JP2007085221A - 火花点火式直噴エンジンの燃焼室構造 - Google Patents

火花点火式直噴エンジンの燃焼室構造 Download PDF

Info

Publication number
JP2007085221A
JP2007085221A JP2005273526A JP2005273526A JP2007085221A JP 2007085221 A JP2007085221 A JP 2007085221A JP 2005273526 A JP2005273526 A JP 2005273526A JP 2005273526 A JP2005273526 A JP 2005273526A JP 2007085221 A JP2007085221 A JP 2007085221A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
combustion
ceiling wall
combustion chamber
cylinder bore
periphery
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2005273526A
Other languages
English (en)
Inventor
Takashi Youso
隆 養祖
Masanao Yamakawa
正尚 山川
Yoshihisa Nooi
芳尚 乃生
Keiji Araki
啓二 荒木
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mazda Motor Corp
Original Assignee
Mazda Motor Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mazda Motor Corp filed Critical Mazda Motor Corp
Priority to JP2005273526A priority Critical patent/JP2007085221A/ja
Publication of JP2007085221A publication Critical patent/JP2007085221A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02TCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES RELATED TO TRANSPORTATION
    • Y02T10/00Road transport of goods or passengers
    • Y02T10/10Internal combustion engine [ICE] based vehicles
    • Y02T10/12Improving ICE efficiencies

Landscapes

  • Fuel-Injection Apparatus (AREA)
  • Combustion Methods Of Internal-Combustion Engines (AREA)
  • Cylinder Crankcases Of Internal Combustion Engines (AREA)

Abstract

【課題】 耐ノッキング性能を向上させて圧縮比を高めることができ、同時にオイル希釈を効果的に抑制することができる火花点火式直噴エンジンの燃焼室構造を提供する。
【解決手段】 シリンダボア中央部の点火プラグ15と、吸気側に設けられた燃料噴射装置17とを備え、燃料噴射装置17は、噴射燃料が点火プラグ15の電極15a方向に向かい、天井壁11の排気側11bを傾斜させるとともに、天井壁下端周縁部11eをシリンダボア周縁よりも中央寄りに位置させ、ピストン13が上死点にある状態で、燃焼室内が、燃料噴射装置17周辺から点火プラグ15周辺にかけて広がる第1燃焼空間14aと、天井壁下端周縁部11eからシリンダボア周縁部にかけて広がる第2燃焼空間14bとによって形成され、ピストン頂面4と天井壁11との間隙が狭められた小間隙部5を介して第1燃焼空間14aと第2燃焼空間14bとが連通されているように構成する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、火花点火式直噴エンジンの燃焼室の構造に関し、より詳しくは、天井壁のシリンダボア中央部分から燃焼室内に先端が臨設された点火プラグと、吸気側のシリンダボア周縁部から燃焼室内に先端が臨設された燃料噴射装置とを備えた火花点火式直噴エンジンの燃焼室の構造に関するものである。
近年、経済面のみならず、地球の温暖化防止という環境面においてもエンジンの燃費向上要求が一段と高まりつつある。火花点火式直噴エンジンにおいて燃費を向上するには燃焼効率を高めれば良く、その有力な手段として圧縮比の増大が挙げられる。
圧縮比を高めるには、シリンダー容積に対して燃焼室容積を小さくすれば良い。そのような高圧縮比化に好適な燃焼室構造として、たとえばペントルーフ型の燃焼室構造が多く用いられている。この燃焼室構造は、吸気側の天井壁と排気側の天井壁とが屋根形をなすように形成されたものであって、比較的大きな吸排気バルブ径を確保しつつ、燃焼室容積を小さくすることができるという特徴がある。またスワール(ピストン摺動軸まわりの旋回流。横渦。)、タンブル(ピストン摺動軸に平行な面内の旋回流。縦渦。)、或いはスキッシュ(ピストン上昇時にピストンボア周縁部から中央部に押し出すような流れ)といった筒内流動を生成するうえでも有利な構造である。
例えば特許文献1乃至3には、各種の筒内流動を生成させて燃焼効率向上を図った燃焼室の構造が示されているが、その図示された断面構造から、何れもペントルーフ型燃焼室であると解される。
一方、火花点火式直噴エンジンの、点火プラグと燃料噴射装置の配置、および燃料噴射装置の噴霧の形態(噴口の数や指向方向)についても様々な研究がなされている。その一形態として、点火プラグを、天井壁のシリンダボア中央部分から燃焼室内に臨設させ、燃料噴射装置を、吸気側のシリンダボア周縁部から燃焼室内に臨設させるものがある。
この場合、噴射燃料の少なくとも一部が点火プラグの電極方向に向かうようにすれば、電極付近に適度な濃度(空燃比)の混合気を偏在させ易く、着火性が良くなることが知られている。
特開平08−254126号公報 特開平08−049546号公報 特開2003−184559号公報
上記背景技術において、2つの課題が挙げられる。第1の課題は高圧縮比化に関するものである。すなわち、上記のように燃焼室構造を工夫する等して高圧縮比を実現したとしても、それで直ちに実用上有効な燃焼を行わせることができるとは限らない。良く知られているように、圧縮比を高めるとノッキング等の異常燃焼(以下ノッキング等という)が起こり易くなるからである。つまり実用上は、ノッキング等の発生しない範囲でしか圧縮比を高めることができない。
しかしそれは、ノッキング等の発生を抑制することができれば、つまり耐ノッキング性能を向上させることができれば、より圧縮比を高めることができることをも意味する。
第2の課題はオイル希釈に関するものである。オイル希釈とは燃料がエンジンオイルに混入する現象であり、オイルの劣化を促進する虞があるので好ましくない。上記構造によると、次のようなメカニズムでオイル希釈が比較的起こり易いとされている。
吸気側からシリンダボア中央部の点火プラグに向けて燃料を噴射すると、ある程度の噴霧が反対側の燃焼室壁面(たとえば天井壁)に到達してしまうことが避けられない。その噴霧は液滴化し、壁面に付着する。そして付着した液滴燃料がシリンダボア側に伝い落ち、ピストン(厳密にはピストンリング)との隙間に侵入し、燃焼室の外部に導かれてオイルに混入する。こうしてオイル希釈に至るのである。
本発明は、上記のような事情に鑑み、簡単な構造で上記第1の課題と第2の課題とを同時に解決し得る火花点火式直噴エンジンの燃焼室構造を提供することを目的とする。すなわち、耐ノッキング性能を向上させることにより実用上有効に圧縮比を高めることができ、同時にオイル希釈を効果的に抑制することができる火花点火式直噴エンジンの燃焼室構造を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための請求項1に係る発明は、シリンダヘッド下面とピストン頂面との間に形成され、上記シリンダヘッド下面を天井壁とする燃焼室と、上記天井壁のシリンダボア中央部分から上記燃焼室内に先端が臨設された点火プラグと、吸気側のシリンダボア周縁部から上記燃焼室内に先端が臨設された燃料噴射装置とを備えた火花点火式直噴エンジンの燃焼室構造であって、上記燃料噴射装置は、噴射燃料の少なくとも一部が上記点火プラグの電極方向に向かうように構成され、上記天井壁の少なくとも排気側をシリンダボア軸線に直交する面に対し傾斜させるとともに、その下端周縁に形成される天井壁下端周縁部をシリンダボア周縁よりもシリンダボア中央寄りに位置させ、ピストンが上死点にある状態で、上記燃焼室内空間の主要部が、上記燃料噴射装置周辺から上記点火プラグ周辺にかけて広がる第1燃焼空間と、上記天井壁下端周縁部からシリンダボア周縁部にかけて広がる第2燃焼空間とによって形成され、上記ピストン頂面と上記天井壁との間隙が狭められた小間隙部を介して上記第1燃焼空間と上記第2燃焼空間とが連通されていることを特徴とする。
また請求項2に係る発明は、請求項1記載の火花点火式直噴エンジンの燃焼室構造において、上記燃料噴射装置は複数の噴口を備え、少なくともその一部の噴口が上記点火プラグの電極方向に指向していることを特徴とする。
また請求項3に係る発明は、請求項2記載の火花点火式直噴エンジンの燃焼室構造において、上記点火プラグの電極方向に指向する噴口が少なくとも2個設けられ、各噴口の指向方向が、上記点火プラグの電極から僅かに離間するとともに、該電極の中心軸を挟んで互いに略対称であるように構成され、上記天井壁下端周縁部は、平面視においてシリンダボア周縁形状と略平行となるような曲面形状に成形され、上記小間隙部は、上記天井壁下端周縁部の曲面形状に沿って形成されていることを特徴とする。
また請求項4に係る発明は、請求項3記載の火花点火式直噴エンジンの燃焼室構造において、上記ピストンの冠部には、上記天井壁に向けて突出する凸部が形成され、上記凸部の外周側が上記天井壁下端周縁部の曲面形状に沿うように形成され、上記凸部と上記天井壁下端周縁部との間に上記小間隙部が形成されていることを特徴とする。
また請求項5に係る発明は、請求項1乃至3の何れか1項に記載の火花点火式直噴エンジンの燃焼室構造において、上記燃焼室は、吸気側天井壁と排気側天井壁とが屋根形をなすペントルーフ型であり、上記ピストンの冠部には、上記天井壁に向けてペントルーフ形状に沿うように突出した凸部と、該凸部に対して相対的に没入した凹部とが形成されており、上記小間隙部は上記凸部の頂面と上記天井壁との間に形成され、上記第1燃焼空間および上記第2燃焼空間は上記凹部と上記天井壁との間に形成されていることを特徴とする。
また請求項6に係る発明は、請求項1乃至5の何れか1項に記載の火花点火式直噴エンジンの燃焼室構造において、上記小間隙部は、上記シリンダボアの径方向における、上記点火プラグから上記シリンダボア周縁との中間点よりも上記シリンダボア周縁寄りに形成されていることを特徴とする。
請求項1の発明によると、以下説明するように、耐ノッキング性能を向上させることにより実用上有効に圧縮比を高めることができ、同時にオイル希釈を効果的に抑制することができる。
まず、耐ノッキング性能の向上について説明する。本発明の構成によれば、容易に後期重心型燃焼を行わせることができ、それによって耐ノッキング性能が向上する。
ここで、後期重心型燃焼と、後期重心型燃焼によって耐ノッキング性能が向上するメカニズムについて説明する。後期重心型燃焼とは、端的に表現すると、燃焼前期は比較的低速で、燃焼後期は比較的高速で燃焼させる燃焼形態である。後期重心型燃焼によると、前期主燃焼期間(燃焼質量の10%から90%が燃焼する主燃焼期間のうち、10%以上50%未満が燃焼する期間)では低速で燃焼させることによって筒内圧力や温度の上昇が抑制され、未燃燃料の過早着火が効果的に抑制されるので、高い耐ノッキング性能を得ることができる。そして後期主燃焼期間(主燃焼期間のうち、燃焼質量の50%以上90%未満が燃焼する期間)では未燃燃料を高速燃焼させて速やかに燃焼を完了させることにより、燃え残りを核とする自着火を抑制することができ、やはり耐ノッキング性能を高めることができる。こうして燃焼全体としての主燃焼期間を殆ど延ばすことなく、効果的にノッキングを抑制することができるのである。
そこで本発明の構成によれば、前期主燃焼期間では主として燃料噴射装置周辺から点火プラグ周辺にかけて広がる第1燃焼空間で燃焼が行われ、後期主燃焼期間では主として天井壁下端周縁部からシリンダボア周縁部にかけて広がる第2燃焼空間で燃焼が行われる。一般的に、燃焼は火炎伝播によって進行し、その火炎面(火炎伝播の最前線)は、未燃ガスを押し出すようにして、点火プラグの電極付近に形成された火炎核を中心とする略同心球状に拡がって行く。
ところが本発明の構成では、第1燃焼空間と第2燃焼空間との間に、ピストン頂面と天井壁との間隙が狭められた小間隙部が設けられている。火炎面に押し出された未燃ガスがこの小間隙部を通過する際、一種の絞り作用を受ける。その影響を受けて第1燃焼空間での燃焼の火炎伝播が抑制される。このため前期主燃焼期間における燃焼速度が比較的低く抑えられる。
そして火炎面が小間隙部を経て第2燃焼空間に達すると、もはや小間隙部による絞り作用の影響を受けないので、速やかに火炎伝播が進行する。つまり後期主燃焼期間における燃焼速度が比較的高くなる。
結局、全体として、前期主燃焼期間では比較的低速の燃焼が行われ、後期主燃焼期間では比較的高速の燃焼が行われるという、上述の後期重心型燃焼が行われることになるのである。
上述のように本発明によれば、燃焼室構造を工夫することにより、容易に後期重心型燃焼を行わせることができ、その後期重心型燃焼によって耐ノッキング性能が向上する。またこれを利用して、耐ノッキング性能を悪化させることなく圧縮比を高めることも容易にできる。本願発明者は、本発明の燃焼室構造によって、耐ノッキング性能を悪化させることなく圧縮比を従来比で0.5以上高めることができることを確認している。
次に、オイル希釈の抑制について説明する。本発明の構成によると、以下説明するように、後期重心型燃焼を行わせるための構造の一部である天井壁下端周縁部を利用してオイル希釈を効果的に抑制することができる。
吸気側からシリンダボア中央部の点火プラグに向けて燃料を噴射すると、ある程度の噴霧が排気側の傾斜した天井壁に到達し、液滴化してその天井壁に付着する。付着した液滴燃料は天井壁を伝い落ちて天井壁下端周縁部に至る。ところが、天井壁下端周縁部は、シリンダボア周縁よりもシリンダボア中央寄りに位置している。つまり天井壁下端周縁部において天井壁とシリンダボア壁面との間に段差が形成されている。したがって、天井壁下端周縁部まで伝い落ちた液滴燃料は、容易にその先のシリンダボア側へ移動しない。従ってこの液滴燃料がシリンダボア壁面とピストンとの隙間に侵入することが可及的に防止され、オイル希釈が効果的に抑制される。
このように、天井壁下端周縁部を有する燃焼室構造により、容易に後期重心型燃焼を行わせると同時に、オイル希釈を効果的に抑制することができる。
請求項2の発明によると、複数の噴口から噴射される噴霧を、燃料を着火や燃焼に適した好適位置に分散して偏在させることが容易となる。
請求項3の発明によると、点火プラグの電極を挟んだ両側に噴霧を偏在させることができるので、より着火性を向上させることができる。そして、天井壁下端周縁部を平面視においてシリンダボア周縁形状と略平行となるような曲面形状に成形することにより、液滴燃料を天井壁下端周縁部に導き易くなる。また第2燃焼空間を、天井壁下端周縁部とシリンダボア周縁部との間の少なくとも円弧状部分を含む空間に形成することができるので、点火プラグから適度に離れた位置にあり、かつ充分な容積を有する第2燃焼空間となすことができる。つまり効果的な後期重心型燃焼を行うことができる。
請求項4の発明によると、ピストンの冠部に凸部を設けるという簡単な構造で後期重心型燃焼を行わせることができる。
請求項5の発明によると、高圧縮比化に有利なペントルーフ型燃焼室にあって、ピストン冠部に、ペントルーフ形状に沿うような凸部を設けることにより、小間隙部を形成させつつ、燃焼室容積をより削減することができ、幾何学的圧縮比の増大に有利な構造とすることができる。そして凹部において、第1燃焼空間および第2燃焼空間の充分な容積を確保することができる。
請求項6の発明によると、以下に述べるように初期燃焼期間(主燃焼期間より前の、燃焼質量の10%が燃焼するまでの期間)を早期に完了させ、主燃焼期間への移行遅れを効果的に防止することができる。
上記のように、前期主燃焼期間では主として第1燃焼空間で燃焼が行われる。従って、その前段階の初期燃焼期間も主として第1燃焼空間で燃焼が行われる。ここで、点火プラグと小間隙部との距離が近すぎると、初期燃焼期間での燃焼が小間隙部による絞り作用の影響を強く受けてしまい、燃焼速度が低下してしまう。初期燃焼期間での燃焼速度が低下すると、主燃焼期間への移行が遅れてしまい、燃焼全体の遅れに繋がるので好ましくない。
そこで本発明の構成によれば、小間隙部が、シリンダボアの径方向における、点火プラグからシリンダボア周縁との中間点よりもシリンダボア周縁寄りに形成されている。つまり点火プラグと小間隙部とが適度に離間しているので、初期燃焼期間での燃焼に小間隙部による絞り作用の影響が殆ど及ばないようにすることができる。
但し、小間隙部をシリンダボア周縁に寄せ過ぎると、第2燃焼空間を充分確保することが困難となる。従って小間隙部は、点火プラグからシリンダボア周縁との中間点よりはシリンダボア周縁寄りであり、かつシリンダボア周縁からもある程度離間した適所に形成させるのが好ましい。その適所はエンジンの特性等によって異なるが、概ね点火プラグからシリンダボア周縁までの距離の60〜85%の範囲内にある。
図1(a)は本発明の実施形態に係る火花点火式エンジンの燃焼室構造を示す縦断面図であり(b)は、(a)の、ピストン頂面と天井壁付近を抜粋した図である。また図2は図1(a)のII−II線断面図である。また図3は、燃焼室の天井壁をピストン側から見た平面図である。図1(b)はピストン13が上死点にある状態を示しているが、図1(a)および図2は、図を見易くするために、ピストン13が上死点よりやや下死点寄りにある状態を示している。また図1(b)では、点火プラグ15および急傾斜壁面11fを省略して示している。
当実施形態の燃焼室14はペントルーフ型である。図1(a)、(b)に示すように、ピストン13が上死点にあるときの燃焼室14は、シリンダブロック50のシリンダボア12と、ピストン頂面4と、燃焼室14に臨むシリンダヘッド10の下面である天井壁11とに囲まれた空間である。天井壁11は、吸気側天井壁11aと排気側天井壁11bとがシリンダボア12の軸線に垂直な面に対して逆方向に傾斜し、屋根形をなすように形成されている。
シリンダボア12の径方向中央付近には、天井壁11から燃焼室14に先端が臨設された点火プラグ15が設けられている。また吸気側天井壁11aにおけるシリンダボアの周縁部から燃焼室14に先端が臨設されたインジェクタ17(燃料噴射装置)が設けられている。インジェクタ17の先端には複数の噴口17a(例えば6個)が設けられ、後述するようにそのうちの3個が、点火プラグ15の電極15aに指向している。
吸気側天井壁11aには、これに開口する2箇所の吸気ポート21が設けられており、各吸気ポート21には所定の吸気タイミングで開く吸気バルブ19が設けられている。また排気側天井壁11bには、これに開口する2箇所の排気ポート22が設けられており、各排気ポート22には所定の排気タイミングで開く排気バルブ20が設けられている。吸気バルブ19および排気バルブ20の、燃焼室14に臨む面は、それぞれ吸気側天井壁11aおよび排気側天井壁11bの一部を形成している。
図1(a)および図3に示すように、排気側天井壁11bの、点火プラグ15を挟んで噴口17aと対向する位置付近に、急傾斜壁面11fが設けられている。急傾斜壁面11fは排気側天井壁11bの一部であり、周囲よりもより傾斜が急になっている箇所である。図3に示すように、急傾斜壁面11fは、平面視でシリンダボア周縁形状に略平行な円弧状の曲面に形成されている。急傾斜壁面11fの下端は天井壁下端周縁部11eとなっている。天井壁下端周縁部11eはシリンダボア周縁よりもシリンダボア中央寄りに位置している。従って天井壁下端周縁部11eにおいて急傾斜壁面11fとシリンダボア12の壁面との間に段差が形成されている。
図1(b)に示すように、燃焼室14は、ピストン13が上死点にある状態で、燃焼室14内空間の主要部が、インジェクタ17周辺から点火プラグ15周辺にかけて広がる第1燃焼空間14aと、天井壁下端周縁部11eからシリンダボア周縁部にかけて広がる第2燃焼空間14bとによって形成されている。そして第1燃焼空間14aと第2燃焼空間14bとは、ピストン頂面4と天井壁11との間隙が狭められた小間隙部5を介して連通されている。
ここで、ピストン13の形状、特に冠部の形状について説明する。図4(a)はピストン13の斜視図であり、(b)は同平面図である。以下の説明で、ピストン13の上下方向は図(a)の状態での上下方向とする。つまり組立状態で天井壁11に近い方を上とする。
ピストン冠部13aには、平面視で吸気側(図4(b)での右側)が切り欠かれた略円環状(以下C字状という)をなして上方に突出する凸部6が設けられている。凸部6のC字形の閉じた側(図4(b)での左側)は燃焼室14内での排気側に位置するように配設され、ピストン冠部13aの外周と略同心の円弧状となるように形成されている。その円弧半径はピストン13の平均半径の半分よりもやや大きい。
凸部6の高さは、ペントルーフの稜線部11c(図2参照)に対向する位置で最も高く、吸気側および排気側のシリンダボア周縁に向かうほど低くなっている。従って図1(a),(b)に示す状態で、凸部6は上部が天井壁11のペントルーフ形状に沿った山形となっている。
凸部6は一定の厚みを有しており、その上面には凸部頂面9が形成されている。凸部頂面9は、詳しくは、吸気側における坂路状の吸気側凸部頂面9a,排気側における坂路状の排気側凸部頂面9b,吸気側凸部頂面9aと排気側凸部頂面9bとの境界部で平坦な凸部平坦頂面9cからなる。排気側凸部頂面9bのうち、特に天井壁下端周縁部11eに対向する部分を排気側凸部頂面9b’で示す。排気側凸部頂面9b’は、曲面形状の天井壁下端周縁部11eに対向するように形成されている。
凸部6のC字形の内側および外側には、凸部6に対して相対的に没入した凹部が形成されている。すなわち凸部6のC字形内側には中央側凹部7、C字形外側には周縁側凹部8が形成されている。
中央側凹部7は、凸部6のC字形と同様に吸気側に開口した平坦部である。中央側凹部7の吸気側には、さらに浅く没入した卵形凹部7aが設けられている。卵形凹部7aは平面視で卵型、つまり吸気側から排気側に延びる略長円で、吸気側の径が排気側の径より大なる形状となっている。卵形凹部7aの側壁は緩やかな傾斜面となっている。
周縁側凹部8は、凸部6のC字形外側で、凸部6に対して相対的に没入した部分である。周縁側凹部8は略水平で中央側凹部7よりやや低く、ピストン冠部13aの外周と略同心の略円環形状となっている。
凸部6のC字形の開いた側の外側には、中央側凹部7と略同じ高さで平坦な周縁吸気側凹部8aが形成されている。周縁側凹部8と周縁吸気側凹部8aとは、斜面状の段差部8bで滑らかに接続されている。
次に、図1(b)を参照して再び燃焼室14の詳細構造について説明する。第1燃焼空間14aは、ピストン13の中央側凹部7,卵形凹部7aおよび周縁吸気側凹部8aと天井壁11との間に形成されている。従って第1燃焼空間14aは、インジェクタ17から点火プラグ15にかけて一体的に連続する空間となっている。また第2燃焼空間14bは、凸部6の外側の領域であって、かつピストン13の周縁側凹部8と天井壁11との間に略環状(平面視でC字状)に形成されている。
そして第1燃焼空間14aと第2燃焼空間14bとを連通する小間隙部5は、ピストン13の凸部頂面9と天井壁11との間に平面視でC字状(ピストン冠部13aに凸部6が形成されている箇所)に形成されている。
上述のように、凸部6のC字形の円弧部の半径がピストン13の平均半径の半分よりもやや大きいので、小間隙部5は、シリンダボア12の径方向における、第1点火プラグ15からシリンダボア周縁との中間点よりもシリンダボア周縁寄りに形成されている。その最適位置は、エンジンの特性等によって異なるが、概ね第1点火プラグ15からシリンダボア周縁までの距離の60〜85%の範囲内にある。
小間隙部5は、詳細には小間隙部5a、小間隙部5bおよび小間隙部5cからなる。小間隙部5aは、ピストン13の吸気側凸部頂面9aと、これに対向する吸気側天井壁11aとの間の間隙である。小間隙部5bは、ピストン13の排気側凸部頂面9bと、これに対向する排気側天井壁11bとの間の間隙である。小間隙部5cは、ピストン13の凸部平坦頂面9cと、これに対向する天井壁11(稜線部11c付近)との間の間隙である。小間隙部5は、第1燃焼空間14aと第2燃焼空間14bとの間に形成される狭い間隙であるが、特に小間隙部5bのうち、排気側凸部頂面9b’と、これに対向する天井壁下端周縁部11e付近との間の間隙である最小間隙部5b’は、他の小間隙部5a,5b,5cに対して最も狭い間隙となっている。
次に、当実施形態の燃焼室構造を有する火花点火式直噴エンジンの動作について説明する。
まず吸気行程において吸気バルブ19が開くとともに、ピストン13が降下する。それに伴って吸気ポート21から燃焼室14内に空気が負圧吸引される。
続く圧縮行程において吸気バルブ19が閉じるとともに、ピストン13が上昇する。それに伴って、燃焼室14内の空気が圧縮され、温度と圧力が上昇する。圧縮行程の中盤から後半にかけて、インジェクタ17の噴口17aから燃料が噴射される。
圧縮行程の終盤付近、つまりピストン13が図1(b)に示す上死点付近まで上昇したとき、点火プラグ15の電極15aから火花が飛ばされる。このとき、電極15a付近には適度な濃度(空燃比)の混合気が偏在するようにインジェクタ17の噴射形態が調整されている。この燃料噴射については後に詳述する。電極15aから飛ばされた火花によって電極15a付近の混合気が着火し、火炎核が形成される。
続く膨張行程では、火炎核の火炎面が略球状に拡がりながら燃焼が進行する。この燃焼は、当明細書で後期重心型燃焼と称する燃焼形態を呈するが、これについては後に詳述する。燃焼によって急速に高められた筒内圧力によってピストン13が押し下げられる。ピストン13を押し下げる力が図外のコンロッド等を介して図外の出力軸(クランクシャフト)の回転駆動力となる。
続く排気行程では排気バルブ20が開くとともにピストン13が上昇に転じる。ピストン13の上昇によって既燃ガス(排ガス)が排気ポート22から押し出され、排出される。
以上の吸気、圧縮、膨張および排気からなる4行程を繰り返すことによってエンジンが連続運転される(4サイクルエンジン)。また多気筒エンジンの場合は、気筒ごとに上記の各行程をずらした設定とすることにより、より滑らかで振動や騒音の少ないエンジンとすることができる。
次に、上記圧縮行程中盤から後半にかけて行われるインジェクタ17からの燃料噴射について詳細に説明する。
図5は、インジェクタ17から噴射される噴霧の説明図である。上述のようにインジェクタ17は6個の噴口17aを備えているが、各噴口17aからは互いに異なる指向の噴霧83a,83b,83c,83d,83e,83f(これらを総称するときは噴霧83という)が噴射される。実際の各噴霧83は、噴口17aを頂点とする円錐状に拡散して行くが、図5ではその指向を模式的に矢印で示している。
各噴霧83の指向は、図5の上下方向に4段階(上から第1段、第2段、第3段、第4段とする)、図5の紙面に垂直な方向(噴口17aから電極15aを見たときの左右方向)に3方向の指向を有する。この3方向とは、図3に示すように、電極15aの軸線またはその延長線の方向を中央方向とし、その中央の指向を挟んで左右(図3に示す方向では上下)対称に離間する指向を左右方向とする。
従って図3および図5に示すように、各噴霧83の指向は、噴霧83a,83bが第1段左右、噴霧83cが第2段中央、噴霧83dが第3段中央、噴霧83e,83fが第4段左右となっている。
第1段および第2段の噴霧83a,83b,83cは、主に電極15aの方向に指向し、第3段および第4段の噴霧83d,83e,83fは、比較的電極15aから離れた方向に指向している。
図6は、電極15aの位置における点火時の噴霧83a,83b,83cの断面を示す説明図である。各噴霧83a,83b,83cは模式的に示されており、実際には図示のような明確な境界線はない。図6に示すように、噴霧83a,83b,83cは、直接電極15aに当たることを避けつつ、電極15aを取り囲むように指向している。
以上のような噴霧83の指向パターンであるため、第1段および第2段の噴霧83a,83b,83cによって、比較的濃度の高い混合気を点火時に電極15aの周囲に偏在させることができ、着火性を高めることができる。また比較的電極15aから離れた方向に指向する噴霧83d,83e,83fによって、燃焼室14内全体に適度な濃度の混合気を行き渡らせ、全体として良好な燃焼を行わせることができる。
ところで、電極15aの方向に指向する噴霧83a,83b,83cは、殆どが排気側天井壁11bに達するまでに燃焼に供されるものの、一部は排気側天井壁11bに達する。当実施形態では、図5に示すように、傾斜した排気側天井壁11bに達した噴霧83a,83b,83cは、自然に急傾斜壁面11fに導かれるように構成されている。図3に示すように急傾斜壁面11fは円弧状に形成されており、電極15aの軸線から左右に離れた方向に指向する噴霧83a,83bからの到達分も急傾斜壁面11fに導かれ易くなっている。急傾斜壁面11fに導かれた噴霧83a’,83b’,83c’(図5に二点鎖線で示す)は、図示のように略下向きに方向を変え、ピストン頂面4の方に向かう。或いは一部が液滴化し、急傾斜壁面11fに付着する。液滴化した燃料は急傾斜壁面11fを伝い落ち、表面張力で天井壁下端周縁部11e付近に滞留するか、ピストン頂面4に滴下する。
この際、急傾斜壁面11fとシリンダボア12との間には段差があるため、急傾斜壁面11fを伝い落ちた液滴燃料がその段差を越えて容易にシリンダボア12を伝い落ちることが無い。従って、液滴燃料がシリンダボア12とピストン13との間の隙間から液滴燃料が燃焼室14の外部(オイルパン側)に導かれることが可及的に防止され、オイル希釈が効果的に抑制される。
次に、上記膨張行程で行われる燃焼について詳細に説明する。この燃焼は、当明細書で後期重心型燃焼と呼ぶ燃焼形態を呈する。後期重心型燃焼は、端的に表現すれば前期主燃焼期間(燃焼質量の10%以上50%未満が燃焼する期間)での燃焼速度が比較的低く、後期主燃焼期間(燃焼質量の50%以上90%未満が燃焼する期間)での燃焼速度が比較的高い燃焼形態である。後期重心型燃焼は、当実施形態の燃焼室構造と密接な関係があり、この燃焼室構造によってなし得る燃焼形態である。
後期重心型燃焼について、燃焼室構造と関連付けながら説明する。まず、点火プラグ15の電極15aから火花が飛ばされると、その周囲の混合気(特に噴霧83a,83b,83c)が着火し、火炎核が形成される。そしてその火炎面(火炎伝播の最前線)が略同心球状に拡がりながら伝播する。つまり第1燃焼空間14aにおいて燃焼が行われる。その際、火炎面は未燃ガスを押し出すようにして拡がって行く。
ところが、第1燃焼空間14aの外側には小間隙部5が設けられている。従って、火炎面に押し出された未燃ガスが小間隙部5を通過する際、一種の絞り作用を受ける。その影響を受けて火炎伝播が抑制される。このため第1燃焼空間14aにおける燃焼速度が比較的低く抑えられる。
そして火炎面が小間隙部5を経て第2燃焼空間14bに達すると、もはや小間隙部5による絞り作用の影響を受けないので、速やかに火炎伝播が進行する。つまり第2燃焼空間14bにおける燃焼速度が比較的高くなる。
こうして、主として第1燃焼空間14aでの前期主燃焼期間には比較的低速の燃焼が行われ、主として第2燃焼空間14bでの後期主燃焼期間には比較的高速の燃焼が行われるという、後期重心型燃焼が行われることになる。
ところで、上述したように、火炎面は点火プラグ15の電極15a付近に形成された火炎核を中心とする略同心球状に拡がって行くが、より厳密には、排気側への伝播速度が吸気側への伝播速度よりもやや高くなっている。高温の排気側では、より燃焼反応が促進されるからである。当実施形態では、最小間隙部5b’によって、排気側へのガス流を他よりも強く絞っているので、高くなりがちな排気側への火炎伝播速度が比較的強く抑制される。これにより、全体的にはより均等な火炎伝播速度を得ることができ、円滑な燃焼を図ることができる。また火炎面の第1燃焼空間14aから第2燃焼空間14bへの移行を、より均等に行わせることができる。
図7は、当実施形態の後期重心型燃焼における燃焼特性を示す特性図である。横軸にクランク角(°CA)、縦軸に燃焼質量割合(%)を示す。燃焼質量割合とは、燃焼した燃料の質量全体を100%とし(無次元化)、当該クランク角時点までに燃焼した燃料の積算値を示したものである。
図示のように、燃焼質量割合が10%未満の領域を初期燃焼領域81といい、その期間を初期燃焼期間θという。また燃焼質量割合が10%以上90%未満の領域を主燃焼領域80という。主燃焼領域80は50%を境にして前期と後期に分けられ、燃焼質量割合が10%以上50%未満の領域を前期主燃焼領域80aといい、50%以上90%未満の領域を後期主燃焼領域80bという。そして前期主燃焼領域80aの期間を前期主燃焼期間θといい、後期主燃焼領域80bの期間を後期主燃焼期間θという。
図7には、当実施形態の燃焼特性T1を示すとともに、比較のために従来の一般的な燃焼特性T1’を併記している。なお図7は、エンジン回転速度が1500rpmで、高負荷運転状態での燃焼特性を示す。
当実施形態の燃焼特性T1では、初期燃焼期間θは点火時期〜約3°CA、前期主燃焼期間θは約3〜約13°CA、後期主燃焼期間θは約13〜約20°CAとなっている。一方、従来の燃焼特性T1’では、初期燃焼期間θ’は点火時期〜約4°CA、前期主燃焼期間θ’は約4〜約13°CA、後期主燃焼期間θ’は約13〜約21°CAとなっている。
つまり当実施形態の燃焼特性T1は、従来の燃焼特性T1’に比べ、初期燃焼期間θが約1°CA短縮され、前期主燃焼期間θが約1°CA延ばされ、後期主燃焼期間θが約1°CA短縮されている。これは、主として第1燃焼空間14aで燃焼が行われる前期主燃焼期間θでは燃焼速度が相対的に低く、主として第2燃焼空間14bで燃焼が行われる後期主燃焼期間θでは燃焼速度が相対的に高くなっていることを示している。つまり後期重心型燃焼となっていることがわかる。
また初期燃焼期間θ及び前期主燃焼期間θでの燃焼は、ともに主として第1燃焼空間14aでの燃焼であるが、初期燃焼期間θはむしろ短縮されている。これは、小間隙部5が、点火プラグ15に近すぎない適所(詳しくは点火プラグ15からシリンダボア周縁までの距離の60〜85%の範囲内の適所)に設けられていることによって、小間隙部5による絞り作用の影響が初期燃焼期間θにまでは及んでいないことを示している。
図8は、図7に示す燃焼特性を別の視点から表した特性図である。横軸にクランク角(°CA)、縦軸に熱発生率(%)を示す。ここで熱発生率とは、図7の熱発生割合の微分値であり、燃焼による全体の熱発生量を100%とし(無次元化)、当該クランク角時点における熱発生量の割合を示したものである。
図8には、当実施形態の燃焼特性T2を示すとともに、比較のために従来の一般的な燃焼特性T2’を併記している。特性T2’と比較して、特性T2の顕著な特徴として、前期主燃焼期間θにおいて傾きの緩やかな棚部T2aを有している点、および後期主燃焼期間θにおいて最大熱発生率の極大値が大きくなっている点である。この二点が後期重心型燃焼を特徴付けるものとなっている。
棚部T2aについて説明すると、これは、初期燃焼期間θから前期主燃焼期間θに移行後、熱発生率の増大率が一時的に低下していることを示している。これは小間隙部5による絞り効果によって、前期主燃焼期間θでの燃焼速度が比較的低くなったからであると考えられる。
その後、後期主燃焼期間θにおいて最大熱発生率の極大値が大きくなっている点については、比較的多く残留した未燃燃料が、充分な容積が確保された第2燃焼空間14bで高速で燃焼したためであると考えられる。
このように、当実施形態の燃焼室構造によれば、簡単な構造で後期重心型燃焼を容易に行わせることができる。そして上述のように、後期重心型燃焼を行わせることにより、耐ノッキング性能を向上させ、実用上有効に圧縮比を高めることができる。本願発明者は、例えば従来構造と同程度の耐ノッキング性能を確保した場合、圧縮比を0.5以上高めることができることを確認した。そして圧縮比を高めることにより燃焼効率を高め、燃費を向上させることができる。
以上の説明で明らかなように、当実施形態の燃焼室構造は、オイル希釈を効果的に抑制するとともに、後期重心型燃焼を行わせることによって実用上有効に圧縮比を高めることができる。特に急傾斜壁面11fや、その下端部である天井壁下端周縁部11eは、何れの作用効果を得るためにも重要な役割を果たす構成要素となっている。換言すれば、急傾斜壁面11fや天井壁下端周縁部11eという簡単な構造を用いることにより、オイル希釈の抑制と圧縮比の向上とを同時に可能にしている。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこの実施形態に限定するものではなく、特許請求の範囲内で種々の変形を行っても良い。
例えば上記各実施形態は、本発明を4サイクルエンジンに適用した場合を示しているが、それ以外の、例えば2サイクルエンジンに適用しても良い。
燃焼室14の形状はペントルーフ型が望ましいが、それ以外、例えば半球形型(ドーム型)、多球形型等であっても良い。
噴口17aの数は、6個に限定するものではない。電極15a方向に指向する少なくとも1個の噴口17aがあれば良く、6個以外の複数個、或いは1個であっても良い。
ピストン冠部13aの形状は、上記形状に限定するものではない。例えば凸部6は、上記実施形態のようにペントルーフの略頂点にまでペントルーフ形状に沿うものでなく、ある程度(小間隙部5cが大きすぎない程度)の高さ、例えば当実施形態の半分程度の高さまでペントルーフ形状に沿い、それ以上の高さの部分を削除したような形状であっても良い。卵形凹部7aは必ずしも設ける必要はない。
本発明の実施形態に係る火花点火式エンジンの燃焼室構造を示す縦断面図であり、(a)はピストンが上死点よりやや下死点寄りにある状態、(b)はピストンが上死点にある状態を示す。 図1のII−II線断面図である。 図1に示す燃焼室の天井壁をピストン側から見た平面図である。 図1に示すピストンの図であり、(a)は斜視図、(b)は平面図である。 図1に示すインジェクタから噴射される噴霧の説明図である。 図1に示す電極15aの位置における点火時の噴霧の断面を示す説明図である。 図1に示すエンジンの後期重心型燃焼における燃焼特性を示す特性図である。 図7に示す燃焼特性を微分した特性図である。
符号の説明
4 ピストン頂面
5 小間隙部
6 凸部
7 中央側凹部(凹部)
8 周縁側凹部(凹部)
9 凸部頂面
10 シリンダヘッド
11 天井壁(シリンダヘッド下面)
11a 吸気側天井壁
11b 排気側天井壁
11e 天井壁下端周縁部
12 シリンダボア
13 ピストン
13a ピストン冠部
14 燃焼室
14a 第1燃焼空間
14b 第2燃焼空間
15 点火プラグ
15a 電極
17 インジェクタ(燃料噴射装置)
17a 噴口

Claims (6)

  1. シリンダヘッド下面とピストン頂面との間に形成され、上記シリンダヘッド下面を天井壁とする燃焼室と、
    上記天井壁のシリンダボア中央部分から上記燃焼室内に先端が臨設された点火プラグと、
    吸気側のシリンダボア周縁部から上記燃焼室内に先端が臨設された燃料噴射装置とを備えた火花点火式直噴エンジンの燃焼室構造であって、
    上記燃料噴射装置は、噴射燃料の少なくとも一部が上記点火プラグの電極方向に向かうように構成され、
    上記天井壁の少なくとも排気側をシリンダボア軸線に直交する面に対し傾斜させるとともに、その下端周縁に形成される天井壁下端周縁部をシリンダボア周縁よりもシリンダボア中央寄りに位置させ、
    ピストンが上死点にある状態で、上記燃焼室内空間の主要部が、上記燃料噴射装置周辺から上記点火プラグ周辺にかけて広がる第1燃焼空間と、上記天井壁下端周縁部からシリンダボア周縁部にかけて広がる第2燃焼空間とによって形成され、
    上記ピストン頂面と上記天井壁との間隙が狭められた小間隙部を介して上記第1燃焼空間と上記第2燃焼空間とが連通されていることを特徴とする火花点火式直噴エンジンの燃焼室構造。
  2. 上記燃料噴射装置は複数の噴口を備え、少なくともその一部の噴口が上記点火プラグの電極方向に指向していることを特徴とする請求項1記載の火花点火式直噴エンジンの燃焼室構造。
  3. 上記点火プラグの電極方向に指向する噴口が少なくとも2個設けられ、各噴口の指向方向が、上記点火プラグの電極から僅かに離間するとともに、該電極の中心軸を挟んで互いに略対称であるように構成され、
    上記天井壁下端周縁部は、平面視においてシリンダボア周縁形状と略平行となるような曲面形状に成形され、
    上記小間隙部は、上記天井壁下端周縁部の曲面形状に沿って形成されていることを特徴とする請求項2記載の火花点火式直噴エンジンの燃焼室構造。
  4. 上記ピストンの冠部には、上記天井壁に向けて突出する凸部が形成され、
    上記凸部の外周側が上記天井壁下端周縁部の曲面形状に沿うように形成され、
    上記凸部と上記天井壁下端周縁部との間に上記小間隙部が形成されていることを特徴とする請求項3記載の火花点火式直噴エンジンの燃焼室構造。
  5. 上記燃焼室は、吸気側天井壁と排気側天井壁とが屋根形をなすペントルーフ型であり、
    上記ピストンの冠部には、上記天井壁に向けてペントルーフ形状に沿うように突出した凸部と、該凸部に対して相対的に没入した凹部とが形成されており、上記小間隙部は上記凸部の頂面と上記天井壁との間に形成され、上記第1燃焼空間および上記第2燃焼空間は上記凹部と上記天井壁との間に形成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の火花点火式直噴エンジンの燃焼室構造。
  6. 上記小間隙部は、上記シリンダボアの径方向における、上記点火プラグから上記シリンダボア周縁との中間点よりも上記シリンダボア周縁寄りに形成されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の火花点火式直噴エンジンの燃焼室構造。
JP2005273526A 2005-09-21 2005-09-21 火花点火式直噴エンジンの燃焼室構造 Pending JP2007085221A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2005273526A JP2007085221A (ja) 2005-09-21 2005-09-21 火花点火式直噴エンジンの燃焼室構造

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2005273526A JP2007085221A (ja) 2005-09-21 2005-09-21 火花点火式直噴エンジンの燃焼室構造

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2007085221A true JP2007085221A (ja) 2007-04-05

Family

ID=37972457

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2005273526A Pending JP2007085221A (ja) 2005-09-21 2005-09-21 火花点火式直噴エンジンの燃焼室構造

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2007085221A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2014118873A (ja) * 2012-12-17 2014-06-30 Toyota Motor Corp 燃料噴射制御装置
JP2021017850A (ja) * 2019-07-22 2021-02-15 株式会社Subaru エンジン

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2014118873A (ja) * 2012-12-17 2014-06-30 Toyota Motor Corp 燃料噴射制御装置
JP2021017850A (ja) * 2019-07-22 2021-02-15 株式会社Subaru エンジン
JP7319852B2 (ja) 2019-07-22 2023-08-02 株式会社Subaru エンジン

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP1764491B1 (en) Combustion chamber structure for spark-ignition engine
JP4722129B2 (ja) 筒内噴射式火花点火内燃機関
JP4428325B2 (ja) 火花点火式エンジンの燃焼室構造
JP2008121429A (ja) 筒内直接噴射式内燃機関
JP4280925B2 (ja) 内燃機関の燃焼室構造
CN100532815C (zh) 内燃机的燃烧室结构
JP4442542B2 (ja) 往復動ピストン型エンジン
JP4432867B2 (ja) 火花点火式エンジン
JP6508240B2 (ja) 火花点火式内燃機関
JP2010014081A (ja) 火花点火式内燃機関
JP6515941B2 (ja) 火花点火式内燃機関
JP6508238B2 (ja) 火花点火式内燃機関
JP2007085221A (ja) 火花点火式直噴エンジンの燃焼室構造
JP4438726B2 (ja) 火花点火式エンジンの燃焼室構造
JP2007100547A (ja) 往復動ピストン型火花点火式直噴エンジン
JP4618067B2 (ja) 火花点火式エンジン
JP2009215973A (ja) 副室式内燃機関
JP6508239B2 (ja) 火花点火式内燃機関
JP6515942B2 (ja) 火花点火式内燃機関
JP6515943B2 (ja) 火花点火式内燃機関
JP6519603B2 (ja) 火花点火式内燃機関
JP4609708B2 (ja) 火花点火式直噴エンジン
JP6443479B2 (ja) 火花点火式内燃機関
JP2007100545A (ja) 往復動ピストン型エンジン
JP6281585B2 (ja) 内燃機関の吸排気構造