JP4559089B2 - ウイルス捕捉用スプレー剤及びウイルス捕捉フィルター - Google Patents

ウイルス捕捉用スプレー剤及びウイルス捕捉フィルター Download PDF

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Description

本発明は、マスクやフィルターに吸着させることにより、空気中に浮遊しているウイルスを吸着し、ウイルスが人体に入るのを防止することができるウイルス捕捉組成物、該組成物を有効成分として含有するウイルス捕捉用スプレー剤、及び該組成物を吸着させたウイルス捕捉フィルターに関する。
ウイルスは、病原体としてわれわれの生活に深い関わりをもっており、ヒトに感染するウイルスとして、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、EBウイルス、B型肝炎ウイルス、インフルエンザウイルス、ポリオウイルス、日本脳炎ウイルス、エイズウイルスなどの様々なウイルスが知られている。
例えばインフルエンザは、数年〜数十年の周期で大流行し、感染すると高熱、頭痛、咽頭痛、全身倦怠などの臨床症状を示す。特に小児では脳症・脳炎、高齢者では細菌の二次感染による肺炎などを引き起こし、死亡する場合もある。
インフルエンザウイルスは、人ごみでの空気感染や飛沫感染によって流行することが知られており、その予防方法としては、ワクチン接種やウイルスが人体に入るのを防止するためにマスクを装着することが行われている。
しかしながら、インフルエンザウイルスはその抗原構造が頻繁に変化するため、ワクチンによる予防効果が長続きしないという問題があった。
また、ウイルスの大きさは非常に小さく、通常のマスクではウイルスが透過してしまうため、予防方法としては十分ではなかった。
そのため、空気中のウイルスを効率よく捕捉し、不活性化するマスクやフィルターの開発が進められている。
例えば、下記特許文献1には、茶の抽出成分を添着したエレクトレットフィルタからなる抗ウイルスマスクが開示されている。
また、下記特許文献2には、インフルエンザウイルスのヘマグルチニン部位に吸着する吸着剤を、シートに担持させたインフルエンザウイルス捕捉フィルターが開示されている。
また、下記特許文献3には、Ca/P比が1.0〜2.0のリン酸カルシウム系化合物を0.1〜10重量%含有することを特徴とするマスク用抗菌・抗ウイルススプレーが開示されており、該スプレーをマスクに噴霧することにより、抗菌処理などの施されていない市販のガーゼマスクや不織布マスクに優れた抗菌・抗ウイルス性を付与できることが記載されている。
また、下記特許文献4には、マンノース結合型レクチンが、親水性高分子鎖を介して疎水性高分子鎖よりなる基材に結合されている抗ウイルス素材からなり、フィルター構造を有することを特徴とする抗ウイルス素材が開示されている。
また、下記特許文献5には、インフルエンザウイルスを不活化する薬剤としてクロルヘキシジンの有機酸または無機酸の塩類を水溶液あるいは合成樹脂分散液と併用して、空気清浄器のフィルター部分に処理してなることを特徴とするインフルエンザウイルス不活化剤が開示されている。
また、下記特許文献6には、不織布状の集塵フィルターに防カビ性を有する素材と抗菌性を有する素材と抗ウイルス性を有する素材を添着させた防カビ抗菌抗ウイルスフィルターが開示されている。
また、下記特許文献7には、抗菌性複合体を樹脂中に含むフィラメントと、樹脂表面に抗菌性複合体を付着あるいは接着させたフィラメントとのうち少なくとも一方からなる織物あるいは不織布あるいはその併用物から構成したことを特徴とする抗菌性フィルターが開示されている。
特開2002−136615号公報 特開2002−58730号公報 特開平11−199403号公報 特開平10−52482号公報 特開平10−45505号公報 特開平10−315号公報 特開平7−31812号公報
しかしながら、マスクやフィルターにリン酸カルシウムを付着させた場合、目詰まりし易くなり、ウイルス吸着性と通気性の両機能を十分に満足させることは難しかった。
また、カテキン類等の抗菌剤は比較的少量でもウイルス不活性化能を発揮するが、酸化による変質を起こしやすく、効果が持続しないという問題があった。更に、他の抗菌剤においては、人体に直接装着するマスクフィルター等に用いた場合、安全性の面で問題があった。
一方、スルファチド、ガラクトシルセラミド、マンノース結合型レクチン等のウイルスを吸着する物質は、大量に入手することが困難であり、また非常に高価であるという欠点があった。
したがって、本発明の目的は、原料の入手が容易で、安全性が高く、様々なタイプのウイルスを効率よく吸着できるウイルス捕捉組成物、その組成物を有効成分として含有するウイルス捕捉用スプレー剤、及びその組成物を吸着させたウイルス捕捉フィルターを提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明のウイルス捕捉用スプレー剤は、燕窩の水抽出物及び/又は燕窩の酵素処理物を有効成分として含有することを特徴とする。
本ウイルス捕捉用スプレー剤は、燕窩の水抽出物及び/又は燕窩の酵素処理物を有効成分として含有することにより、効率よくウイルスを吸着することができる。すなわち、燕窩の水抽出物及び/又は燕窩の酵素処理物が、ウイルスが宿主に吸着・感染する際に重要な働きをする感染基に結合することにより、ウイルスを不活性化することができ、ウイルスの抗原構造の変化に左右されることなくその効果を持続することができる。また、燕窩は食品として広く食されているので、入手が容易であり、安全性も高い。
また、スプレー剤の形態であるので、抗菌処理などの施されていない市販のマスクやフィルターに噴霧することにより、容易にそれらにウイルス捕捉能を付与することができる。
一方、本発明のウイルス捕捉フィルターは、燕窩の水抽出物及び/又は燕窩の酵素処理物をフィルターに吸着させたことを特徴とする。
本発明のウイルス捕捉フィルターは、マスクフィルター、空気清浄器用フィルター、又はエアコン用フィルターであることが好ましい。
本ウイルス捕捉フィルターは、燕窩の水抽出物及び/又は燕窩の酵素処理物を有効成分として含有するウイルス捕捉組成物を吸着させているので、空気中のウイルスを効率よく捕捉し、ウイルス感染を防止することができる。
本発明によれば、食品である燕窩由来の成分を有効成分として含有することにより、安全性が高く、インフルエンザウイルス、コロナウイルス、SARSウイルス等の様々なタイプのウイルスを効率よく吸着できるウイルス捕捉用スプレー剤を提供できる。そして、本成分をフィルターに吸着させることにより、空気中のウイルスを効率よく捕捉し、ウイルス感染を予防することができるウイルス捕捉フィルターを提供できる。
燕窩は、アナツバメが自らの唾液を糸状にして作る巣であり、中国では古くから高級な食材として食されているほか、肺疾患、健胃、去痰、皮膚の若返り、滋養強壮等の医療効果のある食品としても用いられている。また、その成分としては、タンパク質と糖質を多く含み、また、脂質はほとんど含まれていない。
一般に市販されている燕窩には、自然の洞窟で採取されたもの(cave nest)と屋内で養殖したもの(house nest)があるが、両者とも用いることができる。また、採取した燕窩から毛や糞等の汚れを取り除いて洗浄しただけのものから、燕窩のクズを集めて漂白と洗浄を繰り返して成形したものまで様々な種類があるが、前処理において過度の洗浄や漂白等が行われていない燕窩を用いることが好ましい。
窩水抽出物は、例えば以下のようにして得ることができる。粒径2mm以下、好ましくは150μm以下の大きさに粉砕した燕窩に、その質量の10〜1,000倍量の水を加えて、1〜100℃、0.5〜48時間静置又は撹拌して抽出を行った後、濾過して濾液を得る。この濾液はそのまま、又は適宜濃縮して濃縮液とすることができる。また、これらを凍結乾燥又は噴霧乾燥して粉末化してもよい。
また、燕窩の酵素処理物は、上記と同様の大きさに粉砕した燕窩に、その質量の10〜1,000倍量の水又は熱水を加えて上記と同様にして抽出した抽出液(濾過前の溶液)、前記抽出液を濾過した濾液、又は前記抽出液を60〜130℃、5〜30分間加熱処理した溶液を酵素処理して得ることができる。
上記酵素としては、プロテアーゼが好ましく、例えば一般に食品用の酵素として市販されているものを1種又は2種以上組合せて用いることができる。具体的には、「パンクレアチンF」(商品名、天野製薬製)、「アロアーゼAP−10」(商品名、ヤクルト薬品工業製)、「パパインソルブル」(商品名、ヤクルト薬品工業製)、「耐熱性プロテアーゼ サモアーゼ」(商品名、大和化成製)等が例示できる。
また、酵素処理条件は、特に制限はなく、溶液のpHを使用する酵素の至適pHに調整して酵素を適量加え、酵素の至適温度で0.5〜24時間反応させた後、加熱処理するなどして酵素を失活させればよい。この反応液を濾過して得られる濾液は、そのまま、又は適宜濃縮して濃縮液とすることができる。また、これらを凍結乾燥又は噴霧乾燥して粉末化してもよい。
上記酵素処理物の平均分子量は500〜20万が好ましく、2,000〜7万がより好ましい。
本発明のウイルス捕捉用スプレー剤においては、上記のようにして得られた燕窩水抽出物又はその酵素処理物以外に、各種糖分、蛋白質、脂質、ミネラル、ビタミン、食物繊維、アルコール、界面活性剤、保存料等の成分を含むことができる。
本発明のウイルス捕捉剤の形態は、スプレー剤とする。これにより、市販のマスクやフィルターに噴霧等することにより、容易にそれらにウイルス捕捉能を付与することができる。また、本ウイルス捕捉用スプレー剤は、その有効成分が食品由来の成分であるので安全性が高く、吸入剤等として直接人体に使用することもできる。
本発明のウイルス捕捉用スプレー剤における燕窩の水抽出物及び/又は燕窩の酵素処理物の含有量は、0.1〜10,000μg/mLが好ましく、0.2〜400μg/mLがより好ましい。
次に、本発明のウイルス捕捉フィルターについて説明する。
本発明のウイルス捕捉フィルターは、上記燕窩の水抽出物及び/又は燕窩の酵素処理物を、例えば不織布や織布等からなるフィルターに吸着させることにより得ることができる。不織布や織布の材質としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリル、ポリプロピレン、レーヨン、木綿、木材パルプ等が例示できる。
また、フィルターとしては、マスクフィルター、空気清浄器用フィルター、エアコン用フィルター等が好ましく例示できる。なお、空気循環経路中に設置された「水タンク」内に燕窩の水抽出物及び/又は燕窩の酵素処理物を添加する方法を採用することもできる。
本ウイルス捕捉フィルターは、例えば、不織布や織布等からなるフィルター材料を所定の形状に成形してなるフィルターを溶液状の燕窩の水抽出物及び/又は燕窩の酵素処理物に浸漬した後乾燥させる方法や、上記フィルターに燕窩の水抽出物及び/又は燕窩の酵素処理物をスプレーした後乾燥させる方法により得ることができる。また、紙、布、繊維等のフィルター材料に燕窩の水抽出物及び/又は燕窩の酵素処理物を予め吸着させておき、これらのフィルター材料を用いて所定の形状のフィルターを製造してもよい。更に、燕窩の水抽出物及び/又は燕窩の酵素処理物を吸着させた不織布や織布等をフィルターの間に挿入してもよい。
フィルターへの付与量は、特に制限されないが、通常、燕窩の水抽出物及び/又は燕窩の酵素処理物を、固形分として好ましくは0.1〜10,000μg/mL、より好ましくは0.2〜400μg/mL含む溶液に浸漬するか、あるいは該溶液をフィルター全体に均一にスプレーすればよい。なお、不織布で作られたマスクを浸漬して含浸させたときの液量は、しぼり方の強さにもよるが、約3〜10g/マスクとなる。
図1には、燕窩の水抽出物及び/又は燕窩の酵素処理物を吸着させたマスクフィルターの一実施形態が示されている。この実施形態においては、(A)に示すように、マスクフィルター本体2に本ウイルス捕捉用スプレー剤3を均一にスプレーし、乾燥させることにより吸着させている。
このようにして得られたウイルス捕捉マスクフィルター1を(B)に示すように装着することにより、空気中のウイルスがウイルス捕捉マスクフィルター1に吸着されるので、口や鼻からのウイルスの侵入を防ぐことができる。なお、洗濯などにより燕窩の水抽出物及び/又は燕窩の酵素処理物の成分が洗い流されても、再度本ウイルス捕捉用スプレー剤3をスプレーして乾燥させることによりウイルス捕捉能を簡単に付与できる。
また、図2には、燕窩の水抽出物及び/又は燕窩の酵素処理物を吸着させた空気清浄器用フィルターの一実施形態が示されている。この実施形態においても(A)に示すように空気清浄器用フィルター本体4に本ウイルス捕捉用スプレー剤3を均一にスプレーし、乾燥させることにより吸着させている。なお、フィルター本体4の乾燥は、空気清浄器5にフィルター本体4を装着して運転することにより行うこともできる。
このようにして得られた空気清浄器用ウイルス捕捉フィルターを装着した空気清浄器5を運転することにより、(B)に示すように空気中のウイルスが空気清浄器用ウイルス捕捉フィルターに吸着されて、きれいな空気が排出される。
表1に示すような各サンプルを調製して、以下の試験に用いた。































(1)感染中和試験
インフルエンザウイルスに感染にしたMDCK(Madian-Darby Canine Kidney)単層細胞から放出される乳酸脱水素酵素(LDH)の活性を測定することにより、ヒトインフルエンザウイルスによる細胞膜の破壊度を測定した(C-T Guo, C-H Wong, T Kajimoto, T Miura, Y Ida, L R Juneja, M J Kim, H Masuda, T Suzuki, and Y Suzuki. Synthetic sialylphosphatidyl-ethanolamine derivatives bind to human influenza A viruses and inhibit viral infection. Glycoconjugate J., 1998, 15(11):1099-1108参照)。
すなわち、約100TCID50(50% Tissue-Culuture Infectious Dose:50%組織培養感染量)のインフルエンザウイルス(A/PR/8/34(H1N1)又はA/Aichi/2/68(H3N2))、及び表1に示す各サンプル(終濃度1〜5000μg/mL)を含むEMEM培地(Eagles Minimum Essential Medium)を、96穴タイタープレート(平底)に単層培養したMDCK細胞へ接種し、34.5℃で5時間培養した。
培養後、液を除去し、100μLの同培地に懸濁した。さらに34.5℃で20時間培養し、得られた培養液の12.5μLを100mMトリス塩酸緩衝液(pH8.2)で4倍に希釈し、50μLの反応液(2mM NAD、200m−unit/mLのディアフォラーゼ、190mM乳酸リチウム、0.78mMニトロブルーテトラゾリウム、100mMトリス塩酸緩衝液(pH8.2))を添加した。37℃で10分インキュベートした後、100μLの0.5M塩酸を添加して反応を停止させた。550nmの吸光度(対照は630nm)を測定してLDH活性を求めた。なお、陽性対照としてフェツイン(Fetuin)を用いた。フェツインは、ウシ胎児血清に含まれる成分で、インフルエンザ中和活性を有していることが知られている。その結果を図3に示す。
図3(A)、(B)に示すように、サンプル1のヒトインフルエンザウイルス(A/PR/8/34(H1N1)とA/Aichi/2/68(H3N2))に対するIC50は、80μg/mLであり、陽性対照としたフェツインの阻害活性に比べて2〜8倍の強い阻害活性を有することが分かった。一方、サンプル2は、ヒトインフルエンザウイルス(A/PR/8/34(H1N1))に対してフェツインとほぼ同等の阻害活性を有することが分かった。
なお、上記の各サンプルについて、MDCK単層細胞を用いて、2倍づつ希釈燕窩溶液(始濃度5mg/mL)を含むEMEM培地を96穴タイタープレート(平底)に単層培養したMDCK細胞へ加えて37℃で25時間培養し、得られた培養液の乳酸脱水素酵素(LDH)の活性を測定することにより、細胞毒性があるかを調べたところ、すべてのサンプルでMDCK細胞に対して細胞毒性を示さず、安全性が高いことが分かった。
(2)赤血球凝集阻害試験
96穴タイタープレート(U底)の各ウェルにPBSを25μLずつ分注し、被検サンプル(サンプル1、2)溶液25μLをタイタープレートの1列目に入れ、マイクロピペットで数回吸引吐出を行った。1列目のウエルの25μLを2列目に移し、マイクロピペットで数回吸引吐出を行った。この操作を3列目へ、4列目へと同様に行い、2倍希釈列を作製した。
各ウェルに、表2に示す各ウイルスを含む溶液を25μLずつ分注した後、タイタープレートを緩やかにゆすり、その後4℃で60分放置した。そして、各ウェルに0.5%(V/V)ヒト赤血球浮遊液を50μLずつ分注して、タイタープレートを緩やかにゆすり、その後4℃で60分放置してから、各ウェルの底部への赤血球の沈降状態により凝集の有無を判定し、各サンプルの、凝集阻害を起こすことのできた最低濃度を算出した。その結果を表2に示す。

表2に示すように、サンプル1は、調べたインフルエンザウイルス(ヒト、トリ或いはブタから分離されたウイルス)中、A/Swine/Colorado/1/77(H3N2)を除いたウイルスに対して非常に低濃度で赤血球凝集阻害活性を示すことが分かる。一方、サンプル2は、A/Memphis/1/71とA/Swine/Colorado/1/77(H3N2)を除いたウイルスに対して低濃度で赤血球凝集阻害活性を示すことが分かる。
以上の結果から、サンプル1、2は、幅広いタイプのインフルエンザウイルスに対して吸着能を有していることが分かった。
(3)サンプル1及びサンプル2に含まれるシアル酸分子種と含量
インフルエンザウイルスは、シアル酸を含む特定の糖鎖を認識し、結合することが明らかになっている。そこで、燕窩におけるシアル酸の分子種及び含量を以下の方法で調べた(Hara, S.,Yamaguchi, M., Takemori, Y., Nakamura, M., Ohkura, Y.:Highly sensitive determination of N-acetyl- and N-glycolylneuraminic acids in human serum and urine and rat serum by reversed-phase liquid chromatography with fluorescence detection. J. Chromatogr., 377, 111-119 (1980)、Hara, S., Takemori, Y., Yamaguchi, M., Nakamura, M., Ohkura, Y.: Fluorometric high-performance liquid chromatography of N-acetyl and N-glycolylneuraminic acids and its application to their microdetermination inn human and animal sare. Analytical Biochem., 164, 138-145 (1987)参照)。
すなわち、各サンプルを20μLの2M酢酸中で80C、3時間加熱してシアル酸のグリコシド結合を加水分解した後、蛍光試薬(Sodium hydrosulfate 15.7mg、2-mercaptoethanol 350μL及びdiamino4,5-methylenedioxybenzene 2HCl(以下DMB、同仁化学)7.9mgに水を加え5mLに調製したもの)20μLを加え、暗所で50℃、2.5時間加熱した。
この反応液のうち、10μLをCOSMOSIL/COSMOGELカラム(商品名、ナカライテスク社製)を用いたHPLCにてシアル酸の蛍光誘導体を分離し、分光蛍光光度計(商品名「650-10S」 HITACHI製)にて検出した。その結果を図4に示す。
図4に示すように、サンプル1及びサンプル2はいずれもシアル酸を含み、N−アセチルノイラミン酸(NeuAc)が主要分子種であることが判明した。また、比率は少ないがN−グリコリルイラミン酸(NeuGc)も含まれることが分かった。また、サンプル1のN−アセチルノイラミン酸含量(12.25%)は、サンプル2(6.52%)に比べて約2倍高く、N−グリコリルイラミン酸含量は、サンプル1で0.41%、サンプル2では0.09%であった。
この結果から、サンプル1、2中に含まれるシアル酸は、ヒトのシアル酸分子種とよく似ており、これらシアル酸を含むタンパク質、ペプチドあるいは脂質分子がインフルエンザウイルスと結合する成分であることが示唆された。
また、サンプル1は、サンプル2に比べて高いインフルエンザウイルス結合活性及び感染阻害活性が認められたが、この事実とサンプル1はサンプル2に比べてシアル酸含量が高いことは良く相関していることからも、サンプル中のシアル酸含有分子が抗インフルエンザ活性を有することが示唆される。
(4)SDS―アクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)により分離した糖ペプチドへのインフルエンザウイルスの結合性を以下の方法で調べた(Takashi Suzuki, Mikiko Tsukimoto, Masato Kobayashi, Akira Yamada, Yoshihiro Kawaoka, Robert G. Webster, Yasuo Suzuki: Sialoglycoproteins that Bind Influenza A Virus and Resist Viral Neuraminidase in Different Animal Sera. J. Gen. Virology, 75, 1769-1774 (1994)参照)。
すなわち、PBSに溶解したサンプル1又はサンプル2(0.2mg)を、等量のSDS−PAGE用試料調製用緩衝液(2%SDS、10%グリセリン、0.001% Bromphenol Blue、含有0.0625Mトリス緩衝液、pH6.8)で希釈した。各サンプルは沸騰水浴中で5分間処理し、非還元下、10−20%の濃度のSDS−ポリアクリルアミド(SDS−PAGEプレート:商品名「ET-1020L」、アトー社製)により分離した。
ゲルに展開された糖ペプチドはPolyvinylidene difluoride(PVDF)膜(第一化学社製)に転写し(2mA/cmで30分間通電)、5%ウシ血性アルブミン(BSA)−PBS溶液(0.2mL/cm)で4℃、15時間ブロッキングした。このPVDF膜をPBSで5回洗浄後、2HAUに調製したインフルエンザウイルス−0.25%BSA−PBS懸濁液を加え、ウイルスノイラミニダーゼの影響を避けるために4℃で15時間穏やかに振盪した。その後、ウイルス懸濁液を除き、PVDF膜をPBSで5回洗浄後、抗インフルエンザ抗体を加えて4℃で2時間振盪した。抗体溶液を取り除き、このPVDF膜をPBSで5回洗浄後、VECTASTAIN KitのABC(ペルオキシダーゼ)キット(商品名、Vector Laboratories, Inc製)の0.25%BSA−PBS溶液を加え、4℃で2時間振盪した。このPVDF膜をPBSで5回洗浄後、0.1M酢酸(pH6.0)10mLに、発色液(110mM 4-chloro-1-naphtholのアセトニトリル溶液200μL、60mM N,N-diethyl-p-phenylenediamine-dihydrochlorideのアセトニトリル溶液200μL、31%過酸化水素水1μLを混和したもの)を用いてウイルスの結合を調べた。その結果を図5に示す。
図5に示すように、サンプル1及びサンプル2はいずれもインフルエンザウイルス(A/Aichi/2/68(H3N2)、A/Memphis/1/71(H3N2))と結合するバンド(図中矢印で示すバンド)が確認された。一方、ウイルスを加えないで他の操作を全て同じように処理した対照実験(Virus(-))ではウイルスに結合するバンドは確認できないので、上記のバンドはウイルスに特異的に結合できる糖ペプチドであると考えられた。また、クマシーブリリアントブルー(CBB)(タンパク質やペプチドを染色できる)によるバンドの染色度合いはサンプル1、2ともにほぼ同じであるが、ウイルスとの結合性は、サンプル1の方がサンプル2よりも強く、その種類も多いことが明らかとなった。この結果から、サンプル1中には、インフルエンザウイルスと結合するシアル酸を含む糖ペプチドがサンプル2に比べてより豊富に含まれていることが明らかとなった。
本発明のウイルス捕捉用スプレー剤は、食品である燕窩由来の成分を有効成分としているので安全性が高く、また、様々なタイプのウイルスに対して吸着能を有しているので、ウイルスの感染予防剤等として利用することができる。また、本成分をマスクやフィルターに付与することにより、空気中のウイルスを効率よく吸着除去し、ウイルス感染を防ぐことができるウイルス捕捉フィルターを簡単に得ることができる。
本発明のウイルス捕捉フィルターの一実施形態を示す図である。 本発明のウイルス捕捉フィルターの別の実施形態を示す図である。 燕窩の酵素処理物又は水抽出物のインフルエンザウイルス感染中和活性を調べた結果を示す図表である。 燕窩の酵素処理物に含まれるシアル酸分子種と含量を調べた結果を示す図表である。 燕窩の酵素処理物に含まれる糖ペプチドをSDS−PAGEにより分離し、インフルエンザウイルスとの結合性を調べた結果を示す図である。
符号の説明
1.ウイルス捕捉マスクフィルター
2.マスクフィルター本体
3.ウイルス捕捉用スプレー剤
4.空気清浄器用フィルター本体
5.空気清浄器

Claims (3)

  1. 燕窩の水抽出物及び/又は燕窩の酵素処理物を有効成分として含有することを特徴とするウイルス捕捉用スプレー剤
  2. 燕窩の水抽出物及び/又は燕窩の酵素処理物をフィルターに吸着させたことを特徴とするウイルス捕捉フィルター。
  3. 前記フィルターは、マスクフィルター、空気清浄器用フィルター、又はエアコン用フィルターである請求項に記載のウイルス捕捉フィルター。
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