JP4557192B2 - 要求濃度分布を有する材料の作成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、宇宙において均一な組成で高品質な結晶を生成するために用いる地上で作成する要求濃度分布を有する材料の作成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、Pb1-X SnX Teは化合物半導体PbTeとSnTeの混晶で、赤外線領域のレーザダイオードや光検出用材料として有望な半導体である。バンドキャップの大きさはPbTeとSnTeの比によってほぼ線形に変化するので、Pb/Sn 比(x値)を制御することにより発光および受光波長を5μmよりも長波長側において任意の値に設定することができる。しかし、Pb/Sn 比を一定(つまり組成を均一)にすることは難しく、また結晶が柔らかく歪みやすいため結晶欠陥を少くすることが困難であった。このためこれまで、引上げ法やブリッジマン法(一方向凝固法)あるいは気相成長法等各種の結晶成長法が試みられてきたが、素子作成用基板結晶としての大きさと高品質を備えた結晶は、地上では育成されていない。なお、溶融して均一な組成の状態で急冷すれば均一な組成の結晶が地上で容易に得られるが、高品質な結晶とはならない。
【0003】
地上で組成が均一で高品質の結晶が育成できないのは、Pb1-X SnX Te融液中の対流が融液を攪拌し、安定な結晶成長を阻害するためである。宇宙における微小重力下では熱対流が抑制できるので、適切な結晶成長速度を選べば、熱及び物質の輸送が拡散で律速される拡散律速定常状態結晶成長が可能で、その場合地上では得られない高品質の結晶が期待できる。このような高品質結晶が得られると、レーザーダイオードや光検出器などの素子作製に応用することにより、それらの素子の特性と歩留まりが大幅に向上する。
【0004】
そこで宇宙での結晶成長を行なう実験が宇宙開発事業団と日本電信電話株式会社により行われた。先ず、組成が均一な多結晶原料Pb0.8Sn0.2Teを地上で作製した。これは純度の高いPb,Sn,Teを還元処理して酸化膜を取り除き、Pb0.8Sn0.2Teの組成となるよう秤量し、真空下で約1000℃で加熱し化学反応で生成したPbTeとSnTeが均一になるよう攪拌した後、試料を急冷・凝固させて凝固時の偏析による組成変動を防止し均一組成の多結晶原料Pb0.8Sn0.2Teを作製した。
【0005】
このようにして得られた原料から組成均一で高品質の結晶を得るため宇宙での実験が行われた。図5はスペースシャトル内で、上記多結晶原料Pb0.8Sn0.2Teを温度勾配炉を用いた一方向凝固法により育成した結果を示す。温度勾配は40℃/cm以上、固化速度は5.5mm/hr で種子結晶を使用し、単結晶化を図った。実験の結果直径15mm,長さ58mmの円柱状結晶が得られた。宇宙育成結晶の組成均一性は、地上育成の場合に比べ改善されている。すなわち、成長軸方向の組成均一性が向上しSnTeモル分率が長さ33mmから43mmの約10mmの距離にわたり0.16と一定な領域が得られている。これは微小重力環境下(10-4G台)での熱対流抑制効果を示している。
【0006】
宇宙で生成する試料の組成均一部の長さは原料の結晶長さにも依存するが(原料が長いほど、同一の重力環境・結晶成長条件では均一部が長くなる)、重力の影響が大きい。重力が10-5Gとなれば、対流はほぼ発生せず均一組成の長さが長くなる可能性が大きい。宇宙ステーションの現在の設計値では、10-5G程度の微小重力と言われているが、いままでこの10-5G程度の微小重力を、宇宙ステーションの建設される数百km程度の低軌道上で実現した例はなく、実現は難しい。これは低軌道では空気抵抗によってブレーキがかかり、その結果、10-4G程度の微小重力が発生するためである。これにより上記実験では組成均一な結晶が得られたのは、全長の1/6の10mm程度であり、もっと長い範囲が望まれる。このため地上で長さ方向に組成を変化させた傾斜組成の多結晶試料を生成し、宇宙において融解後に一方向凝固させ、組成均一な結晶の範囲の長い試料を得ようとする方法が検討されている。
【0007】
図3は宇宙の実験結果をまとめた図で、縦軸は濃度を示し、横軸は試料の長さ方向の位置を示す。図4も同様である。図3Aは地上で生成した組成均一な多結晶を示し、図3Bは宇宙で一方向凝固法により図3Aに示す試料を凝固させた濃度分布を示す。図4は地上で傾斜組成の多結晶を生成し、宇宙で一方向凝固させることにより均一な組成の結晶を得ることができることを示す図である。すなわち図4Aのように地上である特定の傾斜組成の多結晶を生成し、宇宙で一方向凝固させると、図4Bで示すように組成がほぼ均一な高品質の結晶が得られる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、現在、ある程度の位置による濃度(成分比)を変えた材料を作ることは可能であるが、宇宙での結晶生成に最適と考えられる濃度分布が与えられた場合、それを実現することは難しい。種子結晶の成分比、材料の成分比、凝固速度を変えて何回か生成すれば要求された組成分布に近い材料は生成可能であるが、要求されると同じ組成分布を有する試料を生成する方法は得られていない。
【0009】
本発明は上述の問題に鑑みてなされたもので、地上で要求濃度分布を有する材料を生成する方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、均一な濃度を有し多結晶である薄板を複数作成する第1ステップを有し、前記複数の薄板の間で前記濃度が異なっており、前記複数の薄板を要求濃度分布に配置し、その各薄板間を拡散接合により接合した材料を作成する第2ステップを有し、前記要求濃度分布は、前記複数の薄板の配置方向の一方側から他方側へ移行するにつれ、前記濃度が小さくなっていく濃度分布であり、かつ、前記要求濃度分布は、前記材料を、10 −4 G程度の微小重力が発生する重力環境下において、融解させ、その後、凝固させた場合に、前記材料の組成がほぼ均一となるための濃度分布である。
【0012】
複数成分を配合して所望の濃度となるようにし、溶融して急冷すると偏析せず凝固するので溶融状態の均一な濃度の多結晶が容易に得られる。このようにして濃度を変えて色々の濃度の濃度均一な材料を生成する。この材料を薄板に加工する。試料の長さ方向の所望の濃度分布が示されると、この所望の濃度分布の長さ方向の各位置における濃度を有する薄板を、所望の濃度分布となる位置に配置し、この各薄板を拡散接合して試料を生成する。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は要求濃度分布を有する試料の生成方法を示す図である。図1Aは試料の要求濃度分布を示し、縦軸は濃度、横軸は試料の長さ方向の位置を示す。図1Bは図1Aの試料の長さを一定の長さdに分割し、各dの長さの平均濃度を求め、この平均濃度を有する薄板(厚みをdとする)を配列した図を示す。図1Cは種々の濃度を有する薄板(厚みd)を示す。図2は要求された濃度分布となるよう配列された薄板より試料を作成する方法を示し、図2Aは各薄板を拡散接合して一体化した状態を示し、図2Bは一体化した試料を加工して成形しアンプルに隙間なく詰められるようにした状態を示す。
【0014】
本発明による要求濃度分布を有する試料の生成方法は、図1Aに示すように試料の要求濃度分布が示されると、試料の長さ方向を一定の長さdに分割し、各分割した長さdの平均濃度を求め、各々の位置の濃度を有する薄板を、予め作成した種々の濃度を有する薄板から取り出し、配列する。このようにして配列した薄板を融点の0.6〜0.8倍の温度まで加熱して拡散接合し、一体化材料とする。この一体化材料を通常円筒形に加工して、アンプルに挿入する試料とする。なお、薄板は円板として生成する。
【0015】
次に、種々の濃度を有する薄板の生成方法について説明する。試料としては、In1-X GaX As結晶を用いた場合につき説明する。In1-X GaX Asは化合物半導体InAsとGaAsの混晶で半導体であり、InAs/GaAs=xモル分率となる濃度であることを示す。例えばx=0.3の均一濃度の結晶を生成する場合、純度の高いIn,Ga,Asを水素ガス気流中で加熱し還元処理して酸化膜を取り除き、In0.3Ga0.7As組成となるよう秤量し、真空下で加熱し、In,GaをAsと反応させ、化学反応で生成したInAsとGaAsが均一になるよう攪拌した後、急冷・凝固させて凝固時の偏析による組成変動を防止し均一組成の多結晶材料In0.3Ga0.7Asを得ることができる。このようにしてモル分率xを変えることにより、種々の濃度を有するInGaAsの材料を生成することができる。なお、InGaAsの材料を溶融するるつぼを円筒形とすることにより、円筒の多結晶材料を得ることができる。この円筒形の材料を厚みdに加工することにより、濃度xの薄板を得ることができる。なお、薄板の厚みdは薄い方が要求される濃度分布を精度よく近似できるが、薄板への加工や拡散接合装置の取り合いとの都合、及びどれくらいの数量の試料を実験者が用意するか等の条件を考慮して決められる。
【0016】
【発明の効果】
以上の説明より明らかなように、本発明は、予め種々の濃度の薄板を作成しておき、試料の要求濃度分布が示されると、濃度分布の各位置にその濃度を有する薄板を配列し、各薄板を拡散接合により一体化し、加工してアンプルに隙間なく充填できる試料を生成することができる。これにより要求濃度分布を有する試料を生成することができる。また、拡散接合により充分な強度を持った試料を製作でき、これにより試料の加工が可能になり、要求される形状を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】任意の濃度分布の試料を生成する方法を示す図である。
【図2】任意の濃度分布となるように配列された薄板を拡散接合し加工することをことを示す図である。
【図3】地上で濃度均一な試料を生成し、宇宙で一方向凝固させたときの濃度分布を示す図である。
【図4】地上で傾斜濃度の試料を生成し、宇宙で一方向凝固させた場合の濃度分布を示す図である。
【図5】地上で濃度均一な試料を生成し、宇宙で一方向凝固させたときの濃度分布を示す実験データである。
Claims (1)
- 均一な濃度を有し多結晶である薄板を複数作成する第1ステップを有し、前記複数の薄板の間で前記濃度が異なっており、
前記複数の薄板を要求濃度分布に配置し、その各薄板間を拡散接合により接合した材料を作成する第2ステップを有し、
前記要求濃度分布は、前記複数の薄板の配置方向の一方側から他方側へ移行するにつれ、前記濃度が小さくなっていく濃度分布であり、
かつ、前記要求濃度分布は、前記材料を、10 −4 G程度の微小重力が発生する重力環境下において、融解させ、その後、凝固させた場合に、前記材料の組成がほぼ均一となるための濃度分布である、ことを特徴とする要求濃度分布を有する材料の作成方法。
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JP22713699A JP4557192B2 (ja) | 1999-08-11 | 1999-08-11 | 要求濃度分布を有する材料の作成方法 |
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JP2001048691A JP2001048691A (ja) | 2001-02-20 |
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JPH09227268A (ja) * | 1996-02-20 | 1997-09-02 | Nippon Telegr & Teleph Corp <Ntt> | 固溶体単結晶の製造方法 |
JPH11121855A (ja) * | 1997-10-14 | 1999-04-30 | Nec Corp | 固体レーザ結晶とその作成方法及び固体レーザ装置 |
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1999
- 1999-08-11 JP JP22713699A patent/JP4557192B2/ja not_active Expired - Fee Related
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