以下、実施形態について詳細に説明する。
[第1の実施形態]
第1の実施形態に係る点火装置を内燃機関に適用した場合について、図面を参照して説明する。本実施形態では、内燃機関として発電用のガスエンジンを用いた場合について説明する。
<内燃機関>
図1は、第1の実施形態に係る点火装置を備える内燃機関を示す断面図である。本明細書では、3軸方向(X軸方向、Y軸方向、Z軸方向)の3次元直交座標系を用いる。レーザ装置の光源からのレーザ光の出射方向を+Z方向とし、レーザ光の光軸に直交する面において、互いに直交する2つの方向のうち一方をX軸方向とし、他方をY軸方向として説明する。
図1に示すように、内燃機関(エンジン)10は、点火装置11A、シリンダヘッド12、シリンダ13、ピストン14、吸気ポート15、排気ポート16、吸気弁17、及び排気弁18を有する。シリンダ13内には、点火装置11A、シリンダヘッド12、ピストン14、吸気弁17及び排気弁18に囲まれることで、エンジン10の主燃焼室19が形成されている。
点火装置11Aの先端は、シリンダヘッド12に主燃焼室19側に突出して設けられている。点火装置11Aは、レーザ装置21、窓部材22、筺体(ハウジング)23、プレチャンバーキャップ(仕切部材)24A、及び第1の干渉部材25Aを有する。主燃焼室19内に供給された混合気が、主燃焼室19からプレチャンバーキャップ24Aの複数の連通孔(プレチャンバー孔)241を通して、プレチャンバーキャップ24Aの内部のプレチャンバーである予備燃焼室26に供給される。予備燃焼室26に供給された混合気中にレーザ光LBを照射して、レーザ光LBを集光させる。レーザ光LBの集光点を点火点(ブレイクダウンポイント)BPとしてプラズマを発生させることで、混合気中の燃料を点火する。点火装置11Aの詳細については、後述する。
シリンダヘッド12は、鉄又はアルミ二ウム合金等からなる成型品であるシリンダーブロックによって形成されている。
シリンダ13は、底部を有する筒状の金属部材であり、点火装置11A、吸気弁17、及び排気弁18を受け入れるための複数の開口部を有する。運転状態において、吸気弁17、及び排気弁18は、主燃焼室19内に空気と燃料とが所定の比率で供給されるように開く。
ピストン14は、図示しないクランク軸と図示しない連結棒とに接続されており、前記クランク軸の回転によって往復運動している。
点火装置11A、吸気弁17及び排気弁18は、エンジン10の外部に設けられている、図示しない駆動装置と電気的に接続されており、点火装置11Aは、図示しない制御装置の指示に基づいて前記駆動装置により制御される。
エンジン10の動作について簡単に説明する。吸気弁17が吸気ポート15内を上昇して、吸気ポート15より燃料と空気とを含む可燃性の混合気を主燃焼室19内に噴出させる(吸気工程)。その後、ピストン14が上昇して、混合気が圧縮される(圧縮工程)。主燃焼室19内の圧縮された混合気が点火装置11Aの予備燃焼室26内に供給される。点火装置11Aは、供給された混合気中にレーザ装置21から出射したレーザ光を集光させ、プラズマを発生させる。発生したプラズマにより、混合気中の燃料に点火させる(着火)。予備燃焼室26の中で、燃料の点火により混合気を予備燃焼させる。そして、予備燃焼室26の中で予備燃焼した混合気をプレチャンバーキャップ24Aのプレチャンバー孔241から点火フレア(点火炎)として主燃焼室19内に噴出する。主燃焼室19の混合気中の燃料を点火して主燃焼することで、主燃焼室19内の燃焼ガスが膨張する。これにより、ピストン14が降下する(燃焼工程)。その後、排気弁18が排気ポート16を上昇して、排気ポート16より、燃焼ガスを主燃焼室19の外へ排気する(排気工程)。
このように、エンジン10では、吸気工程、圧縮工程、燃焼工程、及び排気工程からなる4つ工程を1サイクルとして、一連の工程が繰り返される。そして、主燃焼室19内の気体の体積変化に対応してピストン14が運動し、運動エネルギーを生じさせる。燃料には、例えば、天然ガスや都市ガス等が用いられる。
なお、点火装置11Aにおけるレーザ光の出射は、図示していない制御装置の指示に基づいて図示していない駆動装置により制御される。吸気弁17及び排気弁18は、図示していない装置で4行程に対して適切なタイミングで動作している。
また、エンジン10は、4サイクルエンジンであるが、2サイクルエンジンでもよい。
<点火装置>
点火装置11Aについて説明する。点火装置11Aの構成を図2及び図3に示す。図2は、本実施形態に係る点火装置を主燃焼室19側から見た時のプレチャンバーキャップ24Aの構成を示す正面図であり、図3は、図2に示す1A-1A断面図である。なお、図1~図5中の一点鎖線は、点火装置11Aの長手方向(Z軸方向)の中心線(中心軸)Jを示す。中心軸Jは、レーザ装置から照射されるレーザ光の光軸と一致しており、レーザ装置の中心軸でもある。
図2及び図3に示すように、点火装置11Aは、レーザ装置21、窓部材22、ハウジング23、プレチャンバーキャップ24A、及び第1の干渉部材25Aを有する。プレチャンバーキャップ24Aの内部にプレチャンバー(予備燃焼室)26が形成される。
レーザ装置21は、レーザ光を射出する光源と、レーザ光を集光させる集光光学系とを有する。レーザ装置21は、光源から射出されたレーザ光LBを予備燃焼室26内に集光させる。レーザ装置21は、その長手方向(Z軸方向)の軸が、ピストン14(図1参照)の往復運動する方向(Z軸方向)と並行となるように配置されている。
前記光源としては、例えば、面発光レーザや端面発光レーザ等の半導体レーザ等を用いることができる。中でも、前記光源として、面発光レーザを用いることが好ましい。面発光レーザは、励起用光源であり、複数の発光部を有している。各発光部は、垂直共振器型の面発光レーザ(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser)である。面発光レーザから出射されるレーザ光の波長は、例えば、約808nmである。面発光レーザは、出射されるレーザ光の、温度による波長ずれが非常に小さい。そのため、面発光レーザは、波長ずれによって特性が大きく変化するQスイッチ式のレーザ共振器でレーザ光のエネルギー密度を高めるのに有利な光源である。面発光レーザは、図示しない駆動装置と電気的に接続されており、図示しないエンジン制御装置の指示に基づいて、面発光レーザが駆動して、面発光レーザからレーザ光が出射される。
集光光学系は、少なくとも1つの集光レンズを有する。集光レンズは、レーザ光の断面積等に応じて適切なものが選択される。集光光学系は、光源から出射されたレーザ光LBを集光する。
集光光学系は、集光レンズの他に、レーザ光を発散する凹レンズ、レーザ光をコリメートするコリメートレンズを有していてもよい。また、集光光学系は、光ファイバやQスイッチ式のレーザ共振器等の他の光学素子を有していてもよい。
集光光学系は、光ファイバを備えることで、光源から出射されたレーザ光を光ファイバの一端に入射させ、その他端から出射させることができる。そのため、レーザ光は光ファイバ一端を介して任意の場所から出射させることができるので、光源や集光光学系の配置の自由度が増大する。また、エンジン10(図1参照)の周辺の高温領域から光源を遠ざけることができるので、エンジン10の冷却方法の幅を広げることができる。さらに、振動源であるエンジン10(図1参照)から光源を遠ざけた位置に設けることができるので、光源から出射されるレーザ光のぶれを防ぐことができる。
集光光学系は、Qスイッチ式のレーザ共振器を備えることで、レーザ共振器に入射されたレーザ光のエネルギー密度が高められ、波長が例えば約1064nmのレーザ光を短いパルス幅で出射させることができる。レーザ共振器に入射されたレーザ光は、レーザ共振器内で共振し増幅することで、レーザ光のエネルギー密度が高くなる。そして、レーザ光の吸収量が飽和すると、Qスイッチ発振が発生する。これにより、エネルギー密度の高いレーザ光がレーザ共振器から短いパルス幅でエネルギーを集中させて出射される。なお、集光光学系がレーザ共振器を備える場合、レーザ共振器に入射されるレーザ光を、「励起光」ともいう。レーザ共振器から出射されるレーザ光を、パルスレーザ光ともいう。パルスレーザ光の波長は、例えば、約1064nmである。
レーザ装置21は、集光光学系によりレーザ光を集光させることで、集光点で高いエネルギー密度を得ることができる。集光されたレーザ光LBは、ある一定のエネルギー密度を超えると、予備燃焼室26内の混合気に含まれる気体を構成する分子が電離し、陽イオンと電子とに別れ、プラズマ化(ブレークダウン)する。
窓部材22は、図3に示すように、光学窓221と、光学窓保持部材222とを有する。集光光学系から出射されたレーザ光LBは、光学窓221を透過して、予備燃焼室26内で集光される。
光学窓221は、図3に示すように、レーザ装置21から出射されるレーザ光LBの光路上に配置されている。
光学窓221の平面視における形状は、特に限定されるものではなく、例えば、矩形状、円形状、楕円状、長方形状、多角形状等であってもよい。
光学窓221は、透明又は半透明の材料で構成される。光学窓221の材料としては、例えば、光学ガラス、耐熱ガラス、石英ガラス、サファイアガラス等を用いることができる。特に、光学窓221は、予備燃焼室26内に発生する燃焼圧力からハウジング23の内部の光学部材等を保護するため、十分な耐圧強度が必要となる。光学窓221の材料としては、光学窓221の厚みが薄くても、高温高圧環境下で優れた耐久性を有するサファイアガラスを用いることが好ましい。
光学窓221は、レーザ光が通過する入射面に反射防止(AR:Anti Reflection)膜(AR膜)を有してもよい。反射防止膜は、光学窓221の入射面に設けられ、レーザ光の反射を抑制する膜である。反射防止膜は、波長が1064nmのレーザ光に対しては高い透過率を有する。
反射防止膜を形成する材料としては、例えば、Si、Na、Al、Ca、Mg、B、C、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Sr、Zr、Nb、Ru、Pd、Ag、In、Sn、Hf、Ta、W、Ot、Au、及びBiのいずれかを主成分とする材料、又は前記主成分の窒化物、酸化物、炭化物、及びフッ化物のいずれかを少なくとも一つ含む材料を用いることができる。反射防止膜を光学窓221に形成する方法としては、例えば、蒸着、スパッタ、溶射、塗布、又はゾルゲル法等を用いることができる。反射防止膜は、一層でもよいし、多層でもよい。
光学窓保持部材222は、図3に示すように、ハウジング23の内面に固定されている。光学窓保持部材222は、溶接、ねじ止め、焼きばめ、接着等によりハウジング23の内面に固定できる。
光学窓保持部材222は、その内面で、接合材としてロウ材を用いてロウ付けにより、光学窓221を固定して保持できる。なお、接合材として、ロウ材の他に、高温での耐熱性を有する他の接合材を用いてもよい。また、接合材を用いずに、ねじ止めや焼きばめ等により、光学窓保持部材222に光学窓221を固定してもよい。
光学窓保持部材222を形成する材料としては、例えば、鉄、ニッケル、Ni-Fe系合金、Ni-Cr-Fe系合金、Ni-Co-Fe系合金、ステンレス等の耐熱性金属材料を用いることができる。Ni-Cr-Fe系合金として、例えば、インコネル等が挙げられる。Ni-Co-Fe系合金として、例えば、コバール等が挙げられる。中でも、本実施形態では、光学窓221は、サファイアで形成されることが好ましいことから、光学窓保持部材222を形成する材料は、サファイアと熱膨張係数の近いコバールを使用することが好ましい。
光学窓保持部材222は、光学窓保持部材222を固定するハウジング23と同一材料で形成することが好ましい。光学窓保持部材222及びハウジング23は、予備燃焼室26に晒されているので、予備燃焼室26の温度の影響を受けやすい。光学窓保持部材222及びハウジング23が、同一材料で形成されていれば、同じ熱膨張係数を有する。そのため、光学窓保持部材222及びハウジング23が予備燃焼室26の温度の影響を受けて高温(例えば、数百℃~約1000℃程度)になっても、熱膨張係数の差により生じる応力が光学窓保持部材222とハウジング23との接合部に加わることを抑制できる。これにより、応力差に起因して、光学窓保持部材222とハウジング23との接合部が引っ張られ、前記接合部に亀裂が生じる等の接合部に加わる負荷を軽減できるので、光学窓221を光学窓保持部材222に安定して固定することができる。
プレチャンバーキャップ24Aは、図3に示すように、ハウジング23の端部から主燃焼室19側に突出し、内部に所定の空間(プレチャンバー)が形成されるように設けられている。プレチャンバーが、予備燃焼室26となる。プレチャンバーキャップ24Aは、ロウ材や溶接等によりハウジング23と接合されている。プレチャンバーキャップ24Aは、点火装置11Aの軸方向(Z軸方向)から見た時、ハウジング23と同様、円型に形成されている。
プレチャンバーキャップ24Aは、例えば、鉄、Ni-Fe系合金、Cr-Fe系合金、Ni-Cr-Fe系合金、Ni-Co-Fe系合金、ステンレス等の耐熱性金属が用いられる。Ni-Cr-Fe系合金として、例えば、インコネル等が挙げられる。Ni-Co-Fe系合金として、例えば、コバール等が挙げられる。
プレチャンバーキャップ24Aは、図2及び図3に示すように、プレチャンバーキャップ24Aの内周面24bに、主燃焼室19と予備燃焼室26とを連通する連通孔(プレチャンバー孔)241A~241Dを有する。本実施形態では、プレチャンバーキャップ24Aの軸方向(Z軸方向)に対して直交する面である内周面24bに設けられるプレチャンバー孔241A~241Dを、第1プレチャンバー孔という。
第1プレチャンバー孔241A~241Dは、プレチャンバーキャップ24Aの内周面24bの周方向にほぼ等間隔に円状に設けられている。主燃焼室19内に供給された混合気は、主燃焼室19から第1プレチャンバー孔241A~241Dを通して、予備燃焼室26内に供給される。
第1プレチャンバー孔241A~241Dは、図3に示すように、それぞれの軸線(孔の中心軸)が点火点BPと重ならないようプレチャンバーキャップ24Aの内周面24bに設けることが好ましい。これにより、点火点BPに混合気が流れるのを低減できるため、点火点BP及びその付近(点火点BP付近)における混合気の流速は低下する。なお、図3では、第1プレチャンバー孔241B及び241Dの軸線のみを示すが、他の第1プレチャンバー孔241A及び241Cの軸線も第1プレチャンバー孔241B及び241Dの軸線と同様の傾きを示す。
図3に示すように、第1プレチャンバー孔241A~241Dは、それぞれの軸線が第1の干渉部材25Aと交わるようにプレチャンバーキャップ24Aの内周面24bに設けられている。第1プレチャンバー孔241A~241Dから予備燃焼室26内に流入した混合気は第1の干渉部材25Aに衝突しやすくなるので、混合気の流れの向きは変えやすく、混合気は光学窓221側に向かって流れやすくなる。そのため、点火点BP及びその周囲における混合気の流速は低下する。
図3に示すように、第1プレチャンバー孔241A~241Dは、第1プレチャンバー孔241A~241Dの向きがそれぞれの軸線の交点の近くに点火点BPが位置するように設けることが好ましい。第1プレチャンバー孔241A~241Dのうち対向する孔同士の軸線は、第1の干渉部材25Aの一部と交わるように設けられている。そのため、主燃焼室19から第1プレチャンバー孔241A~241Dを通って予備燃焼室26内に供給された混合気は、点火点BP及びその周囲に向かって流れる際に、第1の干渉部材25Aで変更される。
第1プレチャンバー孔241A~241Dは、図2に示すように、第1プレチャンバー孔241A~241Dのいずれかと、第1の干渉部材25Aを介して対向した位置(第1の干渉部材25Aを介して反対側の位置)に設けられている。本実施形態では、第1プレチャンバー孔241A~241Dのうち、第1プレチャンバー孔241Aと第1プレチャンバー孔241Cとが第1の干渉部材25Aを介して対向するように設けられている。第1プレチャンバー孔241Bと第1プレチャンバー孔241Dとが第1の干渉部材25Aを介して対向するように設けられている。なお、対向した位置とは、第1プレチャンバー孔241A~241Dのいずれか一つの孔と、他の孔とが、第1の干渉部材25Aを介して完全に反対側の位置である必要はなく、一部ずれていてもよい。
また、第1プレチャンバー孔241A~241Dの数は、偶数であるが、偶数でも奇数でもよい。なお、第1プレチャンバー孔の数が奇数の場合は、いずれか一つの第1プレチャンバー孔は、第1の干渉部材25Aを介して対向した位置に他の第1プレチャンバー孔は存在しないことになる。
第1の干渉部材25Aは、図3に示すように、プレチャンバーキャップ24Aの主燃焼室19側(すなわち、ピストン14(図1参照)側)の前方内面24aに前方内面24aから内側に向かって突出するように設けられている。すなわち、第1の干渉部材25Aの軸方向(Z軸方向)の厚さがプレチャンバーキャップ24Aの厚さよりも大きくなるように形成されている。本実施形態では、第1の干渉部材25Aは、円柱状に形成されている。
第1の干渉部材25Aは、混合気の流速を低減する機能と、混合気の流れの向きを変える機能との何れか一方又は両方の機能を有する。すなわち、第1の干渉部材25Aは、流速低減部材又は流向変更部材として機能することができる。
第1の干渉部材25Aは、上述の通り、図3に示すように、第1プレチャンバー孔241A~241Dのそれぞれの軸線と交わるように、前方内面24aに設けられている。これにより、第1プレチャンバー孔241A~241Dから予備燃焼室26内に流入した混合気は第1の干渉部材25Aに衝突することで、混合気の流れの向きは変わり、混合気は光学窓221側に向かって流れやすくなる。そのため、点火点BP及びその付近における混合気の流速は低下する。
第1の干渉部材25Aは、第1の干渉部材25Aの端面25aに点火点BPが近接するように設計されている。第1の干渉部材25Aの端面25a付近には混合気の境界層が形成される。境界層内では混合気の流速が遅くなる。そのため、端面25aを点火点BPに近接した位置に設けることで、点火点BPは混合気の境界層内に含められるので、初期火炎は安定して形成されやすくなる。
本実施形態では、第1の干渉部材25Aは、点火点BPと第1の干渉部材25Aの端面25aまでの距離が、プレチャンバーキャップ24Aの内径に対して、30%以下であるように配置されていることが好ましい。そして、第1の干渉部材25Aは、点火点BPと第1プレチャンバー孔241A~241Dのそれぞれの軸線までの距離が、プレチャンバーキャップ24Aの内径に対し、50%以下の範囲であるように配置されていることが好ましい。これにより、点火点BP及びその周囲を流れる混合気の流速を低減できると共に、点火点BP及びその周囲以外を流れる混合気の流速を高めることができる。予備燃焼室26内の混合気の流速が早いほど、予備燃焼室26内に生じる火炎は早く広がりやすいので、点火炎の噴射が強くなる。
第1の干渉部材25Aは、図2に示すように、第1プレチャンバー孔241A~241Dのうち、対向するプレチャンバー孔同士をむすぶ直線と交わるように設けることが好ましい。本実施形態では、第1の干渉部材25Aの一部が、対向する第1プレチャンバー孔241Aと第1プレチャンバー孔241Cとを結ぶ直線、及び対向する第1プレチャンバー孔241Bと第1プレチャンバー孔241Dとを結ぶ直線と交わるように設けられている。これにより、主燃焼室19から第1プレチャンバー孔241A~241Dを通って予備燃焼室26内に供給された混合気は、第1の干渉部材25Aに当たり易くなり、混合気の流れの向きが変更される。
第1の干渉部材25Aを形成する材料は、特に限定されないが、プレチャンバーキャップ24Aと同様の材料を用いて作製することができる。
上記のように構成された点火装置11Aでは、図4に示すように、レーザ装置21から出射されたレーザ光LBは、光学窓221を通って、予備燃焼室26内で集光する。主燃焼室19に供給された混合気は、主燃焼室19から第1プレチャンバー孔241A~241Dを通って、予備燃焼室26内に強制的に供給されると、レーザ光LBの集光点が点火点BPとなり、混合気中の燃料が燃焼する(予備燃焼)。燃料が予備燃焼することで、図4に示すように、点火フレア(点火炎)31が発生する。発生した点火炎31は、第1プレチャンバー孔241A~241Dを通って、主燃焼室19に噴射される。主燃焼室19に噴射した点火炎31が主燃焼室19の混合気中の燃料を点火して燃焼する(主燃焼)。また、点火炎31が第1プレチャンバー孔241A~241Dから主燃焼室19に噴出することで、主燃焼室19の着火エネルギーを増大させる。
このとき、図3に示すように、主燃焼室19から第1プレチャンバー孔241A~241Dを通って予備燃焼室26内に混合気が供給される。混合気が予備燃焼室26内に流入すると、図3に示すように、混合気は流れF1-1に沿って流れる。混合気は、第1の干渉部材25Aと衝突すると、混合気の流れの向きが変わり、流れF1-2となって、混合気は、光学窓221及び光学窓保持部材222を備える窓部材22側に向かって流れる。混合気が窓部材22に衝突すると、流れF1-3のように、混合気の流れは反転して、第1の干渉部材25Aに向かって流れる。混合気は、点火点BP及びその周辺において、流れF1-4のように、第1の干渉部材25Aに向かって流れる。予備燃焼室26の混合気は、点火点BPで予備燃焼した後、第1プレチャンバー孔241A~241D(図2参照)から点火炎31(図4参照)となって排出される。本実施形態では、点火点BP及びその周囲は、第1の干渉部材25Aの端面25aの混合気の境界層に入っているため、混合気の流速が低減し、安定した初期火炎の形成に有利になる。
混合気の流れが流れF1-1から流れF1-2に変わることで、点火点BPは第1プレチャンバー孔241A~241Dからの混合気の流れに晒されない。そのため、燃料が燃焼する初期の段階で安定して火炎を形成できる。
以上のように、点火装置11Aは、プレチャンバーキャップ24Aの内部の予備燃焼室26に、第1の干渉部材25Aを、プレチャンバーキャップ24Aの主燃焼室19側の前方内面24aから内側に向かって突出するように設けている。第1の干渉部材25Aは、第1プレチャンバー孔241A~241Dのそれぞれの軸線と交わるように、前方内面24aに設けられている。第1プレチャンバー孔241A~241Dは、第1プレチャンバー孔241A~241Dの軸線上の近くに点火点BPが存在するように設けられている。第1の干渉部材25Aが第1プレチャンバー孔241A~241Dの軸線と交わるように設けられることで、第1の干渉部材25Aは、第1プレチャンバー孔241A~241Dから予備燃焼室26内に流入する混合気の流れの向きを変更できる。その結果、点火点BP及びその周囲における混合気の流速を遅くできる。これにより、点火点BPにおいて安定して初期火炎を形成できるので、燃料の点火時に安定して燃料を点火させることができる。この結果、予備燃焼室26内で、レーザ光LBによる燃料の点火の安定性を高めることができる。また、点火点BP及びその周囲以外の混合気の流速を維持することができるので、第1プレチャンバー孔241A~241Dから点火炎31(図4参照)を主燃焼室19に均一に噴射できる。
点火装置11Aは、第1の干渉部材25Aを、第1の干渉部材25Aの端面25a付近に形成される境界層中に点火点が存在するように設けている。境界層中の混合気の流速は境界層外の流速よりも遅くできるので、点火点BP及びその周囲を流れる混合気の流速を遅くできる。これにより、点火点BP及びその周囲における混合気の流速を遅くできる。
点火装置11Aは、第1の干渉部材25Aを、第1プレチャンバー孔241A~241Dの軸線と交わるように設けている。これにより、第1プレチャンバー孔241A~241Dから供給される混合気は第1の干渉部材25Aに当たり易くなるため、点火点BP及びその周囲における混合気の流速を遅くできる。この結果、燃料の点火時に安定して燃料を点火させることができる。また、点火点BP及びその周囲以外の混合気の流速を維持することができるので、第1プレチャンバー孔241A~241Dから点火炎31(図4参照)は主燃焼室19に均一に噴射させ易くなる。
点火装置11Aは、第1の干渉部材25Aを、第1の干渉部材25Aを介して対向する第1プレチャンバー孔241Aと第1プレチャンバー孔241Cとを結ぶ直線、及び第1の干渉部材25Aを介して対向する第1プレチャンバー孔241Bと第1プレチャンバー孔241Dとを結ぶ直線に交わるように設けている。これにより、第1プレチャンバー孔241A~241Dから供給される混合気が第1の干渉部材25Aに当たり易くなる。この結果、点火点BP及びその周囲における混合気の流速を遅くできるので、燃料の点火時に安定して燃料を点火させることができる。また、点火点BP及びその周囲以外の混合気の流速を維持することができるので、第1プレチャンバー孔241A~241Dから点火炎31(図4参照)を主燃焼室19に均一に噴射し易くなる。さらに、第1の干渉部材25Aの設置数を最小限に抑えることができる。
点火装置11Aは、第1プレチャンバー孔241A~241Dを、図2に示すように、プレチャンバーキャップ24Aの内周面24bの半径Rの半分(1/2×R)よりも外側に配置している。これにより、点火点BP及びその周辺に第1の干渉部材25A側に向かう混合気の流れが形成されることで、初期火炎が窓部材22や内周面24bで冷却されることを防げるため、初期火炎を安定して形成できる。よって、点火装置11Aは、初期火炎が冷却されるのを低減できるため、着火の安定性を高めることができる。
従来のプレチャンバープラグを用いた点火装置の場合、プレチャンバーでは、エンジンの圧縮行程でプレチャンバーの内側とエンジンの主燃焼室を連通するプレチャンバー孔を通じて主燃焼室からプレチャンバー内側に向かって混合気が流入する。流入した混合気はプレチャンバー内の奥(図1に示すレーザ装置や火花点火プラグ側)へ向かって進むため、この流れによって初期火炎がプレチャンバーの奥に流される。プレチャンバーの奥側の壁面は一般にシリンダヘッドの冷却水により冷却されているため、温度が低い。一方、プレチャンバーヘッドの主燃焼室に突出している壁面はシリンダヘッドに接していないため、温度が高い。そのため、初期火炎がプレチャンバーの奥に流されて、プレチャンバーの奥側の壁面、又はレーザ装置や火花点火プラグの壁面に接触すると、プレチャンバー内で発生した初期火炎は冷却される可能性がある。特に火花点火プラグを用いる場合、中心電極と接地電極の間に発生した初期火炎が冷却されると、初期燃焼速度が低下して失火率が増大したり、初期燃焼速度にバラツキが生じて燃焼サイクルの変動が増大すると、着火が不安定性になる。特に、燃焼速度が遅い燃焼条件の場合に、着火が不安定性になりやすい傾向にある。このような燃焼速度が遅い燃焼条件として、例えば、ガスエンジンの場合、希薄燃焼(リーンバーン)の場合等がある。ガスエンジン以外のエンジンの場合、燃焼速度が遅い燃料種を用いる場合等がある。
これに対し、点火装置11Aは、上記の通り、第1プレチャンバー孔241A~241Dを、図2及び図3に示すように、プレチャンバーキャップ24Aの内周面24bの半径Rの半分(1/2×R)よりも外側に配置している。これにより、点火点BP及びその周辺に第1の干渉部材25A側に向かう混合気の流れが形成されるため、初期火炎が窓部材22側や内周面24bの奥側の面に流されることを防げる。窓部材22や内周面24bは一般にシリンダヘッド12(図1参照)の冷却水により冷却されているため、温度が低い。一方、プレチャンバーキャップ24Aはシリンダヘッド12(図1参照)に接していないため、温度が高い。点火装置11Aは、初期火炎が窓部材22側や内周面24bに流されることを防げるため、初期火炎が窓部材22側や内周面24bで冷却されることを抑制できる。よって、点火装置11Aは、プレチャンバーキャップ24A内に生じた初期火炎を保炎して、安定した初期火炎を形成できるため、着火の安定性を高めることができる。なお、燃焼速度が早い場合は、初期火炎が窓部材22へ流される前に火炎成長することができる。そのため、例えば、リーンバーンの場合、又は点火点BPやプレチャンバーキャップ24A内の混合気の乱流や流速が弱い場合等のように、燃焼速度が遅く、初期火炎が成長しにくい燃焼条件でも、安定して初期火炎を形成できる。
点火装置11Aは、第1プレチャンバー孔241A~241Dを、プレチャンバーキャップ24Aの内周面24bの周方向にほぼ等間隔に円状に設けている。第1プレチャンバー孔241A~241Dの軸線は主燃焼室19に対して均一に配置されるので、プレチャンバーキャップ24Aからの火炎噴射が主燃焼室19に対して均一な方向に行われる。これにより、主燃焼室19における火炎広がりは均一となり、主燃焼室19の燃焼速度を高めることができる。
点火装置11Aは、プレチャンバーキャップ24Aがシリンダヘッド12に接触する状態でシリンダヘッド12に挿入されている。これにより、点火装置11Aは、プレチャンバーキャップ24Aから容易に着脱できる。
エンジン10(図1参照)は、点火装置11Aを備えているので、安定して着火させることができるので、効率的に運転できる。これにより、エンジン10(図1参照)の性能を向上させることができる。
本実施形態では、本実施形態に係る点火装置11Aが内燃機関として燃焼ガスによってピストンを運動させる発電用のガスエンジンの点火装置に用いられる場合について説明したが、これに限定されるものではない。点火装置11Aは、例えば、ロータリーエンジン、自動車用のガソリンエンジン、ガスタービンエンジン、又はジェットエンジン等の燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成するものに用いることができる。また、点火装置11Aは、排熱を利用して動力、温熱、又は冷熱を取り出し、総合的にエネルギー効率を高めるシステムであるコジェネレーションに用いることもできる。
なお、本実施形態では、第1の干渉部材25Aは、円柱状に形成されているが、第1の干渉部材25Aの形状は、楕円柱、多面体、円筒、楕円筒、円錐、楕円錐、円錐台、楕円錐台又は球形等でもよい。この場合、第1の干渉部材25Aの点火点に最も近い部分は、面又は曲面とすることが好ましい。第1の干渉部材25Aの点火点に最も近い部分が、面又は曲面であれば、混合気の流れの向きを変更させる効果、境界層を用いた流速低減効果、及び、後述する、よどみ点による流速低減効果が得られやすい。
本実施形態では、第1プレチャンバー孔241A~241Dの軸線は、第1の干渉部材25Aと交わっているが、交わっていなくてもよい。
本実施形態では、プレチャンバーキャップ24Aの内周面24bに4つの第1プレチャンバー孔241A~241Dが設けられているが、内周面24bに設けられる第1プレチャンバー孔の数は、少なくとも2つ以上であればよい。
本実施形態では、第1プレチャンバー孔241A~241Dは、図2に示すように、全て同心円上に配置されているが、同心円上に配置されていなくてもよい。
本実施形態では、第1の干渉部材25Aは、プレチャンバーキャップ24Aの前方内面24aに溶接されてもよいし、プレチャンバーキャップ24Aと第1の干渉部材25Aを3Dプリンタ等で切削して前方内面24aに一体に形成してもよい。
本実施形態では、プレチャンバーキャップ24Aは、ハウジング23に接合されているが、例えば、窓部材22やシリンダヘッド12に接合されてもよい。
本実施形態では、第1の干渉部材25Aは、プレチャンバーキャップ24Aの前方内面24aに設けられているが、混合気の流速を低減させることができればよく、プレチャンバーキャップ24Aの内周面24bやハウジング23に設けてもよい。
本実施形態では、ハウジング23を、光学窓保持部材222と同一材料で形成する場合の他に、ハウジング23及びプレチャンバーキャップ24Aを光学窓保持部材222と同一材料で形成してもよい。
[第2の実施形態]
第2の実施形態に係る点火装置について、図面を参照して説明する。なお、上記実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。本実施形態に係る点火装置は、上記図2及び図3に示す第1の実施形態の点火装置11Aのプレチャンバーキャップ24Aの前方内面24aに、更にプレチャンバー孔を設けたこと以外は同様であるため、プレチャンバーキャップの構成についてのみ説明する。
図5は、第2の実施形態に係る点火装置を主燃焼室側から見た時のプレチャンバーキャップの構成を示す正面図であり、図6は、図5に示す2A-2A断面図であり、図7は、図5に示す2B-2B断面図である。図5~図7に示すように、点火装置11Bは、プレチャンバーキャップ24Bの前方内面24aに、第2プレチャンバー孔242A~242Dを有する。本実施形態では、プレチャンバーキャップ24Bの軸方向(Z軸方向)である前方内面24aに、プレチャンバー孔242A~242Dを、第2プレチャンバー孔という。
第2プレチャンバー孔242A~242Dは、図5に示すように、プレチャンバーキャップ24Bの端部をレーザ光の入射側に向かって見た時、前方内面24aに四角形状の4つの角に位置するように配置されている。
第2プレチャンバー孔242A~242Dは、図7に示すように、それぞれの軸線が点火装置11Bの長手方向の中心軸Jとほぼ並行に設けられている。第2プレチャンバー孔242A~242Dは、それぞれの軸線が点火点BPの近くにならないように設けられている。なお、図7では、第2プレチャンバー孔242B及び242Dの軸線のみを示すが、他の第2プレチャンバー孔242A及び242Cの軸線も第2プレチャンバー孔242B及び242Dの軸線と同様の傾きを示す。
第2プレチャンバー孔242A~242Dは、点火点BPと第2プレチャンバー孔242A~242Dのそれぞれの軸線までの距離が、プレチャンバーキャップ24Bの内径に対して、10%以上となるように設けられていることが好ましい。点火点BPと第2プレチャンバー孔242A~242Dのそれぞれの軸線までの距離が、プレチャンバーキャップ24Bの内径に対して、10%以上であれば、点火点BP及びその周囲を流れる混合気の流速をより効果的に低下させることができる。また、点火点BPと第2プレチャンバー孔242A~242Dのそれぞれの軸線までの距離が、プレチャンバーキャップ24Bの内径に対して、10%以上であれば、点火点BP及びその周囲以外の領域を流れる混合気の流速を早めることができる。
第2プレチャンバー孔242A~242Dは、図5に示すように、プレチャンバーの内周面24bの半径Rの半分(1/2×R)よりも外側に配置されている。
第1の干渉部材25Aは、図6及び図7に示すように、その軸方向が点火装置11Bの中心線と並行に前方内面24aに設けられており、第1の干渉部材25Aは、第2プレチャンバー孔242A~242Dの軸線と重ならないように設けられている。そのため、第2プレチャンバー孔242A~242Dから予備燃焼室26内に流入した混合気は、流れF2-1のように流れ、第1の干渉部材25Aに衝突しない。よって、第2プレチャンバー孔242A~242Dを通った混合気の流れは、ほとんど変更されない。
点火装置11Bでは、予備燃焼室26の混合気が点火点BPで予備燃焼すると、点火炎31(図4参照)が第1プレチャンバー孔241A~241Dからシリンダ13のボア方向(X軸方向)に噴射する。第2プレチャンバー孔242A~242Dからは、主にエンジン10(図1参照)の主燃焼室19のピストン軸方向(+Z軸方向)に点火炎31(図4参照)が噴射する。主燃焼室19に噴射した点火炎31(図4参照)が主燃焼室19の混合気中の燃料を点火して燃焼する(主燃焼)。また、点火炎31(図4参照)が第1プレチャンバー孔241A~241Dの他に、さらに第2プレチャンバー孔242A~242Dから主燃焼室19に噴出することで、主燃焼室19の着火エネルギーをさらに増大させる。
このとき、主燃焼室19から第1プレチャンバー孔241A~241Dを通って予備燃焼室26内に混合気が供給される。プレチャンバーキャップ24B内における混合気の流れF1-1~F1-4は、上記の第1の実施形態と同様であるため、説明は省略する。
図7に示すように、主燃焼室19からさらに第2プレチャンバー孔242A~242Dを通って予備燃焼室26内に混合気が供給される。混合気が予備燃焼室26内に流入すると、混合気は流れF2-1のように、内周面24bに沿って窓部材22に向かって流れる。混合気が内周面24bに沿って流れるのは、混合気の粘性の特徴等から、混合気の流れが壁に引き寄せられるコアンダ効果による。
混合気が窓部材22に衝突すると、流れF2-2のように、混合気の流れは反転して、第1の干渉部材25Aに向かって流れる。混合気は、点火点BP及びその周辺において、流れF2-3のように、第1の干渉部材25Aに向かって流れる。予備燃焼室26の混合気は、点火点BPで予備燃焼した後、第2プレチャンバー孔242A~242D(図5参照)から点火炎31(図4参照)となって排出される。本実施形態では、点火点BP及びその周囲は、第1の干渉部材25Aの端面25aの混合気の境界層に入っているため、混合気の流速が低減し、安定した初期火炎の形成に有利になる。
第2プレチャンバー孔242A~242D(図5参照)を通って予備燃焼室26内に供給された混合気は、流れF2-1のように、内周面24bに沿って窓部材22に向かって流れる。そのため、点火点BPは第2プレチャンバー孔242A~242Dからの混合気の流れに晒されない。よって、燃料が燃焼する初期の段階で安定して火炎を形成できる。
点火装置11Bは、第2プレチャンバー孔242A~242Dの軸線が第1の干渉部材25Aと交わらないように、複数の第2プレチャンバー孔242A~242Dを前方内面24aに有している。これにより、点火点BP及びその周囲の混合気の流速は低減させつつ、予備燃焼室26内の点火点BPの周囲以外の領域を流れる混合気の流速を早めることができる。点火点BP及びその周囲で安定して着火した火炎が点火点BPの周囲以外の領域に到達すると、点火点BPの周囲以外の領域は、混合気の流速が早いため、予備燃焼室26内に火炎がより早く広がる。予備燃焼室26内で火炎がより早く広がることで、予備燃焼室26の混合気は第2プレチャンバー孔242A~242Dから主燃焼室19により強く噴射できるため、主燃焼室19における混合気中の燃料の燃焼をより早めることができる。
点火装置11Bは、上記の第1の実施形態に係る点火装置11Aと同様、第1の干渉部材25Aを、第1プレチャンバー孔241A~241Dの軸線と交わるように設けている。これにより、点火装置11Bは、燃料の点火時に安定して燃料を点火させることができると共に、第1プレチャンバー孔241A~241Dから点火炎31(図4参照)を主燃焼室19に均一に容易に噴射させることができる。
点火装置11Bは、前方内面24aに、第2プレチャンバー孔242A~242Dを四角形状の4つの角に位置するように設けているので、予備燃焼室26の混合気を第2プレチャンバー孔242A~242Dから主燃焼室19に向かってほぼ均一に噴射できる。これにより、主燃焼室19の燃焼をより均一で早くすることができる。
点火装置11Bは、第2プレチャンバー孔242A~242Dの数は、第1プレチャンバー孔241A~241Dの数と同じにしている。第1プレチャンバー孔241A~241Dは、孔の向きをシリンダ13のボア方向(X軸方向)としている。第2プレチャンバー孔242A~242Dは、孔の向きをピストン14の往復運動の方向(Z軸方向)としている。燃焼が行われる上死点付近の主燃焼室19は円盤状で、ボア方向(X軸方向)が広い形となる。第2プレチャンバー孔242A~242Dの数を第1プレチャンバー孔241A~241Dの数以下とし、ボア方向(X軸方向)のプレチャンバー孔の数をピストン14の往復運動の方向(Z軸方向)のプレチャンバー孔の数以上とする。これにより、主燃焼室19に第2プレチャンバー孔242A~242Dからより均一に点火炎31(図4参照)は噴射し易くなる。この結果、主燃焼室19内において火炎を均一に広げることができ、主燃焼室19の燃焼速度を早めることができる。
点火装置11Bは、第1プレチャンバー孔241A~241Dの軸線と第2プレチャンバー孔242A~242Dの軸線とが交差しないように、プレチャンバーキャップ24Bに設けられている。これにより、主燃焼室19内に点火炎31(図4参照)を均一に広げることができるので、主燃焼室19の燃焼速度を早めることができる。
点火装置11Bは、第2プレチャンバー孔242A~242Dを、図5に示すように、プレチャンバーキャップ24Bの内周面24bの半径Rの半分(1/2×R)よりも外側に配置している。これにより、点火点BP及びその周辺に第1の干渉部材25A側に向かう混合気の流れが形成されることで、初期火炎が窓部材22や内周面24bに流されることを防げるため、初期火炎が窓部材22や内周面24bで冷却されることを防ぐことができる。初期火炎を保炎することで、安定した初期火炎を形成できるため、着火の安定性を高めることができる。点火装置11Bは、例えば、リーンバーンの場合、又は点火点BPやプレチャンバーキャップ24B内の混合気の乱流や流速が弱い場合等のように、特に、燃焼速度が遅く、初期火炎が成長しにくい燃焼条件でも、安定して初期火炎を形成できる。
点火装置11Bは、点火装置11Bを、点火装置11Bの中心軸Jに垂直な平面に投影したとき、第1プレチャンバー孔241A~241D及び第2プレチャンバー孔242A~242Dと中心軸とを結ぶ線分は中心軸のみで交わり、いずれの線分も重ならないように配置している。すなわち、投影面で、第1プレチャンバー孔241A~241Dと第2プレチャンバー孔242A~242Dとが円周方向で千鳥状となるように配置されている。主燃焼室19に対して第1プレチャンバー孔241A~241D及び第2プレチャンバー孔242A~242Dの軸線が均一となるように配置される。これにより、主燃焼室19内において火炎を均一に広げることができるので、主燃焼室19の燃焼速度をさらに早めることができる。
なお、本実施形態では、第2プレチャンバー孔242A~242Dは、第1プレチャンバー孔241A~241Dと同様に、4つにしているが、これに限定されるものではなく、2つ以上でもよい。本実施形態では、第2プレチャンバー孔242A~242Dの数は、第1プレチャンバー孔241A~241Dの数以下であることが好ましい。一般に、エンジン10(図1参照)の上死点における主燃焼室19の形状は平たい円盤状であり、シリンダ13のボア方向(X軸方向)の長さは、シリンダ13のピストン14の往復運動の方向(Z軸方向)の長さよりも長い。そのため、予備燃焼室26内の燃料をボア方向(X軸方向)に噴射する第2プレチャンバー孔242A~242Dの数を、予備燃焼室26内の燃料をピストン軸方向(Z軸方向)に噴射する第2プレチャンバー孔242A~242Dの数以上とすれば、主燃焼室19内において点火炎31(図4参照)を均一に広げることができる。
本実施形態では、第2プレチャンバー孔242A~242Dは、点火装置11Aの軸方向視において、プレチャンバーの内周面24bの半径Rの半分(1/2×R)よりも内側に配置されないように設置されてもよいし、半径Rの半分(1/2×R)と交わるように設置されてもよい。
本実施形態では、点火装置11Bの軸線と4つの第2プレチャンバー孔242A~242Dの軸線との成す角度はすべて同じであるが、異なっていてもよい。
本実施形態では、第2プレチャンバー孔242A~242Dは、図2に示すように、全て同心円上に配置されているが、同心円上に配置されていなくてもよい。
[第3の実施形態]
第3の実施形態による点火装置について、図面を参照して説明する。なお、上記実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。本実施形態に係る点火装置は、上記図5~図7に示す第2の実施形態の点火装置11Bの第1の干渉部材25Aの大きさ、及び第2プレチャンバー孔242A~242Dの向きを変更したこと以外は同様である。そのため、プレチャンバーキャップ24Cの構成についてのみ説明する。
図8は、第3の実施形態に係る点火装置を主燃焼室側から見た時のプレチャンバーキャップの構成を示す正面図であり、図9は、図8に示す3A-3A断面図であり、図10は、図8に示す3B-3B断面図である。図8~図10に示すように、点火装置11Cは、上記図5~図7に示す第2の実施形態の点火装置11Bの第1の干渉部材25Aに代えて、第1の干渉部材25Bを有するものである。そして、プレチャンバーキャップ24Cの第2プレチャンバー孔242A~242Dは、第1プレチャンバー孔241A~241Dの軸線と第2プレチャンバー孔242A~242Dの軸線とが交差しないように、前方内面24aに設けられている。
第1の干渉部材25Bの軸方向に対して直交する方向から見た時の、第1の干渉部材25Bの直径は、上記図5~図7に示す第2の実施形態の点火装置11Bの第1の干渉部材25Aの直径よりも大きく形成されている。第1の干渉部材25Bの直径は、プレチャンバーキャップ24Cの半径Rに対して、25%以上であることが好ましく、40%~80%の範囲内であることがより好ましい。
第1プレチャンバー孔241A~241Dは、図9に示すように、その軸線が第1の干渉部材25Bと交わるようにプレチャンバーキャップ24Cの内周面24bに設けられている。なお、図9では、第1プレチャンバー孔241B及び241Dの軸線のみを示すが、他の第1プレチャンバー孔241A及び241Cの軸線も第1プレチャンバー孔241B及び241Dの軸線と同様の傾きを示す。
第2プレチャンバー孔242A~242Dは、図10に示すように、その軸線が点火装置11Cの長手方向の中心軸Jと交わるように、プレチャンバーキャップ24Cの前方内面24aに設けられている。なお、図10では、第2プレチャンバー孔242B及び242Dの軸線のみを示すが、他の第2プレチャンバー孔242A及び242Cの軸線も第2プレチャンバー孔242B及び242Dの軸線と同様の傾きを示す。
点火装置11Bの中心軸Jに対して第2プレチャンバー孔242A~242Dの軸線の成す角度α1(図9参照)は、点火装置11Bの中心軸Jに対して第1プレチャンバー孔241A~241Dの軸線の成す角度β1(図10参照)よりも大きくなるように設計されている。なお、角度α1は、点火装置11Bの中心軸Jに対して第2プレチャンバー孔242A~242Dの軸線の成す角度αの一例であり、角度β1は、点火装置11Bの中心軸Jに対して第1プレチャンバー孔241A~241Dの軸線の成す角度βの一例である。
本実施形態では、第1プレチャンバー孔241A~241Dは、レーザ装置21の長手方向(Z軸方向)の中心軸Jと第1プレチャンバー孔241A~241Dの軸線とのなす角度α1が45°以上となるように設けられている。さらに、第2プレチャンバー孔242A~242Dは、レーザ装置21の中心軸Jと第2プレチャンバー孔242A~242Dの軸線とのなす角度β1が45°未満となるように設けられている。角度α1及び角度β1が、それぞれ上記範囲内であれば、点火炎31が主燃焼室19内に向かって均一に噴射されるため、主燃焼室19内において火炎を均一に広げることができる。角度α1は、50°以上が好ましく、55°以上がより好ましい。角度β1は、40°以下が好ましく、35°以下がより好ましい。
第2プレチャンバー孔242A~242Dは、上記の点火装置11Aの第1プレチャンバー孔241A~241Dと同様、第2プレチャンバー孔242A~242Dから流入する混合気が点火点BP及びその周辺に第1の干渉部材25Bに向かうように配置することが好ましい。第2プレチャンバー孔242A~242Dは、図8に示すように、プレチャンバーの内周面24bの半径Rの半分(1/2×R)よりも外側に配置されている。
点火装置11Cでは、第1プレチャンバー孔241A~241D及び第2プレチャンバー孔242A~242Dから主燃焼室19内に噴射した点火炎31(図4参照)が主燃焼室19の混合気中の燃料を点火して燃焼する(主燃焼)。主燃焼室19から第1プレチャンバー孔241A~241D及び第2プレチャンバー孔242A~242Dを通って予備燃焼室26内に混合気が供給される。
このとき、主燃焼室19から第1プレチャンバー孔241A~241D(図8参照)を通って予備燃焼室26内に混合気が供給される。図9に示すように、第1プレチャンバー孔241A~241Dを通過した混合気は、流れF3-1のように、予備燃焼室26内を第1の干渉部材25B側に向かって流れる。混合気は第1の干渉部材25Aに衝突すると、混合気の流れの向きが変わり、混合気は、流れF3-2のように、窓部材22に向かって流れ、窓部材22に衝突する。
混合気は窓部材22に衝突すると、流れF3-3のように、混合気の流れは反転して、窓部材22から第1の干渉部材25Bの端面25aに向かって流れる。混合気は、点火点BP及びその周辺において、流れF3-3のように、第1の干渉部材25Bに向かって流れる。混合気は、第1の干渉部材25Bと衝突することで、混合気と第1の干渉部材25Bとの衝突点付近に混合気のよどみ点が生じる。よどみ点とは、混合気の流れが第1の干渉部材25Bと衝突して生じた、流速がゼロ付近となる点という。本実施形態では、第1の干渉部材25Bの端面25aの前方付近によどみ点が形成されている。
また、図10に示すように、第2プレチャンバー孔242A~242D(図8参照)を通って予備燃焼室26内に供給された混合気は、流れF4-1のように、予備燃焼室26内を第1の干渉部材25Bの側面に向かって流れる。そして、混合気は第1の干渉部材25Bに衝突すると、混合気の流れの向きが変わり、混合気は、流れF4-2のように、窓部材22に向かって流れ、窓部材22に衝突する。
混合気が窓部材22に衝突すると、流れF4-3のように、混合気の流れが反転して、第1の干渉部材25Bに向かって流れる。混合気は、点火点BP及びその周辺において、流れF4-4のように、第1の干渉部材25Bに向かって流れる。
点火装置11Cは、上記の通り、第1の干渉部材25Bを、第1プレチャンバー孔241A~241Dの軸線と交わるようにプレチャンバーキャップ24Cの内周面24bに設けている。そして、第1の干渉部材25Bの端面25aを、予備燃焼室26内に供給された混合気が第1の干渉部材25Bの端面25aに衝突した際に形成されるよどみ点の近傍に点火点BPが存在するように設けている。よどみ点付近では混合気の流速が遅くなるので、点火点BPの周囲の混合気の流速を遅くできる。これにより、点火点BPにおいて安定して初期火炎を形成できる。
また、第1の干渉部材25Bは、上記の通り、第1プレチャンバー孔241A~241Dの軸線と交わるようにプレチャンバーキャップ24Cの内周面24bに設ける。これにより、点火点BPで生じた点火炎31(図4参照)の拡散が、第1の干渉部材25Bで防がれることを低減できる。よって、予備燃焼室26内で予備燃焼して生じた点火炎31(図4参照)を第1プレチャンバー孔241A~241Dからより均一の強さで噴射できる。
点火装置11Cは、第2プレチャンバー孔242A~242Dを、その軸線が点火装置11Cの中心軸Jと交わるようにプレチャンバーキャップ24Cの前方内面24aに設けている。これにより、第2プレチャンバー孔242A~242Dの軸線は、点火点BPから第2プレチャンバー孔242A~242Dへ向かう火炎の進行経路とほぼ同じとなる。そのため、点火点BPで生じた点火炎31(図4参照)は、第2プレチャンバー孔242A~242Dからより均一の強さで噴射できる。
よって、点火装置11Cは、第1プレチャンバー孔241A~241D及び第2プレチャンバー孔242A~242Dから噴射される点火炎31(図4参照)の強さをより均一にできるので、主燃焼室19における混合気中の燃料の燃焼をより早めることができる。
また、点火装置11Cは、点火装置11Cの中心軸Jと第2プレチャンバー孔242A~242Dの軸線とのなす角度β1が45°未満となるように設けられている。第2プレチャンバー孔242A~242Dから流入した混合気は、コアンダ効果によりプレチャンバーの内周面34bのように窓部材22へ向かって流れることができる。そのため、点火点BPに主燃焼室19側へ向かう流れが確実に発生し、安定して着火させることができる。
また、点火装置11Cは、上記の点火装置11A及び11Bと同様、第1プレチャンバー孔241A~241D及び第2プレチャンバー孔242A~242Dを、図8に示すように、プレチャンバーキャップ24Cの内周面24bの半径Rの半分(1/2×R)よりも外側に配置している。これにより、点火点BP及びその周辺に第1の干渉部材25B側に向かう混合気の流れが形成されることで、初期火炎が窓部材22や内周面24bに流されることを防げるため、初期火炎が窓部材22や内周面24bで冷却されることを防ぐことができる。初期火炎を保炎することで、安定した初期火炎を形成できるため、着火の安定性を高めることができる。点火装置11Cは、上記の点火装置11A及び11Bと同様、例えば、リーンバーンの場合、又は点火点BPやプレチャンバーキャップ24C内の混合気の乱流や流速が弱い場合等のように、特に、燃焼速度が遅く、初期火炎が成長しにくい燃焼条件でも、安定して初期火炎を形成できる。
点火装置11Cは、第2プレチャンバー孔242A~242Dを、その軸線が点火装置11Cの中心軸Jと交わるようにプレチャンバーキャップ24Cに設けている。これにより、第2プレチャンバー孔242A~242Dを通って予備燃焼室26内に供給された混合気は、流れF4-2のように、第1の干渉部材25Bの側面から窓部材22に向かって流れる。そのため、点火点BPは第2プレチャンバー孔242A~242Dからの混合気の流れに晒されない。よって、燃料が燃焼する初期の段階で安定して火炎を形成できる。
点火装置11Cは、第1プレチャンバー孔241A~241Dの軸線と点火装置11Cの中心軸Jとのなす角度を角度α1は、第2プレチャンバー孔242A~242Dの軸線と点火装置11Cの中心軸Jとのなす角度を角度βよりも大きくしている。すなわち、第1プレチャンバー孔241A~241Dの軸線と点火装置11Cの中心軸Jとのなす角度を角度α1とし、第2プレチャンバー孔242A~242Dの軸線と点火装置11Cの中心軸Jとのなす角度を角度βとしたとき、角度α1>角度βの関係が成り立つ。角度α1を角度βよりも大きくすることで、第1プレチャンバー孔241A~241Dから点火炎31(図4参照)を主燃焼室19内のボア方向(X軸方向)に噴射させることができる。また、第1プレチャンバー孔241A~241Dから点火炎31(図4参照)をピストン14側に均一に容易に噴射させることができる。
なお、本実施形態では、第2プレチャンバー孔242A~242Dの軸線の角度は、第2プレチャンバー孔242A~242Dから流入する混合気がコアンダ効果により、内周面24bに沿って流れることができる角度であればよい。
本実施形態では、レーザ装置21の長手方向(Z軸方向)の中心線とそれぞれの第1プレチャンバー孔241A~241Dの軸線との成す角度α1は、全て同じであるが、異なっていてもよい。
本実施形態では、レーザ装置21の長手方向(Z軸方向)の中心線とそれぞれの第2プレチャンバー孔242A~242Dの軸線とのなす角度β1は、全て同じであるが、異なっていてもよい。
本実施形態では、第1プレチャンバー孔241A~241D及び第2プレチャンバー孔242A~242Dは、第1プレチャンバー孔241A~241Dの軸線と第2プレチャンバー孔242A~242Dの軸線とは交差していてもよい。
本実施形態では、第1の干渉部材25Aをプレチャンバーキャップ24Cの前方内面24aに設ける代わりに、プレチャンバーキャップ24Cの形状を変形して、混合気の流速を低減できるように形成してもよい。
[第4の実施形態]
第4の実施形態による点火装置について、図面を参照して説明する。なお、上記実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。本実施形態に係る点火装置は、上記図8~図10に示す第3の実施形態の点火装置11Cの第1の干渉部材25Bの構成と、第1プレチャンバー孔241A~241Dの数を変更したこと以外は同様である。そのため、本実施形態では、プレチャンバーキャップの構成についてのみ説明する。
図11は、第4の実施形態に係る点火装置を主燃焼室側から見た時のプレチャンバーキャップの構成を示す正面図であり、図12は、図11に示す4A-4A断面図であり、図13は、図11に示す4B-4B断面図である。図11~図13に示すように、点火装置11Dは、上記図8~図10に示す第3の実施形態の点火装置11Cの第1の干渉部材25Bを第1の干渉部材25Dに変更したものである。そして、点火装置11Dは、第2プレチャンバー孔242A~242Dを備えるプレチャンバーキャップ24Aを第2プレチャンバー孔242A'及び242B'を備えるプレチャンバーキャップ24Dに変更したものである。
プレチャンバーキャップ24Dの第2プレチャンバー孔242A'及び242B'は、第1プレチャンバー孔241A~241Dの軸線と第2プレチャンバー孔242A'及び242B'の軸線とが交差しないように、前方内面24aに設けられている。
第1の干渉部材25Dは、図12に示すように、軸方向(Z軸方向)に対して直交する方向から見た時、台形状に形成されている。第1の干渉部材25Dは、レーザ装置21に対向する面の長さの方が、プレチャンバーキャップ24Cの前方内面24aと接する面の長さよりも長くなるように設計されている。
第1プレチャンバー孔241A~241Dと、第2プレチャンバー孔242A'及び242B'とは、上述の通り、プレチャンバーキャップ24Dの前方内面24a及び内周面24bに設けられている。このとき、図12及び図13に示すように、点火装置11Cの中心軸Jと第1プレチャンバー孔241A~241Dの軸線とのなす角度α2が、点火装置11Cの中心軸Jと第2プレチャンバー孔242A'及び242B'の軸線とのなす角度β2よりも大きくする。なお、角度α2は、点火装置11Bの中心軸Jに対して第2プレチャンバー孔242A~242Dの軸線の成す角度αの一例であり、角度β2は、点火装置11Cの中心軸Jと第2プレチャンバー孔242A'及び242B'の軸線とのなす角度βの一例である。
角度α2が大きいと、燃焼炎が第1の干渉部材25Dで遮られることを低減できるので、予備燃焼室26内に生じた点火炎31(図4参照)を第1プレチャンバー孔241A~241Dから主燃焼室19のボア方向(X軸方向)に安定して噴射できる。また、角度β2の角度が小さければ、予備燃焼室26内に生じた点火炎31(図4参照)は、第2プレチャンバー孔242A'及び242B'から噴出し易くなる。そのため、第2プレチャンバー孔242A'及び242B'から主燃焼室19のピストン14(図1参照)の往復運動方向に点火炎31(図4参照)を安定して噴射できる。
本実施形態では、第1プレチャンバー孔241A~241Dは、第1プレチャンバー孔241A~241Dの軸線とレーザ装置21の長手方向(Z軸方向)の中心線の主燃焼室19側とのなす角度α2(図12参照)が45°以上となるように設けられている。第2プレチャンバー孔242A'及び242B'の軸線と点火装置11Cの中心軸Jの主燃焼室19側とのなす角度β2(図13参照)が45°未満となるように設けられている。角度α2及び角度β2が、それぞれ上記範囲内であれば、光学窓保持部材222とプレチャンバーキャップ24Dの接合部に向かう流れが生じるため、プレチャンバーキャップ24D内の広い範囲で混合気の流速を早めることができる。そのため、点火点BP及びその周囲以外の領域を流れる混合気の流速を早めることができる。角度α1は、50°以上が好ましく、55°以上がより好ましい。角度β1は、40°以下が好ましく、35°以下がより好ましい。
また、第2プレチャンバー孔242A'及び242B'の軸線は、予備燃焼室26内の光学窓保持部材222とプレチャンバーキャップ24Dの側面との近くを向いている。予備燃焼室26内に供給される混合気は、第2プレチャンバー孔242A'及び242B'を通過した直後に第1の干渉部材25Dで流れの向きが変えられるわけではない。そのため、上記の第3実施形態のように、混合気が第2プレチャンバー孔242A~242Dを通過した直後に第1の干渉部材25Bで流れの向きが変更される場合に比べて、予備燃焼室26内を循環する混合気の流速は早くなる。これにより、予備燃焼室26内の火炎の広がりはより早くなる。
点火装置11Dでは、第1プレチャンバー孔241A~241Dと、第2プレチャンバー孔242A'及び242B'とから主燃焼室19内に噴射した点火炎31(図4参照)が主燃焼室19の混合気中の燃料を点火して燃焼する(主燃焼)。主燃焼室19から第1プレチャンバー孔241A~241D及び第2プレチャンバー孔242A~242Dを通って予備燃焼室26内に混合気が供給される。
このとき、主燃焼室19から第1プレチャンバー孔241A~241Dを通って予備燃焼室26内に混合気が供給される。図12に示すように、第1プレチャンバー孔241A~241Dを通過した混合気は、流れF5-1のように、予備燃焼室26内を第1の干渉部材25D側に向かって流れる。混合気は第1の干渉部材25Dに衝突すると、混合気の流れの向きが変わり、混合気は、流れF5-2のように、窓部材22に向かって流れ、窓部材22に衝突する。
混合気は窓部材22に衝突すると、混合気の流れは反転して、混合気は、流れF5-3のように、窓部材22から第1の干渉部材25Bの端面25aに向かって流れる。混合気は、点火点BP及びその周辺において、流れF5-4のように、第1の干渉部材25Dに向かって流れる。混合気は、第1の干渉部材25Dと衝突することで、混合気と第1の干渉部材25Bとの衝突点付近に混合気のよどみ点が生じる。
また、第2プレチャンバー孔242A'及び242B'を通って予備燃焼室26内に供給された混合気は、流れF6-1のように、予備燃焼室26内を内周面24bに向かって流れる。そして、混合気は窓部材22に衝突すると、流れF6-2のように、混合気の流れが反転して、第1の干渉部材25Dの端面25aに向かって流れる。混合気は、点火点BP及びその周辺において、流れF6-3のように、第1の干渉部材25Dに向かって流れる。
予備燃焼室26の混合気が点火点BPで予備燃焼すると、点火炎31(図4参照)が第1プレチャンバー孔241A~241Dからシリンダ13のボア方向(X軸方向)に噴射する。第2プレチャンバー孔242A'及び242B'からは、主にエンジン10(図1参照)の主燃焼室19のピストン軸方向(+Z軸方向)に点火炎31(図4参照)が噴射する。
点火装置11Dは、上記の通り、第1の干渉部材25Dと、第2プレチャンバー孔242A'及び242B'とを備えることで、予備燃焼室26内を循環する混合気の流速を早くすることができる。これにより、第2プレチャンバー孔242A'及び242B'から噴射される点火炎31(図4参照)の強さをより大きくすることができるため、主燃焼室19における混合気中の燃料の燃焼をより早めることができる。
また、点火装置11Dは、前方内面24aに設ける点火炎31(図4参照)の噴射孔を、2つの第2プレチャンバー孔242A'及び242B'のみとしている。プレチャンバーキャップ24Dに設ける点火炎31(図4参照)の噴射孔の数を少なくすることで、予備燃焼室26内に生じる点火炎31(図4参照)を第2プレチャンバー孔242A'及び242B'から主燃焼室19内により均一に噴射させることができる。また、点火炎31(図4参照)を第2プレチャンバー孔242A'及び242B'から主燃焼室19内により強力に噴射させることができる。これにより、主燃焼室19における燃焼効果をより高めることができる。
なお、本実施形態では、第1プレチャンバー孔241A~241Dと、第2プレチャンバー孔242A'及び242B'は、第1プレチャンバー孔241A~241Dの軸線と第2プレチャンバー孔242A'及び242B'の軸線とが交差するように設けられてもよい。
[第5の実施形態]
第5の実施形態による点火装置について、図面を参照して説明する。なお、上記実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。本実施形態に係る点火装置は、上記図8~図10に示す第3の実施形態の点火装置11Cの第1の干渉部材25Bに、前方内面から窓部材にかけて矩形状に形成された側板部を設けたものである。そのため、本実施形態では、側板部の構成についてのみ説明する。
図14は、第5の実施形態に係る点火装置を主燃焼室側から見た時のプレチャンバーキャップの構成を示す正面図であり、図15は、図14に示す5A-5A断面図であり、図16は、図14に示す5B-5B断面図であり、図17は、図14に示す5C-5C断面図である。図14及び図15に示すように、点火装置11Eは、上記図8~図10に示す第3の実施形態の点火装置11Cの第1の干渉部材25Bの外周に、矩形状に形成された側板部251A~251Dを備えたものである。
側板部251A~251Dは、プレチャンバーキャップ24Cの前方内面24aから窓部材22にかけて設けられている。側板部251A~251Dは、第1の干渉部材25Bの周方向に設けられている。側板部251Aと側板部251Cとは、第1の干渉部材25Bを介して対向するように第1の干渉部材25Bに設けられている。側板部251Bと側板部251Dとは、第1の干渉部材25Bを介して対向するように第1の干渉部材25Bに設けられている。
側板部251A~251Dは、第1の干渉部材25Bと同一の材料を用いて形成することができるが、異なる材料を用いてもよい。
側板部251A~251Dは、第1の干渉部材25Bに公知の接合方法を用いて接合することができ、第1の干渉部材25Bにロウ材用いて接合してもよいし、溶接して接合するようにしてもよい。
点火装置11Eでは、第1プレチャンバー孔241A~241D及び第2プレチャンバー孔242A~242Dから主燃焼室19内に噴射した点火炎31(図4参照)が主燃焼室19の混合気中の燃料を点火して燃焼する(主燃焼)。主燃焼室19から第1プレチャンバー孔241A~241D及び第2プレチャンバー孔242A~242Dを通って予備燃焼室26内に混合気が供給される。
このとき、主燃焼室19から第1プレチャンバー孔241A~241Dを通って予備燃焼室26内に混合気が供給される。図16に示すように、第1プレチャンバー孔241A~241Dを通過した混合気の流れF3-1~F3-3は、上記の図8~図10に示す第3の実施形態に係る点火装置11Cの場合と同様であるため、説明は省略する。
第2プレチャンバー孔242A~242Dを通過した混合気の流れF4-1~F4-3も、図17に示すように、上記の図8~図10に示す第3の実施形態に係る点火装置11Cの場合と同様であるため、説明は省略する。
点火装置11Eは、第1の干渉部材25Bに側板部251A~251Dを備えることにより、燃焼時に第1の干渉部材25Bに加わる熱をプレチャンバーキャップ24Cに伝えることができるので、第1の干渉部材25Bの温度を下げることができる。そのため、第1の干渉部材25Bが過度に過熱されることを抑えることができるので、プレチャンバーキャップ24Cの損傷を抑制できる。
[第6の実施形態]
第6の実施形態による点火装置について、図面を参照して説明する。なお、上記実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。本実施形態に係る点火装置は、上記図8~図10に示す第3の実施形態の点火装置11Cのプレチャンバーキャップ24Cの前方内面24aに設けた第2プレチャンバー孔の数を2つに変更したものである。そして、第1の干渉部材25Bの外周の一部に、前方内面24aから内周面24bにかけて他の第1の干渉部材をさらに設け、複数の第1の干渉部材を設けたものである。そのため、本実施形態では、他の第1の干渉部材の構成についてのみ説明する。
図18は、第6の実施形態に係る点火装置を主燃焼室側から見た時のプレチャンバーキャップの構成を示す正面図であり、図19は、図18に示す6A-6A断面図であり、図20は、図19に示す6B-6B断面図である。図18~図20に示すように、点火装置11Fは、上記図8~図10に示す第3の実施形態の点火装置11Cのプレチャンバーキャップ24Cを、前方内面24aに2つの第2プレチャンバー孔242A及び242Bを備えるプレチャンバーキャップ24Eに変更したものである。そして、点火装置11Fは、プレチャンバーキャップ24Eの前方内面24aから内周面24bにかけて第1の干渉部材25Dを備える。
2つの第2プレチャンバー孔242A及び242Bは、プレチャンバーキャップ24Eの前方内面24aに、軸方向(Z軸方向)視において、第1の干渉部材25Bを介して対向するように設けられている。
第1の干渉部材25Dは、図19及び図20に示すように、第1の干渉部材25Bの外周の一部に第1の干渉部材25Bを介して一対設けられている。一対の第1の干渉部材25Dは、図19に示すように、プレチャンバーキャップ24Eの前方内面24aから内周面24bにかけて、前方内面24aと内周面24bと第1の干渉部材25Bとを連結するように設けられている。
本実施形態では、第1の干渉部材25Dは、図20に示すように、軸方向視において扇型に形成されている。第1の干渉部材25Dの、前方内面24aと内周面24bとに接する面は前方内面24aと内周面24bに対応するように湾曲して形成されている。
第1の干渉部材25Dは、図19に示すように、第1の干渉部材25Bの軸方向(Z軸方向)と直交する方向から見た時、第1の干渉部材25Bの外周に軸方向に沿って、内周面24b及び第1の干渉部材25Bと接するように形成されている。そして、第1の干渉部材25Dは、第1の干渉部材25Bの側面から窓部材22側にかけて内周面271が拡径するように形成されている。
第1の干渉部材25Dは、第1の干渉部材25Bと同様の材料を用いて製造できる。
第1の干渉部材25Dは、第1の干渉部材25Bに公知の接合方法を用いて接合することができ、第1の干渉部材25Bにロウ材用いて接合してもよいし、溶接して接合するようにしてもよい。
点火装置11Fでは、第1プレチャンバー孔241A~241Dと、第2プレチャンバー孔242A及び242Bとから主燃焼室19内に噴射した点火炎31(図4参照)が主燃焼室19の混合気中の燃料を点火して燃焼する(主燃焼)。図21は、図18に示す6C-6C断面図であり、図22は、図18に示す6D-6D断面図である。図21に示すように、主燃焼室19から第1プレチャンバー孔241A~241Dを通って予備燃焼室26内に混合気が供給され、図22に示すように、第2プレチャンバー孔242A及び242Bを通って予備燃焼室26内に混合気が供給される。
このとき、主燃焼室19から第1プレチャンバー孔241A~241Dを通って予備燃焼室26内に混合気が供給される。図21に示すように、第1プレチャンバー孔241A~241Dを通過した混合気は、流れF5-1のように、予備燃焼室26内を第1の干渉部材25B及び25C側に向かって流れる。混合気は第1の干渉部材25B及び25Cに衝突すると、混合気の流れの向きが変わり、混合気は、流れF5-2のように、窓部材22側に向かって流れ、窓部材22に衝突する。なお、図21では、第1プレチャンバー孔241A及び241Cから流入する混合気の流れのみを示すが、他の第1プレチャンバー孔241B及び241Dから流入する混合気の流れも第1プレチャンバー孔241A及び241Cから流入する混合気の流れと同様の流れを示す。
混合気は窓部材22に衝突すると、混合気の流れは反転して、混合気は、流れF5-2のように、窓部材22側から第1の干渉部材25Dに沿いつつ、第1の干渉部材25Bの端面25aに向かって流れる。混合気は、点火点BP及びその周辺において、流れF5-3のように、第1の干渉部材25Bに向かって流れる。混合気は、第1の干渉部材25Bと衝突することで、上述の通り、混合気と第1の干渉部材25Bとの衝突点付近に混合気のよどみ点が生じる。
また、図22に示すように、第2プレチャンバー孔242A及び242Bを通って予備燃焼室26内に供給された混合気は、流れF6-1のように、予備燃焼室26内を第1の干渉部材25Bの側面に向かって流れる。そして、混合気は第1の干渉部材25Bに衝突すると、混合気の流れの向きが変わる。混合気は、流れF6-2のように、内周面24bと略並行に窓部材22側に向かって流れ、窓部材22に衝突する。
混合気が窓部材22に衝突すると、流れF6-3のように、混合気の流れが反転して、窓部材22側から第1の干渉部材25Bに向かって流れる。混合気は、点火点BP及びその周辺において、流れF6-4のように、第1の干渉部材25Bに向かって流れる。
点火装置11Fは、図21に示すように、第1の干渉部材25Bを、第1プレチャンバー孔241A~241Dの軸線と交わるようにプレチャンバーキャップ24Eの内周面24bに設けている。そして、第1の干渉部材25Dの端面25aを、予備燃焼室26内に供給された混合気が第1の干渉部材25Dの端面25aに衝突した際に形成されるよどみ点の近傍に点火点BPが存在するように設けている。よどみ点付近では混合気の流速が遅くなるので、点火点BPの周囲の混合気の流速を遅くできる。これにより、点火点BPにおいて安定して初期火炎を形成できる。
点火装置11Fは、プレチャンバーキャップ24Eの前方内面24aから内周面24bにかけて第1の干渉部材25Dを第1の干渉部材25Bに備える。第1の干渉部材25Dは、第1の干渉部材25Bの熱を第1の干渉部材25Dを通じてシリンダヘッド12(図1参照)及び窓部材22側へ逃がすことができる。シリンダヘッド12(図1参照)や点火装置11Fの回りは図示しない冷却液体により冷却されており、窓部材22やプレチャンバーキャップ24Eの側面も冷却液体により冷却されている。そのため、第1の干渉部材25Bの熱を第1の干渉部材25Dを通じてシリンダヘッド12(図1参照)及び窓部材22に放熱することで、第1の干渉部材25Bの異常な過熱を低減できる。第1の干渉部材25Bが燃焼熱によって異常に過熱されると、壁面付近で燃料が自着火することによって、プレイグニッションやノッキング等の異常燃焼を発生する可能性がある。点火装置11Fでは、第1の干渉部材25Bの熱を第1の干渉部材25Dを通じてシリンダヘッド12(図1参照)及び窓部材22に放熱することで、第1の干渉部材25Bの異常な過熱を低減できる。よって、点火装置11Fは、主燃焼室19において異常燃焼が生じるのを防ぐことができるので、エンジン10(図1参照)の安定的な運転を図ることができる。
なお、本実施形態では、第1の干渉部材25Dは、プレチャンバーキャップ24Eの前方内面24aに一対設けられているが、これに限定されない。第1の干渉部材25Dの数は、1つでもよいし、3つ以上でもよく、プレチャンバーキャップ24Eの大きさ、又は第1プレチャンバー孔241A~241Dや第2プレチャンバー孔242A及び242Bの数や位置等に応じて適宜設計可能である。
本実施形態では、第1プレチャンバー孔241A~241Dの軸線は第1の干渉部材25Bと交わっているが、第1の干渉部材25Dとも交わってもよい。
本実施形態では、第1の干渉部材25Dは、プレチャンバーキャップ24Eの前方内面24aに溶接されてもよいし、プレチャンバーキャップ24Eと第1の干渉部材25Dとを3Dプリンタ等で切削して前方内面24aに一体に形成してもよい。
[第7の実施形態]
第7の実施形態による点火装置について、図面を参照して説明する。なお、上記実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。本実施形態に係る点火装置は、上記図18~図22に示す第6の実施形態の点火装置11Fのプレチャンバーキャップ24Eの内周面24bに内側に突出した他の第1の干渉部材を第1の干渉部材25Bよりも点火点BP側にさらに設けたこと以外は同様である。そのため、本実施形態では、他の第1の干渉部材の構成についてのみ説明する。
図23は、第7の実施形態に係る点火装置を主燃焼室側から見た時のプレチャンバーキャップの構成を示す正面図であり、図24は、図23に示す7A-7A断面図であり、図25は、図24に示す7B-7B断面図であり、図26は、図24に示す7C-7C断面図である。図23及び図24に示すように、点火装置11Gは、上記図18~図20に示す第6の実施形態の点火装置11Fのプレチャンバーキャップ24Eの内周面24bに、第1の干渉部材25B及び25Dの他に、第1の干渉部材25Eを更に備えたものである。
図24に示すように、第1の干渉部材25Dは、軸方向(Z軸方向)に対して直交する方向から見た時、台形状に形成されている。第1の干渉部材25Dは、レーザ装置21に対向する面の長さの方が、プレチャンバーキャップ24Eの前方内面24aと接する面の長さよりも長くなるように設計されている。また、図25に示すように、第1の干渉部材25Dを点火装置11Gの軸方向(Z軸方向)から見た時、第1の干渉部材25Dは扇型に形成されている。
図23に示すように、第1の干渉部材25Eは、プレチャンバーキャップ24Eの内周面24bに対向するように内周面24bに一対設けられている。第1の干渉部材25Eは、図26に示すように、軸方向(Z軸方向)において、両面が凸面を有する凸レンズ(両凸レンズ)の形状に形成されている。第1の干渉部材25Eは、図27に示すように、点火装置11Gの軸方向(Z軸方向)と直交する方向から見た時、板状に形成されている。
第1の干渉部材25Eは、図24に示すように、点火装置11Gの軸方向(Z軸方向)と直交する方向から見た時、点火点BP側に設けている。本実施形態では、第1の干渉部材25Eは、点火点BPよりも窓部材22側に、第1の干渉部材25B及び25Dと所定の間隔を有した状態で設けられている。
図26に示すように、一対の第1の干渉部材25E同士の間には、予備燃焼室26内に供給された混合気が通過できるように隙間が形成されている。
図27は、図23に示す7D-7D断面図である。図27に示すように、第1の干渉部材25Eは、第2プレチャンバー孔242A~242Dの軸線と交わるようにプレチャンバーキャップ24Eの内周面24bに設けている。
第1プレチャンバー孔241A~241Dと、第2プレチャンバー孔242A及び242Bとの内径、配置位置、孔の向き、プレチャンバーキャップ24Eの内部形状や容積、第1の干渉部材25B~25Dの形状や配置位置等は、後述する混合気の流れF7-4、F7-5、F8-4及びF8-5を発生させるために適切に設定される。また、後述する混合気の流れF7-4、F7-5、F8-4及びF8-5の発生は、流体シミュレーション等から確認できる。
点火装置11Gでは、第1プレチャンバー孔241A~241Dと、第2プレチャンバー孔242A及び242Bから主燃焼室19内に噴射した点火炎31(図4参照)が主燃焼室19の混合気中の燃料を点火して燃焼する(主燃焼)。図28は、図23に示す7E-7E断面図である。混合気は、主燃焼室19から第1プレチャンバー孔241A~241Dと、第2プレチャンバー孔242A及び242Bを通って予備燃焼室26内に供給される。
このとき、主燃焼室19から第1プレチャンバー孔241A~241Dを通って予備燃焼室26内に混合気が供給される。図28に示すように、第1プレチャンバー孔241A~241Dを通過した混合気は、流れF7-1のように、予備燃焼室26内を第1の干渉部材25B及び25C側に向かって流れる。混合気は第1の干渉部材25B及び25Cに衝突すると、混合気の流れの向きが変わり、混合気は、流れF7-2のように、第1の干渉部材25Eと衝突する。なお、図28では、第1プレチャンバー孔241A及び241Cから流入する混合気の流れのみを示すが、他の第1プレチャンバー孔241B及び241Dから流入する混合気の流れも第1プレチャンバー孔241A及び241Cから流入する混合気の流れと同様の流れを示す。
混合気は、流れF7-3のように、第1の干渉部材27Dを迂回して一対の第1の干渉部材25E同士の間の隙間へと向かうように流れる。混合気は、窓部材22側に向かって流れる。この時、混合気の一部は、流れF7-4のように、第1の干渉部材25A側に流れる。
第1の干渉部材25A側に流れた混合気は、流れF7-5のように、窓部材22から第1の干渉部材25Bの端面25aに向かって流れる。混合気は、点火点BP及びその周辺において、流れF7-5のように、第1の干渉部材25Bに向かって流れる。混合気は、第1の干渉部材25Bと衝突することで、混合気と第1の干渉部材25Bとの衝突点付近に混合気のよどみ点が生じる。
一方、一対の第1の干渉部材25E同士の隙間を流れた混合気が窓部材22に衝突すると、混合気の流れは反転して、混合気は、一対の第1の干渉部材25E同士の隙間を通過する。隙間を通過した混合気は、流れF7-4のように、隙間に流れずに分離した混合気と共に、第1の干渉部材25Bに向かって流れる。
また、図27に示すように、第2プレチャンバー孔242A及び242Bを通って予備燃焼室26内に供給された混合気は、流れF8-1のように、予備燃焼室26内を第1の干渉部材25Bの側面及び第1の干渉部材25Dの表面側に向かって流れる。そして、混合気は第1の干渉部材25B及び25Cに衝突すると、混合気の流れの向きが変わり、混合気は、流れF8-2のように流れ、第1の干渉部材25Eと衝突する。
混合気は、流れF8-3のように、第1の干渉部材25Eを迂回して一対の第1の干渉部材25E同士の間の隙間へと向かうように流れる。そして、隙間を抜けた混合気は、窓部材22側に向かって流れる。この時、混合気の一部は、流れF8-4のように、第1の干渉部材25A側に流れる。
第1の干渉部材25B側に流れた混合気は、流れF8-5のように、窓部材22から第1の干渉部材25Bの端面25aに向かって流れる。混合気は、点火点BP及びその周辺において、流れF8-5のように、第1の干渉部材25Bに向かって流れる。点火点BP及びその周辺には、第1の干渉部材25Bへと向かう混合気の流れが形成される。混合気は、第1の干渉部材25Bと衝突することで、混合気と第1の干渉部材25Bとの衝突点付近に混合気のよどみ点が生じる。
一方、一対の第1の干渉部材25E同士の隙間を流れた混合気が窓部材22に衝突すると、混合気の流れは反転して、混合気は、一対の第1の干渉部材25E同士の隙間を通過する。隙間を通過した混合気は、流れF8-4のように、隙間に流れずに分離した混合気と共に、第1の干渉部材25Bに向かって流れる。
点火装置11Gは、一対の第1の干渉部材25Eをさらに備えることで、点火点BPへ主燃焼室19から流入した混合気が到達するまでに必要な距離を短くできる。これにより、点火装置11Gが、例えば、内燃機関として発電用のガスエンジンに用いられる場合、点火点BPにフレッシュな(残留排気ガスがあまり混合していない)混合気が供給され易くなるため、さらに安定して着火させることができる。
点火装置11Gが内燃機関として発電用のガスエンジンに用いられる場合、圧縮工程の前の段階では、プレチャンバーキャップ24E内には排気ガス(残留排気ガス)が充満している。そのため、従来のプレチャンバープラグを用いた点火装置では、点火点に到達した混合気に残留排気ガス成分が多く含まれる可能性がある。例えば、リーンバーンでは、排気ガス中に窒素や未燃焼の残存酸素が多量に含まれている。主燃焼室のリーン(希薄)な混合気がプレチャンバー内の排気ガスと混合することで、プレチャンバー内の混合気は主燃焼室の混合気以上にリーンな状態となる。また、少なくとも点火点の混合気がリーンな状態では着火できない可能性がある。これは、主燃焼室の混合気が可燃限界濃度の範囲内であったとしても、プレチャンバー内の残留排気ガスが主燃焼室の混合気に混合することで、点火点BPに供給される混合気が可燃限界濃度の範囲外(よりリーンな方向)になる可能性があるためである。これに対し、本実施形態の点火装置11Gは、主燃焼室19の混合気が可燃限界濃度の範囲内の状態を維持して点火点BPに到達し易くなり、プレチャンバーキャップ24E内の残留排気ガスの影響を受け難くなるため、さらに安定して着火できる。そのため、エンジン10(図1参照)の運転の更なる安定化を図ることができる。
点火装置11Gは、一対の第1の干渉部材25Eを、第2プレチャンバー孔242A~242Dの軸線とが交わるように配置している。これにより、流れF7-4とF7-5を強く発生させることができる。これにより、点火点BPに主燃焼室19側へ向かう流れが確実に発生し、安定的に着火させることができる。
なお、本実施形態では、第2プレチャンバー孔242A~242Dの軸線は第1の干渉部材25Eと交わっているが、第1の干渉部材25Eと交わっていなくてもよい。
本実施形態では、第1の干渉部材25Dの軸方向視における形状は扇型としているが、これに限定されない。
本実施形態では、第1の干渉部材25Eは、点火装置11Gの軸方向視において両凸レンズの形状に形成されているが、内周面24bに接するように設けることができ、一対の第1の干渉部材25E同士の間に隙間が形成できれば特に限定されない。
本実施形態では、第1の干渉部材25Eは、プレチャンバーキャップ24Eの内周面24bに溶接されてもよいし、プレチャンバーキャップ24Eと第1の干渉部材25Eを3Dプリンタ等で切削して第1の干渉部材25Eに一体に形成してもよい。
[第8の実施形態]
第8の実施形態による点火装置について、図面を参照して説明する。なお、上記実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。本実施形態に係る点火装置は、上記図8~図10に示す第3の実施形態の点火装置11Cのプレチャンバーキャップ24Cの前方内面24aに設けた第2プレチャンバー孔の数を2つに変更したものである。そして、第1の干渉部材25Bに、前方内面24aから内周面24bにかけて他の第1の干渉部材をさらに設け、プレチャンバーキャップ24Cの内周面24bに第2の干渉部材を設けたものである。そのため、本実施形態では、他の第1の干渉部材と、第2の干渉部材の構成についてのみ説明する。
図29は、第8の実施形態に係る点火装置を主燃焼室側から見た時のプレチャンバーキャップの構成を示す正面図であり、図30は、図29に示す8A-8A断面図であり、図31は、図30に示す8B-8B断面図であり、図32は、図30に示す8C-8C断面図である。図29及び図31に示すように、点火装置11Hは、上記図8~図10に示す第3の実施形態の点火装置11Cのプレチャンバーキャップ24Cを、前方内面24aに2つの第2プレチャンバー孔242A及び242Bを備えるプレチャンバーキャップ24Eに変更したものである。そして、点火装置11Hは、プレチャンバーキャップ24Eの前方内面24aから内周面24bにかけて第1の干渉部材25Fを備えると共に、内周面24bに第2の干渉部材27を更に備える。
図29及び図30に示すように、第1の干渉部材25Fは、プレチャンバーキャップ24Eの内周面24bに、第1の干渉部材25Bを介して対向するように一対設けられている。一対の第1の干渉部材25Fは、前方内面24aから内周面24bにかけて、プレチャンバーキャップ24Eの前方内面24aと内周面24bと第1の干渉部材25Bとを連結するように設けられている。
第1の干渉部材25Fは、図30に示すように、点火装置11Hの軸方向(Z軸方向)と直交する方向から見た時、プレチャンバーキャップ24Eの内周面24bに軸方向に沿って延在している。
第1の干渉部材25Fは、図31に示すように、軸方向視において扇型に形成されており、前方内面24aと内周面24bとに接する面は前方内面24aと内周面24bに対応するように湾曲して形成されている。
第1の干渉部材25Fは、第1の干渉部材25Bと同様の材料を用いて製造できる。
第1の干渉部材25Fは、第1の干渉部材25Bに公知の接合方法を用いて接合することができ、第1の干渉部材25Bにロウ材用いて接合してもよいし、溶接して接合するようにしてもよい。
図30に示すように、第2の干渉部材27は、プレチャンバーキャップ24Eの内周面24bに、第1の干渉部材25Fと接するように設けられている。
第2の干渉部材27は、図30に示すように、板状に形成されている。第2の干渉部材27は、図32に示すように、軸方向視において前方内面24aから窓部材22にかけてリング状に形成され、貫通孔27aを有する筒状体である。
図33は、図29に示す8D-8D断面図である。図33に示すように、第2の干渉部材27は、第2プレチャンバー孔242A~242Dの軸線と交わるようにプレチャンバーキャップ24Eの内周面24bに設けられている。
第2の干渉部材27は、第1の干渉部材25B及び25Eと同様の材料を用いて製造できる。
第2の干渉部材27は、内周面24bや第1の干渉部材25Fに公知の接合方法を用いて接合することができ、内周面24bにロウ材用いて接合してもよいし、溶接して接合するようにしてもよい。
図30に示すように、窓部材22と、プレチャンバーキャップ24Dと、第2の干渉部材27とにより、残留排ガス貯留空間Sが形成される。第2の干渉部材27の貫通孔27aを通過した混合気は、残留排ガス貯留空間S内に残留排ガスとして貯留される。
点火装置11Hでは、第1プレチャンバー孔241A~241Dと、第2プレチャンバー孔242A及び242Bから主燃焼室19内に噴射した点火炎31(図4参照)が主燃焼室19の混合気中の燃料を点火して燃焼する(主燃焼)。図34は、図29に示す8E-8E断面図である。混合気は、図34に示すように、主燃焼室19から第1プレチャンバー孔241A~241Dを通って予備燃焼室26内に供給され、図33に示すように、主燃焼室19から第2プレチャンバー孔242A及び242Bを通って予備燃焼室26内に供給される。
このとき、主燃焼室19から第1プレチャンバー孔241A~241Dを通って予備燃焼室26内に混合気が供給される。図34に示すように、第1プレチャンバー孔241A~241Dを通過した混合気は、流れF9-1のように、予備燃焼室26内を第1の干渉部材25B側に向かって流れる。混合気は第1の干渉部材25B及び25Eに衝突すると、混合気の流れの向きが変わり、混合気は、流れF9-2のように、第2の干渉部材27の貫通孔27aへと向かうように流れる。混合気は、貫通孔27aを通過して残留排ガス貯留空間S内に流れる。この時、混合気の一部は、流れF9-4のように、第1の干渉部材25A側に流れる。なお、図33では、第1プレチャンバー孔241A及び241Cから流入する混合気の流れのみを示すが、他の第1プレチャンバー孔241B及び241Dから流入する混合気の流れも第1プレチャンバー孔241A及び241Cから流入する混合気の流れと同様の流れを示す。
第1の干渉部材25A側に流れた混合気は、流れF9-5のように、窓部材22から第1の干渉部材25Bの端面25aに向かって流れる。混合気は、点火点BP及びその周辺において、流れF9-5のように、第1の干渉部材25Bに向かって流れる。混合気は、第1の干渉部材25Bと衝突することで、上述の通り、混合気と第1の干渉部材25Bとの衝突点付近に混合気のよどみ点が生じる。
一方、残留排ガス貯留空間S内に流れた混合気は、流れF9-3のように、窓部材22の表面に衝突して内周面24bの方向に拡散する。残留排ガス貯留空間S内の混合気は、残留排ガス貯留空間S内を循環する。
また、図33に示すように、第2プレチャンバー孔242A及び242Bを通って予備燃焼室26内に供給された混合気は、流れF10-1のように、予備燃焼室26内を第1の干渉部材25Bの側面及び第1の干渉部材25Fの表面側に向かって流れる。そして、混合気は第1の干渉部材25B及び25Eに衝突すると、混合気の流れの向きが変わり、混合気は、流れF10-2のように、第2の干渉部材27と衝突する。
混合気は、流れF10-3のように、第2の干渉部材27の貫通孔27aへと向かうように流れ、貫通孔27aを通過して残留排ガス貯留空間S内に流れる。この時、混合気の一部は、流れF10-5のように、第1の干渉部材25B側に流れる。
第1の干渉部材25B側に流れた混合気は、流れF10-6のように、第2の干渉部材27から第1の干渉部材25Bの端面25aに向かって流れる。混合気は、点火点BP及びその周辺において、流れF10-6のように、第1の干渉部材25Bに向かって流れる。点火点BP及びその周辺には、第1の干渉部材25Bへと向かう混合気の流れが形成される。混合気は、第1の干渉部材25Bと衝突することで、混合気と第1の干渉部材25Bとの衝突点付近に混合気のよどみ点が生じる。
一方、残留排ガス貯留空間S内に流れた混合気は、流れF10-4のように、窓部材22の表面に衝突して内周面24bの方向に拡散する。残留排ガス貯留空間S内の混合気は、残留排ガス貯留空間S内を循環して、第2の干渉部材27の貫通孔27aを抜ける。貫通孔27aから抜けた混合気は、流れF10-5のように、貫通孔27aに流れずに分離した混合気と共に、第1の干渉部材25Bに向かって流れる。
よって、点火装置11Hは、第1の干渉部材25F及び第2の干渉部材27を設け、窓部材22の前方(-Z軸方向側)に、窓部材22と、プレチャンバーキャップ24Eと、第2の干渉部材27とにより、残留排ガス貯留空間Sを形成している。これにより、残留排ガス貯留空間Sが混合気を残留排ガスとして貯留するガス貯留槽として機能できる。また、残留排ガス貯留空間S内の混合気は貫通孔27aを通って予備燃焼室26内に移動することになるため、残留排ガス貯留空間S内の混合気は予備燃焼室26内に移動しにくい。そのため、プレチャンバー内残留排ガスを残留排ガス貯留空間Sに貯留し、主燃焼室19から流入した混合気とあまり混合させないようにすることで、点火点BPに流れる残留排ガスの残留率が低下させることができる。残留排ガスの残留率が低下することで、点火点BPでの着火の安定性を高めることができる。よって、点火装置11Gを用いれば、エンジンの安定的な運転を図ることができる。
点火装置11Hは、プレチャンバーキャップ24E内の窓部材22の射出側に残留排ガス貯留空間Sを形成することで、第1プレチャンバー孔241A~241Dと第2プレチャンバー孔242A及び242Bとから流入した混合気をより早く点火点BPに流入させることができる。これにより、混合気の流入量をより多くすることができる。混合気の流入量が多くなることで、第1プレチャンバー孔241A~241Dと、第2プレチャンバー孔242A及び242Bとに近い領域の残留排ガスの残留率は低くなる。これにより、第1プレチャンバー孔241A~241Dと第2プレチャンバー孔242A及び242Bから点火点BPに供給される残留排ガスの流量を低減できる。
なお、本実施形態では、第2プレチャンバー孔242A~242Dの軸線は第1の干渉部材25Eと交わっているが、第1の干渉部材25Eと交わっていなくてもよい。
本実施形態では、第2の干渉部材27の貫通孔27aの形状を円形にしているが、三角形や四角形等の多角形や楕円形としてもよい。
[第9の実施形態]
第9の実施形態による点火装置について、図面を参照して説明する。なお、上記実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。本実施形態は、第1の実施形態に係る点火装置は、上記図2及び図3に示す第1の実施形態の点火装置11Aのレーザ装置21と、窓部材22の光学窓221とを火花点火プラグに変更したこと以外は同様であるため、火花点火プラグの構成についてのみ説明する。
図35は、第9の実施形態に係る点火装置を主燃焼室側から見た時のプレチャンバーキャップ24Aの構成を示す正面図であり、図36は、図35に示す9A-9A断面図である。図35及び図36に示すように、点火装置11Iは、レーザ装置21と、窓部材22の光学窓221とに代えて火花点火プラグ41を用いたものである。
火花点火プラグ41としては、公知の点火プラグを用いることができる。火花点火プラグ41は、インシュレーター411と、中心電極412と、接地電極413とを有する。
インシュレーター411は、中心電極412を内部に電気的に絶縁状態で支持している。
中心電極412は、インシュレーター411の端部から予備燃焼室26側に突出して設けられている。
接地電極413は、矩形状に形成されており、中心電極412から所定の間隔(放電ギャップ)だけ離れた位置に設けられている。接地電極413は、インシュレーター411の端面に設けた固定端に溶接等により固定される。
点火装置11Iでは、エンジン10の吸気工程の間に、エンジン10(図1参照)の主燃焼室19に供給された混合気が、主燃焼室19から第1プレチャンバー孔241A~241Dを通って、予備燃焼室26内に強制的に供給される。その後、中心電極412と接地電極413との間に電圧を印加して、放電ギャップに、プラズマアーク、すなわち火花放電を発生させる。火花放電が混合気に印加すると、放電ギャップに、点火炎31(図4参照)が生成される。点火炎31(図4参照)は、エンジン10(図1参照)の燃焼工程の間に、第1プレチャンバー孔241A~241Dから主燃焼室19に噴出する。
このとき、主燃焼室19から第1プレチャンバー孔241A~241Dを通って予備燃焼室26内に流入した混合気は流れF11-1に沿って流れる。混合気は、第1の干渉部材25Aの近くで流れの向きが変わり、流れF11-2となって、光学窓221側に向かって流れる。予備燃焼室26の混合気は、放電ギャップで発生した火花放電により燃焼した後、第1プレチャンバー孔241A~241Dから点火炎31(図4参照)となって排出される。本実施形態では、放電ギャップ付近は、第1の干渉部材25Aにより、混合気の流れの向きが変更されているため、混合気の流速は遅くなっている。そのため、混合気の流速が低減し、安定して初期火炎を形成できる。
一般に、火花点火プラグを用いた火花点火において、予備燃焼室26内を流れる混合気の流速が早い場合、放電エネルギーを高めることで、予備燃焼室26内に初期火炎を形成している。本実施形態によれば、放電ギャップ付近における混合気の流速を低減できるため、放電エネルギーが低くても点火初期に火炎核を形成できる。放電エネルギーを低くすることで、中心電極412及び接地電極413の摩耗を抑えることができる。
よって、本実施形態によれば、火花点火プラグ41を用いる場合でも、燃料の点火の安定性を高めることができると共に、火花点火プラグ41の長寿命化を図ることができる。
以上の通り、実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の組み合わせ、省略、置き換え、変更等を行うことが可能である。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。