フロンティア社ダブルショットパイロライザーPY−2010D
熱分解温度:550℃
【0089】
・ガスクロマトグラフィー(GC)
装置:HEWLETTPACKARD社製HP−5890
カラム:J&W社製DURABONDDB−1
(0.25mmI.D.×30m、膜厚0.25μm)
カラム温度:50℃→320℃(昇温速度20℃/min)
注入口温度:320℃
検出器温度:320℃
【0090】
・マススペクトル(MS)
装置:JEOL社製AutoMSSystemII
イオン化:EI(70V)
測定質量範囲:m/z=10〜400
温度:200℃
得られた熱分解GCのパイログラムを、保持時間2min未満と2min以上に分け、それぞれののピーク面積Sa(2min未満)とSb(2min以上)を算出し、(2−4)の(b)で求めた熱減量率Xを用いて、下式にて有機物の量を算出した。
有機物の量(重量部/アパタイト型化合物100重量部)=X・Sb/(Sa+Sb)
【0091】
また、マススペクトル(MS)から熱分解成分の同定を行った。
(2−5)赤外吸収スペクトル
(2−4)の(a)で得たアパタイト型化合物の赤外吸収スペクトルを測定した。装置はPerkinElmer社製1640、分解能は4cm−1で測定した。
(2−6)X線回折によるアパタイト型化合物の生成の確認
(2−4)の(a)で得たアパタイト型化合物のX線回折を測定した。測定条件は以下のとうりである。
【0092】
X線:銅Kα
波数:0.1542nm
管電圧:40KV
管電流:200mA
走査速度:4deg./min
発散スリット:1deg.
散乱スリット:1deg.
受光スリット:0.15mm
【0093】
3.成形品の作成および物性
成形品は、射出成形機を用いて作成した。装置は日精樹脂(株)製PS40E、シリンダー温度280℃、金型温度80℃に設定し、射出17秒、冷却20秒の射出成形条件で、成形品を得た。
【0094】
(3−1)曲げ弾性率および曲げ強度(Mpa)
測定は、ASTM D790に準じて行った。
(3−2)引張強度(Mpa)および引張伸度(%)
ASTM D638に準じて行った。
(3−3)ノッチ付きIzod衝撃強度(J/m)
ASTM D256に準じて行った。
(3−4)荷重たわみ温度(℃)
ASTM D648に準じて行った。荷重は1.82Mpaで行った。
【0095】
(3−5)そり量(mm)
厚み3mm、一辺130mmの金型を用いて射出成形した平板を水平面に置き、水平面との最大隙間間隔を測定した。
(3−6)難燃性
UL94(米国Under Writers Laboratories Incで定められた規格)の方法に従って測定した。なお、厚み1/32inch(UL94規格)の成形品を、射出成形機(日精樹脂(株)製PS40E)を用いて成形して評価した。
【0096】
【製造例1】
ポリアミド複合体(A)の製造:
50重量%のポリアミド形成成分(ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸との等モル塩)の水溶液を30Kg作製した。アパタイト型化合物形成成分として、平均粒子径1μmリン酸一水素カルシウム二水和物(CaHPO・2HO)の25重量%懸濁液を6Kg(リン酸一水素カルシウム二水和物:純水=1.5Kg:4.5Kg)、および平均粒子径1.5μm重質炭酸カルシウム(CaCO)の25重量%懸濁液を2.32Kg(炭酸カルシウム:純水=0.58Kg:1.74Kg)用いた。カルシウムとリンとのモル比は、1.67と算出された。
【0097】
該ポリアミド形成成分の水溶液とアパタイト型化合物形成成分の懸濁液とを、撹拌装置を有し、かつ下部に抜出しノズルを有する70リットルのオートクレーブ中に仕込み、50℃の温度下、よく攪拌した。十分窒素で置換した後、撹拌しながら温度を50℃から約270℃まで昇温した。この際、オートクレーブ内の圧力は、ゲージ圧にして約1.77Mpaになるが、圧力が1.77Mpa以上にならないよう水を系外に除去しながら加熱を約1時間続けた。その後、約1時間をかけ、圧力を大気圧まで降圧し、更に約270℃、大気圧で約1時間保持した後、撹拌を停止し、下部ノズルからストランド状にポリマーを排出し、水冷・カッティングを行い、ポリアミド複合体(A)のペレットを得た。得られたポリアミド複合体(A)を評価した結果、重量平均分子量(Mw)は40000、アパタイト型化合物含有量は、ポリアミド100重量部に対して、11.4重量部であった。
【0098】
リンに対するカルシウムのモル比は1.67と算出された。10万倍の透過型電顕観察結果から、アパタイト型化合物の平均粒子径は85nmであった。90%フェノール水溶液により、溶出・分離操作を行い、得られたアパタイト型化合物を評価した結果、広角X線回折により、結晶性アパタイト型化合物の生成を確認できた。また該溶出・分離操作により得られたアパタイト型化合物の有機物の量は5.5(重量部/アパタイト100重量部)と算出された。また、熱分解GC/マススペクトルの解析結果から、アパタイト型化合物に残存する有機物の熱分解成分の1つとして、シクロペンタノンが確認された。さらに、赤外吸収スペクトルの観察から、約1548cm−1に有機物の存在を示すピークが確認された。
【0099】
【製造例2】
ポリアミド複合体(B)の製造:
50重量%のポリアミド形成成分(ヘキサメチレンジアミン・アジピン酸等モル塩1.2Kgとヘキメチレンジアミン・イソフタル酸等モル塩0.3Kgとの混合物)の水溶液を30Kg作製した。該ポリアミド形成成分を用いる以外は、実施例1と同様にして行い、ポリアミド複合体(B)のペレットを得た。
【0100】
【製造例3】
ポリアミド66の製造:
実施例1において、アパタイト形成成分を配合せず、ポリアミド形成成分のみを用いて重合を行い、ポリアミド66のペレットを得た。
【0101】
【製造例4】
ポリアミド複合体(C)の製造:
層状珪酸塩の一単位の厚みが平均的に95nmで、一辺の長さが約0.1μmのモンモリロナイト100gを10リットルの水に分散し、これに51.2gの12−アミノドデカン酸と24mlの濃塩酸を加え、五分間撹拌した後、ろ過した。更にこれを十分洗浄した後、真空乾燥し、12−アミノドデカン酸のアンモニウムイオンとモンモリロナイトとの複合体を調整した。この操作を繰り返し、約2Kgの12−アミノドデカン酸のアンモニウムイオンとモンモリロナイトとの複合体を得た。50重量%のポリアミド形成成分(ヘキサメチレンジアミン・アジピン酸等モル塩)の水溶液30Kgに、12−アミノドデカン酸のアンモニウムイオンとモンモリロナイトの複合体1.5Kgとを、撹拌装置を有し、かつ下部に抜出しノズルを有する70リットルのオートクレーブ中に仕込み、50℃の温度下、よく攪拌した。その後の操作は実施例1と同様にして行い、ポリアミド複合体(C)のペレットを得た。
【0102】
【実施例1】
ポリアミド複合体(A)中のポリアミド100重量部(ポリアミド複合体からアパタイト型化合物の含有量を差し引いた重量を100重量部とした。)に対して、難燃剤として臭素化ポリスチレン(フェロ有社製パイロチェック68PB、臭素含有率66重量%)30重量部、難燃助剤として三酸化二アンチモン(日本精鉱(株)製パトックスC)10重量部、およびガラス繊維(旭ファイバーグラス(株)製JA416)25重量部とを混合し、二軸押出機(東芝機械(株)製TEM35)を用いて、280℃の条件下で溶融混練し、ポリアミド樹脂組成物を得た。評価結果を表1に示す。
【0103】
【実施例2】
ポリアミド複合体(A)の代わりに、ポリアミド複合体(B)を用いて、実施例1と同様にして行った。得られたポリアミド樹脂組成物の評価結果を表1に示す。
【0104】
【比較例1】
ポリアミド複合体(A)の代わりに、製造例3のポリアミドを用いて、実施例1と同様にして行った。得られたポリアミド樹脂組成物の評価結果を表1に示す。
【0105】
【比較例2】
ポリアミド複合体(A)の代わりに、ポリアミド複合体(C)を用いて、実施例1と同様にして行った。得られたポリアミド樹脂組成物の評価結果を表1に示す。
【0106】
【実施例3】
臭素化ポリスチレンの代わりに、臭素化ポリフェニレンエーテル(グレードレークス社製PO−64P、臭素含有率62重量%)を用いて、実施例1と同様にして行った。得られたポリアミド樹脂組成物の評価結果を表2に示す。
【0107】
【実施例4】
臭素化ポリスチレンの代わりに、臭素化ビスフェノール型エポキシ系重合体(松永化学社製EBR−101、臭素含有率52重量%)を用いて、実施例1と同様にして行った。得られたポリアミド樹脂組成物の評価結果を表2に示す。
【0108】
【表1】
Figure 0004562841
【0109】
【表2】
Figure 0004562841
【0110】
【発明の効果】
本発明は、マトリックスであるポリアミド中に均一にかつ微細に分散し、その界面においてポリアミドに極めて良好に固着、接着しているアパタイト型化合物を含有するポリアミド複合体に臭素系難燃剤を配合して成る難燃性ポリアミド樹脂組成物である。したがって、得られる成形体は、従来の難燃性ポリアミド樹脂成形体に比較し、剛性、強度、耐熱性に優れ、かつ難燃性に優れるという特徴を有するため、自動車外装・外板部品、自動車内装部品、自動車アンダーフード部品、二輪車用部品、家具用部品、OA機器分野用品、電子電器用部品、工業用部品など、各種用途に非常に有用であることが期待される。

Claims (4)

  1. ポリアミド形成成分と、リンに対する金属元素のモル比が1.5〜2.0であるリン酸系金属化合物と非リン酸系金属化合物との混合物からなり、平均粒子径にして0.001〜10μmであるアパタイト型化合物形成成分とを配合し、ポリアミドの重合反応およびアパタイト型化合物の合成反応を進行させて得られるポリアミド複合体であって、該アパタイト型化合物が、アパタイト型化合物100重量部に対して0.5〜100重量部のフェノールに不溶な有機物を含有するアパタイト型化合物である該ポリアミド複合体に、臭素系難燃剤を配合してなるポリアミド樹脂組成物。
  2. (C)臭素系難燃剤が臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ビスフェノール型エポキシ系重合体および臭素系架橋芳香族重合体からなる化合物類から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載のポリアミド樹脂組成物。
  3. アパタイト型化合物が、平均粒子径にして0.001〜1μmであることを特徴とする請求項1あるいは2記載のポリアミド樹脂組成物。
  4. (A)ポリアミド100重量部に対して、(B)アパタイト型化合物0.5〜300重量部、(C)臭素系難燃剤1〜300重量部であることを特徴とする請求項1〜3いずれか一項に記載のポリアミド樹脂組成物。
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