JP4716591B2 - 耐熱性及び剛性の改良されたポリアミド樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、様々な機械工業部品、電気電子部品、自動車部品などの産業用材料として、靭性を保持しつつ、特に剛性、強度、耐熱性に優れるポリアミド樹脂組成物およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来よりポリアミド樹脂の強度や剛性を高める目的で種々の充填剤、例えばガラス繊維や炭素繊維などの無機繊維あるいは炭酸カルシウム、雲母、タルクなどの無機化合物あるいはモンモリロナイト、膨潤性フッ素雲母などの層状化合物を配合することが行われてきたが、これらの手法は、強度や剛性を高める上では有効であるものの、ポリアミドと充填剤との親和性が低く、ポリアミド樹脂の特徴である靭性を著しく損なうという欠点があった。
【0003】
このような問題点を解決する試みとして、本発明者らは、先にポリアミド原料とアパタイト原料を配合し、ポリアミドの重合とアパタイトの合成を同時に行うことで、生成するアパタイト界面がポリアミドと極めて良好に接する、強度、剛性、靭性等に優れたポリアミド樹脂組成物が得られることを提案した(特開平11−199771号公報,特開2000−63665号公報,国際公表WO00−11088号公報)。これらの技術により強度、剛性、耐熱性、靭性を向上させることはできるが、剛性、耐熱性については依然として十分に満足できるレベルに到達しているものとは言えなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、靭性を保持しつつ、剛性、強度、耐熱性に優れ、その中でも特に耐熱性、剛性に優れるポリアミド樹脂組成物およびその製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の製造方法により特定のポリアミド樹脂組成物を用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明に至った。
すなわち本発明は、下記の通りである。
1.(A)ポリアミド形成成分と(B)アパタイト型化合物形成成分とを配合し、ポリアミドの重合反応およびアパタイト型化合物の合成反応を進行させてポリアミド樹脂組成物を製造するに際し、(B)アパタイト型化合物形成成分のうちリン酸系金属化合物として、
1)比表面積(但し、窒素吸着によるBET法での測定値)が5.0m2/g未満である、
2)平均粒径が0.1〜30μmである、
3)X線回折における(020)面の回折ピークと(021)面の回折ピークの強度比I(020)/I(021)が5.0以上である、
リン酸一水素カルシウム(CaHPO4・mH2O,但し0<m≦2である)を用いることを特徴とするポリアミド樹脂組成物の製造方法。
2.前記1.記載の方法により製造されたポリアミド樹脂組成物であって、ポリアミドを50〜99.5重量部、アパタイト型化合物を0.01〜50重量部含有することを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
【0006】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、ポリアミドと特定のアパタイト型化合物からなるポリアミド樹脂組成物およびその製造方法に係る。
本発明におけるポリアミドは、主鎖中にアミド結合(−NHCO−)を有する重合体であればよい。
【0007】
本発明において好ましく用いるポリアミドは、ポリカプロラクタム(ナイロン6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリウンデカメチレンアジパミド(ナイロン116)、ポリウンデカラクタム(ナイロン11)、ポリドデカラクタム(ナイロン12)、ポリトリメチルヘキサメチレンテレフタルアミド(ナイロンTMHT)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ナイロン6I)、ポリノナンメチレンテレフタルアミド(9T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(6T)、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ナイロンPACM12)、ポリビス(3−メチル−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ナイロンジメチルPACM12)、ポリメタキシリレンアジパミド(ナイロンMXD6)、ポリウンデカメチレンヘキサヒドロテレフタルアミド(ナイロン11T(H))、およびこれらのうち少なくとも2種の異なったポリアミド成分を含むポリアミド共重合体、およびこれらの混合物などである。これらのポリアミドのうち、本発明課題を達成するのにより好ましいポリアミドは、ポリカプロラクタム(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ナイロン6I)、およびこれらのうち少なくとも2種の異なったポリアミド成分を含むポリアミド共重合体、およびこれらの混合物などである。
【0008】
前記ポリアミド形成成分(原料)としては、重合可能なアミノ酸、重合可能なラクタム、あるいは重合可能なジアミン・ジカルボン酸塩、および重合可能な前記化合物のオリゴマーを挙げることができる。
重合可能なアミノ酸としては、例えば6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸をより具体的に挙げることができる。本発明では、これらの重合可能なアミノ酸を1種で用いても良いし、2種類以上組み合わせて用いても良い。
重合可能なラクタムとしては、例えばブチルラクタム、ピバロラクタム、カプロラクタム、カプリルラクタム、エナントラクタム、ウンデカノラクタム、ドデカノラクタムなどをより具体的に挙げることができる。本発明では、これらの重合可能なラクタムを1種で用いても良いし、2種類以上組み合わせて用いても良い。
【0009】
重合可能なジアミン・ジカルボン酸塩のジアミンとしては、例えばテトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ノナンメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、2,4−ジメチルオクタメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、3,8−ビス(アミノメチル)トリシクロデカン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5,−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジンなどを挙げることができる。本発明では、これらの重合可能なジアミンを1種で用いても良いし、2種類以上組み合わせて用いても良い。
【0010】
重合可能なジアミン・ジカルボン酸塩のジカルボン酸としては、例えばマロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、2,2−ジメチルグルタル酸、3,3−ジエチルコハク酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸、ドデカン二酸、エイコジオン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ジグリコール酸などを挙げることができる。本発明では、これらの重合可能なジカルボン酸は1種で用いても良いし、2種類以上組み合わせて用いても良い。
【0011】
本発明のポリアミド形成成分(原料)には、さらに分子量調節あるいは耐熱水性向上のために公知の末端封止剤を添加することができる。末端封止剤としては、モノカルボン酸またはモノアミンが好ましい。その他、無水フタル酸などの酸無水物、モノイソシアネート、モノ酸ハロゲン化物、モノエステル類、モノアルコール類などを挙げることができる。
末端封止剤として使用できるモノカルボン酸としては、アミノ基との反応性を有するものであれば特に制限はないが、例えば酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、イソブチル酸などの脂肪族モノカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸などの脂環式モノカルボン酸、安息香酸、トルイル酸、α−ナフタレンカルボン酸、β−ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、フェニル酢酸などの芳香族モノカルボン酸などを挙げることができる。本発明では、これらのモノカルボン酸を1種で用いても良いし、2種類以上組み合わせて用いても良い。
【0012】
末端封止剤として使用するモノアミンとしては、カルボキシル基との反応性を有するものであれば特に制限はないが、例えばメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミンなどの脂肪族モノアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミンなどの脂環式モノアミン、アニリン、トルイジン、ジフェニルアミン、ナフチルアミンなどの芳香族モノアミンなどを挙げることができる。本発明では、これらのモノアミンを1種で用いても良いし、2種類以上組み合わせて用いても良い。
【0013】
本発明の課題を達成するためのより好ましい末端封鎖剤は、酢酸、ステアリン酸等の脂肪族モノカルボン酸であり、最も好ましくは酢酸である。
本発明のポリアミドの分子量は、成形性および物性がより優れていることから、重量平均分子量(Mw)にして、1万〜100万であることが好ましく、更には2万〜50万、最も好ましくは3万〜20万のものである。重量平均分子量は、例えば、溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)を用い、分子量標準試料としてポリメタクリル酸メチル(PMMA)を用いて、ゲルパーミッショクロマトグラフィー(GPC)により求めることができる。
【0014】
本発明における好ましいアパタイト型化合物は、下記一般式で示される。
(A)10-z(HPO4)z(PO4)6-z(X)2-z・nH2O
ここで、0≦z<2、0≦n≦16であり、Aは金属元素、またXは陰イオンまたは陰イオン化合物であるが、成形性および物性の観点から0≦z<1、0≦n≦4であることがより好ましい。
前記一般式中のXで示される陰イオンまたは陰イオン化合物としては、水酸イオン(OH-)、フッ素イオン(F-)、塩素イオン(Cl-)などを挙げることができる。これら陰イオン元素または陰イオン化合物は1種であっても、2種以上であってもかまわない。また、本発明においては、前記一般式中のリン酸水素イオン(HPO4 2-)、リン酸イオン(PO4 3-)、あるいはXの一部が炭酸イオン(CO3 2-)に置換した炭酸含有アパタイトであってもよい。
【0015】
本発明においては、前記アパタイト型化合物の中、水酸アパタイト(Xが水酸イオン)、フッ素化アパタイト(Xの一部または全部がフッ素イオン)、塩素化アパタイト(Xの一部または全部が塩素イオン)、炭酸含有水酸アパタイト、炭酸含有フッ素化アパタイト、炭酸含有塩素化アパタイト、さらには、これらの混合物が好ましく用いられる。
かかるアパタイト型化合物形成成分(原料)としては、リン酸系金属化合物や、リン酸系金属化合物と非リン酸系金属化合物とからなる混合物などを挙げることができるが、本発明では、リン酸系金属化合物と非リン酸系金属化合物とからなる混合物であることがより好ましい。本発明では、アパタイト型化合物形成成分のリンに対する金属元素のモル比は0.9〜10.0が好ましく、より好ましくは1.2〜5.0、さらに好ましくは1.5〜2.0である。
【0016】
本発明におけるリン酸系金属化合物であるリン酸一水素カルシウム(CaHPO4・mH2O、但し0<m≦2である。)は、Phosphorus and its Compounds,1(1958)で記載されているVan WazerによるCaO−H2O−P2O5系の状態図が示すように、水の存在下、リン酸化合物とカルシウム化合物を混合することによる公知の方法で得ることができる。より具体的には、例えば、20〜100℃の温度下、リン酸二水素カリウム溶液に、リン酸アルカリ溶液および塩化カルシウム溶液を滴下し反応させ合成する方法や、炭酸カルシウムまたは水酸化カルシウムとリン酸水溶液を混合する方法などによれば良い。
【0017】
本発明に用いるリン酸一水素カルシウムは、その比表面積が5.0m2/g未満、より好ましくは2.5m2/g未満であることが必要である。比表面積の測定はBET法により求めることが出来る。より具体的には、リン酸一水素カルシウム0.5gを40℃で1.33×10-2Paの条件下24時間真空脱気して、吸着ガスとして窒素を用いて、比表面積測定装置にて求めることができる。この値が5.0m2/gより大きい場合、本発明の目的である得られる組成物の剛性や耐熱性が発現しづらくなる
【0018】
また、本発明においてはリン酸一水素カルシウムの平均粒径が0.1〜30μm、好ましくは0.1〜10μm、最も好ましくは0.1〜5μmである。平均粒径の測定は、リン酸一水素カルシウムを純水あるいはアルコール類中に分散させ、レーザー回折/散乱式粒度分布装置で測定する。レーザー回折/散乱式粒度分布装置で測定する方法をより具体的に説明すると、リン酸一水素カルシウム20mgを10mlの純水に分散させ、3分間の超音波処理を行い測定試料とした。ブランク試料は純水のみを用いて測定した。得られた粒度分布を基に、下記式で算出し、平均粒径とした。
平均粒径(μm)=Σdi・ni/Σni
ここで、diは粒径(μm)、niは頻度(%)である。
平均粒径が30μmより大きい場合、生成するアパタイト型化合物の粒径の均一性が失われやすく、かつ大きな凝集粒子が存在しやすくなる。
【0019】
さらに、本発明においてはリン酸一水素カルシウムのX線回折における(020)面の回折ピークと(021)面の回折ピークの強度比I(020)/I(021)が5.0以上、好ましくは10以上である。本発明においてはこの回折ピーク強度比の値が非常に重要であり、この値は広角X線回折を測定して確認することができる。より具体的に説明すると、X線の線源として、銅Kα(波長=1.542Å)を用いて広角X線回折を測定し、回折角(2θ)が11.5〜12.0度に現れる(020)面ピークと、回折角(2θ)が20.5〜21.0度に現れる(021)面ピークのピーク強度比I(020)/I(021)を求め、その値が10以上であることを確認すればよい。本発明では、上記のように確認されるリン酸一水素カルシウムであることが特に好ましい。強度比が5未満では得られる組成物の剛性、耐熱性が発現しづらくなるだけでなく、そのようなリン酸一水素カルシウム結晶(原料)そのものを製造、入手するのが困難であるため好ましくない。
【0020】
本発明における非リン酸系金属化合物としては、前記リン酸類以外で金属元素と化合物を形成するものであれば特に制限はなく、金属水酸化物(水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、水酸化マンガンなど)、金属塩化物(塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化ストロンチウム、塩化バリウム、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アルミニウム、塩化鉄、塩化マンガンなど)、金属フッ化物(フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、フッ化バリウム、フッ化ストロンチウム、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化アルミニウムなど)、金属臭化物(臭化カルシウムなど)、金属ヨウ化物(ヨウ化カルシウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化銅など)、金属炭化物(炭化カルシウムなど)、金属酸化物(酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウムなど)、炭酸金属塩(炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アルミニウムなど)、硫酸金属塩(硫酸カルシウムなど)、硝酸金属塩(硝酸カルシウムなど)、ケイ酸金属塩(ケイ酸カルシウム、ヘキサフルオロケイ酸ナトリウム、ケイ酸アルミニウムなど)などの無機金属化合物や、金属元素とモノカルボン酸との化合物(酢酸カルシウム、酢酸銅、安息香酸カルシウム、ステアリン酸カルシウムなど)、金属元素とジカルボン酸との化合物(しゅう酸カルシウム、酒石酸カルシウムなど)、金属元素とトリカルボン酸との化合物(クエン酸カルシウムなど)などを挙げることができる。本発明では、これらの非リン酸系金属化合物は、1種であっても良いし、2種以上組み合わせても良い。2種以上組み合わせる場合には、例えば水酸化カルシウムと炭酸カルシウムとの混合物のように、同種の金属元素を含有する化合物を組み合わせても良いし、例えば、炭酸カルシウムと水酸化マグネシウムとの混合物のように、異種の金属元素を含有する化合物を組み合わせても良い。本発明では、これら化合物の中でも、経済性および物性がより優れていることから、金属水酸化物、金属フッ化物、金属塩化物、炭酸金属塩、金属酸化物、あるいはこれらの混合物が好ましく用いられる。特に元素周期律表の2A族元素であるカルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウムの水酸化物、フッ化物、塩化物、炭酸塩、あるいはこれらの混合物がより好ましく、その中でもカルシウムの水酸化物、フッ化物、塩化物、炭酸塩、酸化物、あるいはこれらの混合物が最も好ましく用いられる。
【0021】
非リン酸系金属化合物の製造方法は特に制限されるものでなく、例えば炭酸カルシウムの場合を例にとると、天然材の粉砕品であっても、化学的に合成されたものであってもかまわない。また、その結晶形態や形状も特に制限されるものではなく、炭酸カルシウムの場合を例にとると、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、コロイド炭酸カルシウム、アラゴナイト型炭酸カルシウム、バテライト型炭酸カルシウム、針状型炭酸カルシウムなど、あるいはこれらの混合品など、いずれを用いてもかまわない。
【0022】
本発明のポリアミド樹脂組成物の製造方法は、ポリアミド形成成分(原料)に、アパタイト型化合物形成成分(原料)を配合し、次いでポリアミドの重合とアパタイト型化合物の合成を行う方法であれば良い。ポリアミドの重合とアパタイト型化合物の合成の好ましい方法は、ポリアミド形成成分とアパタイト型化合物形成成分との配合物を加熱し、ポリアミド形成成分をアパタイト型化合物形成成分の存在下に重合し、その後アパタイト型化合物を合成する方法や、あるいはアパタイト型化合物形成成分を予め配合し、ポリアミド形成成分の存在下に反応させ、その後ポリアミドを重合する方法である。より好ましい方法は、前記各成分の配合物を40〜300℃の温度下で、ポリアミドの重合反応およびアパタイト型化合物の合成反応を進行させる方法であり、最も好ましい方法は、前記各成分の配合物を加圧下、40〜300℃の温度下で、ポリアミドの重合反応およびアパタイト型化合物の合成反応を同時並行的に進行させる方法である。
【0023】
ポリアミド形成成分とアパタイト型化合物の形成成分の配合方法としては、固体状のポリアミド形成成分とアパタイト型化合物の形成成分を直接混合する方法、ポリアミド形成成分の水溶液とアパタイト型化合物形成成分の水溶液や懸濁液を配合する方法などのいずれによっても良い。またアパタイト型化合物の分散性を向上させるために、必要に応じて、ポリアミド形成成分やアパタイト型化合物形成成分に分散剤や錯化剤などの化合物を添加しても良い。
【0024】
前記分散剤としては、その種類は特に制限するものではなく、公知の分散剤を用いることができる。例えば、「分散・凝集の解明と応用技術」(株式会社テクノシステム発行)のP232〜237に記載のアニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤などを用いることができる。この中でもアニオン系及び非イオン系界面活性剤を用いることが好ましく、特にクエン酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸アンモニウム、スチレン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−無水マレイン酸などのオレフィン−無水マレイン酸共重合体、ショ糖ステアリン酸エステルなどのショ糖エステル類などを用いることがより好ましい。
【0025】
前記錯化剤としては、金属イオンと錯体を形成する化合物であれば特に制限されることがなく、例えば、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、シクロヘキサンジアミン四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、クエン酸、グルコン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、エチレンジアミンなどの脂肪族アミン、尿素などを用いることができる。
【0026】
前記ポリアミドの重合は、公知の方法を用いることができる。例えば、11−アミノウンデカン酸などの水に難溶な成分を形成成分とし、40〜300℃で加熱し重縮合する方法、ε−カプロラクタムを形成成分とし、その水溶液を必要に応じてモノカルボン酸などの末端封鎖剤、あるいはε−アミノカプロン酸などの反応促進剤を加えて、不活性ガスを流通させながら、40〜300℃に加熱し重縮合するラクタム類の開環重縮合法、ヘキサメチレンアジパミドなどのジアミン・ジカルボン酸を形成成分とし、その水溶液を40〜300℃の温度下、加熱濃縮し、発生する水蒸気圧を常圧〜1.96Mpa(ゲージ圧)の間の圧力に保ち、最終的には圧力を抜き常圧あるいは減圧し重縮合を行う熱溶融重縮合法などを用いることができる。さらには、ジアミン・ジカルボン酸固体塩や重縮合物の融点以下の温度で行う固相重合法、ジカルボン酸ハライド成分とジアミン成分とを溶液中で重縮合させる溶液法なども用いることができる。これらの方法は必要に応じて組合わせてもかまわない。また、重合形態としては、バッチ式でも連続式でもかまわない。また、重合装置も特に制限されるものではなく、公知の装置、例えば、オートクレーブ型の反応器、タンブラー型反応器、ニーダーなどの押出機型反応器などを用いることができる。
【0027】
本発明の製造方法で得られるポリアミド樹脂組成物のアパタイト型化合物の含有量は、0.01〜50重量%が好ましく、より好ましくは0.01〜40重量%、更には0.01〜25重量%、特に好ましくは1〜15重量%である。アパタイト型化合物の含有量は、例えば、ポリアミド樹脂組成物やその成形品などをJIS R3420に従って強熱減量(Ig.loss)を測定し、その重量減少量から求めることができる。具体的には、ポリアミド樹脂組成物やその成形品を十分乾燥した後、白金皿に約1g秤量し、650±20℃の電気炉で灰化し、冷却後、その重量を秤り、アパタイト型化合物の含有量を定量する。アパタイト型化合物の含有量が0.5重量%未満の場合には、剛性、強度および耐熱性の改良効果が本発明の目的を達成し得る程に顕著でなく、一方50重量%を越えた場合には、ポリマーの重合度が上がりにくくなるなどの問題が発生しやすい。
【0028】
本発明の製造方法により得られるポリアミド樹脂組成物は、アパタイト型化合物を含有し、ポリアミドとアパタイト型化合物の界面が極めて良好に固着、接着しているという特徴を持つ。アパタイト型化合物の合成は、例えば水酸アパタイトを例にとると、一般的には、水酸化カルシウムとリン酸などとを約PH8の水溶液中で反応させる湿式法、リン酸一水素カルシウムなどを約200℃、1.47Mpa(ゲージ圧)の高温高圧条件下で行う水熱法などが用いられているが、このアパタイト型化合物の合成条件はポリアミドの重合条件に、非常に似通っている。本発明者らは、この点に着目した。すなわち本発明のポリアミド樹脂組成物は、ポリアミドの形成成分とアパタイトの形成成分を混合し、ポリアミドの重合する過程のいずれかの段階で、アパタイト型化合物の合成も行うことが好ましい。
【0029】
このようにすることで、重合されていくポリアミドと合成されていくアパタイト型化合物との間に、イオン結合反応、吸着反応あるいはグラフト化反応などの物理的、化学的相互作用が起こり、アパタイト型化合物粒子の内部や表面部に、ポリアミド形成成分(原料)やポリアミド成分が取り込まれる。これら反応生成物(有機物)を介して合成されたアパタイト型化合物は、マトリックスであるポリアミド中に、均一かつ微細に分散し、またポリアミドとアパタイト型化合物との界面は、驚くべきほど良好に固着、接着する。このアパタイト型化合物の形成機構から分かるように、アパタイト型化合物形成成分であるリン酸一水素カルシウムのX線回折で観察される結晶性が高い(格子面の回折ピークが大きい)ほど、即ち格子面が整然と成長しているほど、その形態を反映するアパタイト型化合物結晶が生成し成長するため、アパタイト型化合物は結晶欠陥の少ないより強固なものになりやすい。このため得られるポリアミド樹脂組成物は、特に優れた剛性、耐熱性を発揮するのである。
【0030】
本発明の製造方法により得られるポリアミド樹脂組成物には、必要に応じて本発明の目的を損なわない範囲で通常のポリアミド樹脂に用いられるガラス繊維や炭素繊維などの繊維状強化材や充填剤、例えばマイカ、タルク、カオリン、粘土鉱物、炭酸カルシウム、アパタイト、リン酸ナトリウム、蛍石、アルミナ、シリカなどの無機フィラー、三酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、すず酸亜鉛、ヒドロキシすず酸亜鉛、ポリリン酸アンモニウム、シアヌル酸メラミン、サクシノグアナミン、ポリリン酸メラミン、硫酸メラミン、フタル酸メラミン、芳香族系ポリフォスフェート、複合ガラス粉末などの難燃剤、カーボンブラック、チタンホワイトなどの顔料やニグロシンなどの染料、あるいはアルミニウム、ニッケル、スズ、銅、金、銀、チタンなどの金属粒子、パールマイカ顔料、カラーグラファイト、カラーガラス繊維、カラーガラスフレークなどのメタリック顔料などの着色剤、亜リン酸ソーダやヒンダードフェノール、ヒンダートアミン、トリアジン系、イオウ系に代表される熱安定剤、リン酸エステル、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド化合物やパラフィンワックス、無機結晶核剤などの滑剤、種々の可塑剤、耐候性向上剤や帯電防止剤などの各種添加剤を含有させることができる。
【0031】
本発明においては、必要に応じて本発明の目的を損なわない範囲で、ポリアミドに他の樹脂を混合してもかまわない。配合する他の樹脂としては、熱可塑性樹脂やゴム成分あるいは前記充填材や難燃剤、着色剤、熱安定剤等を配合したマスターバッチを添加することができる。
【0032】
前記他の熱可塑性樹脂は、例えばアタクチックポリスチレン、アイソタクチックポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、AS樹脂などのポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなどのポリエーテル系樹脂、
ポリフェニレンスルフィド、ポリオキシメチレン、他のポリアミドなどの縮合系樹脂、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレンープロピレン共重合体などのポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオルエチレン(PTFE)などの含ハロゲンビニル化合物系樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂などを挙げることができる。
【0033】
ゴム成分は、ゴムやそれらの変性体を挙げることができる。ゴムは、例えば天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ネオプレン、ポリスルフィドゴム、チオコールゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、エビクロロヒドリンゴム、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBR)、水素添加スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SEB)、
【0034】
スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、水素添加スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−イソプレンブロック共重合体(SIR)、水素添加スチレン−イソプレンブロック共重合体(SEP)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、水素添加スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、
【0035】
スチレン−ブタジエンランダム共重合体、水素添加スチレン−ブタジエンランダム共重合体、スチレン−エチレン−プロピレンランダム共重合体、スチレン−エチレン−ブチレンランダム共重合体、エチレン−プロピレン共重合体(EPR)、エチレン−(1−ブテン)共重合体、エチレン−(1−ヘキセン)共重合体、エチレン−(1−オクテン)共重合体、
【0036】
エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、あるいはブタジエン−アクリロニトリル−スチレン−コアシェルゴム(ABS)、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン−コアシェルゴム(MBS)、メチルメタクリレート−ブチルアクリレート−スチレン−コアシェルゴム(MAS)、オクチルアクリレート−ブタジエン−スチレン−コアシェルゴム(MABS)、
【0037】
アルキルアクリレート−ブタジエン−アクリロニトリル−スチレンコアシェルゴム(AABS)、ブタジエン−スチレン−コアシェルゴム(SBR)、メチルメタクリレート−ブチルアクリレートシロキサンをはじめとするシロキサン含有コアシェルゴムなどのコアシェルタイプを挙げることができる。
【0038】
また、ゴム変性体は、上記ゴムを、極性基を有する変性剤により変性したものであり、例えば無水マレイン酸変性SEBS、無水マレイン酸変性SEPS、無水マレイン酸変性エチレン−プロピレン共重合体、無水マレイン酸変性エチレン−(1−ブテン)共重合体、無水マレイン酸変性エチレン−(1−ヘキセン)共重合体、無水マレイン酸変性エチレン−(1−オクテン)共重合体、
無水マレイン酸変性EPDM、エポキシ変性SEBS、エポキシ変性エチレン−プロピレン共重合体、エポキシ変性エチレン−(1−ブテン)共重合体、エポキシ変性エチレン−(1−ヘキセン)共重合体、エポキシ変性エチレン−(1−オクテン)共重合体などが好ましく用いられる。本発明では、ポリアミドに、上記熱可塑性樹脂、ゴム成分を1種類配合して用いても良いし、2種類以上組み合わせて配合して用いても良い。
【0039】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に制限されるものではない。なお、以下の実施例、比較例において記載した物性評価は、以下のように行った。
1.ポリアミド樹脂組成物の特性
(1−1)リン酸一水素カルシウムの比表面積(BET法)
リン酸一水素カルシウム0.5gを40℃で1.33×10-2Paの条件下24時間真空脱気して、吸着ガスとして窒素を用いて、比表面積測定装置にて求めた。
(1−2)リン酸一水素カルシウムの平均粒径(μm)
リン酸一水素カルシウムを純水中に分散させ、レーザー回折/散乱式粒度分布装置で測定した。
【0040】
(1−3)リン酸一水素カルシウムの結晶性(ピーク強度比)
広角X線回折を測定して、(020)面ピークと(021)面ピークのピーク強度比I(020)/I(021)から算出した。測定条件は以下の通りである。
X線源:銅Kα,波数:1.542Å,管電圧:40KV,管電流:200mA,
走査速度:4゜/min,発散スリット:1゜,散乱スリット:1゜,受光スリット:0.15mm
【0041】
(1−4)重量平均分子量(Mw)
ゲルパーミッショクロマトグラフィー(GPC)により求めた。装置は東ソー(株)製HLC−8020、検出器は示差屈折計(RI)、溶媒はヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)、カラムは東ソー(株)製TSKgel−GMHHR−Hを2本とG1000HHRを1本用いた。溶媒流量は0.6ml/min、サンプル濃度は、1〜3(mgサンプル)/1(ml溶媒)であり、フィルターでろ過し、不溶分を除去し、測定試料とした。得られた溶出曲線をもとに、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)換算により、重量平均分子量(Mw)を算出した。
【0042】
(1−5)アパタイト型化合物の含有量の定量(重量%)
ポリアミド樹脂組成物を100±20℃で8時間乾燥し冷却する。組成物を白金皿に1g秤量し、650±20℃の電気炉で灰化し、冷却後、その重量を秤り、アパタイト型化合物の含有量を定量した。
【0043】
2.ポリアミド樹脂組成物の物性評価
(2−1)物性評価用成形品の作成
成形品は、射出成形機を用いて作成した。装置は日精樹脂(株)製PS40E、シリンダー温度280℃、金型温度80℃に設定し、射出17秒、冷却20秒の射出成形条件で、厚み3.0mm、長さ130mm、幅30mmの物性評価用成形品を得た。
(2−2)曲げ弾性率および曲げ強度(Mpa)
ASTM D790に準じて行った。
(2−3)引張り強度(Mpa)及び引張伸度(%)
ASTM D638に準じて行った。
(2−4)荷重たわみ温度(℃)
ASTM D648に準じて行った。荷重は1.82Mpaで行った。
【0044】
【実施例1】
ポリアミド形成成分として、1.5Kgのヘキサメチレンジアミン・アジピン酸等モル固体塩を用いた。該固体塩を50℃の純水1.5Kgに溶解し、水溶液として用いた。アパタイト型化合物形成成分として、比表面積2.0,平均粒子径3.0μm,結晶性(ピーク強度比)10.0のリン酸一水素カルシウム二水和物(CaHPO4・2H2O)の25重量%懸濁液を600g(リン酸一水素カルシウム二水和物:純水=150g:450g)、および平均粒子径1.5μm重質炭酸カルシウム(CaCO3)の25重量%懸濁液を232g(炭酸カルシウム:純水=58g:174g)用いた。該ポリアミド形成成分の水溶液とアパタイト型化合物形成成分の懸濁液とを、5リットルのオートクレーブ中に仕込み、50℃の温度下、よく攪拌した。用いた成分の量から、アパタイト型化合物形成成分の含有量は12.2重量%、リンに対する金属元素の比はモル比にして1.67と算出される。十分窒素で置換した後、温度を50℃から270℃まで昇温した。この際、オートクレーブ内の圧力は、ゲージ圧にして1.77Mpaになるが、圧力が1.77Mpa以上にならないよう水を系外に除去しながら加熱を1時間続けた。その後加熱を止め、室温まで冷却し、オートクレーブを開け、約1.5Kgのポリマーを取出し、粉砕機により粉砕し、80℃の窒素気流中で24時間乾燥した。該粉砕ポリマーを用いて、物性評価用成形品を作製した。該成形品の重量平均分子量(Mw)は36000であり、灰化による測定から、アパタイト型化合物の含有量は10.2重量%であった。さらに高周波誘導結合プラズマ発光分析によるカルシウムとリンの定量の結果、リンに対するカルシウムのモル比は1.67と算出された。透過型顕微鏡の観察結果から、アパタイト型化合物の平均粒子径は0.32μmであった。
【0045】
【実施例2】
ポリアミド形成成分として、1.2Kgのヘキサメチレンジアミン・アジピン酸等モル固体塩とヘキサメチレンジアミン・イソフタル酸等モル塩0.3kgとの混合物からなる50重量%水溶液3.0kgを用いる以外は、実施例1と同様にして行った。
【0046】
【比較例1】
アパタイト型化合物形成成分を配合しない他は、実施例1と同様にして行った。
【0047】
【比較例2】
層状珪酸塩の一単位の厚みが平均的に95nmで、一辺の長さが約0.1μmのモンモリロナイト10gを1リットルの水に分散し、これに5.1gの12−アミノドデカン酸と2.4mlの濃塩酸を加え、5分間撹拌した後濾過した。更にこれを十分洗浄した後、真空乾燥し、12−アミノドデカン酸のアンモニウムイオンとモンモリロナイトとの複合体を調製した。この操作を繰り返し、約200gの12−アミノドデカン酸のアンモニウムイオンとモンモリロナイトとの複合体を得た。
50重量%のポリアミド形成成分(ヘキサメチレンジアミン・アジピン酸等モル塩)の水溶液3kgに、12−アミノドデカン酸のアンモニウムイオンとモンモリロナイトの複合体150gと、カチオン系界面活性剤としてアルキルピコリニウムクロライドの25重量%水溶液(商品名:カチオーゲンH,第一工業製薬(株)製)を18gとを、5リットルのオートクレーブに仕込み、50℃の温度下よく撹拌した。その後の操作は実施例1と同様にして行った。
【0048】
【実施例3】
アパタイト型化合物形成成分として、比表面積2.0,平均粒子径3.0μm,結晶性(ピーク強度比)10.0のリン酸一水素カルシウム二水和物(CaHPO4・2H2O)の25重量%懸濁液を1500g(リン酸一水素カルシウム二水和物:純水=375g:1125g)、および平均粒子径1.5μm重質炭酸カルシウム(CaCO3)の25重量%懸濁液を580g(炭酸カルシウム:純水=145g:435g)用いる以外は実施例1と同様にして行った。
【0049】
【実施例4】
アパタイト型化合物形成成分として、比表面積2.0,平均粒子径3.0μm,結晶性(ピーク強度比)10.0のリン酸一水素カルシウム二水和物(CaHPO4・2H2O)の25重量%懸濁液を300g(リン酸一水素カルシウム二水和物:純水=75g:225g)、および平均粒子径1.5μm重質炭酸カルシウム(CaCO3)の25重量%懸濁液を116g(炭酸カルシウム:純水=29g:87g)用いる以外は実施例1と同様にして行った。
【0050】
【実施例5】
アパタイト型化合物形成成分として、比表面積3.5,平均粒子径10μm,結晶性(ピーク強度比)5.0のリン酸一水素カルシウム二水和物を用いる以外は実施例4と同様にして行った。
【0051】
【比較例3】
アパタイト型化合物形成成分として、比表面積40,平均粒子径0.01μm,結晶性(ピーク強度比)0.05のリン酸一水素カルシウム二水和物を用いる以外は実施例4と同様にして行った。
【0052】
【比較例4】
アパタイト型化合物形成成分として、比表面積2.0,平均粒子径75μm,結晶性(ピーク強度比)10.0のリン酸一水素カルシウム二水和物を用いる以外は実施例4と同様にして行った。
【0053】
【比較例5】
アパタイト型化合物形成成分として、比表面積10.0,平均粒子径25μm,結晶性(ピーク強度比)2.0のリン酸一水素カルシウム二水和物を用いる以外は実施例4と同様にして行った。
上記実施例1〜5および比較例1〜2の評価結果を表1に、比較例3〜5の評価結果を表2に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
【発明の効果】
本発明方法により得られる組成物は、マトリックスであるポリアミド中に均一にかつ微細に分散し、その界面においてポリアミドに極めて良好に固着、接着しているアパタイト型化合物からなるポリアミド樹脂組成物である。したがって、本発明のポリアミド樹脂組成物は、剛性、強度、耐熱性、靭性に優れ、その中でも特に剛性及び耐熱性に優れるという特徴を有するものであり、機械工業部品、電気電子部品、自動車部品などの産業用材料として非常に有用であることが期待される。
Claims (2)
- (A)ポリアミド形成成分と(B)アパタイト型化合物形成成分とを配合し、ポリアミドの重合反応およびアパタイト型化合物の合成反応を進行させてポリアミド樹脂組成物を製造するに際し、(B)アパタイト型化合物形成成分のうちリン酸系金属化合物として、
1)比表面積(但し、窒素吸着によるBET法での測定値)が5.0m2/g未満である、
2)平均粒径が0.1〜30μmである、
3)X線回折における(020)面の回折ピークと(021)面の回折ピークの強度比I(020)/I(021)が5.0以上である、
リン酸一水素カルシウム(CaHPO4・mH2O,但し0<m≦2である)を用いることを特徴とするポリアミド樹脂組成物の製造方法。 - 請求項1記載の方法により製造されたポリアミド樹脂組成物であって、ポリアミドを50〜99.5重量部、アパタイト型化合物を0.01〜50重量部含有することを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
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