JP4556016B2 - 窯業系成形体の省エネルギー製造方法および成形体 - Google Patents
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Description
【産業の属する技術分野】
本発明は、建築内装材、建築外装材、瓦、緑石、舗装板として採用され、不燃性にして実用的な機械的強度および寸法安定性を有する窯業系成形体およびその省エネルギー製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、窯業系成形体は不燃性であり、しかも腐食や虫害の虞れがなく、耐久性に優れていることから、建築内装材、建築外装材、瓦として多く採用されている。この窯業系成形体の製造は、珪酸質原料、石灰質原料、補強繊維、セメント、スラグおよび石膏等を主原料とし、水を添加、混合して、成形後、水熱処理養生または常圧養生を行い、機械的強度および寸法安定性を発現していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
例えば、建築用仕上げ材の場合、表面硬度や曲げ強度等の強度発現、および温湿度の環境変化に対する寸法安定性を有する物性を付与するには、セメントを混入し水和硬化させる方法が多く採用されている。前記の製造法において、常圧養生では熱エネルギー的には有利であるが、数日間の養生期間が必要であり、広大な敷地面積を必要とする問題点がある。また、水熱処理養生では、珪酸カルシウムをマトリックスとする場合、160〜180℃の温度条件下で、数時間から十数時間をかけて処理することにより製造され、熱エネルギーを多量に消費し、また、高圧力に耐える設備費を要し、また運転費も高価となる。
【0004】
さらに、板状成形体を水熱処理養生する場合、大型バッチ式オートクレープを用いるため、その反応手段が昇温と降温とを繰り返す操作であることから、温度条件が高いほどエネルギーロスが高いという問題点があった。これらの問題点は、瓦、緑石、舗装板の場合についても同様である。
【0005】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、また、窯業系成形体の新規な硬化反応を見いだしたものである。
【0006】
本発明の水熱処理養生の場合、養生の条件が従来よりはるかに低温で、しかも短時間にて、不燃性にして実用的な機械的強度と寸法安定性を有する窯業系成形体およびその効率的な製造方法を提供することにある。
また、常圧下、水蒸気雰囲気中で養生させるだけで、不燃性を有する窯業系成形体の製造方法を提供することにある。常圧下、水蒸気雰囲気中で製造した窯業系成形体は、前記の水熱処理養生で製造した成形体の機械的強度には劣るものの、実用的機械強度および寸法安定性を有する窯業系成形体である。さらに常圧下での養生であるため、水熱処理養生が密閉系バッチ生産を行うのに対し、開放系連続生産が可能で生産性を向上させることができる。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、珪酸質原料、石灰質原料、補強繊維、水と低級カルボン酸カルシウム塩を含有し、予め石灰質原料と低級カルボン酸カルシウム塩とをペースト状として用いた混練物とした混合原料を成形工程を経て原料成形体とし、養生と乾燥の各工程を経て窯業系成形体とすることを特徴とする窯業系成形体の製造方法を要旨としている。
【0008】
上記の混合原料は予め石灰質原料と低級カルボン酸カルシウム塩とを水分率50〜70%に調整し、60〜80℃で10〜60分撹拌混合しペースト状として用いた混練物であり、その場合、本発明は、珪酸質原料、石灰質原料、補強繊維、水と低級カルボン酸カルシウム塩を含有し、予め石灰質原料と低級カルボン酸カルシウム塩とを水分率50〜70%に調整し、60〜80℃で10〜60分撹拌混合しペースト状として用いた混練物とした混合原料を成形工程を経て原料成形体とし、養生と乾燥の各工程を経て窯業系成形体とすることを特徴とする窯業系成形体の製造方法を要旨としている。
【0009】
上記の混合原料は、低級カルボン酸カルシウム塩を、珪酸質原料と石灰質原料との混合物固形分100重量部に対して、固形分0.5〜5.0重量部含有するものであり、その場合、本発明は、珪酸質原料、石灰質原料、補強繊維、水と低級カルボン酸カルシウム塩を含有し、低級カルボン酸カルシウム塩が、珪酸質原料と石灰質原料との混合物固形分100重量部に対して、固形分0.5〜5.0重量部である、予め石灰質原料と低級カルボン酸カルシウム塩とをペースト状として用いた混練物とした、より具体的には予め石灰質原料と低級カルボン酸カルシウム塩とを水分率50〜70%に調整し、60〜80℃で10〜60分撹拌混合しペースト状として用いた混練物とした混合原料を成形工程を経て原料成形体とし、養生と乾燥の各工程を経て窯業系成形体とすることを特徴とする窯業系成形体の製造方法を要旨としている。
【0011】
110℃以下の水熱条件下、2時間以内である養生条件下で、または100℃以下の水蒸気雰囲気中で、4時間以内である養生条件下で養生後、乾燥しており、その場合、本発明は、珪酸質原料、石灰質原料、補強繊維、水と低級カルボン酸カルシウム塩を含有する、好ましくは珪酸質原料と石灰質原料との混合物固形分100重量部に対して、固形分0.5〜5.0重量部の低級カルボン酸カルシウム塩を含有する、予め石灰質原料と低級カルボン酸カルシウム塩とをペースト状として用いた混練物、好ましくは予め石灰質原料と低級カルボン酸カルシウム塩とを水分率50〜70%に調整し、60〜80℃で10〜60分撹拌混合しペースト状として用いた混練物とした、混合原料を成形工程を経て原料成形体とし、好ましくは脱水成形、押出成形または流し込み成形を行い原料成形体とし、110℃以下の水熱条件下、2時間以内である養生条件下で、または100℃以下の水蒸気雰囲気中で、4時間以内である養生条件下で養生後、乾燥して窯業系成形体とすることを特徴とする窯業系成形体の製造方法を要旨としている。
【0012】
原料成形体を30〜60℃で2〜3時間、前乾燥処理を行い半硬化体を得た後、養生しており、より具体的には、前記前乾燥処理で半硬化体を得た後、110℃以下の水熱条件下、2時間以内である養生条件下で、または100℃以下の水蒸気雰囲気中で、4時間以内である養生条件下で養生しており、その場合、本発明は、珪酸質原料、石灰質原料、補強繊維、水と低級カルボン酸カルシウム塩を含有する、好ましくは珪酸質原料と石灰質原料との混合物固形分100重量部に対して、固形分0.5〜5.0重量部の低級カルボン酸カルシウム塩を含有する、予め石灰質原料と低級カルボン酸カルシウム塩とをペースト状として用いた混練物、好ましくは予め石灰質原料と低級カルボン酸カルシウム塩とを水分率50〜70%に調整し、60〜80℃で10〜60分撹拌混合しペースト状として用いた混練物とした、混合原料を成形工程を経て原料成形体とし、好ましくは、脱水成形、押出成形または流し込み成形を行い原料成形体とし、その原料成形体を30〜60℃で2〜3時間、前乾燥処理を行い半硬化体を得た後、養生し、より具体的には、前記前乾燥処理で半硬化体を得た後、110℃以下の水熱条件下、2時間以内である養生条件下で、または100℃以下の水蒸気雰囲気中で、4時間以内である養生条件下で養生して窯業系成形体とすることを特徴とする窯業系成形体の製造方法を要旨としている。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施態様について説明する。
本発明にかかる窯業系成形体は、珪酸質原料、石灰質原料、補強繊維、水、および珪酸質原料と石灰質原料との混合物固形分100重量部に対して、固形分0.5〜5.0重量部の低級カルボン酸カルシウム塩を含有する混合原料を成形工程を経て原料成形体とし、この原料成形体を110℃以下の水熱条件下、2時間以内で養生させることを特徴としている。
また、前記、原料成形体を100℃以下の水蒸気雰囲気中、4時間以内で養生させることを特徴としている。
本発明で採用した低級カルボン酸カルシウム塩が珪酸質原料および石灰質原料に関わる反応メカニズムは解明できていないが、養生工程を経て乾燥した成形体は、実用的な機械的強度と寸法安定性を有している。
【0015】
ここで、低級カルボン酸カルシウム塩の含有量が、珪酸質原料と石灰質原料との混合物固形分100重量部に対して、固形分0.5重量部以下であると、後工程である養生での硬化促進が不十分となり、機械的強度の発現が十分でないとともに、未反応の水酸化カルシウムが多量に残存することから、乾燥工程での寸法安定性に劣る成形体となる。また、5.0重量部以上であると、コスト的に不利であるとともに、成形体中の有機物量が増えるので、不燃性として不利となる。
【0016】
また、本発明では、前記の原料成形体を30〜60℃で2〜3時間、前乾燥処理を行い半硬化体を得た後、110℃以下の水熱条件下で2時間以内、あるいは100℃以下の水蒸気雰囲気中で、4時間以内の養生をさせることを特徴としている。
【0017】
前乾燥処理の温度条件や乾燥時間は、原料成形体の原料組成や、原料成形体の水分率により、変動する。すなわち、過度の前乾燥は、原料成形体養生時に水の移動を減少させることから、後工程である養生での硬化進行を遅らせてしまう。
また、前乾燥が不十分であると、半硬化が不足するため、養生後の成形体強度が発現されない。さらに、半硬化した成形体の表面と中央部との乾燥度合いが極端に異なると、反りが発生するので、高温、短時間の前乾燥は適さない。
【0018】
前乾燥処理により得られた半硬化体の養生は水熱条件下では、110℃以下、2時間以内の条件まで、低温化、短時間が可能である。前記の養生条件よりエネルギーを使用した条件で養生を行うことで、さらに高物性にすることも可能であるが、実用的強度は前記の条件でも十分発現される。また、前記、半硬化体を100℃以下の水蒸気雰囲気中、4時間以内で養生させることでも、水熱処理養生で製造した成形体の機械的強度には劣るものの、実用的機械強度および寸法安定性を有する窯業系成形体が得ることができる。
【0019】
さらに、本発明では予め、石灰質原料と低級カルボン酸カルシウム塩を、水分率50〜70%に調整し、60〜80℃で10〜60分撹拌混合しペースト状としておくことで、低級カルボン酸カルシウム塩を石灰質原料に十分に定着させることを特徴としている。ここで、水分率は石灰質原料および次工程で使用の珪酸質原料の純度や粒度による活性度により変動する。ただし、水分が多いと成形時にクラックが入るので、好ましくは55〜65%である。ここで、低級カルボン酸カルシウム塩は、減水剤としても作用するので、所望の粘度を得るための水分量を減らすことができる。
【0020】
原料の混合は、珪酸質原料、石灰質原料、補強繊維、水、および低級カルボン酸カルシウム塩を、撹拌することによって原料ゲルとする。この原料ゲルの水分率は、次工程の成形方法にもよるが、25〜60%が好ましい。
【0021】
本発明の成形方法としては、脱水成形、押出成形または流し込み成形を用いる。窯業系成形体の成形方法としては、抄造成形もあるが、多量の水を用い、スラリーをろ過するため、低級カルボン酸カルシウム塩の定着を考慮すると、不適切である。脱水成形においても水を加えすぎてスラリーにすると、抄造成形同様に低級カルボン酸カルシウムの定着低下のおそれがある。したがって、混合原料は、ゲル状等の流動性を帯びた混練物を作り、脱水成形、押出成形または流し込み成形を行うことが好ましい。
【0022】
また、押出成形は各原料の比重差による不均一が少ない成形方法であるので、平板はもとより、回り縁、見切り縁、窓枠等建築部材といった意匠性に富む建築部材の成形が可能である。特に、意匠性に富む凹凸模様を施す場合、押出成形が有効である。押出成形の場合、増粘剤として、セルロース系誘電体、例えばメチルセルロース等を使用すればよい。このように糖類を基本とする有機化合物の添加は、強度発現に寄与することから有効である。
【0023】
本発明における珪酸質原料とは、珪酸(SiO2)が含まれている原料をいい、例えば珪石、珪砂、珪藻土、白土等の鉱物微粉末、フライアッシュ、シリカヒューム等のダストを採用することができる。
石灰質原料としては、例えば、生石灰、生石灰の乾式消化で得られる粉末状の消石灰や多量の水で生石灰を湿式消化して得られるスラリー状の消石灰(石灰乳)等を使用すればよい。
【0024】
本発明では、養生温度の低温化を確立させたことから、従来の高温域で熱分解され採用できなかった有機系繊維も採用できる。
有機系補強繊維としては、セルロース繊維、ポリプロピレン繊維、ビニロン繊維、アクリル繊維、アラミド繊維等を採用することができる。無機系補強繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、炭化ケイ素繊維、ステンレス繊維を採用することができる。不燃性を高めることを考慮すると無機系補強繊維が好ましい。
【0025】
本発明で使用する低級カルボン酸カルシウム塩としては、酢酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム等を使用する。また、100℃での水蒸気養生では、低級カルボン酸カルシウム塩が溶解していることから、水蒸気圧が低下するため100℃を少し越えた温度でも常圧下で養生することができる。
【0026】
また、本発明ではバインダーとして、水ガラス系バインダーや、高分子系バインダーとしてスチレンブタジエン共重合体、アクリロニトリルブタジエン共重合体、スチレンアクリル共重合体等を適宜添加してもよい。また、混和材として、セメント、石膏等の常温硬化材や、木片、ガラス廃材のビーズを混和材として適宜添加してもよい。本発明では養生工程での温度条件が低温化されることから、従来、熱分解されるため、使用が制限されていた各種有機系物質を幅広く採用できることも特徴である。
【0027】
以下、本発明に係る窯業系成形体の製造方法の好ましい実施形態について説明する。
[第1実施形態]
まず、珪酸質原料、石灰質原料、補強繊維を所定の割合で撹拌混合して粉体原料とする。この際、補強繊維の種類にもよるが、繊維の分散を確認してから次工程へ進む。
上記粉体原料に、適量の水を添加し、水分率を25〜60%と調整した後、撹拌を行い、ゲル状の混練物とした後、低級カルボン酸カルシウム塩を添加、撹拌混合し原料ゲルを得る。ここで、低級カルボン酸カルシウム塩は、珪酸質原料と石灰質原料との混合物固形分100重量部に対して、固形分0.5〜5.0重量部とする。前記原料ゲルを型枠に投入し、加圧により脱水成形を行い原料成形体を得る。この原料成形体を110℃以下の水熱条件下で、2時間以上養生後、乾燥を行い窯業系成形体を得る。
【0028】
上述のような第1実施形態によれば、次の効果がある。
(1)従来の水熱養生法に比べ、温度の低温化、時間の短縮化を可能としたことから、省エネルギーを実現し、エネルギーコストを低減させることができる。
(2)養生温度の低温化により、熱分解温度が下がるため、添加できる有機物の種類が幅広くなる。
(3)養生サイクルが短縮されることから、水熱反応器であるオートクレープの基数が少なくても大量生産が可能となる。
(4)養生温度の低温化により、オートクレープの耐圧性能を下げることができ、壁面の肉厚低減により、設備費を安価にすることができる。
【0029】
[第2実施形態]
前記第1実施形態で得られた原料成形体を100℃以下の水蒸気雰囲気中で、4時間以内の養生後、乾燥を行い窯業系成形体を得る。本窯業系成形体は、第1実施形態で製造した窯業系成形体の機械的強度には劣るものの、実用的機械強度および寸法安定性を有している。
上述のような第2実施形態によれば、前記第1実施形態の(1)、(2)と同様の効果が得られる他、次のような効果も得られる。
(5)オートクレープが不要であるため、設備費の削減、圧力容器の管理作業が不要となる。
(6)常圧養生であるため、開放系連続製造が可能となり、生産性が向上できる。
【0030】
[第3実施形態]
前記第1実施形態で得られた原料成形体を30〜60℃の温度条件下、2〜3時間乾燥を行い(前乾燥工程)、半硬化体を得る。この半硬化体を110℃以下の水熱条件下で、2時間以内の養生後、乾燥を行い窯業系成形体を得る。
上述のような第3実施形態によれば、前記第1実施形態の(1)〜(4)と同様の効果が得られる他、次のような効果も得られる。
(7)第1実施形態で得られた窯業系成形体より、機械的強度を向上させることが可能である。
【0031】
[第4実施形態]
前記第1実施形態で得られた原料成形体を30〜60℃の温度条件下、2〜3時間乾燥を行い(前乾燥工程)、半硬化体を得る。この半硬化体を100℃以下の水蒸気雰囲気中で、4時間以内の養生後、乾燥を行い窯業系成形体を得る。本窯業系成形体は、第3実施形態で製造した窯業系成形体の機械的強度には劣るものの、実用的機械強度および寸法安定性を有している。
上述のような第4実施形態によれば、前記第1実施形態の(1)、(2)および第2実施形態の(5)、(6)同様の効果が得られる他、次のような効果も得られる。
(8)第3実施形態で得られた窯業系成形体より、機械的強度を向上させることが可能である。
【0032】
[第5実施形態]
石灰質原料と低級カルボン酸カルシウム塩を、水分率50〜70%になるよう調整し、60〜80℃で10〜60分撹拌混合することにより、ペースト状原料を予め作成する。
まず、珪酸質原料、補強繊維を所定の割合で撹拌混合して粉体原料とする。この際、補強繊維の種類にもよるが、繊維の分散を確認してから次工程へ進む。
前記粉体原料に、適量の水を添加し、撹拌を行い、ゲル状の混練物とした後、予め作成しておいたペースト状原料を添加、撹拌混合し原料ゲルを得る。ここで、低級カルボン酸カルシウム塩は、珪酸質原料と石灰質原料との混合物固形分100重量部に対して、固形分0.5〜5.0重量部とする。また、原料ゲルの水分率は、25〜60%になるように調整する。
前記原料ゲルを型枠に投入し、加圧により脱水成形を行い原料成形体を得る。得られた原料成形体を第1〜4実施形態の条件で窯業系成形体を製造する。
【0033】
上述のような第5実施形態によれば、前記第1〜4実施形態の同様の効果が得られる他、次のような効果も得られる。
(9)原料成形体製造以降の工程が同一条件であるにも関わらず、製造された窯業系成形体の機械的強度を向上させることが可能である。
【0034】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良は、本発明に含まれるものである。例えば、前記第1実施形態では、水熱処理養生条件が110℃以下、2時間以内であるが、従来の水熱処理養生条件より省エネルギーである110℃、3時間でもよい。
また、原料成形体製造に脱水成形を用いていたが、これに限らず、押出成形、流し込み成形等のその他の成形法により成形することも可能である。
【0035】
【実施例】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。なお、あらかじめペースト調整をしない実施例1〜4は参考例1〜4である。
表1には、実施例および比較例で使用した窯業系成形体の原料配合割合、前乾燥および養生条件を示している。
なお、珪石粉末はSiO2含有量97.8%を採用し、消石灰はCaO含有量72.6%を採用した。混和材は、パーライト(真珠岩JIS SO.15−0.6)、有機質繊維には、NBKP(針葉樹晒しクラフトパルプ)とポリプロピレンとからなる繊維を採用した。
原料撹拌に用いたモルタルミキサーの撹拌条件は50rpmとした。
【0036】
【表1】
【0037】
実施例1
珪石69.5重量部、消石灰13.7重量部、混和材8.0重量部、有機質繊維5.0重量部をモルタルミキサーによって、10分間撹拌した。次に水分率が40%になるように水を添加し、モルタルミキサーによって、5分間撹拌した。さらに、酢酸カルシウム3.8重量部を添加し、モルタルミキサーによって、10分間撹拌を行い、原料ゲルを得た。
得られた原料ゲルを250mm×250mmの型枠に投入し、0.5MPaで加圧して厚さ12mmの原料成形体を得た。
得られた原料成形体をオートクレープにて、110℃の温度下、2時間養生した後、120℃で12時間乾燥させて窯業系成形体を得た。
得られた窯業系成形体の外観には異常がなかった。
【0038】
実施例2
前記実施例1で得られた原料成形体をオートクレープにて、開放状態とし、100℃の温度下、4時間養生した後、120℃で12時間乾燥させて窯業系成形体を得た。
得られた窯業系成形体の外観には異常がなかった。
【0039】
実施例3
前記実施例1で得られた原料成形体を乾燥機にて、40℃の温度下、2時間乾燥させて、半硬化体を得た。
得られた半硬化体を実施例1と同様の方法で、養生、乾燥を行い、窯業系成形体を得た。
得られた窯業系成形体の外観には異常がなかった。
【0040】
実施例4
前記実施例3で得られた半硬化体を、実施例2と同様の方法で、養生、乾燥を行い、窯業系成形体を得た。
得られた窯業系成形体の外観には異常がなかった。
【0041】
実施例5
消石灰13.7重量部、酢酸カルシウム3.8重量部を水分率60%になるように配合し、モルタルミキサーにて20分間撹拌し、ペースト状原料を予め作成した。
珪石69.5重量部、混和材8.0重量部、有機質繊維5.0重量部をモルタルミキサーによって、10分間撹拌した。次に水分率32.9%になるように水を添加し、モルタルミキサーによって、5分間撹拌した。さらに、前記ペースト状原料を添加し、モルタルミキサーによって、10分間撹拌を行い、原料ゲルを得た。
得られた原料ゲルを実施例1と同様の方法によって成形し原料成形体を得、さらに実施例1と同様の方法で、養生、乾燥を行い、窯業系成形体を得た。
得られた窯業系成形体の外観には異常がなかった。
【0042】
実施例6
前記実施例5で得られた原料成形体を実施例2と同様の方法によって養生、乾燥を行い、窯業系成形体を得た。
得られた窯業系成形体の外観には異常がなかった。
【0043】
実施例7
前記実施例5で得られた原料成形体を実施例3と同様の方法で、半硬化体を得、さらに実施例1と同様の方法で養生、乾燥を行い、窯業系成形体を得た。
得られた窯業系成形体の外観には異常がなかった。
【0044】
実施例8
前記実施例5で得られた原料成形体を実施例3と同様の方法で、半硬化体を得、さらに実施例2と同様の方法で養生、乾燥を行い、窯業系成形体を得た。
得られた窯業系成形体の外観には異常がなかった。
【0045】
比較例1
珪石72.4重量部、消石灰14.3重量部、混和材8.3重量部、有機質繊維5.0重量部をモルタルミキサーによって、10分間撹拌した。次に水分率が40%になるように水を添加し、モルタルミキサーによって、5分間撹拌した。
得られた原料ゲルを実施例1と同様に加圧成形を行い原料成形体を得た後、実施例1と同様の方法で養生を行った。得られた養生成形体は、硬化されていなかった。
【0046】
比較例2
前記比較例1で得られた原料成形体を実施例3と同様の方法で、前乾燥を行った。得られた成形体は半硬化していなかった。この成形体を実施例1と同様の方法で養生を行った。得られた養生成形体は、硬化されていなかった。
【0047】
比較例3
珪石45.0重量部、セメント30.0重量部、混和材20.0重量部、有機質繊維5.0重量部をモルタルミキサーによって、10分間撹拌した。次に水分率が40%になるように水を添加し、モルタルミキサーによって、5分間撹拌した。
得られた原料ゲルを実施例1と同様に加圧成形を行い原料成形体を得た後、実施例1と同様の方法で養生、乾燥を行い、窯業系成形体を得た。
得られた窯業成形体は収縮による反りが発生していた。
【0048】
比較例4
珪石45.0重量部、セメント30.0重量部、混和材20.0重量部、ARG(耐アルカリ性ガラス繊維)5.0重量部をモルタルミキサーによって、10分間撹拌した。次に水分率が40%になるように水を添加し、モルタルミキサーによって、5分間撹拌した。
得られた原料ゲルを実施例1と同様に加圧成形を行い原料成形体を得た後、160℃の温度下、10時間養生した後、120℃で12時間乾燥させて窯業系成形体を得た。
得られた窯業系成形体の外観には異常がなかった。
【0049】
上記各実施例1〜8および比較例4で得られた窯業系成形体について、かさ比重、曲げ強度、吸水率、吸水長さ変化率を測定した。得られた物性値より比強度を算出した。また、切断加工性を評価した。結果を表2に示している。
【0050】
【表2】
×:測定不能 ▲:外観硬化せず 〇:切断面良好
◎:外観異常なし ●:外観変更
【0051】
前記かさ比重、吸水率、および吸水長さ変化率の測定は、JIS A5430に準拠した方法により測定した。
前記曲げ強度の測定は、JIS A1408に準拠した方法により測定した。
前記比強度は、曲げ強度/(かさ比重)2により算出した。
切断加工性の評価は、鋸切断による直線性を目視観察するとともに切断面の硬化度合いを触感により評価した。
【0052】
表2に示されるように、実施例1〜8で得られた窯業系成形体はいずれも実用するにあたって十分な強度を有していることがわかる。また、吸水長さ変化率も低く、吸水に対する十分な寸法安定性を有していることが確認された。
前乾燥により半硬化させることは、比強度を向上させている。さらに、予め消石灰と酢酸カルシウムをペースト状に調整させておくことにより、比強度を向上させている。
【0053】
比較例1、2では、養生後の成形体が硬化しておらず、各実施例に配合した酢酸カルシウムが硬化に寄与していることが確認された。
また、比較例3では、従来一般的に用いられているセメントの水和硬化を低温養生したが、養生、乾燥後の成形体は、反り、収縮が大きく、商品化にはならない。この場合は、比較例4のように、高温、長時間の養生が必要であり、また、補強繊維も熱分解する有機繊維は採用できない。
【0054】
【発明の効果】
本発明によれば、窯業系成形体を水熱処理後養生する場合は、従来よりはるかに低温で、しかも短時間にて、不燃性にして実用的な機械的強度と寸法安定性を発現できる。また、常圧下、水蒸気雰囲気中での養生においても、前記の水熱処理養生で製造した成形体の機械的強度には劣るものの、実用的機械強度および寸法安定性を有する窯業系成形体である。したがって、省エネルギー化をもたらし、地球環境保全にも寄与するとともに、コスト削減を可能とする。また、常圧下、水蒸気養生では、設備費、運転費を削減できるとともに、連続製造が可能なことから、生産性を向上することができる。
Claims (7)
- 珪酸質原料、石灰質原料、補強繊維、水と低級カルボン酸カルシウム塩を含有し、予め石灰質原料と低級カルボン酸カルシウム塩とをペースト状として用いた混練物とした混合原料を成形工程を経て原料成形体とし、養生と乾燥の各工程を経て窯業系成形体とすることを特徴とする窯業系成形体の製造方法。
- 上記の混合原料は、予め石灰質原料と低級カルボン酸カルシウム塩とを水分率50〜70%に調整し、60〜80℃で10〜60分撹拌混合しペースト状として用いた混練物である請求項1の窯業系成形体の製造方法。
- 上記の混練物とした混合原料を、脱水成形、押出成形または流し込み成形を行い原料成形体とする請求項1または2の窯業系成形体の製造方法。
- 上記の混合原料は、低級カルボン酸カルシウム塩を、珪酸質原料と石灰質原料との混合物固形分100重量部に対して、固形分0.5〜5.0重量部含有するものである請求項1、2または3の窯業系成形体の製造方法。
- 原料成形体を30〜60℃で2〜3時間、前乾燥処理を行い半硬化体を得た後、養生する請求項1ないし4のいずれかの窯業系成形体の製造方法。
- 養生条件が、110℃以下の水熱条件下、2時間以内である請求項1ないし5のいずれかの窯業系成形体の製造方法。
- 養生条件が、100℃以下の水蒸気雰囲気中で、4時間以内である請求項1ないし5のいずれかの窯業系成形体の製造方法。
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