JP4562223B2 - 半導体単結晶の熱処理方法及び半導体装置の製造方法 - Google Patents

半導体単結晶の熱処理方法及び半導体装置の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、発光ダイオード(LED)や半導体レーザダイオード(LD)等の光電変換機能素子の材料として好適な化合物半導体単結晶の結晶性を改善する技術に係り、特に化合物半導体単結晶の熱処理技術及びこれを用いた半導体装置の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
II−VI族間化合物半導体(以下において「II−VI族化合物半導体」と略記する。)およびIII−V族間化合物半導体(以下において「III−V族化合物半導体」と略記する。)は種々の禁制帯幅を有するため、光学的特性も多様である。従って、禁制帯幅を適正に選ぶことにより所望の波長の光を得ることが可能となるため、LEDや半導体LD等の光電変換機能素子用の材料として用いられている。
【0003】
例えば、III−V族化合物半導体である窒化ガリウム(GaN),燐化ガリウム(GaP),砒化ガリウム(GaAs),燐化インジウム(InP)といった材料を用いて、紫外光から赤外光で発光する種々の光デバイスが工業的に製造されている。また、II−VI族化合物半導体でもセレン化亜鉛(ZnSe),テルル化亜鉛(ZnTe),酸化亜鉛(ZnO)等の材料を用いて光デバイスが試作されている。さらに、ZnSe系の白色LEDでは研究段階から試作段階への移行も進められている。
【0004】
III−V族化合物半導体やII−VI族化合物半導体を用いた半導体装置の製造において、最も問題となる点は化学量論的組成(ストイキオメトリー組成)の制御が困難で、良質な単結晶が得にくいという点である。つまり、化合物半導体の結晶成長やその後の拡散工程、熱処理工程においては、化合物半導体を構成する一方の元素の蒸気圧が他方の元素の蒸気圧よりも高いため、空孔(ベイカンシー)等の結晶欠陥が生成されやすいという問題を抱えている。このため、II−VI族化合物半導体においては、一般にp型、n型の導電型の自由な制御が困難である。また、たとえp型となってもpn接合の動作に必要な十分な正孔濃度、正孔移動度を得ることができなかった。例えば、アクセプタ不純物を添加するとVI族元素の空孔が生成され、アクセプタを補償するドナーとして働き、逆に、ドナー不純物を添加するとII族元素の空孔が生成され、ドナーを補償するアクセプタとして働くためであると考えられる。従って、II−VI族化合物半導体を主材料として製造され、実用化された光電変換機能素子は極めて限定されている。
【0005】
最近、ラジカル粒子ビーム源と呼ばれる特殊な装置を用いて、GaAs基板上に分子線エピタキシャル成長法によりZnSe系の混晶薄膜を形成し、pn接合型のダイオードを製造する技術等が提案され(特開平4−273482号参照)、ZnSe系の青色系発光デバイスの実用化が進みつつある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
一方で、このZnSe材料系以外のII−VI族化合物半導体においては、化学量論的組成比の制御が未だ困難であるため、結晶の完全性に優れた高品位の基板が入手出来ないのが現状である。従って、ZnSe材料系以外のII−VI族化合物半導体を用いた光電変換機能素子やトランジスタ等の半導体装置は未だ実用化されるに至っていない。
【0007】
II−VI族化合物半導体の結晶成長時の融液の組成と成長された結晶の組成に関する相図を調べてみると、液相線と固相線のコングルーエントポイントが必ずしも化学量論的組成となっていないため、II−VI族化合物半導体の結晶成長における化学量論的組成比の制御は、非常に難しい。
【0008】
また、上述したように、蒸気圧の高い元素を構成元素としているII−VI族化合物半導体では、結晶成長、熱拡散或いはその他の熱処理を実行するための昇温中の原料や高温に加熱された結晶表面より蒸気圧の高い元素が揮散し、組成ずれが起こりやすい。
【0009】
化学量論的組成のずれたII−VI族化合物半導体結晶では、析出物が形成されやすい。また、化学量論的組成のずれに起因する結晶欠陥が、キャリアのトラップや非発光センターと機能するので、これらのII−VI族化合物半導体を用いた半導体装置(デバイス)の性能を劣化させる。特に、化学量論的組成のずれたII−VI族化合物半導体結晶基板を光デバイス(半導体発光素子)や高周波デバイス(高周波トランジスタ)用の基板として使用した場合、結晶欠陥や析出物を介したリーク電流が発生する。さらには、このリーク電流により発生する熱により転位密度が増加するという2次的問題をも生む。
【0010】
このように、II−VI族化合物半導体結晶の化学量論的組成のずれは、このII−VI族化合物半導体結晶を用いた種々の半導体装置の光学的特性、電気的特性、高周波特性等のデバイス性能およびその寿命に大きく影響し、問題となる。
【0011】
しかし、ZnSe材料系以外のII−VI族化合物半導体においては、化学量論的組成比の制御を実現するための簡単且つ有効な手法が未だ知られていない。
【0012】
上記問題点に鑑み、本発明は、II−VI族化合物半導体単結晶の化学量論的組成制御に有効な熱処理温度と熱処理時の雰囲気ガスの圧力との関係を与える有効な関係式を導出することである。
【0013】
本発明の他の目的は、上記関係式をもちいて、化学量論的組成のずれたII−VI族化合物半導体単結晶に対して、正確且つ有効に化学量論的組成を制御出来る簡単な半導体単結晶の熱処理方法を提供することである。
【0014】
本発明のさらに他の目的は、析出物を消失させ、理想的な化学量論的組成を達成できる半導体単結晶の熱処理方法を提供することである。
【0015】
本発明のさらに他の目的は、キャリアのトラップや非発光センターがないII−VI族化合物半導体を用いた半導体装置の製造方法を提供することである。
【0016】
本発明のさらに他の目的は、結晶欠陥や析出物を介したリーク電流が抑制され、光学的特性、電気的特性、高周波特性等のデバイス性能の優れた半導体装置の製造方法を提供することである。
【0017】
本発明のさらに他の目的は、動作寿命の長く、安定且つ信頼性の高い半導体装置を安価に実現できる半導体装置の製造方法を提供することである。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、第1元素と、この第1元素とは異なる第2元素とから少なくとも構成されるII−VI族化合物半導体単結晶の熱処理方法であって、II−VI族化合物半導体単結晶を所定の熱処理温度に加熱するステップと、この熱処理温度に対して所定の関係式により一義的に規定される第1元素の蒸気圧を単結晶に対して印加するステップとにより単結晶中の析出物を消失させる半導体単結晶の熱処理方法であることを第1の特徴とする。第1及び第2元素のみから構成されれば、2元系のII−VI族化合物半導体であるが、本発明は、2元系のII−VI族化合物半導体に限られるものではない。さらに、第3,第4,・・・・・の元素を含む、3元系,4元系,・・・・・等のII−VI族化合物半導体混晶でもかまわない。この熱処理は、II−VI族化合物半導体単結晶を結晶成長した後、インゴット状態の単結晶をそのまま、もしくは単結晶(インゴット)を板状に切り出したウェハ形状の基板を使用して実施すればよい。
【0019】
ここで、上記の「析出物」は、第2元素からなる析出物であることが好ましい。
【0020】
例えば、本発明の第1の特徴に係る「II−VI族化合物半導体」は、テルル化亜鉛(ZnTe)であり、第1元素は亜鉛(Zn)であり、第2元素はテルル(Te)であることが好適である。この場合「析出物」は、Teの析出物であることは勿論である。例えば、垂直温度勾配凝固(VGF)法により結晶成長したp型ZnTe単結晶を、結晶成長後、いわゆるアズ・グローン(as grown)の状態で赤外線散乱法等により観察すると、この単結晶中にTeの析出物があることが確認できる。
【0021】
また、上記の「所定の関係式」は、本発明者らが実験、測定及び検討を重ねることにより初めて得られた実験式である。熱処理後のII−VI族化合物半導体単結晶中のキャリア密度は、第1元素の蒸気圧P1が高くなるにつれて、低下する。この第1元素の蒸気圧P1の増大に伴うキャリア密度の減少の原因は、第1元素の蒸気圧P1を増加するに従い、II−VI族化合物半導体単結晶中に第1元素の格子間原子が増加し、この格子間原子がドナータイプの欠陥として働くためと考えられる。
【0022】
そこで、化学量論的組成の制御に適した熱処理温度Tと第1元素の蒸気圧P1との関係式は以下のようにして求めることが出来る。先ず、II−VI族化合物半導体単結晶を石英アンプル等の熱処理容器の内部に配置し、所定の熱処理温度Tにおける熱処理においてある有限の時間の熱処理を実施する。即ち、比較的短時間の熱処理において、第2元素の析出物が消失しかける蒸気圧に着目する。第2元素の析出物が、ほとんどが消失したが、完全には消失せず、一部は縮小化して残っている状態が、化学量論的組成の制御に適した条件に近いと推定するのである。つまり、第2元素の析出物の一部が縮小化して残る程度の第1元素の蒸気圧P1の雰囲気下では、キャリア密度は比較的高い。このキャリア密度が比較的高い状態は、第1元素の格子間原子が、II−VI族化合物半導体単結晶中に形成されていないと推定できる。なお、熱処理時間Tを充分に長くすれば、第2元素の析出物は、完全に消失すると考えられる。このようにして、種々のII−VI族化合物半導体単結晶の化学量論的組成の制御に適した熱処理温度Tと第1元素の蒸気圧P1との関係式を求めることが出来る。この際、II−VI族化合物半導体単結晶の融点における第1元素の蒸気圧P1をも考慮すればよい。
【0023】
例えば、II−VI族化合物半導体単結晶の例であるZnTeの場合は、第1元素としての亜鉛蒸気圧をPZn(Pa)、熱処理温度をT(K)として、「所定の関係式」は、
Zn=9.0×1011×exp(−2.4×104/T)・・・・・(1)
で与えられる。このようにして、他のII−VI族化合物半導体に対しても同様な実験式が規定できる。
【0024】
つまり、この式(1)と同様な、それぞれのII−VI族化合物半導体に対する実験式を用いて、これらの実験式を満足する熱処理温度及び熱処理時の第1元素からなる雰囲気ガスの圧力を決定すればよい。そして、この熱処理温度及び熱処理圧力を用いて、熱処理すればII−VI族化合物半導体単結晶中の第2元素の析出物を消失させ、化学量論的組成を実現することができる。
【0025】
より具体的には、ZnTeの場合には、熱処理温度を500℃以上1100℃以下とすることが好ましい。
【0026】
また、本発明の第1の特徴に係る熱処理を、II−VI族化合物半導体単結晶の結晶成長直後において、結晶成長を実施した炉内で、直接行えば、工程数の増大を最小限にとどめ、且つ化合物半導体の化学量論的組成を高精度に制御出来、より結晶の完全性の高い半導体単結晶を簡単に得ることができる。例えば2ゾーンの炉等を用意し、石英アンプル等の結晶成長用の容器に、第1元素からなるガスの圧力を制御するためのリザーバ等をキャピラリ等で接続した構造を採用すればよい。
【0027】
本発明の第2の特徴は、第1元素と、この第1元素とは異なる第2元素とから少なくとも構成されるII−VI族化合物半導体単結晶の熱処理方法であって、II−VI族化合物半導体単結晶を第1熱処理温度に加熱し、第1熱処理温度に対して所定の関係式により一義的に規定される蒸気圧以上の第1元素の第1圧力を単結晶に対して印加する第1熱処理工程と、この単結晶を第2熱処理温度に加熱し、第2熱処理温度に対して上記の所定の関係式により一義的に規定される第1元素の蒸気圧の10倍以下の第1元素の第2圧力を単結晶に対して印加する第2熱処理工程とにより単結晶中の析出物を消失させる半導体単結晶の熱処理方法であることである。このような本発明の第2の特徴に係る2段階の熱処理は、II−VI族化合物半導体単結晶を結晶成長した後、インゴット状態の単結晶をそのまま、もしくは単結晶(インゴット)を板状に切り出したウェハ形状の基板を使用して実施すればよい。
【0028】
第1の特徴で述べたと同様に、本発明の第2の特徴における「析出物」は、第2元素からなる析出物であることが好ましい。キャリア密度は第1元素の蒸気圧P1が高くなるにつれて低下する。その原因は、熱処理後、第1元素の格子間原子が蒸気圧P1の増加と共に増え、ドナータイプの欠陥として働くたためと考えられる。ほぼ化学量論的組成の制御に適した条件で熱処理することにより、第1元素の格子間原子が形成されていない状態が達成される。例えば、第2元素からなる析出物を消失し、キャリア密度の高いII−VI族化合物半導体単結晶を得るには(第1元素の格子間原子を低減するには)、初めに結晶成長時に形成された第2元素の析出物を消失するための比較的高温・高圧の第1熱処理工程を行い、次に第1元素の格子間原子のようなドナー型結晶欠陥によるキャリア密度の低下を抑制するための比較的低温で且つ化学量論的組成制御可能な第1元素の蒸気圧下で第2熱処理工程を実施することが有効である。しかし、第1熱処理温度と第2熱処理温度は異なる温度でも、等しい温度でもかまわない。
【0029】
また、本発明の第2の特徴に係る「所定の関係式」は、第1の特徴で述べた式(1)と同様に、所定の実験とその測定により得られる実験式で、第1元素の蒸気圧P(Pa)と熱処理温度T(K)との関係を示す式である。
【0030】
本発明の第2の特徴に係る「II−VI族化合物半導体」は、第1の特徴と同様に、テルル化亜鉛(ZnTe)であることが好ましい。この場合、「第1元素」は亜鉛(Zn)であり、「第2元素」はテルル(Te)となる。
【0031】
ZnTeの熱処理の場合は、第1及び第2熱処理温度の少なくとも一方が500℃以上1100℃以下とすればよい。特に、第2熱処理温度を400℃以上800℃以下とすることが好ましい。
【0032】
本発明の第2の特徴において、第1熱処理工程をII−VI族化合物半導体単結晶の結晶成長直後において、結晶成長を実施した炉内で、直接行えば、工程数の増大を最小限にとどめ、且つ化合物半導体の化学量論的組成を高精度に制御出来、より結晶の完全性の高い半導体単結晶を簡単に得ることができる。さらに、第2熱処理工程を同一の炉内で行えば、同様に工程数の増大を最小限にとどめ、さらに結晶の完全性の高い半導体単結晶を簡単に得ることができることは勿論である。
【0033】
尚、上述したように、式(1)は実験式である。従って、式(1)で規定される化学量論的組成となる蒸気圧の10倍以下の蒸気圧(第2圧力)を用いて、第2熱処理工程を実行することにより、実際の実験から式(1)を決定する際の誤差を許容することが可能となる。即ち、熱処理の実験結果に、1桁未満の蒸気圧の変動幅が生じても、実用上問題とならないような蒸気圧(第2圧力)を用いて、第2熱処理工程を実行でき、高品位の単結晶を得ることが可能となる。
【0034】
本発明の第3の特徴は、第1元素と、この第1元素とは異なる第2元素とから少なくとも構成されるII−VI族化合物半導体単結晶を用いた半導体装置の製造方法であって、II−VI族化合物半導体単結晶を所定の熱処理温度に加熱するステップと、この所定の熱処理温度に対して所定の関係式により一義的に規定される第1元素の蒸気圧を単結晶に対して印加するステップとにより単結晶中の析出物を消失させる熱処理工程を少なくとも含む半導体装置の製造方法であることである。「熱処理工程を少なくとも含む」とは、この熱処理工程の後に、拡散工程、成膜工程(エピタキシャル成長工程)、あるいは電極形成工程等、各種半導体装置の設計仕様に応じて種々の工程を付加出来るという意である。また、「半導体装置」とは、LEDや半導体LD等の半導体発光素子(光電変換機能素子)、あるいは電界効果トランスタ(FET)、静電誘導トランジスタ(SIT)、バイポーラトランジスタ(BJT)等の電子デバイス等の種々の半導体装置が含まれる。
【0035】
第1及び第2の特徴と同様に、この「析出物」を、第2元素からなる析出物とすれば、本発明の第3の特徴に係る「所定の関係式」は、式(1)と同様な第1元素の蒸気圧P(Pa)と熱処理温度T(K)との関係を示す実験式として示される。また、第3の特徴に係る「II−VI族化合物半導体」は、第1及び第2の特徴と同様に、テルル化亜鉛(ZnTe)であることが好ましい。この場合、「第1元素」は亜鉛(Zn)であり、「第2元素」はテルル(Te)となる。
【0036】
本発明の第3の特徴に係る半導体装置の製造方法によれば、非発光センターになりやすい欠陥や析出物を介したリーク電流等による半導体装置の特性の劣化が低減できる。また、高品質な半導体装置を高い製造歩留りで製造することが可能となる。
【0037】
本発明の第4の特徴は、第1元素と、この第1元素とは異なる第2元素とから少なくとも構成されるII−VI族化合物半導体単結晶を用いた半導体装置の製造方法であって、II−VI族化合物半導体単結晶を第1熱処理温度に加熱し、第1熱処理温度に対して所定の関係式により一義的に規定される蒸気圧以上の第1元素の第1圧力を単結晶に対して印加する第1熱処理工程と、単結晶を第2熱処理温度に加熱し、第2熱処理温度に対して所定の関係式により一義的に規定される蒸気圧の10倍以下の第1元素の第2圧力を単結晶に対して印加する第2熱処理工程とにより単結晶中の析出物を消失させる2段階の熱処理工程を少なくとも含む半導体装置の製造方法であることである。第3の特徴と同様に、「半導体装置」には、光電変換機能素子や各種のトランスタ、ダイオード、サイリスタ等が含まれることは勿論である。「2段階の熱処理工程を少なくとも含む」とは、この2段階の熱処理工程の後に、拡散工程、成膜工程(エピタキシャル成長工程)、あるいは電極形成工程等、各種半導体装置の設計仕様に応じて種々の工程を付加出来るという意である。
【0038】
第4の特徴における「析出物」が、第2元素であれば、「所定の関係式」は、式(1)と同様に、第1元素の蒸気圧P(Pa)と熱処理温度T(K)との関係を示す実験式である。また、第4の特徴に係る「II−VI族化合物半導体」は、第1乃至第3の特徴と同様に、テルル化亜鉛(ZnTe)であることが好ましい。ZnTeの熱処理の場合は、第1及び第2熱処理温度の少なくとも一方が500℃以上1100℃以下とすればよい。特に、第2熱処理温度を400℃以上800℃以下とすることが好ましい。
【0039】
本発明の第4の特徴に係る半導体装置の製造方法によれば、非発光センターになりやすい欠陥や析出物を介したリーク電流等による半導体装置の特性の劣化が低減できる。また、高品質な半導体装置を高い製造歩留りで製造することが可能となる。
【0040】
尚、本発明の第4の特徴に係る半導体装置の製造方法において、式(1)のような実験式(所定の関係式)で算出される蒸気圧に対して、10倍以下の蒸気圧(第2圧力)を用いて第2熱処理工程することにより、実験式を決定する場合に現実問題として生じる蒸気圧の変動幅を許容することが可能となる。
【0041】
【発明の実施の形態】
次に、図面を参照して、本発明の第1乃至第3の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0042】
(第1の実施の形態:実験式の導出)
先ず本発明の「所定の関係式」としての実験式の導出方法を説明する。即ち、II−VI族化合物半導体の化学量論的組成を制御するために、いかなる式で熱処理時に於ける第1元素の蒸気圧P(Pa)と熱処理温度T(K)との関係が示されるかを示す。
【0043】
具体的には、II−VI族化合物半導体の一例として、p型テルル化亜鉛(ZnTe)を例示し、p型ZnTe単結晶の熱処理実験と、その測定結果について説明する。
【0044】
本発明の実験式の導出するためのp型ZnTe単結晶はVGF法により結晶成長したものを採用した。p型結晶を得るために、結晶成長時に、不純物としてリン(P)を添加した。このVGF法による結晶成長直後(アズ・グローン)のキャリア密度は2.0×1017cm-3程度である。アズ・グローンの単結晶を光学顕微鏡(ノマルスキー顕微鏡)で観察すると、図1(a)に示すように、この単結晶中にTeの析出物があることが確認出来る。
【0045】
図1(b)は、アズ・グローンのキャリア密度が2.0×1017cm-3のZnTe基板に対して、基板温度(熱処理温度)T=700℃において、亜鉛の飽和蒸気圧(亜鉛蒸気圧)PZn=8.0×103Paを引加し、40時間の熱処理を実施した後の基板の表面を、光学顕微鏡(ノマルスキー顕微鏡)で観察した結果である。熱処理後、図1(a)に認められた基板表面のTe析出物が消失していることが分かる。
【0046】
また、この熱処理後の基板のキャリア密度をファンデルポー(Van der Pauw)法で測定した。熱処理により、ZnTeの伝導型はp型のままで、キャリア密度は8.1×1015cm-3となり、結晶成長直後(アズ・グローン)のキャリア密度より低くなっていた。キャリア密度が低下した原因は、熱処理により、ドナー型欠陥となる亜鉛の格子間原子が形成されたためと考えられる。
【0047】
図2は、熱処理温度T=700℃、亜鉛蒸気圧PZn=8.0×103Paで、40時間の熱処理後の基板からのフォトルミネッセンス(PL)スペクトルである。このフォトルミネッセンス(PL)測定は、室温(300K)に於いて、波長λ=488nmのアルゴン(Ar)イオンレーザ光を基板表面に照射して、その発光スペクトルを得たたものである。図2に示すPLスペクトルに明らかなように、550nm帯のバンド端発光以外に680nm付近にブロードなピークが認められる。この680nm付近のブロードなピークは、酸素に関連する発光と推定され、熱処理後のZnTe基板中に等電位準位である酸素の準位が形成されていると考えることが出来る。
【0048】
図3は、アズ・グローンのキャリア密度が2.0×1017cm-3のZnTe基板に対して、基板温度(熱処理温度)T=1100℃、亜鉛蒸気圧PZn=5.1×105Paにおいて、40時間の熱処理を実施した後の基板の表面を、光学顕微鏡(ノマルスキー顕微鏡)で観察した結果である。図1(b)と同様に、熱処理後、基板表面のTe析出物が消失していることが分かる。基板温度(熱処理温度)1100℃における熱処理後、ZnTeの伝導型はp型のままであったが、キャリア密度は、2.3×1016cm-3であった。このように、結晶成長直後(アズ・グローン)のキャリア密度より低くなった原因は、熱処理により、亜鉛の格子間原子が形成されたためと考えられる。
【0049】
図示を省略するが、上記の熱処理(T=1100℃、PZn=5.1×105Pa)後の基板からの、室温(300K)に於けるPLスペクトルは、図2とほぼ同様なスペクトルであり、550nm帯のバンド端発光以外に680nm付近にブロードなピークが認められた。さらに、図4は、熱処理温度T=1100℃、亜鉛蒸気圧PZn=5.1×105Pa、40時間の熱処理基板を4.2Kに冷却した場合のPLスペクトルである。このPL測定は、図2と同様に、波長λ=488nmのArイオンレーザ光を基板表面に照射して、660nm近傍を詳細に調べた結果である。図4に示す4.2KでのPLスペクトルは、酸素が光学的に活性化していることを示すものと考えられる。つまり、図4に示す4.2KでのPLスペクトルは、等電位準位トラップからの特徴的な発光スペクトルであり、熱処理後のZnTe基板中に等電位準位である酸素の準位が形成されているという見解を支持するものである。
【0050】
図5は、上述の熱処理温度T=1100℃、亜鉛蒸気圧PZn=5.1×105Pa;熱処理温度T=700℃、亜鉛蒸気圧PZn=8.0×103Paの熱処理条件に加え、熱処理温度T=700℃における他の亜鉛蒸気圧PZnにおける熱処理、さらには熱処理温度T=600℃における種々の亜鉛蒸気圧PZnにおける熱処理を実施した場合の、熱処理後の基板の表面に観察されるTe析出物の有無、熱処理後の基板の中のキャリア密度、熱処理後の基板の室温(300K)におけるPLスペクトルのピーク位置を示す表である。図5に示す表において、○印は、Te析出物が観測されなかったことを示す。また、図5中の△印は、Te析出物が完全には消失せず、一部に縮小化されて残っていることを示す。「Te析出物が完全には消失していない」とは、粒径0.5μm以上のTe析出物の密度が500cm-2より少ない場合であることを意味する。そして、図5の×印は、Te析出物が明確に残留していることが観測されたことを示す。「Te析出物が明確に残留している」とは、粒径0.5μm以上のTe析出物の密度が500cm-2以上であることを意味する。
【0051】
図5に示す表に記載のように、熱処理温度T=700℃における熱処理では、亜鉛蒸気圧PZn=8.0×103Pa及び1.0×102Paにおいて、Te析出物が消失していることがわかる。しかし、亜鉛蒸気圧PZnを少し下げ、亜鉛蒸気圧PZn=33Paとすると、Te析出物は熱処理により完全には消失せず、一部で析出物が縮小化して残っていることがわかる。更に低圧力の亜鉛蒸気圧PZn=10PaではTe析出物は、熱処理により消失せず、明確に残留していることが示されている。
【0052】
一方、図5に示す表の記載によれば、熱処理後の基板中のキャリア密度は、亜鉛蒸気圧PZnが高くなるにつれて、1.0×1017cm-3から8.1×1015cm-3まで低下することが分かる。さらに、熱処理温度T=700℃における熱処理時の亜鉛蒸気圧PZnとキャリア密度との関係を、両対数グラフ上に明示したのが図6である。図6に示される亜鉛蒸気圧PZnの増大に伴うキャリア密度の減少の原因は、亜鉛蒸気圧PZnを増加するに従い、ZnTe基板中に亜鉛の格子間原子が増加し、この格子間原子がドナータイプの欠陥として働くためと考えられる。
【0053】
図7は、熱処理温度T=700℃における熱処理時の亜鉛蒸気圧PZnと正孔(ホール)の移動度との関係を示す図である。p型結晶を得るために、結晶成長時に、不純物としてリン(P)を添加しているので、亜鉛蒸気圧PZnの増大に伴う正孔(ホール)の移動度の変化は、キャリアにマスクされ観測できない。
【0054】
図5に示す表に戻ると、700℃の熱処理において、亜鉛蒸気圧PZn=33Paとした時、Te析出物は、ほとんどが消失したが、完全には消失せず、一部は縮小化して残っていることを示している。しかし、亜鉛蒸気圧PZn=33Paの雰囲気下での熱処理では、キャリア密度は比較的高く(7.0×1016cm-3)、亜鉛の格子間原子が形成されていないと考えられる。従って、40時間の熱処理では、Te析出物の一部が縮小化して、極く僅かに残っている条件がほぼ化学量論的組成の制御に適した条件であると考えられる。尚、亜鉛蒸気圧PZn=33Paの雰囲気下における40時間の熱処理では、熱処理によりTe析出物が完全に消失していなかったが、熱処理時間を長くすれば、完全に消失すると考えられる。このようにして、ZnTeの化学量論的組成の制御に適した熱処理温度Tと亜鉛蒸気圧PZnとの関係式を求めることが出来る。
【0055】
即ち、ZnTeの融点(1294℃)での亜鉛蒸気圧PZn=3.5×105Paであることを考慮すれば、上記の検討結果から求められる化学量論的組成の制御に適した条件と推定される熱処理温度T=700℃、亜鉛蒸気圧PZn=33Paより、前述した(1)式が実験式として決定できるのである。
【0056】
図5に示す表には、熱処理温度T=600℃における複数の亜鉛蒸気圧PZnにおける熱処理に対する測定結果も示されている。熱処理温度T=600℃における熱処理においては、亜鉛蒸気圧PZn=1.0×103Pa及び10Paでは、Te析出物は消失していることが分かる。亜鉛蒸気圧PZn=1.0×103Paにおけるキャリア密度は4.1×1015cm-3で、熱処理前のアズ・グローン状態のキャリア密度=2.0×1017cm-3よりも低下している。同様に、亜鉛蒸気圧PZn=10Paにおけるキャリア密度は8.0×1016cm-3であり、アズ・グローン状態のキャリア密度に比して、低下していることが分かる。
【0057】
さらに亜鉛蒸気圧を下げ、亜鉛蒸気圧PZn=6.0Pa及び2.0Paの熱処理においては、析出物は完全には消失せず、一部で縮小化して残っていることが分かる。亜鉛蒸気圧PZn=6.0Paの熱処理後のキャリア密度は1.5×1017cm-3で、熱処理前のアズ・グローン状態のキャリア密度=2.0×1017cm-3よりも、極僅か低下しているが、ほとんど同じと解釈できる。また、亜鉛蒸気圧PZn=2.0Paの熱処理後のキャリア密度は2.0×1017cm-3であり、熱処理前のアズ・グローン状態のキャリア密度と同じである。図5に示す表に記載のように、亜鉛蒸気圧をPZn=0.3Paでは、Te析出物は明確に残留していることが分かる。
【0058】
以上の結果より、600℃の熱処理においては、析出物が縮小化して、極僅か残っている亜鉛蒸気圧PZn=2.0Paとした時が、ほぼ化学量論的組成の制御に適した条件であると考えられる。
【0059】
従って、熱処理温度T=700℃の場合と同様に、熱処理温度T=600℃、、における熱処理に対する、ZnTeの化学量論的組成制御のための関係式(実験式)が算出できる。即ち、ZnTeの融点(1294℃)での亜鉛蒸気圧PZn=3.5×105Paを考慮して、熱処理温度T=600℃において、亜鉛蒸気圧PZn=2.0×10Paが、ZnTeの化学量論的組成制御のための圧力を与えるとすれば、
Zn=9.5×1011×exp(−2.3×104/T)(Pa)・・・・・(2)
という関係式が得られる。
【0060】
図8は、ZnTeの相図と共に、理想的な化学量論的組成制御のための温度Tと蒸気圧PZnの関係を示す式(1)及び式(2)を示す図である。
【0061】
さらに、熱処理温度T=700℃、亜鉛蒸気圧PZn=33Paの熱処理条件と、熱処理温度T=600℃、亜鉛蒸気圧PZn=2.0Paの熱処理条件が、ZnTeの化学量論的組成制御のためのZnTeの化学量論的組成制御のための条件であるとすると、
Zn=1.5×1012×exp(−2.4×104/T)(Pa)・・・・・(3)
という関係式(実験式)が得られる。
【0062】
上記式(1)、(2)、(3)について比較すれば、各熱処理温度Tに対する亜鉛蒸気圧PZnの誤差は50%であることがわかる。
【0063】
式(1)、(2)、(3)と同様な実験式は、他のII−VI族化合物半導体単結晶の熱処理に対しても、同様に求めることが可能であることは、上記の説明から明らかであろう。従って、第1元素と、この第1元素とは異なる第2元素とから少なくとも構成されるII−VI族化合物半導体単結晶の熱処理方法において、II−VI族化合物半導体単結晶を石英アンプル等の熱処理容器の内部に配置し、この熱処理容器の内部でII−VI族化合物半導体単結晶を所定の熱処理温度Tに加熱するステップと、この熱処理温度Tに対して式(1)、(2)、(3)等の所定の関係式により一義的に規定される圧力(蒸気圧)Pの第1元素のガスをII−VI族化合物半導体単結晶に対して印加するステップとにより、II−VI族化合物半導体単結晶中の析出物を消失させることが可能となる。
【0064】
(第2の実施の形態)
上記本発明の第1の実施の形態においては、単一ステップ(1段階)の熱処理を実行することにより、ZnTeの結晶性(品質)、特に化学量論的組成が改善されることを説明した。本発明の第2の実施の形態では、ZnTeの結晶品質改善のための2段階の熱処理について説明する。
【0065】
具体的には、第1熱処理温度T1にZnTe単結晶を加熱し、この第1熱処理温度T1に対して所定の関係式により一義的に規定される蒸気圧以上の第1元素(Zn)の第1圧力PZn1のガスをZnTe単結晶に印加する第1熱処理工程と、このZnTe単結晶基板を第2熱処理温度T2に加熱し、第2熱処理温度T2に対して、上記の所定の関係式により一義的に規定される蒸気圧の10倍以下の第2圧力PZn2をZnTe単結晶に印加する第2熱処理工程とによりZnTe単結晶基板中の析出物を消失させる熱処理方法を説明する。このような2段階の熱処理により、ZnTe単結晶中のTe析出物を消失させ、キャリア密度の高いZnTe単結晶を製造することができる。
【0066】
ZnTeの結晶品質改善のための2段階の熱処理は、第1熱処理温度と第2熱処理温度は異なる温度でも、等しい温度でもかまわないのであるが、本発明の第2の実施の形態においては、第1熱処理温度よりも、第2熱処理温度が低い場合について説明する。即ち、初めにZnTe単結晶の結晶成長直後に形成されたTe析出物を消失するための比較的高温の第1熱処理温度T1及び比較的高圧の第1の亜鉛蒸気圧PZn1を用いて第1熱処理工程を行い、次に亜鉛格子間原子のようなドナー型結晶欠陥によるキャリア密度の低下をもとに戻すための比較的低温の第2熱処理温度T2で且つ化学量論的組成制御可能な第2の亜鉛蒸気圧PZn2下で第2熱処理工程を実行する2段階の熱処理について述べる。
【0067】
本発明の第2の実施の形態の具体的な数値を例示すると、第1熱処理工程は、第1熱処理温度T1=700℃以上で第1圧力(亜鉛蒸気圧)PZn1=33Pa以上の蒸気圧下での熱処理であり、第2熱処理工程は、第2熱処理温度T2=600℃以上で第2圧力(亜鉛蒸気圧)PZn2=2.0Pa以下の蒸気圧下での熱処理を行えばよい。
【0068】
具体的には、
(イ)先ず、第1熱処理温度T1=700℃、第1圧力(亜鉛蒸気圧)PZn1=3.3×102Paにおいて熱処理時間40時間の第1熱処理工程を行い、
(ロ)次に第2熱処理温度T2=600℃、第2圧力(亜鉛蒸気圧)PZn2=2.0Paにおいて熱処理時間40時間の第2熱処理工程を実施する。
【0069】
図9は、上記の本発明の第2の実施の形態の熱処理条件の熱処理を実施した場合の、基板表面に観察されるTe析出物の有無、基板中のキャリア密度、室温(300K)におけるPLスペクトルのピーク位置を示す表である。本発明の第2の実施の形態に係る2段階の熱処理の結果、熱処理後のZnTe中のTe析出物は消失していた。また、図9の表に示すように、2段階の熱処理後のキャリア密度は2.3×1017cm-3であり、高キャリア密度であることがわかる。
【0070】
図10は、本発明の第2の実施の形態に係る2段階の熱処理後のZnTe基板からのPLスペクトルである。このPL測定は、室温(300K)に於いて、波長λ=488nmのArイオンレーザ光を基板表面に照射して、その発光スペクトルを得たたものである。図10に示すPLスペクトルに明らかなように、2段階の熱処理後のZnTeの発光スペクトルは、550nm帯のバンド端発光は認められるが、680nm付近のブロードな発光ピークは観測できない。即ち、本発明の第2の実施の形態に係る2段階の熱処理により、図2及び図4に示すような酸素に関連する発光は認められず、2段階の熱処理後のZnTe基板中には、等電位準位である酸素の準位は、形成されていないことが分かる。
【0071】
本発明の第2の実施の形態において、第1熱処理工程に用いる第1熱処理温度T1は、好ましくは、500℃以上1100℃以下であることが望ましい。第1熱処理温度T1=500℃より低温では析出物の消失に長い時間を必要とし、熱処理温度T1=1100℃より高温では他の不純物が電気的・光学的に活性化しやすくなり、結晶の特性に悪影響を与えるためである。また、熱処理温度T1=700℃より高い温度で第1熱処理工程を実行してもTe析出物を消失するための目的は達成できると判断できるが、高温になると、酸素等の亜鉛以外の不純物元素が格子位置を占有し、電気的、光学的に活性化して各特性に影響を及ぼすことが考えられる。このため、上述した本発明の第2の実施の形態の説明においては、熱処理温度T1として、700℃を選定している。
【0072】
一方、第2熱処理工程の条件は、化学量論的組成制御に適した温度(第2熱処理温度T2)と蒸気圧の関係より算出できる亜鉛蒸気圧以下の第2圧力(亜鉛蒸気圧)PZn2でも条件として問題ない。このため、第2熱処理工程の第2熱処理温度T2は、好ましくは、400℃以上800℃以下であることが望ましい。第2熱処理温度T2=400℃より低温では、組成制御するのに長時間を必要とし、第2熱処理温度T2=800℃より高温では、固相線幅が広くなり、組成制御しにくくなるためである。本発明の第2の実施の形態においては、安定した条件を採用するために第2熱処理温度T2=600℃、第2圧力(亜鉛蒸気圧)PZn2=2.0Paとした。これは、熱処理条件としての基礎データがある範囲の条件であり、且つ、ZnTeの相図を考えた場合、より低温の方が固相線幅が狭く、化学量論的組成制御しやすいからである。
【0073】
なお、本発明の第2の実施の形態の説明においては、第1熱処理工程及び第2熱処理工程の熱処理時間を共に40時間としたが、この第1及び第2熱処理工程の熱処理時間は一例にすぎず、種々の値を採用できることは勿論である。また第1熱処理工程及び第2熱処理工程の熱処理時間が互いに異なる時間であってもかまわない。
【0074】
また、本発明の第2の実施の形態に係る熱処理は、II−VI族化合物半導体単結晶を結晶成長した後、インゴット状態の単結晶をそのまま熱処理しても良く、単結晶(インゴット)を板状に切り出したウェハ形状の基板を使用して実施してもよい。インゴット状態の単結晶をそのまま熱処理する場合には、II−VI族化合物半導体単結晶成長後の炉内で、結晶成長完了後の冷却工程中に実施しても良く、こうすれば、工程数の増大を伴わずに、簡単に、II−VI族化合物半導体単結晶の化学量論的組成制御が可能となる。
【0075】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態として、他の2段階の熱処理について説明する。即ち、本発明の第3の実施の形態は、第1熱処理温度T1と第2熱処理温度T2とが等しい場合である。
【0076】
具体的には、熱処理温度をT1=T2=600℃一定として、亜鉛の設置してあるリザーバ部の温度を2段階で切り換えて、圧力を2段階に変化させ、熱処理を行う。
【0077】
つまり、本発明の第3の実施の形態の熱処理条件は、第1熱処理工程を、第1熱処理温度T1=600℃、第1圧力(亜鉛蒸気圧)PZn1=1.0kPa、40時間とし、第2熱処理工程を、第2熱処理温度T2=600℃、第2圧力(亜鉛蒸気圧)PZn2=2.0Pa、40時間として説明する。
【0078】
既に説明した図9に示す表には、本発明の第3の実施の形態の熱処理条件の熱処理を実施した場合の、基板表面に観察されるTe析出物の有無、基板中のキャリア密度、室温(300K)におけるPLスペクトルのピーク位置も含まれている。図9に示す表に示されているように、上記の本発明の第3の実施の形態に係る熱処理により、熱処理後のZnTe中のTe析出物は消失していることがわかる。また、熱処理後のキャリア密度は、2.4×1017cm-3であることがわかる。さらに、PLスペクトルによれば、550nm帯のバンド端の強い発光が観測され、他の深い準位からの発光は何も観測されないことが分かる。
【0079】
本発明の第3の実施の形態に係る比較的低温での2段階の熱処理により、Te析出物の消失とZnTe単結晶の化学量論的組成制御および他の不純物の活性化の抑制が可能となる。
【0080】
なお、上記の説明においては、第1熱処理工程及び第2熱処理工程の熱処理時間は、互いに等しい時間として説明したが、互いに異なる時間であってもかまわないことは勿論である。
【0081】
また、本発明の第3の実施の形態に係る熱処理は、II−VI族化合物半導体単結晶成長後の炉内で、結晶成長完了後の冷却工程中に実施しても良く、こうすれば、工程数の増大を伴わずに、簡単に、II−VI族化合物半導体単結晶の化学量論的組成制御が可能となる。
【0082】
(第4の実施の形態)
図11は本発明の第4の実施の形態に係る半導体装置(光電変換機能素子)の製造方法を説明するための工程断面図である。図11を用いて、半導体装置(光電変換機能素子)としてのLEDの製造工程の概略を説明する。
【0083】
(イ)まず、不純物としてリン(P)を添加しながら、VGF法によりp型ZnTe単結晶を結晶成長する。このVGF法によるp型ZnTe単結晶の結晶成長に際しては、2ゾーンの炉を用意し、成長用の石英アンプルとしては、成長室に石英キャピラリーで、亜鉛リザーバが接続された形状のものを用意しておく。
(ロ)VGF法によるp型ZnTe単結晶の結晶成長が終了したら、成長後の2ゾーンの炉内で、冷却工程中に第2の実施の形態で説明した2段階の熱処理を実施する。即ち、2ゾーンの炉のそれぞれのゾーンの温度を独立に制御して、第1熱処理温度及び亜鉛リザーバの温度を所定の値に設定する。亜鉛リザーバの温度を所定の値に設定することにより、第1圧力(亜鉛蒸気圧)PZn1が制御できる。具体的には、第2の実施の形態と同様に、第1熱処理温度T1=700℃、第1圧力(亜鉛蒸気圧)PZn1=3.3×102Paにおいて熱処理時間40時間の第1熱処理工程を行う。
【0084】
(ハ)引き続き、2ゾーンの炉のそれぞれのゾーンの温度を独立に制御して、第2熱処理温度T2=600℃、第2圧力(亜鉛蒸気圧)PZn2=2.0Paにおいて熱処理時間40時間の第2熱処理工程を行う。
【0085】
(ニ)第2熱処理工程終了後、石英アンプルを室温まで降温し、石英アンプルを開封し、p型ZnTe単結晶(インゴット)を取り出す。そして、ワイヤ・ソーやダイヤモンドブレード等の所定の切断手段を用い、p型ZnTe単結晶(インゴット)を、厚さ100μm乃至400μmの板状(ウェハ状)に切り出し、図11(a)に示すような、p型ZnTe単結晶基板(ウェハ)11を得る。その後、研削、研磨(ポリッシング)等によりp型ZnTe単結晶基板11の平坦化を行う。研磨は化学的機械研磨(CMP)を採用することが好ましい。ポリッシングされた基板11は、アセトンで脱脂した後に、超純水で洗浄する。その後、基板11は2%のBr−メタノール溶液で5分間化学エッチングし、平坦化時に発生した表面加工層のダメージを除去、及び清浄化を行う。化学エッチング後、超純水による洗浄を行う。
【0086】
(ホ)p型ZnTe単結晶基板11の超純水による洗浄を行った後、直ちに、真空蒸着装置の真空チャンバ内に設置する。真空チャンバ内を3×10-4Pa以下の圧力まで真空排気したのち、図11(b)に示すように、n型不純物の拡散源として、Al膜12をp型ZnTe単結晶基板11の表面に約400nm乃至2μmの厚さで蒸着する。
【0087】
(ヘ)真空蒸着終了後、p型ZnTe単結晶基板11は、真空チャンバ内から取り出す。そして、このp型ZnTe単結晶基板11は、石英製の反応管を備え、真空排気可能な拡散炉の均熱帯域に配置される。拡散炉内部は真空に排気した後、窒素ガスで置換する。真空排気と窒素ガス置換の操作を数回繰りかえした後、窒素ガスを流した状態で550℃,30分の熱処理を行う。この熱処理により、拡散源としてのAlが、図11(c)に示すように、p型ZnTe単結晶基板11の表面から内部へ拡散されて、Al拡散層からなるn型ZnTe層13が形成され、pn接合が形成される。
【0088】
(ト)拡散炉を室温近傍まで冷却後、表面にpn接合が形成されたp型ZnTe単結晶基板11を取り出し、フォトリソグラフィー技術により、図11(d)に示すように、表面に残ったAlの一部分を残してエッチングし、複数個のカソード電極22をパターニングする。
【0089】
(チ)さらに、複数個のカソード電極22及び、露出したn型ZnTe層13の上に、CVD法により、図11(e)に示すように、シリコン酸化膜(SiO2膜)、シリコン窒化膜(Si34膜)等の絶縁膜14からなる保護膜を堆積する。
【0090】
(リ)その後、図11(f)に示すように、裏面にアノード電極23として金メッキを施す。さらに、絶縁膜14からなる保護膜の一部をフォトリソグラフィー技術により選択的に除去し、複数個のカソード電極22を露出させる。その後、図11(f)に示すように、スクライブラインS1,S2,・・・・・において、所定の大きさのダイに切り出す。さらに、所定のリードフレームや金属ステムにマウントし、カソード電極22に対し、金(Au)線等をボンディングすれば、光電変換機能素子としてのLEDが完成する。
【0091】
本発明の第4の実施の形態に係る半導体装置の製造方法によれば、非発光センターになりやすい欠陥や析出物を介したリーク電流等によるデバイスの劣化が低減できる。また、高品質な半導体装置を高い製造歩留りで製造することが可能となる。
【0092】
(第5の実施の形態)
第4の実施の形態で説明した半導体発光素子(光電変換機能素子)以外に、本発明の半導体装置の製造方法は、トランジスタや半導体集積回路を製造することも可能である。例えば、絶縁ゲート型SITや絶縁ゲート型FET等の絶縁ゲート型トランジスタは、p型ZnTe単結晶基板(ウェハ)を用いて、以下のようにして、製造できる。
【0093】
図12の工程断面図を用いて本発明の第5の実施の形態に係る絶縁ゲート型トランジスタの製造工程の概略を説明する。
【0094】
(イ)まず、不純物としてリン(P)を添加しながら、VGF法によりp型ZnTe単結晶(インゴット)を結晶成長する。このp型ZnTe単結晶(インゴット)を、厚さ100μm乃至400μmの板状(ウェハ状)に切り出し、第4の実施の形態で説明した図11(a)に示すような、p型ZnTe単結晶基板(ウェハ)11を得る。その後、研削、研磨(ポリッシング)等によりp型ZnTe単結晶基板11の平坦化を行う。ポリッシングされた基板11は、アセトンで脱脂した後に、超純水で洗浄する。その後、基板11は2%のBr−メタノール溶液で5分間化学エッチングし、平坦化時に発生した表面加工層のダメージを除去、及び清浄化を行う。化学エッチング後、超純水による洗浄を行う。
【0095】
(ロ)次に、処理室に石英キャピラリー等により亜鉛リザーバが接続された形状の石英アンプルを用意する。そして、この石英アンプルの処理室にp型ZnTe単結晶基板(ウェハ)11を、亜鉛リザーバに亜鉛を真空封入する。このp型ZnTe単結晶基板(ウェハ)11の真空封入された石英アンプルを、2ゾーンの熱処理炉に投入し、2段階の熱処理を実施する。即ち、2ゾーンの炉のそれぞれのゾーンの温度を独立に制御して、処理室及び亜鉛リザーバの温度を所定の値に設定する。ここでは、第3の実施の形態で説明したと同様な、同一温度に於ける2段階の熱処理を実施する。即ち、第1熱処理工程を、第1熱処理温度T1=600℃、第1圧力(亜鉛蒸気圧)PZn1=1.0kPa、40時間とし、第2熱処理工程を、第2熱処理温度T2=600℃、第2圧力(亜鉛蒸気圧)PZn2=2.0Pa、40時間として実行する。
【0096】
(ハ)第2熱処理工程終了後、石英アンプルを室温まで降温し、石英アンプルを開封し、p型ZnTe単結晶基板(ウェハ)11を取り出す。そして、p型ZnTe単結晶基板(ウェハ)11は2%のBr−メタノール溶液で30秒間スライトエッチングする。スライトエッチング後、超純水による洗浄を行う。
【0097】
(ニ)超純水による洗浄を行った後、p型ZnTe単結晶基板11を直ちに、真空蒸着装置の真空チャンバ内に設置する。真空チャンバ内を3×10-4Pa以下の圧力まで真空排気したのち、n型不純物の拡散源として、Al膜12をp型ZnTe単結晶基板11の表面に約400nm乃至2μmの厚さで蒸着する。
【0098】
(ホ)真空蒸着終了後、p型ZnTe単結晶基板11は、真空チャンバ内から取り出す。そして、このp型ZnTe単結晶基板11は、石英製の反応管を備え、真空排気可能な拡散炉の均熱帯域(ゾーン)に配置される。拡散炉内部は真空に排気した後、窒素ガスで置換する。真空排気と窒素ガス置換の操作を数回繰りかえした後、窒素ガスを流した状態で550℃,30分の熱処理を行う。この熱処理により、拡散源としてのAlが、図12(a)に示すように、p型ZnTe単結晶基板11の表面から内部へ拡散されて、Al拡散層からなるn型ZnTe層13が形成され、pn接合が形成される。
【0099】
(ヘ)拡散炉を室温近傍まで冷却後、表面にpn接合が形成されたp型ZnTe単結晶基板11を取り出し、フォトリソグラフィー技術により、図12(b)に示すように、表面に残ったAlの一部分を残してエッチングし、ソース電極31及びドレイン電極32をパターニングする。
【0100】
(ト)さらに、このソース電極31及びドレイン電極32をパターニングする際に用いたフォトレジストをマスクとして、図12(c)に示すように、n型ZnTe層13をエッチング除去し、凹部51,52,53を形成する。凹部51,52,53は、p型ZnTe単結晶基板11を若干エッチングする程度のオーバーエッチングをしてもかまわない。凹部51,52,53の形成により、ソース電極31及びドレイン電極32の下部に、それぞれ、n型ソース領域41及びn型ドレイン領域42が形成される。
【0101】
(チ)ソース電極31及びドレイン電極32及び、露出したp型ZnTe単結晶基板11の上に、CVD法により、図12(d)に示すように、シリコン酸化膜(SiO2膜)、シリコン窒化膜(Si34膜)等のゲート絶縁膜61を堆積する。
【0102】
(リ)このゲート絶縁膜61の上の全面にタングステン(W)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)等の高融点金属、これらのシリサイド(WSi2,TiSi2,MoSi2)等の導電体をCVD法、真空蒸着法やスパッタリング法で堆積する。そして、n型ソース領域41及びn型ドレイン領域42の間のゲート絶縁膜61の上のみに、この導電体を選択的に残すように、フォトリソグラフィー技術及び反応性イオンエッチング(RIE)を用いて、パターニングして、図12(e)に示すように、ゲート電極62を形成する。
【0103】
(ヌ)そして、CVD法により、図12(f)に示すように、シリコン酸化膜(SiO2膜)、シリコン窒化膜(Si34膜)等の絶縁膜からなるパッシベーション膜(保護膜)71を堆積する。さらに、パッシベーション膜(保護膜)71の一部をフォトリソグラフィー技術により選択的に除去し、ソース電極31及びドレイン電極32を露出させれば絶縁ゲート型トランジスタが完成する。
【0104】
この際、ゲート絶縁膜61の代わりに、ZnTeより禁制帯幅の大きなセレン化亜鉛(ZnSe)や硫化マグネシウム(MgS)をZnTeチャネル領域の上に堆積しても良い。こうすれば、ZnTe/ZnSeやZnTe/MgSヘテロ構造のゲート構造により、高電子移動度トランジスタ(HEMT)と同様な動作が可能である。
【0105】
本発明の第5の実施の形態に係る半導体装置の製造方法によれば、化学量論的組成のずれに起因した欠陥や析出物を低減し、これらの欠陥や析出物を介したリーク電流等によるデバイスの劣化が低減できる。また、高品質な半導体装置を高い製造歩留りで製造することが可能となる。
【0106】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は第1乃至第5の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0107】
既に述べた第1乃至第5の実施の形態の説明においては、テルル化亜鉛(ZnTe)を例示して説明したが、本発明は、酸化亜鉛(ZnO)、硫化亜鉛(ZnS)、セレン化亜鉛(ZnSe)や硫化マグネシウム(MgS)等の他のII−VI族化合物半導体にも適用可能であることは勿論である。
【0108】
また、第4及び第5の実施の形態の説明においては、拡散でpn接合を形成する場合について説明したが、p型のII−VI族化合物半導体基板の上に、n型のII−VI族化合物半導体層をエピタキシャル成長する手法によりpn接合を形成することも可能である。このエピタキシャル成長は、ヘテロ・エピタキシャル成長でもかまわない。
【0109】
さらに、エピタキシャル成長の前の基板に対して、本発明の熱処理を実行し、更にエピタキシャル成長後に本発明の熱処理を実行しても良い。
【0110】
さらに、本発明の2段階の熱処理の第1熱処理工程をエピタキシャル成長の前の基板に対して実行し、エピタキシャル成長後に第2熱処理工程を実行するような変形も可能である。
【0111】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【0112】
【発明の効果】
本発明によれば、II−VI族化合物半導体単結晶の化学量論的組成制御に有効な熱処理温度と熱処理時の雰囲気ガスの圧力との関係を与える有効な関係式(実験式)を簡単に導出することが出来る。
【0113】
また、本発明によれば、上記関係式(実験式)をもちいて、化学量論的組成のずれたII−VI族化合物半導体単結晶に対して、有効に理想的な化学量論的組成を達成出来る簡単な熱処理方法を提供することが出来る。
【0114】
さらに、本発明によれば、析出物を消失させ、理想的な化学量論的組成を達成できる熱処理方法を提供することが出来る。
【0115】
さらに、本発明によれば、キャリアのトラップや非発光センターがないII−VI族化合物半導体を用いた半導体装置の製造方法を提供することが出来る。
【0116】
さらに、本発明によれば、結晶欠陥や析出物を介したリーク電流が抑制され、光学的特性、電気的特性、高周波特性等のデバイス性能の優れた半導体装置の製造方法を提供することが出来る。
【0117】
さらに、本発明によれば、動作寿命の長く、安定且つ信頼性の高い半導体装置を安価に実現できる半導体装置の製造方法を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)は結晶成長直後(アズ・グローン)の、図1(b)は熱処理温度T=700℃、亜鉛蒸気圧PZn=8.0×103Paで熱処理後のZnTe単結晶基板の表面を光学顕微鏡で観察した結果である。
【図2】熱処理温度T=700℃、亜鉛蒸気圧PZn=8.0×103Paで、40時間の熱処理後の基板からの300Kにおけるフォトルミネッセンス(PL)スペクトルである。
【図3】熱処理温度T=1100℃、亜鉛蒸気圧PZn=5.1×105Paで熱処理を実施した後の基板の表面を光学顕微鏡で観察した結果である。
【図4】熱処理温度T=1100℃、亜鉛蒸気圧PZn=5.1×105Paでの熱処理基板の4.2KにおけるPLスペクトルである。
【図5】各熱処理条件と、熱処理後の基板表面に観察されるTe析出物の有無、熱処理後の基板中のキャリア密度、熱処理後の基板の室温(300K)におけるPLスペクトルのピーク位置との関係を示す表である。
【図6】熱処理温度T=700℃の場合の、亜鉛蒸気圧PZnとキャリア密度との関係を示す図である。
【図7】熱処理温度T=700℃における亜鉛蒸気圧PZnと正孔移動度との関係を示す図である。
【図8】ZnTeの相図と共に、化学量論的組成制御のための温度Tと蒸気圧PZnの関係を示す式(1)及び式(2)を示す図である。
【図9】本発明の第2及び第3の実施の形態に係る熱処理を実施した場合の、基板表面に観察されるTe析出物の有無、基板中のキャリア密度、室温(300K)におけるPLスペクトルのピーク位置を示す表である。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係る熱処理後のZnTe基板からのPLスペクトルである。
【図11】本発明の第4の実施の形態に係る半導体装置(光電変換機能素子)の製造方法を説明するための工程断面図である。
【図12】本発明の第5の実施の形態に係る半導体装置(トランジスタ)の製造方法を説明するための工程断面図である。
【符号の説明】
11 p型ZnTe単結晶基板(ウェハ)
12 Al膜
13 n型ZnTe層
14 絶縁膜
22 カソード電極
23 アノード電極
31 ソース電極
32 ドレイン電極
41 n型ソース領域
42 n型ドレイン領域
51,52,53 凹部
61 ゲート絶縁膜
62 ゲート電極
71 パッシベーション膜(保護膜)
S1,S2 スクライブライン

Claims (9)

  1. 亜鉛(Zn)テルル(Te)とから少なくとも構成されるII−VI族化合物半導体単結晶の熱処理方法であって、
    前記II−VI族化合物半導体単結晶を、以下の関係式により規定される熱処理温度に加熱するステップと、
    前記熱処理温度に対して、前記関係式により規定される亜鉛の蒸気圧を前記単結晶に対して印加するステップ
    とにより前記単結晶中のテルルを消失させ、亜鉛の蒸気圧をP Zn (Pa)、前記熱処理温度をT(K)として、前記関係式は、
    Zn =9.0×10 11 ×exp(−2.4×10 /T)
    であることを特徴とする半導体単結晶の熱処理方法。
  2. 亜鉛(Zn)テルル(Te)とから少なくとも構成されるII−VI族化合物半導体単結晶の熱処理方法であって、
    前記II−VI族化合物半導体単結晶を第1熱処理温度に加熱し、前記第1熱処理温度に対して、以下の関係式により規定される蒸気圧以上の亜鉛の第1圧力を前記単結晶に対して印加する第1熱処理工程と、
    前記単結晶を第2熱処理温度に加熱し、前記第2熱処理温度に対して前記関係式により規定される前記蒸気圧の10倍以下の亜鉛の第2圧力を前記単結晶に対して印加する第2熱処理工程
    とにより前記単結晶中のテルルを消失させ、亜鉛の蒸気圧をP Zn (Pa)、前記第1又は第2熱処理温度をT(K)として、前記関係式は、
    Zn =9.0×10 11 ×exp(−2.4×10 /T)
    であることを特徴とする半導体単結晶の熱処理方法。
  3. 前記熱処理温度が500℃以上1100℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の半導体単結晶の熱処理方法。
  4. 前記第1及び第2熱処理温度の少なくとも一方が500℃以上1100℃以下であることを特徴とする請求項2に記載の半導体単結晶の熱処理方法。
  5. 前記第2熱処理温度が400℃以上800℃以下であることを特徴とする請求項2又は4に記載の半導体単結晶の熱処理方法。
  6. 前記熱処理を前記II−VI族化合物半導体単結晶の結晶成長直後において、前記結晶成長を実施した炉内で、直接行うことを特徴とする請求項1又は3に記載の半導体単結晶の熱処理方法。
  7. 前記第1熱処理工程を前記II−VI族化合物半導体単結晶の結晶成長直後において、前記結晶成長を実施した炉内で、直接行うことを特徴とする請求項2、4、及び5のいずれか1項記載の半導体単結晶の熱処理方法。
  8. 亜鉛(Zn)テルル(Te)とから少なくとも構成されるII−VI族化合物半導体単結晶を用いた半導体装置の製造方法であって、
    前記II−VI族化合物半導体単結晶を、以下の関係式により規定される熱処理温度に加熱するステップと、
    前記熱処理温度に対して前記関係式により規定される亜鉛の蒸気圧を前記単結晶に対して印加するステップ
    とにより前記単結晶中の析出物を消失させる熱処理工程を少なくとも含み、亜鉛蒸気圧をP Zn (Pa)、前記熱処理温度をT(K)として、前記関係式が、
    Zn =9.0×10 11 ×exp(−2.4×10 /T)
    であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
  9. 亜鉛(Zn)テルル(Te)とから少なくとも構成されるII−VI族化合物半導体単結晶を用いた半導体装置の製造方法であって、
    前記II−VI族化合物半導体単結晶を第1熱処理温度に加熱し、前記第1熱処理温度に対して、以下の関係式により規定される蒸気圧以上の亜鉛の第1圧力を前記単結晶に対して印加する第1熱処理工程と、
    前記単結晶を第2熱処理温度に加熱し、前記第2熱処理温度に対して前記関係式により規定される前記蒸気圧の10倍以下の亜鉛の第2圧力を前記単結晶に対して印加する第2熱処理工程
    とにより前記単結晶中の析出物を消失させる2段階の熱処理工程を少なくとも含み、亜鉛の蒸気圧をP Zn (Pa)、前記第1又は第2熱処理温度をT(K)として、前記関係式が、
    Zn =9.0×10 11 ×exp(−2.4×10 /T)
    であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
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