JP4557364B2 - 車体の水流乾燥方法及び車体用水流乾燥促進組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車等の車両の車体(窓ガラスを含む)の水流乾燥方法及びそれに用いて特に好適な車体用水流乾燥促進組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
これまで基材の表面、特に自動車等の車両の表面を乾燥促進させる方法としては、ブロアーによる送風乾燥が主なものであった。送風乾燥機を使用することは、門型洗車機等の洗車機を用いた洗車後の乾燥に概ね有効であるが、それでも水滴を完全には除去しえず、また、騒音が大きいため市街地での夜間の使用制限を免れず、これが洗車機の稼働率の低下の一因となっていた。
また、洗車後、水洗水によって付着した細かな水滴は、ブロアーでは飛散せず、機械的に洗車機の走行スピードを遅くしたり、乾燥工程を複数回繰り返すなどしても十分には除去できず、洗車後に乾いたタオル等で拭き取るなどの煩雑な作業が必要であった。
一方、洗車時に撥水剤を車体面に塗布する方法もあるが、一般的に撥水剤として用いられているジメチルポリシロキサンやワックスは高い撥水性を有するものの、細かな水滴が付着してその物理的吸着力のため流れ落ちにくいという問題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような事情の下、洗車機を用いて洗車し、乾燥するに当り、ブロアーを使用しなくても簡単に乾燥しうる方法及びそれに用いて特に好適な、従来の撥水剤のような問題を起こさない車体用乾燥促進組成物を提供することを目的としてなされたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、洗車機を用いた洗車、乾燥方法においてブロアーを使用することなく、水滴を残さずに乾燥する方法について鋭意検討を重ねた結果、車体に、水洗後あるいは水洗工程の少なくとも最終段階で層流状の水をかけることにより、水滴を除去でき、また水滴を残さずに水洗しうること、またこの水をかける前に車体面に特定の乾燥促進組成物を塗布することにより、これら作用効果をさらに助長しうることを見出し、これらの知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0005】
すなわち、本発明は、洗車機を用いて最終的に水洗して洗車した後、車体に層流状の水をかけて車体上の水滴を除去するか、あるいは洗車機を用いて最終的に水洗する洗車方法において、最終水洗工程の少なくとも最後のラウンドで、車体に層流状の水をかけることを特徴とする車体の水流乾燥方法を提供するものである。また、本発明は、このような水流乾燥方法において、層流状の水をかける前に予め車体面に水流乾燥促進組成物を塗布する方法を提供するものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明方法において用いられる洗車機としては、門型洗車機やスプレー式洗車機が好ましい。
本発明方法の特に好ましい態様としては、門型洗車機を用い、それと車両とが相対的に移動するように、門型フレームを、停車又は、移動している車両を跨いで、その前後方向に往復走行するか又は停止させ、洗浄、発泡水洗、水性ワックスかけ等による艶出し等の先行の洗車行程を行った後、門型フレームに設けた水洗装置から、最終的に水を層流状の水膜にして連続的に車体全体にわたってかける方法が挙げられる。この水をかけるのには、上記水膜を十分な幅広のものとして車体に水のかからない部分が生じないようにジグザグ状にトラバースするのが好ましく、また、層流状の水膜を車体表面の形状にあわせトラバースさせるのが好ましい。ジグザグ状にトラバースするには、例えば停車又は、移動している車両を跨いで、その前後方向に往復走行する門型洗車機を用いた場合には、上記水洗装置を洗車機の前後方向への走行中に左右に往復動させればよい。
【0007】
水を層流状にかけるには、好ましくはレイノルズ数が1000以下となるようにするのが推奨され、例えば細いチューブを束ねた構造の流水器や、ディスク等の板状体間にスペーサを配設して小間隙(例えば0.05〜0.3mm程度のもの)を形成させた構造を有する流水器を用い、水をこのチューブ内や小間隙に流すようにするのがよい。
このスペーサを配した流水器では、流体の流量に応じてスペーサの厚さを調節するのがよく、例えばこの厚さを流量の少ない場合は薄くし、流量の多い場合は厚くするなどの手段を採ることができる。また、流量の多い場合にはスペーサをさらに重ねて間隙を大きくするようにしてもよい。
スペーサによる間隙を大きくすると、乱流を生じ易くなるが、水の流路の長さを長くすることでこれを抑止しうる。
【0008】
本発明において用いられる水流乾燥促進組成物については、車体の塗装面又はガラス面に塗布した後、小さな水滴が付着しても滑りやすくするために、車体に塗布された該組成物と水滴との摩擦係数が小さく、しかも転落角も小さいことが重要であり、この摩擦係数については0.10以下、好ましくは0.09以下、より好ましくは0.08以下であることが、転落角については0.01mlの水滴のそれが50°以下、好ましくは45°以下、より好ましくは40以下であることが必要である。このような水流乾燥促進組成物として好ましいのは、摩擦係数が0.09以下、0.01mlの水滴の転落角が45°以下、特に摩擦係数が0.08以下、0.01mlの水滴の転落角が40°以下であるものである。
【0009】
また、本発明の乾燥促進組成物を用い、洗車の最終水洗処理前に被処理車体に塗布してから、水洗することにより、細かな水滴を残すことなく流し去り、その結果車体を実質的に乾燥することができ、特にこのような水洗を、層流状の水を用いる本発明方法に適用すると乾燥効率が一層助長される。
【0010】
本発明の水流乾燥促進組成物の有効成分として好ましいのは、シリコーン系界面活性剤、アミノ変性シリコーン化合物又はその第四級アンモニウム塩化物、ポリエーテル変性シリコーン化合物及び動粘度2000〜10000センチストークスのジメチルポリシロキサンの水中油滴型エマルションである。
【0011】
シリコーン系界面活性剤としては、例えばカルボキシル変性シリコーン系アニオン界面活性剤、スルホン酸変性シリコーン系アニオン界面活性剤又はアンモニウム塩変性シリコーン系カチオン界面活性剤などが挙げられる。
【0012】
アミノ変性シリコーン化合物としては、例えばジメチルポリシロキサン等のポリシロキサンのアミノアルキル化変性物又はアミノアルキル置換アミノアルキル化変性物などが挙げられる。
【0013】
ポリエーテル変性シリコーン化合物としては、例えばジメチルポリシロキサン等のポリシロキサンの、オキシエチレン重合基、オキシプロピレン重合基又はオキシエチレン−オキシプロピレン共重合基(オキシエチレン−オキシプロピレン−オキシエチレン共重合基を含む)含有変性物などが挙げられる。
【0014】
上記ジメチルポリシロキサンの水中油滴型エマルションについては、各種界面活性剤、中でも非イオン界面活性剤、カチオン界面活性剤を乳化剤として配合したものがよい。
【0015】
その他の上記化合物、特にアミノ変性シリコーン化合物又はその第四級アンモニウム塩化物を有効成分として含有する水流乾燥促進組成物についても該化合物を水に効率よく溶解、分散、乳化させるために各種界面活性剤、中でも非イオン界面活性剤、カチオン界面活性剤を使用することができる。
界面活性剤の使用割合は、通常所定有効成分に対し、10〜2000重量%の範囲で選ばれる。
【0016】
このような界面活性剤のうち、非イオン界面活性剤としては、例えばアルキルエーテルエチレンオキシド付加物、アルキルフェニルエーテルエチレンオキシド付加物、高級脂肪酸エチレンオキシド付加物、ソルビタン脂肪酸エステルエチレンオキシド付加物等が挙げられる。
【0017】
また、カチオン界面活性剤としては、例えばジドデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジテトラデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジヘキサデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジオクタデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジエイコシルジメチルアンモニウムクロライド、ジテトラコシルジメチルアンモニウムクロライド、ジオレイルジメチルアンモニウムクロライド、デシルトリメチルアンモニウムクロライド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、テトラデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド、オレイルトリメチルアンモニウムクロライド、N‐(3‐トリデコキシ‐2‐ヒドロキシプロピル)ジメチルオクタデシルアンモニウムクロライド、N‐(3‐トリデコキシ‐2‐ヒドロキシプロピル)モノメチルモノエチルヘキサデシルアンモニウムクロライド、N,N‐ジドデシルアミドエチルモノメチルエタノールアンモニウムクロライド、N,N‐ジオクタデシルアミドエチルモノメチルエタノールアンモニウムクロライド、デシルアミン酢酸塩、ドデシルアミン酢酸塩、ドデシルアミン塩酸塩、テトラデシルアミン酢酸塩、テトラデシルアミン塩酸塩、ヘキサデシルアミン酢酸塩、ヘキサデシルアミン塩酸塩、オクタデシルアミン酢酸塩、オクタデシルアミン塩酸塩、エイコシルアミン酢酸塩、エイコシルアミン塩酸塩、オレイルアミン酢酸塩、オレイルアミン塩酸塩等が挙げられる。
【0018】
本発明の水流乾燥促進組成物は有効成分の種類にもよるが、好ましくは有効成分濃度が0.02〜0.5重量%程度に調製されたものである。
本発明の水流乾燥促進組成物は、実用的には、有効成分を高濃度、例えば上記好適濃度の20〜50倍の濃度等とした製品を用い、これをその使用時に該好適濃度になるまで水で希釈することによって調製するのがよい。
【0019】
本発明の水流乾燥促進組成物には、必要に応じ、本発明の目的をそこなわない範囲で有機溶剤、紫外線吸収剤、染料、防腐剤などの任意の添加成分を配合することができる。
【0020】
【実施例】
次に実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0021】
実施例1〜7、比較例1、2
自動車の車体用めっき鋼板材片に、アクリル−メラミン系樹脂からなる自動車用補修塗料をベースコートとトップコートの積層形態で焼き付け塗装して塗装板を作成したのち、これをけいそう土で研磨し、水洗風乾して試料片とした。
この試料片に、あらかじめ別途調製した表1に示す処方の濃厚組成物を、水で20倍に希釈して塗布処理し、その静摩擦係数を求め、またこの塗膜に0.01mlの水滴を形成させ、その転落角を求めた。その結果を表1に示す。
なお、未処理の試料片自体について求めた静摩擦係数及び同様の転落角はそれぞれ0.615及び90°以上であった。
【0022】
【表1】
【0023】
表中、各組成物は商品名で以下のとおりのものである。
SH8400: 東レ・ダウコーニング社製、ポリエーテル変性シリコーンエマルション
PolonMF−51: 信越化学工業社製、アミノ変性シリコーンエマルション
TEGOPREN6922: ゴールドシュミット社(独)製、アミノ変性シリコーンの第四級アンモニウム塩化物のエマルション
TEGOPolish Additive E 3400/5: ゴールドシュミット社(独)製、アミノ変性シリコーンエマルション
SM8702: 東レ・ダウコーニング社製、アミノ変性シリコーンエマルション
SLJ1402/9: ワッカー・ケミカルズ・イースト・アジア社製、ジメチルポリシロキサンエマルション
SLJ1402/12: ワッカー・ケミカルズ・イースト・アジア社製、ジメチルポリシロキサンエマルション
TEX151: 東芝シリコーン社製、アミノ変性シリコーンエマルション
BY22−009: 東レ・ダウコーニング社製、ジメチルポリシロキサンエマルション
【0024】
表1より、比較例ではいずれも転落角が大きく、さらに比較例1では静摩擦係数も高いのに対し、各実施例では所要の静摩擦係数及び転落角を共に満たしていることが分かる。
【0025】
実施例8
従来の門型洗車機において、スプレーノズルに代えて、車体上を左右に移動しながら水を層流状に車体にかける装置を取り付けたものを用い、該洗車機を被洗浄車体の前後方向に移動させながら最終的に車体全体にわたり水を層流状にかけて、洗車するとともに車体を水流乾燥させたところ、水滴が残らず、乾燥状態は良好であった。
【0026】
実施例9
実施例8の方法において、最終的に車体に水を層流状にかける前に、実施例1の濃厚組成物を水で20倍に希釈して車体面に塗布した以外は実施例8と同様にして洗車するとともに車体を水流乾燥させたところ、水滴が残らず、乾燥状態は良好であった。
【0027】
実施例10〜15
濃厚組成物を実施例2〜7のそれぞれのものに代えた以外は実施例9と同様にして洗車するとともに車体を水流乾燥させたところ、いずれも水滴が残らず、乾燥状態は良好であった。
【0028】
比較例3
従来のスプレーノズルを備えた門型洗車機を用い、該洗車機を車体の前後方向に移動させながら最終的に車体全体に水をシャワー状にかけて、洗車したのち、ブロワーにより概ね乾燥させたが、なお細かな水滴が残り、拭き上げが必要であった。
【0029】
【発明の効果】
本発明方法によれば、洗車後にあるいは洗車とともに細かな水滴を残すことなく層流状の水で流し去ることができ、その結果車体の水での実質的な乾燥が、従来の洗車後の騒音の原因となるブロアーでの送風乾燥によらずに、可能になり、騒音が出ず、夜間も操業しうるという画期的な効果が奏される。
また、本発明の乾燥促進組成物は、それを洗車の最終水洗処理前に被処理車体に塗布してから、水洗することにより、細かな水滴を残すことなく流し去り、その結果車体を実質的に乾燥するのを可能にするという効果を奏し、特にこのような水洗を、層流状の水を用いる本発明方法に適用することにより、この効果を一層助長させうるので有利である。
Claims (4)
- 洗車機を用いて最終的に水洗して洗車した後、車体にレイノルズ数が1000以下の層流状の水膜をかけて車体上の水滴を除去する車体の水流乾燥方法であって、
前記層流状の水膜をかける前に予め車体面にシリコーン系界面活性剤、アミノ変性シリコーン化合物またはその第四級アンモニウム塩化合物、ポリエーテル変性シリコーン化合物及び動粘度2000〜10000センチストークスのジメチルポリシロキサンの水中油滴型エマルションから選ばれる化合物を有効成分とし、静摩擦係数が0.10以下であり、かつその塗膜表面における0.01mlの水滴の転落角が50°以下である水流乾燥促進組成物を塗布することを特徴とする車体の水流乾燥方法。 - 洗車機を用いて最終的に水洗する洗車方法において、最終水洗工程の少なくとも最後のラウンドで、車体にレイノルズ数が1000以下の層流状の水膜をかける車体の水流乾燥方法であって、
前記層流状の水膜をかける前に予め車体面にシリコーン系界面活性剤、アミノ変性シリコーン化合物またはその第四級アンモニウム塩化合物、ポリエーテル変性シリコーン化合物及び動粘度2000〜10000センチストークスのジメチルポリシロキサンの水中油滴型エマルションから選ばれる化合物を有効成分とし、静摩擦係数が0.10以下であり、かつその塗膜表面における0.01mlの水滴の転落角が50°以下である水流乾燥促進組成物を塗布することを特徴とする車体の水流乾燥方法。 - 前記シリコーン系界面活性剤が、カルボキシル変性シリコーン系アニオン界面活性剤、スルホン酸変性シリコーン系アニオン界面活性剤又はアンモニウム塩変性シリコーン系カチオン界面活性剤である請求項1または2記載の水流乾燥方法。
- 前記アミノ変性シリコーン化合物がジメチルポリシロキサンのアミノアルキル化変性物又はアミノアルキル置換アミノアルキル化変性物である請求項1または2記載の水流乾燥方法。
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