JP4561522B2 - 副室式内燃機関 - Google Patents

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Description

本発明は、燃焼室が主室および副室から成り、副室から主室へ向けて火炎ジェットを噴出して主室内の燃焼を行う副室式内燃機関に関する。
従来の副室式内燃機関として、特許文献1がある。特許文献1に記載の発明では、副室(副燃焼室)と主室(主燃焼室)とを連通する連通路を複数放射状に配置し、副室における燃焼によって生じたトーチ状の火炎ジェットを、各々の連通路の噴口から主室へ向けてシリンダ軸を中心とした放射状に噴出させている。これにより、主室内の火炎伝播距離の短縮によって安定した希薄燃焼を行っている。
特開2002−81321号広報
しかしながら、特許文献1においては、各々の連通路の噴口について、シリンダ軸方向を基準とした火炎ジェット噴出角度(噴口指向角度)について、明確な記載はない。このため、燃焼室形状によっては、火炎伝播距離の短縮が十分にできないという問題点があった。
本発明は、以上のような従来の問題点に鑑みてなされたものであり、燃焼室形状に応じた火炎ジェット噴出方向(噴口指向方向)の最適化によって火炎伝播距離を短縮し、安定した希薄燃焼によって熱効率を向上させた副室式内燃機関の構造を提供することを目的とする。
このため本発明は、主燃焼室の上部からピストンに向かって燃料を噴射する燃料噴射弁と、圧縮上死点直前で上記燃料噴射弁から噴射された燃料を受け止めるようにピストン冠面の略中心に設けられたボウルと、主燃焼室より容積が小さくシリンダヘッド側の中心部に配置される副室と、副室と主燃焼室との境界にあってガス交換が可能な噴口と、副室内の混合気に点火する点火栓と、を備え、副室内での着火により前記噴口から主燃焼室内にトーチ状の火炎を噴出させて主燃焼室内の混合気を燃焼させるとともに、低負荷側では成層燃焼を行いかつ高負荷側では均質燃焼を行う副室式内燃機関において、
前記噴口として、シリンダ軸に対し異なる角度で開口する第1の噴口第2の噴口とをそれぞれ1つ以上備え、
前記第1の噴口は、その中心軸線が、ピストンの圧縮上死点近傍において、ピストン冠面に衝突せずにシリンダボア内壁面を指向するように設けられ、前記第2の噴口は、その中心軸線が、ピストンの圧縮上死点近傍において、ピストン冠面の前記ボウルの底面外周部を指向するように設けられることを特徴とする。
以上の構成によって、燃焼室形状に応じて、前記第1の噴口および前記第2の噴口それぞれの指向方向を最適化すると、火炎伝播距離をより短縮できる。これにより、希薄燃焼はより安定し、熱効率をさらに向上させることができる。
以下に、本発明における第1実施形態について説明する。
なお、「上」および「下」とは、シリンダ軸方向について、シリンダヘッド側を「上」、ピストン側を「下」とした方向を意味する。
まず、燃焼室22は、主室2(主燃焼室)、および主室2の中心部上方に設けられた副室4から成る。
主室2は、図1に示すように、シリンダヘッド24と、シリンダブロック26と、ピストン10とによって形成され、その上方または下方から見た断面は大略円形であり、吸気ポート28、排気ポート30とそれぞれ連通している。
副室4は、主室2より容積は小さく、シリンダヘッド24側の略中心部において大略上下方向に延びた円筒状であり、大略半球の球面上に主室2へ向けて突出した副室境界壁6によって主室2と仕切られている。
噴口6a,6bは、円形もしくは楕円形の断面形状をした孔で、副室境界壁6を貫通し、主室2と副室4との間のガス交換を可能としている。
吸気弁32および排気弁34は、カム36,38の駆動によって、吸気ポート28、排気ポート30を開閉する。
燃料噴射弁40は、燃焼室22上部において副室4と近接して配設され、筒内(主室2内)へ直接燃料を噴射する。
ボウル10bは、ピストン10の冠面10aの中心付近に対して略円形状かつ凹状に形成され、燃料噴射弁40から大略下方に向けてピストン10の圧縮上死点の直前に噴射された燃料を受け止め、混合気を成層化する。
点火栓12は、副室4の上部に配置され、副室4内の混合気に火花点火を行う。
上記構成の圧縮行程では、主室2から副室4へ向けて、噴口6a,6bを通じて混合気が流入する。一方、燃焼膨張行程では、副室4内の燃焼に伴い、副室4から主室2へ向けて、噴口6a,6bを通じて、それぞれトーチ状の火炎ジェット8a,8b(図2参照)が、噴口6a,6bそれぞれの指向方向(噴口6a,6bそれぞれの中心軸線が主室2へ向けて延びた方向、という意味)へ噴出し、主室2内の混合気を燃焼させる。
次に、噴口6a,6bおよび火炎ジェット8a,8bについて、詳細に説明する。なお、「噴口群」と記した場合は、複数の噴口の集合体を指し、「火炎ジェット群」と記した場合は、複数の火炎ジェットの集合体を指す。
噴口6a,6bそれぞれの指向方向は、シリンダ軸42に対して互いに異なる角度であり、噴口6aは、燃焼室周壁18(シリンダボア)の方向を指向し、冠面10aと衝突せず、一方、噴口6bは、ボウル10bの底面外周部10c付近を指向している(図2参照)。このため、火炎ジェット8aは燃焼室周壁18へ向けて、火炎ジェット8bは底面外周部10cへ向けて、噴出する。
噴口6a,6bそれぞれの配置は、図3のType1に示すように、噴口群6aは円14の円周上であり、噴口群6bは円16の円周上であり、各円周上に6個ずつ略等間隔の配置となっている。円14および円16は、それぞれ副室中心軸(副室4の円筒中心軸)を中心に形成されているが、円14は円16より大径であり、燃焼室外方に噴口群6aが、燃焼室内方に噴口群6bが配置されている(図3のType1参照)。
仮に、噴口群6a,6bを同一円周上に形成した場合、噴口間距離が小さくなり、以下のような懸念が生ずる。まず、副室境界壁6は低強度となり、副室4内の燃焼によって副室4内が圧力上昇すると副室境界壁6は損壊し、あるいは、副室境界壁6の熱移動経路が狭まり、放熱を妨げる。しかし、上記懸念は、円14,16による構成によって解消される。なお、円14,16の半径値の差や、円14,16の円周上の噴口間隔は、隣り合う噴口が過度に接近しないように設定するとよい。
噴口6a,6bは、それぞれ、前記副室中心軸回り(おおよそシリンダ軸回り)にわたって交互の順列で同数(6個ずつ)配置されている(図3参照)。つまり、前記副室中心軸の指向方向(おおよそシリンダ軸42の指向方向)から見て、前記副室中心軸回りを一周する間に、副室境界壁中心6c(副室境界壁6と前記副室中心軸との交点)から噴口6aへ向けて延びる直線と、副室境界壁中心6cから噴口6bへ向けて延びる直線とが、交互に出現する。
前記副室中心軸の指向方向から見た場合、副室境界壁中心6cから各噴口へ向けて延びる直線上には、他の噴口(噴口6aか噴口6bは問わない)を配置しないのがよい。同時に、噴口6aの指向方向は、副室境界壁中心6cから当該噴口6aへ向かう方向と一致し、噴口6bの指向方向は、副室境界壁中心6cから当該噴口6bへ向かう方向と一致させるとよい。これにより、シリンダ軸方向に見て(燃焼室上方または下方から見て)、火炎ジェット群8a,8bは、主室2内で互いに重ならないように分散して噴出する。したがって、火炎ジェット群8bが、主室2内における火炎ジェット群8aから比較的遠い領域の火炎伝播を補充し、シリンダ軸42回りにわたって、大略一様に満遍なく火炎伝播距離を短縮できる。
また、スキッシュエリアを備えるペントルーフ型燃焼室などでは、シリンダ軸方向に見たときに、噴口6aの指向方向(火炎ジェット群8aの噴出方向)は、燃焼室円周方向について、吸気−排気方向(吸気ポート28から排気ポート30へ吸気または排気が進行する方向)に対して所定角度だけ傾斜させるとよい(図4参照)。ここで、前記「所定角度」とは、火炎ジェット群8aが前記スキッシュエリアを避けて噴出できる角度である。前記スキッシュエリアは、燃焼室22上部のうち吸気ポートおよび排気ポートそれぞれに寄った領域であり、燃焼室22内の他の領域と比べて上下高さが相対的に小さくなっている。このため、前記スキッシュエリアへ向けて噴出した火炎ジェット8aは、その進行が堰き止められる懸念がある。そこで、上記構成によって、火炎ジェット群8aが前記スキッシュエリアを避けて噴出するようにし、火炎ジェット群8aの有効到達距離を増大させ、火炎伝播距離をより確実に短縮させるとよい。
噴口群6aから燃焼室周壁18までの距離が、噴口群6bから冠面10aまでの距離と比べて大きい場合、噴口径が小さいほど火炎ジェットの噴出長さが大きいと考えられるため、噴口群6aを噴口群6bと比べて小径にし、火炎ジェットの長さを調整するとよい。過小な噴出長さの火炎ジェットでは、その未到達領域に未燃焼燃料が残存する懸念があり、一方、過剰な噴出長さの火炎ジェットでは、これが燃焼室内壁に衝突し、冷却損失が増大する懸念があるが、上記構成における調整により、上記懸念を解消できる。
そのほか、本実施形態の燃焼形態は、所定の機関負荷以下では図5(A)に示すような成層燃焼とし、所定の機関負荷以上では図5(B)に示すような均質燃焼へ切り替えるとよい。成層燃焼では、ボウル10b内およびその上空に混合気が形成され、該混合気へ火炎ジェット群8bを噴出し、希薄空燃比下でも急速かつ安定した燃焼が可能である。ここで、火炎ジェット群8aの同時噴出によって燃焼室周壁方向へ燃料の一部が輸送されるが、この燃料は微量なうえ、火炎ジェット群8aによって燃焼可能なため、実質的に火炎ジェット群8aによる弊害はない。
従来の副室式内燃機関では、火炎ジェットにより大幅な希薄限界拡大をし、かつ、高負荷運転条件においても燃焼速度増大によってノッキング開始以前に燃焼を完結することでトルク向上を図っている。
また、特許文献1では、噴口(連通路)を、副室から主室へ向けてその断面積が増加するように形成し、火炎ジェットを主室内で扇状に広がるように噴出させ、主室内における火炎ジェットの局所的な偏在を防止し、火炎伝播距離を短縮させている。
しかし、それでもなお、燃焼室周壁およびピストン冠面の構造上、シリンダ軸に対する噴口指向角度の大きさによって、噴口から燃焼室内壁までの噴口指向方向距離が異なり、噴口指向角度が1つに特定されると、必ずしも火炎伝播距離を十分に短縮できない。
さらに、低い機関負荷の希薄燃焼では、成層混合気の形成が望ましく、ペントルーフ型の燃焼室とするほか、ピストン冠面にボウルを形成すると、燃焼室は単純な形状ではなくなる。したがって、ボウル上空の火炎伝播距離の短縮のため、ボウルに対する火炎ジェット指向およびその方向の最適化が望まれる。
そこで、ピストン冠面にボウルを形成する場合、ボウルを適切に指向した噴口を設け、ボウル上空の成層混合気に対する有効な火炎伝播を可能とし、これを確実に燃焼させるとよい。これにより、燃焼室円周方向のみならず、シリンダ軸に対する指向角度(火炎ジェット噴出角度)について、燃焼室中央付近も含めた燃焼室全体に渡って火炎伝播距離の短縮が可能となる。また、複雑な燃焼室構造に対しては、最適な指向方向を割り出して、噴口を設ければよい。
以下、本発明における第2実施形態について説明する。
本実施形態と第1実施形態との相違点は、噴口群6aの噴口数(6個)を、噴口群6bの噴口数(4個)と比べて多くしたことである(図6,7参照)。これは、主室2はボウル10bよりも大径であり、燃焼室全体で火炎伝播距離を短縮するためには、火炎ジェット群8aは火炎ジェット群8bと比べてより広い領域へ火炎伝播を行う必要があるためである。特に、圧縮行程で主室2から副室4へ入る燃料量(火炎ジェットの総運動量)のほか火炎ジェット8a,8bの噴出長さが、噴口6a,6bの断面積に依存する場合、噴口6a,6bの断面積を変更したくなければ、噴口数の調整を行ってもよい。また、噴口数(すべての噴口の断面積の合計)に制限がある場合、噴口6bが噴口6aと比べて大径(大きな断面積)であれば、噴口6aの数よりも噴口6bの数を少なくすると効果的である。
以下、本発明における第3実施形態について説明する。
本実施形態と第1実施形態との相違点は、噴口群6a,6bの配置を相互に交換したことで、噴口群6bが燃焼室外方の円14の円周上に配置され、噴口群6aが燃焼室内方の円16の円周上に配置されたことである(図3のType2参照)。
鋳造によってシリンダヘッド24内に副室4を形成した後で、燃焼室22上面と略平行な噴口6aを加工する場合、シリンダヘッド24と噴口6aとが接近し、加工が困難となる懸念があるが、このような場合は本実施形態への変更が有効である。
あるいは、第1実施形態において、燃焼室22上面と略平行な噴口6aをより容易に加工したい場合、シリンダヘッド24と副室4とを独立に製造し、噴口6a,6bの加工後、副室4をシリンダヘッド24に対して螺合等により取り付けてもよい。
本発明は、上述の実施形態に限られず、以下のような構成でもよい。
まず、副室4内に直接的にガスまたは液体燃料を供給する燃料噴射弁または混合気供給用のバルブを設け、副室4内に微量の燃料を噴射し、副室4内と主室2内との混合気形成、混合気濃度を積極的に異ならせる(副室4内を主室2内と比べてリッチとする)構成でもよい。
また、燃料噴射弁40の配置位置は、燃焼室上部に限られず、燃焼室側部としてもよい。あるいは、吸気ポート28の経路途中に燃料噴射弁40を配置し、負荷の大きさに関わらず均質燃焼としてもよい。
さらに、噴口6a,6bの数は、少なくともそれぞれ1個ずつでよく、複数の場合でも、上記実施例で開示した数には限られない。
また、円14,16の各円周上において噴口6a,6bが混在する形態も、本発明に含まれる。
さらに、噴口のシリンダ軸42に対する指向角度の種類数は、噴口6a,6bの2種類に限られず、合計3種類以上あってもよい。これは、特に冠面10aの形状(ボウルの構造など)に応じて設定するとよい。
本発明における第1実施形態の正面図 図1における燃焼室形状および噴口指向方向の説明図 図1および本発明における第3実施形態の副室境界壁の構造説明図 図1における火炎ジェット噴出状態の模式図 図1における成層燃焼および均質燃焼の混合気分布の説明図 本発明における第2実施形態の副室境界壁の構造説明図 図6における火炎ジェット噴出状態の模式図
符号の説明
2 主室(主燃焼室)
4 副室
6 副室境界壁(副室と主燃焼室との境界)
6a 噴口(第1の噴口)
6b 噴口(第2の噴口)
10 ピストン
10a 冠面
10b ボウル
10c 底面外周部
12 点火栓
14 円
16 円
18 燃焼室周壁(シリンダボア)
22 燃焼室
24 シリンダヘッド
42 シリンダ軸

Claims (9)

  1. 主燃焼室の上部からピストンに向かって燃料を噴射する燃料噴射弁と、圧縮上死点直前で上記燃料噴射弁から噴射された燃料を受け止めるようにピストン冠面の略中心に設けられたボウルと、主燃焼室より容積が小さくシリンダヘッド側の中心部に配置される副室と、副室と主燃焼室との境界にあってガス交換が可能な噴口と、副室内の混合気に点火する点火栓とを備え、副室内での着火により前記噴口から主燃焼室内にトーチ状の火炎を噴出させて主燃焼室内の混合気を燃焼させるとともに、低負荷側では成層燃焼を行いかつ高負荷側では均質燃焼を行う副室式内燃機関において、
    前記噴口として、シリンダ軸に対し異なる角度で開口する第1の噴口第2の噴口とをそれぞれ1つ以上備え、
    前記第1の噴口は、その中心軸線が、ピストンの圧縮上死点近傍において、ピストン冠面に衝突せずにシリンダボア内壁面を指向するように設けられ、前記第2の噴口は、その中心軸線が、ピストンの圧縮上死点近傍において、ピストン冠面の前記ボウルの底面外周部を指向するように設けられることを特徴とする副室式内燃機関。
  2. 前記第1の噴口の径を、前記第2の噴口の径より小さくすることを特徴とする請求項1に記載の副室式内燃機関。
  3. 前記第1の噴口と前記第2の噴口とは、中心位置が大略一致し互いに異なる半径の円周上に、それぞれ開口することを特徴とする請求項1または2に記載の副室式内燃機関。
  4. 前記第1の噴口は、前記第2の噴口よりも、外側の円周上に開口することを特徴とする請求項に記載の副室式内燃機関。
  5. 前記第1の噴口は、前記第2の噴口よりも、内側の円周上に開口することを特徴とする請求項に記載の副室式内燃機関。
  6. 前記第1の噴口と前記第2の噴口とは、シリンダ軸回りに円周方向に交互の順列で、それぞれ開口することを特徴とする請求項1〜請求項のいずれか1つに記載の副室式内燃機関。
  7. 前記第1の噴口の数を、前記第2の噴口の数より多くすることを特徴とする請求項1〜請求項のいずれか1つに記載の副室式内燃機関。
  8. スキッシュエリアを備えるペントルーフ型燃焼室を有し、前記第1の噴口は、その中心軸線が、シリンダ軸方向に見たときに、吸気−排気方向を結ぶ直線に対し、所定の角度をもつように設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項のいずれか1つに記載の副室式内燃機関。
  9. シリンダ軸方向に見たときに、
    前記第1の噴口および前記第2の噴口は、副室境界壁中心から他の噴口へ向けて延びる直線から離れて配置され、
    前記第1の噴口の指向方向は、前記副室境界壁中心から該第1の噴口へ向かう方向と大略一致し、
    前記第2の噴口の指向方向は、前記副室境界壁中心から該第2の噴口へ向かう方向と大略一致することを特徴とする請求項1〜請求項のいずれか1つに記載の副室式内燃機関。
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