JPH11186600A - 化合物半導体発光素子 - Google Patents

化合物半導体発光素子

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JPH11186600A
JPH11186600A JP35171397A JP35171397A JPH11186600A JP H11186600 A JPH11186600 A JP H11186600A JP 35171397 A JP35171397 A JP 35171397A JP 35171397 A JP35171397 A JP 35171397A JP H11186600 A JPH11186600 A JP H11186600A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 発光をもたらす素子動作電流を有効に発光領
域の略全面に拡散させて発光面積を拡張し、また発光層
の品質を良好に保持することで、発光出力を充分に発揮
させることができるようにする。 【解決手段】 この発明は、p形不純物を添加したp形
半導体層3上に透光性薄膜電極4を介してp形台座電極
3を設けた化合物半導体発光素子10において、p形半
導体層3の内部に、所定範囲の温度で注入熱処理を施す
ことでp形半導体層3よりも高抵抗に形成した高抵抗イ
オン注入領域6を設け、その高抵抗イオン注入領域6の
上方にp形台座電極5を設けた、ことを特徴としてい
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、p形不純物を添
加したp形半導体層上に透光性薄膜電極を介してp形台
座電極を設けた化合物半導体発光素子に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】A.III 族窒化物半導体発光素子 元素周期律表の第III 族に属するアルミニウム(A
l)、ガリウム(Ga)やインジウム(In)等と第V
族である窒素(N)との化合物は、半導体の性質を呈す
るためIII 族窒化物半導体と呼称される。代表的なIII
族窒化物半導体には、一般式 AlxGayInzN(0≦
x,y,z≦1、x+y+z=1)で表される第V族元
素として窒素(N)のみを含むものがある。これに加
え、窒素以外の第V族元素である砒素(As)や燐
(P)等を一構成元素として含むAlx Ga yInz
1-aa(0≦x,y,z≦1、x+y+z=1、0<a
≦1、記号Mは窒素以外の第V族の構成元素)もIII 族
窒化物半導体の一種である。III 族窒化物半導体は、炭
化珪素(SiC)やセレン化亜鉛(ZnSe)等のII−
VI族化合物半導体と同様に、青色系、青緑色系或いは緑
色系の短波長の可視光或いは紫外光を放射するに適する
禁止帯幅を有するワイドバンドギャップ半導体である。
このため、近年では、青色等の短波長可視光の発光に都
合の良い禁止帯幅が得られ、高輝度の発光をもたらすに
適する直接遷移型の窒化ガリウム・インジウム混晶(G
cIn1-cN:0≦c≦1)(赤崎 勇著、「アドバン
スト エレクトロニクスI−1/III −V族化合物半導
体」、1994年5月20日初版、(株)培風館発行、
329頁参照)を発光層(活性層とも云う)とする発光
ダイオード(LED)やレーザダイオード(LD)など
のIII 族窒化物半導体発光素子が実用化されるに至って
いる。
【0003】B.III 族窒化物半導体LEDの構造例 III 族窒化物半導体発光素子としてLEDを例にすれ
ば、発光部は、窒化ガリウム・インジウム混晶等から成
る発光層を、p形及びn形のIII 族窒化物半導体層で狭
持するダブルヘテロ(DH)構造とするのが一般的であ
る(特開平6−260682号公報明細書参照)。発光
層より禁止帯幅を大とするIII 族窒化物半導体層で発光
層を狭持するDH構造とすることにより、キャリアとキ
ャリアの放射再結合による発光の「閉じ込め」効果(米
津 宏雄著、「光通信素子工学−発光・受光素子」、昭
和61年12月15日3版、工学図書(株)発行、16
5頁参照)が発揮され、高発光出力を得るに優位となる
からである。
【0004】発光層を狭持し、発光及びキャリアを「閉
じ込め」る作用を発揮するn形及びp形層は、障壁層或
いはクラッド層と呼称され、通常、窒化アルミニウム・
ガリウム混晶(AlxGayN:0≦x,y≦1、x+y
=1)で構成される(特開平6−260283号公報明
細書)。発光を外部に取り出す方向とは反対の方向にあ
る、発光層の下部に配置するn形の下部クラッド層につ
いては、n形の窒化ガリウム(GaN)から構成する例
がある(Jpn.J.Appl.Phys.、32(1
993)、L8〜L11頁参照)。一方、発光の取り出
し方向の発光層上に在るp形の上部クラッド層は、窒化
アルミニウム・ガリウム混晶 (AlxGayN;0≦
x,y≦1、x+y=1)から構成されるのが通例であ
る (特開平6−268259号公報明細書参照)。従
来の構成において、p形の上部クラッド層上には、p形
電極を形成するためのIII 族窒化物半導体層から成るp
形層が重層される。p形電極を敷設するためのp形層
は、電極に接触(contact)することからコンタ
クト層とも呼称され、マグネシウム(Mg)等のp形不
純物を添加(ドーピング)した低抵抗のp形窒化ガリウ
ム(GaN)から構成する例がある(特開平6−268
259号公報明細書参照)。
【0005】C.p形電極の従来の構成 図10は従来のLEDの断面構造を電極の配置状況を含
めて模式的に示す図である。図において、従来のLED
60は、基板200上に、緩衝層200a、n形下部ク
ラッド層201、n形発光層202、p形上部クラッド
層203及びp形コンタクト層203aが順次積層さ
れ、このp形コンタクト層203aには、透光性薄膜電
極(以下、「透光性電極」という)204と、金属保護
膜204aとが重層されている(特開平9−12993
2号公報明細書参照)。
【0006】p形台座電極205は、発光素子を動作さ
せるための電力を外部電源から供給するための導線20
8をボンディングするための電極であり、パッド電極と
も呼称される。透光性電極204はp形台座電極205
を介して供給される素子動作電流を、pn接合面(発光
面)の略全域に均等に拡散する役目も担う電極である。
透光性電極204と金属保護膜204aとは、発光を外
部に取り出すために光透過性の薄膜から構成され、その
構成材料としては、金(Au)やニッケル(Ni)(実
開平6−38265号及び特開平9−64337号の各
公報明細書参照)の他、インジウム(In)と錫(S
n)の複合酸化物(ITO)が用いられる(特公昭53
−11439号及び特開平9−129919号の各公報
明細書参照)。
【0007】D.p形台座電極の配置例 透光性電極204は、発光面の略全域、概ね、発光面の
表面積の80%を越える領域に設けられる(実開平6−
38265号公報明細書参照)。また、p形台座電極2
05は、透光性電極204と電気的に導通するように配
備され、その平面形状は、多くは角形或いは円形であ
る。p形台座電極205の従来の敷設例には、大別して
2通りある。第1は、コンタクト層204a等のp形半
導体層上に直接敷設するものである(特開平9−639
62号及び特開平9−129919号の各公報明細書参
照)。第2は、p形台座電極206の直下に形成した高
抵抗層の上に配置するものである(特開平8−2507
68号、特開平8−250769号及び特開平8−27
9643号の各公報明細書参照)。この第2の敷設例に
よる一つの利点は、p形台座電極205の直下を、電流
の流通を妨害する高抵抗層、すなわち電流阻止層とする
が故に、素子動作電流を透光性電極204に都合良く拡
散できることにある(特開平8−250768号、特開
平8−250769号及び特開平8−279643号の
各公報明細書参照)。素子動作電流の通電範囲が拡大す
れば、発光面積が拡張され、発光出力の増大がもたらさ
れる。このため、最近のLED等の窒化ガリウム系発光
素子にあっては、p形台座電極205を形成する予定領
域の下方に高抵抗層を電流阻止層として配置するのが通
例となっている。
【0008】E.p形台座電極下方の高抵抗層の従来の
形成方法 p形台座電極の下方に高抵抗層(高抵抗領域)を敷設す
る手法には、大別して2通りある。第1は、p形台座電
極の直下に二酸化珪素(SiO2 )等の絶縁膜を配置す
る手法である(特開平8−279643号公報明細書参
照)。絶縁膜の形成方法に関しては、p形台座電極を配
置する予定の領域の直下にある、III 族窒化物半導体か
ら成るp形半導体層を削除して、その切り欠き部に窒化
珪素(Si34)等から成る絶縁膜を埋め込む方法が開
示されている(特開平8−250769号公報明細書参
照)。埋設される絶縁膜の下部(底部)は発光層に接触
するものとなっている。高抵抗領域を敷設する第2の手
法は、イオン注入技術に依るものである(特開平8−2
50768号公報明細書参照)。
【0009】F.窒化ガリウム系半導体層への従来のイ
オン注入技術 窒化ガリウム系半導体材料に関する従来のイオン注入技
術を省みるに、アンドープの窒化ガリウム(GaN)結
晶に亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、カドミウム
(Cd)、炭素(C)、リチウム(Li)や珪素(S
i)などのイオンを注入した例がある(J.Appl.
Phys.、47(12)(1976)、5387〜5
390頁参照)。この従来例におけるイオンの注入量
は、結晶中の濃度が1×1020cm-3程度となるように
設定されている。また、イオン注入後のアニール(注入
熱処理)は、アンモニア(NH3 )雰囲気内で1050
℃で1時間に設定されている。また、窒化ガリウムにつ
いて、p形(アクセプタ)不純物としてのカルシウム
(Ca)を、キャリア濃度を5×1015cm-3以下とす
るn形のアンドープ窒化ガリウム層にイオン注入する例
が公知である(Appl.Phys.Lett.、68
(14)(1996)、1945〜1947頁参照)。
此処では、Caイオンは加速電圧を180キロボルト
(KV)とし、イオン注入量(所謂、ドーズ(dos
e)量)を5×1014cm-2として注入されている。イ
オン注入後の、窒素ガス気流中における1100℃以上
の温度でのアニールにより、p形の伝導性を呈する窒化
ガリウム層が形成されたと報告されている。さらに、気
相成長法により成膜した、亜鉛(Zn)をドーピングし
た窒化ガリウム層にMgイオンを注入し、高抵抗領域を
形成した例も開示されている(特開昭54−71589
号公報明細書参照)。この場合、MgイオンはZnドー
プ窒化ガリウム層の表面より多重に注入(多段注入)さ
れており、全ドーズ量は1.9×1015cm-2に設定さ
れている。注入後のアニールは、注入された窒化ガリウ
ム層の表面を二酸化珪素膜で被覆した後、窒素ガス気流
中において1050℃で1時間から20時間、施されて
いる。
【0010】G.イオン注入技術に依り高抵抗領域を形
成する際の問題点 イオン注入された不純物が電気的に活性化する割合(活
性化率)は、主に注入後のアニール条件に依存する。例
えば、アンドープ窒化ガリウムに注入した第II族のカル
シウム(Ca)イオンを例にすれば、アニール温度11
00℃以上において100%に近い活性化率が報告され
ている(上記のAppl.Phys.Lett.、68
(14)参照)。100%の活性化率とは、注入イオン
の全てが電気的に活性化していることを意味している。
このような高い活性化率をもたらすアニール法は、例え
ばp形の伝導層の導電性形成を意図する場合にあっては
都合良く利用できる。反面、発光面への素子動作電流の
効率的な拡散を促進させる役目を担い、或いはp形台座
電極の特性劣化を防止する役目を担う高抵抗領域の形成
には不利である。イオン注入された不純物(注入不純
物)が電気的に活性化すれば導電性キャリアとなるた
め、充分に高抵抗とは成り難いからである。
【0011】一般には、アニールを施さなければ、或い
はアニール温度を低下させれば、注入不純物の活性化率
は下げられる。これにより、高抵抗の層が得られ易くな
る。しかし、アニールを施さない或いはアニール温度を
低下させると、イオン注入に因り被注入体が被る注入損
傷を回復させるに充分な熱的エネルギーを付与できな
い。このため、被注入体(注入層)内には注入損傷が残
存する(蒲生 健次編著、「半導体イオン注入技術」、
昭和61年7月31日初版、産業図書(株)発行、79
〜86頁参照)。注入損傷を内包する、結晶性が劣悪で
高抵抗の注入層上には、信頼性のあるp形台座電極は形
成され難い。
【0012】イオン注入に依り高抵抗領域を形成する際
の別の問題点は、注入イオンの到達深さに関するもので
ある。注入イオンの到達深さは、通常はチャネリング
(channeling)を防止した状況下で、注入エ
ネルギ(イオンの加速電圧)で調整する。注入エネルギ
Eと加速電圧Vとは、注入イオンの価数をn(n≧1、
一般にはn=1またはn=2)とすれば、次式(1)の
関係にある。 E=n×V ・・・・・(1) イオンを被注入体の表面からから深部に到達させるに
は、注入エネルギをより大とする必要がある。
【0013】従来技術では、p形台座電極を形成するp
形半導体層の表面から発光層に到達するに至る深さ領域
を、全般に亘り高抵抗層とする例がある(特開平8−2
50769号公報明細書参照)。発光層上にp形上部ク
ラッド層に加え、p形台座電極の接触抵抗を低減するた
めのp形コンタクト層をも重層させるのが通例となって
いる昨今にあって、従来技術を踏襲して発光層に到達す
る程の深さの領域を、全般に亘り高抵抗領域とするに
は、かなり大きな注入エネルギが要求される。極く一般
的な、p形上部クラッド層とp形コンタクト層との重層
で構成される合計の層厚で約0.2〜約0.3μmのp
形層を通過して、発光層の表面にイオンを到達させるに
は、注入エネルギーを約200キロエレクトロンボルト
(KeV)と高くする必要があると単純に見積もること
ができる。
【0014】被注入体が被る注入損傷は、注入エネルギ
の増加に伴い増大する。発光層に及ぶ注入損傷は、発光
層の品質を劣化させる。発光層の品質の劣化は、発光強
度の低下を来たし、高発光強度の発光素子を獲得するに
支障を来すのが常である。さらに、熱的に拡散し易い不
純物をイオン注入種として選択し、数百KV程度の比較
的高い加速電圧で注入した場合、残存する注入損傷を介
して、イオン注入種(注入不純物)の拡散が異常に促進
される事態が発生する。この注入損傷を介しての異常拡
散により、イオン注入種が発光層の内部に浸透すれば、
高強度の発光を得るべく調整された発光層のキャリア濃
度に変化が発生し、さらに進行すれば電気伝導形の変化
を起こす不具合をも引き起こす。このような事態は高発
光強度の発光素子を得る際に、支障を来すのは勿論であ
る。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】このように、イオン注
入技術は、高抵抗領域を限定された領域に選択的に形成
できる利便なプロセス手法ではあるが、上記の従来手法
で高抵抗領域を形成しようとしても、イオン注入後のア
ニール条件が必ずしも、高抵抗領域形成に適しておら
ず、このため、アニールによる注入損傷の回復は可能と
なっても、充分な高抵抗を形成するには至っていなかっ
た。したがって、電流阻止機能を充分に発揮できずにp
形台座電極の下方にも素子動作電流が流れ、素子動作電
流を有効に発光領域の略全面に拡散できず、発光出力を
充分に得ることができないという問題点を有していた。
また、高抵抗領域が発光層側に接するようにも広がって
いるため、勢い注入イオンが発光層内に到達し注入損傷
が発光層の内部にまで及び、したがって、発光層の品質
を低下させ、発光出力を低下させてしまっていた。ま
た、この発光層の品質低下は、イオン注入種の注入損傷
を介しての異常な拡散によっても生じていた。
【0016】この発明は上記に鑑み提案されたもので、
発光をもたらす素子動作電流を有効に発光領域の略全面
に拡散させて発光面積を拡張し、また発光層の品質を良
好に保持することで、発光出力を充分に発揮させること
ができる化合物半導体発光素子を提供することを目的と
する。
【0017】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、請求項1に記載の発明は、p形不純物を添加したp
形半導体層上に透光性薄膜電極を介してp形台座電極を
設けた化合物半導体発光素子において、上記p形半導体
層の内部に、所定範囲の温度で注入熱処理を施すことで
p形半導体層よりも高抵抗に形成した高抵抗イオン注入
領域を設け、その高抵抗イオン注入領域の上方に上記p
形台座電極を設けた、ことを特徴としている。
【0018】また、請求項3に記載の発明は、請求項1
または2に記載の発明の構成に加えて、上記高抵抗イオ
ン注入領域の平面積を、p形台座電極の底面積の0.4
倍以上2倍以下とした、ことを特徴としている。
【0019】さらに、請求項4に記載の発明は、請求項
1から3のいずれかに記載の発明の構成に加えて、上記
p形半導体層の内部に注入するイオンの投影飛程をp形
半導体層の表面からその層厚の1/2以下とした、こと
を特徴としている。
【0020】また、請求項5に記載の発明は、請求項1
から4のいずれかに記載の発明の構成に加えて、上記高
抵抗イオン注入領域を、多重にイオンを注入して形成し
た、ことを特徴としている。
【0021】
【発明の実施の形態】以下にこの発明の実施の形態を図
面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明に係る化合
物半導体発光素子の積層構造の一部を模式的に示す図で
ある。
【0022】図において、本発明に係る化合物半導体発
光素子10は、例えばIII 族窒化物半導体発光素子であ
り、発光層2に接合して、p形不純物を添加したp形半
導体層(以下p形層という)3を形成してあり、そのp
形層3上に透光性薄膜電極(以下、透光性電極という)
4を介してp形台座電極5を設けてある。p形層3は、
その内部に、所定範囲の温度で注入熱処理を施すことで
p形層3よりも高抵抗に形成した高抵抗イオン注入領域
6を有し、p形台座電極5はその高抵抗イオン注入領域
6の上方に配置してある。
【0023】p形層3は、一般式AlxGayInz
(x+y+z=1、0≦x,y,z≦1)で表記される
p形の窒化アルミニウム・ガリウム・インジウム系混晶
から構成できる。また、リン(P)や砒素(As)等の
窒素以外の元素周期律表の第V族元素(記号Mで示
す。)を構成元素として含む一般式 AlxGayInz
a1 -a(x+y+z=1、0≦x,y,z≦1、0<a
≦1)で表されるp形のIII族窒化物半導体混晶からも
構成できる。p形層3を構成するためのp形不純物に
は、Zn、Mg、ベリリウム(Be)、Ca等が利用で
きる。有機金属気相成長法(MOCVD法)等の化学的
堆積法や、分子線エピタキシャル法(MBE法)などの
物理的堆積法によるp形III 族窒化物半導体気相成長層
の成膜にあっては、MgやBeがp形不純物として好ん
で使用されている。p形層3は、一般的なハロゲン或い
はハイドライド気相成長法で気相成長させてもよい。
【0024】p形台座電極5が良好なオーミック特性を
呈するように形成するには、p形層3はできるだけキャ
リア濃度が高く低抵抗であるのが望ましい。実用的に
は、キャリア濃度にして約1×1017cm-3を越えるp
形層3であれば、p形台座電極5を都合良く形成でき
る。抵抗率が数ミリオーム(mΩ)から数オーム(Ω)
の範囲にある低抵抗のp形層3であれば、尚更のこと都
合が良い。発光層2上には、これらp形層3から成るク
ラッド層或いはコンタクト層若しくはその双方を積層す
る。
【0025】p形層(クラッド層或いはコンタクト層若
しくはその双方)3の層厚は、p形層3内に高抵抗イオ
ン注入領域6を形成する関係で、下記のように設定す
る。層厚が極端に薄い数nm〜数十nmの極薄膜p形層
3の内部に、イオン注入技術により高抵抗イオン注入領
域6を形成するとなると、イオン注入時の加速電圧を極
端に小とする必要がある。低加速電圧の注入は被注入体
であるp形層3の注入損傷の増加を抑制するには好都合
ではあるが、加速電圧が低い故に被注入体へイオンを注
入できるエネルギを付与するのが難しくなる。イオンを
注入するに実用上必要とされる最低の加速電圧は、大凡
50KV程度である。この加速電圧に対応する注入イオ
ンの投影飛程が、ほぼ10nmより小であることから、
発光層2上に堆積するp形層3の層厚は、最低でも約1
0nm(100Å)とするのが望ましい。発光層2上に
設けるp形層3の合計の層厚は、約20nm〜約500
nm程度とするのが推奨される。より好ましい合計の層
厚は約100nmから約300nmである。
【0026】MOCVD法或いはMBE法等の気相成長
法で得たp形層3に、不純物のイオン注入を行う。注入
する不純物種(イオン種)としては、p形層3に対する
上記のp形不純物のみでなく、n形不純物も挙げられ
る。n形不純物の例としては、窒化ガリウム系半導体に
ついては、Si、C、錫(Sn)等の第IV族元素や、セ
レン(Se)やテルリウム(Te)等の第VI族元素が挙
げられる。水素(H)やアルゴン(Ar)の他、窒素
(N)やリン(P)等の第V族元素も、注入するイオン
種として利用できる。注入するイオン種は、単一には限
定されず、複数であっても構わない。例えば、Mgと酸
素(O)或いはMgとArとを同時に注入するのも許容
される。上記のようにイオン種には特別の限定は加わら
ないが、注入損傷は一般には、注入するイオン種の原子
量の増加に伴い大となることを勘案すると、原子量が比
較的に小さく、且つ熱拡散性の低い元素を注入種とする
のが好ましい。注入するイオン種として好ましい軽元素
の例には、Be、硼素(B)、C、N、OやMgなどが
ある。発生する注入損傷の度合いから注入量、すなわち
ドーズ(dose)量は概ね、1×1015cm-2以下、
望ましくは5×1014cm-2以下とする。後述するアニ
ール温度での注入損傷の回復の程度を考慮すると、好ま
しいドーズ量は約1×1014cm-2以下である。ドーズ
量を約1×1012cm-2以下とするのも逆に好ましくな
い。高抵抗の注入層の形成に寄与する注入損傷が、イオ
ンの注入不足により都合良く発生させられないからであ
る。
【0027】イオンをp形層3の特定の領域に注入す
る。特定の領域とは、p形台座電極5を形成する部分の
下方である。p形台座電極5を形成する部分に限り、p
形層3の表面を露呈し、その他の領域をイオンの透過を
阻止する作用を有する膜で被覆する。このような表面被
覆状況下でイオンを注入すれば、p形台座電極5の配置
部分に限定してイオン注入を行うことができる。これ
は、公知の選択イオン注入技術であって、特定の領域に
限りイオン注入を施すには特別な技術を必要としない。
選択イオン注入技術に利用できる表面被覆材(マスク
材)には、従来からの二酸化珪素(SiO2 )や窒化珪
素(Si3 4 )の他に、フォトリソグラフィ技術にお
けるパターニングに利用されるフォトレジスト材があ
る。SiO2 などの無機絶縁膜と有機フォトレジスト材
とを重層させた材料もマスク材として利用できる。酸化
膜或いは窒化膜などの無機絶縁性マスク材は、アニール
時の、p形層3または高抵抗イオン注入領域(注入層)
6からの、揮発性の高い構成元素の揮散を抑制するため
の保護膜としても応用できる。
【0028】注入後のアニール(熱処理)は限定された
温度で行う。本発明では、アニールは注入したイオンを
電気的に効率良く活性化するために実施するのではな
い。すなわち、活性化率の向上を追求するためのアニー
ルではない。n形不純物であれ、p形不純物であれ、イ
オンを注入した領域が明らかに電気伝導性を呈する程、
電気的に活性化させない。したがって、本発明ではアニ
ールを施す最高の温度を1000℃に限定する。前述の
MgやSiなどほとんどすべての注入イオンは、100
0℃以下の温度では殆ど活性化しない。低温でのアニー
ルは、注入損傷を不必要に多く残存させるため逆に好ま
しくはない。注入によって誘因された結晶欠陥が多量に
存在すると、これらの結晶欠陥を介して、p形台座電極
5から直下の発光層2へと直接、素子動作電流が通流す
る事態を招く確率が高くなる。結晶欠陥を介してのp形
台座電極5と発光層2との短絡的な通流は、p形台座電
極5の耐圧不良となって現れ、信頼性のあるp形台座電
極5の形成に支障を来す。また、素子動作電流の発光層
2への短絡的な通流が発生すれば、発光面側に拡散する
電流成分が減少するため、結果として発光強度が低下す
る不都合をきたす。
【0029】そこで、本発明では、アニール温度を最低
でも650℃としている。すなわち、本発明では、アニ
ール温度を650℃以上で1000℃以下の範囲に限定
して、高抵抗イオン注入領域(注入層)6を選択的に形
成するものとする。
【0030】本発明でのアニールは、注入した不純物の
効率的な活性化を主たる目的としているのではない。ア
ニールは一定の温度で一定の時間で実施する従来の画一
的な手法に限定されず、650℃以上1000℃以下の
範囲の異なる温度で多段階に施しても構わない。例え
ば、p形層3に、室温近傍の温度から概ね200℃程度
以下の温度で選択的にイオン注入をした後、850℃に
昇温して同温度に10分間保持して第1のアニールとな
し、引き続き800℃で10分間の第2のアニールを行
う2段階アニールとしてもよい。また、650℃以上1
000℃以下の範囲内で、温度を連続的に変化させてア
ニールしてもよい。例えば、アニールの開始温度を90
0℃とし、900℃から700℃に毎分5℃で冷却する
徐冷式のアニール方法がある。逆に、比較的低温の70
0℃をアニールの開始温度とし、850℃への昇温過程
をもってアニールとなすこともできる。アニールは、赤
外線ランプ加熱法や抵抗加熱法、高周波加熱法等、加熱
手段の如何を問わず、PID方式等の温度調節機能を備
えた加熱装置を利用して行うことができる。アニールは
p形層3を気相成長させた成長炉でも、またアニール専
用に設けた加熱炉を利用しても実施できる。
【0031】アニール時間は、アニール温度を高温とす
る程、短時間とすると、好結果が得られる。推奨される
アニール温度とアニール時間の組み合わせの一例を挙げ
れば、800℃〜900℃でのアニール時間を10分か
ら30分程度とする例がある。750℃〜850℃で約
20〜30分間の条件が組み合わせの好例である。65
0℃以上で1000℃以下の温度範囲でのアニールの合
計の時間は、大凡1時間以内に留めるのが良い。例え
ば、単一温度でアニールを施す場合、同温度での保持時
間を、大凡60分以内とする。異なる温度でアニールを
施す際には、各温度での保持時間の合計を、大凡1時間
以内に留めるのが良い。徐冷法によるアニールでは、徐
冷を開始する温度から終了する温度に至る時間を、大凡
1時間以内に収納する。昇温を伴うアニール法において
も、昇温を開始する温度からアニールの終焉をなす昇温
到達温度に至り、その到達温度に留まる合計の時間を、
大凡1時間以内とする。
【0032】高温で長時間に亘りp形層3を保持する
と、昇華によりp形層3の表面状態が劣化する。数十n
mと薄い金属膜を含む透光性電極4の形成には、表面の
平滑性を損なうp形層3の表面モフォロジの劣化は、不
利に作用する。表面に発生した凹凸により、極薄膜電極
を構成する金属膜或いは金属酸化物膜の連続性が損なわ
れ、またはp形層3表面との密着性が弱小化されるから
である。不連続性を内在する極薄膜電極は、素子動作電
流の通流に対して抵抗が高く、また発熱が生ずるため信
頼性のある電極を形成するに至らない。また、注入する
イオン種が熱的に拡散し易い不純物であると、アニール
温度が高くアニール時間が長大化すると、不純物の拡散
距離は延長する。例えば、亜鉛(Zn)のように易拡散
性の不純物を内在する高抵抗のイオン注入領域を発光層
2に近在させると、Znの異常な拡散により、発光層2
の電気伝導形や結晶的品質に変化を来す事態を招きかね
ない。Znの如き窒化ガリウム系半導体で深い準位を形
成する不純物が、発光層2に侵入し、発光層2が高抵抗
となると発光強度が極端に低下するなどの不具合が発生
する。発光層2はn形の導電層として保持しておく必要
がある。
【0033】高抵抗イオン注入領域6の抵抗は、p形層
3のそれに比し大とし、実用上、p形層3の抵抗より約
1桁以上大であるのが望ましい。好ましくは、高抵抗イ
オン注入領域6の抵抗は、数百から数キロΩ程度以上と
する。高抵抗イオン注入領域6の抵抗は、アニール条件
の変更により調整できる。アニール温度を同一とする場
合、アニール時間を短縮すればより高抵抗となる確率が
増加する。しかし、短いアニール時間で帰結されるの
は、高抵抗イオン注入領域6の高抵抗化ではあるが、内
部には多量の未回復の注入損傷が内包されている。注入
損傷の残存の程度は、ラザフォード後方散乱法(RBS
法)等の分析から知ることができる。結晶欠陥を内包す
るp形層3層上には、高耐圧で信頼性に優れるp形台座
電極5を形成することはできない。したがって、例え
ば、900℃では、p形台座電極5直下の高抵抗イオン
注入領域6の結晶欠陥の密度を減ずるために、最短でも
約5分間アニールする。アニール時間は温度に依って変
化させ、高温でのアニール程、アニール時間を短縮させ
ることができる。700℃〜800℃でのアニールで
は、最低約10分間のアニール時間が必要である。
【0034】イオン注入技術により一部の選択領域を高
抵抗としたp形層3の表面には、透光性電極4とボンデ
ィング用途のp形台座電極5とを形成する。透光性電極
4は、素子動作電流を発光面の略全面に拡散させる電極
であり、p形層3を成す材料、ここでは窒化ガリウム系
半導体に対してオーミック接触を成す金属で構成する。
オーミック接触を成す代表的なp形オーミック電極材料
には、金(Au)やニッケル(Ni)がある。透光性電
極4の膜厚は、短波長可視光に対して透光性を失わない
程度の約10〜20nm程度とするのが望ましい。約1
0nm未満の極端に薄い膜とすると膜の連続性が損なわ
れるため、電極抵抗の増大が帰結される場合がある。逆
に、約20nmを越える膜厚とすると、透過光の強度
は、Lambert−Beerの法則(「岩波理化学辞
典」第3版第7刷、(株)岩波書店発行、1400頁参
照)が教示する如く低下する。波長を約450nmとす
る青色光に対する透過率は、膜厚が約20nmを越える
Au膜にあっては50%を下回るものとなる。したがっ
て、膜厚を厚くし連続性をもたせて電流の通流に対して
抵抗の少ない透光性電極4を形成したく意図しても、光
の透光性の観点からすれば、実用上の限度がある。
【0035】これ故に、透光性電極4の膜厚を薄くする
と、今度はp形層3との密着性は劣るものとなり、p形
層3と剥離する部位も生じるため、電極の抵抗の増大や
発光面積の縮小が生じ、発光強度は低下する。このよう
な場合にあっては、金属薄膜電極上に金属酸化物から成
る膜を絶縁性の保護膜として被着すると、密着性がより
向上する好結果が得られる。この金属酸化物保護膜を、
下地のオーミック性の透光性電極4よりも透光性に優れ
る材料で構成すると、尚のこと下地の透光性電極4の透
光性を徒に減ずることが避けられるため好都合である。
絶縁性を有する好適な透光性の金属酸化物保護膜には、
Ni2 OやNiO、Ni2 3 等のニッケル酸化物膜
や、二酸化チタン等のチタニウム(Ti)酸化物膜があ
る。特に、二酸化ニッケル(NiO2 )やこれに近い当
量組成比のニッケル酸化物は透光性に優れ、金属酸化物
保護膜として有用である。さらに、透光性電極4とp形
層3との密着性を向上させるには、金属酸化物保護膜上
に二酸化珪素や珪化窒素等の一般的な無機絶縁性保護膜
を積層する手法もある。また、ポリイミド等の有機樹脂
系の膜からも金属酸化物を含む重層保護膜を構成するこ
とができる。
【0036】アニールにより高抵抗とした高抵抗イオン
注入領域6の上方には、p形台座電極5を、オーミック
な透光性電極4を介してその表面上に形成する。p形台
座電極5を透光性電極4の表面上に形成するには、p形
台座電極5を形成する予定領域に金属酸化物保護膜が重
層させてあれば、先ずその金属酸化物保護膜をウェット
或いはドライエッチング等の技法により除去し、透光性
電極4の表面を露呈させた後、p形台座電極5を被着さ
せる手法に依ればできる。p形台座電極5は、透光性電
極4に重層させた、概ね高抵抗の金属酸化物保護膜とは
敢えて導通させる必要はない。
【0037】また、p形台座電極5は、高抵抗イオン注
入領域6の上方でp形層3の表面に、そのp形台座電極
5の底面の一部を直接接触させて設けることができる。
例えば、p形台座電極5の底面を部分的に凸状とし、そ
の凸に対応させて透光性電極に通孔を形成することで、
底面の部分的な凸部をp形層3の表面に直接接触させて
設けることができる。この場合、そのp形台座電極5の
凸部を、p形層3に対しオーミック抵抗が高いか非オー
ミック性を呈する材料から構成すると、直下に在る高抵
抗イオン注入領域6の高抵抗性と相俟って、p形台座電
極5から発光層2へ直接的に流れる電流成分を減ずる
に、一層効果がある。窒化ガリウム系半導体から成るp
形層3に対して、比較的高いオーミック接触抵抗をもた
らす材料の例には、金・亜鉛(Au・Zn)合金や金・
ベベリウム(Au・Be)合金がある。
【0038】本発明は、イオン注入技術を利用して形成
した高抵抗イオン注入領域6の上方にp形台座電極5を
敷設する構成を基本とするが、特に、その高抵抗イオン
注入領域6の上面の面積(平面積)を、p形台座電極5
の底面積に対して制約する。p形台座電極5を配置する
側から発光を外部に取り出す方式の発光素子、特にLE
Dにあって、p形台座電極5の下方に在る発光層2から
の発光の大部分は、p形台座電極5に遮蔽されて素子外
部へ放射されない。p形台座電極5の直下に高抵抗イオ
ン注入領域6を設けるのは、このp形台座電極5の下方
に位置する発光層2への通流を妨げ、図1の矢印Aで示
すように、素子動作電流を透光性電極4の全般的な領域
に行き渡らせて、発光面積を拡張させることを意図して
いる。
【0039】p形台座電極5の底面積に比して高抵抗イ
オン注入領域6の平面積が極端に小であると素子動作電
流が発光層2へと通流する確率が増える。すなわち、外
部へ取り出せる発光の強度の向上に寄与しない領域での
発光のために、素子動作電流の一部が消費される不具合
を生ずる。逆に、高抵抗イオン注入領域6の平面積がp
形台座電極5の底面積に比較して大であり、p形台座電
極5の近辺の透光性電極4の敷設領域に及ぶと、その領
域の透光性電極4は良好なオーミック接触特性を示さ
ず、また、発光ももたらさない。したがって、発光面積
の減少が帰結され高発光強度の素子を得るのに不利とな
る。また、高抵抗イオン注入領域6が広範囲に及ぶと、
抵抗が高い故に通電時に発熱する領域が増大し、p形台
座電極5の下方でのこの発熱によりp形台座電極5の信
頼性が低下するという悪影響も生じてしまう。そこで、
本発明では、高抵抗イオン注入領域6の平面積をp形台
座電極5の底面積の0.4倍以上2.0倍以下とする。
【0040】高抵抗イオン注入領域6の形状は、p形台
座電極5の底面の形状と相似とするのが望ましい。例え
ば、図2に示すように、p形台座電極5の底面の形状が
正方形であれば、高抵抗イオン注入領域6の平面形状を
正方形とする。また、p形台座電極5が円形の場合は、
高抵抗イオン注入領域6を円形に形成する。
【0041】p形台座電極5の底面形状の中心と、高抵
抗イオン注入領域6の平面形状の中心とは、厳密に一致
させる必要は必ずしもない。特に、高抵抗イオン注入領
域6の平面積がp形台座電極5の底面積を上回る場合、
高抵抗イオン注入領域6の隅部や、その中心から偏芯し
た箇所にp形台座電極5を設けても構わない。
【0042】上記の高抵抗イオン注入領域6は、所定の
領域の全面に一様に注入された、所謂「べた」に注入し
た領域であるとして説明したが、高抵抗イオン注入領域
6を散在させて設ける構成としても構わない。例えば、
p形台座電極5を形成する予定領域の下方に、等間隔に
均一に、或いは同心円の円周上に不均一に設けることが
できる。高抵抗イオン注入領域6を間隔を置いて散在さ
せて形成する場合にあっても、個々の高抵抗イオン注入
領域6の平面積の合計は、p形台座電極5の底面積の
0.4倍以上2.0倍以下にする。この具体例は詳細に
後述する。
【0043】高抵抗イオン注入領域6の形状加工は、上
記のマスク材に公知のフォトリソグラフィ技術を駆使し
てパターニングすれば容易に実施できる。近紫外線を露
光してパターニングを行う、通称ディープ(deep)
UV露光法を利用すれば、±0.5μm程度以内の充分
な寸法精度をもって形状加工を施すことができる。
【0044】高抵抗イオン注入領域6の平面積に規定す
るに加え、本発明では、高抵抗イオン注入領域6のp形
層3内における位置、すなわち、イオン注入を施すp形
層3の表面からの深さ(距離)を規定する。これは、イ
オン注入に因る損傷が勢い発光層2に及ぶのを確実に回
避するためである。
【0045】イオン注入された不純物の濃度Nの被注入
体表面からの深さ方向xの分布N(x)は、周知のLS
S理論を基礎として一般に次式(2)で近似される
(「超高速バイポーラ・デバイス」、1990年10月
20日初版第4刷、(株)培風館発行、106頁参
照)。 N(x) ={Q/(21/2π・ΔRp)}・exp{−1/2・(x−Rp/ΔRp)2} ・・・・・(2) 上記式(2)において、Qはドーズ量、換言すれば被注
入体の単位面積(1cm2 )に注入されるイオンの総量
である。Rpは投影飛程であって、注入した不純物が最
も高濃度に存在する被注入体の表面からの深さを表し、
加速電圧の増加と共に増加する(深くなる)。ΔRpは
分布の標準偏差を表すものであって、正規分布における
標準偏差を表す数値に相当する。上記式(2)は、注入
された不純物(イオン)の濃度Nが、図3に示すよう
に、例えばp形層3のような被注入体の表面からの深さ
に対して正規分布を示すことを表している。
【0046】本発明では、高抵抗イオン注入領域6を形
成するに当たり、注入するイオンの投影飛程Rpをp形
層3の層厚の1/2以下とする。注入したイオンの濃度
が最大となるp形層3表面からの深さをp形層3の層厚
の中央付近に留め、発光層2へ注入損傷が及ぶのを極
力、回避するためである。このように、注入した不純物
イオンの濃度が最大となる深さを、発光層2から離れた
位置に設定したので、たとえ注入した不純物イオンの拡
散係数が大きくとも、発光層2内にその不純物イオンが
侵入するのを抑制することができる。
【0047】上記のイオン注入は、同一部分に一回だけ
注入する単段の場合であるが、これを、注入条件を変化
させて何回も注入する、すなわち多段(多重)に行うこ
とで、高抵抗イオン注入領域6の深さ方向の幅を厚くす
ることもできる。
【0048】図4はイオン注入を多段に行った場合の注
入イオン濃度分布を示す図である。図では、3段にイオ
ン注入を行った場合を示している。注入条件のうち、注
入するイオン種を同一とし、加速電圧を大から小へと3
段階に変えると、それに対応して原子濃度分布はN1,
N2,N3と変化し、投影飛程RpもRp1,Rp2,
Rp3と順次小さくなる。すなわち、加速電圧の増大と
共に、投影飛程Rpも増加する。そして、個々の原子濃
度分布N1,N2,N3を合成することで、多段注入し
た場合の原子濃度分布N0が得られる。多段注入した場
合の原子濃度分布N0は、単段注入の場合に比較して、
原子濃度を大とする部分が略平坦化(均一化)されるの
で、それだけ高抵抗イオン注入領域6の深さ方向の幅を
厚くでき、これにより、高抵抗イオン注入領域6をより
一層高抵抗に形成することができる。
【0049】多段注入の場合も、各段での投影飛程Rp
1,Rp2…をp形層3の層厚の1/2以下とする。こ
のことは、注入するイオン種が同一であるという条件下
では、各段での投影飛程Rp1,Rp2…のうち、最大
の投影飛程Rpmax をp形層3の層厚の1/2以下とす
ることに相当する。例えば、質量数が24の1価のマグ
ネシウムイオン(24Mg+ )を、加速電圧を100K
V、150KV及び200KVとして多段注入した場合
に、最大の投影飛程Rpmax は加速電圧を200KVと
して注入されたイオン濃度によって与えられる。窒化ガ
リウムに、加速電圧を200KVとして24Mg+ を注入
した場合の投影飛程Rpは、大凡0.2μm程度であ
る。本発明では、この最大の投影飛程Rpmax をp形層
3の層厚の半分以下の表面側に位置させることを趣旨と
する。換言すれば、本発明は多段注入を施す場合に投影
飛程Rpが、最大でもp形層3の層厚の1/2以下とな
るようにp形層3の表面側に注入することを特徴とする
ものである。
【0050】発光層2上に存在するp形層3が、単層で
はなく重層である場合においても、注入する不純物イオ
ンの投影飛程Rpは、p形層3の合計の層厚の1/2以
下とする。例えば、発光層2上に層厚を0.1μmとす
るMgドープ窒化アルミニウム・ガリウム混晶から成る
p形クラッド層と、同じく層厚を0.1μmとするp形
窒化ガリウムコンタクト層とから成る、合計の層厚を
0.2μmとするp形層3が積層された構成にあって
も、投影飛程Rpは合計の層厚の1/2以下に相当する
0.1μm以下とする。
【0051】注入損傷が最も高密度に残留するのは、投
影飛程Rpと、イオン濃度分布に関する標準偏差ΔRp
とを加算した(Rp+ΔRp)の深さ近傍である。ここ
で、ΔRpはRpの約1/2であるから(前出の「超高
速バイポーラ・デバイス」、106頁参照)、(Rp+
ΔRp)は約1.5・Rpとなる。本発明の如く、投影
飛程Rpをp形層3の1/2以下に設定すれば、注入損
傷が最も高密度に残留する深さ1.5・Rpは、せいぜ
いp形層3の3/4程度の深さとなり、注入損傷の発光
層2への伝搬は充分余裕をもって回避することができ、
発光層2に直接、注入損傷が及ぶのを防ぐことができ
る。
【0052】被注入体であるp形層3に内在しているp
形不純物と極端に原子半径を異にする不純物イオンを強
引に注入すると、それだけでp形層3の注入領域に伸縮
性の歪みを発生させる恐れがある。この不必要な歪みの
発生は、アニールにより高抵抗イオン注入領域6を形成
するに際し、安定性的な形成を阻害する一要因となる。
このような事例は、Mgをドーピングした窒化ガリウム
層にMgとは原子半径を異にするZnを選択的にイオン
注入し、高抵抗イオン注入領域6を形成する際に明瞭と
なる。Mgの原子半径は1.60ÅでZnのそれは1.
33Åであり、この原子半径の相違に基づき導入される
格子歪等の発生により、本発明が提示するアニール条件
では、都合良く回復するに至らず、不必要に多くの結晶
欠陥が内在する高抵抗イオン注入領域6が帰結される場
合がある。さらには、残存する結晶欠陥を介して、Mg
より拡散性の高いZnが発光層2内へと侵入して、不用
意に発光層2の結晶組織或いは電気的特性を変化させる
場合がある。この点に鑑み本発明では、注入するイオン
種を特定する。特に、イオン種はp形III 族窒化物半導
体に添加するp形不純物と同一或いは近似した原子半径
を有するものとする。例えば、p形層3のp形不純物
が、極く一般的に利用されているMgであれば、p形層
3に注入するイオン種はMg、或いはBeやSiとする
のが好ましい。
【0053】次に、発光層2の構成例を説明すると、発
光層2については種々の構成例があるが、例えば層厚を
0.5μmとするアンドープの窒化ガリウム・インジウ
ム層から発光層2を構成すればよい。アンドープの窒化
ガリウム・インジウム層から成る発光層2にあっては、
発光スペクトルの半値幅を狭帯化させ単色性(発光の色
純度)が向上するので、発光の単色性に優れるLEDを
得るのに優位である。アンドープの窒化ガリウム・イン
ジウムから成る発光層2の層厚を、従来の約1/10未
満程度と薄くし、具体的には、層厚を約10nmとする
ことで、発光スペクトルの半値幅を従来の約1/2以下
の約15〜30nmとすることもできる。また、アンド
ープの窒化ガリウム・インジウム層等のインジウム含有
III 族窒化物半導体層から、単一或いは多重の量子井戸
構造の井戸層を構成し、それを発光層2としてもよい。
【0054】一方、不純物をドーピングした発光層2と
しては、層厚を100Åとし、亜鉛(Zn)と珪素(S
i)を共にドーピングした窒化ガリウム・インジウムか
ら構成すればよい。また、層厚を10Å〜0.5μmと
する珪素をドーピングしたn形の窒化ガリウム・インジ
ウム層を発光層2としてもよい。また、亜鉛をドーピン
グした層厚を10Åとする窒化ガリウム・インジウム層
から発光層2を構成してもよい。発光層2を構成する半
導体材料としては上記のアンドープ或いは不純物ドープ
の何れからも選択できる。発光層2には、電気伝導形か
ら観ればn形及びp形の何れのインジウム含有III 族窒
化物半導体も利用できる。ただし、発光強度等の特性の
観点からすれば、発光層2はn形層から構成するのが好
ましい。
【0055】発光層2を構成する結晶層の内部結晶組織
には、特に限定を加えない。上記の一般式 AlxGay
InzNで表記される混晶系に包含される窒化ガリウム
・インジウム混晶を例にすれば、同混晶がインジウム組
成を均一とする単一相構造であっても、また、被熱によ
りインジウム濃度を相違する、インジウム組成(濃度)
に”ゆらぎ”を有する複数の相から成る多相構造であっ
ても構わない。代表的な多相構造例には、窒化ガリウム
或いはインジウム濃度を比較的希薄とする窒化ガリウム
・インジウム混晶から成る母相と、母相の構成物質より
もインジウム濃度を大とする窒化ガリウム・インジウム
混晶から成るドット状の微結晶体を従属相とする複数の
相から成る多相構造が挙げられる。本発明では特に、放
射される発光の強度の観点からして、より強い発光を帰
結する多相構造から成るインジウム含有III 族窒化物半
導体材料から発光層2を構成することを推奨する。多相
構造には、発光層2の内部に従属相が空間的に略均一の
密度で存在する場合と発光層2と他層との接合界面また
はその近傍の領域に集中して従属相が存在する場合があ
る。例えば、インジウム含有III 族窒化物半導体から成
る発光層2と、クラッド層等のn形接合層との接合界面
に、当該界面領域に凝縮したインジウムを核として発達
したと見受けられる島状或いは球状のインジウム含有従
属相が集中して存在する場合がある。此処では、従属相
の発光層2内での分布状況に拘らず、何れも多相構造と
みなす。
【0056】このように、本発明に係る実施形態では、
p形層3の内部にイオンを注入し、そのイオン注入領域
を、所定範囲の温度、例えば注入熱処理の温度としては
比較的低い設定の600℃以上1000℃以下の温度で
注入熱処理を施すことで、高抵抗イオン注入領域6を形
成することとした。イオン注入時に発生した注入損傷
は、充分に回復されているとは言えないものの、p形層
3よりも確実に高抵抗化されているので、高抵抗イオン
注入領域6の形成に大きく寄与させることができる。そ
して、その高抵抗イオン注入領域6の上方に、透光性電
極4を介してp形台座電極5を形成したので、p形台座
電極5からその下方位置の発光層2への短絡的な通電
を、高抵抗イオン注入領域6によって妨げることがで
き、したがって、発光をもたらす素子動作電流を透光性
電極4の電極面に沿って、発光領域の略全面に有効に拡
散させることができ、これにより、発光出力を充分に発
揮させることができる。
【0057】また、この実施形態では、高抵抗イオン注
入領域6の平面積を、p形台座電極5の底面積に対して
制約している。p形台座電極5の底面積に比して高抵抗
イオン注入領域6の平面積が極端に小であると、p形台
座電極5からその下方位置の発光層2に短絡的に通流し
て無駄な通電となるし、逆に、高抵抗イオン注入領域6
の平面積が大きすぎると、発光層2への通電が減少して
発光出力を低下させるとともに、高抵抗イオン注入領域
6での発熱が増大してp形台座電極5の信頼性を低下さ
せるが、本発明では、高抵抗イオン注入領域6の平面積
をp形台座電極5の底面積の0.4倍以上2.0倍以下
としたので、高抵抗イオン注入領域6は素子動作電流に
対する阻止機能を適切に発揮することとなり、これによ
り、素子動作電流を無駄なく有効に発光領域の略全面に
拡散させることができる。
【0058】さらに、p形層3の内部に注入するイオン
の投影飛程Rpをp形層3の表面からその層厚の1/2
以下としたので、注入損傷が発光層2に及ぶのを確実に
回避することができ、発光層2の品質を保持して高い発
光出力を発揮させることができる。この場合、p形層3
の表面側に高抵抗イオン注入領域6が形成されるが、p
形台座電極5は透光性電極4を介して配置されるので、
素子動作電流は確実に発光領域の全面に拡散する。
【0059】また、高抵抗イオン注入領域6を、多段に
イオンを注入して形成するようにしたので、単段注入の
場合に比較して、原子濃度分布中の原子濃度を大とする
部分の平坦化(均一化)が可能となり、それだけ高抵抗
イオン注入領域6の深さ方向の幅を厚くすることがで
き、これにより、高抵抗イオン注入領域6をより一層高
抵抗に形成することができる。
【0060】また、注入するイオン種を、p形半導体に
添加するp形不純物と同一あるいは近似した原子半径を
有するものとしたので、原子半径を異にするイオン種を
注入したときの格子歪みの発生を防止でき、拡散性の高
い原子を注入してその原子が発光層2に侵入するような
ことも防止でき、p形層3や発光層2の品質を損なうよ
うなことなく、高い発光出力を維持させることができ
る。
【0061】次に、この発明の化合物半導体発光素子
を、より具体的な実施例を以て説明する。
【0062】
【実施例】(第1実施例)本発明を発光ダイオード(L
ED)に適用した場合について説明する。LED用途の
積層構造体を構成する各構成層は一般的な常圧(大気
圧)方式のMOCVD成長装置を利用して、基板上に次
の手順により順次形成した。
【0063】図5は本発明の第1実施例に係る積層構造
体を示す図である。図において、積層構造体11は、基
板100上に積層して構成されている。基板100とし
て、直径2インチ(直径50mm)で厚さが約90μm
の両面研磨した(0001)(c面)−サファイア(α
−Al23単結晶)を使用した。基板100上には、ア
ンドープの窒化アルミニウム(AlN)から成る緩衝層
100a、珪素(Si)ドープの窒化ガリウム(Ga
N)から成るn形の下部クラッド層101、主体相のイ
ンジウム(In)組成比を約10%(0.10)とする
多相構造のアンドープ窒化ガリウム・インジウムから成
る発光層102、マグネシウム(Mg)をp形不純物と
してドーピングした窒化アルミニウム・ガリウム混晶
(Al0.15Ga0.85N)から成る上部クラッド層10
3、及びMgドープの窒化ガリウムから成るコンタクト
層103aを順次重層させ、LED用途の積層構造体1
1を形成した。上部クラッド層103とコンタクト層1
03aとは、双方でp形層130になっている。
【0064】発光層102の上部に配置した上部クラッ
ド層103の層厚は0.05μmに、コンタクト層10
3aの層厚は0.1μmに各々精密に制御し、p形層1
30を0.15μmとした。上部クラッド層103及び
コンタクト層103aに対するMgのドーピング源に
は、ビス−シクロペンタジエニルマグネシウム(bis
−(C5 5 2 Mg)を使用した。Mgのドーピング
源の成長反応系への供給量は、両層103,103a共
に約2×1019cm-3となるように設定した。
【0065】最表層のコンタクト層103aの成膜を1
100℃で終了した後、積層構造体11を室温近傍の温
度迄冷却した。冷却後、常圧MOCVD成長装置から積
層構造体11を取り出し、コンタクト層103aの表面
を有機溶媒で洗浄した。その後、一般的な有機フォトレ
ジスト材でコンタクト層103aの表面を膜厚が1.2
μmとなるように被覆し、公知のフォトリソグラフィ技
術を駆使して、p形台座電極105を形成する予定の領
域に在るフォトレジスト材を選択的に剥離した。これに
より、一辺を110μmとする正方形の領域に限りフォ
トレジスト材を開口し、コンタクト層103aの表面を
露出させた。
【0066】その後、表面に形状加工を施したフォトレ
ジスト材を残置したままで、室温で質量数が9のイオン
価を1価とするベリリウム(Be)イオンを注入した。
加速電圧は80KVに設定した。ドーズ量は4×1012
cm-2とした。注入時には、注入イオンの面チャネリン
グを多少なりとも防止するため、イオンビームの入射方
向に対し、コンタクト層103aの表面を角度にして約
15度傾斜させた。注入の終了後、p形台座電極105
の形成予定領域に選択的にBeイオンを注入するための
マスク材とした上記のフォトレジスト材を専用の薬液を
使用して剥離した。
【0067】マスク材(フォトレジスト材)を剥離し表
面に被膜を冠しない状態で、イオン注入処理を施した積
層構造体11を室温でアニール炉内に搬入した。アニー
ル炉内を一般の油回転式真空ポンプを具備した真空排気
経路を介して真空に排気した。約10-3トール(Tor
r)の真空度に到達して約10分間、同真空度の状態に
保持した後に、約3リットル/分の流量の精製アルゴン
(Ar)ガスをアニール炉内に流通させて、アニール炉
内の圧力を大気圧に復帰させた。
【0068】次に、アニール炉の外部周囲に配備した巻
線ヒータに電力を投入し、積層構造体11を載置する半
導体工業用の高純度石英製サセプタの温度を800℃に
昇温した。中途、温度が約600℃に到達した時点で、
アニール炉内に供給する精製Arガスの流量を電子式質
量流量計(マスフローコントローラ(MFC))で正確
に毎分2.5リットルに調整した。サセプタの温度は、
それに接触する熱電対(JIS−K規格)で測温し、熱
起電力信号はヒータへの投入電力を制御するための一般
的なPID方式の温度調節器に入力した。800℃に到
達した後、同温度に正確に25分に亘り保持し、積層構
造体11をアニールした。アニール終了後は室温迄冷却
した。このアニールにより、Beイオンを注入した領域
は、周囲のp形層130より高抵抗化し、平面視で一辺
を110μmとする正四角形状の高抵抗イオン注入領域
(高抵抗イオン注入層)106となった。
【0069】アニールを施した後、積層構造体11の最
表層であるコンタクト層103aの表面近傍の領域の抵
抗を、通常の触針法を用いて取得した電流−電圧特性か
ら計測した。選択的にBeイオンを注入した領域(p形
台座電極105を形成する予定の領域)の抵抗は約4〜
5KΩに及んだ。一方、Beイオンの注入を施していな
い領域の層表面近傍の抵抗は、大凡2桁以上低く約5Ω
〜約8Ωであった。これにより、高抵抗イオン注入領域
106の形成を確認することができた。
【0070】また、2次イオン質量分析法(SIMS)
によるBe原子濃度の深さ方向の分析結果からは、注入
したBeが注入条件に鑑みたLSS理論で提示される正
規分布曲線状にほぼ分布していると認められた。これに
より、本発明に係わる上記のアニール条件は、Beの異
常な拡散を生じないものと確認された。Beの原子濃度
が最高となるのは、コンタクト層103aの表面から約
0.07μmの深さであった。
【0071】上記の積層構造体11を母体材料として発
光ダイオードを作製した。図6は発光ダイオードの断面
構造を模式的に示す図で図7のA−A断面であり、図7
は発光ダイオードの平面模式図である。これらの図にお
いて、発光ダイオード50は、上記の積層構造体11に
電極を設けた構成となっている。
【0072】先ず、n形パッド電極(負電極)109を
形成するために、当該電極109を形成する予定領域上
に在る発光層102、上部クラッド層103及びコンタ
クト層103aを、アルゴン−メタン(CH4 )−水素
混合ガスを使用したプラズマエッチングで除去した。こ
のエッチングは、下部クラッド層101の表層部を約1
50nm除去するに至る迄、継続した。然る後、エッチ
ングにより露呈した下部クラッド層101の表面にn形
パッド電極109を形成した。n形パッド電極109
は、アルミニウム(Al)単体から構成した。
【0073】一方、プラズマエッチング後も残存するコ
ンタクト層103a上の略全域には、膜厚を約150Å
のAu薄膜から成るオーミック性のp形の透光性電極1
04を形成した。次に、透光性電極104上には、厚さ
約50ÅのNi膜を真空蒸着した。真空蒸着設備からN
i薄膜を付した積層構造体11を取り出した後、p形台
座電極105の形成予定領域、すなわちイオン注入した
領域に相当する部分に被着したNi膜のみをエッチング
で除去した。然る後、Ni膜を、酸素ガスが流通する酸
化炉内で500℃で5分間に亘り酸化させ、二酸化ニッ
ケル( NiO2)を主とする金属酸化物保護膜104a
を形成した。
【0074】次に、金属酸化物保護膜104aを除去し
て、下層の透光性電極104の表面が露呈した領域に
は、底面を一辺の長さが100μmの正四角形とするp
形台座電極105を一般的な真空蒸着法によって形成し
た。p形台座電極105は、膜厚を約0.5μmとする
Au・Be(3%)合金から成るAu・Be膜105a
の上に、膜厚を約1.2μmとするAu膜105bを重
層させて構成した。
【0075】p形台座電極105の底面の中心は、高抵
抗イオン注入領域106の中心に略一致させた。p形台
座電極105の底面積に対する高抵抗イオン注入領域1
06の表面積は約1.2倍となった。
【0076】上記構成のLED50において、n形パッ
ド電極109及びp形台座電極105間に直流電圧を印
加し、発光させた。LED50は青色の発光を呈した。
発光の中心波長は約445nmであった。青色の発光領
域は透光性電極104を敷設した略全域に及んでいだ。
p形台座電極105の裏面側からの発光は殆ど視認され
なかった。これにより、上記の高抵抗イオン注入領域1
06は、電流阻止層としての役目を担うものと判断され
た。順方向電流を20ミリアンペア(mA)とした際の
順方向電圧は、約3.7Vであった。逆方向電流を10
マイクロアンペア(μA)とした際の逆方向電圧、すな
わち、逆方向の耐圧は50Vを越えるものとなった。一
般の積分球を利用した測定では、順方向電流を20ミリ
アンペア(mA)通流した際の発光出力は、18マイク
ロワット(μW)であった(図8)。
【0077】(第2実施例)この第2実施例では、上記
第1実施例に記載の積層構造体の最表層のコンタクト層
の、p形台座電極を形成する部分以外の領域を、プラズ
マCVDによる窒化珪素(SiN)膜、及びフォトレジ
スト材の2層から成るマスク材で被覆した。次に、p形
台座電極を形成する予定の領域に在るマスク材を選択的
に剥離し、直径を140μmとするマスク材開口領域を
形成し、そのマスク材開口領域には、質量数を28とす
る1価の珪素(Si)イオンを注入した。加速電圧は6
0KVとし、ドーズ(dose)量は4×1013cm-2
とした。入射イオンビームに対するMgドープ窒化ガリ
ウムから成るコンタクト層表面の傾斜角度は12度と
し、チャネリングを防止した。本実施例では、Siイオ
ンの投影飛程がp形層の合計の層厚の1/2に満たない
ように注入条件を設定した。上記の加速電圧におけるS
iイオンの投影飛程は、コンタクト層の表面から約0.
05μmであると見積もられた。
【0078】マスク材の上層を成すフォトレジスト材を
剥離した後、マスク材の下層のSiN膜をアニール時の
保護膜として残存させたままで、イオン注入を施した積
層構造体をアンモニア(NH3 )ガス1:Arガス3の
流量比で構成された雰囲気ガス内でアニールした。アニ
ールは、950℃から750℃に至る迄、毎分12.5
℃の割合で降温する徐冷法に依った。750℃から室温
迄は、アニール炉の炉心管の外壁に冷風を送気して強制
的に冷却した。このアニールにより、Siイオンを注入
した領域は、周囲のp形層より高抵抗化し、平面視で直
径を140μmとする円形状の高抵抗イオン注入領域
(高抵抗イオン注入層)となった。
【0079】アニールを施した後、積層構造体の最表層
であるコンタクト層の表面近傍の領域の抵抗を、通常の
触針法を用いて取得した電流−電圧特性から計測した。
選択的にSiイオンを注入した領域(p形台座電極を形
成する予定の領域)の抵抗は約6KΩとなった。一方、
非注入領域の、透光性電極を形成する予定領域の抵抗は
約7Ωであった。これにより、高抵抗イオン注入領域の
形成を確認することができた。
【0080】次に、第1実施例に記載の手法に則り、透
光性電極上に形成された、底面が円形のAu・Be/A
uの重層構成から成るp形台座電極を備えたLEDを作
製した。直径を100μmとするp形台座電極は、直径
を140μmとする円形の高抵抗イオン注入領域の上方
に、双方の中心を合致させて形成した。このLEDの、
透光性電極を敷設した略全面の領域からほぼ一様に青色
の発光が放出された。p形台座電極からの距離を隔てる
に伴い青色発光の強度が低下するような発光強度上の不
均一さは視認されなかった。この他、図8に掲げるよう
に優れた逆耐圧特性等が得られた。
【0081】(第3実施例)この第3実施例では、上記
第1実施例に記載の積層構造体の最表層のコンタクト層
の、p形台座電極を形成する部分以外の領域を、二酸化
珪素(SiO2 )膜、及び商品名がAZのフォトレジス
ト材の2層から成るマスク材で被覆した。次に、p形台
座電極を形成する予定の領域に在るマスク材を選択的に
剥離し、一辺を100μmとする正方形のマスク材開口
領域を形成し、そのマスク材開口領域には、質量数を2
4の1価のマグネシウム(Mg)イオンを注入した。す
なわち、本実施例では、p形層の所定の領域に注入する
不純物イオン種を、p形層のp形ドーパントであるMg
と同一とした。加速電圧は70KVとし、ドーズ量は8
×1013cm-2とした。入射イオンビームに対するMg
ドープ窒化ガリウムから成るコンタクト層表面の傾斜角
度は10度とし、チャネリングを防止した。本実施例で
は、Mgイオンの投影飛程が発光層上のMgドープ窒化
ガリウム系層の合計の層厚の1/2に満たないように注
入条件を設定した。上記の加速電圧におけるMgイオン
の投影飛程は、コンタクト層の表面から約0.07μm
と見積もられた。
【0082】マスク材の上層をなすフォトレジスト材を
剥離した後、マスク材の下層のSiO2 膜をアニールの
際の保護膜として残存させたままで、イオン注入を施し
た積層構造体をNH3ガス1:N2ガス3の流量比で構成
された雰囲気ガス内でアニールした。アニールは、90
0℃から800℃に至る迄、毎分10℃の割合で、ま
た、800℃から650℃に至る迄は15℃/分の割合
で、各々降温する徐冷法に依った。650℃から室温迄
はアニール炉の炉心管の外壁に冷風を送気して強制的に
冷却した。このアニールにより、Mgイオンを注入した
領域は、周囲のp形層より高抵抗化し、平面視で一辺を
100μmとする正方形状の高抵抗イオン注入領域(高
抵抗イオン注入層)となった。
【0083】アニールを施した後、積層構造体の最表層
であるコンタクト層の表面近傍の領域の抵抗を、通常の
触針法を用いて取得した電流−電圧特性から計測した。
選択的にMgイオンを注入した領域(p形台座電極を形
成する予定の領域)の抵抗は約2KΩとなり、一方、非
注入領域の、透光性電極を形成する予定領域の抵抗は約
6Ωであった。これにより、高抵抗イオン注入領域の形
成を確認することができた。
【0084】次に、第1実施例に記載の手法に則り、透
光性電極上に形成された、底面を一辺が100μmの正
方形とするAu・Zn/Auの重層構成から成るp形台
座電極を備えたLEDを作製した。p形台座電極の底部
は、同じく一辺を100μmとする正方形の高抵抗イオ
ン注入領域の上方に、双方の中心を合致させて形成し
た。本実施例では、p形台座電極の底面積と高抵抗イオ
ン注入領域の表面積とは一致させた。このLEDの、透
光性電極を敷設した略全面の領域からほぼ一様に青色の
発光が放出された。p形台座電極からの距離を隔てるに
伴い青色発光の強度が低下するような発光強度上の不均
一さは視認されなかった。この他、図8に掲げるように
優れた逆耐圧特性等が得られた。
【0085】(第4実施例)この第4実施例では、上記
第3実施例に記載した材料及び手法を用い、第3実施例
と同様に、一辺を100μmとする正方形のマスク材開
口領域を形成し、そのマスク材開口領域に、質量数を2
4とする1価のマグネシウム(Mg)イオンを多段に注
入した。加速電圧はMgイオンの投影飛程がコンタクト
層の表面から約0.07μm及び約0.05μmとなる
ように、70KV及び50KVとした。ドーズ量は加速
電圧に拘わらず均一に4×1013cm-2とした。上記の
投影飛程におけるMgのピーク原子濃度は約5〜6×1
18atoms/cm3 と見積もられた。Mgイオンビ
ームに対するコンタクト層表面の傾斜角度は12度とし
た。
【0086】第3実施例の手順に従いアニールした。ア
ニール後、積層構造体の最表層であるコンタクト層の表
面近傍の領域の抵抗を、通常の触針法を用いて取得した
電流−電圧特性から計測した。選択的にかつ多段にMg
イオンを注入した領域(p形台座電極を形成する予定の
領域)の抵抗は約9KΩとなり、一方、非注入領域の、
透光性電極を形成する予定領域の抵抗は約7Ωであっ
た。これにより、多段注入で層厚を大とした高抵抗イオ
ン注入領域の形成を確認することができた。
【0087】次に、第3実施例に記載と同様のLEDを
作製した。透光性電極の略全面から青色発光が放射され
た。一辺を100μmとする正方形p形台座電極の下方
からの発光は特に視認されなかった。この他、図8に掲
げるように優れた逆耐圧特性等が得られた。
【0088】(第5実施例)この第5実施例では、上記
の第1実施例に記載のマスク材でコンタクト層の表面を
被覆し、上記のパターニング技術を利用して、イオン注
入のためのマスク材開口領域を形成した。図9は第5実
施例でのイオン注入のためのマスク材開口領域を模式的
に示す図である。図において、コンタクト層を被覆した
マスク材表面103bには、マスク材表面103bを剥
離することで形成したマスク材開口領域116が設けて
ある。このマスク材開口領域116は、直径25μmの
円形状の開口部分116aを、25μm間隔で縦横3個
宛合計9箇所設けて成るものである。
【0089】このマスク材開口領域116には第3実施
例に記載の条件でMgイオンを注入した。イオン注入
後、第3実施例に記載の雰囲気ガス内でアニールした。
アニールは、室温より950℃に100℃/分の速度で
昇温した後、950℃から800℃に至る迄、15℃/
分の割合で、また、800℃から650℃に至る迄は、
10℃/分の割合で、各々降温する徐冷法に依った。6
50℃から室温迄はアニール炉の炉心管の外壁に冷風を
送気して強制的に冷却した。
【0090】アニール後、積層構造体の最表層であるコ
ンタクト層の表面近傍の領域の抵抗を、通常の触針法を
用いて取得した電流−電圧特性から計測した。選択的に
Mgイオンを注入した領域(p形台座電極を形成する予
定の領域)の抵抗は約2KΩとなり、一方、非注入領域
の、透光性電極を形成する予定領域の抵抗は約7Ωであ
った。これにより、高抵抗イオン注入領域の形成を確認
することができた。
【0091】次に、第1実施例に記載の手法に則り、透
光性電極上に形成された底面を一辺が100μmの正方
形とするAu・Zn/Auの重層構成から成る、p形台
座電極を備えたLEDを作製した。p形台座電極の底面
は、イオン注入領域上に中心を合致させて形成した。本
実施例の高抵抗イオン注入領域の合計の表面積(4.4
×10-5cm2 )は、p形台座電極の底面積(1×10
-4cm2 )に対し、0.44倍となった。
【0092】次に、第3実施例に記載と同様のLEDを
作製した。透光性電極の略全面の領域から青色発光が放
射されるものの、p形台座電極の下方からも極めて微弱
ではあるが青色発光が視認された。このLEDでは、他
の実施例、特に第3実施例3のLEDに比して逆耐圧は
低く、逆方向電流を10μAとした際のそれは約40V
となった(図8)。p形台座電極とn形パッド電極間の
電流−電圧(I−V)特性には、マイクロプラズマと称
される短絡的な通流を示す耐圧の不良は認められなかっ
た。この他、図8に掲げるような諸特性が得られた。
【0093】(比較例)第1実施例に記載の積層構造1
1体内に、イオン注入及びアニール加工による高抵抗イ
オン注入領域を形成せずに、第1実施例と同様の手順
で、p形台座電極及び透光性電極を備えたLEDを構成
した。発光の中心波長には、第1実施例乃至第4実施例
の各LEDに比較して、それ程の差異はなかったが、順
方向電圧、逆方向耐圧、発光出力には明らかに有意差が
認められた(図8)。特に、顕著な差異は、p形台座電
極からより遠方となるに従い、発光強度の低下が視認さ
れることであった。高抵抗イオン注入領域を有しないp
形台座電極を備えたLEDにあっては、素子動作電流を
オーミックな透光性電極の全面に拡散させる作用が不足
しているのが原因であると考察された。電流阻止機能を
持つ高抵抗イオン注入領域を付帯しない場合に典型的
な、p形台座電極の裏面(底面)の略全面からの発光も
目視された。
【0094】上記の各実施例では、本発明を発光ダイオ
ード(LED)に適用した場合について説明したが、本
発明は、他の発光素子、例えばレーザダイオード(L
D)にも同様に適用することができる。
【0095】
【発明の効果】この発明は上記した構成からなるので、
以下に説明するような効果を奏することができる。請求
項1に記載の発明では、p形半導体層の内部にイオンを
注入し、そのイオン注入領域を、所定範囲の温度、例え
ば注入熱処理の温度としては比較的低い設定の600℃
以上1000℃以下の温度で注入熱処理を施すことで、
高抵抗イオン注入領域を形成することとした。イオン注
入時に発生した注入損傷は、充分に回復されているとは
言えないものの、p形半導体層よりも確実に高抵抗化さ
れているので、高抵抗イオン注入領域の形成に大きく寄
与させることができる。そして、その高抵抗イオン注入
領域の上方に、透光性薄膜電極を介してp形台座電極を
形成したので、p形台座電極からその下方位置の発光層
への短絡的な通電を、高抵抗イオン注入領域によって妨
げることができ、したがって、発光をもたらす素子動作
電流を透光性薄膜電極の電極面に沿って、発光領域の略
全面に有効に拡散させることができ、これにより、発光
出力を充分に発揮させることができる。
【0096】また、請求項3に記載の発明では、高抵抗
イオン注入領域の平面積を、p形台座電極の底面積に対
して制約している。p形台座電極の底面積に比して高抵
抗イオン注入領域の平面積が極端に小であると、p形台
座電極からその下方位置の発光層に短絡的に通流して無
駄な通電となるし、逆に、高抵抗イオン注入領域の平面
積が大きすぎると、発光層への通電が減少して発光出力
を低下させるとともに、高抵抗イオン注入領域での発熱
が増大してp形台座電極の信頼性を低下させるが、本発
明では、高抵抗イオン注入領域の平面積をp形台座電極
の底面積の0.4倍以上2.0倍以下としたので、高抵
抗イオン注入領域は素子動作電流に対する阻止機能を適
切に発揮することとなり、これにより、素子動作電流を
無駄なく有効に発光領域の略全面に拡散させることがで
きる。
【0097】さらに、請求項4に記載の発明では、p形
半導体層の内部に注入するイオンの投影飛程をp形半導
体層の表面からその層厚の1/2以下としたので、注入
損傷が発光層に及ぶのを確実に回避することができ、発
光層の品質を保持して高い発光出力を発揮させることが
できる。この場合、p形半導体層の表面側寄りに高抵抗
イオン注入領域が形成されることになるが、p形台座電
極を透光性薄膜電極を介して形成しているので、素子動
作電流を確実に発光領域の全面に拡散させることができ
る。
【0098】また、請求項5に記載の発明では、高抵抗
イオン注入領域を、多段にイオンを注入して形成するよ
うにしたので、単段注入の場合に比較して、原子濃度分
布中の原子濃度を大とする部分の平坦化(均一化)が可
能となり、それだけ高抵抗イオン注入領域の深さ方向の
幅を厚くすることができ、これにより、高抵抗イオン注
入領域をより一層高抵抗に形成することができる。
【0099】また、請求項6に記載の発明では、注入す
るイオン種を、p形半導体に添加するp形不純物と同一
あるいは近似した原子半径を有するものとしたので、原
子半径を異にするイオン種を注入したときの格子歪みの
発生を防止でき、拡散性の高い原子を注入してその原子
が発光層に侵入するようなことも防止でき、p形半導体
層や発光層の品質を損なうようなことなく、高い発光出
力を維持させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る化合物半導体発光素子の積層構造
の一部を模式的に示す図である。
【図2】高抵抗イオン注入領域とp形台座電極との平面
視での関係を示す図である。
【図3】p形層等の被注入体の表面からの深さに対する
注入イオンの濃度分布を示す図である。
【図4】イオン注入を多段に行った場合の注入イオン濃
度分布を示す図である。
【図5】本発明の第1実施例に係る積層構造体を示す図
である。
【図6】第1実施例での発光ダイオードの断面構造を模
式的に示す図で図7のA−A断面である。
【図7】第1実施例での発光ダイオードの平面模式図で
ある。
【図8】各実施例で製造した発光ダイオードの諸特性を
示す図である。
【図9】第5実施例でのイオン注入のためのマスク材開
口領域を模式的に示す図である。
【図10】従来の発光ダイオードの断面構造を電極の配
置状況を含めて模式的に示す図である。
【符号の説明】 2 発光層 3 p形層(p形半導体層) 4 透光性電極(透光性薄膜電極) 5 p形台座電極 6 高抵抗イオン注入領域 10 化合物半導体発光素子 11 積層構造体 50 発光ダイオード(LED) 100 基板 101 下部クラッド層 102 発光層 103 上部クラッド層 103a コンタクト層 104 透光性電極 104a 金属酸化物保護膜 105 p形台座電極 106 高抵抗イオン注入領域 109 n形電極 130 p形層 N,N0,N1,N2,N3 注入イオン濃度

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 p形不純物を添加したp形半導体層上に
    透光性薄膜電極を介してp形台座電極を設けた化合物半
    導体発光素子において、 上記p形半導体層の内部に、所定範囲の温度で注入熱処
    理を施すことでp形半導体層よりも高抵抗に形成した高
    抵抗イオン注入領域を設け、その高抵抗イオン注入領域
    の上方に上記p形台座電極を設けた、 ことを特徴とする化合物半導体発光素子。
  2. 【請求項2】 上記所定範囲の温度は650℃以上10
    00℃以下である、 ことを特徴とする請求項1に記載の化合物半導体発光素
    子。
  3. 【請求項3】 上記高抵抗イオン注入領域の平面積を、
    p形台座電極の底面積の0.4倍以上2倍以下とした、 ことを特徴とする請求項1または2に記載の化合物半導
    体発光素子。
  4. 【請求項4】 上記p形半導体層の内部に注入するイオ
    ンの投影飛程をp形半導体層の表面からその層厚の1/
    2以下とした、 ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の化
    合物半導体発光素子。
  5. 【請求項5】 上記高抵抗イオン注入領域を、多重にイ
    オンを注入して形成した、 ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の化
    合物半導体発光素子。
  6. 【請求項6】 イオン注入種をp形半導体に添加するp
    形不純物と同一あるいは近似した原子半径を有するもの
    とした、 ことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の化
    合物半導体発光素子。
  7. 【請求項7】 上記p形半導体層は、p形III 族窒化物
    半導体層であり、上記化合物半導体発光素子は、III 族
    窒化物半導体発光素子である、 ことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の化
    合物半導体発光素子。
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