JP4558867B2 - プレスブレーキにおけるラム移動方法およびこのラム移動方法を用いたプレスブレーキ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、油圧シリンダによりラムを上下移動させるプレスブレーキにおけるラム移動方法およびこのラム移動方法を用いたプレスブレーキに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
油圧シリンダによりラムを上下移動させてパンチとダイとの協働により曲げ加工を行うプレスブレーキにおいては、油圧シリンダを作動させるために双方向流体ポンプを用いることがある。このような油圧シリンダに対して設けられている油圧回路を簡単に示すと、図6に示されているようなものがある。
【0003】
このような油圧回路では、図示省略の油圧シリンダの上シリンダ室または下シリンダ室に接続されている配管101、103は、サーボモータ105により回転される双方向流体ポンプ107に接続されている。さらに、配管101、103は各々チェック弁109、111を介してオイルタンク113に接続されている。
【0004】
従って、サーボモータ105により双方向流体ポンプ107が回転され、配管101または配管103を通って図示省略の上または下のシリンダ室に作動油が供給されて、ラムが上下移動する。この時、チェック弁109またはチェック弁111を介してオイルタンク113から作動油が供給される。
【0005】
このような油圧回路では、図7に示されているようなパターンでラムが上下移動するようにサーボモータ105に指令して、双方向流体ポンプ107を回転させている。すなわち、ラムは一定の加速度で速度を増し、所定の速度まで達したら一定の速度で移動し、そして一定の減速度で速度を減少させる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の技術にあっては、ラムの移動方向が変わる反転時には、一方のチェック弁109(またはチェック弁111)には負圧がかかってまだ開いている状態にある場合がある。このとき双方向流体ポンプ107が反転して急に正圧がかかると、開いているチェック弁109(またはチェック弁111)が閉じるまでの間に作動油が逆流することがあり応答性が悪くなって、図8に示されているように、実際のラムは不安定な動きとなる。このため、反転時のショックが大きく、ラムの動作ゲインを上げることができず、生産性が低下するという問題がある。
【0007】
この発明の目的は、以上のような従来の技術の問題点に着目してなされたものであり、反転時におけるショックを低減することによりラムの動作ゲインを上げて生産性を向上させることのできるプレスブレーキにおけるラム移動方法およびこのラム移動方法を用いたプレスブレーキを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本願発明は、前述のごとき問題に鑑みてなされたもので、双方向流体ポンプの回転方向にしたがって上下移動される油圧シリンダによりラムを上下移動させて曲げ加工を行うプレスブレーキにおけるラム移動方法において、前記ラムの上下移動を反転すべく前記双方向流体ポンプを反転した後に、前記双方向流体ポンプとオイルタンクとの間に備えられ、開いた状態にあるチェック弁が閉じるまでの間、反転後のラム速度を一定に保つべく指令移動値を一定に保持するウォーミングアップ時間の経過後に、ラム速度を所定の速度まで変化させるべく前記双方向流体ポンプを制御すること、を特徴とするものである。
【0009】
従って、ラムの上下移動を反転させるために油圧シリンダの上下移動を切り換えるべく双方向流体ポンプの回転を反転した場合には、反転後のラム速度を一定に保つウォーミングアップ時間を保持し、その後ラムの移動速度を所定の速度まで変化させてラムの上下移動を行う。
【0010】
また、制御装置がサーボモータを制御して双方向流体ポンプを作動させ、この双方向流体ポンプからの作動油により油圧シリンダを作動させてラムを上下移動させることにより曲げ加工を行うプレスブレーキであって、前記制御装置が、指令移動速度によってラムの上下移動を反転すべく前記双方向流体ポンプの回転を所定の速度に反転させた後に、前記双方向流体ポンプとオイルタンクとの間に備えられ、開いた状態にあるチェック弁が閉じるまでの間、反転後のラム速度を一定に保つべく指令移動値を一定に保持するウォーミングアップ時間の経過後に、ラム速度を前記所定の速度まで変化させるために予め設定したラム移動速度パターンを指令するラム移動速度パターン指令部と、このラム移動速度パターン指令部により指令されたラム速度からラム位置を読み取る指令位置カウンタと、前記ラムの位置を検出するラム位置検出器と、前記指令位置カウンタにより読み取られたラム位置と前記ラム位置検出器からのラム位置信号を加算して前記ラムが所望の位置に位置するように前記サーボモータに指令する加算器と、を備えてなることを特徴とするものである。
【0011】
従って、ラムの上下移動を反転させるために油圧シリンダの上下移動を切り換えるべく、制御装置がサーボモータを制御して双方向流体ポンプの回転を反転する。このとき、制御装置のラム移動速度パターン指令部が、反転後のラム速度を一定に保つウォーミングアップ時間を保持し、その後ラムの移動速度を所定の速度まで変化させる予め設定したラム移動速度パターンのパターン指令を行う。このラム移動速度パターンから指令位置カウンタがラム位置を読み取り、読み取った値とラム位置検出器により検出される実際のラム位置とを加算器で加算してラムが所望の位置に位置するようにサーボモータの回転を制御する。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0013】
図4および図5には、この発明に係るプレスブレーキ1の全体が示されている。このプレスブレーキ1では、左右に立設された側板3L、3Rを有し、この側板3L、3Rの上部前端面にラムとしての上部テーブル5Uを上下移動自在に有すると共に、側板3L、3Rの下部前面に下部テーブル5Lを備えている。
【0014】
上部テーブル5Uの下端部には、複数の中間板7を介してパンチPが交換自在に設けられている。また、下部テーブル5Lの上端部に設けられているダイホルダ9には、ダイDが交換自在に設けられている。
【0015】
なお、上部テーブル5Uの高さ位置を測定するためのラム位置検出器としての一例のリニアスケール11が設けられており、パンチPの高さからダイDとの間隔を求めて、曲げ加工が終了したか否かや、曲げ角度の検出や、安全確保等を行っている。
【0016】
左右の側板3L、3Rの上部前面には油圧シリンダ13L、13Rが各々設けられており、この油圧シリンダ13L、13Rのピストン15L、15Rに装着されているピストンロッド17L、17Rに前述の上部テーブル5Uが取り付けられている。
【0017】
次に、図1を参照して、油圧シリンダ13L、13Rに対する油圧回路および制御装置18について説明する。なお、左右の油圧シリンダ13L、13Rは、まったく同様の油圧回路が設けられているので、以下においては右側の油圧シリンダ13Rおよび油圧回路について説明することとする。
【0018】
ラムである上部テーブル5Uを上下移動させる油圧シリンダ13Rの上シリンダ室19Uは、配管21によりプレフィル弁23に接続され、さらに配管25によりオイルタンク27に接続されている。
【0019】
また、前記上シリンダ室19Uは、配管29により双方向に回転可能な双方向流体ポンプとしての双方向ピストンポンプ31の一方の側に接続されている。配管29には途中で配管33が接続されており、チェック弁35およびサクションフィルタ37を介してオイルタンク27に接続されている。なお、双方向ピストンポンプ31は、制御装置18により制御されるサーボモータとしてのACサーボモータ39により回転駆動される。
【0020】
一方、油圧シリンダ13Rの下シリンダ室19Lには、配管41が接続されており、カウンタバランス弁43と電磁ポペットバルブであるシーケンス切換え弁45が並列に設けられている。これらカウンタバランス弁43とシーケンス切換え弁45は、配管47により前述の双方向ピストンポンプ31の他方の側に接続されている。また、配管47には途中において配管49が接続されており、この配管49はチェック弁51およびサクションフィルタ53を介してオイルタンク27に接続されている。
【0021】
また、前記配管41と前記配管29との間には、絞り弁55および高圧優先型シャトル弁57が設けられている。この高圧優先型シャトル弁57の排出側には配管59が接続されており、この配管59にはリリーフ弁61が設けられ、さらにオイルタンク27に接続されている配管63が設けられている。
【0022】
前述のACサーボモータ39を制御する制御装置18では、ラムである上部テーブル5Uの移動速度パターンを指令するラム移動速度パターン指令部65を有しており、このラム移動速度パターン指令部65では、図2に示されている移動速度パターンのように、上部テーブル5Uの上下移動を反転させた後、移動速度の増加を停止して、所定のウォーミングアップ時間TWだけ一定速度で移動し、その後再び移動速度を増加させるように指令する。そして、このラム移動速度パターン指令部65からの移動速度パターンから指令位置カウンタ67が上部テーブル5U位置を読み取る。
【0023】
一方、上部テーブル5Uの位置を検出するリニアスケール11からの位置信号69を位置カウンタ71がフィードバックし、このフィードバック信号と前述の指令位置カウンタ67により読み取られた指令位置を加算器73が加算する。この加算器73により加算された信号からラム動作ゲイン決定部75がゲインを決定し、アンプ77で増幅してACサーボモータ39に指令が発せられる。
【0024】
上記構成により、上シリンダ室19Uおよび下シリンダ室19Lに作動油が充填され双方向ピストンポンプ31が停止してピストン19Rが上死点にある状態から、上部テーブル5Uの自重および油圧シリンダ13Rにより上部テーブル5Uを急速下降させる場合には、シーケンス切換え弁45を切り換えて配管41と配管47を連通せしめると共に、ACサーボモータ39により双方向ピストンポンプ31を回転させる。
【0025】
さらに下降して曲げ加工を行う場合には、シーケンス切換え弁を図1に示されている状態にし下シリンダ室19Lからの作動油は配管41、カウンタバランス弁43、配管47を通って双方向ピストンポンプ31に戻り、さらに配管29から油圧シリンダ13Rの上シリンダ室19Uに供給される。これにより、ピストン19Rが下降して上部テーブル5Uが下降し、曲げ加工を行う。
【0026】
なお、ピストン19Rの下面側の断面積が上面側に比べて小さいことから、上シリンダ室19Uに注入される作動油の量に比べて、下シリンダ室19Lから双方向ピストンポンプ31に戻る作動油の量が少ないため、チェック弁51を介してオイルタンク27から作動油が補充される。
【0027】
上・下シリンダ室19U,19Lの作動油が高圧になった場合、回路保護のために、一部の作動油は高圧優先型シャトル弁57を介してリリーフ弁61から配管63を通ってオイルタンク27に戻るようにしている。
【0028】
一方、ラム移動速度パターン指令部65からのパターン信号に基づいて油圧シリンダ13Rを反転させて上部テーブル5Uを上昇させる場合には、反転指令によりACサーボモータ39を前述の場合と反対方向に逆回転させて双方向ピストンポンプ31を反転させ、ピストン19Rが下がった状態の上シリンダ室19Uからの作動油を、配管29、双方向ピストンポンプ31、配管47、切換え弁45、配管41等を通って下シリンダ室19Lに供給する。これにより、ピストン19Rが上昇して上部テーブル5Uが上昇し始める。
【0029】
そして、ラム移動速度パターン指令部65からのラム移動速度パターンを指令位置カウンタ67が読み取って、ピストン19Rが所定の上昇速度に達したら、速度の上昇を停止して一定速度で所定のウォーミングアップ時間TWだけ上昇させ、この間にチェック弁51が確実に閉まるように指令する。その後、ウォーミングアップ時間TWが経過してチェック弁51が閉まって作動油の逆流が起きない状態となったら、ACサーボモータ39を制御して、上部テーブル5Uの上昇速度が所定の速度に達するまで加速する。
【0030】
なお、下シリンダ室19Lに注入される作動油の圧力が所定値よりも高くなると、パイロット信号79によりプレフィル弁23が開き、上シリンダ室19Uからプレフィル弁23を通ってオイルタンク27に送られる。
【0031】
以上の結果から、双方向ピストンポンプ31を反転させた後、上部テーブル5Uの移動速度が低いうちに一旦移動速度を一定に保つウォーミングアップ時間TWを設けて、大きな正圧がかかる前にチェック弁35、51が閉じられるようにしたので、図3に示されているように、従来問題とされていた(図8参照)サージ圧による立ち上がり時におけるショックを低減して、移動時における上部テーブル5Uの振動を防止することができる。これにより、上部テーブル5Uの動作ゲインを上げて生産性を改善することができる。
【0032】
なお、この発明は前述の発明の実施の形態に限定されることなく、適宜な変更を行うことにより、その他の態様で実施し得るものである。すなわち、前述の発明に実施の形態においては、上部テーブル5Uを上下移動させるプレスブレーキ1について説明したが、下部テーブル5Lを上下移動させるプレスブレーキでもまったく同様である。
【0033】
また、ラム速度を一定に保つウォーミングアップをラム移動距離が一定距離になるまで行うやり方でもよい。
【0034】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、ラムの上下移動を反転させるために油圧シリンダの上下移動を切り換えるべく双方向流体ポンプの回転を反転した場合には、反転後のラム速度を一定に保つウォーミングアップを保持し、その後ラムの移動速度を所定の速度まで変化させてラムの上下移動を行うようにしたので、従来問題とされていた立ち上がり時におけるショックを低減して、移動時におけるラムの振動を防止することができる。これにより、ラムの動作ゲインを上げて生産性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係るプレスブレーキの油圧回路および制御装置の構成を示す回路およびブロック図である。
【図2】ラム移動速度パターンを示すグラフである。
【図3】図2のラム移動速度パターンで移動を指令された時のラムの実際の移動速度を示すグラフである。
【図4】この発明に係るプレスブレーキの全体を示す正面図である。
【図5】図4中V方向から見た側面図である。
【図6】従来におけるプレスブレーキの油圧回路の要部を示す概略図である。
【図7】従来におけるラム移動速度パターンを示すグラフである。
【図8】図7のラム移動速度パターンで移動を指令された時のラムの実際の移動速度を示すグラフである。
【符号の説明】
1 プレスブレーキ
5U 上部テーブル(ラム)
11 リニアスケール(ラム位置検出器)
13L、13R 油圧シリンダ
18 制御装置
31 双方向ピストンポンプ(双方向流体ポンプ)
39 ACサーボモータ(サーボモータ)
65 ラム移動速度パターン指令部
67 指令位置カウンタ
73 加算器
Claims (2)
- 双方向流体ポンプの回転方向にしたがって上下移動される油圧シリンダによりラムを上下移動させて曲げ加工を行うプレスブレーキにおけるラム移動方法において、前記ラムの上下移動を反転すべく前記双方向流体ポンプを反転した後に、前記双方向流体ポンプとオイルタンクとの間に備えられ、開いた状態にあるチェック弁が閉じるまでの間、反転後のラム速度を一定に保つべく指令移動値を一定に保持するウォーミングアップ時間の経過後に、ラム速度を所定の速度まで変化させるべく前記双方向流体ポンプを制御すること、を特徴とするプレスブレーキにおけるラム移動方法。
- 制御装置がサーボモータを制御して双方向流体ポンプを作動させ、この双方向流体ポンプからの作動油により油圧シリンダを作動させてラムを上下移動させることにより曲げ加工を行うプレスブレーキであって、前記制御装置が、指令移動速度によってラムの上下移動を反転すべく前記双方向流体ポンプの回転を所定の速度に反転させた後に、前記双方向流体ポンプとオイルタンクとの間に備えられ、開いた状態にあるチェック弁が閉じるまでの間、反転後のラム速度を一定に保つべく指令移動値を一定に保持するウォーミングアップ時間の経過後に、ラム速度を前記所定の速度まで変化させるために予め設定したラム移動速度パターンを指令するラム移動速度パターン指令部と、このラム移動速度パターン指令部により指令されたラム速度からラム位置を読み取る指令位置カウンタと、前記ラムの位置を検出するラム位置検出器と、前記指令位置カウンタにより読み取られたラム位置と前記ラム位置検出器からのラム位置信号を加算して前記ラムが所望の位置に位置するように前記サーボモータに指令する加算器と、を備えてなることを特徴とするプレスブレーキ。
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