JP4560930B2 - シェヤーモードヘッドの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シェヤーモードヘッドの製造方法に関し、詳しくは湿式法を主体とする極めて簡易な方法で、且つ、コストの低い方法で、泡抜け性が良く、駆動周波数が高く、発熱が少なく、水系インクでも、溶剤系インクでも吐出できる、より高性能を有するシェヤーモードヘッドの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
シェヤーモードヘッドの原理は、分極した圧電素子板に、多数の平行な溝を研削してインク溝を形成し、インク溝の側壁に電極を設け、側壁を挟んでその両側に存在する電極の間に電界を掛けると、側壁がせん断変形して、インクに圧力が掛かり、インクを吐出するものである。しかし、インク溝の側壁を変形させてインクを吐出する方式のため、吐出の影響が隣接する溝に伝わり、吐出したインク溝のインクメニスカスのみならず、両隣のインク溝のインクメニスカスも振動する。このインクメニスカスの振動が静止するまでは、吐出したインク溝のみならず、両隣のインク溝からも吐出できないので、プリント速度が遅くなる問題がある。
【0003】
このためインク溝と空気溝を交互に設けてプリント速度を上昇する技術も提案されている。
【0004】
たとえば、特開昭63−247051号公報には、インク溝と空気溝を持ち、インク溝側の電極に電圧を掛け、空気溝側の電極を接地して、ヘッドを駆動する、シェヤーモードヘッドが開示されている。しかし、この技術では、溶剤インクしか吐出できない欠点がある。即ち、インク室の電極は、インクに接するので、水系インクを使用する場合、電極表面で水が電気分解され、酸素が発生する。水の理論分解電圧は1.23Vなので、1〜2ボルトの電圧でも、水が電気分解されて、電極表面から、微細な気泡が無数に発生し、同時に電極が陽極酸化されて溶解する。インクに気泡が入ると吐出の為インクに掛けた圧力が気泡に吸収されて、吐出不能となる。
【0005】
また特開平7−132589号公報には、インク室の電極を接地して、空気室の電極に電圧を掛けて駆動する、シェヤーモードヘッドが開示されている。
【0006】
この駆動法は、インク室に電圧を掛けないので、特開昭63−247051号公報に記載の技術のような気泡の発生の問題がなく、水系インクを吐出できる利点があるが、電極形成が極めて困難である欠点がある。
【0007】
また特開平8−174822号や特開平8−309977号の各公報には、無電解メッキと研削で、シェヤーモードヘッドを製造する方法が開示されている。
【0008】
特開平8−174822号によると、分極した2枚のPZT板に、前後方向に伸びる、インク溝と成る浅い溝と前後方向に伸びる空気溝と成る深い溝を形成する。この2枚のPZT板を、溝と溝が向き合う様に接着する。ヘッドの天井部に、溝と直交し、空気溝には到達するが、インク溝には到達しない、左右に伸びる溝を研削する。更に、前壁に、上下方向に伸びる、インク室につながる、縦溝を形成する。これを、全面、無電解メッキして、前端部を切断し、更に、天井に、左右に伸びる浅い溝を形成して、グランドと信号を分離する。更に、空気室上部の天井部に、前後に伸びる浅い溝を形成して、インク室につながる個別の配線を形成する。
【0009】
この方法は、溝に蓋をして、インク室と空気室を形成してから、それらの内面に、無電解メッキする必要がある。無電解メッキ中、メッキ箇所から大量の水素が発生するので、溝に蓋をして、インク室と空気室を形成してからメッキすると、発生する気泡が抜けにくく、気泡が貯まり、貯まった気泡がメッキの析出を妨げる欠点がある。
【0010】
更に、これらの方法は、ストレートなインク流路の中に形成した電極につなぐ為、インク室の入り口側に縦溝を研削し、この溝の中に配線を形成する。この溝は、インクの入り口溝としても使用するので、インク流路が、この部分でクランク状に曲がり、この部分に気泡やゴミ等が溜まったり、縦溝からインクが漏れたりする欠点がある。
【0011】
縦溝にゴミが貯まったり、気泡が貯まることを防ぎ、又、インク漏れを防ぐ為、完全なシールをすることも考えられるが、一個のヘッドには、溝が、数十本から数百本あるので、数十から数百カ所もある数十μオーダの領域をインク流路に影響を与えることなく完全にシールすることは困難である。
【0012】
更に、これらの方法では、溝を形成した2枚のPZT板の、溝と溝を位置を正確に合わせて接着しないと、接着部に塗布した接着剤がインク室にあふれ出し、インク室を閉塞する恐れがある。
【0013】
更に、これらのヘッドは、インク室の電極に電圧を掛ける駆動方式を使用しているため、前述のように、水系インクは吐出できない欠点がある。
【0014】
更に、従来のシェヤーモードヘッドの電極形成は、インク室側壁に電極を蒸着する方法で行われている。一枚のPZTで溝を形成する場合、側壁の上半分に電極を設ける必要があるので、斜め蒸着が行われている。ヘッドを傾けて、斜め方向から蒸着すると、蒸発物が側壁に遮られ、側壁の下半分には蒸気が到達しない。しかし、二枚のPZTを分極方向を反対に向けて接着してから、溝を形成すると、側壁が分極方向が反対の二枚の圧電素子により形成されるので、二枚の圧電素子を駆動する為、側壁全面に電極を形成する必要があるが、従来の斜め蒸着法では、側壁の下半分に電極を形成することは極めて困難である。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の課題は、これらの従来乾式技術に比べて、極めて簡易な湿式技術で、且つ、コストの低い方法で、泡抜け性が良く、発熱が少なく、水系インクでも溶剤系インクでも吐出できる、より高性能を有するシェヤーモードヘッドの製造方法を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記課題は以下の発明によって解決される。
従来、電極形成は蒸着法で、絶縁膜はCVD法(共に乾式)で行われていたが、本発明は、電極形成はメッキで、絶縁膜は電着で行うものであり、共に湿式技術を採用していることに、従来技術とは異なる大きな特徴がある。
【0017】
1.以下の(1)〜(11)の工程を順に有することを特徴とするシェヤーモードヘッドの製造方法。
【0018】
(1)分極した二枚の圧電素子板を、分極方向を反対に向けて接合して直方体又は立方体状のヘッドを形成する工程
(2)該ヘッドの上面にメッキ用レジスト層を塗設する工程
(3)該ヘッドの上面側に前後方向に伸びるインク溝と空気溝を形成し、該インク溝と空気溝を交互に配置する工程
(4)前記ヘッドの全面をエッチングした後、無電解メッキ触媒を吸着させるエッチング工程及び触媒吸着工程
(5)前記触媒吸着面に無電解メッキする無電解メッキ工程
(6)メッキ用レジスト層をアルカリで除去する工程
(7)前記ヘッドの前壁を研磨してメッキ皮膜を取り除く工程
(8)前記無電解メッキ工程で形成されたメッキ皮膜に有機絶縁膜を電着する電着工程
(9)前記ヘッドの後壁と底面のメッキ皮膜の一部をレーザーで除去して、後壁から底面に連続するヘッド配線を形成する工程
(10)前記ヘッドの上面に天板を、前記ヘッドの前壁にノズル板を、前記ヘッドの後壁にマニホールドを各々接合する工程
(11)前記後壁から底面に連続するヘッド配線を異方導電性フィルム(ACF)を介してフレキシブルプリントケーブル(FPC)と接続する工程
【0019】
2.以下の(1)〜(11)の工程を順に有することを特徴とするシェヤーモードヘッドの製造方法。
【0020】
(1)分極した二枚の圧電素子板を、分極方向を反対に向けて接着して直方体又は立方体状のヘッドを形成する工程
(2)該ヘッドの上面にメッキ用レジスト層を塗設する工程
(3)該ヘッドの上面側に前後方向に伸びるインク溝と空気溝を形成し、該インク溝と空気溝を交互に配置する工程
(4)前記ヘッドの全面をエッチングした後、無電解メッキ触媒を吸着させるエッチング工程及び触媒吸着工程
(5)前記ヘッドの後壁と底面のヘッド配線部以外の触媒にレーザーを照射して失活させる工程
(6)前記ヘッドに残存する触媒吸着面に無電解メッキする無電解メッキ工程
(7)メッキ用レジスト層をアルカリで除去する工程
(8)前記無電解メッキ工程で形成されたメッキ皮膜に有機絶縁膜を電着する電着工程
(9)前記ヘッドの前壁を研磨してメッキ皮膜を取り除く工程
(10)前記ヘッドの上面に天板を、前記ヘッドの前壁にノズル板を、前記ヘッドの後壁にマニホールドを各々接合する工程
(11)前記後壁から底面に連続するヘッド配線を異方導電性フィルム(ACF)を介してフレキシブルプリントケーブル(FPC)と接続する工程
【0021】
本発明の好ましい態様は、▲1▼前記(3)の工程で、インク溝の両側壁はヘッドの上面に対して垂直方向に研削され、且つ互いに平行に研削されること、▲2▼前記フレキシブルプリントケーブル(FPC)が、駆動ICに繋がっていることである。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0023】
始めに、第1の発明について説明する。
【0024】
図1〜図6は第1の発明の(1)〜(11)の各工程を説明する図である。
【0025】
(1)の工程は、分極した二枚の圧電素子板1a,1bを、分極方向を反対に向けて固着して直方体又は立方体状のヘッドを形成する工程である(図1参照)。
【0026】
分極した圧電素子板壁をせん断変形させる方法は、▲1▼分極した一枚の圧電素子板で溝の壁を形成する場合は、壁の上半分に電極を形成して、壁の上半分をせん断変形させる方法があり、▲2▼分極した二枚の圧電素子板を分極方向を反対に向けて接着して溝の壁を形成する場合は、壁の全面に電極を設け、壁全体をせん断変形させる方法がある。前者▲1▼は、壁の上半分を変形させるだけであるが、後者▲2▼は壁の上半分と下半分を同時に、反対方向に変形させるので、変形量が大きく、変形効率が良い。同じ電圧を掛けても、後者▲2▼の方が、壁の変形量が大きいので、発生する圧力が高く、吐出したインク滴の速度が早く、インクの着弾ずれが少なく、画質が大幅に向上する。又、同じ変位を与える場合、後者▲2▼は電圧が約半分で済むので、ヘッドの発熱を抑えることができる。かかる理由で、本発明では、後者▲2▼の2枚の圧電素子板を、分極方向を反対に向けて接着して壁を形成して、壁の全面に電極を形成する方法を採用した。
【0027】
圧電素子板1a,1bとしては、電圧を加えることにより変形を生じる圧電材料を用いて形成された基板を用いることができる。この圧電材料としては、公知のものを用いることができ、有機材料からなる圧電基板、非金属性の圧電基板などがある。特に、非金属性の圧電基板が好ましく、このような基板としては、成形、焼成等の工程を経て形成される圧電セラミックス基板、又は成形、焼成を必要としないで形成される基板等がある。
【0028】
この基板用の有機材料としては、ポリフッ化ビニリデン等の有機ポリマーや、有機ポリマーと無機物とのハイブリッド材料等が挙げられる。
【0029】
成形、焼成等の工程を経て形成される圧電セラミックス基板としては、チタン酸ジルコン酸鉛(商品名「PZT」)が好ましい。
【0030】
PZTとしては、PZT(PbZrO3−PbTiO3、)と、第三成分添加PZTがある。添加する第三成分としてはPb(Mg1/2Nb2/3)O3、Pb(Mn1/3Sb2/3)O3、Pb(Co1/3Nb2/3)O3等があり、さらにBaTiO3、ZnO、LiNbO3、LiTaO3等を用いてもよい。
【0031】
また、成形、焼成を必要としないで形成される基板として、例えば、ゾル−ゲル法、積層基板コーティング等で形成することができる。ゾル−ゲル法によれば、ゾルは所定の化学組成を持つ均質な溶液に、水、酸あるいはアルカリを添加し、加水分解等の化学変化を起こさせることによって調整される。さらに、溶媒の蒸発や冷却等の処理を加えることによって、目的組成の微粒子あるいは非金属性、無機微粒子の前躯体を分散したゾルが作成され、基板とすることができる。異種元素の微量添加も含めて、化学組成の均一な化合物を得ることができる。出発原料に、一般にケイ酸ナトリウム等の水に可溶な金属塩あるいは金属アルコキシドが用いられ、金属アルコキシドは、一般式M(OR)nで表される化合物で、OR基が強い塩基性を持つため容易に加水分解され、有機高分子のような縮合過程を経て、金属酸化物あるいはその水和物に変化する。
【0032】
また、積層基板のコーティング法としては、気相から析出させる蒸着法があり、気相からセラミック基板を作成する方法は、物理的手段による蒸着法と、気相から基板表面に化学反応により析出させる化学析出法の二通りに分類される。更に、物理蒸着法(PVD)は、真空蒸着法、スパッター法、イオンプレーティング法等に細分され、また化学的方法は、気相化学反応法(CVD)、プラズマCVD法などがある。物理蒸着法(PVD)としての真空蒸着法は、真空中で対象とする物質を加熱して蒸発させ、その蒸気を基板上に付着させる方法で、スパッター法は目的物質(ターゲット)に高エネルギー粒子を衝突させ、ターゲット表面の原子・分子が衝突粒子と運動量を交換して、表面からはじきだされるスパッタリング現象を利用する方法である。またイオンプレーティング法、イオン化したガス雰囲気中で蒸着を行う方法である。また、CVD法では、膜を構成する原子・分子あるいはイオンを含む化合物を気相状体にしたのち、適当なキャリヤーガスで反応部に導き、加熱した基板上で反応あるいは反応析出させることによって膜を形成し、プラズマCVD法はプラズマエネルギーで気相状態を発生させ、400℃〜500℃までの比較的低い温度範囲の気相化学反応で、膜を析出させる。
【0033】
圧電素子板1aと1bを接合する手段としては、接着剤を用いた接合を採用できるが、接合可能であれば、特に限定される訳ではない。接着剤を用いて接着層を形成する場合、その接着層の硬化後の厚みは、5〜10μmの範囲が好ましい。
【0034】
本明細書で、製造工程を説明する上で、ヘッドの方向が重要であるので、図1において、上面と底面、前方と後方を明らかにしておく。図1における、図面上奥側を「前方」、手前側を「後方」と称し、前方の面を「前壁」、手前の壁を「後壁」と称する。また図面上上側を「上面」、下側を「底面」と称する。
【0035】
本発明では、上記のような接合によって、直方体又は立方体状のヘッド1が形成される。
【0036】
次に(2)の工程は、ヘッドの上面に、メッキ用レジスト層を塗設する工程である。図2において、2はヘッド1 の上面に形成されたメッキ用レジスト層である。メッキ用レジスト層2を形成する手段は、好ましくはメッキ用レジストの塗布液をスピンコートすることによって一定の厚みに塗設することである。スピンコートによると、一定の膜厚に精度よく塗設できるので好ましい。
【0037】
メッキ用レジストの塗布剤としては、たとえばアルカリ可溶タイプのノボラック樹脂等を用いることができる。
【0038】
メッキ用レジスト層の乾燥膜厚は、5〜10μの範囲が好ましい。
【0039】
次に(3)の工程は、図3に示すように、ヘッド1の上面側に前後方向(前壁5から後壁6に向かう方向)に伸びるインク溝3と空気溝4a,4bを形成し、該インク溝3と空気溝4a,4bを交互に配置する工程である。
【0040】
この工程において、インク溝と空気溝は交互に配置され、インク溝とインク溝の間に空気溝を配置すると、従来の技術で指摘したように高速吐出が可能になる効果がある。
【0041】
溝の形成手段は、公知の研削機による研削が好ましい。
【0042】
本発明では、二枚のPZT板を接着してから、溝を研削するので、溝を研削した二枚のPZT板を接着する方法に比べて、接着剤が、インク溝にあふれ出す恐れがない。
【0043】
インク溝と空気溝は、図示のように、垂直方向に研削され、その両側壁は互いに平行に形成される。深さはレジスト層2及び圧電素子板1aを貫通し、圧電素子板1bの上部に至るように研削することが好ましい。
【0044】
インク溝の形は、上記のように溝の両側壁が垂直方向に向いており、そして互いに平行であるから、溝の入口と出口で大きさと形状が変わらないストレートタイプになる。従来の入り口浅溝タイプに比べ、泡抜けが良く、電力効率が高く、発熱が少なく、高速応答性が良いからである。
【0045】
この点について更に言及すると、ヘッドからインクを吐出する時、先ず、インク溝の左右の壁を外側に変形させ、インク溝を膨らませて、溝に負圧を発生させ、マニホールドから溝にインクを吸引する。この時、発生した負の圧力波は、ノズルから出発し、溝内を移動し、溝の入口の、溝断面積が急変する部分で、位相を反転して、反射される。このタイミングで、壁の変形を元に戻して、インクを圧縮すれば、インクに高い圧力が掛かる。これがnmオーダーの極く微少な壁の変位で、インクを吐出する、シェヤーモードヘッドの特徴である。
【0046】
この様に、シェヤーモードヘッドが、インクを吐出できる周期は、インク室の長さを、インク中の音速で割った時間の、整数倍に限られる。
【0047】
高周波で、吐出するには、インク溝の長さを短くすることが好ましいので、インク溝の形は、長い浅溝部を持つ、入口浅溝型より、短い溝を持つ、ストレート溝型が好ましい。
【0048】
次に(4)の工程は、前記ヘッドの全面をエッチングした後、無電解メッキ触媒を吸着させるエッチング工程及び触媒吸着工程である。前述のようにヘッドにはインク溝と空気溝が形成され、上面はレジスト層が形成されている。かかるヘッド(以下、必要によりPZT基板という場合がある)をエッチングした後、無電解メッキ触媒を吸着させる方法は、たとえば以下の方法が挙げられる。なおエッチングとはPZTの粒界を1部溶解して、PZT表面にクレバス状の凹みを形成することである。メッキ金属がクレバスの奥深くまで浸入して析出するのでこれがアンカーとなり、メッキ皮膜が強固に付着する。PZTを0.5%HBF4と5%HNO3溶液に3分間、室温で漬けると、PZT粒子の粒界が選択的にエッチングされ溶解し、PZT表面にクレバス状の凹みを生じる。
【0049】
上記PZT基板を、濃度0.1%の塩化第1錫水溶液に浸漬して塩化第1錫を吸着させ、続いて濃度0.01%の塩化パラジューム水溶液に浸漬して塩化パラジュームを吸着させ、先に吸着した、塩化第1錫と塩化パラジウムの間で、酸化還元反応(SnCl2+PdCl2→SnCl4+Pd↓)を起こさせて、金属パラジウムを形成する。この金属パラジウムが無電解メッキの触媒となる。
【0050】
次に(5)の工程では、触媒が吸着されたヘッド(PZT基板)の触媒吸着面に無電解メッキを行う。
【0051】
電極金属は、Ni(ニッケル)、Co(コバルト)、Cu(銅)、Al(アルミニウム)等があるが、NiやCuが好ましく、特に好ましくはNiである。
【0052】
無電解メッキによる電極形成においては、Ni−Pメッキ又はNi−Bメッキを単独で使用してもよいし、あるいはNi−PとNi−Bを重層してもよい。
【0053】
Ni−PメッキはP含量が高くなると電気抵抗が増大するので、P含量が1〜数%程度がよい。Ni−BメッキのB含量は、普通1%以下なので、Ni−PよりNi含量が多く、電気抵抗が低く、且つ、外部配線との接続性が良いため、Ni−PよりNi−Bの方が好ましいが、Ni−Bは高価なので、Ni−PとNi−Bを組み合わせることも好ましい。
【0054】
メッキ膜の厚みは、0.5〜5μmの範囲が好ましい。更に好ましくは、1〜3μmの範囲である。
【0055】
本発明では、前記工程で、メッキ金属が付着しないようにメッキ用レジスト層を塗布しているので、無電解メッキしてもレジスト上にはメッキが析出しない。
【0056】
またメッキが前記レジスト上に析出しないようにする上で、さらに好ましいのはメッキの前処理としてエッチング工程を設けることである。メッキ前処理のエッチング工程はメッキの密着性を高めるため必須であるが、同時にレジストが酸化されるので、無電解メッキは、還元反応の為、金属の析出を防止できるからである。
【0057】
従来、側壁の屋根部にメッキが析出することを防ぐ方法としては、例えば、特開平5−269993号公報に記載の方法が知られている。この方法は圧電素子に溝を研削し、ヘッド全体に、触媒を吸着させた後、感光性ドライフイルムをラミネートし、マスク露光、現像して、溝の側壁の屋根部をドライフイルムで覆ってから、触媒を吸着して無電解メッキして、ドライフイルムを剥離する方法がある。この方法は、感光性ドライフイルムのラミネート、露光、現像、剥離と言うやっかいな工程が必要となる。しかし、圧電性セラミック、例えば、PZTは粒径数μの粒子から形成されているので、表面が粗く、感光性ドライフイルムでは、表面に密着できず、処理中にラミネートが剥がれて、マスキング不良を起こしやすい欠点がある。
【0058】
また特開平8−267769号公報には、圧電素子に溝を研削し、感光性ドライフイルムをラミネートし、マスク露光、現像して、溝の側壁の屋根をドライフイルムで覆ってから、メッキ触媒を吸着させて、ドライフイルムを剥離して、無電解メッキする方法が開示されている。触媒は、溝の中のみならず、ドライフイルム上にも吸着されるので、ドライフイルム上に金属が析出すると、ドライフイルムが剥離できなく成ることを防ぐ為に、触媒が吸着したドライフイルムを除去してからメッキする方法である。しかし、ドライフイルムを、アルカリや有機溶剤で剥離する時、敏感なメッキ触媒を失活させる恐れが有り、メッキが安定せず好ましくない。更にドライフイルムのラミネート、マスク露光、現像剥離と言うやっかいな工程が必要となる。
【0059】
本発明では、圧電素子板にメッキ用レジストをスピンコートしてから、溝を研削するので、溝の側壁の屋根部分が自動的にマスクされる。このメッキ用レジストを、前処理のエッチング工程で酸化すると、無電解メッキは、還元反応の為、このメッキ用レジスト上には、メッキが析出せず、メッキ前にレジストを剥離する必要がない。メッキレ用ジストは、後述するように、メッキ後、アルカリで容易に剥離できる。またメッキ用レジストは圧電素子板上にコーテイングするので、ラミネートしたドライフイルムの様に、前処理中やメッキ中に剥がれることは無い。又、マスク露光、現像等の厄介な操作も不要である。
【0060】
更に本発明によると、溝に蓋をする前に無電解メッキするので、発生する水素が抜け易く、均一にメッキすることができる。
【0061】
次に、(6)の工程は、メッキ後にメッキ用レジスト層をアルカリで除去する工程である。この工程で使用するアルカリは苛性ソーダが用いられる。
【0062】
次に、(7)の工程は、前記ヘッド1の前壁5のメッキ皮膜を取り除く工程である。前壁に析出したメッキを取り除くには、通常の研磨機で研磨するか、超音波砥粒研磨するか、放電加工して取り除いてもよい。
【0063】
ヘッド1の前壁5に析出したメッキ金属を研磨除去する方法の一例を説明すると、たとえば(株)日本エンギス製の「ハイプラス ラッピング機」を使用する。セラミック製の試料張り付け板の上に、メッキしたヘッドを乗せて、ワックスで固定する。これを回転するラッピングプレート上に載せ、3μmのダイヤモンドスラリーを噴射しながら、3分間、ヘッドの前壁を研磨すると、析出した金属が除かれる。
【0064】
かかる研磨によって、メッキ皮膜、たとえばニッケル皮膜を除去すると、ヘッド1の上面と前壁には、電極が存在しないヘッド(圧電素子板)が得られる。
【0065】
次に(8)の工程は、前記無電解メッキ工程で形成されたメッキ皮膜に有機絶縁膜を電着する電着工程である。
【0066】
有機絶縁膜を形成する方法は、電着法や塗布法があるが、塗布法では電極上に、ポリマー皮膜をスピンコーテイングしたり、コンフオーマルコーテイングすれば良いが、電極以外の部分もコーテイングされるので、面倒なマスキングが必要になる。また乾式法による有機皮膜の形成法、例えば、パリレンコンフオーマルコーテイングでは、大掛かりな真空装置、蒸発装置や加熱装置を必要とする。
【0067】
本発明は、塗布法、乾式法の様な欠点のない優れた方法として、電着法を採用する。電着法は、電導性のある処にだけ皮膜が形成されること、又一度薄い皮膜が形成されると、その箇所が絶縁され電導性がなくなるので、それ以上その場所には析出せず、別の電導性のある場所を探して析出するので、複雑な形状の上でも均一な薄膜をコーテイングできる効果がある。この様に、電着は微細な溝の底まで均一に有機薄膜を簡単に形成できるので好ましい。
【0068】
本発明は、電着法によりメッキ皮膜上に有機絶縁薄膜を形成するが、電着とメッキは相性が良く、メッキ後そのまま電着できる利点がある。
【0069】
電着によって有機絶縁膜を形成する方法としては、たとえば、15%濃度のアミノアクリル樹脂を含む、電着液に、電極を形成した、たとえばPZTを室温で浸漬して、50Vの直流を2分間印加すると、厚さ2μm程度のピンホールフリーの絶縁膜が形成される。
【0070】
本発明において、有機絶縁膜を形成する効果について更に言及すると、以下の点が挙げられる。即ち、本発明では、インク溝側の電極に電圧を掛け、空気溝側の電極を接地して、駆動する方法を取ることになるが、その場合、水系インクを吐出するには、電極を絶縁する必要がある。かかる電極の絶縁において、電極の表面に、硬くて剥離し易い無機皮膜を被覆するのと比べ、有機絶縁膜の方が、柔軟で剥離しにくく、防水性を有するので好ましい。従って、電極に、有機絶縁膜を設けると、水系インクでも、溶剤系インクでも、吐出できる効果がある。
【0071】
次に、(9)の工程は、図5、6に示すように、前記ヘッド1の後壁6と底面7のメッキ皮膜の一部を、レーザーで除去して、後壁6から底面7に連続するヘッド配線8を形成する工程である。
【0072】
無電解メッキの場合は、つき周りが良いので、ヘッド表面の凹凸に沿って均一に金属が析出する。しかし、各溝の電極を外部から独立に駆動する為、各溝の電極を独立させ、これに配線をつないで、外部と信号をやり取りできる様にしなければならない。このため、本発明では、前記(7)の工程でヘッドの前壁のメッキを除去し、更にこの(9)の工程で、前記ヘッド1の後壁6と底面7のメッキ皮膜の一部を、レーザーで除去して、後壁6から底面7に連続するヘッド配線8を形成するようにしている。
【0073】
レーザー除去条件は、レーザーの波長や、パルスレートにも依存するが、約2μm厚のNiメッキを除去するのに、約50J/cm2 のエネルギー密度を要する。
【0074】
例えば、被加工面で約40μm平方に集束された、YAGレーザーの第2高調波光を、1パルスエネルギー0.4mJ、パルスレート3KHz、送りのステップ20μmで被加工物を送りながら、照射していくことで、メッキが除去され、絶縁が確保できる。
【0075】
この場合、被加工物表面での照射エネルギー密度は、0.4mJ/(0.004cm×0.002cm)=50J/cm2である。
【0076】
次に、(10)の工程は、図5に示すように、前記ヘッド1の上面に天板9を、前記ヘッド1の前壁5にノズル板10を、前記ヘッド1の後壁6にマニホールド11を各々接合する工程である。
【0077】
次に、(11)の工程は、図6に示すように、前記後壁6から底面7に連続するヘッド配線8を異方導電性フィルム(ACF)12を介してフレキシブルプリントケーブル(FPC)13と接続する工程である。なお、図6では、便宜上、ノズル板10を接合した前壁5側が図示手前側になるように示している。
【0078】
上記工程で、各溝の電極を独立さ、更に、これらの電極につながる配線を、メッキ金属で、ヘッド後壁とヘッド裏面に形成して、裏面において、異方導電性フィルム(ACF)12により、フレキシブルプリントケーブル(FPC)13と接続すれば良い。
【0079】
更に、前記フレキシブルプリントケーブル(FPC)13が、図示しない駆動ICに繋がっていることが好ましく、駆動回路によってシェヤーモードヘッドを駆動させることができる。
【0080】
次に本発明の第2の発明を説明する。
【0081】
第1の発明では、メッキを析出後にヘッドの後壁と底面のヘッド配線部以外の部分の金属をレーザー除去しているが、第2の発明では、前記ヘッド1の後壁6と底面7のヘッド配線部8以外の触媒にレーザーを照射して失活させている点で異る。
【0082】
固い金属を除去するのは、高いエネルギーを必要とするので、触媒吸着後、無電解メッキ前に、メッキが析出しては困る箇所に吸着した触媒を失活させてから、メッキする手法を採用したものである。
【0083】
触媒の段階でレーザー照射した場合には、第1の発明よりは約1桁小さい、5J/cm2 以下のエネルギー密度で、触媒を不活性化することが可能である。
【0084】
例えば、被加工面で約40μm平方に集束された、YAGレーザーの第2高調波光を、1パルスエネルギー0.04mJ、パルスレート3KHz、送りのステップ20μmで被加工物を送りながら、照射していくことで、メッキが除去され、絶縁が確保できた。
【0085】
この場合、被加工物表面での照射エネルギー密度は、0.04mJ/(0.004cm×0.002cm)=5J/cm2である。
【0086】
従って、触媒の段階でレーザー照射を行えば、それが5J/cm2 以下のエネルギー密度で、メッキのパターンを形成することが可能である。
【0087】
【実施例】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例によって何ら限定されるものではない。
【0088】
実施例 1
厚さ150μm(PZT板1)と厚さ900μm(PZT板2)の二枚のPZT板を分極する。分極は、150℃に熱した、絶縁油に漬けて、10KVの直流電圧を掛けて行う。
【0089】
次に、エポキシ接着剤で、2枚のPZT板を、分極方向が反対になる様に接着する。接着層の厚みは、硬化後、5μmである。
【0090】
接着した複合PZT板の、薄い板の側を「表面」、厚い板の側を「裏面」と呼ぶ。
【0091】
複合PZT板の表面に、(株)ワールドメタル製「メッキレジスト、AH79」をブチルセロソルブで2倍に希釈して、乾燥膜厚5μmに成る様に、スピンコートする。
【0092】
100℃のオーブンに30分間入れてキュアーする。
【0093】
複合PZT板の表面から、ダイヤモンドブレードを使用して、前後方向に伸びる、幅70μm、深さ300μmのインク溝と、前後方向に伸びる、幅70μm、深さ300μmの空気溝を交互に70μm間隔で研削する。
【0094】
次いで、超音波洗浄して、研削屑を取り除き、Ni無電解メッキする。
【0095】
無電解メッキ法は、溝を研削した、PZT板を、50℃に加熱した脱脂液、(株)ワールドメタル製「PT−0」(有機酸塩0.4%+無機アルカリ塩0.2%+ノニオン活性剤0.5%、pH=1)に、30秒間つけて洗浄する。水洗後、エッチング液、(株)ワールドメタル製「PT−1」(無機酸塩5%+アンモニヤ系硫酸塩4%、弗素系塩1.5%、pH=2)に30秒間漬ける。水洗して、酸化液、(株)ワールドメタル製「PT−2」(有機酸塩15%+無機塩2%、pH=1)に30秒間漬ける。水洗した後、塩化第一錫溶液、(株)ワールドメタル製「PT−3」(有機酸塩0.4%+無機酸塩0.8%+塩化第一錫0.6%+NaCl 3.5%、pH= 1)に30秒間漬ける。軽く水洗して、塩化パラジウム溶液、(株)ワールドメタル製「PT−4」(有機酸塩1%+無機酸塩3%+塩化パラジウム0.1%、pH=1)に45秒漬ける。水洗後、「PT−3」と「PT−4」をもう一度繰り返す。
【0096】
前処理の終わった試料を、80℃に加熱した、ニッケル−燐無電解メッキ液、(株)ワールドメタル製「リンデン202H」に、界面活性剤「AP555」を添加した液で、10分間、ヘッドを垂直方向に2.5cm/secの速度で、揺動させながらメッキすると、1.5μmのメッキ皮膜が析出する。
【0097】
次いで、5%NaOH溶液にヘッドを浸漬して、メッキレジストを取り除く。
【0098】
次いで、セラミックス製の試料取り付け板の上に、メッキしたヘッドの前壁を上に向けて、ワックスで固定する。これを(株)日本エンギス製のハイプラスラッピング機の回転するラッピングプレート上に載せて、3ミクロンのダイヤモンドスラリーを噴射しながら、3分間、ヘッド前壁を研磨してメッキ金属を除去する。
【0099】
次いで、ヘッドを、15wt%のアミノアクリル樹脂を含む電着液、(株)シミズ製の「AE−4KX」に浸漬して、超音波を掛けて、溝の底の水を電着液と置換して、室温で、50V直流を2分間印加する。その後、20kg/cm2の高圧水で洗浄して、溝の中の電着液を取り除き、100℃で予備乾燥した後、180℃で、20分間硬化させる。
【0100】
引き続き、後壁と底面に析出したメッキ金属を、配線部を除いて、波長532nmのYAGレーザーで、約50J/cm2 のエネルギー密度で除去する。具体的には、被加工面で約40μm平方に集束された、YAGレーザーの第2高調波光を、1パルスエネルギー0.4mJ、パルスレート3KHz、送りのステップ20μmで被加工物を送りながら、照射して、メッキを除去する。
【0101】
次に、天板を接着する。未分極の厚さ0.5mmの圧電素子板と同じPZT板に接着剤を塗布して、14〜20kg/cm2の圧力と、90〜100℃の温度を掛けて30分間硬化させる。
【0102】
18μm径のノズルを128個有するエキシマレーザーで、穿孔した125μmのポリイミドシートを、ヘッド前壁にエポキシ接着剤で接着し、80℃で40分間硬化させる。
【0103】
次いで、ポリエーテルイミド樹脂を射出成形したマニホールドをエポキシ接着剤で、後壁に接着する。
【0104】
ヘッド配線は、異方導電性フィルム(ACF)を用いて、約170℃で、約20秒、約14kgの過重を均一に掛けて加熱押圧することによって、駆動制御基盤に設けられたフレキシブルプリント回路と電気的に接続する。
【0105】
実施例 2
この実施例は、実施例1において、メッキ触媒を吸着させた後、後壁と底面の配線形成部以外に吸着したメッキ触媒をレーザーで除去する態様である。この態様は実施例1よりプロセスが簡単になる効果がある。
【0106】
厚さ150μm(PZT板1)と厚さ900μm(PZT板2)の二枚のPZT板を分極する。分極は、150℃に熱した、絶縁油に漬けて、10KVの直流電圧を掛けて行う。
【0107】
次に、エポキシ接着剤で、2枚のPZT板を、分極方向が反対になる様に接着する。接着層の厚みは、硬化後、5μmである。
【0108】
複合PZT板の表面に、(株)ワールドメタル製「メッキレジスト、AH79」をブチルセロソルブで2倍に希釈して、乾燥膜厚5μmに成る様に、スピンコートする。
【0109】
100℃のオーブンに30分間入れてキュアーする。
【0110】
複合PZT板の表面から、ダイヤモンドブレードを使用して、前後方向に伸びる、幅70μm、深さ300μmのインク溝と、前後方向に伸びる、幅70μm、深さ300μmの空気溝を交互に70μm間隔で研削する。
【0111】
次いで、超音波洗浄して、研削屑を取り除き、Ni無電解メッキする。
【0112】
無電解メッキ法は、溝を研削した、PZT板を、50℃に加熱した脱脂液、(株)ワールドメタル製「PT−0」(有機酸塩0.4%+無機アルカリ塩0.2%+ノニオン活性剤0.5%、pH=1)に、30秒間つけて洗浄する。水洗後、エッチング液、(株)ワールドメタル製「PT−1」(無機酸塩5%+アンモニヤ系硫酸塩4%、弗素系塩1.5%、pH=2)に30秒間漬ける。水洗して、酸化液、(株)ワールドメタル製、「PT−2」(有機酸塩15%+無機塩2%、pH=1)に30秒間漬ける。水洗した後、塩化第一錫溶液、(株)ワールドメタル製「PT−3」(有機酸塩0.4%+無機酸塩0.8%+塩化第一錫0.6%+NaCl 3.5%、pH= 1)に30秒間漬ける。軽く水洗して、塩化パラジウム溶液、(株)ワールドメタル製「PT−4」(有機酸塩1%+無機酸塩3%+塩化パラジウム0.1%、pH=1)に45秒漬ける。水洗後、「PT−3」と「PT−4」をもう一度繰り返する。
【0113】
ここまでは実施例1と同じであり、この後、前処理の終わった試料の後壁と底面の配線形成部以外に吸着したメッキ触媒をレーザーで除去する。具体的には、被加工面で約40μm平方に集束された、YAGレーザーの第2高調波光を、1パルスエネルギー0.04mJ、パルスレート3KHz、送りのステップ20μmで被加工物を送りながら、照射する。
【0114】
この試料を、80℃に加熱した、ニッケル−燐無電解メッキ液、(株)ワールドメタル製「リンデン202H」に、界面活性剤「AP555」を添加した液で、10分間、ヘッドを垂直方向に2.5cm/secの速度で、揺動させながらメッキすると、1.5μmのメッキ皮膜が析出する。
【0115】
次いで、水洗して、メッキ液を除去する。
【0116】
次いで、5%NaOH溶液にヘッドを浸漬して、メッキレジストを取り除く。
【0117】
ヘッドを、15wt%のアミノアクリル樹脂を含む電着液、(株)シミズ製の「AE−4KX」に浸漬して、超音波を掛けて、溝の底の水を電着液と置換して、室温で、50V直流を2分間印加する。その後、20kg/cm2の高圧水で洗浄して、溝の中の電着液を取り除き、100℃で予備乾燥した後、180℃で、20分間硬化させる。
【0118】
次いで、セラミックス製の試料取り付け板の上に、メッキしたヘッドの前壁を上に向けて、ワックスで固定する。これを(株)日本エンギス製のハイプラスラッピング機が回転するラッピングプレート上に載せて、3ミクロンのダイヤモンドスラリーを噴射しながら、3分間、ヘッド前壁を研磨してメッキ金属を除去する。
【0119】
次に、天板を接着する。未分極の厚さ0.5mmの圧電素子板と同じPZT板に接着剤を塗布して、14〜20kg/cm2の圧力と、90〜100℃の温度を掛けて30分間硬化させる。
【0120】
18μm径のノズルを128個有するエキシマレーザーで、穿孔した125μmのポリイミドシートを、ヘッド前壁にエポキシ接着剤で接着し、80℃で40分間硬化させる。
【0121】
次いで、ポリアミド樹脂を射出成形したマニホールドをエポキシ接着剤で、後壁に接着する。
【0122】
ヘッド配線は、異方導電性フィルム(ACF)を用いて、約170℃で、約20秒、約14kgの過重を均一に掛けて加熱押圧することによって、駆動制御基盤に設けられたフレキシブルプリント回路と電気的に接続する。
【0123】
【発明の効果】
本発明によれば、上述した効果を発揮でき、特に従来の乾式法技術に比べて、極めて簡易な湿式法技術で、且つ、コストの低い方法で、泡抜け性が良く、駆動周波数が高く、発熱が少なく、水系インクでも溶剤系インクでも吐出できる、より高性能を有するシェヤーモードヘッドの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の工程の一例を示す斜視図
【図2】本発明の工程の一例を示す斜視図
【図3】本発明の工程の一例を示す斜視図
【図4】本発明の工程の一例を示す斜視図
【図5】本発明の工程の一例を示す斜視図
【図6】本発明の工程の一例を示す斜視図
【符号の説明】
1:ヘッド
1a、1b:圧電素子板
2:メッキ用レジスト層
3:インク溝
4a、4b:空気溝
5:前壁
6:後壁
7:底面
8:配線部
9:天板
10:ノズル板
11:マニホールド
12:ACF
13:FPC
Claims (4)
- 以下の(1)〜(11)の工程を順に有することを特徴とするシェヤーモードヘッドの製造方法。
(1)分極した二枚の圧電素子板を、分極方向を反対に向けて接合して直方体又は立方体状のヘッドを形成する工程
(2)該ヘッドの上面にメッキ用レジスト層を塗設する工程
(3)該ヘッドの上面側に前後方向に伸びるインク溝と空気溝を形成し、該インク溝と空気溝を交互に配置する工程
(4)前記ヘッドの全面をエッチングした後、無電解メッキ触媒を吸着させるエッチング工程及び触媒吸着工程
(5)前記触媒吸着面に無電解メッキする無電解メッキ工程
(6)メッキ用レジスト層をアルカリで除去する工程
(7)前記ヘッドの前壁を研磨してメッキ皮膜を取り除く工程
(8)前記無電解メッキ工程で形成されたメッキ皮膜に有機絶縁膜を電着する電着工程
(9)前記ヘッドの後壁と底面のメッキ皮膜の一部をレーザーで除去して、後壁から底面に連続するヘッド配線を形成する工程
(10)前記ヘッドの上面に天板を、前記ヘッドの前壁にノズル板を、前記ヘッドの後壁にマニホールドを各々接合する工程
(11)前記後壁から底面に連続するヘッド配線を異方導電性フィルム(ACF)を介してフレキシブルプリントケーブル(FPC)と接続する工程 - 以下の(1)〜(11)の工程を順に有することを特徴とするシェヤーモードヘッドの製造方法。
(1)分極した二枚の圧電素子板を、分極方向を反対に向けて接合して直方体又は立方体状のヘッドを形成する工程
(2)該ヘッドの上面にメッキ用レジスト層を塗設する工程
(3)該ヘッドの上面側に前後方向に伸びるインク溝と空気溝を形成し、該インク溝と空気溝を交互に配置する工程
(4)前記ヘッドの全面をエッチングした後、無電解メッキ触媒を吸着させるエッチング工程及び触媒吸着工程
(5)前記ヘッドの後壁と底面のヘッド配線部以外の触媒にレーザーを照射して失活させる工程
(6)前記ヘッドに残存する触媒吸着面に無電解メッキする無電解メッキ工程
(7)メッキ用レジスト層をアルカリで除去する工程
(8)前記無電解メッキ工程で形成されたメッキ皮膜に有機絶縁膜を電着する電着工程
(9)前記ヘッドの前壁を研磨してメッキ皮膜を取り除く工程
(10)前記ヘッドの上面に天板を、前記ヘッドの前壁にノズル板を、前記ヘッドの後壁にマニホールドを各々接合する工程
(11)前記後壁から底面に連続するヘッド配線を異方導電性フィルム(ACF)を介してフレキシブルプリントケーブル(FPC)と接続する工程 - 前記(3)の工程で、インク溝の両側壁はヘッドの上面に対して垂直方向に研削され、且つ互いに平行に研削されることを特徴とする請求項1又は2記載のシェヤーモードヘッドの製造方法。
- 前記フレキシブルプリントケーブル(FPC)が、駆動ICに繋がっていることを特徴とする請求項1、2又は3記載のシェヤーモードヘッドの製造方法。
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